JPWO2006025526A1 - Ctl誘導能を獲得した樹状細胞の製造方法 - Google Patents

Ctl誘導能を獲得した樹状細胞の製造方法 Download PDF

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Abstract

樹状細胞の抗原クロスプレゼンテーション機構の解明に取り組み、樹状細胞に取り込まれた外来抗原がポリユビキチン化を受けた後にプロテアソームによる分解されることを明らかにした。クロスプレゼンテーションにポリユビキチン化が関与しているとの新規知見に基づき、複数の方法でポリユビキチン化の促進を図ったところ、抗原提示の促進が確認された。これらの方法は、CTL活性化誘導に有効な樹状細胞の製造を可能にする。

Description

本発明は、樹状細胞によるクロスプレゼンテーション機構に基づいた、CTL誘導能を獲得した樹状細胞の製造方法に関する。
生体で細胞が癌化すると、本来、免疫防御機構が働いて癌化した細胞は排除される。癌化した細胞が免疫防御機構による監視の目を逃れると、癌が発生すると考えられている。癌化した細胞を排除するのは、主として細胞性免疫である。細胞性免疫機構は、適当な手法によって活性化されれば、一度発生した癌に対しても強くアタックし癌を排除する作用を示すことができる。細胞性免疫の活性化は癌細胞の効率的除去方法となり得るが、細胞性免疫の活性化は免疫寛容の誘導と背中合わせであり、いかにして標的に対応した特異的、効率的な活性化を図るかということが、腫瘍免疫の最大の課題となっている。
細胞性免疫は、獲得免疫の一つである。獲得免疫は液性免疫と細胞性免疫の2種類に大別される。液性免疫とは細菌や寄生虫等の感染に対して抗体を介して行われる免疫反応で、抗体産生を行うB細胞が主に活性化される。一方の細胞性免疫は、癌化した細胞やウイルスに感染した細胞を直接破壊する反応で、CD8の細胞傷害性T細胞が活性化される。
細胞障害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte;CTL)は、ウイルス感染細胞や癌細胞等の標的細胞を特異的に攻撃し、細胞性免疫の中心的役割を果たす細胞である。CTLは、パーフォリンやグランザイム等を含む細胞溶解性顆粒の放出により、あるいはCTL表面のFasLと標的細胞表面のFasとの相互作用により、標的細胞のアポトーシスを誘導する。CTLがこのような細胞障害活性を発揮するには、CD8+T細胞が活性化されなくてはならない。
T細胞は、自己の細胞膜上に発現したT細胞受容体(TcR)を使って、他の細胞上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と呼ばれる一群の蛋白質複合体を認識する。MHC遺伝子にコードされるMHC分子は、細胞内で蛋白質が分解されて生じたオリゴペプチドと複合体を形成して細胞表面に発現する。
MHC分子にはクラスIとクラスIIの2種類がある。MHC IIはα鎖とβ鎖からなり、抗原提示細胞にのみ発現し、主に細胞外から取り込まれた抗原(感染病原体など)由来のペプチドをヘルパーT細胞に提示し、液性免疫の発現に必須の役割をはたす。
これに対し、主鎖と副鎖(β2ミクログロブリン)からなるMHC Iは、ほとんど全ての有核細胞の細胞膜に発現している。一般に、MHC Iは自己の細胞内にある蛋白質の分解産物に由来するオリゴペプチドを結合しており、細胞性免疫における自己の標識となっている。自己非自己の識別において、MHCクラスI分子が自己の蛋白由来のペプチドを提示している場合には、自己と認識され、細胞性免疫反応は誘導されない。一方、非自己蛋白由来(例えば、癌化した細胞やウイルス感染した細胞、あるいは移植された臓器など)のペプチドを提示している場合には細胞性免疫反応を誘導する。
細胞性免疫を活性化するには、CD8抗原陽性T細胞に対して、非自己由来のペプチドが共刺激因子と共にMHC I上に提示されることが必須である。この活性化が効率的に行われない場合、非自己を認識するCD8+T細胞が存在していても、非自己抗原を提示している細胞に対して細胞傷害性を発揮する活性化された細胞(CTL)へと分化することができない。
樹状細胞は、マクロファージやB細胞とともに、プロフェッショナル抗原提示細胞と称されるが、外来抗原の抗原提示において、とりわけ重要かつ特別な役割を果たす細胞である。樹状細胞は、癌化した細胞やウイルスに感染した細胞の死骸や断片を取り込んで、それらに含まれるタンパク質をMHCクラス I上に提示する。すなわち、マクロファージやB細胞では外来抗原はMHCクラスII分子上に提示されるが、樹状細胞では外来抗原をMHCクラスII分子に加えてMHCクラス Iに提示される。この現象は、抗原のクロスプレゼンテーションと呼ばれており、樹状細胞に特有のものである。樹状細胞による外来抗原のクロスプレゼンテーションは、感染細胞や癌細胞の除去において決定的に重要な役割を担っている。
樹状細胞に取り込まれた外来抗原タンパク質は、運搬・分解処理され、抗原タンパク質由来のペプチドがMHCクラスIと複合体を形成し、細胞膜に発現するが、その細胞機構は一部が解明されているに過ぎない。これまでのところ、樹状細胞によるクロスプレゼンテーションの細胞機構は、下記のように説明されている。まず、癌細胞やウイルス感染細胞由来の抗原タンパク質は、エンドサイトーシス(ファゴサイトーシス、免疫複合体の取り込みなどをも含む)によって樹状細胞の細胞内腔(膜によってとり囲まれたコンパートメント)に取り込まれる。取り込まれた抗原タンパク質あるいはその分解物は、未知の機構によって、膜を通過して細胞質に移行する。その後は、内在性の抗原タンパク質と同様に、プロテアソームによって分解され、分解産物のペプチドは、TAPトランスポーターによってERに輸送され、ER内部でMHC Iと複合体を形成し、通常の経路によって細胞膜に発現される。
癌が疾病として生じたということは、本来であれば、上記のプロセスを経て活性化されたCTLの攻撃によって、排除されるはずの癌細胞が生き延びたことを意味する。すなわち、癌を発症している個体では、CTLが非活性化(休眠)の状態に保たれたままであると考えられる。したがって、この非活性化状態のCTL(あるいはCD8T細胞)を活性化することによって、癌を治療することが可能であると考えられる。事実、CTL誘導による癌の治療法は、さまざまなアイデアを基に研究されている。これまでに、例えば、各種Hspとの融合タンパク質を抗原とする手法(非特許文献1-2)、膜を貫通する細菌毒素タンパク質との融合タンパク質を抗原とする手法(非特許文献3-9)、ユビキチンとの融合タンパク質を抗原とする手法(非特許文献10-11)、エピトープを改変しCTL誘導性を高める手法(非特許文献12)、スカベンジャー受容体に結合するように抗原を修飾する手法が知られている(非特許文献13)。しかしながら、未だ真に有効な治療法は開発されていない。
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.94, pp.13146-13151, November1997 International Immunology, Vol.13, No.10, pp.1233-1242 Traffic 2002; 3: 697-704 Journal of Virology, Aug. 2001, p.7330-7338 PNAS July 5,2000, Vol.97, No.14, 8027-8032 FEBS Letters 453 (1999)95-99 The Journal of Immunology, 2000, 165:3301-3308 Cellular Immunology 203,75-83(2000) Infection and Immunity, June 2002, p.3249-3258 The Journal of Biological Chemistry Vol.277, No.41, Issue of October 11, pp.38818-38826, 2002 Science 28 May 200; 304(5675), p.1318-21 Science 28 May 200; 304(5675), p.1314-7 Immunology 2004, 112, 211-218
本発明はこの様な状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、樹状細胞の抗原クロスプレゼンテーション機構の解明およびCTL活性化誘導に有効な樹状細胞の製造方法を提供することである。
上記課題を解決すべく、本発明者らは樹状細胞の抗原クロスプレゼンテーション機構の解明に取り組んだ。樹状細胞の抗原クロスプレゼンテーション機構の解明において、鍵となる反応は、1)外部から抗原タンパク質が、どのような細胞内コンパートメントに取り込まれるのか、2)取り込まれた抗原タンパク質あるいはその分解物が、どのようにして膜を通過して細胞質へ移行するのか、の二つである。
上記機構を解明するにあたり、細胞分画法、ウエスタンブロッティングを実施し、取り込まれた外来抗原の細胞内局在および時間経過に伴う変化を観察した。これらの結果から、取り込まれた外来抗原は未分解の状態で膜状のオルガネラに蓄積され、ユビキチン-プロテアソーム経路を通じて分解されることが、初めて明らかになった。さらに、本発明者らは上記経路がER関連分解(ERAD)と本質的に同一であることに気付き、樹状細胞中に蓄積された外来抗原は、ERADによって、または極めて類似したタンパク質分解機構によって分解されるとの仮説を立てた。
