JPWO2005095922A1 - ナノギャップ列物質捕捉検出同定方法および装置 - Google Patents
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Abstract
被検出物質としての分子が液中に存在しているような場合であっても、その物質を高感度で測定することができるナノギャップ列物質捕捉検出同定方法および装置を提供する。列状の探針(5)を有するカンチレバー(4)を配置してなるカンチレバーアレー(3)と、このカンチレバーアレー(3)の下方に配置され、修飾面(2)が前記カンチレバー(4)の探針(5)に対応して配置される基板(1)とを備え、前記修飾面(2)にセットされる未知の物質(6)と前記カンチレバー(4)の探針(5)との間のナノメートルオーダーのギャップで前記未知の物質(6)を捕捉し、検出し、同定する。
Description
本発明は、ナノギャップ列物質捕捉検出同定方法および装置に関するものである。
従来、カンチレバーアレーを用いた物質の検出には、以下の二つの方法がある。
(1)物質と反応ないし吸着する物質をカンチレバーにあらかじめ塗布し、物質導入に伴うカンチレバーの反りを光学的、ないし電気的に検出する(下記非特許文献1参照)。
(2)カンチレバーを振動させ、物質捕捉に伴う質量変化や、カンチレバーのダンピングの変化を振動周波数や振動振幅の変化として検出する(下記非特許文献2参照)。
また、カンチレバーを用いない単分子計測方法としては、以下の方法がある。
(3)平板基板に電極間距離が数nmの電極を2個用意し、電極間で分子を捕捉して電気的計測を行う。
また、本願発明者らは、以下のようなナノメートルオーダーの機械振動子およびそれを用いた測定装置を提案している。
(4)ナノメートルオーダーの飛躍的な力や質量変化の検出分解能を有する安定で感度の高いナノメートルオーダー機械振動子およびそれを用いた測定装置を開示している(下記特許文献1参照)。
(5)カンチレバーによる試料の物性分布のマッピング方法とその装置を開示している(下記特許文献2参照)。
(6)試料表面の検出を行うカンチレバー、それを用いた走査型プローブ顕微鏡、ホモダインレーザ干渉計、試料の励振機能を有するレーザドップラー干渉計などを開示している(下記特許文献3参照)。
(7)光ピンセットの例としては、下記非特許文献3〜5において開示されている。
特開2001−0091441号公報
特開2001−0298768号公報
特開2003−0114182号公報
M.K.Baller,H.P.Lang,J.Fritz,Ch.Gerber,J.K.Gimzewski,U.Drechsler,H.Rothuizen,M.Despont,P.Vettiger,F.M.Battiston,J.P.Ramseyer,P.Fornaro,E.Meyer,and H.−J.Guentherodt:A cantilever array−based artificial nose,Ultramicroscopy,(2000)1.
B.Ilic,D.Czaplewski,M.Zalalutdinov,and H.G.Craighead,P.Neuzil,C.Campagnolo and C.Batt:Single cell detection with micromechanical oscillators,J.Vac.Sci.Technol.B19,(2001),2825.
