JPWO2005093058A1 - 大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用 - Google Patents

大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーおよびその利用 Download PDF

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Abstract

オオムギの詳細な連鎖地図を作成し、QTL解析を行なうことにより、オオムギ1H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する5つの遺伝マーカーと、オオムギ2H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する2つの遺伝マーカーと、オオムギ3H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する5つの遺伝マーカーと、オオムギ4H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する4つの遺伝マーカーと、オオムギ5H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する2つの遺伝マーカーとを見出した。

Description

本発明は、新規遺伝マーカーおよびその利用法に関するものであり、特に、オオムギにおける大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーと、その利用に関するものである。
大麦縞萎縮病は、オオムギ縞萎縮ウイルス(barley yellow mosaic virus;以下BaYMVと略す)またはオオムギマイルドモザイクウイルス(barley mild mosaic virus;以下BaMMVと略す)を原因ウイルスとし、藻菌類のポリミキサ・グラミニス(Polymyxa graminis)によって媒介される土壌伝染性のウイルス病である。発病すると葉の壊死斑点や黄変、分げつの減少、生育不良、枯死等を招き、しかも、一度発生するとその土壌は4〜5年休作しても無病化しないため、深刻な問題となっている。特にビール用オオムギで発生しやすく、ビール用オオムギの栽培が多くなるにつれ、わが国のみならず、中国やドイツでも発生が問題となっており、発生のない国においても、発病に備えて抵抗性の付与が積極的に考えられている。そのため、大麦縞萎縮病抵抗性は極めて重要な育種目標となっている。
現在、大麦縞萎縮病の最良の防除法は抵抗性品種の栽培であり、汚染圃場では耐病性の強い品種が栽培される。従来、作物の育種は目標形質を有する栽培品種や野生種等を交配し、多数の個体を実際に栽培して目標形質を有する個体を選抜し、当該目標形質を遺伝的に固定化しなければならず、広大な圃場や多大な入力、相当の年月が必要であった。例えば、BaYMVに対する大麦縞萎縮病抵抗性を目標形質とした場合には、BaYMVの人工接種が困難であるために、育成系統に大麦縞萎縮病抵抗性遺伝子が導入されているか否かを土壌にBaYMVを感染させた圃場で検定し、抵抗性を有する個体を選抜しなければならず、時間と手間が必要とされていた。
そこで、近年は育種期間の短縮、労働力および圃場面積の縮減、有用遺伝子の確実な選抜を図るため、遺伝マーカーを指標とした選抜による育種法が用いられるようになってきた。このような遺伝マーカーによる育種では、マーカーの遺伝子型により幼苗段階で選抜が可能となり、実際に土壌に大麦縞萎縮病ウイルスを感染させた圃場で栽培する必要がなく、目標形質の有無の確認も容易となる。したがって、遺伝マーカーを利用すれば効率的な育種が実現可能である。そして、遺伝マーカーを利用した育種を実現するためには、目標形質に強く連鎖した遺伝マーカーの開発が必須となる。
ところで、大麦縞萎縮病抵抗性などの農業上重要な形質の多くは、雑種後代で連続的な変異を示すものが多い。このような形質は、時間や長さなどの量的な尺度で測定されるので量的形質と呼ばれている。量的形質は一般に、単一主働遺伝子支配の形質ではなく、複数の遺伝子の作用によって決定されている場合が多い。作物の育種において改良対象とされる形質の多く、例えば収量や品質・食味等はこの量的形質であることが多い。
このような量的形質を司る遺伝子が染色体上に占める遺伝的な位置をQTL(Quantitative Trait Loci、量的形質遺伝子座)と称する。QTLを推定する方法として、QTLの近傍に存在する遺伝マーカーを利用するQTL解析が用いられる。かかるQTL解析は、染色体上のどの領域が目的とする量的形質に影響しているかを統計的に解析し、その領域の近傍にあるDNAマーカーを見出すことにより行われる。見出されたDNAマーカーにより作成された遺伝地図(連鎖地図)情報を元に、目標形質に影響を与えている領域を絞り込んでいき、最終的にその遺伝子を特定・単離することができる。1980年代後半にDNAマーカーが登場すると、DNAマーカー利用による詳細な連鎖地図作成が大きく進み、その地図に基づいて多くの生物でQTL解析が行われるようになった。
以上のように、目標形質に連鎖する遺伝マーカーの開発は、染色体全体をカバーできる詳細な連鎖地図に基づいた精度の高いQTL解析により可能となり、得られた遺伝マーカーを利用することにより、効率的な育種が実現できるといえる。大麦縞萎縮病抵抗性に関与するQTLとしては、例えば本発明者らによって中国在来種の六条オオムギ木石港3の3H染色体長腕、4H染色体動原体付近および7H染色体短腕上に見出されている(Chikara Miyazaki,Eiichi Osanai,Kazutoshi Ito,Takeo Konishi,Kazuhiro Sato and Akira Saito.2001.“Mapping of quantitative trait loci conferring resistance to barley yellow mosaic virus in a Chinese barley landrace Mokusekko 3.”Breeding Science 51:171−177.参照)。
上述のように、大麦縞萎縮病抵抗性はきわめて重要な育種目標の1つである。しかし、大麦縞萎縮病抵抗性には、複数の遺伝子座が関与する場合が多いため、交配等による方法では、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子(遺伝子座)を確実に選抜しているか否かを確認することが困難である。そこで、大麦縞萎縮病抵抗性を導入したオオムギの育種には遺伝マーカーを利用することが非常に有効である。大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーが開発され、利用可能となれば、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの育種の大幅な効率化を実現することが可能となる。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、オオムギにおける大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーと、その代表的な利用法とを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、発明者らが有するオオムギEST配列に基づいてプライマーセットを設計し、当該プライマーセットにより増幅されるオオムギゲノム断片の多型の有無により遺伝マーカー(DNAマーカー)を開発した。さらに、醸造用オオムギ「はるな二条」と野生オオムギ「H602」との交雑F1から作出した倍加半数体集団(以下、倍加半数体系統の略称をDH、当該系統をDHHS集団という)を材料として、上記遺伝マーカー間の連鎖を検出して、当該DHHS集団の連鎖地図を作成し、この連鎖地図に基づいて大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座のQTL解析を行なった。その結果、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を1H染色体上に1つ、3H染色体上に1つ検出した。本発明者らはさらに解析を進め、これら大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座にそれぞれ連鎖する新規遺伝マーカーを見いだした。
また、本発明者らは、大麦縞萎縮病に対する抵抗性が大きく異なるオオムギ品種Russia6(二条、抵抗性)とH.E.S.4(六条、罹病性)の交配から育成したRI系統(以下、RI1集団という)に加え、Harbin2−row(抵抗性)とTurkey6(羅病性)の交配から育成したRI系統(以下、RI2集団という)およびはるな二条(抵抗性)とH602(羅病性)の交配から育成したDHHS集団を材料として、大麦縞萎縮病抵抗性にかかわるQTL解析をさらに行なった。その結果、新たにRI1集団では4H染色体に2つ、RI2集団では2H、3H、5H染色体にそれぞれ1つずつ、DHHS集団では1H染色体に1つのQTLを検出した。さらに当該QTLに連鎖する遺伝マーカーを見出した。
本発明は、上記新規知見により完成されたものであり、以下の発明を包含する。
すなわち本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号1に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号2に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号3に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号4に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号19に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号20に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第五プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号21に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号22に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第六プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号23に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号24に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第七プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの2H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号25に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号26に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第八プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの2H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号27に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号28に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第九プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第三プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号7に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号8に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第四プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号29に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号30に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号31に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号32に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、配列番号33に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号34に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号35に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号36に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十三プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号37に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号38に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十四プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号39に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号40に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十五プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号41に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号42に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十六プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの5H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号43に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号44に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十七プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギの5H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号45に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号46に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十八プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。
一方、本発明にかかるDNA断片の単離方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーのいずれかを用いて大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することを特徴としている。
一方、本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法は、上記本発明にかかるDNA断片の単離方法により得られた上記大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を、オオムギのゲノムDNAに導入することを特徴としている。
一方、本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギは、上記本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法によって得られたものである。
一方、本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを選抜する方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーのいずれかを指標として、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを選抜する方法である。
また本発明は、以下の態様であってもよい。すなわち本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギのゲノムDNA中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、上記大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から0ないし18センチモルガンの範囲内の距離に位置することを特徴としている。上記遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に強連鎖するため、当該遺伝マーカーと大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座間で分離して組み換えが起こる確率は低い。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、例えば大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
また、本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギのゲノムDNA中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、上記大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から0ないし14センチモルガンの範囲内の距離に位置することを特徴としている。上記遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に強連鎖するため、当該遺伝マーカーと大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座間で分離して組み換えが起こる確率は低い。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、例えば大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
さらに本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ゲノムDNAが1H染色体であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギの1H染色体上に存在する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