本発明者らは、この仮説の立証を3種類の方法により試みた。第一の立証方法として、蓄積された外来抗原と各種ER関連タンパク質との間に相互作用があるかどうか、共免疫沈澱法を実施した。二番目の方法として、ERAD阻害処理を行ったときに外来抗原の分解が影響を受けるか否かを調べた。第三番目に、ER関連タンパク質をRNAi法でノックダウンし、蓄積された外来抗原への影響を検討した。
上記検討の結果、樹状細胞クロスプレゼンテーションにおいて、外来抗原は膜小胞に取り込まれた後、BiPやカルレティキュリン等の小胞体分子シャペロンと結合し、細胞質へ逆行輸送されること、細胞質へ移った外来抗原は未分解の状態でユビキチン化されること、上記ユビキチン化に関与するユビキチンE3ライゲースがCHIPであること、ユビキチン化された外来抗原はプロテアソームによる分解を受けることが明らかになった。これらは、いずれも本発明者らによって初めて見出された新規知見であり、上記仮説を裏付けるものである。
さらに本発明者らは、クロスプレゼンテーションにポリユビキチン化が関与しているとの新規知見に基づき、複数の方法でポリユビキチン化の促進を図った。抗原タンパク質とHsp90とをex vivo共免疫する方法、抗原タンパク質にKDEL配列(配列番号3)を付加する方法を実施したところ、抗原タンパク質ポリユビキチン化の促進および樹状細胞による抗原提示の増強を確認した。上記結果から、本発明者らは、ポリユビキチン化促進により樹状細胞の抗原提示を促進する方法を論理的かつ具体的に見出した。これらの方法は、CTL活性化誘導に有効な樹状細胞の製造を可能にする。
すなわち本発明は、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法に関する。具体的には、以下の発明を提供するものである。
(1)抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法、
(2)下記(a)および(b)の工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法、
(a)哺乳動物由来の樹状細胞を単離する工程
(b)抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程
(3)下記(a)から(c)の工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法、
(a)哺乳動物由来の樹状細胞を単離する工程
(b)抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程
(c)樹状細胞内における抗原タンパク質のポリユビキチン化の促進を確認する工程
(4)下記ポリユビキチン化促進処理工程が単離された樹状細胞に抗原タンパク質とHSPとを接触させることを特徴とする工程である、上記(1)から(3)のいずれかに記載のCTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法、
(5)HSPがHSP90ファミリーまたはHSP70ファミリーに属するHSPである上記(4)に記載の製造方法、
(6)HSP90ファミリーに属するHSPがHSP90である上記(5)に記載の製造方法、
(7)ポリユビキチン化促進処理工程がカルボキシル末端に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質を単離された樹状細胞に接触させることを特徴とする工程である、上記(1)から(3)のいずれかに記載のCTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法、
(8)小胞体局在配列がKDEL(配列番号3)である上記(7)に記載の製造方法、
(9)HSPを有効成分として含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤、
(10)HSPがHSP90である、上記(9)に記載の抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤、
(11)小胞体局在配列をコードするDNAを含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤、
(12)小胞体局在配列をコードするDNAを保持するベクターを含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤、
(13)上記(9)から上記(12)のいずれかに記載の抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤を有効成分として含む、樹状細胞のCTL誘導能力増強剤。
DC2.4細胞に取り込まれたOVAの特徴を示す図である。(a)サイトゾル及びミクロソーム分画を各種抗体でウェスタンブロットした図である。ミクロソーム分画のトリプシン処理は、蓄積OVAとBiPに影響を与えなかった。膜を溶解するために、TritonX-100を使用した。(b)bOVA蓄積に対するプロテアソーム阻害剤とリソソーム阻害剤の影響を示す図である。プロテアソーム阻害剤であるMG-132(MG:10μM)とラクタスタチン(LC:2μM)は細胞に取り込まれたbOVA 分解を減少させたが、NH4Cl(50mM)は減少させなかった。DC2.4細胞をbOVAでパルスし、追跡した。bOVAをSAビーズで回収し、SDS-PAGEで分離した後、SA-HRPを用いたウェスタンブロットを行った。Ctl:阻害剤を含まないコントロール。(c)上記(b)で示したものを定量化した結果を示す図である。(d)bOVAが分解前にポリユビキチン化を受けることを示す図である。細胞に結合したbOVAがインタクトOVAと同じ分子量を有する。bOVAの一部は、ポリユビキチン化されている。左パネル中のアスタリスクは、SA-HRPとの非特異的結合を示す。 ERAD関連タンパク質が細胞に結合したOVAと相互作用することを示す図である。(a)Sec61αがbOVAと相互作用することを示す図である。DC2.4細胞をbOVAとインキュベーションし、抗Sec61αとの共免疫沈降を行った。bOVAを免疫沈降の前に2.5mg ml-1で細胞ライセートに添加した(各パネルの左二つのレーン)。SDS-PAGE後、SA-HRPおよび抗Sec61α抗体を用いてブロッティングした。(b)Sec61βがbOVAと相互作用することを示す図である。(c)VCPがbOVAと相互作用することを示す図である。(d)BiPがbOVAと相互作用することを示す図である。(e)PDIがbOVAと相互作用することを示す図である。(f)CalreticulinがbOVAと相互作用することを示す図である。(g)CHIPがbOVAと相互作用することを示す図である。(h)TAP1はbOVAと相互作用しないことを示す図である。(i)TAP2はbOVAと相互作用しないことを示す図である。(j)BMDC中でも、bOVAがSec61βと相互作用することを示す図である。(k)BMDC中でも、bOVAがVCPと相互作用することを示す図である。 ERAD関連タンパク質が細胞に取り込まれたbOVAと同時精製されることを示す図である。(a)DC2.4細胞由来ERAD関連物質と同時精製した図である。(b)BMDC細胞由来BiPとVCPとの同時精製の結果を示す図である。 ERAD阻害およびRNAi法によるERAD関連タンパク質ノックダウンが、bOVA分解を減少させることを示す図である。(a)bOVAの分解がCa2+枯渇により阻害され、Ca2+再添加(1mM)により回復することを示す図である。(b)thapsigargin(Tg:300nM)またはtunicamycin(Tm2μg)によって阻害されることを示す図である。(c)RNAi 法によるERAD関連タンパク質のノックダウンの影響を示す図である。RNAi をトランスフェクトした、クローン化していない安定なトランスフェクタント(S22;Sec61-22, V41;VCP-41; C4;CHIP-4)及びクローン化したノックダウン細胞株(S22-3;S-22由来, V41-1;V-41由来; C4F-1;C4由来)では、ERAD関連タンパク質発現の減少が示された(レーン1,3,5,7,9,10,11)。コントロールとして、レーン2;S22、レーン4;S22-3、レーン6;V41、レーン8;V41-1、レーン10;C4、レーン12;C4F-1。(d)親DC2.4細胞とノックダウンDC2.4細胞をそれぞれbOVAとインキュベートしたときの、bOVA分解を示す図である。(e)上記(d)の結果を定量化した図である。(f)C4でbOVAのポリユビキチン化が減少したことを示す図である。レーン1,2,5,6はコントロール、レーン3,4,7,8はC4。 RNAi法によるTAP1ノックダウンはbOVA分解に影響を与えないことを示す図である。(a)親DC2.4細胞(レーン1)と比較して、クローン化していない安定トランスフェクタント(レーン2;TAP1-145、レーン3;TAP1-149)は、TAP-1タンパク質の発現に関し、特異的な減少を示した。(b)親DC2.4細胞とノックダウンDC2.4細胞とをそれぞれbOVAとインキュベートした後、bOVAの分解を測定した結果を示す図である。左から、0時間、2時間、4時間。(c)上記(b)の結果を定量化した図である。 DC2.4細胞における外因性添加OVAの細胞内局在を示す図である。OVAの細胞内局在を、抗OVA抗体で標識して(赤色)検出した。(a)は初期エンドソーム、(b)はcaveosome、(c)は後期エンドソーム、(d)および(e)は小胞体、(f)はゴルジ装置が緑色で示されている。(c)において、細胞の縁部を点線で示した。(c)と(d)における挿入図は、四角で示した細胞をより高い拡大率で示したものである。 DC2.4細胞の膜画分について密度勾配遠心を行った結果を示す図である。