以下、発明を実施するための最良の形態としての本発明の実施形態に係る情報記録媒体について説明する。
(情報記録媒体の実施形態)
本発明の情報記録媒体に係る実施形態は、レーザ光を照射することで記録情報を記録する第1記録層と、前記第1記録層を介して前記レーザ光を照射することで前記記録情報を記録する第2記録層とを備えた情報記録媒体であって、前記第1及び第2記録層の一方における前記レーザ光をフォーカスインさせるための特定の記録領域に対向する前記第1及び第2記録層の他方における一の記録領域を除く記録領域に、前記記録情報の記録を制御するための例えば全ての制御情報が記録されている。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態によれば、複数の記録層(即ち、第1記録層や第2記録層)の夫々において例えば映像情報や音楽情報等のコンテンツ或いはコンピュータ用のデータ情報等を含んでなる各種情報を記録することが可能である。係る複数の記録層は、例えば基板の一方の面上に積層構造に形成されている。
本実施形態では特に、第1記録層において、レーザ光がフォーカスインする特定の記録領域に対向する第2記録層の一の記録領域を除く記録領域に制御情報が記録されている。ここに、本発明における「フォーカスイン」とは、例えば記録情報の記録時或いは再生時において、レーザ光を照射することで、該レーザ光の焦点を特定の記録領域にあわせる動作を示す趣旨である。特に、再生動作及び記録動作の最初に(具体的には、当該情報記録媒体の装填後最初に)レーザ光の焦点が合う動作を示すものであってもよい。そして、当該一の記録領域には、記録に必要な制御情報が殆ど又は全く記録されておらず、概ね一の記録領域を除く記録領域にのみ記録に必要な制御情報が記録されていることが好ましい。そして好ましくは、当該一の記録領域には、制御情報が記録されておらず、一の記録領域を除く記録領域にのみ制御情報が記録されていることが好ましい。
従って、例えば後述の情報記録再生装置をして、例えば本来第1記録層にフォーカスインしたい場合に、誤って第2記録層の一の記録領域にフォーカスインしてしまったとしても、当該一の記録領域において制御情報を読み取ることはできない。即ち、記録情報の記録に必要な制御情報が記録されていないため、情報記録再生装置は、例えばその後の記録動作を続行することができない、或いは当該情報記録媒体は不良品であると判断する。このため、第2記録層にフォーカスインしてしまうことで、誤って第2記録層において記録情報の記録を行なってしまう等の不都合を防ぐことが可能となる。また、情報記録媒体を適切に認識することができず、情報記録再生装置の動作が停止してしまう或いは動作の暴走等の不都合を防ぐことも可能となる。この場合、例えば当該情報記録媒体をイジェクトし、再装填すれば、適切な記録層にフォーカスインすることができ、適切な記録動作を行うことが可能となる。
特に、2層以上の記録層を有する情報記録媒体に対応していない情報記録再生装置であれば、2つの記録層を有する情報記録媒体であると判断することができないため、レーザ光がフォーカスインした記録層を適切な記録層として認識してしまうおそれがある。この場合、本来記録すべき記録層とは異なる記録層に記録情報を記録してしまうおそれがある。しかるに本実施形態に係る情報記録媒体によれば、誤って適切でない記録層(例えば、第2記録層)にフォーカスインしても、制御情報が記録されていないため、その後の記録動作を継続することができず、例えば当該情報記録媒体をイジェクト等することができる。従って、2層以上の記録層を有する情報記録媒体に対応していない情報記録再生装置であっても、適切な記録動作を実現することができる。言い換えれば、今後普及が見込まれる2層以上の記録層を有する情報記録媒体に、このような情報記録再生装置を用いて、所望の記録層に適切に記録情報を記録することができる。これにより、現在市場に流通している既存の情報記録再生装置と今後の普及が見込まれる2層以上の記録層を有する情報記録媒体との互換性を採ることができるという点で、本実施形態に係る情報記録媒体は大きな利点を有している。
