JPWO2006112451A1 - プロテインcインヒビターを含有する抗癌剤 - Google Patents
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Abstract
Description
コラーゲン(collagen) フィブロネクチン(fibronectin)
ラミニン(laminin) プロテオグリカン(proteoglycan)
エラスチン(elastin)
PCIは、抗凝固系のプロテアーゼであるプロテインCの阻害因子として同定されたプロテアーゼインヒビターである(非特許文献3、非特許文献4)。セリンプロテアーゼ(SERPIN)ファミリーに属し、トロンビン、Xa因子、XIa因子、血漿カリクレイン、そしてuPA等に対する阻害作用を有することが確認されている。PAのインヒビターとして同定されたプラスミノーゲンアクチベータインヒビター−3(plasminogen activator inhibitor 3)は、PCIと同じ分子である。
〔1〕プロテインCインヒビター(PCI)またはその誘導体を有効成分として含有する抗癌剤。
〔2〕癌の増殖、癌の転移、および血管新生から選択された活性の少なくとも1つを抑制する〔1〕に記載の抗癌剤。
〔3〕癌が乳癌である〔1〕または〔2〕に記載の抗癌剤。
〔4〕プロテインCインヒビターの誘導体のプロテアーゼ阻害作用がプロテインCインヒビターよりも低い〔2〕に記載の抗癌剤。
〔5〕プロテインCインヒビターの誘導体が、プロテインCインヒビターのヘパリン結合領域を含む蛋白質である〔4〕に記載の抗癌剤。
〔6〕プロテインCインヒビターの誘導体が、ヘパリンおよびヘパリン様グリコサミノグルカンのいずれかまたは両方との結合能を有する蛋白質である〔5〕に記載の抗癌剤。
〔7〕癌の浸潤を抑制する〔1〕に記載の抗癌剤。
〔8〕プロテインCインヒビターの誘導体がプロテアーゼ阻害作用を有する〔7〕に記載の抗癌剤。
〔9〕プロテインCインヒビター(PCI)またはその誘導体を投与する工程を含む、癌の治療方法。
〔10〕癌の増殖、癌の転移、および血管新生から選択された活性の少なくとも1つが抑制される、〔9〕に記載の方法。
〔11〕癌が乳癌である〔9〕または〔10〕に記載の方法。
〔12〕プロテインCインヒビターの誘導体のプロテアーゼ阻害作用がプロテインCインヒビターよりも低い、〔10〕に記載の方法。
〔13〕プロテインCインヒビターの誘導体が、プロテインCインヒビターのヘパリン結合領域を含む蛋白質である、〔12〕に記載の方法。
〔14〕プロテインCインヒビターの誘導体が、ヘパリンおよびヘパリン様グリコサミノグルカンのいずれかまたは両方との結合能を有する蛋白質である、〔13〕に記載の方法。
〔15〕癌の浸潤が抑制される、〔9〕に記載の方法。
〔16〕プロテインCインヒビターの誘導体がプロテアーゼ阻害作用を有する、〔15〕に記載の方法。
〔17〕プロテインCインヒビターまたはその誘導体を有効成分として含有する抗癌剤の製造のための使用。
〔18〕抗癌剤が、癌の増殖、癌の転移、および血管新生から選択された活性の少なくとも1つを抑制する、〔17〕に記載の使用。
〔19〕癌が乳癌である、〔17〕または〔18〕に記載の使用。
〔20〕プロテインCインヒビターの誘導体のプロテアーゼ阻害作用がプロテインCインヒビターよりも低い、〔18〕に記載の使用。
〔21〕プロテインCインヒビターの誘導体が、プロテインCインヒビターのヘパリン結合領域を含む蛋白質である、〔20〕に記載の使用。
〔22〕プロテインCインヒビターの誘導体が、ヘパリンおよびヘパリン様グリコサミノグルカンのいずれかまたは両方との結合能を有する蛋白質である、〔21〕に記載の使用。
〔23〕抗癌剤が、癌の浸潤を抑制する、〔17〕に記載の使用。
〔24〕プロテインCインヒビターの誘導体がプロテアーゼ阻害作用を有する、〔23〕に記載の使用。
加えて本発明は、PCIまたはその誘導体の、癌細胞の増殖抑制、癌の転移抑制、癌の浸潤阻害、あるいは癌組織における血管新生の阻害における使用に関する。更に本発明は、PCIまたはその誘導体を投与する工程を含む、癌細胞の増殖抑制方法、癌の転移抑制方法、癌の浸潤阻害方法、あるいは癌組織における血管新生の阻害方法に関する。
本発明においては、ヒト以外の種に由来するPCIを利用することもできる。具体的には、哺乳動物のPCIとしては、例えばマウス、ラット、またはウシ等のPCIが公知である(Zechmeister-Machhart, M. et. al., Gene 186(1):61-6, 1997; Wakita, T. et. al., FEBS Lett. 429(3):263-8, 1998; Yuasa, H. et. al., Thromb. Haemost. 83(2):262-7, 2000)。
(a) ヘパリン結合領域を構成するアミノ酸配列を含むPCIの断片
(b) aPCによる消化部位に変異を有する変異PCI
1位− 15位 (helix A)
264位−278位 (helix H)
中でもコンドロイチン硫酸は、PCIの作用を増強する作用が大きい。あるいはデキストラン硫酸もヘパリンと同様にPCIの作用を増強することが知られている(Kazama Y. et al., Thromb Res. 48(2):179-85, 1987 Oct 15)。したがって、コンドロイチン硫酸やデキストラン硫酸との結合性を維持したPCIの変異体は、本発明において好ましい。
疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)
