JPWO2006093071A1 - βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する抗イディオタイプ抗体、およびその利用 - Google Patents
βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する抗イディオタイプ抗体、およびその利用 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2006093071A1 JPWO2006093071A1 JP2007505910A JP2007505910A JPWO2006093071A1 JP WO2006093071 A1 JPWO2006093071 A1 JP WO2006093071A1 JP 2007505910 A JP2007505910 A JP 2007505910A JP 2007505910 A JP2007505910 A JP 2007505910A JP WO2006093071 A1 JPWO2006093071 A1 JP WO2006093071A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- antibody
- polypeptide
- amino acid
- scfv
- acid sequence
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K16/00—Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
- C07K16/42—Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against immunoglobulins
- C07K16/4208—Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against immunoglobulins against an idiotypic determinant on Ig
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P31/00—Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
- A61P31/10—Antimycotics
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K39/00—Medicinal preparations containing antigens or antibodies
- A61K2039/505—Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising antibodies
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K2317/00—Immunoglobulins specific features
- C07K2317/60—Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments
- C07K2317/62—Immunoglobulins specific features characterized by non-natural combinations of immunoglobulin fragments comprising only variable region components
- C07K2317/622—Single chain antibody (scFv)
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K2317/00—Immunoglobulins specific features
- C07K2317/70—Immunoglobulins specific features characterized by effect upon binding to a cell or to an antigen
- C07K2317/76—Antagonist effect on antigen, e.g. neutralization or inhibition of binding
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Immunology (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Communicable Diseases (AREA)
- Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Oncology (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- General Chemical & Material Sciences (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Pharmacology & Pharmacy (AREA)
- Animal Behavior & Ethology (AREA)
- Public Health (AREA)
- Veterinary Medicine (AREA)
- Peptides Or Proteins (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
- Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
Abstract
Description
さらに本発明者らは、本発明による抗体がin vitro における抗真菌作用だけではなく、カンジダ・アルビカンスを感染させたマウス感染動物モデルを使った実験により、ScFv抗体を静脈内投与することにより、実際に体内で増殖中のカンジダ・アルビカンスに対しても強い抗菌作用を発揮することを確認した。このことは、本発明の抗体が血中に投与された場合であっても、強い抗菌作用を有することを実証するものである。即ち、本発明の抗体は、in vivoにおいても実際に抗真菌作用を有することが証明された。
〔1〕 βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する、抗イディオタイプ抗体、