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橘,浮田:「上下入射光による微粒子の操作」,光学,Vol.26,No.9,pp.524−529,1998
H.Ukita and T.Saitoh:"Optical Micro−Manipulation of Beads in Axial and Lateral Directions with Upward and Downward−Directed Laser Beams",LEOS’99(IEEE Lasers and Electro−Optics Society 1999 Annual Meeting),pp.169−170,8−11,November 1999,San Francisco USA
しかしながら、上記した3つの検出・計測方法は以下のような問題点を有する。
(1)に関しては、検出したい物質が例えば単分子であると、カンチレバー全体が反るほどの影響はなく、かなりの量の分子が吸着しないと変化が検出できない。また、準静的な反りを検出するため、温度変化等のドリフトとの区別が付け難い。
(2)に関しては、生体関連物質等、液中での計測が不可欠な環境において、カンチレバーの振動が液によって減衰され、感度の良い検出が難しい。
(3)に関しては、精度よく多数の間隙を実現することが困難である。特に、空隙の両端の修飾の選択肢がきわめて限られており、力計測、電気計測、光計測が実現し難い。
本発明は、上記状況に鑑みて、被検出物質としての分子が液中に存在しているような場合であっても、その物質を高感度で測定することができるナノギャップ列物質捕捉検出同定方法および装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕ナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、列状に探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーを設け、前記カンチレバーアレーの下方に、修飾面が前記カンチレバーの探針に対応して配置される基板を配置して、未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とする。
〔1〕ナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、列状に探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーを設け、前記カンチレバーアレーの下方に、修飾面が前記カンチレバーの探針に対応して配置される基板を配置して、未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のギャップ長が既知であることを特徴とする。
〔3〕上記〔2〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記ギャップ長が一定に設定されることを特徴とする。
〔4〕上記〔2〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記ギャップ長が勾配を有することを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕又は〔2〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質が液中の物質であることを特徴とする。
〔6〕上記〔1〕、〔2〕又は〔5〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質が分子であることを特徴とする。
〔7〕上記〔6〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記分子が単分子であることを特徴とする。
〔8〕上記〔1〕、〔2〕又は〔5〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質がタンパクであることを特徴とする。
〔9〕上記〔1〕、〔2〕又は〔5〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質が生体物質であることを特徴とする。
〔10〕上記〔1〕から〔9〕の何れか1項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記カンチレバー探針の先端に予め特定の物質を捕捉するための修飾を施すことを特徴とする。
〔11〕上記〔1〕から〔10〕の何れか1項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、光を透過する探針を用いて、カンチレバーから探針先端に向けて光を導入し、ナノギャップにおいて光の場を集中させ、その光の勾配によって近傍の捕捉対象すべき物質をギャップへ引き込むことを特徴とする。
〔12〕ナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、基板の背面より1次レーザ入射光を照射し、この1次レーザ入射光を臨界角より浅い角度で物質のギャップ近傍に入射し、エバネッセント場による励起を生成させ、このエバネッセント場に置かれた探針先端が発生する伝搬光の場の勾配を用いて、近傍の捕捉すべき対象物質をギャップへ引き込むことを特徴とする。