親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)
脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)
水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)
硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)
カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)
塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)
芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)
マトリゲル中で癌細胞の浸潤を観察することができる。癌細胞をPCI誘導体の存在下でインキュベーションすることによって、PCI誘導体が癌細胞の浸潤に与える影響を確認することができる。
[増殖:in vivoにおける腫瘍増殖の評価(evaluation of tumor growth in vivo)]
PCI誘導体をコードするDNAで形質転換された癌細胞の増殖を観察することによって、PCI誘導体が癌細胞の増殖に与える影響を評価することができる。癌細胞としてはたとえば乳癌細胞MDA-231を利用することができる。癌細胞はSCIDマウスに移植して、生体中における癌細胞の増殖に与える影響を評価することができる。
[転移:実験的肺転移のアッセイ法(assay of experimental lung metastasis)]
生体内における評価系を利用して、PCI誘導体が癌細胞の転移に与える影響を評価することもできる。たとえば、乳癌細胞MDA-231をSCIDマウスの尾静脈に接種し、肺への転移を観察することができる。PCI誘導体をコードするDNAの形質転換によって肺への転移が抑制されれば、PCI誘導体の転移に対する抑制作用が確認できる。
癌組織における血管新生に与えるPCI誘導体の影響を、in vivoで評価することもできる。すなわち、癌細胞を含むマトリゲルをSCIDマウスに移植し、マトリゲル中への血液成分の進入を指標として、癌細胞の血管新生活性を評価することができる。実施例においては、マトリゲルを消化して、マトリゲル中に含まれるヘモグロビンの含有量を比較した。PCI誘導体をコードするDNAで形質転換された癌細胞において、血管新生が抑制されれば、PCI誘導体の血管新生に対する抑制作用を確認することができる。
[血管新生:ニワトリ漿尿膜アッセイ法(Chick chorioallantoic membrane assay: CAM-assay)]
トリの漿尿膜上で癌細胞を培養して、漿尿膜における血管新生を観察することにより、癌細胞の血管新生活性を評価することができる。PCI誘導体をコードするDNAで形質転換された癌細胞において、血管新生が抑制されれば、PCI誘導体の血管新生に対する抑制作用を確認することができる。
[血管新生:in vitro血管新生アッセイ法(in vitro angiogenesis assay)]
マトリゲル中で癌細胞を培養するときに、マトリゲル中に癌細胞によって形成される毛細管を指標として、癌細胞の血管新生活性を評価することができる(Schnaper H.W. et al., J. Cell Physiol. 65:107-18, 1995)。PCI誘導体をコードするDNAで形質転換された癌細胞において、血管新生が抑制されれば、PCI誘導体の血管新生に対する抑制作用を確認することができる。
a)乳癌細胞MDA-231を免疫不全動物に移植する工程;
b)a)の移植の前、移植と同時、または移植の後のいずれかのタイミングで、被験物質をMDA-231に接触させる工程;
c)MDA-231の癌細胞としての活性を測定する工程;および
d)c)で測定した活性が対照と比較して低い場合に被験物質の抗癌作用が検出される工程。
本発明において、癌細胞としての活性とは、細胞の増殖、浸潤、転移、および血管新生からなる群から選択することができる。これらの活性は、たとえば先に述べたような方法によって測定することができる。一方上記の方法に用いるMDA-231細胞は、MDA-MB-231としてセルバンクから入手することができる (ATCC Accession No. HTB-26)。
[動物細胞]
(1) 哺乳類細胞:例えば、CHO, COS,ミエローマ、BHK(baby hamster kidney),HeLa,Vero,
(2) 両生類細胞:例えば、アフリカツメガエル卵母細胞
(3) 昆虫細胞:例えば、Sf9, Sf21, Tn5等、若しくはカイコ等の個体
[植物細胞]
ニコティアナ(Nicotiana)属:例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞をカルス培養する
[真菌細胞]
酵母:例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属;例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)
糸状菌:例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属;例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger)等
