JPWO2005105111A1 - 人工肺サーファクタント組成物およびその使用方法 - Google Patents

人工肺サーファクタント組成物およびその使用方法 Download PDF

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Abstract

この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、タンパク質やペプチドを含まない混合脂質系またはかかる混合脂質にタンパク質もしくはペプチドを添加した混合系からなる肺表面活性薬組成物である。この発明の人工肺サーファクタント組成物は、新生児、呼吸窮迫症候群(RDS)、呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺炎などによる呼吸不全、喘息による呼吸困難およびその予防などに対して有用でかつ安価に調製することができる。

Description

この発明は、人工肺サーファクタント組成物およびその使用方法に関し、更に詳細には、新規な化学組成を有する肺表面活性薬組成物であって呼吸窮迫症候群治療剤などとして有用でかつ安価に調製可能な人工肺サーファクタント組成物およびその使用方法に関する。
現在、肺の急性疾患において、死亡率が高い新生児呼吸窮迫症候群(RDS)、また重篤な呼吸障害をきたす急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療薬としては、牛肺から抽出された肺サーファクタント成分を調製した人工肺サーファクタントが適用されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照。)。
肺サーファクタントは、肺胞細胞で生成され分泌される脂質―タンパク質複合体であって、肺胞の表面張力を低下することにより肺機能を司る生命維持に必須の物質である。肺胞内に存在する肺サーファクタントは、約10 % のタンパク質と、リン脂質を中心とする脂質成分とから成り立っている(例えば、非特許文献3参照。)。肺サーファクタントは、脂質のうち、特に中性リン脂質であるL-α-フォスファチジルコリン (PC) が多く、全脂質の 80.5 % を占め、酸性脂質であるL-α-フォスファチジルグリセロール (PG) が 9.1 %、L-α-フォスファチジルイノシトール(PI) が 2.6 %、その他コレステロールが 7.3 %とから構成されている。特に注目すべき事は、PCのうち、飽和アルキル化合物からなるジパルミトイル-L-α-フォスファチジルコリン(DPPC)が 47.7 % と約半分を占めていることが肺を虚脱から防ぐ要因であると考えられている。しかし、DPPCを含むリン脂質のみでは肺サーファクタント活性がない事から、少量含まれるタンパク質成分が重要である事が明らかにされた(例えば、非特許文献4参照。)。
肺サーファクタントは、RDSやADRSへの適用という側面のみならず、肺炎などの炎症性肺疾患、また近年死亡率が急速に上昇している肺ガン等による重篤な呼吸不全症状の緩和という観点からも、その必要性が増している。さらに、気管支での肺サーファクタント物質の分泌も知られていて、それらが末梢気道の閉塞を防ぎ去痰的役割をしているとも言われている(例えば、非特許文献5参照。)。さらに、肺サーファクタントの吸入によりアレルギー誘発喘息発作の予防が可能である(例えば、非特許文献6参照。) など、呼吸障害の改善を必要とする多くの疾病に対する有用性が期待されている。
Fujiwaraらは、人工肺サーファクタントのヒトRDSに対する効果を報告し、サーファクテン(登録商標)(Surfacten(登録商標))として、世界で初めて RDS治療薬として完成させた(例えば、特許文献1参照。)。サーファクテン(登録商標)は、牛肺から活性成分を抽出後、リン脂質 (75.0 % - 95.5 %)、中性脂質 (1.8 % - 14.0 %)、タンパク質 (5% 以下)に調製されたものである。しかし、使用されているタンパク質及びリン脂質(特にDPPC)は、高価であることから、これらから調製された人工肺サーファクタントであるサーファクテン(登録商標)も、当然のことながら、非常に高価なものとなり、使用分野も非常に限定されているという問題がある。
一方、ARDS発症は10万人あたり15から20人と報告されている。基礎疾患が治療出来るにもかかわらず、急性期の治療に用いた人工換気、酸素による肺損傷のため、不幸な転帰を取る場合も多く、その死亡率は50 % 前後と極めて高い。これに対して、ARDSの早期に人工肺サーファクタントを大量に投与し肺機能を改善させ、肺損傷を最小に抑える治療法は、死亡率を20%にまで低下させることができる(例えば、非特許文献7参照。)。肺サーファクタントは、このように重篤な呼吸不全の治療に重要であるが、同時に、上述の如く、去痰、喘息発作の軽減などにも有効である。
以上のことより、人工肺サーファクタントは、呼吸器疾患の治療に携わる医療関係者の間から、多くの種々の肺疾患への適用の可能性が指摘されているにもかかわらず、非常に高価であるために、現在、日本では、その保険診療が認められているのはRDSのみである。また、サーファクテン(登録商標)は、牛由来のタンパク質を含んでいるため、その抗原性および未知の病原性による感染の可能性、例えば狂牛病などの問題を包含している。そこで、安価で副作用のない人工合成サーファクタントの開発が強く望まれている。
