JPWO2005124752A1 - 光記録媒体、光制御装置及び光制御方法 - Google Patents

光記録媒体、光制御装置及び光制御方法 Download PDF

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Abstract

光ディスク等において、使用する光波長と集光レンズの開口数(NA)によって決まる集光ビームウエスト径の最小値があるため、入手可能な光波長と集光レンズ開口数による一定直径の光ディスクの記録容量には限界が存在する。本発明はこの限界を突破して小さいビームウエスト径を得られる光ディスク及びその制御装置を提供する。そのために光ディスクのプラスチック層4の直後、記録層6の直前に薄い(μmオーダー)飽和非線形屈折率媒質層5を設ける。

Description

本発明は、光記録媒体、光制御装置及び光制御方法に関するものであって特に大容量のそれらに関する。
本発明特許で言う光記録媒体とは、記録媒体と光書き込み・読み出し用ヘッドとを相互に移動可能とする機構によって、その記録部に書き込み・読み出しを行う形式の光記録媒体であって、ディスク状、チップ状、カード状、またはテープ状など種々の形態のものを含み得る。
以下、発明の背景技術から発明の実施例までの記述を光記録媒体のうちでも現今最も広く使われている光ディスク状の形態を持つ光ディスクを例にとって行う。他の形の記録媒体についても原理は同じであるから以下の説明が適用される。
近年、光を用いて記録するディスク状の記憶媒体すなわち光ディスクの記録容量の増大には多大の努力が払われ、その成果にも著しいものがある。そして、現在も記録容量増大のため、一層の努力が続けられている。当初は、直径12cmのCD(Compact Disk)と同じサイズ(直径について)のディスク上に標準的な劇場映画1本分のビデオ情報を収容しようということが目標とされた。さらにその後の技術の進展により現在では、より広くデータ処理用をも含めた汎用DVD (Digital Versatile Disk) が光ディスク発展の主流となってきている。また一定面積の光ディスク上への記録容量の向上を行えば光ディスクの読み出し書き込みについてのいわゆるアクセス速度向上も同時に得られる。この点からも面積当たりの記録容量の増大が望まれている。
CDの開発当初は、光源として用いる半導体レーザーの波長が近赤外光の780nmの使用に限られていた。したがって、この波長をもとにして必要な規格が設定され、CDの容量は650MBであった。その後、波長650nmの赤色光を発振する半導体レーザーが開発された。また光ディスクの保護用プラスチック層の厚さの低減にともなって、読み出し書き込み用レンズとして開口数 NA=0.6のものが使われるようになった。そのような波長650nmの半導体レーザーとNA=0.6のレンズを用いるものとして、現今一般に普及しているDVDの記録容量の規格値は4.7GBとなっている。また、近時、波長405nmの青色半導体レーザーの実現、記録層の2層化やプラスチック層のさらなる薄層化、それに伴う使用レンズの高NA化などによって1枚の光ディスクで50GB程度の記録容量が実現されつつある。このことから、ディジタルハイビジョンを6時間直接録画できるほどの大容量の実現が可能になりつつある。
上で用いたレンズの開口数NAとは、焦点距離での結像の際、レンズによって形成される集光ビームの絞り半角をθとして NA=sinθ の値であり、レンズの集光能力と分解能の指標となる。
光ディスク装置への手軽な着脱が可能な従来のベアータイプ光ディスクにおいては、光ディスク表面のよごれや疵などの影響を回避するために、保護層として記録層に密着して設けた透明なプラスチック層は必須の構成要素である。このような光ディスクでは読み取り・書き込み用の光ビームはその透明なプラスチック層を通して記録層にアクセスする。このように、プラスチック層を通して読み書きする場合、使用波長などの他の条件が変わらなければ、上述の現在到達している記録容量は、ほぼ限界に達しているものと考えられている。
このような従来技術の延長線上での数値的改善によるものの他に、大容量化のための新技術として、2光子共焦点読み出し書き込みによる記憶ピットの3次元化、近接場光学系の採用、さらに、必ずしも光ディスク形態とは限らないが、ホログラフィックに3次元化を目指すボリュームホログラフィックメモリーなどが考えられている。
これら従来の諸技術では、それら技術によって得られる従来の規格による光ディスクでは、容量に限界があること、また、TB(テラバイト)容量という超々大容量をも視程に入れた新技術は多くの克服すべき問題点を含んでいて実用化にはまだ多くの歳月を要するものと見られていること、また従来の光ディスク書込み読み取り装置とのコンパチビリティーを欠くことなど、の問題があった。
特開平6−40963 特開平5−225611 特開平5−234136 特開平6−111330 特開2003−121892
従来技術による光ディスク書込み読み取り装置とのコンパチビリティーを維持しつつ製造設備にも大きな変更を加えることなく光ディスクの大容量化を果たせる方法として、特許文献1〜5に記された方法が提案されている。これらの方法においては、いずれも色素系分子(特許文献1〜4)またはナノ微粒体(特許文献5)をポリマーに溶解または分散させた光吸収媒質を用いている。このような媒質は、光強度の増加に対して吸収率が低下し飽和する(光の透過率が増大し飽和する)いわゆる可飽和吸収特性を有している。アクセス用光ビームの断面内強度分布が光ビームの中心部に最大値を持つような通常の光ビームを用いるものとすれば、そのような光ビームが可飽和吸収特性を持つ媒質を通過するとき光ビーム全体にわたって吸収損失を受けるが、中心部に対して周辺部の光強度が低いため周辺部が中心部より大きく減衰させられ、その結果としてビーム径が小さくなりそれによって大容量化を達成することを目指している。しかしこの際光ビーム中心部も減衰を蒙るので大容量化には原理的な限度が存在する。何故ならビーム径の削減にともなって光ディスク記録層へ達するビームエネルギーが減少し、この方法によって大容量化を図ろうとすると、光ディスクの記録に必要なエネルギーが確保できなくなり、記録不能となるからである。また、光ディスク記録層からの反射読み出し光の光量も同様に低下するので、記録読み取りに必要な信号対ノイズ比を確保できなくなることも大容量化率を制限する。
本発明によれば、光記録媒体である現行のCDまたはDVDの光ディスクの製造装置と大部分同じ光ディスク製造装置を使って光ディスクをつくり、その記録層表面上に高屈折率をもつ飽和非線形屈折率媒質の薄層を設置した構造およびそれを設置する製法によって、従来技術よっては打ち破れなかった限界を超えて従来技術による記録容量の2倍ないし10倍あるいはそれ以上の記録容量が得られる。しかも発明の実施においては、光ビームの外周部を減衰または削除する必要がないために光エネルギーの損失が殆ど生ぜず、その結果、良好な信号対ノイズ比が得られる。また、この発明によれば、このようにしてつくった大容量光ディスクを従来の規格と同じ光ディスク装置によって制御すなわち書き込みおよび読み取りがおこなえ、現行の光ディスクのシステムとの間にコンパチビリティーを維持したまま、その大容量光ディスクの書き込み読み取りが可能なシステムを提供することができる。
発明者は、光記録媒体の通過経路上、たとえば、光記録媒体の記録層の入射面上に、ある種の層を含むように構成することにより、記録面に入射する光ビームの直径を格段に小さくできることを見出した。ここに記録面というのは、記録層への入射ビームの入射面に近い記録層の部分を指すものとする。
そのある種の層とは飽和非線形屈折率媒質の層である。その飽和非線形屈折率媒質の層は通常、非線形屈折率材料と呼ばれているものを含んで構成されている。
飽和非線形屈折率媒質とは、屈折率が光強度に依存し、その光強度に対する依存度が飽和する媒質を言う。特に、本発明においては、その依存度の符号がプラスの場合、すなわち光強度の増大に対して屈折率が増加する場合、に限るものとする。このような光強度の増大に対して屈折率が増加するような光強度に対する依存性を、本発明では符号がプラスの非線形屈折率と呼ぶことにする。また、飽和非線形屈折率微粒体とは飽和非線形屈折率媒体材料のナノメータから数十ナノメータ台のサイズを持つ微結晶体を言う。
従来技術の課題を解決するための本特許発明の各観点による手段を以下に述べる。
請求項1の光記録媒体は、記録層へのアクセス用の光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層が高屈折率を有するポリマー中に飽和非線形屈折率微粒体を分散させた材料であることを特徴とする。
このようにすることによって集光ビームスポット径、すなわちビームウエスト径を小さくすることができる。
請求項2の光記録媒体は、記録層へのアクセス用の光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層が高屈折率を有する半導体中に飽和非線形屈折率微粒体を分散させた材料であることを特徴とする。
このようにすることによってビームウエスト径を小さくすることができる。
請求項3の光記録媒体は、記録層へのアクセス用の光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、飽和非線形屈折率媒質層がポリマー中に高屈折率微粒体と飽和非線形屈折率微粒体とを分散させた材料であることを特徴とする。
このようにすることによって、ビームウエスト径を小さくすることができる。
請求項4の光記録媒体は、請求項2の光記録媒体において高屈折率を有する半導体が高屈折率を有するアモルファスシリコンまたはアモルファス化合物半導体であることを特徴とする。
このようにすることによって、ビームウエスト径を小さくすることができる。
請求項5の光記録媒体は、請求項3の光記録媒体において、ポリマーがポリカーボネートまたはポリスチレンであることを特徴とする。
このような材料の選択によって、従来の製造設備をそのまま使うことができる。
請求項6の光記録媒体は、請求項1から5のいずれかの光記録媒体において、飽和非線形微粒体がカーボンナノチューブまたはC60サッカーボールなどのカーボン微粒体であることを特徴とする。
近時、カーボン微粒体の製造法が発展定着し、その安価な利用が可能となってきたことから、このようなカーボン微粒体の使用によって、飽和非線形屈折率媒質層の設置を必要とする本発明をコスト上昇を招くことなく実施することができる。
請求項7の光記録媒体は、請求項3の光記録媒体において、高屈折率微粒体が酸化チタン(ルチル)、酸化ジルコン、シリコン及び化合物半導体からなる群から選ばれた少なくとも1つの高屈折率材料の微粒体であるであることを特徴とする。
酸化チタンや酸化ジルコン、シリコン及び化合物半導体は一般に広く使われている材料であり、その微粒体の使用によって、本発明を安価に実施することができる。
請求項8の光記録媒体は、項請求項1から7のいずれかの光記録媒体において、前記飽和非線形屈折率媒質層を前記録層の入射面に密着して設けたことを特徴とする。
このように構成することによって、記録面上でのビームウエスト径を小さくすることができ、それによって光記録媒体の記録容量を大きくすることができる。
請求項9の光記録媒体は、請求項1から8のいずれかの光記録媒体において、飽和非線形屈折率媒質層と記録層との間に線形屈折率層を含むことを特徴とする。
このようにするっことによって、線形屈折率媒質層内に、短距離のビーム伝搬の間にビーム径変化の急峻なビームウエストを得ることができる。それによって高い位置弁別能を持つフォーカスサーボ系を構成することができ、光記録媒体における光ビームのトラッキングを高精度に実行することができる。
請求項10の光記録媒体は、請求項1から9のいずれかの光記録媒体において、プラスチック層と高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質層との間に無反射コーディング層を含むことを特徴とする。
このようにすることによって、高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質層からのアクセス光の反射を無くすことができ、それによって光記録媒体の書き込みおよび読み取りを容易にすることができる。
請求項11の光記録媒体は、請求項1から10のいずれかの光記録媒体において、飽和非線形屈折率媒質層中に生じるビームウエスト位置の飽和非線形屈折率媒質層のアクセス光ビーム入射側境界面への入射から所定の深さにおける飽和非線形屈折率媒質層の入射側境界面と平行な面を記録面とすることを特徴とする。
このようにすることによって、光源あるいは検出器と記録面との間の共焦点関係をフォーカスサーボ機構を用いて維持することができ、それによって光記録媒体の書き込みおよび読み取りを容易にすることができる。
請求項12の光記録媒体は、請求項1から11のいずれかの光記録媒体において、光記録媒体へのアクセス光ビームの周波数が飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であるアクセス光ビームを用いることを特徴とする。
このようにすることによって、飽和非線形屈折率微粒体による吸収損失を避けながら、微粒体の符号がプラスの共鳴的に大きい飽和非線形屈折率を利用することができ、より小さいビームウエスト径を得ることができる。
請求項13の光記録媒体は、請求項1から12のいずれかの光記録媒体において、光記録媒体へのアクセス光ビームを繰り返しパルス列として、パルスのピーク出力とパルスのデューティー比を独立に調節できる前記アクセス光ビームを用いることを特徴とする。
このようにすることによって、より小さいビームウエスト径を得ることができ、さらに、オーバーライトを含む書き込み、消去、ならびに読み出しに最適な動作状態を得ることができる。
請求項14の光制御装置は、光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体に所定光周波数のアクセス光ビームによって情報を書き込むための光を発する、及びまたはそのアクセス光ビームを光記録媒体に投射して反射された光を読み取るための光制御装置であって、そのアクセス光ビームの周波数が飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であることを特徴とする。
このようにすることによって、飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数での大きな非線形吸収を避けつつ、飽和非線形屈折率微粒体の大きな飽和非線形屈折率を利用することができ、明瞭でかつ小さいビームウエスト径を光損失の少ない状態で得ることができる。
請求項15の光制御装置は、光記録媒体の制御・つまり記録・再生のため繰り返し光パルスを制御する光制御装置であって、前記繰り返し光パルスのピーク光パワーを所望のビームウエスト径を得るに必要な値に保ちつつ、前記繰り返し光パルスの繰り返し周波数と繰り返し光パルスのデューティー比とを独立に変化して、その平均光パワーを記録情報の書き込み、オーバーライト、消去、および記録の読み出し再生などの各動作モードにそれぞれ必要な各平均光パワーに切り換えて動作するレーザー、及びそのレーザを励起して動作させるための励起電源、及びその励起電源の動作モードを切り換えるためのコントローラー、を有することを特徴とする。
このようにすることによって、ビームウエスト径を所望の一定な値に保持しつつ、光記録媒体への記録、光記録媒体からの再生にともなう上記の各動作モードを安定かつ確実に行うことができる。
請求項16の光制御方法は、光記録媒体の記録・再生におけるアクセス光ビームのフォーカスをサーボコントロールする工程であって、光記録媒体の飽和非線形屈折率媒質層と記録層との間に線形屈折率媒質層を設置することによって得られる急峻な(ビーム伝搬方向に対して)ビーム径変化を持つビームウエストの持つ高い位置弁別能を利用することを特徴とする。
この方法によって、高い位置弁別能を持つフォーカスサーボ系を構成することができ、光記録媒体における光ビームのトラッキングを高精度に実行することができる。
請求項17の光制御方法は、光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体に所定光周波数のアクセス光ビームによって情報を書き込むための光を発する工程、及びまたはそのアクセス光ビームを光記録媒体に投射して反射された光を読み取る工程、但しそれらのアクセス光ビームの周波数が飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であることを特徴とする。
この方法によれば、飽和非線形屈折率媒体層によるビームウエスト径縮小の効果を光損失の少ない状態で安定に得ることができ、また、ビームウエスト位置の記録層上への保持に必要なフォーカスサーボコントロールを確実に行うことができる。
請求項18の光制御方法は、光記録媒体の記録・再生のため繰り返し光パルスを制御する光制御方法であって、前記繰り返し光パルスのピーク光パワーを所望のビームウエスト径を得るに必要な値に保ちつつ、前記繰り返し光パルスの繰り返し周波数と繰り返し光パルスのデューティー比とを独立に変化させる工程、前記繰り返し光パルスの平均光パワーを記録情報の書き込み、オーバーライト、消去、および記録の読み出し再生などの各動作モードにそれぞれ必要な各平均光パワーに切り換えるようレーザーを動作させる工程、及びそのレーザを励起してそれぞれの動作をさせるように励起電源の動作モードを切り換える工程、を有することを特徴とする。
この方法によって、ビームウエスト径を所望の一定な値に保持しつつ、光記録媒体への記録、光記録媒体からの再生にともなう上記の各動作モードを安定かつ確実に行うことができる。
請求項19の記録媒体は、波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含む高記録密度の光記録媒体であって、記録媒体の表面が厚さほぼ0.6mmの厚いプラスチック保護層を有する請求項1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12 または 13 のいずれか1つによることを特徴とする。
このようにすることによって、着脱可能なディスクの表面に設けられるプラスチック保護層の厚さを従来ディスクにおける0.6mmに保ったまま、ディスク表面のよごれや疵などの影響を回避でき、ベアータイプのディスク形態を採用することも可能な取り扱いが容易で薄形の大容量ディスクが実現できる。
請求項20の光制御装置は、波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面が厚さほぼ0.6mmの厚いプラスチック保護層を有する請求項19 の高密度光記録媒体を動作させる請求項14または15 のいずれかによることを特徴とする。
このようにすることによって、明瞭でかつ小さいビームウエスト径を光損失の少ない状態で得ることができ、光記録媒体の書き込みおよび読み取りを容易にすることができる。
請求項21の光制御方法は、波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面が厚さほぼ0.6mmの厚いプラスチック保護層を有する請求項19 の高密度光記録媒体を動作させる請求項16, 17 または18のいずれか1つによることを特徴とする。
このようにすることによって、光記録媒体における光ビームのトラッキングを高精度に実行することができ、ビームウエスト位置の記録層上への保持に必要なフォーカスサーボコントロールを確実に行うことができ、かつ、光記録媒体への記録、光記録媒体からの再生を安定かつ確実に行うことができる。
