JPWO2005070408A1 - ストレス緩和のための組成物 - Google Patents

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Abstract

リジン及びアルギニンを有効成分として含有することを特徴とするストレス及び/又はストレスによる障害を軽減するための組成物を提供する。リジン及びアルギニンは塩の形態であっても良い。好ましい形態において、当該ストレスの原因は、精神的な緊張、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、将来の事象についての不安及び緊張、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである。

Description

本発明は、ストレス及び/又はストレスによる障害を緩和するための組成物、並びにそのような組成物を用いる人のストレス緩和方法に関する。本発明の組成物は、リジン及びアルギニンを有効成分とするものであり、飲食品又は健康補助食品として使用することができる。
数種類の食品成分に関して、精神的ストレスを抑える作用の有無を検討する試験が健常人を対象に行われている。その結果、これらの成分のうち最も優れていたのは2種類のアミノ酸、トリプトファンとチロシンであったことが報告されている。必須アミノ酸であるトリプトファンはセロトニンの前駆体であるため、精神的ストレスの軽減を目的としてトリプトファン(Trp)を使用するという考え方は直観的に理解できるものである。脳内のTrpがセロトニン産生ニューロンに供給されると、それらのニューロンのセロトニン産生速度が影響を受ける。脳内のTrpは、慢性的ストレスによって悪影響を受ける(例えば、非特許文献1参照)。
比較臨床試験から、Trp補助食品を単独で、または炭水化物とともに摂取すると、ストレス誘発性の気分が緩和されることが示されている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、一方では、最近行われたTrpに関する臨床試験の結果、Trpの気分高揚作用を完全に裏付けることはできなかったとの報告もある(例えば、非特許文献3参照)。
チロシン(Tyr)が抗ストレス作用を持つ栄養補助食品であると考えられる理由は、Trpの場合と類似している。Tyrは、カテコールアミン系神経伝達物であるドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリンの前駆体であり、これらの神経伝達物は心理社会的および精神的ストレスに対する気分を制御する。活発に活動しているニューロンの場合、ニューロン内のTyr濃度が上昇するとニューロン終末部においてノルエピネフリン産生が刺激されるが、活動していないニューロンの場合には刺激されない(例えば、非特許文献4参照)。しかし、血中Tyrと脳内Tyrとの関係は複雑であり、ストレスの調節を目的としたTyr栄養補助食品の使用は当てにならない。Tyrは、既にうつ病患者において試験されており、気分尺度に関して有意な作用は認められなかった(例えば、非特許文献5参照)。しかし、精神的ストレスに曝露した健常被験者で試験した場合には、Tyrは有意に気分を改善した(例えば、非特許文献6参照)。
これらを考え合わせると、臨床研究はストレスにおけるTrpおよびTyr補助食品の有効性を決定的に支持するものでも異議を唱えるものでもない。さらに、TrpまたはTyrを含有する栄養補助食品については、副作用(下痢、心拍数不整)の観点から慎重に評価する必要がある。
我々が最近行った動物試験では、別のアミノ酸であるL-リジン(Lys)が欠乏した飼料を与えるとストレス誘発性の不安や排便が増加することが示されている(非特許文献7参照)。さらに、正常食飼育ラットを用いて、L-リジン塩酸塩+L-アルギニン(p.o.)の5日投与によりストレス性不安症モデルで不安症状のスコアリングの改善が有意に認められている。(例えば、非特許文献8参照)。
L-リジン(0.8mmol/dl)の5-HT4受容体への結合活性を5-HT1A,2A,2B,2C,3各受容体の無影響下で調べたところ、L-リジン(0.07および0.7mmol/dl)はin vitroでモルモット回腸の5-HT誘発性の収縮をブロックした(P<0.05, P<0.01)。L-リジン(1g/kg,p.o.)は5-HT4受容体作用薬(3.0mmol/l,s.c.)により誘発されたラットの不安症をin vitroで有意に抑制した。L-リジンは部分的に5-HT4受容体の拮抗薬として作用し、5-HT4受容体の仲介する消化管疾患や不安症を強く抑制する、いわゆるブロック作用を持っている。また、L-リジンはベンゾジアゼピン受容体のアゴニストでもある(例えば、非特許文献9参照)。その上、ストレスによるアミノ酸代謝過剰反応はL-リジンにより正常状態に改善される。更に、L-リジンは体タンパク崩壊によって生じる高アンモニア血症を改善する。しかし、強いストレス中にL-リジン塩酸塩を与えるとL-アルギニンの要求量は上昇する(例えば、非特許文献10参照)。
今までの結果をふまえてブロイラーでL-リジン塩酸塩、L-アルギニンの抗ストレス作用を調べてみたところ、L-リジン塩酸塩、L-アルギニンを添加した餌を与えられたブロイラーは同程度のストレス下のコントロールのブロイラーより体重が減少しなかった。L-リジン塩酸塩、L-アルギニン添加の餌を与えられたブロイラーは飼料要求率を抑制された。脂肪率も同様に抑制されることが明らかとなった。L-リジン塩酸塩、L-アルギニンサプリメントはブロイラー養鶏場での効果を増大すると考えられ、これらのデータは、LysとArgを併用することにより、患者や慢性的に気分が悪化した被験者において不安などのストレス誘発性の疾患を予防できる可能性があることを示している(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上述した種々の食品成分は、軽度の日常的精神的ストレスがある以外は健康な人においてもそのようなストレスを緩和することができるかどうかについてはいまだ明らかでない。