[原核細胞]
細菌細胞:例えば大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)
これらの細胞に、PCI遺伝子またはPCI誘導体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することによりPCIまたはPCI誘導体が得られる。
クロマトグラフィーカラム
フィルター
限外濾過
塩析
透析
調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動
等電点電気泳動等
本発明における精製方法は、これらに限定されない。また本発明に利用できるクロマトグラフィーとしては、次のようなクロマトグラフィーを示すことができる。
アフィニティークロマトグラフィー
イオン交換クロマトグラフィー
疎水性クロマトグラフィー
ゲル濾過
逆相クロマトグラフィー
吸着クロマトグラフィー等
これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーには、例えば、PCIに対する抗体を用いることができる。
具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を担体として挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン及び免疫グロブリン等の蛋白質、並びに、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸を含むこともできる。
注射用の水溶液とする場合には、PCIおよび/またはPCI誘導体を、例えば、生理食塩水、ブドウ糖またはその他の補助薬を含む等張液に溶解する。補助薬としては、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、さらに、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO-50)等と併用してもよい。
また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。投与量としては、例えば、一回につき体重1 kgあたり0.0001 mgから1000 mgの範囲で選ぶことが可能である。または、例えば、患者あたり0.001〜100000 mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明の抗癌の投与量は、これらの投与量に制限されない。
レトロウイルスベクター
アデノウイルスベクター
ワクシニアウイルスベクター
ポックスウイルスベクター
アデノ随伴ウイルスベクター
HVJベクター等
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
1)材料
制限エンドヌクレアーゼは、TOYOBO、日本、大阪から購入した。Taq DNAポリメラーゼはRoche Biochemicals(スイス、バーゼル)製、クレノー断片、T4ポリヌクレオチドキナーゼ、およびT4 DNAリガーゼは日本ジーン(日本、東京)製であった。QuikChange XL部位特異的突然変異誘発キットは、Stratagene 、米国、テキサス州、シーダークリークから購入した。ダイターミネーターサイクルシークエンスレディーリアクションキットは、ABI、カリフォルニア州、フォスターシティーから購入した。放射性ヌクレオチド([α-32P]dCTPおよび[γ-32P]ATP)は、Amersham Bioscience(スウェーデン、ウプサラ)製であった。トランスフェクション試薬Effectene、は、QIAGEN, Inc、日本、東京から購入した。使用した他の化学薬品および試薬はすべて、市販の最等級のものであった。
乳癌細胞MDA-231は、日本癌研究リサーチリソースバンクから入手した。MDA-231は、10%ウシ胎仔血清(FBS)(EQUITECH-BIO、テキサス州、ケルビル)、100μg/mlペニシリン、および100 IU/mlストレプトマイシン(三光純薬、日本、東京)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)(日水製薬、日本、東京)中、5% CO2を含む加湿雰囲気中で37℃で培養した。
ヒト原型PCI(intact PCI)、R354APCI、またはdegPCIの発現ベクターは、以下のように構築した。シグナルペプチドを有するR354APCI cDNAは、次の塩基配列からなる合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、全長PCI cDNA (Suzuki K. et al., J. Biol. Chem. 262:611-6, 1987)を鋳型としてQuickChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、カリフォルニア州、ラ・ホーヤ)により調製した。下線を引いたヌクレオチドは変異部位を示す。
5'-TTCACTTTCGCGTCGGCCCGC-3'(配列番号:3)および
5'-GCGGGCCGACGCGAAAGTGAA-3'(配列番頭:4)
5'-GCGAATTCCTCTGGCAGAGCCTCCGTTTCC-3'(配列番号:5)および
5'-GCGAATTCTCACCTGAAAGTGAAGATTGTCC-3'(配列番号:6)