請求項22の記録媒体は、波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含む高記録密度の光記録媒体であって、記録媒体の表面に厚さほぼ0.1mmのプラスチック保護層を有する請求項1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12 または 13 のいずれか1つによることを特徴とする。
このようにすることによって、大容量化が実現する。ただし、この光記録媒体では、プラスチック保護層の厚さがほぼ0.1mmと薄いため、通常、ケース入りの状態で取り扱われる。
請求項23の光制御装置は、波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面に厚さほぼ0.1mmのプラスチック保護層を有する請求項22の高密度光記録媒体を動作させる請求項14, 15 のいずれかによることを特徴とする。
このようにすることによって、明瞭でかつ小さいビームウエスト径を光損失の少ない状態で得ることができ、光記録媒体の書き込みおよび読み取りを容易にすることができる。
請求項24の光制御方法は、波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面に厚さほぼ0.1mmのプラスチック保護層を有する請求項22の高密度光記録媒体を動作させる請求項16, 17 または18のいずれか1つによることを特徴とする。
CD、またはDVD等の光記録媒体の光入射面に高屈折率をもつ薄い飽和非線形屈折率媒質層を設けることで光ディスクの大容量化を実現し、また、その光記録媒体は、現行のCDまたはDVDの光ディスク製造装置を殆ど変更せずに使ってつくることができる。上記の大容量化とは、従来のものの2倍から10倍以上の記録容量とすることである。そしてその大容量化された光ディスクは従来の規格と本質的には同じ光ディスク装置又は光記録媒体装置によって制御すなわち書き込みおよび読みとりができる。従って現行の光ディスクとの間にコンパチビリティーを維持しつつ、本発明による大容量の光ディスクへの書き込みと読み取りが可能なシステムが実現できる。
《発明の基礎的な背景についての説明》
まず、本発明の原理の説明に先立って、従来の集光によって誘電体中で得られる光ビームの集光点でのビーム径について本発明の基礎的な背景を説明する。先にも述べたように、光ディスク装置に手軽に着脱可能な従来タイプのCDやDVDのベアータイプの光ディスクにおいては、光ディスク表面のよごれや疵などの影響を回避するために、保護層であるプラスチック層を通して読み書きアクセス光を光ディスク又は光記録媒体の記録面に集光する構成となっている。
このプラスチック層のような誘電体(Dielectric Material)中のガウスビームについて考える。誘電体の屈折率をnとする。また、ガウスビームの半径を、光強度がビーム軸(z 軸にとってある)上の光強度の1/e2となる円の半径rで表すこととする。ガウスビームの伝搬について示す。ガウスビームをレンズなどによる集光点付近、すなわちビームウエスト付近を光軸に対して直角に離れた側方から見て、光軸をz軸(横軸)とし半径rを縦軸としたプロファイルの図として示すと、それは図1に示す一対の双曲線101で示されるようなものとなる。これら一対の双曲線の一対の漸近線が幾何光学で扱われる光線102に対応している。
光線102とビーム光軸103とのなす角、すなわち、ビーム絞り半角をθd とする。座標原点にある集光点でのビーム半径はビームウエスト半径wd と呼ばれる。ビームウエスト半径wd は周知のガウスビームの理論からの次式で与えられる。
d = λd /(π ・tanθd ) ・・・[1]
ただし、λdは屈折率nd の誘電体中の光の波長であり、それは使用光波長(真空波長)λと
λd = λ/nd ・・・[2]
の関係にある。
通常、CDやDVDの集光系でのθdは0.6ラジアン程度である。このような条件のもとでは、θd ≒tanθd≒sinθdであるから、式[1]を次のように書き換えてもよい。
d = λd /(π ・sinθd ) ・・・[3]
式[3]に式[2]の関係を用いると、wd は次式で表されることになる。
d = λ/(π ・nd ・sinθd ) ・・・[4]
式[4]によれば、他の条件を一定とすれば、誘電体の屈折率nd が大きいほど、それに反比例してビームウエスト半径wd が縮小されることになる。しかし通常、光ディスクについて行われているように光ディスクの外部に置かれた集光レンズで集光する場合には、以下に述べる理由で、そうはならない。
一般に、アクセス用のガウスビームは、プラスチック層の外部から入射される。図2はこの様子を集光用レンズ111を含むディスク100の要部の鉛直方向断面図で模式的に示している。図1におけるz 軸方向は図2においては実際のDVD装置に合わせて鉛直上方にとられており、入射アクセス光ビーム120は下方から上方に向かって進行する(記録面からの反射光は、記録面上にビームウエストがあることにより、入射ビームと同一のプロファイルを上方から下方にたどって進行する)。ディスク100は図の下方から順にプラスチック層104(厚さd)、記録層106、および裏面の基板107を含んでいる。
図2において、集光用レンズ111を出た後のアクセス光ビーム120はプラスチック層104の表面の空気との境界面105で屈折される。この屈折における屈折角は、図2からわかるように、プラスチック層104とそれに接する記録層106との境界面上での光ビームの絞り半角θdに等しい。屈折点における光線の入射角をθとすれば、屈折点において、次の屈折の法則が成立する(空気の屈折率を1として)。
sinθ = nd ・sinθd ・・・[5]
この式[5]を式[4]に代入すれば、
d = λ /(π・sinθ ) ・・・[6]
と書ける。
ここで、比較のため、図2と同じレンズ配置において、光ディスクを取り外して、空気中にビームウエストを生じさせた場合を考える。そのビームウエスト半径をwとしてwを求める。先の誘電体中におけるガウスビームのビーム半径を与える式[4]において、屈折率を nd =1とし、したがって式[2]より λd=λとする。ガウスビームの絞り半角はθであることから、θd=θ とすれば、wは
w = λ/(π・sinθ ) ・・・[7]
と表される。式[6]と式[7]を比較すれば、
d = w ・・・[8]
が結論される。
すなわち、空気中に置かれたレンズによって誘電体中につくられるビームウエスト半径は、屈折率ndの誘電体中にあるにもかかわらず、空気(屈折率=1)中で得られるビームウエスト半径と変わらない。
これは、プラスチック層の屈折率によるビームウエスト半径縮小の効果がプラスチック層表面での屈折によって生ずるビーム絞り角の縮小によるビームウエスト半径拡大の効果によってちょうど相殺されてしまうからである。
ところで、屈折点において入射角θを持つ光線を得るに必要なレンズの開口数(NA)は、そ
の定義によって、sin θに等しい。すなわち、
sinθ = NA ・・・[9]
したがって、式[6]と式[7]は、まとめて
w = wd = λ/(π・NA ) ・・・[10]
と書ける。
式[10]の結果によれば、ガウス光を光ディスクの外部に置かれたレンズによって集光する場合、得られるガウスビームのビームウエスト半径は、屈折率nd のプラスチック層内にあるにもかかわらず空気(屈折率1)中で得られるビームウエスト半径と変わらず(屈折率nd によるビームウエスト半径の縮小は起こらず)、そのビームウエスト半径は使用波長λと集光レンズの開口数(NA)だけで決まる、と結論される。
以上によって、ビームウエスト半径を小さくするには、使用波長λを小さくするか、使用するレンズの開口数NAを大きくするしかない。使用波長λを短くすることについて、通常の着脱可能な光ディスク用光源として用いられる半導体レーザーからの波長として405nmの波長が実現され、それを用いる25GBクラスの次世代光ディスクが既に開発されている。現在の技術の延長線上のものとしてはこのあたりがそろそろ限界だろうと考えられている。また、開口数NAの増大に関しては、プラスチック層を通してアクセスする構造をとる限り、その値をレンズ自体の可能な限界(0.9 程度)にまで増大することはできない。何故なら、プラスチック層表面のよごれや疵などの影響を回避するために、プラスチック層104の表面での集光光束101の直径はよごれや疵などの大きさより十分大きくなければならず、そのためには、プラスチック層104の厚さ d を数100μmオーダーより極端に減らすことができない。何故なら、このように、プラスチック層がある程度の厚さを持つ場合には、レンズの開口数NAが大きいと、光ディスク面が入射光束に対して傾いた場合に発生するコマ収差が許容限度を超えるからである。ここでNAが大きい場合とは、NAの値が約0.6を超える場合のことを言う。
以上に説明してきたように、プラスチック層を通してアクセス光を光ディスクの記録面に集光させる構成の着脱可能な現行あるいは次世代CDやDVDに関しては、その記録容量は先にも述べたようにほぼ限界に達している。このように、従来技術の延長線上では記録容量の大幅な向上が望めない。
《発明の原理》
上記の問題を解決するための方策として、すでに述べたように本発明では、光ディスク内の記録層の光入射面に高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質の層を設ける。以下にこの構成によりビームウエスト半径が小さくなる原理を説明する。
発明者は、飽和非線形屈折率媒質空間に安定に存在する空間ソリトンの性質を利用することに着目した。ここに言う媒質の屈折率の光非線形性とは媒質の屈折率が光強度に依存する性質を指している。その光強度依存性の符号が先述のとおりプラスである媒質及び状態、すなわち、屈折率が光強度に依存して増大する媒質とその状態においては、光ビーム断面内において強度の大きい部分の屈折率が増大する。それ故、基本ガウス分布のような単純な単峰性の強度分布を有する光ビームに対しては、この媒質は一種の凸レンズ効果を呈し、光ビームの伝搬とともに、もともと強度の大きい部分にますます光が集中することとなる。その結果ビーム径はその部分ではますます収縮することとなる。他方でビーム径の収縮は光の回折効果を増大させるので、ビーム径は広がろうとする。そこで、非線形性による収縮と回折効果による発散とが釣り合えば、ビーム径は一定値を保つことになる。しかし、屈折率の増大分の光強度依存性が光強度に対して比例的(1次関数)である場合には、光ビームの伝搬にともなう収縮が累積的に起こるので、収縮効果の方が回折による発散効果を上回る。そのため、光の伝搬空間内に過度な強度集中が急激に起こり、一般には光ビームは崩壊する。実際には、光強度レベルが大きい場合、媒質内にブレークダウンが起こり、光ビーム伝搬は不可能となる。
実際の媒質においては、一般的に、屈折率のこのような光強度依存性(強度に対する比例的依存性)は光強度の増大に対して無制限には維持できず飽和する。非線形性がこのように飽和する場合、光ビームの伝搬にともなう光強度の集中には限界が存在することとなる。その結果、ビーム径の収縮にも限度が生じ、このため光ビームは伝搬とともに、この集束効果と発散効果とがバランスするビームに落ち着き、ビーム断面内強度分布も一定形状をとることとなる。この伝搬にともなって一定形状の定常な強度分布に落ち着いた状態の光ビームが先にあげた空間ソリトンビームであり、その一定形状の強度分布はソリトンモードと呼ばれる。空間ソリトンという呼びかたは、光ファイバー中のソリトンがその伝搬軸上に、したがって時間軸上に存在することから時間ソリトンと呼ばれているのに対して、空間ソリトンはその伝搬軸方向を法線方向とする2次元面空間内に一定形状を保って存在することに由来している。上に述べてきたように、空間ソリトンは飽和非線形屈折率媒質内においてはじめて安定に存在することはすでに周知である。
空間ソリトンのモード分布関数は、その基本モードについて、線形媒質内の基本ガウスビームの基本ガウス分布にほぼ近くなることが知られている。以下に、この基本モードについて説明する。
本発明は、以上に述べてきた一定形状のソリトンが生成されるまでの過渡的なソリトン伝搬の光ビーム集束効果を利用するものである。
いま、空間ソリトン伝搬が可能な飽和非線形屈折率媒質内に外部から光ビームを入射して空間ソリトンを励起する場合を考える。その励起ビーム径が入射パワーで決まる一定のビームモード径よりも大きい場合には、回折効果による発散力よりも飽和非線形屈折率性による収縮力の方が上回るので、先に述べた定常なソリトンモードに収斂するまでの過程で、集束する過渡的な空間ソリトン伝搬が起こる。
この集束する過渡的な空間ソリトン伝搬では、入射する光ビーム自体によって飽和非線形屈折率媒質内に凸レンズが生成され、それによって光ビームの収束が起こっていると言える。このように誘電体媒質内に集光レンズが存在する場合には、光ビームは、このような内部のレンズによる集束を受けた後も記録面に達するまで空気との境界面を通過することがないので、誘電体外部に置かれた従来のレンズによる集束の場合に境界面で起こっていた光ビームの屈折による収束のキャンセレーションは起こらない。したがって誘電体外部の空気中に置いたレンズによって集束した場合に課せられていた式[10]の制約が存在しない。このことは先にも述べた通りである。その場合には、誘電体媒質中の集光レンズによって集束した場合に成立する式[4]をそのまま使うことができる。すなわち、誘電体媒質の屈折率がビームウエスト半径の縮小に直接寄与できることとなる。これが本発明の基本的な原理となっている。
本発明によれば、プラスチック層を通して読み書きアクセス用光ビームを光ディスクの記録面に集束する構成の着脱可能な光ディスクの従来技術による現行の、あるいは次世代の、CDまたはDVDの記録容量を簡単な構造によって増大させることができる。その構造とは単に飽和非線形屈折率層を記録面に密着して設けることである。その増大の率は、本発明によって得られるビームウエスト半径wd に対する従来技術によって得られるビームウエスト半径wの比の2乗、すなわち(w/wで与えられる。先述の式[4]と式[7]との比較により w/w=n であるから、増倍率はn 、すなわちビームウエストが存在する場所の誘電体の屈折率nの2乗で与えられる。本発明では誘電体は飽和非線形屈折率媒質である。そこで、飽和非線形屈折率媒質の屈折率を1.6 から3.5の高屈折率の範囲とすれば、本発明による記録容量の増大率は2.6 から10倍またはそれ以上となる。またそれにともなってアクセススピードの向上の効果が得られる。
また、以上述べてきた原理は、保護層であるプラスチック層を有する従来技術によるCDやDVDのみならず、種々の新技術によるプラスチック層を持たない表面記録型やその他の光ディスクに対しても適用可能である場合には、これを適用することによって、それぞれの新技術によって得られる記録容量ならびにアクセススピードを、飽和光非線形屈折率層を設けることによって得られる増大率だけ向上させることができる。このことはディスク形状のみならず、その他のたとえば今後発展が考えられるカード形状やチップ形状、さらにはテープ形状の媒体に対しても、その媒体が光書き込み・読み出し用ヘッドと相互に移動可能な機構によって書き込み・読み出しを行う形式の光記録媒体である場合には光ディスクの場合と同様に適用できる。
以上に本発明の原理を定性的に説明してきた。以下では、飽和非線形屈折率媒質内の空間ソリトンビームの振舞いを過渡的な過程をも含めて、計算機シミュレーションを用いて定量的に説明し、その実現可能性を示す。
シミュレーションには、下に示す非線形光伝搬偏微分方程式、式 [11]を用いる。この非線形偏微分方程式は非線形シュレーディンガー方程式として広く知られた方程式である。
Figure 2005124752
このシミュレーションでは、光ビームの伝搬座標(z軸)ならびにそれに垂直な断面内座標(x,y軸)について、これらを使用波長ならびに扱っているビーム径に比べて十分細かいメッシュに区切って、上の式[11]を差分方程式に置き直し、収束条件を十分確認して行った。
式[11]中の飽和非線形屈折率媒質の屈折率nの光ビーム強度に対する依存性は次の式[12]で与えられる。
n = n0 + n2 I S { 1 − 1/(1+I/IS )} ・・・[12]
式 [11]、 [12] 中に表れる変数、係数の対応する物理量は以下の通りである。
i : 虚数単位
E : 複素光電界振幅 E=E(x,y,z)
I : 光強度 I=I(x,y,z)∝|E(x,y,z)|
x,y : 光伝搬軸に垂直な(x,y)断面内での直交座標
z : 光伝搬軸方向座標
k : 真空内自由空間の伝搬定数 k=2π/λ. ただしλ:使用波長(真空波長)
β : 媒質内z軸方向の伝搬定数
n : 式[12]で与えられる飽和非線形屈折率媒質の屈折率
0 : 線形屈折率
2 : 非線形屈折率
IS : 屈折率の飽和パラメ−タ
なお、式[11]、 [12]の有効性は、非線形屈折率n2 をゼロと置いた場合、通常のガウスビーム伝搬が厳密に再現できることで確認した。
飽和非線形屈折率媒質は、光ディスクないし光記録媒体アクセス用として用いられている半導体レーザーなどからの低出力光源に対して十分な非線形屈折率を有すると同時にその線形屈折率が大きい、いわゆる高屈折率性の材料であることが望ましい。ここで、高屈折率とは、屈折率1.6超のものを指すものとする。
素材自体で大きい非線形屈折率と高屈折率をあわせ持つものとしては、III - V族化合物半導体の多重量子井戸構造中の室温エキシトン共鳴効果によりエンハンスされた光非線形性に基づくものが候補にあげられるが生産性が低い。
そこで、以下の混合材料を検討した。
(1)高屈折率を有するポリマーをベース材として、これに飽和非線形屈折率微粒体を分散させた混合材料。
(2)高屈折率を有する半導体をベース材として、これに飽和非線形屈折率微粒体を分散させた混合材料。
(3)ポリマーをベース材として、これに高屈折率微粒体と飽和非線形屈折率微粒体を分散させた混合材料。
上記の3種類の混合材料に対して必要な各素材としては、以下のものを用いる。
(A)高屈折率を有するポリマー:アリル系(アリル基を含む)ポリマーのごとき高屈折率ポリ
マー。
(B)高屈折率を有する半導体:アモルファスシリコン、アモルファス化合物半導体。
(C)ベース材料としてのポリマー:ポリカーボネート、ポリスチレン。
(D)高屈折率微粒体:酸化チタン(ルチル)、酸化ジルコンまたはシリコン、化合物半導体などの微粒体。
(E)飽和非線形屈折率微粒体:カーボンナノチューブ、C60サッカーボールのごときナノ微粒体構造によって共鳴的にエンハンスされた飽和非線形屈折率をもつ微粒体。
下記の本発明の実施例では、飽和非線形屈折率媒質として、光ディスクまたは光記録媒体製造上の容易性、安定性、コスト、ならびに非線形性の応答速度などの観点から材料を選定しなければならない。
本特許発明の光ディスクによれば従来例にくらべて記録密度が高まり、それによって記録容量が増大する。記録密度の増大によって記録書き込みならびに記録読み取り再生のアクセス速度の向上も可能となる。したがって、本発明を実施するための基本的構成部材である飽和非線形屈折率媒質層を構成する飽和非線形屈折率媒質の光に対する応答速度が上記向上したアクセス速度に対応するだけ十分高速なものであることが好ましい。上に述べたカーボンナノチューブ又は半導体の微粒体などの飽和非線形屈折率媒質の非線形屈折率は材料物質原子の最外殻電子遷移に由来するものであることから、その応答速度はピコ秒台のものであり、それを分散させた飽和非線形屈折率媒質層は大容量光ディスクの記録再生に必要なアクセス速度を十分上回る応答速度を持っている。
シミュレーションには現在実用化されているDVDの規格に本発明を適用するものとして、次の[表1]のパラメータを設定した。