もちろん、2層以上の記録層を有する情報記録媒体に対応している情報記録再生装置であっても、第2記録層に誤ってフォーカスインしてしまうことで、本来意図しない記録層へ記録情報を記録してしまう不都合を防ぐことができるという大きな利点を有している。
以上説明したように、本発明の情報記録媒体に係る実施形態によれば、本来第1記録層にレーザ光をフォーカスインしたい場合に、誤って第2記録層にフォーカスインしていることを適切に認識できる。従って、例えばその際に情報記録媒体の再装填等の対応を施すことで、複数の記録層を有する情報記録媒体において、適切に記録情報を記録することが可能となる。
尚、上述の実施形態では、第1記録層におけるレーザ光がフォーカスインする特定の記録領域に対向する第2記録層の一の記録領域を除く記録領域に制御情報が記録されている情報記録媒体について説明を進めた。しかしながら、第2記録層におけるレーザ光がフォーカスインする特定の記録領域に対向する第1記録層の一の記録領域を除く記録領域に制御情報が記録されている情報記録媒体についても本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。この場合、本来第2記録層にレーザ光をフォーカスインしたい場合に、誤って第1記録層にフォーカスインしていることを適切に認識でき、その結果、上述した各種利益を享受することができる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の一の態様は、前記特定の記録領域及び前記一の記録領域の少なくとも一方は、当該情報記録媒体に記録されている前記記録情報を管理する管理情報を記録するための管理情報エリアの少なくとも一部である。
この態様によれば、管理情報エリアの一部に相当する一の記録領域に制御情報が記録されていない。従って、レーザ光が照射され得るリードインエリアやリードアウトエリアに誤ってフォーカスインすることで記録動作を行なう不都合を防ぐことが可能となる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様は、前記一の記録領域は、前記特定の記録領域と比較して大きい。
この態様によれば、第2記録層に誤ってレーザ光がフォーカスインしてしまうという不都合をより効果的に認識することが可能となる。特に、貼り合わせ型の情報記録媒体にあっては、第1記録層と第2記録層との中心がずれる(即ち、偏心が発生する)ことがある。しかるに、この態様によれば、このようなズレをも見越して、相対的に大きな一の記録領域が設けられているため、仮に偏心が発生していても、そのズレを補うことが可能となる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様は、前記制御情報は、当該情報記録媒体上において前記記録情報が記録される位置を示すアドレス情報を含んでいる。
この態様によれば、一の記録領域には、制御情報としてのアドレス情報が記録されていない。このため、仮に本来意図しないで第2記録層にレーザ光がフォーカスインしたとしても、アドレス情報を読み取ることができず、上述の各種利益を享受することが可能となる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様は、前記第1及び第2記録層の他方には、前記記録情報を記録するグルーブと該グルーブに隣接するランドとが形成されており、少なくとも前記一の記録領域を除く記録領域における前記グルーブは、所定周期で揺動し且つ前記制御情報を示すウォブルを有している。
この態様によれば、一の記録領域においては、制御情報を示すウォブルが形成されていない。このため、誤って第2記録層の一の記録領域にレーザ光が照射されたとしても、ウォブルを検出することができず、結果として該ウォブルが示す制御情報を読み取ることができない。従って、上述した各種利益を享受することが可能である。
この態様では、少なくとも前記一の記録領域を除く記録領域における前記ランドには、前記制御情報を示すプリピットが形成されているように構成してもよい。
このように構成すれば、一の記録領域においては、制御情報を示すプリピットが形成されていない。特に、少なくともアドレス情報を示すプリピットは、一の記録領域においては形成されていないことがより好ましい。このため、誤って第2記録層の一の記録領域にレーザ光が照射されたとしても、プリピットを検出することができず、結果として該プリピットが示す制御情報を読み取ることができない。従って、上述した各種利益を享受することが可能である。