トランスフェクションした後、800μg/mlジェネティシンを含むDMEMを用いて、原型PCI、R354APCI、degPCI発現MDA-231細胞株を選択した。その後、以下に示すように酵素免疫測定法(ELISA)により、およびノーザンブロット解析によるPCI mRNAの評価により、各細胞株の培地中のPCI抗原を測定し、クローニングしたMDA-231細胞株の原型PCI、R354APCI、またはdegPCI発現を確認した。トランスフェクションした480の細胞株から、大量のPCIを発現する細胞株としてMDA-PCI 1およびMDA-PCI 2、大量のR354APCIを発現する細胞株としてMDA-R354APCI 1およびMDA-R354APCI 2、ならびに大量のdegPCIを発現する細胞株としてMDA-degPCI 1およびMDA-degPCI 2を選択し、実験に使用した。同様の手順に従い、DNA挿入物を含まないpRC/CMVをトランスフェクションしたMDA231細胞を調製して陰性対照として使用し、これらをMDA-Mock 1およびMDA-Mock 2と命名した。
培地中のPCIおよびuPA抗原レベルは、以前に記載したように(Wakita T. et al., Int. J. Cancer 108:516-23, 2004)、ポリクローナル抗PCI抗体および抗uPA抗体を用いた酵素免疫測定法(ELISA)により決定した。
RNAzol B試薬(TEL-TEST、テキサス州、フレンズウッド)を用いて、改変チオシアン酸グアニジン-フェノールクロロホルム技法により、MDA-231、MDA-PCI、MDA-R354APCI、MDA-degPCI、およびMDA-Mock細胞から全RNAを調製した(Chomczynski P. et al., Anal Biochem 162:156-59, 1987)。分光測定により全RNAを定量し、使用するまで-80℃で保存した。
MDA-231、MDA-PCI、MDA-R354APCI、MDA-degPCI、およびMDA-Mock細胞に由来する全RNA(20μg)をホルムアルデヒド-アガロースゲル中で電気泳動し、次いでGeneScreenナイロン膜(NEN Life Science、マサチューセッツ州、ボストン)に転写した。UV架橋した後、膜をランダムプライム32P標識全長ヒトPCI cDNAプローブ(Suzuki K. et al., J. Biol. Chem. 262:611-6, 1987)とハイブリダイズさせた。
2x塩化ナトリウム-コハク酸ナトリウム (SSC)[300 mM NaCl、30 mMコハク酸ナトリウム、pH 7.0]および0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む溶液で、次いで1x SSCおよび0.1% SDSを含む溶液で、最終的に0.1x SSCおよび0.1% SDSを含む溶液でそれぞれ20分間、連続して洗浄した後、膜をイメージングプレートに露光し、BAS-2000イメージアナライザー(富士写真フィルム、日本、東京)を用いて可視化した。ヒトPCI cDNAプローブとハイブリダイズさせた後、膜を0.5% SDS中で煮沸し、上記のように、32P標識ヒトグリセルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH) cDNAプローブ(Clontech、カリフォルニア州、パロアルト)とハイブリダイズさせた。
RT-PCRを行い、MDA-231細胞における少量のヒトPCIの発現を評価した。オリゴdTプライマーおよびSuperscript第一鎖cDNA合成キット(Invitrogen Corp.、カリフォルニア州、カールズバッド)を用いて、製造業者の説明に従い、MDA231細胞から抽出した全RNA(5μg)を逆転写した。ヒトPCIの増幅に用いたフォワードおよびリバースPCRプライマーの塩基配列は次のとおりである。配列番号:7と配列番号:8で示したプライマーは、それぞれPCIのcDNA(配列番号:1)の733〜752位、および1289〜1270位に対応している(Suzuki K., J. Biol. Chem. 262:611-6, 1987)
5'-GAGCAAGACTTCTACGTGAC-3'(配列番号:7)および
5'-CGGTTCACTTTGCCAAGGAA-3'(配列番号:8)
以下のプライマー対を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、シグナルペプチド配列を含まない野生型PCI cDNAを調製した(Saiki R.K. et al., Science 239:487-91, 1988)。配列番号:9および配列番号:1で示したプライマーは、それぞれPCIのcDNA(配列番号:1)の133〜152位、および1296〜1276位に対応している。下線を引いたヌクレオチドは、挿入されたBamH I部位を示す(Hayashi T. et al., Int. J. Hematol. 58:213-224, 1993)。
5'-GCGGATCCCCACCGCCACCACCCCCGGGA-3'(配列番号:9)、および
5'-GGCGGATCCTCAGGGGCGGTTCACTTTGCC-3'(配列番号:10)
5'-GGCGGATCCCCACCGCCACCACCCCCGGGA-3'(配列番号:11)、および
5'-GGCGGATCCTCACCTGAAAGTGAAGATTGTCC-3'(配列番号:12)
増幅した断片をpBluescript SKII(+)のBamH I部位にサブクローニングした後、これらのプラスミドのDNA配列をABI 310 DNAシーケンサー(ABI、カリフォルニア州、フォスターシティー)により確認した。