[表1]
アクセス用光ビームの波長: λ = 0.65μm
集光レンズの開口数: NA = 0.6
入射ガウスビームのビーム半径: win = 0.34μm (z = 0 において)
入射ガウスビームの位相条件: 等位相面 : 平面(ビームウエスト条件)
入射光ビームとして、プラスチック層外部に置かれたレンズによって形成されたガウスビームがプラスチック層を通して飽和非線形屈折率媒質の入力端面にビームウエストを持つように入射する光ビームを採用する。このビームウエストの半径winは、先に式[10]で示した、同一波長、同一レンズによって空気中で得られるビームウエスト半径wに等しい。[表1]中の入射光ビームのビーム半径win (0.34μm)は、表中のλとNAの値を式[10]に代入して得たwの値である。
飽和非線形屈折率媒質のベース材料となるポリマーとしては、先にあげたもののうち、アリル系ポリマーのごとき高屈折率を有するポリマーを用いる。すなわち、アリル系ポリマーにカーボンナノチューブを分散させた材料を飽和非線形屈折率媒質として用いる。この材料は比較的低コストであり、しかも、十分高速なアクセススピードを持っている。また、ポリカーボネートポリマーに近いアリル系ポリマーを主体とする材料であることから従来のDVDの製造プロセスをそのまま使えるメリットがある。
上記のアリル系ポリマーを主材とする材料のパラメータは、次の[表2]の通りである。