(a)OVAとインキュベートしたDC2.4細胞を、ホモジナイズして膜画分を調製し、2.5-30%のOptiprep density gradient centrifugationにかけた。上パネルは、各画分をSDS-PAGEで分離し、抗OVA抗体を用いてブロットした図である。下パネルは、上パネルで示した膜シートと同じものを、各種抗体でブロットした図である。(b)膜画分を10-30%密度勾配で解析した。レーン番号は、各密度勾配のフラクションを示す。 Sec61、VCP、CHIPをノックダウンした結果を示す図である。親DC2.4細胞またはノックダウンDC2.4細胞をそれぞれSIINFEKLペプチドまたはOVAとインキュベートし、IL-2産生量を指標としてOT-I CD8+T細胞の刺激を観察した。(a)OVAとIL-2産生との関係を示す用量反応曲線である。白カラムはOVAを、黒カラムはbOVAを示す。(b)ラクタスタチン(10μM)とMG-132(25μM)はOVAによる刺激(黒バー)を抑制したが、SIINFEKLペプチドによる刺激(白バー)は抑制しない。(c)Sec61(S22)、VC(V41)、CHIP(C4)をノックダウンしたDC2.4細胞は、OVA刺激の減少が観察された。(d)ノックダウンした細胞のクローンは、本質的に(c)と同じ結果を示した。 DC2.4細胞によるMHCクラスIとクラスIIによる抗原提示に対するNH4Clの効果を観察した図である。NH4Cl存在下で前処理したDC2.4細胞を、OVAと培養し、MHCクラスI抗原提示に対するOT-I CD8+T細胞の刺激(丸)およびMHCクラスII抗原提示に対するOT-II CD4+T細胞の刺激(三角)を、IL-2産生量の測定により決定した。NH4Cl存在下のIL-2産生量はコントロール(IL-2産生はOT-Iに対し700pg/ml、OT-IIに対し20pg/ml)に対する相対比としてあらわした。 GST-OVAまたはGST-OVA-KDELをHSP90存在下または非存在下でDC2.4細胞とインキュベートし、該細胞からGST-OVAを回収し、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットを行った結果を示す図である。レーン1,2は細胞のみ、レーン3,4は細胞をGST-OVAとHSP90非存在下または存在下でインキュベートした結果を示す図である。レーン4およびそのコントロール(レーン3)について、取り込まれたGST-OVA量(下側の図)とポリユビキチン化されたGST-OVA量を比較すると、HSP90存在による取り込み量の増加はそれほど多くないが、HSP90存在によるポリユビキチン化の増加が非常に顕著であることがわかる。レーン6をレーン4と比較すると、レーン6はポリユビキチン化されたGST-OVA量が顕著に多い。このことから、Hsp90が存在するときKDEL(配列番号3)付加がGST-OVAの取り込みを増加させ、かつポリユビキチン化を促進していることがわかった。 DC2.4細胞あるいはBMDCとOVAとをHSP90存在下または非存在下でインキュベートし、OT-I CD8+細胞に対する抗原提示を測定した結果を示す図である。HSP90を添加すると、抗原提示が高まることが明らかとなった。 前記(a)のDC2.4細胞のデータと同じ条件で、ただし、Hsp90の濃度を変えて測定した(10μg/ml,50μg/ml)。Hsp90の濃度依存的に抗原提示能力が高くなることが示された。 DC2.4細胞とOVAを、lactacystin (LC)存在下あるいは非存在下、Hsp90存在下あるいは非存在下でインキュベートし、細胞に取り込まれたOVAを測定した結果を示す図である。時間はインキュベート時間を表す。右側の8レーンが示すように、Hsp90が存在すると、OVAの取り込みが増加した。 樹状細胞(DC)のMHCクラスIIへの外来抗原提示に対する分子シャペロンHSP90の影響を、IL-2の産生量として観察した結果を示す図である。 DC2.4細胞にHSP90とOVAを加えるタイミングを変えて、IL-2産生量の変化を観察した結果を示す図である。図中、(H→O)は、DC2.4細胞にまずHSP90を添加し、次いでOVAを添加した場合。(O)は、抗原OVAのみを加え、HSP90を加えなかったコントロール実験。(O+H)は、DC2.4細胞にOVAとHSP90を同時に添加した場合。(O→H)は、DC2.4細胞にまずOVAを添加し、次いでHSP90を添加した場合。
本発明は、抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法に関する。本発明におけるCTL誘導能力を獲得した樹状細胞とは、外来抗原ペプチドを細胞表面のMHCクラスI分子上に提示した樹状細胞を指す。CD8+T細胞が抗原提示細胞表面のMHCクラスI上に提示された抗原由来ペプチドを認識すると、CD8+T細胞が活性化され、細胞障害性を発揮するCTLが誘導される。
本発明者らは、外来抗原タンパク質が分解されて抗原由来ペプチドがMHC分子上に提示される過程において、抗原タンパク質が分解前に樹状細胞内でポリユビキチン化を受けることを初めて明らかにした。さらに、複数の方法により上記樹状細胞内ポリユビキチン化が促進された場合に、CTL誘導が促進されたことを確認した。すなわち、樹状細胞内ポリユビキチン化を促進することは、CTL誘導能の高い樹状細胞の製造を可能にする。
抗原タンパク質由来ペプチドを提示する樹状細胞は、そもそも樹状細胞に抗原タンパク質を接触させて培養すれば取得可能ではある。本発明の製造方法は、樹状細胞と抗原タンパク質との接触と同時に、あるいは接触前に、ポリユビキチン化を促進させる処理を行うことを特徴とする。ポリユビキチン化促進処理は、非処理のときよりも、樹状細胞の抗原提示レベルを増強し、抗原タンパク質として用いたタンパク質に特異的なCTL誘導能をより高くする効果がある。
本発明の製造方法に用いるタンパク質は、樹状細胞による貪食の対象となり、プロテアソーム分解の対象となり得るものであればよく、種類や大きさは問わない。一般的には、ポリペプチド鎖から構成されている分子のうち、分子量が5,000以上のものをタンパク質、以下のものをペプチドとよんで区別することが多いとされているが(東京化学同人 化学大辞典)、樹状細胞によって取り込まれ、プロテアソーム分解を受ける限り、分子量にはこだわらず、本発明の製造方法に用いることができる。また、単純タンパク質であってもよく、核タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、色素タンパク質、金属タンパク質、等の複合タンパク質であってもよい。癌抗原タンパク質や感染したウイルス由来タンパク質は、本製造方法に好適に用いることができる。
本発明の方法に用いる樹状細胞は、哺乳類由来の細胞が好ましく、より好ましくは、ヒト由来の細胞である。樹状細胞は、自然界から単離された細胞を用いてもよく、またこの代わりに、人工的に作出された細胞株を用いてもよい。テーラーメード治療を行うことを目的としてタンパク質の選択を行う場合は、治療対象となる患者本人由来の細胞を用いることが好ましい。
本発明の方法に用いる樹状細胞は、未成熟なものを用いることが好ましい。樹状細胞は未成熟なときに、外部から抗原をよく取り込み、成熟するにしたがって、取り込んだ抗原を強く提示するようになるからである。このような樹状細胞は、骨髄あるいは末梢血のCD34陽性前駆細胞からあるいは単球から、GM-CSFを用いて誘導する方法、および末梢血単核球より直接分離する方法等により調製することができる。
樹状細胞内ポリユビキチン化を促進する処理は、幾つかの方法で行うことができる。一例として、HSPを用いる処理を挙げることができる。本発明者らは、HSP90が抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進し、抗原提示レベルを増強させる能力があることを実証している。HSPは、heat shock proteinの略で、当初は熱ショックストレスにより発現が誘導されるタンパク質として認識された。その後、HSPがタンパク質の構造形成を助ける機能を持っていることが明らかにされ、いわゆる分子シャペロンと呼ばれるようになった。分子シャペロンのもともとの定義は、”未熟な構造状態のタンパク質に一時的に結合して成熟するのを介添え(chaperone)するタンパク質”であった。しかし現在では、分子シャペロンは、タンパク質のフォールディングにととまらず、多くの細胞機能制御に関与していることが知られている。HSPは熱ショックタンパク質ではあるが、細胞内にストレスがなくても普遍的に存在する。
HSPには、複数のメンバーを含むファミリーが存在する。代表的なものだけでも、HSP60、HSP70、HSP90、HSP100のファミリーを挙げることができる。HSP90ファミリーは、分子量約90kDaの、代表的分子シャペロンの一つである。このファミリーのメンバーは、サイトゾルだけでなく、小胞体やミトコンドリアにも存在する。HSP90は、哺乳動物のサイトゾルに存在する。HSP90は、Hsp90またはhsp90と標記されることもある。HSP90には2つのアイソフォームの存在が知られており、ヒトではHSP90αとHSP90β、マウスではHsp84とHsp86と呼ばれることもある。ショウジョウバエではhsp83と呼ばれ、出芽酵母ではHsp82とHsc82の2種が存在し、大腸菌ではHtpGと呼ばれている。HSP90は、他の分子シャペロンやコシャペロンと協同して変性タンパク質の凝集を抑制する機能を有する。また平常時には、転写調節因子やシグナル伝達系分子の機能制御を行う。GRP94は、哺乳動物の小胞体に存在するメンバーであり、gp96とも標記される。哺乳類ミトコンドリアには、Trap1/HSP75の存在が知られている。