〔2〕 βグルカン合成酵素阻害活性を有する、〔1〕に記載の抗イディオタイプ抗体、
〔3〕 抗HM-1キラートキシン抗体と結合親和性を有する、〔1〕または〔2〕に記載の抗イディオタイプ抗体、
〔4〕 抗HM-1キラートキシン抗体が、nmAb-KTと称するモノクローナル抗体である、〔3〕に記載の抗イディオタイプ抗体、
〔5〕 nmAb-KTに対して3.0x107M-1以上の親和定数(Ka)を有する、〔4〕に記載の抗イディオタイプ抗体、
〔6〕 HM-1キラートキシンの抗原決定基の内部像を有する、〔1〕〜〔5〕にいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体、
〔7〕 カンジダ・アルビカンスに対して抗真菌活性を有する、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体、
〔8〕 重鎖可変領域が配列番号:5に記載のアミノ酸配列を含む配列からなり、軽鎖可変領域が配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む配列からなる、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体、
〔9〕 重鎖可変領域が配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域が配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなる、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体、
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体の可変領域を含む、抗体の断片、
〔11〕 重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む一本鎖ポリペプチド(ScFv)である、〔10〕に記載の抗体の断片、
〔12〕 βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有するポリペプチドであって、以下の(1)および(2)に記載のポリペプチドが、リンカーによって連結された構造のポリペプチド、
(1)配列番号:5に記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(2)配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
〔13〕 βグルカン合成酵素阻害活性を有する、〔12〕に記載のポリペプチド、
〔14〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の抗体、〔10〕もしくは〔11〕に記載の抗体の断片、または〔12〕もしくは〔13〕に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、抗真菌剤、
〔15〕 真菌がβグルカン合成酵素を有する真菌である、〔14〕に記載の抗真菌剤、
〔16〕 カンジダ・アルビカンスに対して抗真菌活性を有する、〔15〕に記載の抗真菌剤、
〔17〕 〔10〕もしくは〔11〕に記載の抗体の断片、または、〔12〕もしくは〔13〕に記載のポリペプチドをコードする核酸、
〔18〕 〔17〕に記載の核酸を有するベクター、
〔19〕 〔17〕に記載の核酸、または〔18〕に記載のベクターを含む宿主細胞、
〔20〕 以下の工程(a)〜(c)を含む、βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有するポリペプチドの製造方法、
(a)〔18〕に記載のベクターを細胞へ導入する工程、
(b)前記細胞を培養する工程、
(c)前記細胞培養物からβグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有するポリペプチドを有するポリペプチドを回収する工程
を、提供するものである。
さらに本発明は、以下に関する。
〔21〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の抗体、〔10〕もしくは〔11〕に記載の抗体の断片、または〔12〕もしくは〔13〕に記載のポリペプチドの、抗真菌剤(防カビ剤)もしくは真菌症治療薬の製造における使用、
〔22〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の抗体、〔10〕もしくは〔11〕に記載の抗体の断片、または〔12〕もしくは〔13〕に記載のポリペプチドを個体(患者等)へ投与(例えば、血中投与)、もしくは患部へ塗布する工程を含む、真菌症の治療方法。
〔23〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の抗体、〔10〕もしくは〔11〕に記載の抗体の断片、または〔12〕もしくは〔13〕に記載のポリペプチドを、真菌(カビ)を防止もしくは除去させたい対象物へ塗布、混合もしくは接触させる工程を含む、真菌(カビ)を防止もしくは除去する方法、
〔24〕〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の抗体、〔10〕もしくは〔11〕に記載の抗体の断片、または〔12〕もしくは〔13〕に記載のポリペプチド、および、薬学的に許容された担体を含んでなる組成物
(1)カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)株に対して抗真菌活性を有する
(2)抗HM-1抗体nmAb-KTと結合活性(結合親和性)を有する
(3)βグルカン合成酵素阻害活性を有する
(1)配列番号:5に記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(2)配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(2)マウスへ注射→
(3)脾臓細胞から、抗体H&L鎖mRNAを抽出、cDNA化(H鎖DNA-リンカーL鎖DNAライブラリーを構築)→
(4)cDNAをファージDNAへ組み込んだファージライブラリーを構築→
(5)大腸菌中でファージタンパクを発現→
(6)HM-1中和モノクローン抗体(nmAb-KT)を指標にしたパンニング・スクリーニングを繰り返し、中和抗体と強く結合するファージクローンを選別→