このプリピットが形成される態様では、少なくとも前記一の記録領域における前記ランドには、誤った制御情報を示す前記プリピットが形成されているように構成してもよい。
この態様によれば、一の記録領域においては、誤った制御情報を示すプリピットが形成されている。ここに、本発明における「誤った制御情報」とは、記録情報の記録を適切に行うことができない制御情報を示す趣旨である。例えば、制御情報がアドレス情報を示していれば、誤った制御情報として本来のアドレスとは異なるアドレスを示すアドレス情報が、例えば故意的に(或いは、当該情報記録媒体の製造時に予め)記録されている趣旨である。このため、誤って第2記録層の一の記録領域にレーザ光が照射されたとしても、適切に制御情報を読み取ることができない。従って、上述した各種利益を享受することが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
以上説明したように、本発明の情報記録媒体に係る実施形態は、第1記録層及び第2記録層を備え、第2記録層における一の記録領域を除く記録領域においては制御情報が記録されていない。従って、複数の記録層を有する情報記録媒体において、適切に記録情報を記録することが可能となる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
(情報記録媒体の実施例)
(1)第1実施例
先ず、図1から図9を参照して、本発明の情報記録媒体に係る第1実施例について説明を進める。
先ず、図1を参照して、本発明の情報記録媒体に係る実施例としての光ディスクについて説明する。ここに、図1は、上側に複数のエリアを有する光ディスクの構造を概略平面図で示すと共に、下側にその径方向におけるエリア構造を概念図で対応付けて示すものである。
先ず図1を参照して、本発明の情報記録装置の第1実施例の対象となる情報記録媒体に係る光ディスクの基本構造について説明する。ここに、図1(a)は、本発明の情報記録装置の第1実施例の対象となる情報記録媒体に係る複数の記録領域を有する光ディスクの基本構造を示した概略平面図であり、図1(b)は、該光ディスクの概略断面図と、これに対応付けられた、その半径方向における記録領域構造の図式的概念図である。
図1(a)及び図1(b)に示されるように、光ディスク100は、例えば、DVDと同じく直径12cm程度のディスク本体上の記録面に、センターホール1を中心として本実施例に係るリードインエリア101、データエリア102並びにリードアウトエリア103又はミドルエリア104が設けられている。そして、例えば透明基板200上に、記録層等が積層されている。そして、この記録層の各記録領域には、例えば、センターホール1を中心にスパイラル状或いは同心円状に、例えば、グルーブトラック及びランドトラック等のトラック10が交互に設けられている。また、このトラック10上には、データがECCブロック11という単位で分割されて記録される。ECCブロック11は、記録情報がエラー訂正可能なプリフォーマットアドレスによるデータ管理単位である。
尚、本発明は、このような三つのエリアを有する光ディスクには特に限定されない。例えば、リードインエリア101、リードアウトエリア103又はミドルエリア104が存在せずとも、以下に説明するデータ構造等の構築は可能である。また、リードインエリア101、リードアウトエリア103又はミドルエリア104は更に細分化された構成であってもよい。
特に、本実施例に係る光ディスク100は、図1(b)に示されるように、例えば、透明基板200に、本発明に係る第1及び第2記録層の一例を構成するL0層及びL1層が積層された構造をしている。このような二層型の光ディスク100の記録再生時には、図1(b)中、上側から下側に向かって照射されるレーザ光LBの集光位置をいずれの記録層に合わせるかに応じて、L0層における記録や再生が行なわれるか又はL1層における記録や再生が行われる。また、本実施例に係る光ディスク100は、2層片面、即ち、デュアルレイヤーに限定されるものではなく、2層両面、即ちデュアルレイヤーダブルサイドであってもよい。更に、上述の如く2層の記録層を有する光ディスクに限られることなく、3層以上の多層型の光ディスクであってもよい。