HSP70ファミリーは、アクチン・ヘキソキナーゼ型立体構造を持つN末端側のATPaseドメインとC末端側の基質結合ドメインからなる代表的分子シャペロンで、分子量は約70kDaである。ATPase活性を有し、コシャペロンと協同してタンパク質のフォールディングを促進する。また、オルガネラへのタンパク質輸送、変性タンパク質の修復・分解など、タンパク質一生のあらゆる局面に関与することが知られている。Hsc70・Hsc73は哺乳動物サイトゾルに構成的に存在するメンバーであり、Hsp70/Hsp72は哺乳動物の誘導型のメンバーで、熱ショック等のストレス時に誘導されることが知られている。Grp78/BiPは哺乳動物細胞の小胞体に存在する。DnaKは、大腸菌に存在するメンバーである。
HSP60ファミリーは、シャペロニンの別名を有する。大腸菌に存在するメンバーはGroEL、真核細胞ミトコンドリアに存在するメンバーは、Hsp60と呼ばれる。CCT/TRiCはサイトゾルに存在する。いずれも二重リング状の複合体を形成し、リング中央のくぼみの中で基質タンパク質のフォールディングを進行させる。
HSP100ファミリーのメンバーは、酵母にはHsp104、Hsp78、哺乳動物にはSkd3、ClpXが存在する。
本発明の製造方法には、ポリユビキチン化促進効果を有する限り、上述した各種HSPのいずれであっても使用することができる。好ましくは、HSP90ファミリーやHSP70ファミリーに属するHSP、より好ましくはHSP90を用いることが望ましい。HSPの動物種は、使用する樹状細胞の動物種と同一であっても、同一でなくてもよい。HSP90の例として、ブタHSP90のアミノ酸配列を配列番号1に、cDNA配列を配列番号2に示す。ヒトHSP90の配列は、GenBank Accssion No.BC023006、BC007989から入手可能である。
HSPを用いて樹状細胞内ポリユビキチン化を促進するには、実施例に示すように、HSPを樹状細胞および抗原タンパク質と共にインキュベーションする方法をとることができる。使用する各種HSPは、市販の製品を用いることができる。例えば、医学生物学研究所、Stressgen Biotechnologies Corp.、 Oxford Biomedical Research Inc.より入手可能である。あるいは、配列番号2に記載の配列の一部をプライマーとして哺乳動物細胞のcDNAライブラリーからHSPのcDNAを調製し、得られたHSPのcDNAを適当な発現ベクターに挿入し、宿主に発現させたHSPを用いることもできる。
この操作を実施することにより、抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化が促進され、かつ、樹状細胞の抗原提示が増強されて、CTL誘導能を有する樹状細胞が製造できる。この方法は、単にHSP存在下で抗原タンパク質と樹状細胞を接触させればよく、非常に簡便な方法ということができる。
樹状細胞内ポリユビキチン化の促進を確認するには、抗原タンパク質およびHSPとインキュベートした樹状細胞を洗浄して抽出液を作製し、抗抗原タンパク質抗体および抗ポリユビキチン抗体を用いてポリユビキチン化抗原タンパク質を検出することで可能である。
また、樹状細胞内ポリユビキチン化を促進する別の方法として、抗原タンパク質のカルボキシル末端に小胞体局在配列を付加する方法を例示することができる。本発明者らは、小胞体局在配列であるKDEL配列(配列番号3)を抗原タンパク質のC末端に付加し、樹状細胞と接触させた場合の、ポリユビキチン化の促進および抗原提示レベルの増強を確認している。本発明における「小胞体局在配列」とは、小胞体とゴルジ装置との間のシャトリング(双方向輸送)を指示する機能を有するアミノ酸配列をいう。このような配列の代表例として、KDEL配列(配列番号3)やHDEL配列(配列番号5)を挙げることができる。KDEL配列は、アミノ酸配列:Lys-Asp-Glu-Leu(配列番号3)からなる配列である。小胞体に局在する多くの可溶性タンパク質のC末端にはKDEL配列(配列番号3)が存在する。そこで以前は、KDEL配列(配列番号3)は、小胞体への残留のためのシグナルと考えられていた。しかし、KDEL配列(配列番号3)に結合するKDEL受容体が小胞体-ゴルジ装置中間区画(endoplasmic reticulum-Golgi intermediate compartment : ERGIC)やゴルジ装置のシス領域に多く存在すること等が判明した。現在、KDEL配列(配列番号3)は小胞体から漏れ出たタンパク質を逆行輸送により回収するためのシグナルと考えられている。HDEL配列(配列番号5)は、出芽酵母の小胞体局在配列で、アミノ酸配列:His-Asp-Glu-Leu(配列番号5)からなる配列である。また、C端側のDEKKMP配列(アミノ酸配列:Asp-Glu-Lys-Lys-Met-Pro 配列番号6)は、ER局在の膜タンパク質のうち、C端側が細胞質側に配向しているタンパク質に対して同様の機能を有するシグナルであるとする報告がある。
カルボキシル末端に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質を得るには、当業者に周知の方法によって行うことができる。例えば、KDEL配列(配列番号3)をコードするDNAの両側に制限酵素認識配列を付加したDNA配列を一本鎖ずつ合成し、これらをアニーリングさせて二本鎖とした後に適当な制限酵素でトリミングする。抗原タンパク質のC末端側を同じ制限酵素で処理し、上記のKDEL配列(配列番号3)をコードするDNAを含むDNA断片をライゲーションし、KDEL配列(配列番号3)が付加された抗原タンパク質をコードするDNAを得る。得られたDNAを適当な発現ベクターに挿入し、宿主にトランスフェクションして発現させ、発現させた組換えタンパク質を精製すれば目的のタンパク質を得ることができる。また別の方法として、PCR法を利用してカルボキシル末端に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質を得ることができる。例えば、フォワードプライマーとして抗原タンパク質のN末側をコードする配列に相補的なプライマー、リバースプライマーとしてC末側をコードする配列に相補的なプライマーを用意する。リバースプライマーの5’末側に小胞体局在配列をコードするDNAを付加する。上記フォワードプライマーと、小胞体局在配列DNAが付加されたリバースプライマーとを用い、適当な条件でPCR法を行うと、カルボキシル末端に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質をコードするDNAを得ることができる。このようにして得られたDNAをクローニングし、発現ベクターに挿入し、宿主で発現させれば、目的のタンパク質を得ることが可能である。これらの方法に用いることのできる小胞体局在配列をコードするDNAの一例として、KDEL配列(配列番号3)をコードするDNA配列を配列番号4に示す。配列番号4の配列に限らず、KDEL配列(配列番号3)をコードするDNAである限り、遺伝暗号の縮重による他のDNA配列であっても使用できる。同様に、他の小胞体局在配列についても、存在する複数のDNA配列のいずれであっても使用可能である。
適当な発現ベクターは、タンパク質生産に用いる翻訳系により、適宜選択することができる。翻訳系は細胞系、無細胞系のいずれでもよく目的により選択することができる。細胞系では、例えば、大腸菌で発現させるためのベクターとして、pKK223-3、pKK233-2、pJLA502などを用いることができる。また、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることもできる。そのためのベクターとしては、例えば、pRIT2T、pGEX-2T、pGEX-3Xなどが挙げられる。これらの融合タンパク質は、アフィニティーカラムを用いて容易に回収することができる。融合タンパク質の境界部にトロンビン切断部位やファクターXa切断部位を有するベクターを用いることにより、目的のタンパク質のみを回収することもできる。また、タンパク質をペリプラズムや菌体外に分泌させるためのベクターとしてはpKT280やpRITなどが挙げられる(岡田雅人・宮崎香 編、無敵のバイオテクニカルシリーズ タンパク質実験ノート上 抽出と分離精製、羊土社、1996年発行 pp.242−246)。また、昆虫細胞や哺乳動物細胞を用いてタンパク質を生産させる場合には、バキュロウイルスを用いることができる。哺乳動物細胞内のバキュロウイルスベクターとしては、例えば、pAcCAGMCS1が挙げられる(村松正実 編、ラボマニュアル遺伝子工学第3版、丸善株式会社、1996年発行、pp.242-246)。
宿主細胞において発現させた組換えタンパク質は、公知の方法により精製することができる。また、本発明のタンパク質を、例えば、N末端にヒスチジン残基のタグ、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)などを結合した融合タンパク質の形で発現させた場合には、ニッケルカラムやグルタチオンセファロースカラム等により精製することができる。
あるいは、KDEL配列(配列番号3)と抗原タンパク質をつなげたアミノ酸配列をコードするDNA配列を、核酸合成装置を用いて化学的に合成してもよい。
本製造方法は、上記ポリユビキチン化促進処理工程の前に、哺乳動物由来の樹状細胞を単離する工程を含めることができる。哺乳動物の種類は、上述のとおり特に制限はない。例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、その他どのような哺乳動物であってもよい。樹状細胞の単離方法は、周知の方法によって実施可能である。