このような要望に応えるために、1991年、Cochraneらによって、人工合成サーファクタントが初めて報告された(例えば、非特許文献8参照。)。このうち、現在、アミノ酸21残基からなる人工合成ぺプチドKL4と脂質とからなる脂質−ペプチド複合体 (Surfaxin) が臨床化されつつあり、新たにARDSに対する治療薬として期待されている (例えば、非特許文献9参照。)。
この他に、合成ペプチドと脂質混合物とからなる肺サーファクタントと、該肺サーファクタントとを有効成分として含有する呼吸窮迫症候群治療剤が記載されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照。)。これらの肺サーファクタントは、コリンホスホグリセリド、特定配列の合成ペプチド、酸性リン脂質及び脂肪酸類からなっている。
肺表面活性物質の現在: 吉田清一編、真興交易医書出版部、東京、1990 Molecular Basis of Disease: Pulmonary Surfactant, ed., Riordan,J. R., Biochim. Biophys. Acta, 1408, 77-363, 1998 Veldhuizen, R., et al., Biochim. Biophys. Acta, 1408, 90-108, 1998 Robertson, B., and Halliday, H. L.,Biochim. Biophys. Acta, 1408, 341-362, 1998 Liu M., et al., J. Appl. Physiol., 71, 742-748, 1991 Babu, K.S., et al., Eur. Respir. J., 21:1046-1049, 2003 Gregory, T.J., et al., Am. J. Respir. Crit. Car. Med., 155, 1309-1315, 1997 Cochrane C. G. and Revak S. D., Science, 254, 566-568, 1991 Wiswell, T., et al., Pediatrics, 109, 1081-1087, 2002 特公昭61−9925号公報 特開平5−294996号公報 WO95/15980号公報
本発明者らは、タンパク質やペプチドを必須の成分としなくとも、安価で調製可能な人工肺サーファクタント組成物について鋭意研究した結果、安価な脂質を新たに組み合わせることによって調製できる脂質混合系からなる人工肺サーファクタント組成物が、市販のサーファクテン(登録商標)と同等の表面活性を有することを見出した。さらに、研究を重ねた結果、その脂質組成物にペプチドを加えたペプチド−脂質混合系も、表面活性のみならず動物肺においても、サーファクテン(登録商標)と同等の表面活性を有することを見出して、この発明を完成するに至った。
この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、低コストで調製できるため、RDSやADRSだけでなく、急性肺炎、肺ガン、喘息等による呼吸機能障害の緩和および予防、肺炎、風邪などによって生じる痰の除去など、サーファクタント不足あるいは機能不全などを伴う疾病への幅広い適用の可能性を有している。
したがって、この発明は、タンパク質やペプチドを必須の成分としない、安価な脂質を組み合わせた脂質混合系からなる人工肺サーファクタント組成物または脂質混合系にタンパク質もしくはペプチドを加えたタンパク質/ペプチド−脂質混合系からなる人工肺サーファクタント組成物であって、急性肺疾患等のサーファクタント不足や機能不全などを伴う疾病などに有効で、かつ、低コストで調製可能な人工肺サーファクタント組成物を提供することを目的としている。
この発明はまた、上記人工肺サーファクタント組成物を、サーファクタント不足あるいは機能不全などを伴う疾病の治療もしくは予防に使用することからなる使用方法を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、この発明は、タンパク質やペプチドを含まない脂質混合系からなる、低コストで調製可能な人工肺サーファクタント組成物を提供する。
この発明はまたペプチド−脂質混合系からなる、低コストで調製可能な人工肺サーファクタント組成物を提供する。
この発明は、その態様としては、リン脂質、高級アルコールおよび高級脂肪酸を主たる配合成分とすることからなる人工肺サーファクタント組成物が提供される。更に好ましい態様として、この発明は、乾燥総重量に対して、リン脂質を20−60%、好ましくは30−50%、高級アルコールを30−70%、好ましくは40−60%、高級脂肪酸を1−30%、好ましくは5−20%程度含有することからなる人工肺サーファクタント組成物を提供する。
この発明は、その別の形態としては、上記組成にさらにペプチドを約2−10%、好ましくは約1−5%程度を含んだ人工肺サーファクタント組成物を提供する。
この発明の更に別の形態としては、上記人工肺サーファクタント組成物を、RDS、ADRS、急性肺炎、肺ガン、喘息等による呼吸機能障害の緩和および予防、肺炎、風邪などによって生じる痰の除去など、サーファクタント不足や機能不全などを伴う疾病に適用することからなる人工肺サーファクタント組成物の使用方法が提供される。
この発明のその他の目的、特長ならびにその他の態様などは、下記図面を参照して、下記説明により明らかである。