尚、2層型光ディスクにおけるオポジットトラックパス方式及びパラレルトラックパス方式による記録再生手順及び各層におけるデータ構造については、後述される。
図2に示すように、本実施例に係る光ディスク100では、複数のデータエリア102等が例えば積層構造に形成される2層型の光ディスクとして構成されている。ここに、図2は、第1実施例の光ディスクの記録面における部分拡大斜視図である。
図2において、第1実施例では、光ディスク100は、ディスク状の透明基板106上に(図2では下側に)、情報記録面を構成する加熱などによる非可逆変化記録型の第1記録層107(即ち、L0層)が積層され、更にその上に(図2では下側)に、半透過反射膜108が積層されている。第1記録層107の表面からなる情報記録面には、グルーブトラックGT及びランドトラックLTが交互に形成されている。尚、光ディスク100の記録時及び再生時には、例えば図2に示したように、透明基板106を介してグルーブトラックGT上に、レーザ光LBが照射される。例えば、記録時には、記録レーザパワーでレーザ光LBが照射されることで、記録データに応じて、第1記録層107への加熱などによる非可逆変化記録が実施される。他方、再生時には、記録レーザパワーよりも弱い再生レーザパワーでレーザ光LBが照射されることで、第1記録層107へ書き込みされた記録データの読出しが実施される。
そして、グルーブトラックGTは、一定の振幅及び空間周波数で揺動されている。即ち、グルーブトラックGTは、ウォブリングされており、そのウォブル109の周期は所定値に設定されている。ランドトラックLT上にはプリフォーマットアドレス情報を示すランドプリピットLPと呼ばれるアドレスピットが形成されている。この2つのアドレッシング(即ち、ウォブル109及びランドプリピットLP)により記録中のディスク回転制御や記録クロックの生成、また記録アドレス等のデータ記録に必要な情報を得ることができる。尚、グルーブトラックGTのウォブル109を周波数変調や位相変調など所定の変調方式により変調することによりプリフォーマットアドレス情報を予め記録するようにしてもよい。
続いて、図3を参照して、第1実施例に係る光ディスクについて、より詳細に説明する。ここに、図3は、オポジットトラックパスの光ディスクのデータ構造を概念的に示すデータ構造図である。
図3(a)に示すように、第1実施例に係る光ディスク100は、本発明における「管理情報エリア」の一具体例たるリードインエリア101、データエリア102及びミドルエリア104によりL0層が構成されており、リードアウトエリア113、データエリア112及びミドルエリア114によりL1層が構成されている。そして、図3中黒線で示すように、データの記録を制御するためのクロック信号(即ち、同期用の信号)や本発明における「アドレス情報」の一具体例たるプリフォーマットアドレス情報等を含む制御情報が記録されている。尚、ミドルエリア104又は114は、データを記録する対象がL0層からL1層へと切り替わる際の干渉エリアとしての役割を果たしている。
第1実施例では特に、L1層のリードアウトエリア113の一部のエリア113a(即ち、本発明における「一の記録領域」の具体例)には少なくとも1種類以上の制御情報が記録されていない。即ち、エリア113aを除くエリアにのみ、すべての制御情報が記録されている。エリア113aには全く制御情報がなくてもかまわない。このような制御情報は、例えばウォブル109やランドプリピットLPとして記録されている。
このエリア113aは、当該光ディスク100にデータを記録する際に、後述の情報記録再生装置により最初にレーザ光LBが照射されるL0層のエリアに対応するL1層のエリアである。即ち、エリア113aとは、L0層のエリアにレーザ光LBが照射された場合、そのエリアと同一の或いは概ね同一の位置にあるL1層のエリアに相当する。例えば、オポジットトラックパス方式の光ディスクであれば、レーザ光が照射されるL0層のエリアのプリフォーマットアドレス情報が示すアドレス値と補数の関係にあるアドレス値を有するL1層のエリアがエリア113aに相当する。また、パラレルトラックパス方式の光ディスクであれば、レーザ光が照射されるL0層のエリアのプリフォーマットアドレス情報が示すアドレス値と同一のアドレス値を有するL1層のエリアがエリア113aに相当する。