(7)個別クローンによるタンパク発現と、目的とするファージの選別→
(8)選ばれたファージのDNAの塩基配列・アミノ酸配列を解析し、H鎖、L鎖の確認→
(9)抗体(ペプチド)タンパクの発現並びに精製→
(10)Sc酵母あるいは病原真菌を用いての抗菌力の測定
また本発明は、本発明の抗体を有効成分とする、カビ等の病原性真菌に対するタンパク質性抗生物質に関する。
(a)本発明のベクターを細胞へ導入する工程、
(b)前記細胞を培養する工程、
(c)前記細胞培養物からHM-1キラートキシン活性(特に、βグルカン合成酵素阻害を介する抗真菌活性)を有するポリペプチドを回収する工程
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
また本発明は、本発明の抗体、該抗体の断片、または本発明のポリペプチドを個体(例えば、患者等)へ投与、もしくは患部へ塗布する工程を含む、真菌症の治療もしくは予防方法を提供する。
本発明の予防もしくは治療方法の対象となる個体は、真菌症を発症し得る生物であれば特に制限されないが、好ましくはヒトである。
個体への投与は、一般的には、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行うことができる。投与(塗布)量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者(医師、獣医師、薬剤師等)であれば適当な投与(塗布)量を適宜選択することが可能である。
さらに本発明は、本発明の抗体、該抗体の断片、または本発明のポリペプチドを、真菌(カビ)を防止もしくは除去させたい対象物へ塗布、混合もしくは接触させる工程を含む、真菌(カビ)を防止もしくは除去する方法に関する。
上記対象物とは、例えば、真菌(カビ)が繁殖・付着した物質、あるいは、防カビ効果を期待する素材等を挙げることができる。
さらに本発明は、本発明の抗体、該抗体の断片、または本発明のポリペプチドの、抗真菌剤(防カビ剤)もしくは真菌症治療薬の製造における使用に関する。
抗イディオタイプ抗体は、マウスをイディオタイプ免疫原(nmAb-KT)で免疫化することによって作製した。nmAb-KTは、酵母ウィリオプシス・サチュルヌスvar.mrakiiから産生されるキラートキシンの活性をインビトロで中和するモノクローナル抗体であり、標準的なハイブリドーマ技術によって作製した(Yamamotoら,1986,FEBS letter)。雌Balb/cマウス(3週齢、概算体重10グラム)を、0日目および14日目に、nmAb-KT 50μgと完全フロイントアジュバント(CFA)(1/1:v/v)で皮下に免疫化し、その後に、28日目、42日目、および56日目に、nmAb-KTと不完全フロイントアジュバント(IFA)を腹腔内に追加免疫注射した。最後の追加免疫注射の3日後に、マウスを屠殺し、脾臓を取り出した。
RNA抽出キットを使用し、製造業者(ファルマシア(Pharmacia))により提供されたプロトコールに従って、総RNAを過免疫マウスから単離し、エタノール沈殿によって精製した。ポリ(AT)トラクトシステム(poly(AT) tract system)(プロメガ(Promega))を用いて、総RNAからmRNAを単離した。
組換えファージ抗体システム-ScFvモジュール(recombinant phage antibody system-ScFv module)(ファルマシア)を使用し、製造業者により提供されたプロトコールを用いて、抗体可変領域遺伝子を構築した。簡潔に述べると、過免疫マウスからのmRNAをランダムプライムcDNA合成に使用した。マウスIgG重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)の遺伝子断片を、これらの配列に特異的な一組のプライマーを使用し、テンプレートとしてcDNAを使用してPCR増幅した。94℃で5分間変性した後、5単位のTaq DNAポリメラーゼを添加し、その後に、94℃1分、55℃1分、および72℃2分の40サイクルを行った。増幅されたVH遺伝子およびVL遺伝子をゲル電気泳動およびエタノール沈殿によって精製した。
ScFv遺伝子のcDNAは、上記nmAb-KTで免疫化された過免疫マウスの脾臓から単離されたmRNAからの逆転写によって作製した。抗体遺伝子レパートリーの重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)に対応する遺伝子断片をPCR増幅した。VHおよびVLは両方とも、それぞれ、340bpおよび325bpの鮮明なバンドを生じた。
nmAb-KTと結合するScFvをファージ粒子の表面に発現するファージ(以下ScFvファージと略す)をレスキューするために、ファージ培養液50μlを、2%グルコースおよび100μg/mlアンピシリンを含む2×YT-AG培地50ml中へ加え、OD600が0.5〜0.7の値に達するまで37℃で振盪した。M13 KO7(ファルマシア)ヘルパーファージを20:1(ファージ粒子:細菌細胞数)のMOIで添加し、振盪せずに37℃で1時間放置した。細胞を遠心分離で収集し、100μg/mlアンピシリンおよび50μg/mlカナマイシンを含む新鮮な2×YT-AK培地に懸濁し、振盪しながら30℃で一晩インキュベートした。細菌細胞を遠心分離によって除去し、1/5体積のPEG-NaCl(20%PEG8000,2.5M NaCl)を添加し上清中のファージ粒子を精製および濃縮し、氷上で30分間インキュベートし、4℃で30分間、10,000gで遠心分離した。上清を捨て、ペレットをPBS 5mlに再懸濁した。ファージ懸濁液を再度、PEG-NaClで氷上で30分間処理し、前記のように遠心分離した。このあと、上清を捨て、ペレットを10%グリセロールを含むPBS 2mlに再懸濁し、その後、4℃で保存した。
nmAb-KTに特異的に結合するScFvを産生するファージ(ScFvファージ)を選択的に捕獲するために、以下に述べるパンニングスクリーニングを数回繰り返して実施した。ScFvポリペプチドライブラリーを表面上に発現する組換えファージを、ヘルパーファージを用いるレスキューによって産生し、固定化したnmAb-KTに対する結合を利用してスクリーニングし、濃縮した。