種々の合成肺サーファクタントペプチドの一次化学構造を示す図である。 種々の脂質混合系の表面張力ならびに表面積曲線を示すグラフである。 OD−eggPC−PA系の様々な組成比における表面張力ならびに表面積曲線を示すグラフである。 脂質−各種ペプチド混合系における表面張力ならびに表面積曲線を示すグラフである。 大豆レシチン脂質混合系及びそのペプチド混合系の結果を示す図である。 肺洗浄ラットを用いての肺機能の回復実験の結果を示す図である。 肺洗浄ラットを用いての肺機能の回復実験の結果を示す図である。
この発明において、まず、肺サーファクタントの活性発現メカニズムを考慮するとき、肺サーファクタントは安定な単分子膜及び二分子膜を形成する必要がある。肺圧の上昇、減少に伴っての単分子膜−二分子膜平衡を形成する上で、リン脂質は必須と考えられる。リン脂質の中でも肺の呼気の圧縮時の虚脱を防ぐために、これまでDPPCは必須であり、さらに少量のPGも必要であると考えられていた。
しかし、DPPCは非常に高価であるため、DPPCを用いた人工肺サーファクタント組成物も必然的に高価なものとなり、その適用範囲が非常に限られるという大きな欠点がある。したがって、この発明においては、DPPCの代替物を使用することから、高価なDPPCを使用する必要がないこと、または必要に応じてDPPCを使用する場合でも、その使用量を最小限に抑えることができるという極めて大きな利点がある。しかし、この発明において使用できるかかる代替物としては、比較的安価な卵黄から抽出され精製されたegg PC及び安価な卵黄レシチン、分別大豆レシチンなどのリン脂質を選択して使用するのがよい。また、飽和アルキル鎖を持つDPPCの代わりになる代替物としては、例えば、飽和高級アルコール(例えば1−オクタデカノール、OD)および分別大豆レシチンの不飽和脂肪鎖を水素化した水素化レシチンなども使用することができる。さらに、酸性成分として、従来の人工肺サーファクタント脂質として良く用いられている高級脂肪酸(例えば、パルミチン酸 (PA)、ステアリン酸など)も使用するのがよい。その他、中性脂質(例えば、トリアシルグリセロールやコレステロール、サポニン等)なども使用することができる。
したがつて、この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、リン脂質、高級アルコールおよび高級脂肪酸を主たる配合成分とする脂質混合系または脂質混合系にタンパク質もしくはペプチドを加えたタンパク質/ペプチド−脂質混合系からなっていることを特長としている。
この発明の人工肺サーファクタント組成物に使用することができるリン脂質としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはその他の天然素材抽出レシチン、分別大豆レシチンの不飽和脂肪鎖を水素化した水素化レシチンなどや、DPPCなどのフォスファチジルコリン類が挙げられる。また、リン脂質の割合は、乾燥総重量に対して約20−60%、好ましくは約30−50%程度であるのがよい。この発明において使用することができるDPPC以外のフォスファチジルコリン類としては、炭素数が12−24個のアシル基、好ましくは飽和アシル基を2個有するフォスジアシルファチジルコリン類、例えば、ジステアロイルフォスファチジルコリン、パルミトイルステアロイルフォスファチジルコリンなどが挙げられる。その他のフォスファチジルコリン類も使用することができ、例えば、ジアシルフォスファチジルコリン、ヘキサデシルパルミトイルフォスファチジルコリン、オクタデシルパルミトイルフォスファチジルコリン等のアルキルアシルフォスファチジルコリン、ジヘキサデシルフォスファチジルコリン等のジアルキルフォスファチジルコリンなどが使用することができる。
高級アルコールとしては、例えば、炭素原子数14−20を有する飽和もしくは不飽和脂肪アルコールまたは、炭素数14−20の高級飽和もしくは不飽和脂肪族アミンなどが挙げられ、例えば、オクタデカノール、ヘキサデカノールなどの飽和高級アルコールなどが使用できる。高級アルコールの割合は、乾燥総重量に対して約30−70%、好ましくは約40−60%程度であるのがよい。
高級脂肪酸としては、例えば、炭素原子数14−20の飽和もしくは不飽和脂肪酸が挙げられ、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが例示される。高級脂肪酸の割合は、感想総重量に対して、約1−30%、好ましくは約5−20%程度含有されているのがよい。
さらに、この発明の人工肺サーファクタント組成物には、その他の成分として、中性脂質、例えば、トリアシルグリセロールやコレステロール、サポニンなども使用することができる。
一方、人工肺サーファクタントに含まれるタンパク質は、リン脂質の単分子膜−二分子膜平衡をスムーズに行うための触媒的な作用をしていると考えられている(Perez-Gil, J., and Keough, K. M. W., Biochim. Biophys. Acta, 1408, 203 - 217, 1998)。したがつて、この発明の人工肺サーファクタント組成物は、上述したごとく、その組成が上記脂質混合系だけに限定されるものではなく、必要に応じて、タンパク質やペプチドなどを添加することもできる。この発明に使用することができる人工肺サーファクタントペプチドの好ましい例としては、図1に例示する本発明者が開発したペプチドが挙げられる(発明者:李相男、杉原剛介、柴田功及び雪竹浩、特願2003−98607・特開2004−305006)。それらの性質、効果などの詳細は上記特許出願明細書に記載されているので、上記特許出願明細書の記載は本明細書の一部を構成する。この発明の人工肺サーファクタント組成物には、サーファクタント蛋白またはサーファクタントペプチドなどが約2−10%、好ましくは約1−5%程度の割合で更に含まれるのがよい。