より具体的に説明すると、図3(b)に示すように、エリア113aは、L0層のコントロールデータゾーン(即ち、本発明における「特定の記録領域」の一具体例)に対応するL1層のエリアである。即ち、当該光ディスク100が、情報記録再生装置に装填された場合、情報記録再生装置は、先ずこのコントロールデータゾーンにレーザ光を照射することで、その後のデータの記録動作を行う。
もちろん、最初にレーザ光が照射されるエリアがコントロールデータゾーン以外のエリアである場合は、エリア113aは、コントロールデータゾーンに対応するエリアでなくともよいことは言うまでもない。
ここで第1実施例に係る光ディスクの比較例について、図4及び図5を参照して説明する。ここに、図4は、比較例に係る光ディスクの一のデータ構造を概念的に示すデータ構造図であり、図5は、比較例に係る光ディスクの他のデータ構造を概念的に示すデータ構造図である。
図4(a)に示すように、オポジットトラックパス方式の光ディスク100aにおいては、L0層及びL1層のいずれのエリアにおいても制御情報が記録されている。従って、L0層のコントロールゾーンにレーザ光LBが照射された場合、誤って対応するL1層のエリアにおいてレーザ光LBがフォーカスインしてしまうことがある。このとき、L1層においても制御情報を読み取ることができるため、情報記録再生装置は、そのアドレスを認識し、L1層において記録動作を継続しようとする。
具体的にその場合の動作について以下に説明する。図4(b)に示すように、L0層におけるアドレス値は、外周側(即ち、ミドルエリア104の側)へ向かうにつれて増加し、他方、L1層におけるアドレス値は、外周側(即ち、ミドルエリア114の側)へ向かうにつれて減少する。そして、レーザ光LBが誤ってL1層にフォーカスインした場合、情報記録再生装置は、より内周側に位置するであろう(即ち、より小さなアドレス値を有するであろう)制御情報を読み取ろうとする。これは、L1層においてフォーカスインした位置におけるアドレス値は、本来L0層にフォーカスインした際に読み取るべき制御情報のアドレス値をよりも大きいためである。しかしながら、L1層においては、内周側へ向かうにつれてアドレス値が増加するため、情報記録再生装置は適切なアドレス値をサーチすべく、更に内周側へ光ピックアップを移動させる。このため、最終的には最内周側に位置するストッパーにより光ピックアップの移動が制限されるまでこの動作を継続することとなる。このような事態は、適切な記録動作或いは迅速な記録動作という観点から好ましくない。
また、図5(a)に示すように、パラレルトラックパス方式の光ディスク100bでも、図4に示したオポジットトラックパス方式の光ディスク100aと同様のことがいえる。パラレルトラックパス方式の光ディスク100bでは、図5(b)に示すように、プリフォーマットアドレス情報は、L0層及びL1層共に、外周側に移るにつれて増加する。従って、L1層においてフォーカスインした位置には、本来L0層にフォーカスインした際に読み取るべき制御情報が記録されていないため、情報記録再生装置は、より内周側(或いは、外周側)に位置するであろう制御情報を読み取ろうとする。しなしながら、L1層には当然、本来L0層にフォーカスインした際に読み取るべき制御情報が記録されているはずもなく、その結果、最終的には最内周側に(或いは、最内周側に)位置するストッパーにより光ピックアップの移動が制限されるまでこの動作を継続することとなる。
このように、比較例に係る光ディスクの如く、記録面全体に制御情報が記録されている場合には、L1層においてもプリフォーマットアドレス情報等の制御情報(本来フォーカスインしたときに読み取るべき制御情報に限らず)を適切に読み込むことができる。従って、実際にはL1層においてレーザ光がフォーカスインしていても、情報記録再生装置としては、L0層にフォーカスインしていると認識してしまう。このため、上述したように、本来意図したとおりに適切にデータの記録を行うことができず、或いは適切な記録動作を継続することができないという技術的な問題点を有している。