またさらに、本製造方法は、上記樹状細胞単離工程、上記ポリユビキチン化促進処理工程の他に、樹状細胞内における抗原タンパク質のポリユビキチン化の促進を確認する工程を含めることができる。本回収工程は、例えば以下のように行うことができる。上記ポリユビキチン化促進処理工程を施した樹状細胞の一部を洗浄して抽出液を作成し、抗抗原タンパク質抗体および抗ポリユビキチン抗体を用いてポリユビキチン化抗原タンパク質量を測定し、ポリユビキチン化促進処理工程を施していない樹状細胞のポリユビキチン化抗原タンパク質量と比較して測定値が高い場合は、該樹状細胞内において抗原タンパク質のポリユビキチン化が促進されていると判断できる。
本製造方法により製造された樹状細胞は、抗原タンパク質として用いたタンパク質に特異的なCTLを誘導する能力の高い樹状細胞である。癌抗原タンパク質を抗原タンパク質とし、癌患者由来の樹状細胞を用いて本製造方法を実施すれば、該癌抗原タンパク質を特異的に傷害するCTLを誘導する能力が高められた、患者由来樹状細胞を得ることができる。このような樹状細胞は、癌治療効果の高い樹状細胞ワクチンとして利用価値があると考えられる。また、感染性微生物由来タンパク質を用いて本製造方法を実施すれば、感染症治療用の樹状細胞ワクチンとすることが可能である。
また本発明は、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤を提供する。本発明のポリユビキチン化促進剤は、樹状細胞内における抗原タンパク質のポリユビキチン化を促進する。
本発明の一つの態様は、HSPを有効成分とする抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤である。上述のとおり、HSPは抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化の促進に用いることができる。本促進剤に用いるHSPは、ポリユビキチン化促進効果を有する限り、上述した各種HSPのいずれであっても使用することができる。好ましくはHSP90ファミリーまたはHSP70ファミリーメンバー、より好ましくはHSP90を使用することが望ましい。HSPを有効成分とする抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤は、抗原タンパク質と樹状細胞のインキュベーション時に添加して用いることができる。
また別の態様として、小胞体局在配列をコードするDNAを含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤を挙げることができる。小胞体局在配列とは、上述のとおり、小胞体とゴルジ装置との間のシャトリングを指示する機能を有するアミノ酸配列である。例えば、小胞体局在配列の代表例であるKDEL配列(配列番号3)をコードしたDNA断片を、本発明のポリユビキチン化促進剤に含有させることができる。このようなDNA断片を所望の抗原タンパク質をコードしたDNAの下流に連結させることにより、小胞体局在配列を備えた抗原タンパク質をコードしたDNAが構築される。ここで構築されたDNAからタンパク質を合成することにより、C末端側に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質を得ることができる。C末端側に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質は、上述のとおり、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造に用いることができる。
抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤は、小胞体局在配列をコードするDNAをそのまま含有させてもよいが、小胞体局在配列をコードするDNAをベクターに保持した状態で含有させてもよい。小胞体局在配列をコードするDNAを保持するベクターは、操作上の便宜を図るための工夫がされていてもよい。例えば、小胞体局在配列をコードするDNAの上流にマルチクローニングサイトを備えることにより、所望の抗原タンパク質のC末端側への小胞体局在配列の連結を一層容易にすることができる。
上記の抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤は、いずれも抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化の促進を介して、樹状細胞のCTL誘導能力を増強する目的で用いることができる。
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
[実施例1]蓄積OVAのプロテアソーム依存分解
外来抗原の細胞内局在を細胞分画法により検討した。抗原モデルとしてニワトリアルブミンOvalbumin (OVA) 、樹状細胞のモデルとして、マウス樹状細胞の培養細胞株であるDC2.4(ハプロタイプH-2Kb)を用いた。DC2.4細胞株は、樹状細胞由来であり、クロスプレゼンテーション等の樹状細胞の多くの性質を保ったまま株化されたものである。またコントロールとして、ハプロタイプがDC2.4と同じH-2KbであるBMDCを用いた。BMDCは、C57BL/6マウス(SLC)の骨髄細胞から5%FCSを添加したRPMI-1640中で5ng/ml GM-CSF (MBL)を用いて誘導し、培養5日後に細胞を磁性ビーズで精製したものを用いた。
bOVA抗原を取り込ませたDC2.4細胞を、250mMスクロースを含む10mM Tris-HCl (pH7.4)に懸濁し、ガラスビーズでホモジナイズし、250,000xgで30分間遠心して分画した。上清を可溶分画とし、沈澱は上記と同じバッファーで懸濁してミクロソーム分画とした。一定量を1% TritonX-100存在下または非存在下で100μg ml-1トリプシンと共にまたは無しでインキュベートした。bOVA回収前に大豆トリプシンインヒビター(Sigma)を500μg ml-1添加した。
上記の結果、細胞に取り込まれたbOVAの70%以上がミクロソーム分画からトリプシン抵抗性として回収された。ミクロソーム分画に回収されたbOVAは、TritonX-100で処理すると、トリプシンで分解された。このことは、取り込まれたbOVAの大多数が膜状の細胞成分構造の内部に蓄積していることを示唆する(図1a)。また、同じミクロソーム分画に内在性ERタンパク質であるBiPが検出された(図1a)。すなわち、ミクロソーム分画はER分画を含むことがわかった。
次に、DC2.4.細胞をbOVAと1時間インキュベートし、4時間まで追跡した。細胞と結合したbOVAを、総セルライセートからストレプトアビジン-アガロースで回収し、SDS-PAGEで分離した。細胞と結合したbOVAは、時間の経過にしたがって減少したが、プロテアソーム阻害剤であるラクタシスチンまたはMG-132の存在下では、この減少はブロックされた(図1b,c)。リソソーム阻害剤の塩化アンモニウムは、bOVA分解に対し顕著な影響は与えなかった(図1c)。このことは、リソソームのプロテアーゼは抗原分解に関与していないことを示唆している。
本質的に同様の結果が、b-OVAの代わりにGST-OVAに曝露したDC2.4細胞やbOVAに曝露した骨髄由来DC(BMDC)からも得られた(データ示さず)。
また、細胞に結合したbOVAの大多数は、無処理bOVAと同じ分子量を示した(図1d)。加えて、抗ポリユビキチン抗体と抗OVA抗体によって示されるとおり、有意な量のbOVAがポリユビキチン化されたことが見出された(図1d)。これらの結果は、未分解のbOVA が膜状のオルガネラに蓄積され、ユビキチン-プロテアソーム経路を通じて分解されることを示唆する。このような特徴を持つタンパク質分解は、ER関連分解(ERAD)と呼ばれるものと本質的に同じである。本発明者らは、DC2.4細胞中に蓄積されたbOVA が、ERADによって、または同一ではないとしても極めて類似したタンパク質分解機構によって分解されることについて、以下に3つの証明を示す。
[実施例2]蓄積されたOVAとERAD関連タンパク質との関連
上記仮説を立証するため、まず、蓄積されたOVAとERから細胞質への逆行性輸送関連物質との関連について共免疫沈澱法により検討した。2x107個のDC2.4またはBMDC細胞を10μM MG-132を含む培地中でbOVA 250μg ml-1存在下で4時間培養した。細胞を1%ジギトニンとプロテアーゼ阻害剤を含む20mM HEPES pH7.6で溶解し、ビオチン標識サンプルを回収した。サンプルはプロテインGセファロース(Amersham Pharmacia Biotech)であらかじめ不要物を除去し、沈降のための抗体(抗Sec61β、抗Sec61α、抗VCP、抗BiP、抗PDI、抗calreticulin、抗TAP1、抗TAP2)とインキュベートした後、プロテインGで免疫沈澱物を回収した。ニワトリ抗CHIP抗体を使った場合は、ウサギ抗IgYカラム(Mr.S.Seki,MBL)で免疫沈澱物を回収した。沈降サンプルは、SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングで解析した。
Sec61複合体を抗Sec61β抗体または抗Sec61α抗体と免疫沈降したところ、ラクタシスチンの存在下または非存在下でbOVAとインキュベートされたDC2.4細胞において、bOVAの一部がSec61と結合しているのが観察された(図2a,b)。bOVAとインキュベートされたDC2.4細胞からのサンプルを抗VCP抗体と免疫沈降した場合もまた、bOVA とVCPとの結合を示した(図2c)。3種類のER常在タンパク質、BiP、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、calreticulinもOVAと結合することが見出された(図2d-f)。興味深いことに、bOVAの一部がE3-ユビキチンリガーゼであるCHIPと結合していることが明らかになった(図2g)。上記タンパク質とは逆に、bOVAはTAP1またはTAP2と結合しなかった(図2h,i)。