この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、上記脂質または上記脂質とこれらペプチドとを所定の割合で混合して調製することができる。人工肺サーファクタント組成物は、表面張力−面積ダイアグラムを用いてそのサーファクタント活性表面活性を測定することによって評価することができる。この測定には、対象として、呼吸障害の治療薬とされている脂質系のみで構成され、ペプチドを含まない Exosurf(登録商標)、DPPC を主成分としリジン(K)およびロイシン(L)の合成ペプチドを含んだ Surfaxin とサーファクテン(登録商標)とを用いても測定を行なった。
この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は常法に従って製剤化することができ、例えば、液剤、懸濁剤や、粉末剤などの剤型で適用することができ、バイアル又はアンプル等の密封容器内に充填し、無菌製剤として保存するのがよい。この発明の人工肺サーファクタント組成物には、必要に応じて、安定剤、保存剤、等張化剤、緩衝剤、懸濁化剤、抗酸化剤及び界面活性剤などの薬理学的に許容可能な添加物又は気管支拡張剤、抗アレルギー剤、制癌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤などの医薬品が含有されていてもよい。
この発明に係る人工肺サーファクタント組成物を、例えば、呼吸窮迫症候群に対する治療剤として適用する場合、その用量、使用法及び回数は患者の症状及び併用療法に応じて適宜変更するのがよい。その1回投与量は、例えば、小児用には、50−1000 mg、成人用には500−5000 mgの範囲であるのがよい。その用量は、例えば、水、生理食塩液又は生理的に許容される緩衝液などに懸濁し、濃度が1.0−10.0%(W/V)になるように調整することができ、これを呼吸障害発現直後から72時間以内に気道内に1−10回程度注入又は噴霧することにより使用することがよい。この発明の人工肺サーファクタント組成物をそのまま粉末剤としても使用する場合には直接吸入させることもできる。
以下、この発明を実施例によって説明するが、この発明は実施例によって一切限定されるものではなく、下記実施例はこの発明を例示的に説明するためだけに記載されたものである。
1.材料
材料としては下記のものを使用した。卵黄から精製されたリン脂質L-α-フォスファチジルコリン(egg PC)(Avanti PolarLipids, Inc. 社製)、水素化大豆レシチン (SLPホワイトH;辻製油株式会社製、日本)、 大豆レシチン(分別レシチンSLP−PC70;辻製油株式会社製、日本)、 水素化大豆レシチン(大豆レシチンSLP−PC70を水素化したもの)、卵黄レシチン及びその他の脂質(和光純薬株式会社製、日本)および試薬(和光純薬株式会社製、日本)を使用した。ペプチドは、自動合成機を用いて合成した如く調製した(Kiyota, T., Lee, S., and Sugihara, G., Biochemistry, 35, 13196, 1996)。
対照として使用する薬剤は、呼吸障害の治療薬とされている脂質系のみで構成され、ペプチドを含まない Exosurf(登録商標)、 DPPCを主成分としリジン(K)およびロイシン(L)の合成ペプチドを含んだ Surfaxin とサーファクテン(登録商標) (三菱ウエルファーマ株式会社製、日本)についても測定を行なった。Exosurf(登録商標) 及びSurfaxinは、それぞれ DPPC-1-hexadecanol-tyloxapol (84 : 16 : 0.25 w/w) および DPPC-PG-PA- KL4 (75 : 25 : 10 : 3 w/w) に調製した。
2.試料(脂質又ペプチド−脂質混合物)の調製
下記に示す合成ペプチド、脂質、脂肪酸およびアルコールをそれぞれ所定配合量に秤量し、クロロホルム/メタノールに溶解した。必要に応じて上記脂質混合試料にペプチドを適当濃度(w/w)となるように秤量し添加した。上記脂質混合液(又はペプチド含有混合液)に、窒素ガスを吹き込み、その後減圧乾燥し、完全に有機溶媒を揮発させ、容器の壁面にフィルムを形成させた。これに、水を加えて撹拌し、懸濁液を調製後凍結乾燥した。これに生理食塩水を加え撹拌、懸濁液とし、それを各試料溶液とした。なお、対照として使用したサーファクテン(登録商標)は、その生体への使用法に準じて120 mgを生理食塩水4mlに懸濁して使用した。
(A)図2aに使用する試料
(1)試料1:
サーファクテン(登録商標)
(2)試料2:
1−オクタデカノール 85%
パルミチン酸 15%
(3)試料3:
1−オクタデカノール 35%
フォスファチジルコリン 40%
パルミチン酸 25%
(4)試料4:
1−オクタデカノール 35%
卵黄レシチン 40%
パルミチン酸 25%
(5)試料5:
フォスファチジルコリン 85%
パルミチン酸 15%
(6)試料6:
1−オクタデカノール 30%
フォスファチジルコリン 35%
パルミチン酸 25%
コレステロール 10%
(7)試料7:
1−オクタデカノール 25%
フォスファチジルコリン 40%
パルミチン酸 25%
トリグリセロール 10%
(8)試料8:
1−オクタデカノール 30%
フォスファチジルコリン 35%
パルミチン酸 15%
コレステロール 10%
トリグリセロール 10%
(B)図2bに使用する試料
(1)試料1:
サーファクテン(登録商標)
(2)試料2:
1−オクタデカノール 70%
フォスファチジルコリン 10%