[表2]
非線形屈折率: n2 = 5×10- 122/W
飽和パラメータ: IS = 1011 W/m2
線形屈折率 : n0 =1.65

[表2]中の飽和非線形屈折率層の線形屈折率には、アリル系ポリマーの屈折率である1.65を用いた。この屈折率の値は飽和非線形屈折率層の光ビーム入射端に接するプラスチック層の素材であるポリカーボネートの屈折率、1.6に近い。
入力光ビームの入力パワーPin として波長λ=0.65μmの半導体レーザーに対して、Pin =30mWとした。このPin の値と[表2]のn2 、IS の値の組み合わせによって、飽和非線形屈折率媒質の非線形性による屈折率の変化率はほぼ10%程度となる。以後の計算例においても飽和非線形屈折率媒質の非線形性による屈折率の変化率は同様である。
図3に、計算機シミュレーションの結果を伝搬距離 z に対するビーム半径 r の変化を示すカーブ(ビーム半径プロファイル)で示す。グラフの横軸zと縦軸rはいずれもμm単位で表した距離であるが、図3では縦軸rのスケールが横軸zに対して大きく拡大されている。ここに、入射ガウスビームのビーム半径winとは、ビーム横断面の上でのビーム内強度分布がビーム中心強度の1/e2 となる円の半径である。図3中に符号110で示したビームプロファイルの最初の部分は、後出の図5の光ディスク構造断面図中の飽和非線形屈折率層内のビームプロファイル110に対応する。
計算機シミュレーションの結果は以下のように説明される。
入射光ビームは入射端面(z=0)でビームウエストを持つようにしているので、入射電界はz=0において平面の等位相面を持つガウス分布光である。したがって入射光ビームの飽和非線形屈折率媒質層内での光ビーム伝搬のごく初期には平面波として入射ビーム半径を保って伝搬する。 しかし、以上に設定したパラメータと入力パワーのもとでは、飽和非線形屈折率媒質の非線形性による凸レンズ効果のためビーム半径減少の効果の方が回折による発散効果を上回っているため、ビームはその半径を減じはじめる。ビーム半径が減少すると、ビーム中心付近の入力パワー強度が増大し、それにともなう屈折率の上昇が起こり凸レンズ効果が増大し、さらなる半径の減少が起こることとなってビーム半径は急速に減少する。しかし、飽和非線形屈折率媒質においてはその飽和非線形性のために屈折率増大に限界がある。このためにビーム半径の減少の効果にも限界が現れる。それによりビーム半径の縮小にともなう回折による発散効果の増大も起こり半径減少の速度は徐々に減じる。やがて、発散の効果が回折の効果を上回ることとなり、ビーム半径の最小点が現れ、その後ビーム半径は増大に転じる。
上に述べたビーム半径の最小点を飽和非線形屈折率媒質中のガウスビームのビームウエストと考えてもよい。入力端での光ビームを線形媒質中のガウスビームのビームウエストに選んだので、これを第1のビームウエストと呼ぶことにすれば、この飽和非線形屈折率媒質中のビームウエストを第2のビームウエストと呼ぶことができる。ビーム半径が第2のビームウエスト半径にまで減少してから後のビーム半径の増大は回折による発散効果を減じるので、やがて、非線形性による半径減少効果が回折による発散効果を上回り、ビーム半径の最大点が現れビーム半径は減少に転じる。以後、同様の過程によって、ビーム半径の減少と増大が振動的に繰り返され、第3、第4のビームウエストが現れる。この振動の過程で、ビーム半径は振動の都度、半径減少と発散の釣り合うビーム半径を経過するので、半径の振動の振幅は徐々に釣り合い点へと収斂し、やがて、図3に見るように過渡的なソリトンビームから、距離zが図3の右の方に進むにつれて、釣り合い半径を半径rとする定常な基本ソリトンビームへと落ち着いてゆく。
第2のビームウエストまでの伝搬距離を z2 、第2のビームウエストのビームウエスト半径をwとして図3中に示した。本シミュレーションでは、 z2 =1.1μm、w2 =0.22μmであった。
以上のシミュレーション結果に現れた第2のビームウエストにおける光ビーム波面は平面となっている。すなわち、光源と共焦点関係を持っている。したがって、この第2のビームウエストを生ずる伝搬距離(または深さ)z2 を飽和非線形屈折率媒質層の厚みとして、飽和非線形屈折率媒質層のビーム入射側の境界面入からz2の深さにおける飽和非線形屈折率媒質層の入射側境界面と平行な面に記録面を置くことによって、第2のビームウエストを記録面での書き込み・読み出しを行う集光ビームスポットとして用いることができる。
また、光ディスク又は光記録媒体において必要となる光ビームのフォーカスのサーボコントロールに上に述べてきた第2のビームウエストを利用することができる。すなわち、第2のビームウエスト位置が記録面からずれることによる記録面からの反射光量の変化を変調微分方式などによってずれの符号(光軸の前の方にずれているか後の方にずれているかの)をも含めて検出し、それをエラー信号として集光レンズの位置を制御することによって光ビームのフォーカスサーボコントロールが実現できる。
第2のビームウエストのビームウエスト半径は w=0.22μmであった。この0.22μmのビームウエスト半径は現用のDVDに用いられているビームウエスト半径に相当する入力端でのビームウエスト半径 win =0.34μmに対して(0.22μm/0.34μm=) 1/1.6 と減少している。このビームウエストの半径減少率は、使用した飽和非線形屈折率媒質の線形屈折率n0 =1.65で決まる1/n0 の値によく一致している。
以上の結果は飽和非線形屈折率媒質内部に光ビームによって形成された凸レンズ効果によってもたらされたものである。そのビームウエストの半径減少率は、先に述べた光ディスクまたは光記録媒体の外部に配置された集光用レンズによっては超えられなかった式[10]の従来技術による制約を超えて、式[4]による誘電体中のビームウエストを実現できたことを示している。
上に述べた計算機シミュレーションの結果にもとづいて、また、後に行うシミュレーションにもとづいて本発明の実施例を以下に述べる。
本発明の第1の実施例の構成を図4に示す。この図4は光ディスクアクセス用の集光レンズ1及び部分4、5、6、7からなる実施例の光ディスクの及び光ビームの断面を模式的に示したものである。ディスク形状以外の光記録媒体、たとえばカード状又はテープ状のものにおいても、断面とその中の光ビームの形状は同じである。したがって以下の実施例の説明では、これらのディスク形状以外の記録媒体も含める意味でそれらの代表例として光ディスクの名称を用いることにする。光ディスクへの情報の書き込み・読み出し用のアクセス光ビーム20は、その波長がλ=0.65μm、そのビーム断面内強度分布が基本ガウスモードであるガウスビームである。ガウスビームであるアクセス光ビーム20を図2と同様に、z軸方向のビームの伝播距離zとウエスト半径wの関係で示すビームプロファイルで示した。このアクセス光ビーム20は、光ディスクの外部下方の空気中に置かれた開口数NA=0.6の集光用レンズ1によって、プラスチック層4を通して、プラスチック層4の底面45 付近に集光されるよう配置されている。プラスチック層4の底面45(図4において層4の上側の面)には、通常のDVDにはない高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質層5が新たに設けられている。飽和非線形屈折率媒質層5に入力されるアクセス光ビーム20の半径は、光ディスク外部においた集光用レンズ1を用いて従来技術により、先のシミュレーションに用いたビーム半径 win =0.34μm 程度に保つことができる。飽和非線形屈折率媒質層5の厚さ t は、先の計算機シミュレーションによって得られた第2のビームウエストを生じる伝搬距離z2 =1.1μmに選んである。飽和非線形屈折率媒質層5の底面56(図4では層5の上側の面)には情報が記録される(または、記録されている)記録層6が設けられている。上の飽和非線形屈折率媒質層5の厚さt の選択によって、飽和非線形屈折率媒質層5と記録層6との境界面(前記底面56に同じ)におけるビーム半径を、先の計算機シミュレーションで得た飽和非線形屈折率媒質中に生じる第2のビームウエストの半径 、w2=0.22μmにまで絞ることができる。またこの第2のビームウエストの位置は、既知のフォーカスサーボコントロール技術により常に飽和非線形屈折率媒質層5と記録層6の境界面56上に来るように保たれる。記録層6の底面(図4では層6の上側の面)には、記録層6を支持し保護する裏面の基板7が設けられている。
光ディスク又は光記録媒体内部での光ビームの挙動を詳しく説明するために、図4の光ディスク又は光記録媒体の断面構造図中の破線枠8で囲まれた領域を拡大して図5に示す。図5のプラスチック層4内では光ビームは、幾何光学としての表示による光線によってではなく、ガウスビームプロファイル101によって示した。また、飽和非線形屈折率媒質層5内では先の図3中に示したシミュレーション結果のビームプロファイル110の第2のビームウエストまでの部分で示した(ただし、この図5では、図の横方向と縦方向の距離のスケールを同程度にとったので、ビームプロファイル110の形状が図3中のビームプロファイル110のものにくらべてビームの伝播軸zの方向に引き伸ばされた形となっている)。飽和非線形屈折率媒質層5は、一般にプラスチック層の材料として用いられているポリカーボネートまたはアリル系ポリマー中にカーボンナノチューブを分散させたものである。したがって、その層5の線形屈折率n0 は、プラスチック層4の材料であるポリカーボネートの屈折率1.6にほぼ一致しており、それにより飽和非線形屈折率媒質層5とプラスチック層4の境界面45における反射は低く抑えられる。記録層6には、DVDの用途に応じて、たとえば、DVD−ROMの場合にはエンボスピット層、DVD−Rの場合には色素層、あるいは、DVD−RWの場合には相変化記録材料層などを用いればよい。また、この記録層6の底面部(図5では層6の上側の面)には、読み出し戻り光をよく反射するための反射層67を含んでもよい。反射層67としては、好ましくは厚さ1μm程度のアルミニウム蒸着層を用いうる。
飽和非線形屈折率媒質層5と記録層6の境界面56にある記録層の表面は光源と共焦点関係を維持しているので、記録層境界面56からの読み取り反射光は入射光ビームと同一のビームプロファイルを持ち、その進行方向は光検出器(図示していないが図5の下の方)へと、入射光ビームとは逆方向に伝播して光検出器での読み出しが可能となる。
飽和非線形屈折率層5についてのパラメータ値を表2の値によって行った先のシミュレーション結果によれば、以上の構成によって、飽和非線形屈折率媒質層5の入力端面45では win =0.34μmであったビーム半径が記録層6の入力境界面56ではw=0.22μmとwin の1/1.6に縮小され、ディスクの記録容量は現用のDVDの2.6(1.6の2乗)倍の増大が期待できる。なおこの実施例におけるプラスチック層4は厚さ0.6mmのポリカーボネートであり、その屈折率は約1.6である。飽和非線形屈折率媒質層5は厚さ約1.1μmであり、その屈折率は、ベース材として用いたアリル系ポリマーの屈折率1.65に近いので、プラスチック層4と飽和非線形屈折率媒質層5との境界面における光の反射は小さく保たれる。記録層6は相変化記録媒体の場合はカルコゲナイド化合物材料の1μm以下の層、なお、色素記録媒体の場合は有機色素化合物の1μm以下の層、また裏面を保護する裏面の基板7は厚さ0.6mmのポリカーボネートの層である。
実施例1の基礎となった図3のシミュレーション結果でも示されたように、飽和非線形屈折率媒質層を設置することによって、[式4]による誘電体中でのビームウエスト半径wdがほぼ実現できた。すなわち、飽和非線形屈折率媒質層を設けることによって得られる入力ビーム半径winから飽和非線形屈折率媒質中の第2のビームウエスト半径wへの縮小率w /win は、飽和非線形屈折率媒質の線形屈折率n0 に依存し、w /winの値はn0 に反比例して縮小されることが示された。
そこで、本実施例では、線形屈折率n0の値がより大きい飽和非線形屈折率媒質の使用を検討する。このような高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質は、実施例1と同様、アリル系などのポリマーにカーボンナノチューブを分散させた材料であるが、さらに、屈折率を増大するために、カーボンナノチューブと同時に酸化チタン(ルチル)または酸化ジルコンのナノ微粒体を分散させた材料を用いる。酸化チタン(ルチル)または酸化ジルコンの屈折率は2.3 であり、酸化チタン・ナノ微粒体のポリカーボネートへの分散による総合的線形屈折率n0 としては2.1のものが実現されている。
ルチル・ナノ微粒体とカーボンナノチューブを分散させたポリカーボネートを飽和非線形屈折率媒質として使用した場合について、計算機シミュレーションを実施した。シミュレーションに使用したパラメータを次の[表3]に示す。 線形屈折率が n0=2.1であること以外は[表1]、[表2] のパラメータに等しい。