しかるに、第1実施例に係る光ディスクであれば、L1層のエリア113aにはすべての制御情報は記録されていない。従って、レーザ光LBが誤ってL1層にフォーカスインしたとしても、情報記録再生装置は、制御情報を読み取ることができず、結果として当該光ディスクは不良品である或いは適切でないと判断することができる。この場合、情報記録再生装置により自動的に或いはユーザの操作により光ディスクを再装填すれば、適切にL0層にフォーカスインすることができ、その後の適切な記録動作を継続することができる。このとき、再度L1層にフォーカスインしてしまう等の不都合があれば、再び光ディスクの再装填をするように構成してもよいし、或いは当該光ディスクが全くの記録不可能ディスクであると判断し、ユーザに他の光ディスクを装填する旨の指示を出力するように構成してもよい。
いずれにせよ、第1実施例に係る光ディスクのように、L1層のエリア113aに制御情報が記録されないように構成することで、適切な記録動作を継続できる。更には、上述の如く、無駄にL1層において制御情報をサーチするような動作を避けることができ、迅速な記録動作を実現することが可能となる。特に、2層以上の記録層を有する光ディスクに対応していない既存の情報記録再生装置であっても、誤ってエリア113aにフォーカスインすれば、当該光ディスクは不良ディスクである或いは適切な光ディスクでないと判断することができる。即ち、本来第1記録層と第2記録層とを区別して認識することができない情報記録再生装置であっても、誤って第2記録層にフォーカスインしている(或いは、誤ったフォーカスインがなされている又は適切でないディスクがローディングされている)と判断することができる。従って、例えば再装填等の対応を適切にとることができ、適切な記録動作を継続することが可能となる。
もちろん、図示しないパラレルトラックパス方式の光ディスクについても、L0層のうちレーザ光が最初に照射されるエリアに対応するL1層のエリアに制御情報が記録されない構造を採用してもよい。このように構成しても、上述した第1実施例に係る光ディスクと同様の利益を享受することが可能となる。
続いて、図6から図9を参照して、第1実施例に係る光ディスクにおける制御情報の記録態様について、より詳細に説明する。ここに、図6及び図7、図9は、制御情報の記録態様を概念的に示す平面図であり、図8は、第1実施例に係る光ディスクに記録された制御情報を読み取ることで得られるグルーブ検出信号を概念的に示すグラフである。
図6に示すように、エリア113aにおいては、ランドプリピットLPを形成しないように構成してもよい。即ち、ランドプリピットLPを形成しないことで、プリフォーマットアドレス情報を記録しないように構成してもよい。これにより、情報記録再生装置は、エリア113aにおいてプリフォーマットアドレス情報を読み取ることができず、当該光ディスクを不良品或いは適切でないと判断することができる。
或いは、図7に示すように、ランドプリピットLPが形成されているが、該ランドプリピットLPにはプリフォーマットアドレス情報が含まれていないように構成してもよい。即ち、データの記録及び再生の同期を取るためのクロック信号(或いは、タイミング信号)のみを含んでいるランドプリピットLPが、ランドトラックLT上に形成されているように構成してもよい。
ここで、ランドプリピットLPについて具体的に説明すると、ランドプリピットLPは、概ね8ウォブル毎に3つずつ形成されている。そして、この3つのランドプリピットLPのうち、少なくとも一つが同期用のクロック信号を示しており、他のランドプリピットLPは、プリフォーマットアドレス情報やその他データの記録を制御する情報を示している。第1実施例では、この少なくとも一つの同期用のクロック信号のみを示すようにランドプリピットLPが形成されている。
このように、同期用のランドプリピットLPが形成されている場合、情報記録再生装置は、図8に示すようなグルーブ検出信号が検出される。即ち、ウォブル109の所定周期に従って振動するグルーブ検出信号には、同期用のクロック信号のみが重畳され、他のプリフォーマットアドレス情報やデータの記録を制御する他の情報による信号は重畳されない。