さらに本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号1に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号2に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第一プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号3に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号4に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第二プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号19に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号20に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第五プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第五プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号21に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号22に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第六プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第六プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号23に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号24に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第七プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第七プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ゲノムDNAが2H染色体であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギの2H染色体上に存在する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号25に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号26に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第八プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第八プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号27に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号28に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第九プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第九プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ゲノムDNAが3H染色体であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギの3H染色体上に存在する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第三プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第三プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号7に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号8に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第四プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第四プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号29に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号30に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号31に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号32に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十一プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十一プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、配列番号33に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号34に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴としている。上記第十二プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ゲノムDNAが4H染色体であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギの4H染色体上に存在する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号35に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号36に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十三プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十三プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号37に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号38に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十四プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十四プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号39に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号40に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十五プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十五プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号41に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号42に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十六プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十六プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記ゲノムDNAが5H染色体であることを特徴としている。それゆえ上記遺伝マーカーを用いることによって、オオムギの5H染色体上に存在する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の取得、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産(作出)・判別等を行なうことが可能となる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号43に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号44に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十七プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十七プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
また本発明にかかる遺伝マーカーは、上記課題を解決するために、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号45に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号46に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十八プライマーセットを用いて増幅されるものであることを特徴としている。
上記第十八プライマーセットを用いてPCR等の増幅反応を行なえば、当該遺伝マーカーを容易に増幅・検出することが可能となり、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判別を容易に行なうことができる。
一方、本発明にかかるDNA断片の単離方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを用いて大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することを特徴としている。本発明にかかる遺伝マーカーは大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に強連鎖するものであり、上記遺伝マーカーを目標にクローニングを行なえば、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を容易に単離することが可能となる。
また本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法は、上記本発明にかかるDNA断片の単離方法により得られた上記大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を、オオムギのゲノムDNAに導入することを特徴としている。当該生産方法により、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを生産することが可能となる。
また本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギは、上記本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法によって得られることを特徴としている。当該大麦縞萎縮病抵抗性オオムギによれば、大麦縞萎縮病に対する抵抗性を有する個体の選抜が容易かつ確実となるため、大麦縞萎縮病によるオオムギの収量減少を防ぐことができる。
また本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを選抜する方法は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを指標として、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを選抜する方法である。上記本発明にかかる遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に強連鎖するため、当該遺伝マーカーと大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座間で分離して組み換えが起こる確率が非常に低い。それゆえ上記遺伝マーカーを検出することによって、試験対象オオムギにおける大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の遺伝子型を容易に判別することができ、選抜すべき個体を容易に見出すことが可能となる。
本発明にかかる遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と連鎖するため、当該遺伝マーカーを指標として大麦縞萎縮病抵抗性を導入したオオムギの育種を可能とする。したがって、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの効率的な育種を実現できるという効果を奏する。より具体的には、幼苗段階で目的個体を選抜できるため、実際に土壌に大麦縞萎縮病ウイルスを感染させた圃場でオオムギを栽培し、各個体の大麦縞萎縮病抵抗性を観察した後に目的の個体を選抜する必要がなくなり、育種期間を短縮できるという効果を奏する。また、複数の遺伝子座を同時に選抜できるために、観察によって選抜するよりも、確実に目的とする遺伝子型を得ることができる。さらに、労働力および圃場面積を縮減できるという効果を奏する。
さらに、上記遺伝マーカーを指標として選択的に育種された大麦縞萎縮病抵抗性オオムギは、大麦縞萎縮病ウイルスに汚染されている土壌においても栽培が可能であるため、安定した収量を確保できるという効果を奏する。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、次の説明で明白になるであろう。
オオムギESTクローン:baak1j14の塩基配列、および当該配列に基づいて設計されたプライマー配列の位置を示す図である。 遺伝マーカーk00256における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。 オオムギESTクローン:bags32m16の塩基配列、および当該配列に基づいて設計されたプライマー配列の位置を示す図である。 実施例13において、遺伝マーカーk02948における、H602とはるな二条との間の断片長多型を示す電気泳動画像である。 オオムギESTクローン:bah41l03の塩基配列、および当該配列に基づいて設計されたプライマー配列の位置を示す図である。 遺伝マーカーk04143における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。 オオムギESTクローン:baak14i02の塩基配列、および当該配列に基づいて設計されたプライマー配列の位置を示す図である。 遺伝マーカーk00169における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。 遺伝マーカーk03616における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。 遺伝マーカーk02325における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。 遺伝マーカーk07966における、H602とはるな二条との間のSNPおよびSNP周囲の塩基配列を示す図である。 実施例2において、遺伝マーカー「FEggaMtgg116」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例3において、遺伝マーカー「FEgggMcaa585」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例4において、遺伝マーカー「MEcatMagc467」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例5において、遺伝マーカー「MEataMatg396」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例6において、遺伝マーカー「MMattEacg162」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例7において、遺伝マーカー「FMataEgga331」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例8において、遺伝マーカー「FMacgEgat88」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例9において、遺伝マーカー「MMacgEgga74」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例10において、遺伝マーカー「FMaccEacg402」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例11において、遺伝マーカー「HVM36」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例12において、遺伝マーカー「k00256」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例14において、遺伝マーカー「k03861」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例15において、遺伝マーカー「k03616」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例16において、遺伝マーカー「k02325」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例17において、遺伝マーカー「k00169」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例18において、遺伝マーカー「k07966」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。 実施例19において、遺伝マーカー「k04143」の多型検出を行なった結果を示す電気泳動図である。
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下のとおりである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明は、オオムギにおける大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーとその利用の一例とに関するものである。以下、本発明にかかる遺伝マーカー、本発明の利用の一例について説明する。
(1)本発明にかかる遺伝マーカー
本発明にかかる遺伝マーカーは、オオムギのゲノムDNA中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖しているものであればよい。
大麦縞萎縮病は、前述のように、BaYMVまたはBaMMVを原因ウイルスとし、藻菌類のポリミキサ・グラミニス(Polymyxa graminis)によって媒介される土壌伝染性のウイルス病である。大麦縞萎縮病は、葉の壊死斑点や黄変、分げつの減少、生育不良、枯死等を招き、しかも、一度発生するとその土壌は4〜5年休作しても無病化せず、収量に甚大な影響を与えるため、深刻な病害の1つである。したがって、大麦縞萎縮病抵抗性はきわめて重要な育種目標である。
大麦縞萎縮病抵抗性には量的形質による場合と質的形質による場合があり、抵抗性は複数の遺伝子座により決定される。量的形質はQTL解析により、当該量的形質に関与している遺伝子座の染色体上の位置を推定することができる。以下、本発明者らがオオムギにおいて開発した大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と連鎖する遺伝マーカーについて詳細に説明する。なお、本発明にかかる遺伝マーカーはこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、醸造用オオムギ「はるな二条」と野生オオムギ「H602」との交雑F1から作出したDHHS集団を用いて、高密度連鎖地図を作成した。すなわち、本発明者らが有するオオムギEST(expressed sequence tag)配列に基づいて設計されたプライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを増幅し、「はるな二条」と「H602」との間に増幅断片長の多型を有するものや、増幅断片長の制限酵素による消化のパターンが異なる多型を有するものを特定し、これらのDNAマーカーを含む約490遺伝子座からなる連鎖地図を構築した。この連鎖地図および本発明者らが観察した上記DHHS集団93個体についての大麦縞萎縮病抵抗性のデータに基づいて、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座のQTL解析を行なった。その結果、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を1H染色体上に1つ、3H染色体上に1つ検出した。本発明にかかる遺伝マーカーは1H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を挟み、最も近傍に位置する2つの遺伝マーカーと、3H染色体上に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を挟み、最も近傍に位置する2つの遺伝マーカーである。発明者らは1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーを「k00256」および「k02948」、3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーを「k04143」、「k00169」と命名した。
k00256は、
CTTGGCCTTGATCTTCTGCT(配列番号1)に示される塩基配列を有するプライマー、および
GACCGTGTCAGGAAAGCAAT(配列番号2)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅されるDNAマーカーであり、上記1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側に約7.8センチモルガン(以下cMと表示する)の距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:baak1j14、配列番号15)に基づいて設計されている。図1に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号1)および上記プライマー配列(配列番号2)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間にSNP(single nucleotide polymorphisms;一塩基多型)がある。図2に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上が抵抗性型(H602型)の塩基配列(配列番号9)であり、下が罹病性型(はるな二条型)の塩基配列(配列番号10)である。□(四角)で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素PstIの認識配列(CTGCAG)を示す。図2から明らかなように、抵抗性型(H602型)の増幅産物は制限酵素PstIの認識配列(CTGCAG)を有しているためPstIで切断されるが、罹病性型(はるな二条型)の増幅産物は上記認識配列部分のGがAに変異しているため(CTGCAA)制限酵素PstIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk00256は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーであり、上記第一プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素PstI切断により、対象個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるH602が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、はるな二条型が罹病性型となり、H602型が抵抗性型となる。