〔13〕ナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、列状の探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーと、このカンチレバーアレーの下方に配置され、修飾面が前記カンチレバーの探針に対応して配置される基板とを備え、未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とする。
〔14〕上記〔13〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記カンチレバーの探針に修飾を施すことを特徴とする。
〔15〕上記〔13〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記捕捉された物質は、カンチレバーを振動させ、物質捕捉に伴う質量変化やカンチレバーのダンピングの変化を、振動周波数や振動振幅の変化として検出し、同定することを特徴とする。
〔16〕上記〔13〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記装置は、光励振機能を有するレーザドップラー干渉計を用い、捕捉された物質の特性を検出し、同定することを特徴とする。
〔17〕上記〔13〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記装置はカンチレバーアレーとその支持部材が透明部材からなり、各カンチレバーとこの部材がなす間隔を用いてカンチレバーの変位、振幅、周波数を光干渉法で計測し、捕捉された物質の特性を検出し、同定することを特徴とする。
〔18〕ナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、列状の探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーと、このカンチレバーアレーの下方に配置され、修飾面にセットされる物質が供給される複数の円形状の溝を有する円盤状の基板とを備え、未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とする。
〔19〕上記〔18〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記複数の円形状の溝のそれぞれにそれぞれ異なる物質をセットし、複数の物質を一度に捕捉し、検出し、同定することを特徴とする。
〔20〕ナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、試料がセットされる透明基板と、この透明基板の試料に対応して配置されるナノギャップ列をなすカンチレバーと、このカンチレバーの探針と前記透明基板間に捕捉される物質を備え、前記透明基板の背面より1次レーザ入射光を照射し、前記ナノギャップで物質を捕捉し、光学計測を行うことを特徴とする。
〔21〕上記〔20〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記1次レーザ入射光を臨界角より浅い角度で前記物質のセット部に入射し、エバネッセント場による励起を生成させることを特徴とする。
〔22〕上記〔20〕又は〔21〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記1次レーザ入射光を前記セットされる試料に順次照射するように走査することを特徴とする。
〔23〕上記〔20〕から〔22〕の何れか一項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記透明基板が円盤状の基板であり、該透明基板の半径方向に前記列状の探針を有するカンチレバーを配置してなることを特徴とする。
〔24〕上記〔20〕から〔23〕の何れか一項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記透明基板にはセットされる物質が供給される円形状の溝を有することを特徴とする。
〔25〕上記〔24〕記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記円形状の溝にそれぞれ異なる物質をセットし、複数の物質を一度に捕捉し、検出し、同定することを特徴とする。
列状に探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーを設け、前記カンチレバーアレーの下方に修飾面が前記カンチレバーの探針に対応して配置される基板を配置して、未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定する。よって、今までのカンチレバー式物質センサーで困難であった単分子検出を可能とする。
また、1個ないし数100万個の、空隙が既知のギャップを用いて、多種の物質の検出を行う。平面上のナノギャップの制御が困難であったのを、カンチレバーアレーと基板を用いることにより容易に実現する。また、空隙の両端の修飾の選択肢が広いため、多種の物質の、精度よい検出と同定が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示すナノギャップ列分子捕捉検出同定装置の模式図、図2はそのナノギャップ列分子捕捉検出同定装置のA部拡大図である。
これらの図において、1は平板状の基板、2はその基板1の所定位置に配置される修飾面、3はカンチレバーアレー、4はそのカンチレバーアレー3に設けられるカンチレバー、5はそのカンチレバー4の先端に形成される探針、6は修飾面2にセットされた未知の物質としての分子(タンパクや生体の機能性物質)、8は液、9は計測装置を示している。ここで未知の物質としては、物質としては既知であっても濃度が未知であるような物質も含むものと定義する。