パルミチン酸 20%
(3)試料3:
1−オクタデカノール 40%
フォスファチジルコリン 40%
パルミチン酸 20%
(4)試料4:
1−オクタデカノール 10%
フォスファチジルコリン 70%
パルミチン酸 20%
(5)試料5:
1−オクタデカノール 80%
フォスファチジルコリン 10%
パルミチン酸 10%
(6)試料6:
1−オクタデカノール 40%
フォスファチジルコリン 50%
パルミチン酸 10%
(7)試料7:
1−オクタデカノール 10%
フォスファチジルコリン 80%
パルミチン酸 10%
(C)図3に使用する試料
(1)試料1:
サーファクテン(登録商標)
(2)試料2:
1−オクタデカノール 85%
パルミチン酸 10%
ペプチド Hel 7-11-P24 5%
(3)試料3:
1−オクタデカノール 35%
フォスファチジルコリン 40%
パルミチン酸 20%
ペプチド Hel 7-11-P24 5%
(4)試料4:
1−オクタデカノール 35%
フォスファチジルコリン 40%
パルミチン酸 20%
ペプチド Hel 13-5 5%
(5)試料5:
1−オクタデカノール 35%
フォスファチジルコリン 40%
パルミチン酸 20%
KL4 5%
(D)図4に対する試料
(1)試料1
Exosurf(登録商標)
(2)試料2
Surfaxin
(3)試料3
水素化大豆レシチンPC70 40%
大豆レシチンPC70 40%
パルミチン酸 20%
(4)試料4
水素化大豆レシチン 40%
大豆レシチンPC70 40%
パルミチン酸 20%
(5)試料5
水素化大豆レシチン 40%
大豆レシチンPC70 40%
パルミチン酸 17.5%
Hel 13-5 2.5%
(6)試料6
水素化大豆レシチンPC70H 40%
大豆レシチンPC70 40%
パルミチン酸 17.5%
Hel 13-5 2.5%
(7)試料7:
1−オクタデカノール 35%
水素化大豆レシチン 40%
パルミチン酸 20%
ペプチド Hel 13-5 5%
3.表面張力−面積ダイアグラム作成実験方法
表面張力はAcoma Wilhelmy Balance (アコマ医科工業株式会社製、日本)により測定した。テフロン(登録商標)水槽(78 x 138 x 30 mm)に生理食塩水を張り、閉鎖された液面を作成した。上記液面の気-液界面に 20 μl の脂質混合物を展開し、自発的に拡がるまで3分間放置した。この間の表面張力の変化を水槽中に垂直に懸垂された白金プレートを用いて表面拡散率 (surface spreading rate) として記録した。3分後に形成された単分子膜は、最大 45 cm2から最小 9 cm2までの表面積に、3分/cycleの速度で圧縮・膨張を繰り返した。白金プレートに作用する表面張力は、力変換器により電気信号に変換され、表面積の変化とともにX-Y記録計により自動的に連続記録した。この循環はもはやこれ以上変化はみられないというところまで続けた。図の表記は一般に7回目の循環のデータを示す。
4.ラット肺洗浄による肺サーファクタント欠乏モデル試験
体重500g前後の成熟ラットに気管切開を行い、肺を温生食で洗浄して肺サーファクタント欠乏モデルを作成した。100%酸素下で人工換気を行い、この発明により構成される2種類の人工肺サーファクタント [ペプチドを含む系(水素化大豆レシチン−大豆レシチンPC70−PA−Hel 13-5: 40 : 40 :1 7.5 : 2.5)およびペプチドを含まない系(水素化大豆レシチン−大豆レシチンPC70−PA、40 : 40 : 20)] を投与して延命効果および肺コンプライアンスを測定した。比較対照としては広く臨床で使用されている牛肺サーファクタント由来であるサーファクテン(登録商標)、Surfaxin、Exosurf(登録商標) の3種類の肺サーファクタントおよび肺サーファクタント無投与(生理食塩水 2 ml 投与)を用いた。それぞれのサーファクタントの懸濁法及び投与量は、生体へのサーファクテン(登録商標)投与法に準じて、生理食塩水を用いて濃度 30 mg/ml の懸濁液を作成し、1 ml を経気道的に投与した。尚、肺機能のパラメータとしては、肺コンプライアンス(換気量/気道圧差)を用いて、洗浄前、洗浄後、サーファクタント投与直前、投与直後、30、60、90、120、150および180 分後に測定した。肺コンプライアンスは、肺洗浄前は 0.60 ml/cm H2O 前後あった。それを、肺洗浄をして、肺コンプライアンスが 0.2 ml/cm H2O 前後になるまで行い、肺サーファクタント欠乏モデルが作成されていることを確認した。この確認後、ぞれぞれのサーファクタント群毎に6匹以上のラットを使用して、各種のサーファクタント投与実験を行った。
実験結果
肺サーファクタントの表面活性は、Wilhelmy表面張力計で表面張力−表面積曲線を測定したとき、ヒステレシス曲線を描くことが特長である。一般に圧縮時の表面張力の低下速度が速いほど、又自発的な表面拡散能力が速やかなものほど良好な肺サーファクタント活性を示すといわれている。すなわち、ヒステリシスカーブの形成する面積の大きい程、又圧縮時の表面張力の小さいものほど良好であると考えられる。図2に示すごとく、サーファクテン(登録商標)の圧縮時の最小表面張力は 7 mNm-1また各拡張時の最大張力は 45 mNm-1 である。