[表3]
アクセス用光ビームの波長: λ = 0.65μm
集光レンズの開口数: NA = 0.6
入射ガウスビームのビーム半径: win = 0.34μm(z = 0 において)
入射ガウスビームの位相条件: 等位相面 : 平面(ビームウエスト条件)
非線形屈折率: n2 = 5×10- 122/W
飽和パラメータ: IS = 1011 W/m2
線形屈折率 : n0 = 2.1
入力パワー: Pi n = 30mW
シミュレーションの結果を図6に示す。図中に符号110で示したビームプロファイルの最初の部分は後出の図7のディスク構造断面図中に示すビームプロファイル110に対応する。伝搬にともなうビーム半径の変化の様子は、実施例1の場合(n0 =1.65)の様子に似ている。第2のビームウエストを生じる伝搬距離 z2 は z2 =1.2μm であった。本実施例ではn0=2.1と大きくとったことによって飽和非線形屈折率媒質中で得られる第2のビームウエスト半径 w2 は w2=0.18μmとなり、実施例1の場合にくらべてさらに縮小されている。第2のビームウエスト半径の縮小率 は w2 /win =0.18/0.34=1/1.9で、この結果は、縮小率がn0 の値に依存し、具体的には 1/n0 で与えられるという先の予想、1/n0 = 1/2.1に近い値を示している。この縮小率による光ディスク記録容量の現用のDVDに対する増加率は約3.6(1.9の2乗)倍である。
上のシミュレーション結果にもとづく本実施例の光ディスク要部断面の拡大図を図7に示す。本実施例では、飽和非線形屈折率媒質層5の厚さtは、上のシミュレーション結果の z2 に合わせて t = 1.2μmに選んである。なお、この実施例におけるプラスチック層4は厚さ0.6mmのポリカーボネートであり屈折率は約1.6である。記録層6は相変化記録媒体の場合はカルコゲナイド化合物材料の1μm以下の層、なお、色素記録媒体の場合は有機色素化合物の1μm以下の層であり、また裏面の基板7は厚さ0.6mmのポリカーボネートの層である。
飽和非線形屈折率媒質の線形屈折率をn0 =2.1としたので、飽和非線形屈折率媒質層6とプラスチック層4として用いているポリカーボネートの屈折率1.6との間にかなり差がある。したがって、プラスチック層4と飽和非線形屈折率媒質層5との境界面45で反射が生ずる。この反射をなくすために、プラスチック層4と飽和非線形屈折率媒質層5との境界面に無反射コーティング層9を挿入している。 この構成によって、小さいビームウエスト半径w2(0.18μm)が得られ、それにより、記録容量の従来比3.6倍の増加が反射光量の損失を伴わずに得られる。
実施例1、実施例2によって、飽和非線形屈折率媒質層の付加により飽和非線形屈折率媒質中のビームウエスト半径w2はほぼ飽和非線形屈折率媒質の線形屈折率n0 に反比例して縮小されることが示された。
線形屈折率n0 のより大きい材料として種々の半導体や金属の酸化物が考えられる。ここでは、このような高屈折率を有する飽和非線形屈折率材料として、アモルファスシリコンまたはアモルファス化合物半導体にカーボンナノチューブを分散させた材料を用いる。半導体の中ではアモルファス半導体が光ディスク製造の観点から望ましい材料である。これら高屈折率材料の屈折率は2.5から3.5付近にある。たとえば、アモルファスGaAsにカーボンナノチューブを分散させた飽和非線形屈折率媒質の線形屈折率n0 としては3.0付近の値が得られると考えられる。
カーボンナノチューブを分散させたアモルファス半導体を高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質として使用した場合について、計算機シミュレーションを実施し、飽和非線形屈折率媒質中でのビームウエスト半径を求めた。シミュレーションに使用したパラメータを次の[表4]に示す。 線形屈折率の n0 =3.0以外、[表3]のパラメータに等しい。

[表4]
アクセス用光ビームの波長: λ = 0.65μm
集光レンズの開口数: NA = 0.6
入射ガウスビームのビーム半径: win = 0.34μm
入射ガウスビームの位相条件: 等位相面 : 平面(ビームウエスト条件)
非線形屈折率: n2 = 5×10- 122/W
飽和パラメータ: IS = 1011 W/m2
線形屈折率 : n0 = 3.0
入力パワー: Pi n = 30mW
シミュレーションの結果を図8に示す。図8中に符号110で示したビームプロファイルの最初(左端)の部分の区間a−bは後出の図9の光ディスク構造断面図中のビームプロファイル110の区間a−b部に対応する。第2のビームウエストを生じる区間a−bのz軸方向伝搬距離 z2 は z2 = 1.3μm であった。本実施例では飽和非線形屈折率媒質6の線形屈折率n0 を実施例1の場合(n0 =1.6)または実施例2の場合(n0 =2.1)よりさらに大きくn0 =3.0をとった。このような高屈折率を有する飽和非線形屈折率媒質6中で得られる第2のビームウエスト半径 w2 は w2=0.14μmと、実施例1または実施例2の場合に比して、さらに縮小されている。ビームウエスト半径の縮小率w/win は w/win=0.14/0.34=1/2.4であり、この値は実施例2の場合と同様、縮小率がn0 の値に依存し、1/n0 で与えられるというさきの予想の、1/n0 = 1/3.0に近い値であった。この縮小率による光ディスク記録容量の、現用のDVDの記録容量に対する増加率は約5.8(2.4の2乗)倍である。
上のシミュレーション結果にもとづく本実施例の光ディスク要部断面の拡大図を図9に示す。
本実施例では、飽和非線形屈折率媒質層5の厚さtは上のシミュレーション結果の z2 に合わせて t = 1.3μmに選んである。本実施例においても飽和非線形屈折率媒質層6の線形屈折率 n0 =3.0とプラスチック層4として用いているポリカーボネートの屈折率1.6とが異なっているため、プラスチック層と飽和非線形屈折率媒質層との境界面に無反射コーティング層9が挿入してある。なおこの実施例におけるプラスチック層4は厚さ0.6mmのポリカーボネートであり屈折率は約1.6である。記録層6は相変化記録媒体の場合はカルコゲナイド化合物材料の1μm以下の層、なお、色素記録媒体の場合は有機色素化合物の1μm以下の層、また裏面を保護する裏面の基板7は厚さ0.6mmのポリカーボネートの層である。
以上の各実施例においては、シミュレーションの入力端における境界条件として、外部集光レンズによる入射光ビームのビームウエストをすべて飽和非線形屈折率媒質層の入射面に一致させる配置をとった。しかし本特許発明を実施するためには、この配置は必ずしも必要条件ではなく、飽和非線形屈折率媒質層中で発生する第2のビームウエストを記録層6の入力面近傍部の記録面に一致させる配置であればよい。その配置によって光源と記録面上のビームウエストの共焦点関係が維持される。
以下に述べる実施例4(図10及び図11)においては、外部集光レンズによる入射光ビームのビームウエストを飽和非線形屈折率媒質層の入射面にではなく、直接、記録層6の入力面56に一致させるように入射させた。外部集光レンズのNAは先の実施例3と同じくNA=0.6とした。その他のパラメータは実施例3のものと同じである。
図10は実施例4のシミュレーションの結果である。図中に符号110で示したビームプロファイルの最初の部分の区間a−bは後出の図11のディスク構造断面図中のビームプロファイル110の区間a−b部に対応する。本シミュレーションの結果では、記録層6の光ビーム入力面56上のビームウエストである第2のビームウエスト(但しこのシミュレーションでは第1のビームウエストは存在しない)以後ビームは発散してしまう。飽和非線形屈折率媒質層5への入射がビームウエストにおいてではないので、入射面でのビーム半径はビームウエスト入射の場合より大きい(入射ビーム半径win =0.4μm)が、収束状態で入射するためにビームの回折広がりが抑えられ、記録層6への入力面56上での第2ビームウエストの半径w2 は w2=0.11μmにまで絞られている。また図10に示す第2ビームウエストの位置z2はz2=0.8μmである。
ビームウエスト半径の縮小率は、実施例3(ビームウエスト状態で入射)におけるビームウエスト入射時の入射面でのビームウエスト半径win=0.34μmと比較して、w/win=0.11/0.34=1/3.5である。この実施例での結果は、縮小率が飽和非線形屈折率媒質層の線形屈折率の逆数1/n=1/3以上に縮小されていることを示しており、入力が収束状態で行われている結果、強度な集光が行われて飽和非線形性によって増大した屈折率で決まる縮小率が得られることを示す。得られた縮小率によるディスク記録容量の現用のDVDの記録容量に対する増加率は約12.3(3.5の2乗)倍である。
以上のシミュレーション結果にもとづく本実施例のディスクの要部断面の拡大図を図11に示す。飽和非線形屈折率媒質層5の厚さtはシミュレーション結果の z2 に合わせてt=0.8μmに選んである。本実施例においても、飽和非線形屈折率媒質層6の線形屈折率 n0 =3.0とプラスチック層4として用いているポリカーボネートの屈折率1.6とが異なっているので、プラスチック層と飽和非線形屈折率媒質層との境界面に無反射コーティング層9を挿入して入射光ビームの反射によるロスを防いでいる。
また、以上の実施例1から実施例4までにおいては、集光レンズの開口数(NA)は、いずれもNA = 0.6とした。その場合には、保護層であるプラスチック層としては現行DVDの比較的保護効果の大きい0.6mm厚程度のものが好適である。しかし、本発明の効果は保護層の厚みに依存するものではないので、種々の厚みの保護用プラスチック層をもつ種々のタイプのディスクに適用できる。本発明の効果は記録面の直前に飽和非線形屈折率媒質層を設けるだけで可能であるから、プラスチック層を持たない表面記録型の記録媒体にも適用できる。
また、将来の新技術による光ディスクに対しても、上記のような構成が適用可能である場合には、これを適用することよって、それぞれの新技術よって得られる記録容量ならびにアクセススピードを、飽和屈折率についての非線形性によって得られる改善率の分だけ向上させることができる。なおこの実施例におけるプラスチック層4は厚さ0.6mmのポリカーボネートであり屈折率は約1.6である。記録層6は相変化記録媒体の場合はカルコゲナイド化合物材料の1μm以下の層、なお、色素記録媒体の場合は有機色素化合物の1μm以下の層、また裏面を保護する裏面の基板7は厚さ0.6mmのポリカーボネートの層である。
実施例1から実施例4では、すべて飽和非線形屈折率媒質層5に密着して記録層6を設置する構造を持っていた。これらの実施例において、図3、図6、図8、図10のそれぞれのシミュレーション結果が示すように、いずれも明確なビームウエストが存在することから、飽和非線形屈折率媒質層5の入射側境界面45への入射光ビームの入射位置からビームウエストが存在する位置までの深さにおける飽和非線形屈折率媒質層5の入射側境界面45と平行な面56を記録面6とし、飽和非線形屈折率媒質層5の厚さ t を決めた。その結果、記録層6とアクセス光ビームの光源または検出器(いずれも図示せず)との間に共焦点関係が成立し、アクセス光ビームによる書き込み、読み取り動作が可能となる配置となっている。また、この共焦点関係を維持するために、上記のビームウエストを利用してフォーカスサーボを行うことが可能であることを実施例1から実施例4に述べた。
本実施例5では、飽和非線形屈折率媒質層(実施例1から実施例4まででは、符号5で示したもの)をビームウエストを得る厚さよりある程度薄くして、その直後に線形屈折率媒質の薄層(後述の図13に符号10で示す)を密接して置き、さらにその後に密着して記録層6を配置する構造をとっている。この構造によって光ビームの伝搬方向に関して急峻に変化する形をもつビームウエストを得ることができる。
図12に本実施例についての計算機シミュレーションの結果を示す。図中の縦線A−Bは、符号Nで示す飽和非線形屈折率媒質領域Nと符号Lで示す線形屈折率媒質領域Lとの境界線を表わしている。飽和非線形屈折率媒質領域Nでのパラメータには実施例3での飽和非線形屈折率媒質のパラメータと同一のパラメータを用いた。(すなわち、領域Lでのパラメータは n2 = 5×10-122/W、IS =1011 W/m2、 n0 = 3.0)。線形屈折率媒質領域Lでのパラメータには、そこでの非線形屈折率n2 をゼロとする以外は、領域Nの飽和非線形屈折率媒質のパラメータと同一のパラメータを用いた(すなわち、領域Lでのパラメータは、n2 = 0、IS =1011 W/m2、n0= 3.0)。その他のパラメータは実施例3のものと同じである。図12中の点aは飽和非線形屈折率媒質領域Lへのビーム入射点、境界線A-B上の点c は線形屈折率媒質領域Lへの入射点にそれぞれ対応している。図12中に符号tで示す飽和非線形屈折率媒質領域Nの厚さは1μmである。この厚さの選択は、前述のごとく飽和非線形屈折率媒質中のビームウエストまでの距離(実施例3で示されたように1.3μm)よりある程度薄くしたことによる。光ビームが飽和非線形屈折率媒質領域Nを通過してc点で線形屈折率媒質領域Lに入ると、光ビームは線形屈折率媒質中のガウスビームとして振舞う。すなわち、非線形屈折率による集束性がなくなるので、c点からわずか0.15μmの短い伝搬距離にあるd 点でビームウエストを生じ、その後、回折によってビーム径は急速に増大する。このように、領域Nから領域Aにかけての光ビームの振る舞いによって、光ビームはごく短距離の間に大きなビーム半径の変化を伴ったビームウエスト、言い換えれば、シャープなビームウエストを生じる。
上の本実施例の計算機シミュレーションとの比較のために、図12中に実施例3の計算機シミュレーションによるビームプロファイルを破線のカーブ115で示す(飽和非線形屈折率媒質領域N中では本実施例の実線116で示すビームプロファイルと完全に重なっている)。図12に実線で示す本実施例のビームウエストの方が破線で示す実施例3のビームウエストに比して格段にシャープな形をもっていることがわかる。なお、本実施例で得られるビームウエスト半径w'は実施例3のビームウエスト半径wよりも若干拡大されて大きくなるが、その拡大の率は14%に過ぎない。
このように、本実施例の構造によって、シャープな、すなわち、軸方向位置に対するビーム径の変化の大きいビームウエストが得られる。このようなシャープなビームウエストに対して光検出器を共焦点関係に維持して配置し、この光検出器によって記録層または反射層からの反射光を検出すれば、上記ビームウエストの記録層または反射層からのずれ(すなわち、フォーカスのずれ)に依存したシャープな検出出力の変化が得られる。このようなシャープなビームウエストからの検出出力の変化に対して、一般に光ディスクに対して広く使われている変調微分方式によるフォーカスずれ符号検出法、あるいは、検出器直前に設置したアナモルフィック光学系と4分割光検出器によるフォーカスずれの符号検出法などを適用すれば、高い位置弁別能を持つフォーカスサーボ系を構成できる。その高い弁別能を用いて光ディスクまたは光記録媒体における光ビームのトラッキングを高精度に実行することができる。
なお、本実施例で得られるビームウエスト半径の縮小率w/winは、飽和非線形屈折率媒質層への入射点でのビームウエスト半径winを実施例3の場合と同じくwin=0.34μmと選んでいるので、w/win=0.16/0.34=1/2.1となり、この縮小率(1/2.1)にもとづく現用のDVDの光ディスク記録容量に対する記録容量増加率は約4.4(上記2.1の2乗)倍となる。
以上の計算機シミュレーションの結果から、ごく薄い線形屈折率媒質層を飽和非線形媒質層と記録層との間に設置することによって、シャープな変化形状をもつビームウエストが、ビームウエスト半径の大幅な増大を伴うことなく得られることが示された。
この計算機シミュレーションの結果にもとづく本実施例の光ディスク要部断面の拡大図を図13に示す。飽和非線形屈折率媒質層5の厚さ t は、図12のa点とc 点間の伝搬距離に対応する厚さに選ばれている。すなわちt =1μmである。飽和非線形屈折率媒質層5と記録層6との間に図12中のc点とd点に対応した伝搬距離に相当する厚さt'= 0.15μmの線形屈折率媒質層10が設置されている。線形屈折率媒質層10の材料として本実施例では、実施例3の飽和非線形屈折率層のベース材料であるGaAsなどのアモルファス半導体を用いた。ただし、この層は線形屈折率層であるので、カーボンナノチューブのような飽和非線形屈折率性を生ずる媒質を加えない。また、飽和非線形屈折率媒質層5とプラスチック層4との間には無反射コーティング層9が挿入してある。なおこの実施例におけるプラスチック層4は厚さ0.6mmのポリカーボネートである。記録層6は相変化記録媒体の場合はカルコゲナイド化合物材料の1μm以下の層である。なお色素記録媒体を用いる別のバージョンの場合は記録層6は有機色素化合物の1μm以下の層が好ましい。また裏面を保護する裏面の基板7は厚さ0.6mmのポリカーボネートの層である。
先に述べてきた実施例の計算機シミュレーションにおいては、飽和非線形媒質として、すべてカーボンナノチューブを分散したポリマーを想定した。その非線形屈折率n2としては、一般的に推定されている値 n2 = 5×10- 122/Wを用いた。その後(2005年前半)、非線形屈折率が大きいと考えられるナノメートルオーダーの直径を有する単層カーボンナノチューブについて光通信波長帯である波長1.6μmにおける測定結果が報告された。( A. Maeda et al., Physical Review Letters 94, 047404 "Large Optical Nonlinearity of Semiconducting Single-Walled Carbon Nanotubes under Resonant Excitations", (3 February, 2005) )その値は、3次非線形分極率(実部)Re(χ(3))=1.3±0.21×10-6esu である。これを分散する媒質の線形屈折率をn0=2.1 として非線形屈折率n2に換算すると、n2 = 3.6×10-122/W となる。この値は以上の実施例のシミュレーションで用いた上掲のn2値に非常に近い。しかし、そこで測定に用いられた波長は上に述べたように1.6μmであり、光記録波長帯である波長 650nmまたは405nmにおける測定結果は未だ報告されていない。
そこで本発明者らは、単層カーボンナノチューブについて、光記録波長帯である波長405 nmにおいて、非線形屈折率の測定に一般的に用いられるZスキャン法( M. Sheik-Bahae, A. A. Said, Tai-Huei Wei, D. J. Hagan, E. W. Van Stryland;"Sensitive Measurement of Optical Nonlinearities Using a Single Beam", IEEE Jour. of Quantum Electronics, vol. 26, No, 4 (1990年4月), pp.760−769)を用いてカーボンナノチューブの非線形屈折率の測定を行なった。
測定用光源にはチタンサファイアモード同期レーザーのフェムト秒パルスを用い、被測定媒質への熱的影響をできるだけ避けるように配慮した。測定ビームの中心波長を406nmと平均直径1.1nm(ナノメーター)の単層カーボンナノチューブを分散させたジメチルスルオキシド(DMSO)溶液を石英基板上にスピンコートしたサンプルを用いた。塗布厚は約0.2ミクロンである。その結果、非線形屈折率n2の実測値、n2 = 1±0.5×10-122/W が得られた。
上に得られた非線形屈折率n2の実測値を用い、以上の実施例における計算機シミュレーションで用いた波長650nmを、今後用いられる光記録用波長である405nm(たとえば、後藤顕也、「近接場光記録技術」、レーザー研究, 32巻,1号,22ページ[参考文献1]参照)とし、その他の条件を実施例4と同一にして、実施例における計算機シミュレーションを行なった。用いたパラメータをまとめると、下の[表4]となる。