k02948は、
TCTTTCCTGGGTTGGTGAAC(配列番号3)に示される塩基配列を有するプライマー、および
GCAGCTTTTGAGTTCGTTCC(配列番号4)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約0.0cMの距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:bags32m16、配列番号16)に基づいて設計されている。図3に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号3)および上記プライマー配列(配列番号4)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間に断片長多型があり、罹病性型(はるな二条型)のゲノムDNAを鋳型として増幅される断片のサイズは約389bp、抵抗性型(H602型)のゲノムDNAを鋳型として増幅される断片のサイズは約358bpと異なる。図4に第二プライマーセットを用いてPCRにより増幅した断片の電気泳動像を示した。図4の上段、下段とも両端は分子量マーカーである。図4上段は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、罹病性型(はるな二条型)、抵抗性型(H602型)、はるな二条とH602の交雑F1、DHHS集団の1〜45の増幅断片である。図4下段は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、DHHS集団の46〜93の増幅断片である。図4から明らかなように、増幅産物のサイズを確認することにより、対象個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、罹病性型(はるな二条型)の遺伝子型を有するか、抵抗性型(H602型)の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるH602が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、はるな二条型が罹病性型となり、H602型が抵抗性型となる。
k04143は、
CTGTTTGGATGACTGCGAGA(配列番号5)に示される塩基配列を有するプライマー、および
ATTACGCAACCTGATGGAGC(配列番号6)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第三プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側に約0.0ないし13.1cMの距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:bah41l03、配列番号17)に基づいて設計されている。図5に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号5)および上記プライマー配列(配列番号6)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間にSNPがある。図6に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上が罹病性型(H602型)の塩基配列(配列番号11)であり、下が抵抗性型(はるな二条型)の塩基配列(配列番号12)である。□(四角)で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素ApaLIの認識配列(GTGCAC)を示す。図6から明らかなように、H602の増幅産物は制限酵素ApaLIの認識配列(GTGCAC)を有しているためApaLIで切断されるが、はるな二条の増幅産物は上記認識配列部分のGがAに変異しているため(ATGCAC)制限酵素ApaLIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk04143は、CAPSマーカーであり、上記第三プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素ApaLI切断により、対象個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性型(はるな二条型)の遺伝子型を有するか、罹病性型(H602型)の遺伝子型を有するかを判別できる。
k00169は、
ACCCCGGAAGCTAAGATGAT(配列番号7)に示される塩基配列を有するプライマー、および
AGTCGGAACATGCGGTACAC(配列番号8)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第四プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約0.3ないし13.4cMの距離に座乗している。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:baak14i02、配列番号18)に基づいて設計されている。図7に当該ESTの塩基配列を示した。下線を付した部分が上記プライマー配列(配列番号7)および上記プライマー配列(配列番号8)の相補配列である。はるな二条の増幅産物とH602の増幅産物との間にSNPがある。図8に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上が罹病性型(H602型)の塩基配列(配列番号13)であり、下が抵抗性型(はるな二条型)の塩基配列(配列番号14)である。□(四角)で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素AluIの認識配列(AGCT)を示す。図8から明らかなように、H602の増幅産物は制限酵素AluIの認識配列(AGCT)を有しているためAluIで切断されるが、はるな二条の増幅産物は上記認識配列部分のTがCに変異しているため(AGCC)制限酵素AluIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk00169は、CAPSマーカーであり、上記第四プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素AluI切断により、対象個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性型(はるな二条型)の遺伝子型を有するか、罹病性型(H602型)の遺伝子型を有するかを判別できる。
さらに、本発明者らは、材料としてRussia6(二条、抵抗性)とH.E.S.4(六条、罹病性)の交配から育成したRI系統(RI1集団)、Harbin2−row(抵抗性)とTurkey6(羅病性)の交配から育成したRI系統(RI2集団)、およびはるな二条(抵抗性)とH602(羅病性)の交配から育成したRI系統(DHHS集団)を用いて、オオムギの大麦縞萎縮病抵抗性に関するQTL解析を行なった。
かかるQTL解析の結果、RI1集団では4H染色体に2つ、RI2集団では2H、3H、5H染色体にそれぞれ1つずつ、DHHS集団では1H染色体に1つのQTLを検出した。また、当該QTLに連鎖する新規な遺伝マーカーを見出した。
RI1集団から検出された4H染色体上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーとしては、「FEggaMtgg116」、「FEgggMcaa585」、「MEcatMagc467」、「MEataMatg396」が挙げられる。
「FEggaMtgg116」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAATGG(配列番号35)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCGGA(配列番号36)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十三プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側(5’末端側)に約4.0センチモルガン(以下cMと表示する)の位置に座乗している。
なお上記AFLP、および以下の説明におけるAFLPの検出の手順は特に限定されるものではなく、例えば文献(Pieter Vos,Rene Hogers,Marjo Bleeker,Martin Reijans,Theo van de Lee,Miranda Hornes,Adrie Frijters,Jerina Pot,Johan Peleman,Martin Kuiper and Marc Zabeau.(1995)AFLP:a new technique for DNA fingerprinting.Nucleic Asids Research.23:21:4407−4414.)の方法またはその改変法に従って行なえばよい。またPCR等の増幅反応の諸条件は、通常の条件で行なうか、あるいは最適な条件を検討の上、適宜採用すればよい。
上記第十三プライマーセットを用いて最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Russia6型)のものが0bpであり、罹病性型(H.E.S.4型)のものは約116bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)は、約116bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(H.E.S.4型)は約116bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また「FEgggMcaa585」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAACAA(配列番号37)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCGGG(配列番号38)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十四プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側(3’末端側)に約13.9cMの位置に座乗している。
上記第十四プライマーセットによって最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Russia6型)のものが0bpであり、罹病性型(H.E.S.4型)のものは約585bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)は約585bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(H.E.S.4型)は約585bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また「MEcatMagc467」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAACG(配列番号39)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCCAT(配列番号40)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十五プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側(5’末端側)に約7.4cMの位置に座乗している。
上記第十五プライマーセットによって最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Russia6型)のものが約467bpであり、罹病性型(H.E.S.4型)のものは0bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)は約467bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(H.E.S.4型)は約467bpの増幅断片が得られないということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また「MEataMatg396」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAATG(配列番号41)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCATA(配列番号42)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十六プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側(3’末端側)に約0.6cMの位置に座乗している。
上記第十六プライマーセットによって最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Russia6型)のものが約396bpであり、罹病性型(H.E.S.4型)のものは0bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)は約396bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(H.E.S.4型)は約396bpの増幅断片が得られないということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、RI2集団から検出された2H染色体上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーとしては、「FMaccEacg402」、「HVM36」が挙げられる。
「FMaccEacg402」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAACC(配列番号25)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCACG(配列番号26)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第八プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記2H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側(5’末端側)に約2.3cMの位置に座乗している。
上記第八プライマーセットによって最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Harbin2−row型)と抵抗性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(Harbin2−row型)のものが0bpであり、抵抗性型(Turkey6型)のものは約402bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Harbin2−row型)は約402bpの増幅断片が得られないのに対して、抵抗性型(Turkey6型)は約402bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該2H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるTurkey6が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、Harbin2−row型が罹病性型となり、Turkey6型が抵抗性型となる。
また、「HVM36」は、TCCAGCCGAACAATTTCTTG(配列番号27)に示される塩基配列を有するプライマー、およびAGTACTCCGACACCACGTCC(配列番号28)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第九プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記2H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約6.0cMの距離に座乗するものである。当該遺伝マーカーは、いわゆるSSR(Simple Sequence Repeat)マーカーである。
「HVM36」の増幅方法は特に限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、採用すればよい。
上記第九プライマーセットによって最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Harbin2−row型)と抵抗性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(Harbin2−row型)のものが約60〜30bpであり、抵抗性型(Turkey6型)のものは約90〜60bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Harbin2−row型)は約60〜30bpの増幅断片が得られるのに対して、抵抗性型(Turkey6型)は約90〜60bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該2H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるTurkey6が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、Harbin2−row型が罹病性型となり、Turkey6型が抵抗性型となる。
また、RI2集団から検出された3H染色体上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーとしては、「MMattEacg162」、「FMataEgga331」が挙げられる。
「MMattEacg162」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAATT(配列番号29)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCACG(配列番号30)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側(5’末端側)に約0.6cMの位置に座乗している。
上記第十プライマーセットを用いて最終的に増幅される増幅断片には、抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが約162bpであり、罹病性型(Turkey6型)のものは約170bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は約162bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約170bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、「FMataEgga331」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAATA(配列番号31)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCGGA(配列番号32)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十一プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側(3’末端側)に約6.2cMの位置に座乗している。
上記第十一プライマーセットを用いて最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが0bpであり、罹病性型(Turkey6型)のものは約331bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は、約331bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約331bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、RI2集団から検出された5H染色体上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーとしては、「FMacgEgat88」、「MMacgEgga74」が挙げられる。