上記ERAD関連タンパク質とbOVA との結合についてさらに確認するため、共精製実験を実施した。同時精製実験は以下のように行った。DC2.4細胞とBMDCを、それぞれbOVA(250μg ml-1)と共にインキュベートし、PBSで2回洗浄し、プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)と共にジギトニンバッファー(共精製用:1%digitonin in 20mM HEPES pH7.6)に溶解した。サンプルはストレプトアビジンアガロースビーズ(SAビーズ)(Novagen)を用いて室温1時間で沈殿させた。沈殿したサンプルは、7.5-15%SDS-PAGE(Biocraft)で分離し、ウエスタンブロッティングを行うため、Immobilon P(Millipore)に移した。タンパク質のバンドは化学発光法(Amersham Pharmacia Biotech)により可視化した。
BiP、Sec61α、Sec61β、VCP、calreticulinおよびCHIPとbOVAとの結合は、細胞ライセートからストレプトアビジンビーズを用いたbOVAと 上記タンパク質との共精製によっても示された(図3a)。本精製実験において、TAP1/2がbOVAと結合しないことが再び観察された。抗Sec61抗体、抗VCP抗体とインキュベートした骨髄由来DC(BMDC)ライセートは、bOVAと免疫沈降し(図2j,k)、BiPとVCPはbOVAと共精製された。
CHIPを含む上記分子と結合したDC2.4細胞中のbOVAの多くは、無処置のbOVAと同じ分子量を有することは注目に値する(図2a-g)。これらの結果は変性したbOVAがERまたはER関連構造に分解を受けずに蓄積され、Sec61トランスポーターを解して細胞質へ輸送され、その後、少なくとも部分的にはCHIPが関与するポリユビキチン化を受け、最終的にプロテアソームによる分解に供されることを示唆している。
[実施例3]ERAD阻害がもたらす蓄積OVA分解の減少
次に、ERADの関与をさらに確かめるため、ERAD阻害、例えば、Ca2+枯渇やthapsigargin処理によってbOVAの蓄積が影響を受けるか否かを検討した。ER内のCa2+を枯渇させるとERADが阻害されることが知られている。また、Thapsigargin(Tg)はER膜に結合しイオノフォアとして機能することで、ER内腔のCa2+濃度を低下させ、ERADを阻害することが知られており、Tg存在下ではbOVAのERADによる分解は抑制されると予想される。DC2.4細胞をMG-132存在下でbOVAとパルスし、続いてPBSまたは1mM EGTAを含むPBSで洗浄し、4時間にわたり追跡した。図4aに示すように、蓄積したbOVAはCa2+枯渇では減少しなかった。あらかじめEGTAに曝した細胞にCa2+を再添加すると、bOVA 分解が回復した(図4a)。このことは、Ca2+枯渇がDC2.4細胞に不可逆的ダメージを引き起こした可能性を排除する。thapsigarginもまた蓄積したbOVAの分解を阻害した(図4b)。
さらに、tunicamycin処理によるbOVA蓄積への影響を検討した。細胞をtunicamycin (Tm)処理すると、N型糖鎖付加が阻害され、ER内腔にフォールディングが異常になったタンパク質が蓄積する。このような構造的に異常なタンパク質はERADのよい基質となることから、取り込まれたbOVAのERADによる処理をtunicamycin処理によって生じたmisfoldedタンパク質が競合阻害すると予想される。DC2.4細胞をtunicamycinで処理すると、やはりbOVAの分解を阻害した(図4b)。tunicamycin処理の結果、ERADのよい基質となるために分解においてbOVAの競合するN-グリコシル化欠損タンパク質がER中に蓄積した。
上記仮説の3番目の立証として、ERAD経路における基質の逆行輸送に関与するタンパク質をノックダウンするためにRNAi法を行った(図4c)。pSilencer1.0-U6(Ambion)由来の1.2kb PvuIIフラグメントをpEGFP-C1(BD Biosciences)のSmaIサイトに挿入し、p60とした。p60ΔCは、p60から1.3Kb AseI-Bgl IIフラグメントを削除して作製した。Sec61、VCP、CHIPを標的とするsiRNA配列を、業者のプロトコールにしたがって、p60ΔC(Sec61-22)、p60(VCP-41)、またはpSilencer2.1-U6hygroベクター(Ambion)(CHIP-4)に挿入した。Sec61αのノックダウンには、Sec61αの標的配列5つのうち2つが顕著に有効であった。3つは有効ではなかった。VCPの標的配列5つのうち2つおよびCHIPの標的配列5つのうち1つが顕著に有効であった。本実施例で用いた有効な標的配列は、以下のとおりである。
Sec61-22:AATGATCATTACTATCGGT;(配列番号7)
VCP-41:AATCCTTGAATGAAGTAGGCT; (配列番号8)
CHIP-4:CAGTATCGAGGAACGGCGC(配列番号9)
Sec61αノックダウンDC2.4(S22およびS22-3)細胞において、蓄積OVAは親DC2.4細胞よりも遅い速度で減少した(図4d,e)。Sec61αノックダウン用siRNAのスクランブル配列は、Sec61αの発現量にもbOVA蓄積にも影響を与えなかった(データ示さず)。これらの結果は、Sec61αがbOVAを分解に回すための輸送に関与していることを示唆している。同様に、VCPノックダウンDC2.4細胞(V41及びV41-1)細胞は、蓄積bOVAがある程度減少したにもかかわらず、追跡した間は、親DC2.4細胞よりも多量のbOVA を維持した(図4d,e)。
CHIPノックダウンDC2.4細胞(C4,C4F-1)を作成し、CHIPノックダウン下のbOVAポリユビキチン化について検討したところ、CHIPノックダウンDC2.4細胞のbOVA取込みは、親DC2.4細胞への場合の70%ほどに過ぎなかった(図4d,f)。この事実にもかかわらず、bOVAのポリユビキチン化はCHIPノックダウン細胞において34%に減少した(図4f)。OVA蓄積量の減少は、CHIPノックダウン細胞において減速した(図4d,e)。逆に、TAP1ノックダウンはDC2.4細胞中のbOVA分解に影響を与えなかった(図5)。
[実施例4]DC2.4細胞中の蓄積OVAの局在化
上記結果の全てが、DC2.4細胞に取り込まれたbOVAがERADを通じて分解されていることを強く支持している。しかしながら、最近になって、プロテオミクス解析や免疫電子顕微鏡観察によって、感染性バクテリアが取り込まれる場所であるファゴソームが、MHC Iといった抗原提示関連物質やTAP1/2等のERを構成する一群のタンパク質を含むことが明らかになった。このことから本発明者らは、DC2.4細胞やBMDC中の蓄積OVAの細胞内局在化について免疫蛍光コンフォーカル顕微鏡によって検討することとした。カルチャースライド(FALCON)上のDC2.4細胞とBMDCをMG-132で30分間前処理し、500μg ml-1OVAで2時間インキュベートした。培地で3回洗浄した後、細胞を3.7%ホルムアルデヒドで10分間固定し、0.1%TritonX-100 in PBSで室温10分間処理して透過処理し、5%BSA/2%FCSを含むPBS中で所定の抗体により37℃で1時間インキュベートし、染色した。二次抗体は、Alexa Fluor488ヤギ抗マウスIgG F(ab’)2フラグメント、Alexa Fluor488ヤギ抗ラットIgGおよびAlexa Fluor 546ヤギ抗ウサギF(ab’)2フラグメント(Molecular Probes)を使用した。画像は、蛍光装置のついたIX70(オリンパス)倒立顕微鏡を用いて取り込み、Deltavision deconvolution microscopy software(Applied Precision)によって処理して取得した。
細胞中にOVAスポットまたはスペックルが検出されたが、これらOVA分布は外来物質の取込みに関与することが知られている初期エンドソーム(EEA1を免疫染色)およびcaveosome(caveolin-1を免疫染色)のどちらとも重複しなかった(図6a,b)。その代わりに、OVA免疫蛍光は少なくとも部分的には後期エンドソーム(抗Lamp1抗体で染色)(図6c)、ER(図6d)と共局在した。抗KDEL抗体で標識したERは網目構造を示したが、OVA分布はER全体に均一ではなかった(図6d)。同様に、OVAは後期エンドソームの制限された領域で検出された(図6c)。OVAはゴルジ装置(抗GM-130抗体で染色)とは共局在しなかった(図6f)。ER中の蓄積OVA局在を、BMDCについても確認した(図6e)。これらの結果は、DCへ取り込まれたOVAはERADかつ/またはファゴソームや後期エンドソームといったER成分を含む他のオルガネラ中の同様のタンパク質分解経路にしたがうという本発明者らの仮説に一致する。
[実施例5]密度勾配遠心によるOVA含有膜小胞の細胞成分分画