5'-GGCGGATCCCCACCGCCACCACCCCCCGGGA-3'(配列番号:13)、および
5'-GGCGGATCCTCAGGGGCGGTTCACTTTGCC-3'(配列番号:14)
DNAの塩基配列を確認した後、シグナルペプチドを含まない適切なR354APCI cDNAをpFastBac1-Msp-FcのBmH I部位に挿入した。10% FBSを含むグレース昆虫細胞培地(Invitrogen Corp.、カリフォルニア州、カールズバッド)で培養したSf-9細胞を用いて、製造業者の説明に従い(Invitrogen Corp.)、原型PCI、R354APCI、およびdegPCIを発現させるための組換えバキュロウイルスの作製および増幅を行った。無血清培地EX-CELL 400(JRH, BIOSCIENCES、米国、カンザス州、レネクサ)でHigh-Five細胞を培養し、これにバキュロウイルスを感染させ、27℃で72時間培養した。
各組換えPCI(原型PCI、R354APCI、およびdegPCI)の培養上清を回収し、10 mMベンズアミジンの存在下で最終濃度70%の(NH4)2SO4を用いて塩析することにより濃縮した。遠心分離後、沈殿物を回収し、10 mMベンズアミドを含む50 mM Tris-HCl、pH 7.5で溶解し、1 mMベンズアミドを含む50 mM Tris-HCl、pH 7.5に対して透析した。次に、各透析試料を0.22μmフィルター(MILLEX-HA)に通し、ベンズアミドを含まない同じ緩衝液で平衡化したHitrap CM FFの5 mlカラムに供した。平衡緩衝液でカラムを洗浄した後、0 M〜0.5 M NaClの720μl/分直線勾配でタンパク質を溶出し、1 ml画分を回収した。続いて、PCIを含む画分を収集し、50 mM NaClを含むTris-HCl緩衝液、pH 7.4に対して透析し、次に同じ緩衝液で平衡化したHiTrapヘパリン FFの1 mlカラムに供した。0.05 M〜0.5 M NaClの500μl/分直線勾配でタンパク質を溶出し、500μl画分を回収した。以下に記載するように、ウェスタンブロットにより各組換えPCIを検出した。組換えPCIを含む画分を収集し、VIVASPIN 6 ml CONCENTRATOR(VIVASCIENCE、ドイツ、ハノーバー)により濃縮および脱塩した。リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解した精製組換えPCIの一定分割量を、還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に供し、銀染色した。
SDS-PAGEはLaemmli法(Laemmli U.K. et al., Nature 227:680-5, 1970)に従って行った。電気泳動した後、ゲル内のタンパク質をニトロセルロース膜に電気的に転写した。次いで、膜上の原型PCI、R354APCI、およびdegPCIを、以下のようにウェスタンブロット解析により検出した。膜をまず抗PCIウサギIgG(非特許文献4)で処理し、次に抗ウサギIgGアルカリフォスファターゼコンジュゲートで処理した。ニトロセルロース膜上のバンドを、以前に記載したようにウェスタンブルー安定化基質を用いて可視化した。
様々な組換えPCIの活性は、以下の通りに決定した。APC(40μg/ml)10μlを、30 U/mlヘパリンを含むTBS 10μlおよび組換え原型PCI、R354APCI、およびdegPCI(40μg/ml)10μlと混合した。混合物を37℃で20分間インキュベートした後、0.2 mM S-2366、50 mM Tris-HCl(pH 8.0)、および0.1 M CsClを含む緩衝液250μlと混合した。混合物を室温で15分間インキュベートした後、100%酢酸25μlを添加して反応を停止した。モデル550マイクロプレートリーダー(Bio-RAD)を用いて、405 nmにおける吸光度を測定した。APCの段階希釈物を用いて検量線を作成し、残存APC活性を算出した。
Albini(Albini A. et al., Cancer Res. 47:3239-45, 1987)によって記載されている通りに、MDA-231細胞の侵襲性に関するアッセイを行った。簡潔に説明すると、Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫から抽出されたマトリゲル基底膜マトリックスを25μg/フィルターでコーティングしたトラックエッチングポリエチレンテレフタラート(PET)メンブレンフィルター(8μmポアサイズ)を備えた直径6.4 mmのトランスウェル(Becton Dickinson、カリフォルニア州、マウンテンビュー)を使用した。一晩乾燥させた後、8μmポリカーボネート膜を含む細胞培養インサートを、無血清DMEM中、37℃で2時間膨潤させた。野生型、原型PCI、R354APCI、degPCI、またはMock発現MDA-231細胞株をトリプシン処理により回収し、FBSおよびプロテイナーゼ阻害剤を含まないDMEMで洗浄した。
in vivoにおける様々なMDA-231細胞の転移能および増殖を評価するため、雄および雌の重症複合免疫不全マウス(SCID)(5週齢)を日本クレア(日本、大阪)から購入した。マウスは、12時間明/12時間暗の一定サイクルで飼育し、標準的な食餌および水を自由に得られるようにした。実験は三重大学動物実験審査委員会により承認され、国立保健研究所の実験動物指針に従って行った。