「FMacgEgat88」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAACG(配列番号43)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCGAT(配列番号44)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十七プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記5H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側(5’末端側)に約3.8cMの位置に座乗している。
上記第十七プライマーセットを用いて最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが0bpであり、罹病性型(Turkey6型)のものは約88bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は、約88bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約88bpの増幅断片が得られるということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該5H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、「MMacgEgga74」は、オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、GACGATGAGTCCTGAG(配列番号47)および
TACTCAGGACTCAT(配列番号48)に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びにCTCGTAGACTGCGTACC(配列番号49)および
AATTGGTACGCAGTCTAC(配列番号50)に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、前記ライゲーション後のDNA断片を
GATGAGTCCTGAGTAA(配列番号51)に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよびGACTGCGTACCAATTC(配列番号52)に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片をGATGAGTCCTGAGTAAACG(配列番号45)に示される塩基配列を有するプライマーと、GACTGCGTACCAATTCGGA(配列番号46)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十八プライマーセットを用いて増幅される、いわゆるAFLP(Amplified Fragment Length Polymorphisms)によって検出される遺伝マーカーである。当該遺伝マーカーは、上記5H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側(3’末端側)に約17.1cMの位置に座乗している。
上記第十八プライマーセットを用いて最終的に増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが約74bpであり、罹病性型(Turkey6型)のものは0bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は、約74bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約74bpの増幅断片が得られないということである。よって、上記AFLPの検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該5H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、DHHS集団から検出された1H染色体上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する新規遺伝マーカーとしては、「k03861」、「k03616」、「k02325」が挙げられる。
「k03861」は、ACGATCGATCAAAAGGACCA(配列番号19)に示される塩基配列を有するプライマー、およびAATCCGACGAAATCAACGAG(配列番号20)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第五プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約15.5cMの距離に座上するものである。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:bah27k23、配列番号53)に基づいて設計されている。
「k03861」の増幅方法は特に限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、採用すればよい。
上記第五プライマーセットを用いて増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(はるな二条型)と抵抗性型(H602型)が存在し、罹病性型(はるな二条型)の増幅断片の断片長が約379bpであるのに対し、抵抗性型(H602型)のものは約353bpに増幅断片が見られる。よって、上記検出操作によって得られた増幅産物の断片長を電気泳動等の公知の手段を用いて確認することにより、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるH602が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、はるな二条型が罹病性型となり、H602型が抵抗性型となる。
「k03616」は、CTCGATCATCAGCGACTTCA(配列番号21)に示される塩基配列を有するプライマー、およびGAAGAGGCACCTTCTGCAAC(配列番号22)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第六プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側に約1.4cMの距離に座上するものである。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:bah13e15、配列番号54)に基づいて設計されている。
「k03616」の増幅方法は特に限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、採用すればよい。
上記第六プライマーセットを用いて増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、両者間にSNP(single nucleotide polymorphisms;一塩基多型)がある。図9に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上が罹病性型(H602型)の塩基配列(配列番号55)であり、下が抵抗性型(はるな二条型)の塩基配列(配列番号56)である。□(四角)で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素MboIの認識配列(GATC)を示す。図9から明らかなように、罹病性型の増幅産物は制限酵素MboIの認識配列(GATC)を有しているためMboIで切断されるが、抵抗性型の増幅産物は上記認識配列部分のCがAに変異しているため(GATA)、制限酵素MboIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk03616は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーであり、上記第六プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素MboI切断により、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、「k02325」は、AATGTGCACACCAAGGTTGA(配列番号23)に示される塩基配列を有するプライマー、およびAGACAACAACCGCCTGTACC(配列番号24)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第七プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約4.3cMの距離に座上するものである。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:bags1f22、配列番号57)に基づいて設計されている。
「k02325」の増幅方法は特に限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、採用すればよい。
上記第七プライマーセットを用いて増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、両者間にSNP(single nucleotide polymorphisms;一塩基多型)がある。図10に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上が罹病性型(H602型)の塩基配列(配列番号58)であり、下が抵抗性型(はるな二条型)の塩基配列(配列番号59)である。□(四角)で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素HapIIの認識配列(CCGG)を示す。図10から明らかなように、抵抗性型の増幅産物は制限酵素HapIIの認識配列(CCGG)を有しているためHapIIで切断されるが、罹病性型の増幅産物は上記認識配列部分のCがTに変異しているため(CTGG)、制限酵素HapIIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk02325は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーであり、上記第七プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素HapII切断により、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
また、「k07966」は、ATGGACCCAACAAGTGGAAG(配列番号33)に示される塩基配列を有するプライマー、およびAGGAAGACTTTGGAGGCCAT(配列番号34)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十二プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、上記3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約4.8cMの距離に座上するものである。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:BaGS7G14、配列番号60)に基づいて設計されている。
「k07966」の増幅方法は特に限定されるものではなく、適宜最適な条件を検討の上、採用すればよい。
上記第十二プライマーセットを用いて増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、両者間にSNP(single nucleotide polymorphisms;一塩基多型)がある。図11に両者の増幅産物の塩基配列のうち、上記SNPを含む部分の塩基配列を示した。上が罹病性型(H602型)の塩基配列(配列番号61)であり、下が抵抗性型(はるな二条型)の塩基配列(配列番号62)である。□(四角)で囲んだ塩基がSNPである。下線部が制限酵素HapIIの認識配列(CCGGを示す。図11から明らかなように、抵抗性型の増幅産物は制限酵素HapIIの認識配列(CCGG)を有しているためHapIIで切断されるが、罹病性型の増幅産物は上記認識配列部分のGがTに変異しているため(CCTG)、制限酵素HapIIで切断されない。すなわち、本遺伝マーカーk07966は、CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーであり、上記第十二プライマーセットによる増幅と、増幅産物の制限酵素HapII切断により、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
ここで、1センチモルガン(1cM)とは、2つの遺伝子座の間に1%の頻度で交叉が起きるときの、両遺伝子座間の距離を表す単位である。例えば、1.4cMは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と遺伝マーカーとの間で染色分体あたり平均して1000分の14回乗換えが起こることを示している。すなわち、このときは約1.4%の組み換え率であることを示している。
ところで、増幅に際して鋳型として用いられるゲノムDNAは、植物体より従来公知の方法で抽出可能である。具体的には、植物体からゲノムDNAを抽出するための一般法(Murray,M.G.and W.F.Thompson(1980)Nucleic Acids Res.8:4321−4325.など参照)が好適な例として挙げられる。また、上記のゲノムDNAは、根、茎、葉、生殖器官など、オオムギの植物体を構成するいずれの組織を用いても抽出可能である。また、場合によってはオオムギのカルスから抽出してもよい。なお、上記生殖器官には、花器官(雄性・雌性生殖器官を含む)や種子も含まれる。ゲノムDNAの抽出は、例えば、オオムギの幼苗期の葉を用いて行われる。この理由としては、組織の摩砕が比較的容易であり、多糖類などの不純物の混合割合が比較的少なく、また、種子から短期間で育成可能である点が挙げられる。さらに、幼苗段階で個体の選抜が可能となり、育種期間を大幅に短縮できる点が挙げられる。
またオオムギのゲノムDNAを鋳型とし、上記プライマーの組み合わせを用いて増幅する方法は、従来公知のDNA増幅法を採用することができる。一般には、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応法)や、その改変法が用いられる。PCR法や、その改変法を用いる際の反応条件は特に限定されるものではなく、通常と同様の条件下で増幅することができる。
本発明にかかる遺伝マーカーを用いることによって、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することが可能となり、上記DNA断片を用いることによって、オオムギの大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子、および大麦縞萎縮病抵抗性のメカニズムの解明に利用が可能である。また上記DNA断片をオオムギのゲノムDNAに導入することによって、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを生産(育種)することが可能となる。
また上記遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖しているため、試験対象であるオオムギのゲノムDNA中における該遺伝マーカーの多型を検出することによって、オオムギが大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を有するか否かを判定することが可能となる。また、同様に大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖しているため、試験対象であるオオムギのゲノムDNA中における該遺伝マーカーの多型を検出することによって、オオムギが、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギであるか否かを判別することができる。また、上記遺伝マーカーを増幅することができるプライマーまたは、上記遺伝マーカーを固定したDNAマイクロアレイをキット化すれば、オオムギの大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の有無判定キット、および大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定キットを提供することが可能となる。
上述のごとく、本発明にかかる遺伝マーカーは、様々な用途に利用が可能であることは明らかである。上述した本発明にかかる遺伝マーカーの用途の一例については、後に詳細に説示する。
(2)本発明の利用
〔大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の単離方法〕
上述のとおり本発明にかかる遺伝マーカー(k00256、K02948、k03861、k03616、k02325)は、オオムギ1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖するものであり、本発明にかかる遺伝マーカー(FMaccEacg402、HVM36)はオオムギ2H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖するものであり、本発明にかかる遺伝マーカー(k04143、k00169、k07966、MMattEacg162、FMataEgga331)はオオムギ3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖するものであり、本発明にかかる遺伝マーカー(FEggaMtgg116、FEgggMcaa585、MEcatMagc467、MEataMatg396)は、オオムギ4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖するものであり、本発明にかかる遺伝マーカー(FMacgEgat88、MMacgEgga74)は、オオムギ5H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖するものである。
よって、k00256、k02948、k03861、k03616、k02325の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ1H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができ、FMaccEacg402、HVM36の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ2H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができ、k04143、k00169、k07966、MMattEacg162、FMataEgga331の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができ、FEggaMtgg116、FEgggMcaa585、MEcatMagc467、MEataMatg396の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ4H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができ、FMacgEgat88、MMacgEgga74の遺伝マーカーを用いることによってオオムギ5H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することができる。
単離とは、目的のDNA断片、すなわち大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片をクローニングすることを意味することはいうまでもないが、広義には交雑F1集団から戻し交配等により、両親のうち一方の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遣伝子座を含むDNA断片を有する個体を選抜し、その遺伝子座領域のみを目的品種に導入する同質遺伝子系統の作製も単離に含まれる。
本発明にかかる遺伝マーカーを用いて大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離する方法としては特に限定されるものではないが、例えば次のような方法を挙げることができる。
オオムギでは本発明者らが開発を進めている「はるな二条」を含めて、ゲノムDNAのBACライブラリーが2種類作成されており、現在複数のBACライブラリーが開発中である。そこで、このようなBACライブラリーを用いて、従来公知のマップベースクローニングの手法にしたがって、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と当該遺伝子座に連鎖する本発明の遺伝マーカーとで当該マーカーを含むBACクローンを同定し、そこからBACのコンティグを作成して塩基配列を確定することにより、最終的に大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に到達することができる。
また、上述のように、交雑F1に一方の親を戻し交配することにより、他方の親の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を目的品種に導入して(広義の)単離をすることができる。