図2aおよび図2bは、サーファクテン(登録商標)を対象として、種々の脂質組成を有する人工肺サーファクタント組成物の表面張力−表面積曲線の結果を示している。図2aに示す如く、二成分系のOD−PA (85 : 15)、 egg PC-PA (85 : 15)および OD−PC (40 : 60)においては、良好のヒステリシスカーブは得られなかったが、OD−egg PC-PA (35:40:25) においては、最小表面張力(13 mNm-1)はサーファクテン(登録商標)には及ばないまでも良好な曲線が得られた(図中ライン3)。また、OD- egg PCPC−PAに、コレステロール(Ch)及び飽和アシルトリグリセロール(TG)またその混合系を加えても、改善は見られなかった。
次に、OD−egg PC−PAにおいて良好な結果が得られたので、それらの組成を変えた系で実験を試みた(図2b)。OD 及びegg PCの多い系(図中、ライン2、4、5、7)では、サーファクテン(登録商標)に比べて、良好な結果は得られなかつたが、OD 及びegg PCの値が近いものが良好な結果を示した(図中、ライン3、6)。PAにおいては、10%を含むもの(OD−egg PC−PA (40 : 50 : 10) より20%(OD−egg PC−PA (40 : 40 : 20) の方が拡張圧時の表面張力の値が大きかったことから、ヒステリシスカーブが描く面積は大きかった。一般に、ヒステリシスカーブが描く面積が大きい方が良い結果を与えると言われているが、拡張時の表面張力の値についてはインビボ(in vivo)との関連は明らかでない。
図3は脂質−ペプチド混合系の結果を示す。 HD−egg PC−PAの系に種々のペプチドを加えたとき一般に良好のカーブが得られた。例えば、 Hel 7-11−P24、 P24、 Hel 13-5等の間には余り差はなかった。臨床第3相にあると言われている Surfaxin も他のペプチドと同様であった。
図4は大豆レシチン脂質混合系及びそのペプチド混合系の結果を示す。対照として実験した Exosurf(登録商標) および Surfaxin の結果も同時に示す。興味ある事に、試された大豆脂質系においても、HD−egg PC-PA系と同様の良好なヒステリシスカーブが得られた。またOD−水素化大豆PC−PA(35:40:25)においては良好のヒステリシスカーブは得られなかった。さらに興味あることに、大豆水素化PCにペプチド含む系においては、拡張時の拡散力は若干弱いものの、圧縮時の表面張力の低下は、サーファクテン(登録商標)のそれより良好であった(図中、ライン5)。しかし、Exsosurf(登録商標)やSurfaxinにおいてはサーファクテン(登録商標)様の曲線は得られなかった。
上述のごとく、いくつかの脂質混合系については、サーファクテン(登録商標)と比較して、肺サーファクタントとして良好なヒステレシス曲線を描くことが分かった。この事は、ペプチドやタンパク質が存在していなくても、脂質混合系のみで十分に肺サーファクタント表面活性を有する事ができることを示している。これらの中には、圧縮時の表面活性の最低値はサーファクテン(登録商標)に比べてやや高いものの表面圧の早急な低下がみられるものもあった。
5.肺洗浄ラットを用いての肺能力の回復実験の結果
体重500g前後のラットの肺を温生食で洗浄し肺サーファクタント欠乏モデルを作成し、100 % 酸素下に人工換気を行い、この発明により構成される人工肺サーファクタントを投与して延命効果および肺コンプライアンス(換気量/気道圧差)を洗浄前、洗浄後サーファクタント投与直前、投与直後、30、60、90、120、150、180 分後に測定し、肺機能における効果を検討した。肺サーファクタントは、この発明により構成されるペプチド含有人工肺サーファクタント(OD−egg PC−PA−Hel 13-5; 35 : 40 : 20 : 5)及び(水素化大豆レシチン−大豆レシチンPC70−PA−Hel 13-5; 40 : 40 : 17.5 : 2.5)およびそれぞれのペプチドを含まない系(OD−egg PC−PA : 35 : 40 : 25)(水素化大豆レシチン−大豆レシチンPC70-PA ; 40 : 40 : 20)、サーファクテン(登録商標)、Surfaxin、Exosurf(登録商標) の7種類を使用し、肺サーファクタント無投与例には生理食塩水2 mlを投与した。肺サーファクタントの投与量はそれぞれ 60 mg (30 mg/ml) とした(図5)。
肺洗浄により全てのラットの肺コンプライアンスは 0.2 ml/cm H2O前後に低下した。これに対して、サーファクタント無投与群の肺コンプライアンスは、その後も低下して、肺洗浄後1時間以内に全例死亡した。
肺サーファクタントタンパク質を含むサーファクテン(登録商標)の投与群ラットは、投与直後より肺コンプライアンスが 0.255 ml/cm H2Oに上昇し、30 分後には 0.288 ml/cm H2Oとなり、以後実験終了の洗浄後3時間まで 0.3 ml/cm H2O前後を維持した。ペプチドを含む Surfaxin は、投与直後の肺コンプライアンスは 0.179 ml/cm H2Oと低下し、30 分後では 0.248 ml/cm H2O、60 分では 0.279 ml/cm H2Oとなったが、90 分後には 0.24 ml/cm H2Oと低下し、終了時の3時間後の肺コンプライアンスは 0.237 ml/cm H2Oであった(図5a)。この発明により構成されるペプチドを含む人工肺サーファクタント(水素化大豆レシチン−大豆レシチンPC70−PA−Hel 13-5; 40 : 40 : 17.5 : 2.5)は、投与直後の肺コンプライアンスは 0.237 ml/cm H2Oと上昇し、30 分後には 0.275 ml/cm H2O、60 分後には 0.268 ml/cm H2Oとなった。しかし、90 分後には 026 ml/cm H2Oとなり、終了時の3時間後の肺コンプライアンスは 0.3 ml/cm H2Oで、投与直後から150 分後の肺コンプライアンスの回復は若干サーファクテン(登録商標)に劣るが、180 分後では同等の回復を示した。また、Surfaxinと比較すれば、全ての測定時間で良好な肺コンプライアンスが認められた。OD−egg PC−PA−Hel 13-5においては、大豆脂質系に比べて、コンプライアンスの回復はやや弱かったものの、Surfaxinと比較すれば良好であった。