滅菌したDMEM 0.2 ml中のMDA-PCI、MDA-R354APCI、MDA-degPCI、またはMDA-Mock細胞(5 x 105 細胞)を、5週齢の雄SCIDマウスの側腹部に皮内注射した。週に1度ノギスを用いて腫瘍の大きさを測定し、腫瘍増殖をモニターした。以下の式に従って腫瘍容積を決定した:V = (L x W2)x 0.52、式中、Lは長さでありWは幅である。
サブコンフルエントなMDA-PCI、MDA-R354APCI、MDA-degPCI、またはMDA-Mock細胞をEDTA溶液を用いて回収し、無血清DMEMを用いて適切な密度(2.5 x 106 細胞/ml)に再懸濁した。次いで、MDA-PCI、MDA-R354APCI、MDA-degPCI、またはMDA-Mock細胞を、雌SCIDマウスの尾静脈に注射した。腫瘍を注射してから35日後、ペントバルビタールを用いてマウスを麻酔し、屠殺した。肺を摘出し、ホルムアルデヒド中性緩衝液中で固定した。拡大鏡を用いて、白い斑点として見える小塊をカウントした。
以前に記載されているように(McMahon G.A. et al., J. Biol. Chem. 276:33964-68, 2001)、MDA-PCI、MDA-R354APCI、MDA-degPCI、またはMDA-Mock細胞(2 x 106 細胞/ml)、VEGF、および様々な濃度のヘパリンを含むマトリゲル0.5 ml(9〜10 mg/ml;Becton Diskinson、ニュージャージー州、フランクリンレイク)を、各雄SCIDマウスの腹部正中に皮下注射した。3日後、マトリゲルプラグに向かう毛細血管を、デジタルカメラシステム(Olympus、ニューヨーク州、メルビル)を用いて可視化した。平行した実験では、ハンクス液に溶解した0.1%コラゲナーゼ1 mlでマトリゲルプラグを消化し、ヘモグロビンアッセイ法(Passaniti A. et al., Lab. Invest. 67:519-28, 1992)により新たな血管の数を定量した。
環を備えた開口プラスチックチューブ(直径8 cm、後部6 cm)に正方形のプラスチックラップを固定し、卵用ハンモックを準備した。受精卵(3日齢)を割り、内容物を卵用ハンモックに移し、胚が卵の表面に来るように操作した。無菌性を維持するために、ハンモックの上にペトリ皿の蓋を被せた。37℃の加湿インキュベーター内で、胚を維持した。フード内で、2%メチルセルロース50μlをペトリ皿上で一晩乾燥させ、メチルセルロースディスクを調製した。皿からディスクを剥がし、CAM上に載せ、次いで原型PCI、R354APCI、またはdegPCIをディスク上に添加した。デジタルカメラシステム(Olympus、ニューヨーク州、メルビル)およびNIH Image 1.61(NIH、メリーランド州、ベテスダ)により、CAMの画像を撮影した。倍率x 100のランダムな6視野にある無傷の血管の数をカウントした。
以前に記載されている通りに(Schnaper H.W. et al., J. Cell Physiol. 165:107-18, 1995)、マトリゲル上での毛管形成アッセイを行った。24ウェルプレートにマトリゲル(Becton Dickinson、ニュージャージー州、フランクリンレイク)を4℃でコーティングし、37℃で30分間重合させた。マトリゲルコーティングプレートに、HUVECを播種した(2 x 104 細胞/ウェル)。ヘパリンの非存在下において、細胞を原型PCI、R354APCIもしくはdegPCI(10μg/ml)と共に、またはこれらのPCIの非存在下で(対照)、インキュベートした。インキュベーションしてから6時間後、位相差顕微鏡下で毛管形成を視覚的に評価した。倍率x 100のランダムな6視野にある無傷の管の数をカウントした。
値はすべて、平均値±平均値の標準偏差として表した。どの実験も、少なくとも3回繰り返した。分散分析を用いて、有意な相違を評価した。P<0.05の値を、統計学的に有意であると見なした。
〔実施例1〕バキュロウイルス発現系により産生された組換え原型PCI、R354APCI、およびdegPCIの発現、精製、およびAPC阻害活性
バキュロウイルス発現系により発現された原型PCI、R354APCI、およびdegPCIを、Hitrap CM FFおよびHitrapヘパリンFFを用いて精製した。次いで、精製したタンパク質を、還元条件下でのウェスタンブロット解析により検出した。原型PCI、R354APCI、およびdegPCIのMWは、それぞれ約57 KDa、約57 KDa、および約54 KDaであった(図1)。これらの組換えPCIのAPC阻害活性についても試験した。R354APCIおよびdegPCIは、APCを阻害することがほとんどできなかった(図2)。
マトリゲルシステムにおける、MDA-231細胞の侵襲性に及ぼす原型PCIの効果。まず、ELISAおよびRT-PCR解析により、MDA-231細胞でのuPAおよびPCI発現を評価した。MDA-231細胞は、それぞれ470 ng/104 細胞/24時間のuPA、および58 ng/104 細胞/24時間のPCIを発現する。RT-PCR解析からも、MDA-231細胞によりuPA mRNAおよびPCI mRNAの両方が発現することが示された(データは示さず)。続いて、MDA-231細胞の浸潤活性に及ぼすPCIの効果を試験した。原型PCIはMDA-231細胞の浸潤活性を用量依存的にかつ有意に阻害したが(図3A)、BSAにはこの活性に対する効果がなかった(データは示さず)。さらに、抗ヒトPCI抗体は、MDA-231細胞浸潤のPCI誘導性阻害を用量依存的に阻止した(データは示さず)。浸潤アッセイにより、MDA-231細胞の侵襲性が抗uPA抗体(図3B)およびPAI-1(図3C)によって阻害され、uPAによって用量依存的に促進される(図3D)ことも示された。