[表4]
アクセス用光ビームの波長: λ = 405nm
集光レンズの開口数: NA = 0.6
入射ガウスビームのビーム半径: win = 0.25μm( z = 0 において )
入射ガウスビームの位相条件: NA = 0.6集束レンズによる集束ビーム
非線形屈折率: n2 = 1×10- 122/W
飽和パラメータ: IS = 1011 W/m2
線形屈折率 : n0 = 2.1(アリル系ポリマーへのルチルの同時分散を想定)
入力パワー: Pi n = 30mW
図16に本実施例についての計算機シミュレーションの結果を示す。z=0 における初期条件は、ディスク外に置かれたNA=0.6の集光レンズによって飽和非線形媒質層中に励起されたビームが集光過程にあるとした場合に対応する。飽和非線形媒質層中の伝搬距離z=0.26μmにおいてビームウエストに達し、ビームウエスト半径 w2=0.06μm の非常に小さいビームウエスト半径が実現できることが示された。ここに記録層を置けば光記録密度の飛躍的な向上が期待できる。飽和非線形媒質を使わない場合に期待されるビームウエスト半径 w は、波長をλ = 405nm、集光レンズのNAをNA = 0.6、媒質の線形屈折率をn0=2.1として、[10]式よりw=0.21μm であるので、本実施例におけるビームウエスト半径縮小率はw2/w =0.06/0.21=
0.29 で、ディスク記憶容量の増大率は約12((1/0.29)の2乗)倍となる。
上に計算機シミュレーションによって得られ飽和非線形媒質を用いることによるディスク記憶容量の増大率は、NA = 0.6の集光レンズで得られたものである。したがって、着脱可能なディスクの表面に設けられるプラスチック保護層の厚さを従来ディスクにおける0.6mm(たとえば、後藤顕也、「近接場光記録技術」、レーザー研究, 32巻,1号,22ページ 参照)に保ったまま、ディスク表面のよごれや疵などの影響を回避でき、ベアータイプのディスク形態を採用することも可能な取り扱いが容易で薄形の大容量ディスクが実現できる。
上に述べたように、プラスチック保護層の厚さを従来ディスクと同一に保ったまま大容量化できることは、本発明による大容量用ディスク装置によって従来標準ディスクの記録、読み取りが可能なことを意味している。このことによって、本発明による大容量用ディスク装置の従来標準ディスクに対する下位互換性(コンパチビリティー)維持が可能となる。
また、本発明による大容量用ディスクは、従来のディスク媒体の記録層の直前に厚さ1μm以下の飽和非線形屈折率層を付加するだけであるから、従来の光ディスクの製造設備にごく僅かの変更を加えるだけで、その製造が可能となる。
また、本実施例においても、実施例5で行なったような線形媒質層の挿入によるビームウエストのより一層のシャープ化によるフォーカスサーボの高精度化を導入することも可能である。
以上に、0.6mm厚のプラスチック保護層を有するディスク媒体に対して、本発明を適用する例を述べてきた。それとは別に次世代光ディスクとして、厚さほぼ0.1mmプラスチック保護層を有するディスク媒体をNA = 0.85の高集光性を有する集光レンズと組み合わせて用いる方式も提案されている[前記参考文献1]。このような光ディスク媒体においては、保護層が薄いため、ベアーディスクとしての使用が難しく、従来ディスクとの互換性に欠け、しかも、従来の光ディスク製造設備の転用可能性にも限界がある。しかし、本発明光ディスク媒体の構造が従来の記録層の直前に厚さ1μm以下の飽和非線形屈折率層を付加するだけであるから、ほぼ0.6mm厚のプラスチック保護層を有する場合と同様に大容量化を達成でき、その場合、得られる大容量化率としては、先のほぼ0.6mm厚の場合とほぼ同一の値が得られる。
飽和非線形屈折率媒質層5の非線形屈折率が光強度変化に対して持つ応答速度は、その層5に含まれるカーボンナノチューブの最外殻電子遷移由来のものである。したがって前記応答速度はピコ秒台の高速なものであり、書き込み読み出し用アクセス光ビームが数十ピコ秒以上ナノ秒台以下のパルス幅の繰り返しパルス列であっても、飽和非線形屈折率はそのような光ビームに対して十分応答する。それゆえ光ビームを高速に変調しても所望のビームウエスト径を得ることができる。一方、光ディスクの書き込みは、色素熱分解基板変形方式あるいは相変化方式など、熱的な変化にもとづくものが一般であるので、繰り返しパルス動作であっても、その平均パワーによって書き込み動作を行うことができる。
たとえば、光ディスクのアクセス光ビーム用光源として用いられている数十mW程度までの半導体レーザーを、ディスクへの書き込み読み出しビットレートを十分上回る数百MHz程度までの繰り返し周波数でパルス幅数100ピコ秒から数ナノ秒程度のパルス幅のパルス列でパルス変調することが可能である。このような変調によるパルス動作では、半導体レーザーの平均動作出力の許す範囲内でパルスピークパワーと平均光パワーを自由に組み合わせて変化させることができる。
このように半導体レーザーからのパルス光ビームについての上述の特性を利用すれば、その繰り返し光パルスのパルス光のピークパワーとそのデューティー比を当該半導体レーザーの許容平均動作出力範囲内で独立に変化させることにより以下の(1)、(2)のことが可能となる。
(1)上記許容平均動作出力範囲内で繰り返しパルス光のパルスのデューティー比を小さくしてパルスピークパワーを増大することによって、より小さいビームウエスト径を得ることができ、あるいは、非線形屈折率n2 の小さい飽和比線形屈折率媒質であっても所要のビームウエスト径を得ることができる。
このことを式[12]を用いて説明する。すなわち、パルスピークパワーを増大すると、式[12]中の光強度Iが大きくなる。Iが大きくなると、式[12]に従って飽和非線形屈折率媒質層内のビーム断面内で屈折率nはn0+n2IS まで増大する。したがって、屈折率の飽和パラメータISの大きい材料を使えば、I及びまたはn2を増加することによりビーム断面内で屈折率nを増大することができ、光ビームによって飽和非線形屈折率媒質層中に生成される凸レンズ効果が大きくなり、それに応じてビームウエスト径が縮小される。
(2)書き込み、読み出しは光の平均パワーに依存するので、光パルスのピークパワーを(1)のように維持しつつパルスのデューティー比を調節することによって、相変化方式におけるオーバーライト(上書き記録)に必要な2つの異なるレベルの平均パワー、読み出し時の平均パワーレベル、あるいは、色素方式の書き込み、読み出しなどに必用な平均パワーなどを、ビームウエスト径に影響を与えることなく、それぞれ独立に調節することができる。
本発明特許を読み取り再生専用に実施するために必要な光ビームを供給する光制御装置は、読み取り再生動作に必要な連続光、または一定の繰り返し周波数と一定のデューティー比を持つ繰り返しパルス光を備えたものであればよい。
本発明特許を書き込み記録及び読み取り再生の双方に対して実施するためには、先に述べたように繰り返し光パルスを用いる必要がある。図14は書き込み記録及び読み取り再生両動作モードを実施するための光制御装置の要部の概略構成をブロック図で示したものである。
記録信号入力160は変調回路158に入力される。変調回路158からの出力は電源動作モード切り換えコントローラー152に入力される。電源動作モード切り換えコントローラー152は、半導体レーザー150へ入力される半導体レーザー励起用電源151の出力を連続モードとするかパルスモードとするかの切り換えをし、またパルスモードとした場合、パルスのデューティー比を調節して、記録の書き込み、オーバーライト、消去、および記録の読み出し再生などの各動作モードにそれぞれ必要な各平均光パワーが半導体レーザーから出力されるように切り換えて動作させる。半導体レーザー150からの光ビームはコリメータレンズ153でコリメートされ、ビームスプリッター154を通過して集光レンズ1で集光され、光ディスク100の記録面に集光され、記録面にある情報を読み出すか、記録面に情報を書き込む。読み出しの際の記録面からの反射光は、反射面に光ビームのビームウエストが一致するようフォーカス制御されているので、入射光ビームと実質的に同じビームプロファイルをもって逆行し、集光レンズ1でコリメートされ、ビームスプリッター154で反射されて集光レンズ155に向かい、さらに集光レンズ155で光検出器156に集光される。光検出器の出力は信号再生回路157を経て、再生信号出力161として出力される。
上に述べた光制御装置によって、本特許発明による光ディスクまたは光記録媒体の書き込み記録及び読み取り再生両動作モードを安定かつ確実に実施することができる。
大きな飽和非線形屈折率を得るのにナノ微粒体のように共鳴的な非線形屈折率エンハンスメント効果を用いるものにおいては、非線形屈折率と同時に非線形吸収が存在する。そこで、非線形吸収をできるだけ避けて非線形屈折率の効果を最大に利用できるような光周波数の選択が望ましい。このことを共鳴的な屈折率ならびに吸収係数の光周波数に対する変化の様子を表わす下記の式[13]、[14]の、周知のクラマース・クローニッヒの関係式にもとづいて説明する。