国際公報第02/076445号パンフレット Young et al., Neuropsychopharmacology, 2000, 23, 411-418 Maes et al., Neuropsychopharmacology, 1999, 20, 188-197 Van der Does, Journal of Affective Disorders, 2001, 64, 107-119 Wurtman et al., Pharmacological Revue, 1980, 32, 315-335 Gelenberg et al., Journal of Affective Disorders, 1990, 19, 125-132 Deijin and Orlebeke, Brain Research Bulletin, 1994, 33, 319-323 Journal of Nutrition, 2002, 132, 3744-3746 Nutr Neurosci, 2003, 7, 125-128 Eur J Pharmacol, 1993、233, 209-217 Smriga, M. and Torii, K., Amino Acids, 2003、24, 435-437
本発明の課題は、日常的なストレスを緩和するのに有効な、新規な組成物を提供することにある。また、そのような組成物を一般大衆向けに市販されている栄養補助食品や食品として提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、リジンとアルギニンを組み合わせた組成物(以下、「本発明の組成物」という場合がある。)に、日常的なストレスを緩和する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は以下の項目を包含する。
(1)リジン及びアルギニンを有効成分として含有することを特徴とするストレス及び/又はストレスによる障害を軽減するための組成物。リジン及びアルギニンは遊離体で使用することができるが、塩の形態、或いはその混合物(複数の塩の混合物、1種以上の塩と遊離体との混合物等を含む。)であっても良い。(本明細書中では、遊離体と塩の形態をあわせて「リジン」及び「アルギニン」と称する。)また、光学異性体としては生体内に存在するL体が好ましい。
(2)前記ストレスの原因が、精神的な緊張、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、将来の事象についての不安及び緊張、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである(1)に記載の組成物。
(3)前記ストレスの原因が、将来に発生する事象であって、人前での発表、試験、自動車の運転、反復作業、知的労働、更年期、及び月経からなる群より選択される何れかに対する精神的な不安である(1)に記載の組成物。
(4)前記障害が、イライラ、社会不安障害、精神疲労、及び睡眠障害からなる群より選択される何れかである(1)に記載の組成物。
(5)リジンとアルギニンの重量比が、1:0.1〜2である(1)〜(4)の何れかに記載の組成物。
(6)一日服用量が、0.5〜20gのリジンを含有する(1)〜(5)何れかに記載の組成物。
(7)リジン及びアルギニンが、L体である(1)〜(6)の何れかに記載の組成物。
(8)(1)〜(7)の何れかに記載の組成物を含有する飲食品又は健康補助食品。
(9)リジン及びアルギニンを有効成分として含有し、ストレッサーに感受性の人に対して当該ストレッサーの発生前に少なくとも1回投与して用いられることを特徴とするストレス緩和剤。リジン及びアルギニンは塩の形態であっても良い。
(10)前記ストレッサーが、人前での発表、試験、自動車の運転、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである(9)に記載のストレス緩和剤。
(11)リジン及びアルギニンが、L体である(9)又は(10)に記載のストレス緩和剤。
(12)リジン及びアルギニンを質量換算で1:0.1〜2の比率で含有する組成物からなることを特徴とする健康補助食品。リジン及びアルギニンは塩の形態であっても良い。
(13)リジン及びアルギニンが、L体である(12)に記載の健康補助食品。
(14)ストレッサーによるストレス応答反応抑制用のストレス緩和剤の製造のための、リジン及びアルギニン、又はそれらの塩の使用。
(15)前記ストレッサーが、人前での発表、試験、自動車の運転、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである(14)に記載の使用。
(16)リジン及びアルギニンが、L体である(14)又は(15)に記載の使用。
(17)精神的ストレス又は精神的プレッシャーが高まる期間の前又はその間に少なくとも1回、質量比で1:0.1〜2の割合で含まれるリジン及びアルギニンを、1日あたり0.5〜20gのリジンが摂取されるように投与するためのストレス緩和用薬剤の製造のためのリジン及びアルギニン、又はそれらの塩の使用。
(18)リジン及びアルギニンが、L体である(17)に記載の使用。