次に本発明者らは、イオジキサノール勾配遠心によってDC2.4細胞の膜画分中の蓄積OVAの分布を検討した。密度勾配遠心のために、bOVA(500μg/ml)と3時間インキュベートしたDC2.4細胞を、PBSで2回洗浄し、homogenization medium(0.25Mスクロース、1mM EDTA、10mM Hepes-NAOH pH7.4)に懸濁し、Dounce homogenizerの10strokesで破壊した。未破壊細胞と核は、2,000xgで10分間遠心して除去した。核を除去した(postnuclear)上清を100,000xgで45分間遠心してペレットとし、homogenization mediumに再懸濁し、2.5-30または10-30%の不連続Optiprep(Gibco/Invitrogen)グラジエントに重層した。遠心は、Bechman SW 60Tiローターを用い、4℃で2.5-30%グラジエントの場合は200,000xgで2.5時間、10-30%グラジエントの場合は300,000xgで3時間行った。各遠心チューブの上層から取得した11画分をTCA沈殿させた後、SDS-PAGEおよびウエスタンブロッティングで解析した。
OVAは画分を通じて検出されたが、OVAのピークは明らかに2.5-30%密度勾配中のフラクション#10(図7a)および10-30%密度勾配中のフラクション#5(図7b)に観察された。画分中のSec61、BiP(KDEL)、Rab5の分布は、OVAの場合と類似していた(図7)。逆に、後期エンドソームマーカーであるLamp-1は、2.5%-30%密度勾配中にフラクション#6と#10の2つのピークを示した。ゴルジマーカーのGM130とリサイクリングエンドソームマーカーのトランスフェリンレセプター(Tfr)は別々に回収された。これら結果の全ては免疫蛍光顕微鏡によって得られた結果と一致した。
[実施例6]Sec61、VCP、CHIPのノックダウンによるクロスプレゼンテーション低下
ERADに関与する細胞構成物質のノックダウンが外来性OVA抗原のクロスプレゼンテーションを低下させるか否かについて、DC2.4細胞とOT-IマウスのナイーブCD8+T細胞とを用いた抗原提示レベルの評価系によって検討した。樹状細胞のモデルとして用いたDC2.4細胞は、マウスMHCクラスIハプロタイプがH-2Kbである。OT-I(H-2Kb)マウスは、H-2Kb分子上に提示されたOVA由来の抗原ペプチド(SIINFEKL)(配列番号15)を認識するT細胞受容体(TCRα,β)を発現するトランスジェニックマウスである。OT-IマウスのCD8+細胞は、DC2.4細胞またはH-2Kbマウス由来のBMDCが提示するOVAペプチドを認識し、活性化される。DC2.4細胞をOVAまたはbOVAでインキュベートして固定した後、さらにOT-IマウスのナイーブCD8+T細胞とインキュベートしたときに、OT-I CD8+T細胞によって産生されるIL-2量は、DC2.4細胞によって提示されたOVA抗原によるT細胞刺激の指標となる。
親またはノックダウンDC2.4細胞を、ラクタシスチンまたはMG-132存在下または非存在下において50μg ml-1ポリミキシンBを添加した培地で30分間プレインキュベートし、OVA(250μg ml-1)またはSIINFEKLペプチド(10ng ml-1)で6時間インキュベートした。細胞を洗浄し、1%パラホルムアルデヒドで固定し、マイクロタイタープレート(1ウェルあたり5x104)に分注した。OT-1マウスの脾細胞から磁性ビーズで精製した5x104 CD8+ T細胞を各ウェルにくわえ、IL-2分泌を24時間のインキュベーションの後にELISA法(BD Biosciences)で三重測定した。
図8aに示すように、OVAとbOVAはCD8+ OT-I T細胞の刺激に対し同等に抗原性を示した。プロテアソーム阻害剤は、予想通りにOVA抗原提示を抑制した(図8b)。逆にNH4Clは、OT-I CD8+ T細胞に対するMHCクラスIとのOVA抗原提示を減少させなかったが、OT-II CD4+ 細胞へのMHCクラスIIとの提示を阻害した(図9)。Sec61、VCPまたはCHIPのノックダウン効果は、siRNA発現ベクターを導入したDC2.4のクローン化していないトランスフェクタント(S22,V41,C4)とクローン化したトランスフェクタント(S22-3,V41-1,C4-1)を用いて試験した(図8c,d)。Sec61はER関連タンパク質の正方向の輸送および逆行輸送の両方に関与していることから、Sec61のノックダウンが細胞外から添加されたOVAの抗原提示を減少させたことは驚くに値しなかった。ER関連タンパク質の逆行輸送に必要なVCPのノックダウンもまた、DC2.4細胞による抗原提示を低下させた。これらの結果は、外因的に添加されたOVAはクロスプレゼンテーションのためにERADを経由して処理されるという本発明者らの仮説を支持する。さらに、DC2.4細胞中のOVA蓄積効果と一致して、CHIPのノックダウンはOVAクロスプレゼンテーションの低下を招いたことから(図8c,d)、クロスプレゼンテーションの際のOVAポリユビキチン化に対するE3ライゲースとしてCHIPが機能していることが示唆される。
[実施例7]小胞体局在配列付加によるポリユビキチン化促進
ER内腔に局在するタンパク質のカルボキシル末端に小胞体局在配列であるKDEL配列(Lys-Asp-Glu-Leu)(配列番号3)を付加すると、ERとゴルジ体間を繰り返し輸送され、そのタンパク質のERADが促進されることが報告されている。そこで、OVAのC末端にKDEL(配列番号3)を付加したものをDC2.4細胞に取り込ませ、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットにより、取り込み後にポリユビキチン化されたOVAを観察した。KDEL配列(配列番号3)付加OVAは、下記のようにして構築および発現させた。OVAをコードするDNA配列を含むプラスミドを鋳型とし,プライマーとしてoligo-1(配列番号10)とoligo2(配列番号11)を用いてPCR法を行なった。増幅した約1100 bpのPCR産物をpCR-Blunt vector(Invitrogen)に導入し、vector-1とした。oligo-3(配列番号12)とoligo-4(配列番号13)をアニールし、得られた約100 bpの遺伝子断片をpCR-Blunt vectorに導入し、vector-2とした。vector-2をSpe Iで消化し、得られた約130 bpの遺伝子断片を、Nhe Iで消化したvector-1に導入し、vector-3とした。vector-3をBamH I/Spe Iで消化したときに得られる約1250 bpの遺伝子断片(OVA-KDEL)を、遺伝子発現用ベクターに導入し、発現させた。KDEL配列(配列番号3)付加OVAアミノ酸配列を配列番号14に示す。
結果を図10に示す。OVAのC末端にKDEL(配列番号3)を付加したものをDC2.4細胞に取り込ませた場合と、OVAを取り込ませた場合を比較すると、基質(OVA-KDEL)のポリユビキチン化が顕著に促進されることが確認された。
また、OVAのカルボキシル末端に(Lys-Asp-Glu-Leu)(配列番号3)を付加してDC2.4細胞に取り込ませ、OT-Iマウス CD8+T細胞を用いた上記抗原提示レベル評価系により、OVAとOVA-KDELの抗原提示レベルを観察した。OVAよりもOVA-KDELの方が、明らかに抗原提示が強く認められた(データ示さず)。
上記結果から、OVAとOVA-KDELを比較すると、OVA-KDELの方がポリユビキチン化をより受けやすく、かつ、より効率よく抗原提示されることがわかった。すなわち、ポリユビキチン化の受けやすさと抗原提示されやすさとの間に相関関係があることが明らかになった。このことから、抗原タンパク質のポリユビキチン化測定結果から、該抗原タンパク質によるクロスプレゼンテーションの強さを予測可能ということができる。
OVAを外部抗原とした場合は、上記のとおり、OT-Iマウス細胞を用いた抗原提示アッセイの構築が可能である。しかし、一般には、特定の抗原に対する特異的TCR発現動物は存在せず、OVAのような抗原提示アッセイの構築は不可能である。したがって、ある抗原の抗原提示されやすさを知る必要がある場合において、抗原タンパク質の樹状細胞への取り込みと抗原タンパク質のポリユビキチン化測定によって抗原提示されやすさを推測することは非常に有用といえる。
[実施例8]Hspによるポリユビキチン化促進
ブタ由来HSP90(10μg/ml)存在下または非存在下で、DC2.4細胞とOVA(0,50,250μg/ml)をRPMI1640/10%FCSで37℃6時間インキュベートした。抗原とHSPを洗浄後、OT-I CD8+T細胞を加えて37℃で一晩培養し、上清に含まれるIL-2量をELISA法で測定した。その結果、OVA単独とインキュベートした場合よりも、より強い抗原提示が認められた(図11-(a))。また、Hsp90濃度依存的に抗原提示能力が高くなった(図11-(b))。
次に、DC2.4細胞をOVAとlactacystin (LC)存在下または非存在下に一定時間インキュベートし、細胞に取り込まれたOVAを測定した。また、Hsp90存在下または非存在下において、細胞に取り込まれたOVAを同様に測定した。Hsp90存在下では、DC2.4細胞は、Hsp90非存在下の場合よりも、より効率よくOVAを細胞内に取り込むことが認められた(図12)。
DC2.4細胞とGST-OVAを、Hsp90存在下あるいは非存在下にインキュベートし、細胞を回収し、抽出液を作製した。SDS-PAGE後、anti-polyubiquitin抗体でウェスタンブロットを行った。Hsp90存在下では、Hsp90非存在下のときと比較して、DC2.4細胞に取り込まれたOVAがより強いポリユビキチン化を受けることが示された(図10)。