共鳴的屈折率変化 ∝ (f-f)/{(f-f) +1} ・・・[13]

共鳴的吸収係数変化 ∝ 1 /{(f-f) +1} ・・・[14]

ただし、簡単のため比例式の形で示した。また、f は共鳴中心の光周波数であり、f は共鳴的吸収係数変化の半値半幅の周波数で規格化した規格化光周波数である。
図15は上の式[13]、[14]のクラマース・クローニッヒの表わすナノ微粒体などの持つ共鳴的な非線形屈折率エンハンスメント効果による屈折率または吸収係数の変化分を示している。実線のカーブ201L、201Hは共鳴にもとづく屈折率変化を、また破線のカーブ202L、202Hは共鳴にもとづく吸収係数変化をそれぞれ表わしている。また、201L、202Lはそれぞれ入射光強度が小さい場合のカーブ、201H、202Hはそれぞれ入射光強度が大きい場合のカーブである。図からわかるように各カーブは入射光強度が大きいと周波数軸(横軸)に向かって上下方向に圧縮されている。これらのカーブはいずれも式[13]と式[14]のクラマース・クローニッヒの比例式によって描かれたものである。各カーブの上下方向の入射光強度の変化に対する圧縮されかたの度合いがそれぞれ非線形屈折率ならびに非線形吸収の大きさに対応している。図15中の共鳴周波数fでは吸収係数の光強度による変化は矢印Cの長さが示すように最大であるが、そこでの屈折率の光強度による変化は図に見るようにゼロであるので非線形屈折率はゼロである。
以下の説明は本発明特許に関連のある共鳴周波数fの高周波数側(縦軸の右側)について行う。低周波数側についても類似の説明ができるが、その側は本発明特許に関連しないのでここでは上記の高周波数側についてのみ説明する。共鳴中心周波数fから高周波数側に規格化周波数f=1だけ離調した周波数fでの非線形吸収係数は矢印Dの長さで示されるように共鳴中心周波数fにおける値(矢印Cの長さで示される)の1/2に減少する。他方、非線形屈折率は、この周波数f(f=1)で最大(矢印Aの長さで示される)となる。また非線形屈折率の符号は、共鳴中心周波数fより高周波数側に離調した周波数では、図15から読み取れるように、入射光強度の増大(カーブ201Lを与える小さい入力光強度からカーブ201Hを与える大きい入射光強度への増大)による屈折率の変化の態様は、たとえば周波数fにおいては、矢印Aの方向(上向き)で示されるように、屈折率が光強度の増大につれて増大するタイプの変化である。すなわち、共鳴中心周波数fより高周波数側に離調した周波数では非線形屈折率の符号はプラスである。本発明特許を実施する上では、符号がプラスの飽和非線形屈折率が必要であることは先にも述べた通りである([0040]および[0009]参照)。したがって、ここで述べるように、特に共鳴的な非線形屈折率エンハンスメント効果を用いる場合には、共鳴周波数fより高周波数側に離調した周波数を持つアクセス用光ビームを用いる必要がある。周波数fよりさらに高周波数側、例えばfから規格化周波数f=3だけ離調した周波数fでの非線形吸収係数は、図15に矢印Eの長さで示されるように離調の程度が大きくなるにつれて急速に小さくなり、周波数fでは共鳴中心周波数f における値(矢印Cの長さで示される)の1/10と小さい値になる。他方、fでの非線形屈折率は矢印Bの長さで示されるように周波数fでの非線形屈折率の最大値(矢印Aの長さで示される)からの減少は比較的に緩やかで、最大値の3/5に減小するに過ぎない。したがって、破線のカーブで示される非線形吸収は十分小さく減少するが、符号がプラスでかつ非線形屈折率の値が3/5にしか減少しない値の得られる上記のような周波数fが、上述の共鳴中心周波数fより高周波数側に離調した周波数のなかでも後記の[0090]で記すように好ましい周波数である。
特許文献1から5にあげた非線形吸収にもとづくビーム径削減の効果は共鳴周波数fで最大となるが、本発明による非線形屈折率にもとづくビーム径収束の効果は、共鳴周波数fから高周波数側に離調した周波数fで最大となり、さらに高周波数側に離調すると、上述のように周波数fを超える周波数あたりまで緩やかに減少するのみである。この間、非線形吸収(破線)の方は急激に減少する。したがって共鳴周波数fから高周波数側に離調した周波数fからf近辺までの光周波数を持つアクセス用光ビームを用いるのが本発明による光記録のためには好ましい。
以上の説明にもとづいて、特許文献1〜5に記載の可飽和吸収(非線形吸収)によるビーム径縮小の方法と本発明における飽和非線形屈折率によるビーム径縮小の方法との差異ならびに本発明の利点を以下(1)、(2)、(3)に列挙して記す。
(1)特許文献1〜5に記載の可飽和吸収(非線形吸収)によるビーム径縮小の方法においては吸収によって光ビームの外周部を削り取ってビーム径を縮小するので、ビーム径縮小のプロセスにエネルギー損失をともなう。一方、本発明の非線形屈折率によるビーム径縮小の方法においては光ビームを絞り込んでビーム径を縮小するのでエネルギー損失がない。
(2)特許文献1〜5に記載の可飽和吸収(非線形吸収)によるビーム径縮小の方法においては、エネルギー損失のため、書き込み、読み出しに必用とされるエネルギーの点からビーム縮小率に限界が生じる。本発明の非線形屈折率によるビーム径縮小の方法においては、エネルギー損失による限界は存在しない。
(3)特許文献1〜5に記載の可飽和吸収(非線形吸収)によるビーム径縮小の方法においては、エネルギー損失のため非線形媒質内でビームウエストが不明確となるかまたは消滅する。一般に光ディスクにおいては、ビームウエストが光源と共焦点関係にあることを利用して読み出しとフォーカスサーボコントロールが行われている。したがって、可飽和吸収(非線形吸収)によるビーム径縮小の方法においては、読み出しならびにフォーカスサーボコントロールにおける感度と精度の点からビーム縮小率に限界を生じる。本発明の非線形屈折率によるビーム径縮小の方法においては、エネルギー損失をともなわないので、ビームウエストが明確であり、これをフォーカスサーボコントロールに使うことができる。
ナノ微粒体のように共鳴的な飽非線形屈折率を用いるものにおいては、微粒体のサイズのばらつきによる不均一広がりによって非線形屈折率が低下しないよう、サイズ分散の少ないナノ微粒体を用いることが望ましい。
以上、本発明をある程度の詳細さをもって好適な実施形態について説明したが、それらの好適実施形態の現開示内容は構成の詳細について変化してしかるべきものであり、各構成要素の選択や組み合わせの変化は、請求された発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
本発明に係る光記録媒体は記録層に密着するかまたはごく薄い(0.1μmオーダー)線形屈折率媒質層を介して薄い(1μmオーダー)飽和非線形屈折率媒質層を設けることによりビームスポット径を小さくでき、また従来のディスク製造設備をそのまま使って媒体をつくることができる点で、産業上の利用可能性がある。
ガウスビームのビームウエスト付近のプロファイルとそれに漸近する光線を示す図。 集光用レンズを含むディスク要部を模式的に示す鉛直方向断面構造図。 飽和非線形屈折率媒質内を伝搬する空間ソリトンビームの過渡的ビームプロファイル。 実施例1を示すディスク要部の鉛直方向断面構造図。 図4の要部を拡大した実施例1のディスクの要部拡大断面図。 飽和非線形屈折率媒質内を伝搬する空間ソリトンビームの過渡的ビームプロファイル。 実施例2を示すディスク要部の鉛直方向断面構造図。 飽和非線形屈折率媒質内を伝搬する空間ソリトンビームの過渡的ビームプロファイル。 実施例3を示すディスク要部の鉛直方向断面構造図。 飽和非線形屈折率媒質内の過渡的空間ソリトンビームのビームプロファイル。 実施例4を示すディスク要部の鉛直方向断面構造図。 飽和非線形屈折率媒質内とそれに続く線形屈折率媒質内での過渡的空間ソリトンビームのビームプロファイル。 実施例5を示すディスク要部の鉛直方向断面構造図。 本発明を実施した光制御装置のブロックダイヤグラム。 非線形屈折率と非線形吸収係数の光周波数についての変化を示すグラフ。 飽和非線形屈折率媒質内の過渡的空間ソリトンビームのビームプロファイル(波長405nm)
符号の説明
1 集光用レンズ
4 プラスチック層
5 飽和非線形屈折率媒質層
6 記録層
7 裏面の基板
8 図5への拡大領域を示す枠
9 無反射コーディング層
10 線形屈折率媒質層
20 アクセス光ビーム
45 プラスチック層と飽和非線形屈折率媒質層との境界面
56 飽和非線形屈折率媒質層と記録層との境界面
67 反射層
76 反射面
100 光ディスクまたは光記録媒体
101 ガウスビームのビームプロファイル、ガウスビーム光束
102 ガウスビームの漸近光線
103 ビーム光軸(z 軸)
104 プラスチック層
105 プラスチック層の空気との境界面
106 記録層
107 裏面の基板
110 飽和非線形屈折率媒質内ビームプロファイル
111 集光用レンズ
115 飽和非線形屈折率媒質内ビームプロファイル
116 線形屈折率媒質内ビームプロファイル
120 アクセス光ビーム
150 半導体レーザー
151 半導体レーザー励起用電源
152 電源動作モード切り換えコントローラー
153 コリメータレンズ
154 ビームスプリッター
155 集光レンズ
156 光検出器
157 信号再生回路
158 変調回路
201L、201H 非線形屈折率のカーブ
202L、202H 非線形吸収係数のカーブ
【0004】
ネルギーの損失が殆ど生ぜず、その結果、良好な信号対ノイズ比が得られる。また、この発明によれば、このようにしてつくった大容量光ディスクを従来の規格と同じ光ディスク装置によって制御すなわち書き込みおよび読み取りがおこなえ、現行の光ディスクのシステムとの間にコンパチビリティーを維持したまま、その大容量光ディスクの書き込み読み取りが可能なシステムを提供することができる。
[0009] 発明者は、光記録媒体の通過経路上、たとえば、光記録媒体の記録層の入射面上に、ある種の層を含むように構成することにより、記録面に入射する光ビームの直径を格段に小さくできることを見出した。ここに記録面というのは、記録層への入射ビームの入射面に近い記録層の部分を指すものとする。
そのある種の層とは飽和非線形屈折率媒質の層である。その飽和非線形屈折率媒質の層は通常、非線形屈折率材料と呼ばれているものを含んで構成されている。
飽和非線形屈折率媒質とは、屈折率が光強度に依存し、その光強度に対する依存度が飽和する媒質を言う。特に、本発明においては、その依存度の符号がプラスの場合、すなわち光強度の増大に対して屈折率が増加する場合、に限るものとする。このような光強度の増大に対して屈折率が増加するような光強度に対する依存性を、本発明では符号がプラスの非線形屈折率と呼ぶことにする。また、飽和非線形屈折率微粒体とは飽和非線形屈折率媒体材料のナノメータから数十ナノメータ台のサイズを持つ微結晶体を言う。
従来技術の課題を解決するための本特許発明の各観点による手段を以下に述べる。
[0010] 請求の範囲1の光記録媒体は、記録層へのアクセス用の光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層が高屈折率を有するポリマー中に飽和非線形屈折率微粒体を分散させた材料であることを特徴とする。
このようにすることによって集光ビームスポット径、すなわちビームウエスト径を小さくすることができる。
[0011]
[0012] 請求の範囲3の光記録媒体は、記録層へのアクセス用の光の通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層がポリマー中に高屈折率微粒体と飽和非線形屈折率微粒体とを分散させた材料であることを特徴と