図3は他の変形例を示すナノギャップ列分子捕捉検出同定装置のA部拡大図であり、この変形例では、探針5には予め特定の物質を捕捉するための修飾物7を施している(例えば、タンパクや生体の機能性物質などを塗る)。
この実施例では、列を形成するカンチレバー4を有するカンチレバーアレー3を用いて、個々のカンチレバー4の変位や周波数変化を検出しながら、それらカンチレバー4を平板状の基板1に近接させていく。ここで、近接させる方向は平板状の基板1の法線方向とし、これをZ軸と定義する。各カンチレバー4の探針5が平板状の基板1と接触したときのカンチレバーアレー3のZ軸座標を従来からのAFM(原子間力顕微鏡)の相互作用検出手法を用いて検出する。複数のカンチレバー4の探針5が平板状の基板1と接触した後で、カンチレバーアレー3をZ軸方向に後退させる。各カンチレバー4の探針5が平板状の基板1と接触したときのZ軸座標が計測されているため、後退した後のカンチレバー4の探針5と平板状の基板1のなす空隙の距離(ギャップ長)が既知となる。
この手法を用いると、仮にカンチレバー4の有する探針5の高さが不均一であったり、カンチレバー4に予め反りがあったとしても、既知の距離のギャップ列を実現することが可能となる。一般的に想定される誤差として、仮に数10nm程度のカンチレバー4の反りや探針5の高さの不均一があったとしても、十分に大きい数の空隙を用意することにより、サブオングストロームから数nmのギャップ列を実現可能である。
要は、カンチレバー4の10nmオーダの加工上のばらつきが見込まれても、1平方センチメートル当たり100万個、といったオーダのナノギャップ列が準備できるので、様々なギャップ長が用意できるということになる。換言すれば、ある意味では、ギャップ長のばらつきがあることが、好ましいと言える。製造上のギャップ長のばらつきがない場合は、基板、ないしカンチレバーに勾配を意図的に持たせ、ギャップ長が変化するギャップ列を用意する必要がある。
なお、基板とカンチレバーとの間の距離を一定に設定するようにしてもよい。
図4は本発明の第2実施例を示すナノギャップ列分子捕捉検出同定装置の平面図、図5は図4のB−B線断面図である。
これらの図においては、11は櫛歯状の突起片12が形成された基板、13はその突起片12にセットされる修飾面、14は櫛歯状のカンチレバー15を有するカンチレバーアレー、16は櫛歯状のカンチレバー15の先端に設けられる探針、19は計測装置であり、修飾面13には分子17が、櫛歯状のカンチレバー15の探針16には分子18がそれぞれセットされる。
このナノギャップ列分子捕捉検出同定装置は、ナノメートルオーダーの既知のギャップを列状に複数用意し、そのギャップで物質の捕捉、検出、同定を行うものである。ギャップは突起片12が形成された基板11と、カンチレバーアレー14との間で実現する。
ここでは、例えば、修飾面13にセットされた分子17とカンチレバー15の探針16に予め特定の物質を捕捉するために施された修飾物18間で捕捉され、計測装置19で検出され、同定されるようにしている。
また、本発明のナノギャップ列分子捕捉検出同定装置は、カンチレバーアレーとその支持部材が透明部材からなり、各カンチレバーとその部材がなす間隔を用いてカンチレバーの変位、振幅、周波数を光干渉法で計測し、捕捉された物質の特性を検出し、同定することができる。
図6は本発明の第3実施例を示すナノギャップ列分子捕捉検出同定装置の模式図、図7は図6のC部拡大図である。
これらの図において、21は平板状の円形基板、23はその円形基板21の中心部22を中心にして形成される複数の円環状の溝、24は分子を含む液体の供給ノズル、25はそのノズル24から供給される分子を含む液体、26はカンチレバーアレー、27はそのカンチレバーアレー26に配置される列状のカンチレバー、28はその列状のカンチレバー27の先端部に形成される探針、29はその探針28に塗られる分子、30は計測装置である。
この実施例では、例えば、分子を含む液体25である血液a〜eを複数の円環状の溝23にそれぞれ供給し、探針28に塗られる分子29との間で捕捉させ、計測装置30で血液a〜eの分子を検出し、同定するようにしている。
また、上記したように、カンチレバーと基板のなす空隙の両端には、予め特定の物質を捕捉するための修飾を施しておくことが望ましい。物質捕捉の検出は、各カンチレバーの振動周波数の変化や、カンチレバーアレーをZ軸方向に位置変調させたときのカンチレバーのたわみの履歴の変化(一般的にフォースカーブと呼ばれている)から検出可能である。つまり、計測装置による測定は、カンチレバーを振動させ、物質捕捉に伴う質量変化や、カンチレバーのダンピングの変化を振動周波数や振動振幅の変化として検出することができる。特に、本願発明者らによって開発された、試料の光励振機能を有するレーザドップラー干渉計を用いた試料の特性の計測装置(後述)やヘテロダインレーザドップラー計を用いた走査型力顕微鏡や物質センサ、質量センサを用いることができる。
図8は本発明にかかる分子の光励振機能を有するレーザドップラー干渉計を用いた分子の計測装置の構成図である。
この図において、この実施例の試料としての分子の特性の計測装置は、光学的励起部40、信号処理部50、レーザドップラー干渉部60、AFM(原子間力顕微鏡)試料ステージ制御部90、ネットワークアナライザ100からなる。
光学的励起部40は、レーザダイオード(LD)ドライバー41、そのLDドライバー41によって駆動されるレーザダイオード(LD)42、ミラー43からなる。
また、信号処理部50は、第1スイッチ(sw1)51、第2スイッチ(sw2)52、ディジタイザー53、位相シフター54、フィルター55、増幅器56からなる。