なお、上記方法をはじめとする大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離する際には、目的とする大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に対してなるべく近傍に座乗する遺伝マーカーを選択して用いることが好ましい。目的とする大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と遺伝マーカーの間で組み換えが起こる確率がより低くなり、より確実に大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遣伝子座を含む断片を単離することができるからである。
〔大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法、および当該生産方法によって得られた大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ〕
上記本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片の単離方法によって得られた大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片をオオムギのゲノムDNAに導入することによって、大麦縞萎縮病抵抗性改変オオムギを生産することが可能である。ただし、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを生産するためには、大麦縞萎縮病抵抗性の品種から上記大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離し、大麦縞萎縮病感受性の品種に導入することが必要である。
上記DNA断片を導入する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して用いることができる。より具体的には、例えばアグロバクテリウムまたはパーティクルガンを用いる方法を挙げることができる。例えば、雑誌The Plant Journal(1997)11(6),1369−1376には、Sonia Tingay等により、Agrobacterium tumefaciensを用いてオオムギを形質転換する方法が開示されており、この方法を利用して形質転換オオムギを生産可能である。
また、オオムギに導入する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片は、1H染色体上のDNA断片、2H染色体上のDNA断片、3H染色体上のDNA断片、4H染色体上のDNA断片、5H染色体上のDNA断片のうち、いずれのDNA断片であっても大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを生産することは可能であるが、複数のDNA断片を同一のオオムギのゲノムDNAに導入することによって、さらに大麦縞萎縮病抵抗性が向上したオオムギを生産することが可能である。
さらに、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の遺伝子型が抵抗性であるオオムギ個体と、当該DNA断片を導入しようとする大麦縞萎縮病感受性オオムギ個体との交雑により、抵抗性オオムギ個体の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を導入することも可能である。
本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギは、上記本発明にかかる生産方法により得られるものである。上記本発明にかかる生産方法によれば、容易かつ確実に大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを作出することができるため、大麦縞萎縮病の発生を未然に防ぐことができ、収量の安定した増大に寄与することができる。
〔大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定方法(選抜方法)〕
本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定方法(選抜方法)は、上記本発明にかかる遺伝マーカーを指標として大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを判定(選抜)する方法であればよく、その他の工程、条件、材料等は特に限定されるものではない。例えば、従来公知の作物育種法を利用することができる。
より具体的には、例えば、交配等により作出したオオムギのゲノムDNAを抽出し、本発明にかかる遺伝マーカーの遺伝子型を指標としてオオムギを判定(選抜)する方法が挙げられる。遺伝マーカーを検出する手段としては、例えば、対象とするオオムギから抽出したゲノムDNAを鋳型として上記第一ないし第十八プライマーセットのいずれかを用いて増幅したDNA断片について、断片長または断片の制限酵素消化パターンの観察を挙げることができる。増幅断片から試験対象オオムギ個体が、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを、各遺伝マーカーを指標として判定する方法については、上記本発明にかかる遺伝マーカーの項で説明したとおりである。
ここで本判定方法の判定の精度(確率)については、以下のとおりである。大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から1.4cMの距離に位置する遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と遺伝マーカーとの間で染色分体あたり平均して1000分の14回乗換えが起こる。すなわち約1.4%の確率で組み換えが起こる。よってこの遺伝マーカーのうち大麦縞萎縮病抵抗性型のものを検出すれば、98.6%の確率で大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を有しているということがいえる。よって大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座と遺伝マーカーとの距離が近いほど、高確率をもって大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の有無を判定することができる、すなわち大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを判定(選抜)することができるといえる。
上記理由により、多型を検出する遺伝マーカーは、上記遺伝マーカーのいずれであっても大麦縞萎縮病抵抗性の有無を判定することが可能であるが、各大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に対してなるべく近傍に座乗する遺伝マーカーを検出することが好ましい。例えば、本判定方法において1H染色体上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーを検出する場合は、「k03616」(大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座からの距離:約1.4cM)の方が「k02325」(大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座からの距離:約4.3cM)より好適であるといえる。
また本検出方法においては、複数の遺伝マーカーの多型を検出してもよい。特に判定の精度(確率)を向上させるためには、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を挟む関係にある遺伝マーカーを選択して多型を検出すればよい。例えば、「k03616」(大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側に約1.4cM)と「k02325」(大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座からの距離:約4.3cM)との組み合わせが有る。かかる組み合わせを例にして、該遺伝マーカーをそれぞれ単独で多型を検出した場合と、両方の多型を検出した場合とにおける本判定方法の精度(確率)についてより具体的に説明する。
「k03616」は大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から短腕側に約1.4cMの位置に座乗しており、該遺伝マーカーの多型を単独で検出したときの本判定方法の精度(確率)は、(1−14÷1000)×100=約98.6%である。一方「k02325」は大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座からの距離:約4.3cMの位置に座乗しており、該遺伝マーカーの多型を単独で多型を検出したときの本判定方法の精度(確率)を同様に計算すると95.7%である。当該2つの遺伝マーカーの多型を両方検出すると、(1−(14÷1000)×(43÷1000))×100=99.940%となり高確率を持って1H上の大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の有無を判定することができる。
したがって大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を挟む関係にある遺伝マーカーを検出して判定することは好ましい。上記「k03616」と「k02325」以外の組み合わせとしては、「FEggaMtgg116」と「FEgggMcaa585」との組み合わせ、「MEcatMagc467」と「MEataMatg396」との組み合わせ、「MMattEacg162」と「FMataEgga331」との組み合わせ、「FMacgEgat88」と「MMacgEgga74」との組み合わせ、「FMaccEacg402」と「HVM36」との組み合わせ、「k02948」と「k03861」の組み合わせ、「k00169」と「k07966」の組み合わせ、「k04143」と「k00169」の組み合わせ、「k00256」と「k02948」の組み合わせ等が挙げられる。
なお本判別方法は、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの育種の際の有効なスクリーニング手段として利用することができる。例えば、上記本発明にかかる大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法を行なった際に、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片が導入された形質転換体オオムギを多数の形質転換体候補から容易にスクリーニングすることができる。その他薬剤等の変異処理、交配などの育種処理を行なったオオムギのスクリーニング手段としても利用可能である。
<大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定キット>
また上記「大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定方法」を行なうために必要な試薬、酵素類をキット化することによって、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定キット(以下適宜「判定キット」と称する)を構成することが可能である。上記「大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定方法」の項で説示したごとく、本発明にかかる遺伝マーカーを利用することによって、試験対象オオムギ個体が、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判定することができる。すなわち、試験対象のオオムギ個体が大麦縞萎縮病抵抗性か罹病性であるかを判断することができるということである。よって、当該判定キットによれば、より簡便に大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを判別できるという効果を奏する。
なお当該判定キットには、少なくとも本発明にかかる遺伝マーカーを検出することができる、プライマーセット(第一から第十八プライマーセット)が少なくとも一つ以上含まれていることが好ましい。さらに好ましくは、上記プライマーセット(第一から第十八プライマーセット)全てが含まれていることが好ましい。この他、公知の大麦縞萎縮病抵抗性に連鎖するマーカーを検出するために必要なプライマーが含まれていてもよい。
さらには当該判定キットには、PCRを行なうための酵素、試薬類が含まれていてもよいし、鋳型となるゲノムDNAの調製するために必要な試薬、バッファー類、遠心チューブが含まれていてもよいし、目的のDNAサイズバンドの検出に必要となる遺伝マーカー(k00256、K02948、k04143、k00169、FEggaMtgg116、FEgggMcaa585、MEcatMagc467、MEataMatg396、MMattEacg162、FMataEgga331、FMacgEgat88、MMacgEgga74、FMaccEacg402、HVM36、k03861、k03616、k02325、k07966)または適当なDNAサイズマーカーが含まれていてもよい。
<遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)>
本発明にかかる遺伝マーカー(k00256、K02948、k04143、k00169、FEggaMtgg116、FEgggMcaa585、MEcatMagc467、MEataMatg396、MMattEacg162、FMataEgga331、FMacgEgat88、MMacgEgga74、FMaccEacg402、HVM36、k03861、k03616、k02325、k07966)を適当な基板(ガラス、シリコンウエハ、ナイロンメンブレン等)上に固定することによって、DNAマイクロアレイを始めとする遺伝子検出器具を構成することができる。当該遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)に対して、試験対象のオオムギから調製したプローブを反応させ、その時に発するシグナルを検出することで、複数の本発明にかかる遺伝マーカーを容易かつ同時に検出することが可能である。したがって当該遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)は、本発明にかかる遺伝マーカーの多型を検出する手段として用いることができる。よって、上記大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定方法における検出手段として利用可能である。また、当該DNAマイクロアレイを上記大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの判定キットに加えることもできる。この場合、当該キットには遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)からのシグナルを検出するために用いる試薬・器具・装置等が含まれていてもよい。
本遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)の基板上には、本発明にかかる遺伝マーカー(k00256、K02948、k04143、k00169、FEggaMtgg116、FEgggMcaa585、MEcatMagc467、MEataMatg396、MMattEacg162、FMataEgga331、FMacgEgat88、MMacgEgga74、FMaccEacg402、HVM36、k03861、k03616、k02325、k07966)のうち少なくとも1つ以上の遺伝マーカーが固定されていればよい。また抵抗性型の遺伝マーカー、罹病性型の遺伝マーカーのいずれか一方もしくは両方が固定されてもよい。さらにより高精度(確率)をもって大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の有無を判断するためには、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を挟む関係にある複数の遺伝マーカーの組み合わせが固定されていることが好ましい。かかる遺伝マーカーの組み合わせとしては、「k00256」と「K02948」の組み合わせ、「k04143」と「k00169」との組み合わせ、「FEggaMtgg116」と「FEgggMcaa585」との組み合わせ、「MEcatMagc467」と「MEataMatg396」との組み合わせ、「MMattEacg162」と「FMataEgga331」との組み合わせ、「FMacgEgat88」と「MMacgEgga74」との組み合わせ、「FMaccEacg402」と「HVM36」の組み合わせ、「K02948」と「k03861」との組み合わせ、「k03616」と「k02325」の組み合わせ、「k00169」と「k07966」の組み合わせ、等が挙げられる。全ての遺伝マーカー(抵抗性型および罹病性型)が固定されていることが最も好ましいことはいうまでもない。
上記複数の遺伝マーカーが固定された遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)を用いることによって、一度の試行で複数の遺伝マーカーを簡便に検出することができる。さらに大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の有無の判断を高い精度(確率)をもって行なうことができる。
なお、上記遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)には、本発明にかかる遺伝マーカーのみならずその近傍に位置するその他の遺伝マーカーが固定されていてもよい。
さらに上記遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)には、本発明にかかる遺伝マーカーがオオムギの染色体上に並んでいる順序で固定されているか、あるいはオオムギの染色体上に並んでいる順序に対応する配列位置情報が付与されて固定されていることが好ましい。検出の精度をさらに向上させることが可能となるからである。つまり、従来のDNAマイクロアレイを用いた解析において、あるスポットに対するシグナルが得られなかった場合、本当に検出しようとする遺伝マーカーが存在しないのか、または解析の実験上のミスによりシグナルが得られていないのかについては、改めて確認しなければ正確には判定することはできなかった。これに対して、上記のごとく遺伝マーカーがオオムギの染色体上に並んでいる順序で固定されているか、あるいはオオムギの染色体上に並んでいる順序に対応する配列位置情報が付与されて固定されている遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)を用いる場合においては、固定化されている遺伝マーカーの染色体上の順序が確認できるように配列されているため、上記のような実験上でのミスか否かを容易に判定することが可能となる。
具体的には、例えば、シグナルが得られなかったスポットの前後のスポットでシグナルが得られたとする。当該遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)では、各スポットは、染色体上に並んでいる順序が確認できるように配列されている。通常、染色体上に直線上に近接して並んでいる遺伝子のうち一つの遺伝子のみが組み換わるためには2つの組み換えがごく近傍で起こらなくてはならない。このような現象が起こる確率が極めて低いため、シグナルを得られなかったという結果は、実験上のミスによるものであると判断される。このように、当該遺伝子検出器具(DNAマイクロアレイ)では、あるスポットに対するシグナルが得られなかった場合でも、実験上でのミスか否かを容易に判定することが可能となるため、解析の精度を向上することができる。
なお本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
また本発明の説明において使用したプライマー等の塩基配列は、本発明にかかる遺伝マーカーを増幅することができるものであれば、1または数個の塩基が置換、欠失、付加がされた塩基配列を有するプライマーを用いてもよい。
以下実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔使用植物〕
醸造用オオムギ「はるな二条」(Hordeum vulgaressp.vulgare variety Harunanijo、抵抗性)と野生オオムギ「H602」(Hordeum vulgare ssp.spontaneum H602、罹病性)との交配から得られたF1の花粉を培養して半数体(haploid)を育成し、自然倍加した倍加半数体(doubled haploid)93個体からなる集団(DHHS集団)を使用した。
さらに、大麦縞萎縮病に対する抵抗性が異なるオオムギ品種Russia6(二条、抵抗性)とH.E.S.4(六条、罹病性)の交配から育成したRI系統(RI1集団)、Harbin2−row(抵抗性)とTurkey6(羅病性)の交配から育成したRI系統(RI2集団)を使用した。
〔連鎖地図の作成〕