ペプチドを含まない系については、Exosurf(登録商標)は、投与直後の肺コンプライアンスが 015 ml/cm H2Oに低下し、30 分後には 0.165 ml/cm H2Oに、60 分後以降は 0.17 ml/cm H2Oのままであった(図5b)。この発明のOD−egg PC−PAでは、投与直後の肺コンプライアンスの低下は 0.198 ml/cm H2Oと認められず、30 分後には 0.211 ml/cm H2O、60 分後には 0.18 ml/cm H2Oとなった。しかし、90 分後には 0.20 ml/cm H2Oと上昇し、以後0.21ml/cm H2O前後の肺コンプライアンスを示した。また、全ての測定時間において、この発明のサーファクタントと同様にペプチドを含まないExosurf(登録商標)より良好な結果を示した。また、3時間後の肺コンプライアンスは 0.237 ml/cm H2O であった。水素化大豆レシチン−大豆レシチンPC70−PAにおいても同様であった。
以上の実験結果から。ラット肺サーファクタント欠乏モデルにおいて、大豆脂質−ペプチド混合系では牛肺サーファクタント由来の天然アポ蛋白を含むサーファクテン(登録商標)に比べて投与直後から150 分間は、肺機能改善効果は若干弱いが、180 分後には同等の機能を示し、合成ペプチドを含む Surfaxin よりも全ての実験時間を通じて優れた機能を示した。また、ペプチドを含まない大豆脂質混合系と Exosurf(登録商標) との比較では全ての実験時間を通じて大豆脂質混合系は優れた機能を示した。
この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、サーファクテン(登録商標) に比べて非常に低コストで調整ができるため、医薬品として、RDSやADRSへの適用は勿論の事、肺ガン等による重篤な末期症状の呼吸窮迫の緩和および予防、去痰、喘息の呼吸困難症状の緩和および予防に使用できる。また、牛肺などの生物由来のタンパク質等を原料としない完全人工調整肺サーファクタントであるため、未知の感染症、狂牛病やアレルギーの問題の除去なども可能である。また使用される脂質は、全て、医薬品等に混合されるなどして適用がなされている。更に、大豆レシチンは、医薬品としても使用されているため、毒性についても問題はないと考えられる。これらの事から、この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は広範囲な肺疾患医薬品として適用することができる。
【0006】
の発明において使用できるかかる代替物としては、比較的安価な卵黄から抽出され精製されたeggPC及び安価な卵黄レシチン、分別大豆レシチンなどのリン脂質を選択して使用するのがよい。また、飽和アルキル鎖を持つDPPCの代わりになる代替物としては、例えば、飽和高級アルコール(例えば1−オクタデカノール、OD)および分別大豆レシチンの不飽和脂肪鎖を水素化した水素化レシチンなども使用することができる。さらに、酸性成分として、従来の人工肺サーファクタント脂質として良く用いられている高級脂肪酸(例えば、パルミチン酸(PA)、ステアリン酸など)も使用するのがよい。その他、中性脂質(例えば、トリアシルグリセロールやコレステロール、サポニン等)なども使用することができる。
[0023] したがって、この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、リン脂質、高級アルコールおよび高級脂肪酸を主たる配合成分とする脂質混合系または脂質混合系にタンパク質もしくはペプチドを加えたタンパク質/ペプチド−脂質混合系からなっていることを特長としている。
[0024] この発明の人工肺サーファクタント組成物に使用することができるリン脂質としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはその他の天然素材抽出レシチン、分別大豆レシチンの不飽和脂肪鎖を水素化した水素化レシチンなどや、DPPCなどのフォスファチジルコリン類が挙げられる。また、リン脂質の割合は、乾燥総重量に対して約20−60%、好ましくは約30−50%程度であるのがよい。この発明において使用することができるDPPC以外のフォスファチジルコリン類としては、炭素数が12−24個のアシル基、好ましくは飽和アシル基を2個有するフォスジアシルファチジルコリン類、例えば、ジステアロイルフォスファチジルコリン、パルミトイルステアロイルフォスファチジルコリンなどが挙げられる。その他のフォスファチジルコリン類も使用することができ、例えば、ジアシルフォスファチジルコリン、ヘキサデシルパルミトイルフォスファチジルコリン、オクタデシルパルミトイルフォスファチジルコリン等のアルキルアシルフォスファチジルコリン、ジヘキサデシルフォスファチジルコリン等のジアルキルフォスファチジルコリンなどが使用することができる。
[0025] 高級アルコールとしては、例えば、炭素原子数14−20を有する飽和もしくは不飽和脂肪アルコール、例えば、オクタデカノール、ヘキサデカノールなどが挙げられ、高級アミンとしては、炭素原子数14−20の飽和もしくは不飽和脂肪族アミンなどが挙