レーザドップラー干渉部60は、He−Neレーザ61、第1のPBS(ポラライジングビームスプリッタ)62、第2のPBS63、合波器64、レンズ65、偏波面保存ファイバ66、センサヘッド(レーザ出射部)67(レンズ−λ/4波長板−レンズ組み立て体)、ナノカンチレバー68、探針(プローブ)68A、ミラー69、AOM(音響・光変調器)70、λ/2波長板71、第3のPBS72、偏光子73、ホトダイオード74、BPF(バンドパスフィルタ)75、アンプ76,78,83、ディジタイザー77,79、遅延ライン80、DBM(Double Balanced Mixer;ダブルバランスドミキサ)81、LPF(ローパスフィルタ)82からなる。
さらに、AFM試料ステージ制御部90は、LO(ローカルオシレータ)に接続されるDBM91、コントローラ92、試料としての分子93、その試料93のピエゾ素子94からなる。
ネットワークアナライザ100は、信号入力端子101、評価出力端子102を有している。
そこで、この実施例では、例えば、780nmの波長を有するレーザダイオード(LD)61の出力光を、632nmの波長を有するHe−Ne(ヘリウム−ネオン)レーザ41のレーザドップラー干渉計の計測光に重畳させ、それを4μmコアの偏波面保存ファイバ66に導入し、レーザ出射部67、ナノカンチレバー68を経て試料としての分子93に照射する。ただし、波長は、上記に限定されない。
計測方法によって以下の用い方ができる。
(1)レーザドップラー干渉部60の出力信号を移相、増幅、場合によってはフィルタリングや2値化し、その信号を用いて780nmの波長を有するレーザダイオード42の変調を行う。これにより、試料としての分子93の固有振動数において自励を生じさせることが可能となる。つまり、フィルター特性を選択することにより、特定の振動モードを励振することが可能となり、ナノメートルオーダからミクロンオーダの試料としての分子の自励を実現することが可能となる。
また、走査型プローブ顕微鏡の力検出素子であるナノカンチレバー68に光を照射することにより、ナノカンチレバー68の自励を生じさせ、自励周波数の変化からナノカンチレバー68先端に配置した探針68Aと試料としての分子93の相互作用や質量変化を検出することが可能となる。
(2)ネットワークアナライザ100で周波数を掃引した信号を発生させ、その信号を用いて780nmの波長を有するレーザダイオード42の変調を行う。レーザドップラー干渉部60の出力信号をネットワークアナライザ100の信号入力端子101に接続する。これにより、試料としての分子93の周波数特性を、ネットワークアナライザ100と、光励振機能を有するレーザドップラー干渉部60を用いて計測することが可能となる。
なお、計測光と振動励起光は重畳させて同一の光学系を用いることも、異なる光路を用いて試料としての分子93に照射させることも可能である。
また、レーザドップラー干渉部60のHe−Neレーザ(光計測プローブ光)61にナノカンチレバー68の振動を励振するためのLD42で発生した光を重畳させる。その際、励振のための光は、レーザドップラー干渉部60の速度信号出力に移相、2値化、増幅等の処理を行い、その信号を用いてレーザダイオード42等の光源の変調を行ったものか、発信器によって指定された周波数、もしくは掃引された周波数で変調したものを用いる。
以上により、レーザドップラー干渉計で計測しようとする測定対象に固有の振動が励起され、列状のカンチレバーにより、物質、特に、単分子の捕捉・検出・同定を高精度に測定することができる。
本発明によれば、従来のカンチレバーの静的たわみや、振動数変化からは検出が困難であった液中での単分子検出を可能とするとともに、単分子の力学計測、電気計測を可能とするものである。また、探針と基板のなす空隙の両端を修飾することによって、特定の物質の捕捉を選択的に行うことが可能となる。
本願発明者によれば、今までに、一平方センチメートルあたり数100万個の探針を有するカンチレバーアレーが実現可能となっている(上記特許文献2参照)ため、それを用いて、多数の、空隙が既知のナノギャップアレーを実現することが可能である。
図9は本発明のナノギャップによる分子捕捉と、光学計測を行うナノギャップ列に焦点をあわせた光学系を示す模式図である。
この図において、110は透明基板、111,112,113はナノギャップ列をなすカンチレバー、114,115,116はそれらのカンチレバー111,112,113の探針、117は捕捉された分子、118,119は他の捕捉された分子、121,122,123はナノギャップ列、130は1次レーザ入射光、131は集光レンズ、132は臨界角より浅い角度での入射レーザ光、133はレーザスポット、134はエバネッセント場による励起を示している。このエバネッセント場におかれた探針先端が発生する伝搬光の場の勾配により、近傍の捕捉すべき対象物質をギャップへ引き込むことが可能となる。
この図9に示すように、光学計測を加えることにより、ナノギャップによる分子捕捉と、光学計測を行うことが可能になる。以下、詳細に説明する。
ナノギャップ列121,122,123に焦点を合わせた光学系(もしくは、ナノギャップから伝搬する光を受光する光学系)を用いることにより、ナノギャップ121において捕捉された分子117、タンパクなどの物質のスペクトラムや強度、偏光特性などの光学的特性を計測することが可能となる。
この光学系としては、例えば、共焦点顕微鏡の原理を用いたもので、集光すべき3次元空間内のある領域を順次走査する(レーザスポット133をナノギャップ列121,122,123に沿って走査する)ことによって、ナノギャップ列のそれぞれの光情報を計測することが可能となる。例えば、特定の蛍光標識のついた分子をナノギャップで捕捉し、力や電気的計測に加え、光のスペクトラム計測を行うことが可能となる。