本発明者らが有するオオムギEST配列約12万をphredによって再度ベースコールした後、quality score 20でトリミングし、ベクターマスキングを行って3’端約6万配列を得た。これらの配列からphrapによってcontig 8,753、singlet 6,686からなるUnigeneを作成した。プライマー作成ソフトPrimer3によって、400bpを中心として149−490bpのcDNA配列を増幅するプライマーセット約11,000を作成した。このうち約5,100のプライマーセットについて、はるな二条とH602との間に増幅されるゲノム断片の多型の有無を検出するために、それぞれのゲノムDNAをPCR増幅し、アガロースゲル電気泳動によってバンドの有無、バンド数、バンドサイズを調査し、マーカーとなり得るものを選択した。さらに、バンドサイズに多型のない場合は、増幅断片をダイレクトシークエンスすることにより塩基配列の差異を検出し、39種類の制限酵素に対してCAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)化が可能なものをマーカーとして選択した。
以上により、上記はるな二条とH602との交雑F1由来のDHHS集団について、合計499遺伝子座のマーカーからなる連鎖地図を構築した。この連鎖地図の平均マーカー密度は3.0cM/locus、全長は1,470cMである。
〔遺伝子型の判定〕
DHHS集団各個体の遺伝子型の判定は、上記DHHS集団の連鎖地図にマッピングされたマーカーを用いて行なった。すなわち、各個体の新鮮な葉の組織から分離したDNAを鋳型として、EST配列に基づいて設計したプライマーセットを用いてPCRを行なった。断片長多型マーカーについてはPCR産物の電気泳動により遺伝子型を判定した。CAPS(cleaved amplified polymorphic sequence)マーカーについては、PCR産物を制限酵素で消化し、電気泳動により遺伝子型を判定した。
〔大麦縞萎縮病抵抗性の検定〕
大麦縞萎縮病の発病が顕著に認められる岡山大学資源生物科学研究所の圃場において、Russia6、H.E.S.4およびRI1集団の各系統、Harbin2−row、Turkey6およびRI2集団の各系統、H602、はるな二条およびDHHS集団の各系統を栽培した。その後、3月初旬に各系統のモザイク病斑を肉眼で確認してスコア化し、大麦縞萎縮病抵抗性の程度とした。スコアは、モザイク病斑の程度で以下のように分類した。
スコア1(高度抵抗性):モザイクを全く認めない。
スコア2(抵抗性):部分的にわずかなモザイクが認められる。
スコア3(抵抗性中位):モザイクが容易に認められる。
スコア4(罹病性):強いモザイクが認められる。
スコア5(高度罹病性):顕著なモザイクが認められる。
なお、大麦縞萎縮病に対し高度抵抗性を有する中国在来種の六条オオムギ木石港3および大麦縞萎縮病に対し高度罹病性を有する醸造用二条オオムギあまぎ二条を対照として用いた。
オオムギの縞萎縮病抵抗性に関するQTL解析
QTL解析のアルゴリズムには、シンプルインターバルマッピング(simple intervalmapping、以下「SIM」と略記する。)とコンポジットインターバルマッピング(compositeinterval mapping以下「CIM」と略記する。)を用い、解析ソフトウエアにはそれぞれ、MAPMAKER/QTLとQTL Cartographerを用いた。LODスコアの閾値を2に設定し、LODスコアが2を超えた場合に当該2つのマーカー区間内の最もLODの大きな位置にQTLの存在を推定した。
〔結果〕
DHHS集団の結果を表1に、RI1集団の結果を表2に、RI2集団の結果を表3に示した。なお上記表1〜3中の「Population」は「QTL解析を行なった集団名」を意味し、「Trait」は「形質」を意味し、「Chromosome」は「遺伝マーカーが座上する染色体」を意味し、「Marker interval(M1−A−QTL−B−M2)」は「QTLの近傍に座上し、該QTLを挟む2つの遺伝マーカー(M1、M2)」を意味し、「Distance(cM)A+B」は「QTLを挟む2つの遺伝マーカー間の距離」を意味し、「Positiona」(cM)A」は「遺伝マーカーM1とQTL間の距離」を意味し、「Position(cM)B」は「遺伝マーカーM2とQTL間の距離」を意味し、「LODb」Score」は「LODスコアのピーク値」を意味し、「Var.(%)c」」は「QTLの存在により表現型の分散の何(%)を説明することができるかを示す値」を意味し、「Weightd」」は「QTLの存在により上記『切り穂検定法』のスコアがどれだけ上がるかを示す値」を意味している。
Figure 2005093058
表1から明らかなように、SIMにより1H染色体上に、k00256とk02948に挟まれる位置に座乗するQTLが検出され、k02948とk03861に挟まれる位置に座乗するQTLが検出された。ただし、連鎖地図上には短腕側からk00256、k02948、k03861の順番でこれらのマーカーが並んでいるため、k00256とk02948によって検出されたQTLと、k02948とk03861によって検出されたQTLは同じ位置を示している(k02948の位置にQTLがある)ことになる。
また、SIMにより3H染色体上に、k04143とk00169に挟まれる位置に座乗するQTLが検出され、k00169とk07966に挟まれる位置に座乗するQTLが検出された。さらに、CIMにより3H染色体上に、k04143とk00169に挟まれる位置に座乗するQTLが検出され、CIMにより1H染色体上に、k03616とk02325に挟まれる位置に座乗するQTLが検出された。ただし、3H染色体の連鎖地図上には短腕側からk04143、k00169、k07966の順番でこれらのマーカーが並んでいることと、CIMによってk00169のごく近傍(k00169から長腕側に約0.3cM)にQTLの存在が示唆されていることから、SIMおよびCIMにより3H染色体上に検出されたQTLは、同一のQTLであると考えられる。
したがって、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座についてのQTL解析の結果、1H染色体上に2つのQTL、すなわちk00256、k02948およびk03861に挟まれる位置に座乗するQTLと、k03616およびk02325に挟まれる位置に座乗するQTLとが検出されたことになる。また、3H染色体上に1つのQTL、すなわちk04143、k00169およびk07966に挟まれる位置に座乗するQTLとが検出されたことになる。
SIMにより1H染色体上に検出されたQTLは、遺伝マーカーk00256から長腕側に 約7.8cMの距離、遺伝マーカーk02948から0.0cMの距離、遺伝マーカーk03861から短腕側に15.5cMの距離でこれらの遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗し、LODスコアは2.5である。このQTLで表現型の分散の12.5%を説明できる。また、このQTLの存在で大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.4弱くなる。
SIMにより3H染色体上に検出された一方のQTLは、遺伝マーカーk04143から0.0cMの距離、遺伝マーカーk00169から短腕側に13.4cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗し、LODスコアは4.4である。このQTLで表現型の分散の2.1%を説明できる。また、このQTLの存在で大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.5強くなる。
また、SIMにより3H染色体上に検出された他方のQTLは、遺伝マーカーk00169から0.0cMの距離、遺伝マーカーk07966から短腕側に4.8cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗し、LODスコアは4.4である。このQTLで表現型の2.1%を説明できる。また、このQTLの存在で大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.5強くなる。
CIMにより1H染色体上に検出されたQTLは、遺伝マーカーk03616から長腕側に1.4cMの距離、遺伝マーカーk02325から短腕側に4.3cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗し、LODスコアは2.6である。このQTLで表現型の16.3%を説明できる。また、このQTLの存在で大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.6強くなる。
CIMによる3H染色体上におけるQTLの検出は、2回行なった。1回目の検出では、QTLは遺伝マーカーk04143から長腕側に13.1cMの距離、遺伝マーカーk00169から0.0cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗し、LODスコアは2.2である。このQTLで表現型の分散の34.7%を説明できる。また、このQTLの存在で大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.9強くなる。2回目の検出では、QTLは遺伝マーカーk04143から長腕側に13.1cMの距離、遺伝マーカーk00169から0.0cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗し、LODスコアは3.5である。このQTLで表現型の分散の30.6%を説明できる。また、このQTLの存在で大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.8強くなる。
Figure 2005093058
表2から明らかなように、RI1集団において、大麦縞萎縮病抵抗性に関与するQTLを4H染色体上に2つ検出した。
一方のQTLは、SIMにより検出され、遺伝マーカーFEggaMtgg116から長腕側に4.0cMの距離、遺伝マーカーFEgggMcaa585から短腕側に13.9cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗しており、LODスコアは2.9である。このQTLで表現型の15.0%を説明できる。また、このQTLの存在で、大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.4強くなる。
他方のQTLは、CIMにより検出され、遺伝マーカーMEcatMagc467から長腕側に7.4cMの距離、遺伝マーカーMEataMatg396から短腕側に0.6cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗しており、LODスコアは4.2である。このQTLで表現型の21.9%を説明できる。また、このQTLの存在で、大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.6強くなる。
Figure 2005093058
表3から明らかなように、RI2集団において、大麦縞萎縮病抵抗性に関与するQTLを2H染色体上に1つ、3H染色体上に1つ、5H染色体上に1つ検出した。
2H染色体上のQTLは、CIMにより検出され、遺伝マーカーFMaccEacg402から長腕側に2.3cMの距離、遺伝マーカーHVM36から短腕側に6.0cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗しており、LODスコアは3.4である。このQTLで表現型の18.7%を説明できる。また、このQTLの存在で、大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.6弱くなる。
3H染色体上のQTLは、SIMにより検出され、遺伝マーカーMMattEacg162から長腕側に0.6cMの距離、遺伝マーカーFMataEgga331から短腕側に6.2cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗しており、LODスコアは2.5である。このQTLで表現型の11.6%を説明できる。また、このQTLの存在で、大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.6強くなる。
5H染色体上のQTLは、CIMにより検出され、遺伝マーカーFMacgEgat88から長腕側に3.8cMの距離、遺伝マーカーMMacgEgga74から短腕側に17.1cMの距離で両遺伝マーカーに挟まれる位置に座乗しており、LODスコアは2.8である。このQTLで表現型の9.5%を説明できる。また、このQTLの存在で、大麦縞萎縮病抵抗性がスコア0.6強くなる。
遺伝マーカー「FEggaMtgg116」の検出
(方法)
50ngの試験対象オオムギのゲノムDNAを各1.5UのEcoRI(タカラバイオ社製)およびMseI(NEW ENGLAND BioLabs社製)により、合計25μlの反応系において37℃で12時間ダブルダイジェストを行なった。制限酵素処理後のDNAに5μM EcoRIアダプター(塩基配列は配列番号49および配列番号50に示す)と50μM MseIアダプター(塩基配列は配列番号47および配列番号48に示す)を25UのT4 ligase(タカラバイオ社製)によって37℃、3時間ライゲーションを行なった。上記ライゲーション後のDNA断片をEcoRIのユニバーサルプライマー(塩基配列は配列番号52に示す)とMseIのユニバーサルプライマー(塩基配列は配列番号51に示す)を用いてプレアンプリフィケーション(予備増幅)を行なった。0.07mg/mlプレアンプリフィケーションの反応溶液について、配列番号36に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号35に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なった。なお増殖反応には、TaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いた。
上記予備増幅の反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→56℃1分間→72℃1分間の工程を20回行なった。
また本増幅の反応サイクルは、94℃30秒間→68℃30秒間→72℃1分間の後、94℃30秒間→68℃30秒間→72℃30秒間→94℃30秒間→67.3℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→66.6℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→65.9℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→65.2℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→64.5℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→63.8℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→63.1℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→62.4℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→61.7℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→61.0℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→60.3℃30秒→72℃1分間→94℃30秒間→59.6℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→58.9℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→58.2℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→57.5℃30秒間→72℃1分間→94℃30秒間→56.8℃30秒間→72℃1分間の後、94℃30秒間→56℃30秒間→72℃1分間の工程を23回行なった。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図12に示す。図12中の左端のレーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるRussia6について上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH.E.S.4について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Russia6とH.E.S.4の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI1集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図12の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Russia6型)のものが0bpであり、罹病性型(H.E.S.4型)のものは約116bpである(図中矢印で示す)。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)は、約116bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(H.E.S.4型)は約116bpの増幅断片が得られるということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約116bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「FEgggMcaa585」の検出
方法については、配列番号38に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号37に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図13に示す。図13中の左端レーンおよび右端レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるRussia6について上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH.E.S.4について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Russia6とH.E.S.4の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI1集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図13の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Russia6型)のものが0bpであり、罹病性型(H.E.S.4型)のものは約585bp(図中矢印で示す)である。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)は、約585bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(H.E.S.4型)は約585bpの増幅断片が得られるということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約585bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「MEcatMagc467」の検出
方法については、配列番号40に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号39に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図14に示す。図14中の左端レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるRussia6について上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH.E.S.4について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。ただし,これらの泳動像は図中では明瞭に確認できない。その他のレーンについては、
Russia6とH.E.S.4の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI1集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図14の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(H.E.S.4型)のものが0bpであり、抵抗性型(Russia6型)のものは約467bp(図中矢印で示す)である。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(H.E.S.4型)は、約467bpの増幅断片が得られないのに対して、抵抗性型(Russia6型)は約467bpの増幅断片が得られるということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約467bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「MEataMatg396」の検出