MDA-231細胞の侵襲性に対するPCIの阻害活性がPCIのプロテアーゼ阻害活性に依存するのかどうかを評価するため、MDA-231細胞の侵襲性に及ぼす原型PCI、R354APCI、およびdegPCIの効果を評価した。図4に示すように、原型PCIはMDA-231細胞の侵襲性を有意に阻害したが、R354APCIもdegPCIもMDA-231細胞の浸潤を阻害しなかった。これらの知見から、MDA-231細胞のin vitro侵襲性を阻害するためには、PCIのプロテアーゼ阻害活性が必要であることが示唆される。
原型PCI、R354APCI、およびdegPCIの発現がMDA-231細胞の侵襲性、増殖、および転移能に影響を及ぼすかどうかを評価するため、2つのPCI発現MDA-231細胞株(MDA-PCI 1、MDA-PCI 2)、2つの変異体PCI発現MDA-231細胞株(MDA-R354APCI 1、MDA-R354APCI 2)、2つのdegPCI発現MDA-231細胞株(MDA-degPCI 1、MDA-degPCI 2)、および2つのMockトランスフェクション細胞株(MDA-Mock 1、MDA-Mock 2)を調製した。MDA-PCI、MDA-R354APCI、およびMDA-degPCI細胞株は各PCI mRNAの強力な発現を示したのに対し、トランスフェクションしていないMDA細胞およびMDA-Mock細胞株は原型PCIを弱く発現していた(データは示さず)。MDA-PCI 1およびMDA-PCI 2細胞により分泌されるPCIの量は、それぞれ10.3および12.5 ng/104 細胞/24時間であった。MDA-R354APCI 1およびMDA-R354APCI 2細胞により分泌されるR354APCIの量は、それぞれ20.0および12.0 ng/104 細胞/24時間であった。MDA-degPCI 1およびMDA-degPCI 2細胞より分泌される分解型PCIの量は、それぞれ3.0および1.1 ng/104 細胞/24時間であった。これらの細胞株の増殖速度およびuPA産生は、ほぼ同じであった(データは示さず)。
原型PCI、R354APCI、またはdegPCIの発現がMDA-231細胞の浸潤能に影響を及ぼすかどうかを判定するため、マトリゲルにおけるPCI、R354APCI、degPCI発現MDA-231細胞およびMockトランスフェクションMDA-231細胞の侵襲性をin vitroで評価した。図5に記載したように、2つのMDA-PCI細胞株の侵襲性は、MDA-Mock細胞株よりも有意に低かった。MDA-R354APCIおよびMDA-degPCI細胞株の侵襲性は、MDA-Mock細胞株と有意に異なっていなかった。これらの知見から、MDA-231細胞で発現したPCIが浸潤を抑制すること、およびMDA-231細胞の浸潤に対するPCIの阻害活性がそのプロテアーゼ阻害活性に依存していることが示唆される。これらのデータは、上記のMDA-231細胞の侵襲性に及ぼす組換えR354APCIおよびdegPCIの効果と一致する。
腫瘍増殖に及ぼすPCIのin vivo効果を評価するため、SCIDマウスの背側に移植したMock、PCI、R354APCI、またはdegPCI発現MDA-231細胞の増殖をモニターした。図6に示すように、MDA-PCI細胞株の増殖は、Mock発現細胞株よりも有意に低かった。驚いたことに、MDA-R354APCIおよびMDA-degPCI細胞株の増殖もまた、MDA-Mock細胞株よりも有意に低く、MDA-PCIの増殖と同じかまたはそれよりもわずかに低かった。これらの知見から、PCIがin vivoで腫瘍増殖を阻害すること、およびPCIのこの増殖阻害活性がそのプロテアーゼ阻害活性に依存しないことが示唆される。
MDA-Mock、MDA-PCI、MDA-R354APCI、またはMDA-degPCIを尾静脈から注射した後、転移性肺小塊の数をカウントすることにより、MDA-231細胞の転移能に及ぼすPCIの効果を試験した。図7Aおよび7Bに示すように、MDA-PCI、MDA-R354APCI、またはMDA-degPCI細胞株の肺小塊の数は、MDA-Mock細胞株のものよりも有意に少なかった。さらに、MDA-R354APCIおよびMDA-degPCI細胞株の転移性小塊は、MDA-PCI細胞株のものよりもわずかに大きかった。これらのデータから、PCIがin vivoで腫瘍転移を阻害すること、およびPCIの腫瘍転移に対する阻害活性がそのプロテアーゼ阻害活性に依存しないことが実証される。
VEGF、ヘパリン、および原型PCI、R354APCI、degPCI、またはMock発現MDA-231細胞を含むマトリゲルを皮下注射した動物を用いて、VEGF誘導性血管新生に及ぼすPCIの効果を試験した。図8Aから、PCI発現MDA-231細胞ならびにR354APCIおよびdegPCI発現MDA-231細胞を含むマトリゲルへの血管形成が、Mock発現MDA-231細胞よりも低かったことが示される。図8Bに示すように、MDA-PCI細胞、MDA-R354APCIまたはMDA-degPCI細胞株を含むマトリゲル中のヘモグロビンレベルは、MDA-Mock細胞株のレベルよりも有意に低かった。続いて、in vivoでのニワトリCAMアッセイ法により、様々な組換えPCIの抗血管新生活性を示した。図9に示すように、PCIはニワトリCAMアッセイにおいて血管の増殖を有意に阻害した。PCI処理したCAMは対照よりも有意に小さく、血管新生も少なかった。R354APCIおよびdegPCIもまた、血管の増殖を有意に阻害した。これらのデータから、PCIがin vivoで血管新生を阻害すること、およびこの阻害活性がそのプロテアーゼ阻害活性に依存しないことが示される。この結果は、in vivoアッセイで記載した観察と一致する。