また、光を透過する探針を用いて、カンチレバーから探針先端に向けて光を導入し、ナノギャップにおいて光の場を集中させ、その光の勾配により近傍の捕捉対象物質をギャップへ引き込むことも可能となる。
また、図6および図7に示したような回転円盤式においても、透明基板を用いるか、カンチレバーの上側から光学的に計測を同時に行うことにより、溝に乗ってナノギャップまで移送されてきた目的物質(ターゲット物質、検出したい物質)を確実にナノギャップで捕捉し、計測に入ることが可能となる。
現在、一般的な方法となりつつある、表面プラズモン法と比べ、この手法は、ナノギャップという、3次元的に位置が限定された部位での分子の捕捉が行われるため、予め光学的計測部位を限定することが可能で、感度、背景ノイズに対する耐性という点で利点が多い。結果的に試験材料の量も少量で済み、ごく微量な材料からの微量な物質の検出が可能となる。例えば、病院等での血液検査等に必要となる血液の量が飛躍的に少なくなることが期待される。
また、本発明のナノギャップ列分子捕捉検出同定方法及び装置では、捕捉すべき物質としては、タンパク、生体物質が挙げられ、分子生物学での物質の捕捉検出同定に寄与する。つまり、生命現象を分子のレベルで明らかにするために重要なツールとなり得る。例えば、細胞膜タンパク質の中には、このほか細胞の接着に関与するものがある。ミトコンドリアムはエネルギー生産装置であり、この中では、TCA(tricarboxylic acid)サイクルにより高いエネルギー(APT)が生産されているが、かかるAPTの捕捉検出同定にも有効である。
本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
(1)単分子オーダーの検出分解能を実現することができる。
(2)簡便にサブナノメートルオーダーからナノメートルオーダーのギャップ列を実現することができる。
(3)探針と基板とのギャップの両端の修飾の選択肢を広くすることができる。
(4)ナノメートルオーダーの物質の捕捉と特性の計測を円滑に行うことができる。特に列状のカンチレバーによる物質のレーザ入射光による捕捉とそのレーザ入射光の走査による多くの種類の捕捉された物質の特性の測定を高精度で、容易に行うことができる。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明のナノギャップ列分子捕捉検出同定装置は、タンパクや生体の機能性物質の検出、創薬への利用が可能である。
Claims (25)
- 列状に探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーを設け、前記カンチレバーアレーの下方に、修飾面が前記カンチレバーの探針に対応して配置される基板を配置して、未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のギャップ長が既知であることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項2記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記ギャップ長が一定に設定されることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項2記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記ギャップ長が勾配を有することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1又は2記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質が液中の物質であることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1、2又は5記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質が分子であることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項6記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記分子が単分子であることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1、2又は5記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質がタンパクであることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1、2又は5記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記物質が生体物質であることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1から9の何れか1項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、前記カンチレバー探針の先端に予め特定の物質を捕捉するための修飾を施すことを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 請求項1から10の何れか1項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定方法において、光を透過する探針を用いて、カンチレバーから探針先端に向けて光を導入し、ナノギャップにおいて光の場を集中させ、その光の勾配によって近傍の捕捉対象すべき物質をギャップへ引き込むことを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- 基板の背面より1次レーザ入射光を照射し、該1次レーザ入射光を臨界角より浅い角度で物質のギャップ近傍に入射し、エバネッセント場による励起を生成させ、該エバネッセント場に置かれた探針先端が発生する伝搬光の場の勾配を用いて、近傍の捕捉すべき対象物質をギャップへ引き込むことを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定方法。