方法については、配列番号42に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号41に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図15に示す。図15中の左端の2レーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるRussia6について上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから4レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH.E.S.4について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。ただし,これらの泳動像は図中では明瞭に確認できない。その他のレーンについては、Russia6とH.E.S.4の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI1集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図15の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Russia6型)と罹病性型(H.E.S.4型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(H.E.S.4型)のものが0bpであり、抵抗性型(Russia6型)のものは約396bp(図中矢印で示す)である。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(H.E.S.4型)は、約396bpの増幅断片が得られないのに対して、抵抗性型(Russia6型)は約396bpの増幅断片が得られるということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約396bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該4H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「MMattEacg162」の検出
方法については、配列番号30に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号29に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図16に示す。図16中の左端の1レーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるHarbin2−rowについて上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のTurkey6について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Harbin2−rowとTurkey6の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI2集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図16の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが約162bp(図中矢印P1で示す)であり、罹病性型(Turkey6型)のものは約170bp(図中矢印P2で示す)である。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は、約162bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約170bpの増幅断片が得られるということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約162bpの増幅断片と約170bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「FMataEgga331」の検出
方法については、配列番号32に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号31に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図17に示す。図17中の左端の1レーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるHarbin2−rowについて上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のTurkey6について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Harbin2−rowとTurkey6の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI2集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図17の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(Turkey6型)のものが約331bp(図中矢印で示す)であり、抵抗性型(Harbin2−row型)のものは0bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Turkey6型)は、約331bpの増幅断片が得られるのに対して、抵抗性型(Harbin2−row型)は約331bpの増幅断片が得られないということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約331bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「FMacgEgat88」の検出
方法については、配列番号44に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号43に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図18に示す。図18中の左端の1レーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるHarbin2−rowについて上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のTurkey6について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Harbin2−rowとTurkey6の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI2集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図18の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが0bpであり、罹病性型(Turkey6型)のものは約88bp(図中矢印で示す)である。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は、約88bpの増幅断片が得られないのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約88bpの増幅断片が得られるということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約88bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該5H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「MMacgEgga74」の検出
方法については、配列番号46に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号45に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図19に示す。図19中の左端の1レーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるHarbin2−rowについて上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のTurkey6について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Harbin2−rowとTurkey6の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI2集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図19の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)と罹病性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、抵抗性型(Harbin2−row型)のものが約74bpであり(図中矢印で示す)、罹病性型(Turkey6型)のものは0bpである。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Harbin2−row型)は、約74bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(Turkey6型)は約74bpの増幅断片が得られないということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約74bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該5H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「FMaccEacg402」の検出
方法については、配列番号26に示される塩基配列を有するEcoRIのセレクティブプライマー、および配列番号25に示される塩基配列を有するMseIのセレクティブプライマーを用いて増幅反応(本増幅)を行なう以外は、上記実施例2に示した方法と同様にした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図20に示す。図20中の左端の1レーンおよび右端の2レーンはサイズマーカーを示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるHarbin2−rowについて上記AFLPの検出を行なった結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のTurkey6について上記AFLPの検出を行なった結果を示す。その他のレーンについては、Harbin2−rowとTurkey6の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI2集団について上記AFLPの検出を行なった結果を示している。
図20の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Harbin2−row型)と抵抗性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(Harbin2−row型)のものが0bpであり、抵抗性型(Turkey6型)のものは約402bp(図中矢印で示す)である。換言すれば、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(Turkey6型)は、約402bpの増幅断片が得られるのに対して、罹病性型(Harbin2−row型)は402bpの増幅断片が得られないということである。
よって、試験対象オオムギについて上記AFLPの検出操作を行ない、約402bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該2H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、既述のとおり、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるTurkey6が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、
Harbin2−row型が罹病性型となり、Turkey6型が抵抗性型となる。
遺伝マーカー「HVM36」の検出
(方法)
配列番号27および28に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃3分間の後、94℃1分間→64℃1分間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃1分間を10回行なった後、94℃1分間→55℃1分間→72℃1分間を30回行なった後、72℃5分間とした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図21に示す。図21中左端レーンは大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のTurkey6についての増幅断片の結果を示し、同図中左端から2レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種であるHarbin2−rowの増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、Harbin2−row(抵抗性)とTurkey6(羅病性)の交配から育成した組み換え近交系統(RI系統)RI2集団についての増幅断片の結果を示している。
図21の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(Harbin2−row型)と抵抗性型(Turkey6型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(Harbin2−row型)のものが約60bp〜30bp(左端から2レーン目、図中矢印P1で示す)であり、抵抗性型(Turkey6型)のものは約90bp−60bp(左端レーン、図中矢印P2で示す)に増幅断片が見られる。
よって、試験対象オオムギについて上記検出操作を行ない、約60bp〜30bpあるいは約90bp−60bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該2H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
なお、既述のとおり、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるTurkey6が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、Harbin2−row型が罹病性型となり、Turkey6型が抵抗性型となる。
遺伝マーカー「k00256」の検出
(方法)
配列番号1および2に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
上記増幅産物を1.6UのPstI(タカラバイオ社製)を用いて、37℃15時間制限酵素消化を行なった。
(結果)
上記制限酵素消化後の増幅断片について電気泳動を行なった結果を図22に示す。図22上段は、左端から順に、はるな二条、H602、はるな二条とH602の交雑F1、DH集団の1〜45の増幅断片である。図4下段は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、DH集団の46〜93の増幅断片である。図22上段中左端レーンは大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種である、はるな二条についての増幅断片の結果を示し、同図上段中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示し、同図上段中左端レーンから3レーン目はこれらのF1の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
当該遺伝マーカーは、既述の通りCAPSマーカーである。よって、制限酵素(PstI)の消化パターンが異なる。図22の結果によれば、上記操作による消化断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(はるな二条型)と抵抗性型(H602型)が存在し、それぞれの消化断片の断片長は、はるな二条型のものが約362bpであり(図中矢印P1で示す)、H602型のものは約156bp、約206bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。よって、試験対象オオムギについて上記操作を行ない、消化断片のパターンを指標にすれば、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
ただし既述の通り、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるH602が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、はるな二条型が罹病性型となり、H602型が抵抗性型となる。
遺伝マーカー「k02948」の検出
(方法)
配列番号3および4に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図4に示す。図4の上段、下段とも両端は分子量マーカーである。図4上段は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、はるな二条、H602、はるな二条とH602の交雑F1、DH集団の1〜45の増幅断片である。図4下段は、左端(分子量マーカーを除く)から順に、DH集団の46〜93の増幅断片である。図4から明らかなように、増幅産物のサイズを確認することにより、対象個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、はるな二条型の遺伝子型を有するか、H602型の遺伝子型を有するかを判別できる。
図4の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(はるな二条型)と抵抗性型(H602型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(はるな二条型)のものが約389bpであり(図中矢印P1で示す)、抵抗性型(H602型)のものは約358bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。
よって、試験対象オオムギについて上記の検出操作を行ない、約389bpあるいは約358bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
ただし既述の通り、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるH602が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、はるな二条型が罹病性型となり、H602型が抵抗性型となる。
遺伝マーカー「k03861」の検出
(方法)
配列番号19および20に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
(結果)
上記増幅反応によって得られた増幅断片について電気泳動を行なった結果を図23に示す。図23の左端および右端レーンは分子量マーカーである。同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種のはるな二条の増幅断片の結果を示し、4レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
図23の結果によれば、上記操作によって増幅される増幅断片には、大麦縞萎縮病に対して罹病性型(はるな二条型)と抵抗性型(H602型)が存在し、それぞれの増幅断片の断片長は、罹病性型(はるな二条型)のものが約379bpであり(図中矢印P1で示す)、抵抗性型(H602型)のものは約353bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。
よって、試験対象オオムギについて上記の検出操作を行ない、約379bpあるいは約353bpの増幅断片の有無を指標にすれば、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
ただし既述の通り、本遺伝マーカーが連鎖する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座は、大麦縞萎縮病罹病性型品種であるH602が有する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座である。よって、本遺伝マーカーを検出する場合は、はるな二条型が罹病性型となり、H602型が抵抗性型となる。
遺伝マーカー「k03616」の検出
(方法)
配列番号21および22に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
上記増幅産物を1.6UのMboI(タカラバイオ社製)を用いて、37℃15時間制限酵素消化を行なった。
(結果)
上記制限酵素消化後の増幅断片について電気泳動を行なった結果を図24に示す。図24中左端レーンはおよび右端レーンは、分子量マーカーである。図24中左から2レーン目は、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種である「はるな二条」についての増幅断片の結果を示し、同図中左端レーンから3レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