上記結果から、OVA単独でインキュベートした場合とHsp90存在下でOVAをインキュベートした場合とを比較すると、後者の場合に、細胞によるOVA取り込み量が増加し、ポリユビキチン化を受ける量も増加することが明らかにされた。この知見から、ある抗原タンパク質の抗原提示測定を行うかわりに、抗原タンパク質の樹状細胞への取り込み及び抗原タンパク質のポリユビキチン化を測定することで代替可能であると結論できる。
[実施例9]樹状細胞(DC)のMHCクラスIIへの外来抗原提示に対する分子シャペロンHSP90の影響
マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を次のとおり調製した。マウス骨髄から細胞を取り出し、GM-CSF,5%FCSを含むRPMI培地を用い、途中培地を一部交換しながら5日間培養した。この培養法によりマクロファージ、樹状細胞などが増えてくるので、CD11c磁気ビーズを用いて樹状細胞のみを回収し、これを骨髄由来樹状細胞(BMDC)として用いた。
上記調製した骨髄由来樹状細胞(BMDC)またはマウス樹状細胞株DC2.4細胞を96ウェル・プレートの1ウェルあたり5×104個ずつまいた。次に、エンドトキシン阻害剤であるポリミキシンB 50μg/ml存在下に、OVA(0,50,250μg/ml)、HSP90(0,10μg/ml)を添加して総液量を200μlとし、37℃で一晩培養した。エンドトキシンはDCを活性化することが知られているので、ポリミキシンBを添加し、試薬、器具などに夾雑した場合の影響を排除した。培養後、上記ウェル中の細胞を2回洗浄し、細胞に取り込まれずに残ったOVAとHSP90を除去した。そこにOT-IIトランスジェニック・マウスより調製したCD4T細胞を1ウェルあたり5×104個加えて総液量を200μlとし、一晩培養した。ウェルを遠心して上清を回収し、上清中のIL-2量をELISA法により測定した。
結果を図13に示す。BMDCはOVAを取り込み、OT-II由来のCD4T細胞を活性化し、IL-2の産生を誘導することが示された。これらの活性化はOVAの濃度に依存的である。しかし、OT-Iマウス由来のCD8T細胞を活性化する場合(図11-(a))と異なり、10μg/mlのHSP90をOVAと同時に細胞に加えても、IL-2産生(DCの活性化)が増強されなかった。一方、この実験で用いたDC2.4細胞はMHCクラスII分子の発現レベルが低く、OT-II由来のCD4T細胞を有意なレベルで活性化しなかった。
OT-Iトランスジェニックマウスは、ovalbumin由来のペプチドがMHCクラスIに提示された状態を認識するT細胞レセプターを持つトランスジェニックマウスである。細胞上のペプチド-MHCクラスIとCD8+T細胞上のT細胞レセプターが反応することにより刺激が入り、T細胞がIL-2を産生する。一方、OT-IIトランスジェニックマウスは、ovalbumin由来のペプチドがMHCクラスIIに提示された状態を認識できるT細胞レセプター持つトランスジェニックマウスである。抗原提示細胞上のペプチド-MHCクラスIIとCD4+T細胞上のT細胞レセプターが反応することにより刺激が入り、T細胞がIL-2を産生する。OT-Iマウス由来のCD8T細胞を用いた場合の結果(図11-(a))及びOT-II由来のCD4T細胞を用いた場合の結果(図13)から、分子シャペロンHSP90は、樹状細胞(DC)による外部抗原OVAのMHCクラスI分子によるCD8T細胞への提示を増強するが、MHCクラスII分子によるCD4T細胞への提示は増強しないことが明らかである。つまり、HSP90はDCによる細胞傷害性T細胞(CTL)の活性化を増強するが、ヘルパーT細胞の活性化は増強しないことがわかった。
[実施例10]HSP添加のタイミングの効果の検討
DC2.4細胞にHSP90(10μg/ml)とOVA(250μg/ml)を加えるタイミングを変えて、そのクラスI抗原提示に対する効果を見た。(i)HSP90を先に加え、DC2.4細胞を洗った後、OVAを添加した。(ii)HSP90とOVAをDC2.4細胞に同時に添加した。(iii)OVAを先に添加し、DC2.4細胞を洗ってからHSP90を添加した。これらの3条件の下で行った結果を比較した。また、全ての条件に対するコントロールとして、HSP90を添加せずにOVAのみを加えた実験も行った。
上記3条件下の実験の手順について、以下に具体的に説明する。
条件(i)では、DC2.4細胞にHSP90を添加して30分培養後、細胞を洗い、HSP90を除いた。次いで、OVAを加えて3時間培養した。その後、OVAを洗って除き、細胞培養液のみで3時間培養した。上記操作によりOVAで活性化されたDC2.4細胞を96穴プレートにまき、そこにOT-Iマウス由来のCD8T細胞を加えて一晩培養後、上清に放出されたIL-2量をELISA法で測定した。
条件(ii)では、DC2.4細胞にOVAとHSP90を同時に添加して3時間培養後、細胞を洗って細胞培養液のみで3時間培養した。以後、OT-Iマウス由来のCD8T細胞の活性化を調べる操作は、上記(i)と同様に行った。
条件(iii)DC2.4細胞にまずOVAを加えて3時間培養後、細胞を洗い、OVAを除いた。次いで、HSP90を添加してさらに3時間培養した。以後は(i)と(ii)に同様に行った。なお、条件(i)〜(iii)において、細胞がOVAと接触している段階とOVAを取り込んだ以降の段階との培養時間が同じになるようにタイミングを設定した。
結果を図14に示す。カラム(H→O)は条件(i)の結果を、カラム(O)はコントロールの結果を、カラム(O+H)は条件(ii)の結果を、カラム(O→H)は条件(iii)の結果を表す。コントロールと比較してIL-2産生量の増大が観察されたのは、DC2.4細胞にOVAとHSP90を同時に添加した条件(ii)の場合のみである。これらの結果は、HSP90の効果は、抗原OVAと同時に添加しないと認められないことを示している。
HSP90のDC2.4細胞のOVAのクラスI抗原提示に対する効果は、HSP90がOVAと共存しないと発揮されないことが明らかとなった。また、一度取り込まれたOVAに対してもHSP90は効果を及ぼさないことも示された(図14カラム(O→H))。HSP90は抗原OVAの取り込みあるいは、そのプロセッシングを増強するということを予想させる。また、この結果は、HSP90がOVAの取り込みをいく分増強すること、および取り込まれたOVAのポリユビキチン化を顕著に増強するという結果(図10)とよく一致している。
本発明は、新たなCTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法を提供した。本発明の製造方法は、抗原クロスプレゼンテーションが増強された樹状細胞を製造することができる方法である。本発明の製造方法によって製造された樹状細胞は、CTL活性化誘導に効果的であるため、癌治療における免疫療法において有効に用いることができると考えられる。

Claims (13)

  1. 抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法。
  2. 下記(a)および(b)の工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法。
    (a)哺乳動物由来の樹状細胞を単離する工程
    (b)抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程
  3. 下記(a)から(c)の工程を含む、CTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法。
    (a)哺乳動物由来の樹状細胞を単離する工程
    (b)抗原タンパク質の樹状細胞内ポリユビキチン化を促進させるポリユビキチン化促進処理工程
    (c)樹状細胞内における抗原タンパク質のポリユビキチン化の促進を確認する工程
  4. ポリユビキチン化促進処理工程が単離された樹状細胞に抗原タンパク質とHSPとを接触させることを特徴とする工程である、請求項1から3のいずれかに記載のCTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法。
  5. HSPがHSP90ファミリーまたはHSP70ファミリーに属するHSPである請求項4に記載の製造方法。
  6. HSP90ファミリーに属するHSPがHSP90である請求項5に記載の製造方法。
  7. ポリユビキチン化促進処理工程がカルボキシル末端に小胞体局在配列が付加された抗原タンパク質を単離された樹状細胞に接触させることを特徴とする工程である、請求項1から3のいずれかに記載のCTL誘導能力を獲得した樹状細胞の製造方法。
  8. 小胞体局在配列がKDEL(配列番号3)である請求項7に記載の製造方法。
  9. HSPを有効成分として含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤。
  10. HSPがHSP90である、請求項9に記載の抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤。
  11. 小胞体局在配列をコードするDNAを含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤。
  12. 小胞体局在配列をコードするDNAを保持するベクターを含む、抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤。
  13. 請求項9から請求項12のいずれかに記載の抗原タンパク質のポリユビキチン化促進剤を有効成分として含む、樹状細胞のCTL誘導能力増強剤。
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