【0005】
する。
このようにすることによって、ビームウエスト径を小さくすることができる。
[0013]
[0014] 請求の範囲5の光記録媒体は、請求の範囲3の光記録媒体において、前記ポリマーがポリカーボネートまたはポリスチレンであることを特徴とする。
このような材料の選択によって、従来の製造設備をそのまま使うことができる。
[0015] 請求の範囲6の光記録媒体は、請求の範囲1または3の光記録媒体において、前記飽和非線形屈折率微粒体がカーボンナノチューブまたはC60サッカーボールであることを特徴とする。
近時、カーボン微粒体の製造法が発展定着し、その安価な利用が可能となってきたことから、このようなカーボン微粒体の使用によって、飽和非線形屈折率媒質層の設置を必要とする本発明をコスト上昇を招くことなく実施することができる。
[0016] 請求の範囲7の光記録媒体は、請求の範囲3の光記録媒体において、前記高屈折率微粒体が酸化チタン(ルチル)、酸化ジルコン、シリコン及び化合物半導体からなる群から選ばれた少なくとも1つの高屈折率材料の微粒体であるであることを特徴とする。
酸化チタンや酸化ジルコン、シリコン及び化合物半導体は一般に広く使われている材料であり、その微粒体の使用によって、本発明を安価に実施することができる。
[0017]
[0018]
[0019]
[0020]
[0021] 請求の範囲12の光記録媒体は、請求の範囲6の光記録媒体において、光記録媒体へのアクセス光ビームの周波数が前記飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であるアクセス用の光ビームにより書き込まれ読み取られることを特徴とする。
このようにすることによって、飽和非線形屈折率微粒体による吸収損失を避けながら、微粒体の符号がプラスの共鳴的に大きい飽和非線形屈折率を利用することができ、より小さいビームウエスト径を得ることができる。


【0006】
[0022]
[0023]
[0024]
[0025]
[0026]
[0027]
[0028]
[0029]
[0030]
[0031]
[0032]
[0033]
【発明の効果】
[0034] CD、またはDVD等の光記録媒体の光入射面に高屈折率をもつ薄い飽和非線形屈折率媒質層を設けることで光ディスクの大容量化を実現し、また、その光記録媒体は、現行のCDまたはDVDの光ディスク製造装置を殆ど変更せずに使ってつくることができる。上記の大容量化とは、従来のものの2倍から10倍以上の記録容量とすることである。そしてその大容量化された光ディスクは従来の規格と本質的には同じ光ディスク装置又は光記録媒体装置によって制御すなわち書き込みおよび読みとりができる。従って現行の光ディスクとの間にコンパチビリティーを維持しつつ、本発明による大容量の光ディスクへの書き込みと読み取りが可能なシステムが実現できる。
《発明の基礎的な背景についての説明》
[0035] まず、本発明の原理の説明に先立って、従来の集光によって誘電体中で得られる光ビームの集光点でのビーム径について本発明の基礎的な背景を説明する。先にも述べたように、光ディスク装置に手軽に着脱可能な従来タイプのCDやDVDのベアータイプの光ディスクにおいては、光ディスク表面のよごれや疵などの影響を回避するために、保護層であるプラスチック層を通して読み書きアクセス光を光ディスク又は


Claims (24)

  1. 記録層へのアクセス用の光ビームの通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層が高屈折率を有するポリマー中に飽和非線形屈折率微粒体を分散させた材料である光記録媒体。
  2. 記録層へのアクセス用の光ビームの通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層が高屈折率を有する半導体中に飽和非線形屈折率微粒体を分散させた材料である光記録媒体。
  3. 記録層へのアクセス用の光ビームの通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体であって、前記飽和非線形屈折率媒質層がポリマー中に高屈折率微粒体と飽和非線形屈折率微粒体とを分散させた材料である光記録媒体。
  4. 前記高屈折率を有する半導体が高屈折率を有するアモルファスシリコンまたはアモルファス化合物半導体である請求項2の光記録媒体。
  5. 前記ポリマーがポリカーボネートまたはポリスチレンである請求項3の光記録媒体。
  6. 前記飽和非線形屈折率微粒体がカーボンナノチューブまたはC60サッカーボールである請求項1から5のいずれかの光記録媒体。
  7. 前記高屈折率微粒体が酸化チタン(ルチル)、酸化ジルコン、シリコン及び化合物半導体からなる群から選ばれた少なくとも1つの高屈折率材料の微粒体である請求項3の光記録媒体。
  8. 前記飽和非線形屈折率媒質層を前記記録層のアクセス用の光ビームの入射面に密着して設けた請求項1から7までのいずれかの光記録媒体。
  9. 前記飽和非線形屈折率媒質層と前記記録層との間に線形屈折率層を含む請求項1から7のいずれかの光記録媒体。
  10. 前記飽和非線形屈折率媒質層のアクセス用の光ビーム入射面に無反射コーティング層を設けた請求項1から9のいずれかの光記録媒体。
  11. 前記飽和非線形屈折率媒質層中に生じるビームウエスト位置の前記飽和非線形屈折率媒質層のアクセス用の光ビーム入射面への入射から所定深さにおける前記飽和非線形屈折率媒質層の入射側境界面と平行な面を前記記録面とする請求項1から10のいずれかの光記録媒体。
  12. 光記録媒体への前記アクセス用の光ビームの周波数が前記飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であるアクセス用の光ビームにより書き込まれ読み取られることを特徴とする請求項1から11のいずれかの光記録媒体。
  13. 光記録媒体へのアクセス用の光ビームを繰り返しパルス列として、パルスのピーク出力とパルスのデューティー比を独立に調節できる前記アクセス用の光ビームにより書き込まれ読み取られることを特徴とする請求項1から12のいずれかの光記録媒体。
  14. 記録層へのアクセス用の光ビームの通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体の前記記録層に所定光周波数のアクセス用の光ビームによって情報を書き込むための光を発する、及びまたはそのアクセス用の光ビームを光記録媒体に投射して反射された光を読み取る光制御装置であって、
    そのアクセス用の光ビームの周波数が前記飽和非線形屈折率媒質層に含まれる飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であること
    を特徴とする光制御装置。
  15. 光記録媒体の記録・再生のため繰り返し光パルスを制御する光制御装置であって、前記繰り返し光パルスのピーク光パワーを所望のビームウエスト径を得るに必要な値に保ちつつ、前記繰り返し光パルスの繰り返し周波数と繰り返し光パルスのデューティー比とを互いに独立に変化して、その平均光パワーが記録情報の書き込み、オーバーライト、消去、および記録の読み出し再生などの各動作モードにそれぞれ必要な各平均光パワーに切り換えられて動作するレーザー、及びそのレーザーを上記平均光パワーに切り換えて所望のモードで励起して動作させるための励起電源を有することを特徴とする光制御装置。
  16. 記録層へのアクセス用の光ビームの通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を含む光記録媒体の記録・再生におけるアクセス用の光ビームのフォーカスをサーボコントロールする工程を有し、及び、
    前記飽和非線形屈折率媒質層と前記記録層との間に線形屈折率媒質層を設置することで得られる光ビーム伝搬方向に対して急峻なビーム径変化を持つビームウエストの半径変化を検出し、高い弁別能をもって伝搬方向上のビームウエスト位置を検出する工程
    を具備することを特徴とする光制御方法。
  17. 記録層へのアクセス用の光ビームの通過経路に置かれた飽和非線形屈折率媒質層を有する記録媒体の前記記録層に所定の光周波数のアクセス用の光ビームによって情報を書き込むための光を発する工程、及びまたはそのアクセス用の光ビームを前記光記録媒体に投射して反射された光を読み取る工程を有し、但し
    それらのアクセス用の光ビームの周波数が前記飽和非線形屈折率媒質層に含まれる前記飽和非線形屈折率微粒体の共鳴周波数より高周波数側に離調した周波数であること
    を特徴とする光制御方法。
  18. 光記録媒体の記録・再生のため繰り返し光パルスを制御する光制御方法であって、
    前記繰り返し光パルスのピーク光パワーを所望のビームウエスト径を得るに必要な値に保ちつつ、前記繰り返し光パルスの繰り返し周波数と繰り返し光パルスのデューティー比とを互いに独立に変化させる工程、及び、
    前記繰り返し光パルスの平均光パワーを記録情報の書き込み、オーバーライト、消去、および記録の読み出し再生などの各動作モードにそれぞれ必要な各平均光パワーで動作するよう励起電源でレーザーを動作させる工程
    を有することを特徴とする光制御方法。
  19. 波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含む高記録密度の光記録媒体であって、記録媒体の表面が厚さほぼ0.6mmのプラスチック保護層を有する請求項1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12 または 13 のいずれか1つによることを特徴とする光記録媒体。
  20. 波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面が厚さほぼ0.6mmのプラスチック保護層を有する請求項19 の高密度光記録媒体を動作させる請求項14, 15 のいずれかによることを特徴とする光制御装置。
  21. 波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面が厚さほぼ0.6mmのプラスチック保護層を有する請求項19 の高密度光記録媒体を動作させる請求項16, 17 または18のいずれか1つによることを特徴とする光制御方法。
  22. 波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含む高記録密度の光記録媒体であって、記録媒体の表面に厚さほぼ0.1mmのプラスチック保護層を有する請求項1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12 または 13 のいずれか1つによることを特徴とする光記録媒体。
  23. 波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面に厚さほぼ0.1mmのプラスチック保護層を有する請求項22 の高密度光記録媒体を動作させる請求項14, 15 のいずれかによることを特徴とする光制御装置。
  24. 波長がほぼ405nm のアクセス用光ビームを用いる飽和非線形屈折率媒質層を含み、その表面に厚さほぼ0.1mmのプラスチック保護層を有する請求項22 の高密度光記録媒体を動作させる請求項16, 17 または18のいずれか1つによることを特徴とする光制御方法。
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