以上のようにして得られた組換えScFvファージを、これを含む大腸菌の個々のクローンからヘルパーファージを用いる方法によりレスキューし、更に、下記のようにELISA法によってnmAb-KTと結合する能力差を指標にして、選抜スクリーニングを行った。マイクロタイターウェルを前記のようにnmAB-KTでコーティングし、PBSに溶解した3%ドライミルク液を用いて37℃1時間ブロックした。洗浄後、組換えScFvファージをウェル内へ入れ37℃で2時間インキュベートし、次いで、PBS-Tで6回洗浄した。ウェル内でnmAB-KT と結合しているScFvファージは、HRP結合抗M13ファージ抗体(ファルマシア)(1:1000)と37℃で1時間インキュベートすることによって検出した。その際、ウェルを徹底的に洗浄した後、クエン酸に溶解したABTSを基質として添加することによって発色結合したウイルスを発色させ、吸光度をA405nmで測定した。
可溶性ScFv抗体を作製するために、4回のパンニングスクリーニング後に選抜されたファージを、ScFvコーディング領域とM13遺伝子IIIフラグメント領域との間にあるアンバー停止コドンを認識する非サプレッサー大腸菌HB2151(アマシャムファルマシアバイオサイエンス)に感染させた。大腸菌は、OD600が0.5〜0.9に達するまで、30℃で振盪培養した。ファージミドを含む増殖期大腸菌を1mMイソプロピルβ,-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)とインキュベートし、さらに22℃で16時間インキュベートすることによりScFv抗体フラグメントのタンパク合成を行い、これにより、ペリプラズムに分泌される可溶型ScFv抗体フラグメントを産生させることが出来た。
マイクロタイターウェルを、前記のように10μg/mlのnmAb-KTまたは1F1 mAbまたは4A2 mAbおよびBSA(負の対照)でコーティングし、それぞれPBSに溶解した3%ドライミルク液により室温で1時間ブロックした。洗浄後、可溶性ScFv抗体をウェル内に入れ、室温で2時間インキュベートし、この後、ウェルは、PBS-Tで3回洗浄した。ScFvのカルボキシ末端には小さなペプチドエピトープ(E-Tag)が組み込まれているので、結合したScFv抗体は、HRP結合抗E-Tag抗体(ファルマシア)(1:1000)と室温で1時間インキュベートした後、先に述べたELISA法により検出することができる。この結果、ScFv抗体を可溶化した形で大腸菌から抽出した事を確認した。
ScFv抗体をコードするファージ遺伝子を含む大腸菌HB2151を、1mM イソプロピルβ,-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を含む2×YT培地中で22℃で16時間増殖させることによって、可溶性ScFv抗体の産生を誘導した。ScFv抗体は、先に述べた方法により大腸菌HB2151細胞のペリプラズムから抽出し、抗E-Tag N-ヒドロキシスクシンイミドで活性化したセファロースカラム(ハイトラップ抗E-Tag(Hi trap anti-E-Tag)ファルマシア)を用いたアフィニティクロマトグラフィーによって精製することが出来た。精製されたScFv抗体の収率は1.0〜3.0mg/lであった。
アフィニティクロマトグラフィーによって得られた精製ScFv抗体の純度を確かめるために、クロマトグラフィーの溶出画分についてウェスタンブロッティング分析を行った。ScFv抗体タンパク質の確認は15%SDS-PAGEで分離した後に、クマシーブリリアントブルーもしくは硝酸銀による染色により行った。ウェスタンブロット分析の際は、ScFv抗体をゲル電気泳動後、イムノトランスファー緩衝液を含むセミドライ装置(1時間,0.8mA/cm2)を用いて、ニトロセルロースフィルター(プロブロット(ProBlott)膜、アプライドバイオシステム(Applied Biosystems))に転写した。膜は、PBSに溶解した3%ドライミルク液により室温で1時間ブロックし、その後、HRP結合抗E-Tag抗体(ファルマシア)と1時間インキュベートし、膜上のScFvタンパク質を明らかにした。ゲル電気泳動の際の分子量マーカーとしては、予め着色された広範囲標準(broad range standard)(バイオラド(BIO-RAD))4μlを使用して、ScFvの分子量を測定した。また、ScFv抗体のタンパク質濃度はBCA-ペプチド結合法を用いて測定した。
ELISAによりnmAb-KTと強い結合反応性を示す9個のクローンについて、VH鎖およびVL鎖をコードするヌクレオチド配列を決定した。CEQ 2000ダイターミネーターサイクルシークエンシングキット(CEQ 2000 Dye Terminator Cycle Sequencing kit)(ベックマンコールター(BECKMAN COULTER))を用いて、選択されたクローンの核酸配列決定を行い、産物をCEQTM 2000XL DNA分析システムによって分析した。プライマーは、pCANTAB 5EベクターのR1、S3、S4、およびS6配列決定用プライマー(ファルマシア)を用いた。配列アラインメントおよび操作はDNASISおよびGenetyxソフトウェアによって行った。
4種類のScFv-A1、ScFv-A2、ScFv-A3、およびScFv-A4について、先に述べた方法により精製し、生化学的特徴について調べた。その結果、4種類のScFv抗体はすべて分子量29〜30Kdaであり、nmAb-KTと特異的に結合する活性を持つことがわかった。
精製した4種類のScFv-A1、ScFv-A2、ScFv-A3、およびScFv-A4について、これらのScFvは、酵母サッカロミセスのβグルカン合成酵素を阻害することがわかった。βグルカン合成酵素は増殖期の酵母細胞から抽出し(Yamamoto T. et al., FEBS Lett. 1986; 197: 50-54)、基質であるUDPG (Uridine diphosphate glucose)を含む反応液中におけるβグルカンの合成量を山本らの報告に従い(Yamamoto T. et al., FEBS Lett. 1986; 197: 50-54)、発色反応によって測定した。その際、精製したHM-1をポジティブコントロール(陽性対称)として、また、BSA(牛アルブミンタンパク)をネガテェブコントロール(陰性対称)として用いて比較した。この測定条件下において、ScFv-A1、ScFv-A2、ScFv-A3、およびScFv-A4は、HM-1と同等のβグルカン合成酵素阻害活性を示した(図3)。また同様の実験結果は、放射性UDPGを用いたTakasukaらの方法(Takasuka T. et al., Cell Mol. Biol. Res. 1995; 41: 575-581)による実験からも得られている。
表面プラズモン共鳴(SPR)分析を用いて、精製ScFv抗体の結合特異性および速度論パラメータを測定した。