HUVECのin vitro血管新生に及ぼす様々なPCIの効果を評価した。図10Aおよび10Bに示すように、原型PCI、R354APCI、およびdegPCIにより管形成が阻害された。さらに、抗ヒトPCI抗体は、管形成のPCI誘導性阻害を用量依存的に阻止した(データは示さず)。興味深いことに、R354APCIおよびdegPCIの血管新生阻害活性は、原型PCIよりも有意に強かった。これらのデータから、皮下に移植したR354APCIまたはdegPCI発現MDA-231細胞が、原型PCI発現MDA-231細胞よりもゆっくりと増殖する理由が説明され得る。
最近になって、本発明者らは、非腫瘍性腎組織と比較して腎癌細胞においてPCI発現が有意に減少していること、およびPCI発現が腎癌細胞株Caki-1細胞の浸潤活性を阻害することを実証した(Wakita T. et al., Int. J. Cancer 108:516-23, 2004)。また、PCI発現Caki-1細胞を用いて、腫瘍増殖および転移に及ぼすPCIの効果をin vivoで評価したが、野生型Caki-1細胞でさえSCIDマウスで増殖し得なかった。これに基づき、乳癌細胞株MDA-231細胞の侵襲性に及ぼすPCIの効果を試験した。MDA-231細胞は、大量のuPAおよび少量のPCIを発現していた。
さらに、本発明者らはいくつかの組換え変異体PCIを調製して、MDA-231細胞浸潤に及ぼすそれらの阻害活性を評価し、原型PCIがMDA-231細胞の浸潤活性を阻害することを見出した。R354APCI(反応部位変異体)およびプロテアーゼ分解型PCIのN末端断片は、APCに対する阻害活性を有さない。このことから、in vitro腫瘍細胞浸潤に対するPCIの阻害活性がそのプロテアーゼ阻害活性に依存することが示唆される。
血管新生と細胞増殖は癌の悪性化における重要なメカニズムである。したがって、これらのメカニズムに作用してそれを阻害する抗癌剤は、癌の悪性化の防止、あるいは悪性化した癌の治療に有用である。特に、プロテアーゼに対する阻害作用を持たないPCI誘導体は、PCIによるプロテアーゼ阻害作用に起因する副作用の軽減が期待できる。
Claims (24)
- プロテインCインヒビターまたはその誘導体を有効成分として含有する抗癌剤。
- 癌の増殖、癌の転移、および血管新生から選択された活性の少なくとも1つを抑制する請求項1に記載の抗癌剤。
- 癌が乳癌である請求項1または2に記載の抗癌剤。
- プロテインCインヒビターの誘導体のプロテアーゼ阻害作用がプロテインCインヒビターよりも低い請求項2に記載の抗癌剤。
- プロテインCインヒビターの誘導体が、プロテインCインヒビターのヘパリン結合領域を含む蛋白質である請求項4に記載の抗癌剤。
- プロテインCインヒビターの誘導体が、ヘパリンおよびヘパリン様グリコサミノグルカンのいずれかまたは両方との結合能を有する蛋白質である請求項5に記載の抗癌剤。
- 癌の浸潤を抑制する請求項1に記載の抗癌剤。
- プロテインCインヒビターの誘導体がプロテアーゼ阻害作用を有する請求項7に記載の抗癌剤。
- プロテインCインヒビターまたはその誘導体を投与する工程を含む、癌の治療方法。
- 癌の増殖、癌の転移、および血管新生から選択された活性の少なくとも1つが抑制される、請求項9に記載の方法。
- 癌が乳癌である請求項9または10に記載の方法。
- プロテインCインヒビターの誘導体のプロテアーゼ阻害作用がプロテインCインヒビターよりも低い、請求項10に記載の方法。
- プロテインCインヒビターの誘導体が、プロテインCインヒビターのヘパリン結合領域を含む蛋白質である、請求項12に記載の方法。
- プロテインCインヒビターの誘導体が、ヘパリンおよびヘパリン様グリコサミノグルカンのいずれかまたは両方との結合能を有する蛋白質である、請求項13に記載の方法。
- 癌の浸潤が抑制される、請求項9に記載の方法。
- プロテインCインヒビターの誘導体がプロテアーゼ阻害作用を有する、請求項15に記載の方法。
- 抗癌剤の製造のためのプロテインCインヒビターまたはその誘導体の使用。
- 抗癌剤が、癌の増殖、癌の転移、および血管新生から選択された活性の少なくとも1つを抑制する、請求項17に記載の使用。
- 癌が乳癌である、請求項17または18に記載の使用。
- プロテインCインヒビターの誘導体のプロテアーゼ阻害作用がプロテインCインヒビターよりも低い、請求項18に記載の使用。
- プロテインCインヒビターの誘導体が、プロテインCインヒビターのヘパリン結合領域を含む蛋白質である、請求項20に記載の使用。
- プロテインCインヒビターの誘導体が、ヘパリンおよびヘパリン様グリコサミノグルカンのいずれかまたは両方との結合能を有する蛋白質である、請求項21に記載の使用。
- 抗癌剤が、癌の浸潤を抑制する、請求項17に記載の使用。
- プロテインCインヒビターの誘導体がプロテアーゼ阻害作用を有する、請求項23に記載の使用。
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