また、誤った情報を示すプリフォーマットアドレス情報やデータの記録を制御する他の情報を示すランドプリピットLPが形成されていてもよい。即ち、本来のアドレス値等を適切に示すことのないランドプリピットが形成されていてもよい。このように構成しても、情報記録再生装置は、プリフォーマットアドレス情報やデータの記録を制御する他の情報を読み取ることができず、結果として当該光ディスクを不良品或いは適切でないと判断することができる。
図9に示すように、ウォブル109及びランドプリピットLPのいずれもが形成されていなくてもよい。即ち、グルーブトラックGT及びランドトラックLTのいずれもが直線状に形成されていてもよい。
(2)第2実施例
続いて、図10及び図11を参照して、本発明の情報記録媒体に係る第2実施例について説明する。ここに、図10及び図11は、第2実施例に係る光ディスクから検出されるグルーブ検出信号を概念的に示すグラフである。
第2実施例に係る光ディスクも、第1実施例と同様のデータ構造を採用している。第2実施例では特に、上述のウォブルに所定の変調が施されていることで、データの記録動作時における同期用のクロック信号やプリフォーマットアドレス情報を検出することができる。例えばCD−R/RWのように、ウォブルに対してFM(Frequency Modulation)変調を施すことで、図10に示すようなグルーブ検出信号を検出することができる。或いは、例えばDVD+R/RWのように、ウォブルにBPM(Bi-Phase Modulation)変調を施すことで、図11に示すようなグルーブ検出信号を検出することができる。
本実施例では、エリア113aにおいて、このような変調が施されていない。即ち、エリア113aにおいてレーザ光を照射して制御情報を読み取ろうとしても、変調が施されていない(ないしは、制御情報を示すような適切な変調が施されていない)がゆえに、制御情報を読み取ることができない。即ち、図10や図11に示すように変調されたグルーブ検出信号ではなく、ウォブル109の揺動によるグルーブ検出信号のみが検出される。これにより、第2実施例に係る光ディスクにおいても、第1実施例に係る光ディスクと同様の利益を享受することが可能となる。
(3)第3実施例
続いて、図12を参照して、本発明の情報記録媒体に係る第3実施例について説明する。ここに、図12は、第3実施例に係る光ディスクのデータ構造を概念的に示すデータ構造図である。
図12(a)に示すように、第3実施例に係る光ディスク100cも、第1及び第2実施例に係る光ディスクと同様に、L0層においてレーザ光が最初に照射される領域に対応するL1層の領域には、すべての制御情報は記録されていない。
第3実施例では特に、エリア113aの大きさが、L0層においてレーザ光LBが照射されるエリアの大きさと比較してより大きい。具体的には、図13(b)に示すように、エリア113aは、L0層においてレーザ光LBが照射されるエリアの大きさよりも、その両端が70μm程度大きい。この「70μm」なる大きさは、複数の記録層を有するDVDにおいて、規格上許容される偏心の大きさである。
このように偏心を考慮して制御情報が記録されないエリア113aの大きさを定めることで、誤ってL1層にレーザ光LBがフォーカスインしてしまうという不都合をより好適に判断することができる。即ち、偏心が発生しているがゆえに、L0層のコントロールデータゾーンとそれに対応するエリア113aとが、レーザ光に対して適切に対応していないということもあり得る。このとき、第3実施例の如くエリア113aの大きさを予め大きくしておけば、偏心が発生していたとしても、コントロールデータゾーンに対応するエリアには制御情報が記録されていない光ディスクを実現することができる。
(情報記録再生装置)
次に図13を参照して、本発明に係る情報記録媒体を用いてデータの記録再生を行う情報記録装置に係る実施例の構成及び動作について説明する。
先ず、図13を参照して、本発明の実施例に係る情報記録再生装置300の構成について説明する。ここに、図13は、本発明の実施例に係る情報記録再生装置300のブロック図である。尚、情報記録再生装置300は、光ディスク100に記録データを記録する機能と、光ディスク100に記録された記録データを再生する機能とを備える。