CFUアッセイ(colony forming unit assay)によって、精製ScFvクローンの抗カンジダ活性を測定した。
上記実験より、通常の酵母(サッカロミセス)はもちろん、既存の抗真菌剤では効きめが弱いカンジダ・アルビカンス株に対しても、本発明のScFvは、有効な抗真菌作用を発揮することが示された。即ち、本発明のScFvは、カンジダ・アルビカンス株までも殺傷し得る強力な抗真菌活性を有することが実証された。
CD-1マウス (オス、4週齢)(合計4匹)に各1x105細胞のカンジダ・アルビカンスTUA6株を尾静脈から接種し感染させた。これらのカンジダ感染マウス2匹について、0、24、48時間後、上記「実施例8」で精製したScFvA-3抗体(360μg)を200μlのPBS液に溶かした溶液を尾静脈から注射した。一方、抗体を含まないPBS液200μlを、感染マウス2匹に対して同様に0、24、48時間後注射し、以下に記述する方法で、臓器中に生育するカンジダ菌を測定する際のポジティブコントロールとした。
Claims (20)
- βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する、抗イディオタイプ抗体。
- βグルカン合成酵素阻害活性を有する、請求項1に記載の抗イディオタイプ抗体。
- 抗HM-1キラートキシン抗体と結合親和性を有する、請求項1または2に記載の抗イディオタイプ抗体。
- 抗HM-1キラートキシン抗体が、nmAb-KTと称するモノクローナル抗体である、請求項3に記載の抗イディオタイプ抗体。
- nmAb-KTに対して3.0x107M-1以上の親和定数(Ka)を有する、請求項4に記載の抗イディオタイプ抗体。
- HM-1キラートキシンの抗原決定基の内部像を有する、請求項1〜5にいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体。
- カンジダ・アルビカンスに対して抗真菌活性を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体。
- 重鎖可変領域が配列番号:5に記載のアミノ酸配列を含む配列からなり、軽鎖可変領域が配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列を含む配列からなる、請求項1〜7のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体。
- 重鎖可変領域が配列番号:5に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、軽鎖可変領域が配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなる、請求項1〜7のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の抗イディオタイプ抗体の可変領域を含む、抗体の断片。
- 重鎖可変領域と軽鎖可変領域を含む一本鎖ポリペプチド(ScFv)である、請求項10に記載の抗体の断片。
- βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有するポリペプチドであって、以下の(1)および(2)に記載のポリペプチドが、リンカーによって連結された構造のポリペプチド。
(1)配列番号:5に記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド
(2)配列番号:6〜9のいずれかに記載のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が付加、欠失もしくは置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド - βグルカン合成酵素阻害活性を有する、請求項12に記載のポリペプチド。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の抗体、請求項10もしくは11に記載の抗体の断片、または請求項12もしくは13に記載のポリペプチドを有効成分として含有する、抗真菌剤。
- 真菌がβグルカン合成酵素を有する真菌である、請求項14に記載の抗真菌剤。
- カンジダ・アルビカンスに対して抗真菌活性を有する、請求項15に記載の抗真菌剤。
- 請求項10もしくは11に記載の抗体の断片、または、請求項12もしくは13に記載のポリペプチドをコードする核酸。
- 請求項17に記載の核酸を有するベクター。
- 請求項17に記載の核酸、または請求項18に記載のベクターを含む宿主細胞。
- 以下の工程(a)〜(c)を含む、βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有するポリペプチドの製造方法。
(a)請求項18に記載のベクターを細胞へ導入する工程、
(b)前記細胞を培養する工程、
(c)前記細胞培養物からβグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有するポリペプチドを有するポリペプチドを回収する工程
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005055098 | 2005-02-28 | ||
JP2005055098 | 2005-02-28 | ||
PCT/JP2006/303551 WO2006093071A1 (ja) | 2005-02-28 | 2006-02-27 | βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する抗イディオタイプ抗体、およびその利用 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2006093071A1 true JPWO2006093071A1 (ja) | 2008-08-07 |
Family
ID=36941100
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007505910A Pending JPWO2006093071A1 (ja) | 2005-02-28 | 2006-02-27 | βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する抗イディオタイプ抗体、およびその利用 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPWO2006093071A1 (ja) |