【0007】
げられる。高級アルコールまたは高級アミンの割合は、乾燥総重量に対して約30−70%、好ましくは約40−60%程度であるのがよい。
[0026] 高級脂肪酸としては、例えば、炭素原子数14−20の飽和もしくは不飽和脂肪酸が挙げられ、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが例示される。高級脂肪酸の割合が、乾燥総重量に対して、約1−30%、好ましくは約5−20%程度含有されているのがよい。
[0027] さらに、この発明の人工肺サーファクタント組成物には、その他の成分として、中性脂質、例えば、トリアシルグリセロールやコレステロール、サポニンなども使用することができる。
[0028] 一方、人工肺サーファクタントに含まれるタンパク質は、リン脂質の単分子膜−二分子膜平衡をスムーズに行うための触媒的な作用をしていると考えられている(Perez−Gil,J.,and Keough,K.M.W.,Biochim.Biophys.Acta,1408,203−217,1998)。したがつて、この発明の人工肺サーファクタント組成物は、上述したごとく、その組成が上記脂質混合系だけに限定されるものではなく、必要に応じて、タンパク質やペプチドなどを添加することもできる。この発明に使用することができる人工肺サーファクタントペプチドの好ましい例としては、図1に例示する本発明者が開発したペプチドが挙げられる(発明者:李相男、杉原剛介、柴田功及び雪竹浩、特願2003−98607・特開2004−305006)。それらの性質、効果などの詳細は上記特許出願明細書に記載されているので、上記特許出願明細書の記載は本明細書の一部を構成する。この発明の人工肺サーファクタント組成物には、サーファクタント蛋白またはサーファクタントペプチドなどが約2−10%、好ましくは約1−5%程度の割合で更に含まれるのがよい。
[0029] この発明に係る人工肺サーファクタント組成物は、上記脂質または上記脂質とこれらペプチドとを所定の割合で混合して調製することができる。人工肺サーファクタント組成物は、表面張力−面積ダイアグラムを用いてそのサーファクタント活性表面活性を測定することによって評価することができる。この測定には、対象として、呼吸障害の治療薬とされている脂質系のみで構成され、ペプチドを含まないExosurf(登録商


Claims (12)

  1. リン脂質と、高級アルコールと、高級脂肪酸とから構成される混合脂質からなる人工肺サーファクタント組成物。
  2. タンパク質またはペプチドをさらに含むことからなる請求項1に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  3. 乾燥総重量にして、前記リン脂質を20−60重量%、前記高級アルコールを30−70重量%、前記高級脂肪酸を1−30重量%含有することからなる請求項1または2に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  4. 乾燥総重量に対して、前記リン脂質を30−50重量%、前記高級アルコールを40−60重量%、前記高級脂肪酸を5−20%重量含有することからなる請求項1または3のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  5. 前記タンパク質またはペプチドがさらに乾燥総重量にして1−10重量%含有していることからなる請求項2ないし4のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  6. 前記タンパク質またはペプチドがさらに乾燥総重量にして2−5重量%含有していることからなる請求項2ないし5のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  7. 前記リン脂質が、DPPC、卵黄レシチン、大豆レシチンまたはその他の天然素材抽出レシチンであることからなる請求項1ないし6のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  8. 前記高級アルコールが炭素原子数14−20を有する飽和もしくは不飽和脂肪アルコールまたは、炭素数14−20の高級飽和もしくは不飽和脂肪族アミンであることからなる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  9. 前記高級アルコールがオクタデカノールであることからなる請求項1ないし8のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  10. 前記高級脂肪酸が、炭素原子数14−20の飽和もしくは不飽和脂肪酸を用いることからなる請求項1ないし9のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  11. 前記高級脂肪酸がパルミチン酸であることからなる請求項1ないし10のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物。
  12. 請求の範囲第1項ないし第11項のいずれか1項に記載の人工肺サーファクタント組成物をサーファクタント不足あるいは機能不全に起因する疾患に対して使用することからなる人工肺サーファクタント組成物の使用方法。
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