図13を参照して情報記録再生装置300の内部構成を説明する。情報記録再生装置300は、CPU354の制御下で、光ディスク100に情報を記録すると共に、光ディスク100に記録された情報を読み取る装置である。
情報記録再生装置300は、光ディスク100、スピンドルモータ351、光ピックアップ352、信号記録再生手段353、CPU(ドライブ制御手段)354、メモリ355、データ入出力制御手段306、操作ボタン310、表示パネル311、及びバス357により構成されている。
スピンドルモータ351は光ディスク100を回転及び停止させるもので、光ディスクへのアクセス時に動作する。より詳細には、スピンドルモータ351は、図示しないサーボユニット等によりスピンドルサーボを受けつつ所定速度で光ディスク100を回転及び停止させるように構成されている。
光ピックアップ352は光ディスク100への記録再生を行うもので、レーザ装置とレンズから構成される。より詳細には、光ピックアップ352は、光ディスク100に対してレーザービーム等の光ビームを、再生時には読み取り光として第1のパワーで照射し、記録時には書き込み光として第2のパワーで且つ変調させながら照射する。
信号記録再生手段353は、スピンドルモータ351と光ピックアップ352を制御することで光ディスク100に対して記録再生を行う。
メモリ355は、記録再生データのバッファ領域や、信号記録再生手段353で使用出来るデータに変換する時の中間バッファとして使用される領域などディスクドライブ300におけるデータ処理全般において使用される。また、メモリ355はこれらレコーダ機器としての動作を行うためのプログラムが格納されるROM領域と、映像データの圧縮伸張で用いるバッファやプログラム動作に必要な変数が格納されるRAM領域などから構成される。
CPU(ドライブ制御手段)354は、信号記録再生手段353、メモリ355と、バス357を介して接続され、各制御手段に指示を行うことで、情報記録再生装置300全体の制御を行う。通常、CPU354が動作するためのソフトウェアは、メモリ355に格納されている。
データ入出力制御手段306は、情報記録再生装置300に対する外部からデータ入出力を制御し、メモリ355上のデータバッファへの格納及び取り出しを行う。データの入出力が映像信号である場合には、データ入力時には外部から受け取ったデータをMPEGフォーマットに圧縮(エンコード)してからメモリ355へ出力し、データ出力時には、メモリ355から受け取ったMPEGフォーマットのデータを伸張(デコード)してから外部へ出力する。
操作制御手段307は情報記録再生装置300に対する動作指示受付と表示を行うもので、記録又は再生といった操作ボタン310による指示をCPU354に伝え、記録中や再生中といった情報記録再生装置300の動作状態を蛍光管などの表示パネル311に出力する。
このように、情報記録再生装置300の一例である、家庭用機器では映像を記録再生するレコーダ機器である。このレコーダ機器は放送受信チューナや外部接続端子からの映像信号をディスクに記録し、テレビなど外部表示機器にディスクから再生した映像信号を出力する機器である。メモリ355に格納されたプログラムをCPU354で実行させることでレコーダ機器としての動作を行っている。
本実施例では特に、光ディスク100は、前述の如く制御情報が記録されていないエリア113aを有しているため、誤ってL1層においてレーザ光LBがフォーカスインしたとしても、それが誤りであると判断することが可能となる。従って、上述したように適切な記録動作を継続することが可能となる。
また、上述の実施例では、情報記録媒体の一例として光ディスク100、並びに情報記録再生装置の一例として光ディスク100に係るレコーダ及びプレーヤについて説明したが、本発明は、光ディスク、並びにそのレコーダ及びプレーヤに限られるものではなく、他の高密度記録或いは高転送レート対応の各種情報記録媒体、並びにそのレコーダ及びプレーヤにも適用可能である。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう情報記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。