WO (1) | WO2006093071A1 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112940114B (zh) * | 2021-02-09 | 2022-07-12 | 丹娜(天津)生物科技股份有限公司 | 一种抗真菌1,3-β-D-葡聚糖单克隆抗体及其应用 |
Family Cites Families (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
GB0210783D0 (en) * | 2002-05-10 | 2002-06-19 | Polonelli Luciano | Anti-microbial polypeptides |
-
2006
- 2006-02-27 WO PCT/JP2006/303551 patent/WO2006093071A1/ja active Application Filing
- 2006-02-27 JP JP2007505910A patent/JPWO2006093071A1/ja active Pending
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2006093071A1 (ja) | 2006-09-08 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6585106B2 (ja) | 抗体の血中動態を制御する方法 | |
US20200002429A1 (en) | Anti-nr10 antibody and use thereof | |
RU2487136C2 (ru) | Антитело против nr10 и его применение | |
TWI801862B (zh) | 抗tigit的抗體、其製備方法和應用 | |
TW200810778A (en) | Preventive or remedy for inflammatory disease | |
JP7212391B2 (ja) | a-syn/IGF1Rに対する二重特異抗体およびその用途 | |
TWI432209B (zh) | Anti-NR10 antibody and its use | |
JP2020532285A (ja) | 補体成分c5または血清アルブミンと結合するポリペプチドおよびその融合タンパク質 | |
CN110945029A (zh) | 用于治疗的药剂、用途和方法 | |
CN113660944A (zh) | 用于补体相关疾病的融合蛋白构建体 | |
JPWO2007023782A1 (ja) | キラートキシン様タンパク質に対する中和抗体、およびその利用 | |
JPWO2006093071A1 (ja) | βグルカン合成酵素を有する真菌に対して抗真菌活性を有する抗イディオタイプ抗体、およびその利用 | |
JP2023516257A (ja) | 粘膜ワクチンの送達のための免疫グロブリン単一ドメイン抗体 | |
JP6579097B2 (ja) | 新規ヒトtlr2及びヒトtlr4に結合する二重特異的抗体 | |
WO2022179483A1 (zh) | Siglec-15结合蛋白的制备及其用途 | |
WO2024017331A1 (zh) | 一种抗肾上腺髓质素非中和抗体、其制备方法及应用 | |
KR20240046557A (ko) | 항-b7-h4 항체 및 이의 제조 방법과 용도 | |
JP2023519007A (ja) | Aregに対する抗体及びその用途 | |
BR112014021080B1 (pt) | Polipeptídeo, seu método de fabricação, célula hospedeira bacteriana, de levedura ou fúngica, composição farmacêutica, kit de diagnóstico, e método de diagnóstico | |
BR122021000901B1 (pt) | Polipeptídeo, seu método de fabricação, célula hospedeira bacteriana, de levedura ou fúngica, composição farmacêutica, kit de diagnóstico, e método de diagnóstico | |
BR122021000924B1 (pt) | Polipeptídeo, seu método de fabricação, célula hospedeira bacteriana, de levedura ou fúngica, composição farmacêutica, kit de diagnóstico, e método de diagnóstico |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20070803 |
|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20090216 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090225 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20090216 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090518 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090225 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090518 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20090225 |
|
RD05 | Notification of revocation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7425 Effective date: 20090615 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20110913 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20120124 |