- (a)列状の探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーと、
(b)該カンチレバーアレーの下方に配置され、修飾面が前記カンチレバーの探針に対応して配置される基板とを備え、
(c)未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。 - 請求項13記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記カンチレバーの探針に修飾を施すことを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項13記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記捕捉された物質は、カンチレバーを振動させ、物質捕捉に伴う質量変化やカンチレバーのダンピングの変化を、振動周波数や振動振幅の変化として検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項13記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記装置は、光励振機能を有するレーザドップラー干渉計を用い、捕捉された物質の特性を検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項13記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記装置はカンチレバーアレーとその支持部材が透明基板からなり、各カンチレバーと該部材がなす間隔を用いてカンチレバーの変位、振幅、周波数を光干渉法で計測し、捕捉された物質の特性を検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- (a)列状の探針を有するカンチレバーを配置してなるカンチレバーアレーと、
(b)該カンチレバーアレーの下方に配置され、修飾面にセットされる物質が供給される複数の円形状の溝を有する円盤状の基板とを備え、
(c)未知の物質を前記基板の修飾面と前記カンチレバーの探針の先端との間のナノメートルオーダーのギャップで捕捉し、検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。 - 請求項18記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記複数の円形状の溝のそれぞれにそれぞれ異なる物質をセットし、複数の物質を一度に捕捉し、検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- (a)試料がセットされる透明基板と、
(b)該透明基板の試料に対応して配置されるナノギャップ列をなすカンチレバーと、
(c)該カンチレバーの探針と前記透明基板間に捕捉される物質を備え、
(d)前記透明基板の背面より1次レーザ入射光を照射し、前記ナノギャップで物質を捕捉し、光学計測を行うことを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。 - 請求項20記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記1次レーザ入射光を臨界角より浅い角度で前記物質のセット部に入射し、エバネッセント場による励起を生成させることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項20又は21記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記1次レーザ入射光を前記セットされる試料に順次照射するように走査することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項20から22の何れか一項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記透明基板が円盤状の基板であり、該透明基板の半径方向に前記列状の探針を有するカンチレバーを配置してなることを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項20から23の何れか一項記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記透明基板にはセットされる物質が供給される円形状の溝を有することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
- 請求項24記載のナノギャップ列物質捕捉検出同定装置において、前記円形状の溝にそれぞれ異なる物質をセットし、複数の物質を一度に捕捉し、検出し、同定することを特徴とするナノギャップ列物質捕捉検出同定装置。
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