当該遺伝マーカーは、既述の通りCAPSマーカーである。よって、制限酵素(MboI)の消化パターンが異なる。図24の結果によれば、上記操作による消化断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、それぞれの消化断片の断片長は、はるな二条型のものが約323bp,約155bp,約135bp,約85bp,約79bp,約50bpであり(図中矢印P1で示す)、H602型のものは約172bp,約155bp,約151bp,約135bp,約85bp,約79bp,約50bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。なお、H602型の約172bp,約155bp,約151bpの増幅断片は電気泳動の解像度が低い場合重複して見える場合がある。
よって、試験対象オオムギについて上記操作を行ない、消化断片のパターンを指標にすれば、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「k02325」の検出
(方法)
配列番号23および24に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
上記増幅産物を1.6UのHapII(タカラバイオ社製)を用いて、37℃15時間制限酵素消化を行なった。
(結果)
上記制限酵素消化後の増幅断片について電気泳動を行なった結果を図25に示す。図25中左端レーンは、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種である「はるな二条」についての増幅断片の結果を示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示す。また、同図中左端レーンから3レーン目は、これらのF1の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
当該遺伝マーカーは、既述の通りCAPSマーカーである。よって、制限酵素(HapII)の消化パターンが異なる。図25の結果によれば、上記操作による消化断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、それぞれの消化断片の断片長は、はるな二条型のものが約153bp,約145bp,約57bp,約56bp,約36bpであり(図中矢印P1で示す)、H602型のものは約353bp、約94bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。なお、はるな二条型の約153bpと約145bpの増幅断片,約57bpと約56bpと約36bpの増幅断片は電気泳動の解像度が低い場合重複して見える場合がある。よって、試験対象オオムギについて上記操作を行ない、消化断片のパターンを指標にすれば、対象オオムギ個体が当該1H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「k00169」の検出
(方法)
配列番号7および8に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
上記増幅産物を1.6UのAluI(タカラバイオ社製)を用いて、37℃15時間制限酵素消化を行なった。
(結果)
上記制限酵素消化後の増幅断片について電気泳動を行なった結果を図26に示す。図26中左端レーンは、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種である「はるな二条」についての増幅断片の結果を示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
当該遺伝マーカーは、既述の通りCAPSマーカーである。よって、制限酵素(AluI)の消化パターンが異なる。図26の結果によれば、上記操作による消化断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、それぞれの消化断片の断片長は、はるな二条型のものが約245bp,約215bpであり(図中矢印P1で示す)、H602型のものは約215bp、約165bp,約80bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。なお、はるな二条型の約245bpと約215bpの増幅断片は電気泳動の解像度が低い場合重複して見える場合がある。よって、試験対象オオムギについて上記操作を行ない、消化断片のパターンを指標にすれば、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「k07966」の検出
(方法)
配列番号33および34に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
上記増幅産物を1.6UのHapII(タカラバイオ社製)を用いて、37℃15時間制限酵素消化を行なった。
(結果)
上記制限酵素消化後の増幅断片について電気泳動を行なった結果を図27に示す。図27中左端レーンは、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種である「はるな二条」についての増幅断片の結果を示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示す。同図中左端レーンから3レーン目はこれらのF1の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
当該遺伝マーカーは、既述の通りCAPSマーカーである。よって、制限酵素(AluI)の消化パターンが異なる。図27の結果によれば、上記操作による消化断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、それぞれの消化断片の断片長は、はるな二条型のものが約350bp,約208bpであり(図中矢印P1で示す)、H602型のものは約558bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。よって、試験対象オオムギについて上記操作を行ない、消化断片のパターンを指標にすれば、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
遺伝マーカー「k04143」の検出
(方法)
配列番号5および6に示される塩基配列を有するプライマーを用い、試験対象オオムギのゲノムDNAを鋳型として、増幅反応を行なった。反応サイクルは、94℃2分間の後、94℃30秒間→65℃30秒間(1サイクルごとに1℃低下させる)→72℃2分間を5回行なった後、94℃30秒間→60℃30秒間→72℃2分間を35回行なった後、72℃7分間とした。
上記増幅産物を1.6UのApaLI(タカラバイオ社製)を用いて、37℃15時間制限酵素消化を行なった。
(結果)
上記制限酵素消化後の増幅断片について電気泳動を行なった結果を図28に示す。図28中左端レーンは、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ品種である「はるな二条」についての増幅断片の結果を示し、同図中左端レーンから2レーン目は大麦縞萎縮病罹病性オオムギ品種のH602の増幅断片の結果を示す。同図中左端レーンから3レーン目はこれらのF1の増幅断片の結果を示す。その他のレーンについては、はるな二条とH602の交配から育成した倍加半数体系統(DH系統)DHHS集団についての増幅断片の結果を示している。
当該遺伝マーカーは、既述の通りCAPSマーカーである。よって、制限酵素(ApaLI)の消化パターンが異なる。図28の結果によれば、上記操作による消化断片には、大麦縞萎縮病に対して抵抗性型(はるな二条型)と罹病性型(H602型)が存在し、それぞれの消化断片の断片長は、はるな二条型のものが約371bpであり(図中矢印P1で示す)、H602型のものは約228bp、約143bpに増幅断片が見られる(図中矢印P2で示す)。よって、試験対象オオムギについて上記操作を行ない、消化断片のパターンを指標にすれば、対象オオムギ個体が当該3H染色体に座乗する大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座の対立遺伝子について、抵抗性の遺伝子型を有するか、罹病性の遺伝子型を有するかを判別できる。
本発明にかかる遺伝マーカーは、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの育種、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子の単離等に用いることができ、育種の効率化に大きく貢献することが期待される。また、本発明にかかる遺伝マーカーの利用により作出される大麦縞萎縮病抵抗性オオムギにより、大麦縞萎縮病による病害を抑制すれば、収量や品質の低下を防止することができる。したがって、本発明は広く農業全般に利用可能であり、さらには、オオムギを原料とする食品産業においても有効である。
【0051】
MAPMAKER/QTLとQTL Cartographerを用いた。LODスコアの閾値を2に設定し、LODスコアが2を超えた場合に当該2つのマーカー区間内の最もLODの大きな位置にQTLの存在を推定した。
〔結果〕
DHHS集団の結果を表1に、RI1集団の結果を表2に、RI2集団の結果を表3に示した。なお上記表1〜3中の「Population」は「QTL解析を行なった集団名」を意味し、「Trait」は「形質」を意味し、「Chromosome」は「遺伝マーカーが座上する染色体」を意味し、「Marker interval(M1−A−QTL−B−M2)」は「QTLの近傍に座上し、該QTLを挟む2つの遺伝マーカー(M1、M2)」を意味し、「Distance(cM)A+B」は「QTLを挟む2つの遺伝マーカー間の距離」を意味し、「Positiona)(cM)A」は「遺伝マーカーM1とQTL間の距離」を意味し、「Position(cM)B」は「遺伝マーカーM2とQTL間の距離」を意味し、「LODb)Score」は「LODスコアのピーク値」を意味し、「Var.(%)c)」は「QTLの存在により表現型の分散の何(%)を説明することができるかを示す値」を意味し、「Weightd)」は「QTLの存在により上記大麦縞萎縮病抵抗性のスコアがどれだけ上がるかを示す値」を意味している。
〔表1〕
Figure 2005093058
51
また、「k07966」は、ATGGACCCAACAAGTGGAAG(配列番号33)に示される塩基配列を有するプライマー、およびAGGAAGACTTTGGAGGCCAT(配列番号34)に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十二プライマーセットを用いてオオムギゲノムDNAを鋳型として増幅される遺伝マーカーであり、3H染色体上に検出された大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座から長腕側に約4.8cMの距離に座上するものである。上記プライマー配列は、発明者らが独自に開発したオオムギEST配列の1つ(ESTクローン名:BaGS7G14、配列番号60)に基づいて設計されている。

Claims (22)

  1. オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号1に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号2に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  2. オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号3に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号4に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  3. オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号19に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号20に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第五プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  4. オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号21に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号22に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第六プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  5. オオムギの1H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号23に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号24に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第七プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  6. オオムギの2H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号25に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号26に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第八プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  7. オオムギの2H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号27に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号28に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第九プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  8. オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号5に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号6に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第三プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  9. オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号7に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号8に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第四プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  10. オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号29に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号30に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  11. オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号31に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号32に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十一プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  12. オオムギの3H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    配列番号33に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号34に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十二プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  13. オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号35に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号36に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十三プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  14. オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号37に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号38に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十四プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  15. オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号39に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号40に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十五プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  16. オオムギの4H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号41に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号42に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十六プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  17. オオムギの5H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号43に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号44に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十七プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  18. オオムギの5H染色体中に存在し、大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座に連鎖する遺伝マーカーであって、
    オオムギのゲノムDNAを制限酵素MseIおよびEcoRIで消化して得られるDNA断片に、
    配列番号47および48に示される塩基配列を有するMseIアダプター、並びに配列番号49および50に示される塩基配列を有するEcoRIアダプターをライゲーションし、
    前記ライゲーション後のDNA断片を配列番号51に示される塩基配列を有するMseIユニバーサルプライマーおよび配列番号52に示される塩基配列を有するEcoRIユニバーサルプライマーを用いて予備増幅を行ない、
    さらに、前記予備増幅によって得られた予備増幅断片を配列番号45に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号46に示される塩基配列を有するプライマーとの組み合わせである第十八プライマーセットを用いて増幅されることを特徴とする遺伝マーカー。
  19. 請求項1ないし18のいずれか1項に記載の遺伝マーカーを用いて大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を単離することを特徴とするDNA断片の単離方法。
  20. 請求項19に記載のDNA断片の単離方法により得られた上記大麦縞萎縮病抵抗性に関与する遺伝子座を含むDNA断片を、オオムギのゲノムDNAに導入することを特徴とする大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法。
  21. 請求項20に記載の大麦縞萎縮病抵抗性オオムギの生産方法によって得られた大麦縞萎縮病抵抗性オオムギ。
  22. 請求項1ないし18のいずれか1項に記載の遺伝マーカーを指標として、大麦縞萎縮病抵抗性オオムギを選抜する方法。
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