本発明の組成物は、種々のストレッサーに感受性の人に投与又は摂取されることにより、不安の軽減、リラクゼーション、日常ストレスの軽減、健康状態(well being)の向上、精神的プレッシャーが生じる期間中における睡眠パターンの改善、ストレスに対するホルモン応答の正常化、ストレス要因の発生前における胃腸の感覚の改善、内臓脂肪の減少等の効果を発揮しうる。
本発明に係るストレス応答の機構を表した模式図である。 実施例のストレス負荷試験のスケジュールと観察項目を表した図である。 実施例のストレス負荷試験における試験当日の知能ストレステストのスケジュールを表した図である。 日常生活の不安レベル(STAI−X2)の計測結果を示した図である。 現在ストレス感情の問診票(STAI−X1)の計測結果を示した図である。 実施例のストレス負荷試験における唾液コルチゾールの測定結果を表した図である。
以下に本発明の実施の形態について説明する。
(本発明に関するストレス応答について)
精神的なストレスとは正常な生理的平衡(ホメオスタシス)を、肉体的に影響を与えずに乱そうとする有害な力の総称であり、好ましい適応を促す良いストレスに対して不適応を起こすdistressともいう場合もある(Stedman's Concise Medical & Allied Health Dictionary, 3rd ed., 1997)。一方、ストレッサーとは、ストレス応答の引き金となるもの、ストレス要因又はストレス源のことをいう。
図1は、ストレス、ストレッサー、及びストレス応答について説明したものである。本発明において、ストレスシステムは生存を脅かすような出来事(例えば捕食者との遭遇)に直面した時に高等生物の生き残りのチャンスを高めるために進化したものと考えられる。ある程度のレベルのストレッサーは今日でも重要ではあるが、度を越えた、慢性的な精神的ストレッサー刺激は病的・生理学的な反応を引き起こす。許容範囲か病的なストレッサーか、2つの境界線は栄養状態や遺伝的要因や社会生活様式などにより人によって様々である。
精神的にも肉体的にも、数え切れないほどのストレッサーが存在する。なぜなら1960年代頃からライフスタイルが変化し、精神的刺激の数も質も劇的に増加しているからである。ストレスに起因して通院したり不調を感じるアメリカ成人は1910万人と報告されている(Narroe et al., NIMH epidemiology note: prevalence of anxiety disorders, 1998)。基本的にはストレス反応は非特異的であり、すなわちストレッサーの種類に関わらずストレス応答は図1に示すように一定のパターンがある (Depression and Anxiety, 2000, 12, 2-19)。白矢印は抑制を、黒矢印は刺激を表す。ストレッサーは視床下部のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)と視床下部交感神経を活性化する。これらのシステムは副腎皮質ホルモン(コルチゾール、エピネフリン)を誘発し、循環器の働きを活発にし、エネルギー動員をスムーズにし、逃亡するチャンスを高め、ストレッサーに立ち向かうことになる。加えて高次の脳のノルエピネフリン系やセロトニン系やCRH神経が活性化されてストレッサーに対する適切な反応行動を引き起こす。これにひきかえ、ストレッサーの存在中生き残りに重要でない反応(摂食、免疫、性行動)は抑制される (Neuropsychopharmacology, 2002, 26, 358-367)。
しかしストレッサーが強すぎたり長期間に渡ったりすると、「正常なストレス反応」が病的な物へと変化する(図1)。本発明において「ストレス感受性」とは、このような種々のストレッサーに対するストレス応答反応の程度をいい、特定のストレッサー及び当該ストレッサーを受ける人によりその感受性(ストレス応答反応の程度)が異なる場合がある。従って、本発明の好ましい実施形態において、特定のストレッサーに対して感受性の人に本発明の組成物を投与することにより、当該ストレッサーによるストレス応答反応を抑制することを特徴とする。上述したようにストレッサーには数多くのものが存在するが、例えば、プレゼンテーション、試験、運転、緊張の多いスポーツ・イベント、ビジネス・ミーティング等を挙げることができる。
(本発明の組成物)
本発明で使用されるリジン及びアルギニンは、動物あるいは植物由来の天然タンパク質の加水分解から得られたもの、発酵法あるいは化学合成法によって得られたものいずれでも良い。リジン及びアルギニンは光学異性体として、D体とL体が存在するが、本発明に使用するには、生体タンパク質の成分であるL体が望ましい。リジン及びアルギニンは種々の塩の形で用いても良い。リジン及びアルギニンの塩としては、これらのアミノ酸が塩基性を示すために主に酸との塩が用いられる。酸としては、無機酸、有機酸いずれでも良い。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等があげられる。有機酸の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、ガンマリノレン酸、コハク酸トコフェロールモノエステル、トコフェロール燐酸、アスコルビン酸、アスコルビン燐酸、トコフェロールアスコルビル燐酸、チオクト酸、N-アセチルシステイン、N,N'−ジアセチルシステイン、リポ酸(lipoic acid)等が挙げられる。
本発明で使用されるリジン及びアルギニンは摂取されたときに生体内でリジン、又はアルギニンに速やかに変換されるものなら何でも良いが、例えばペプチドが挙げられる。リジン及びアルギニンのペプチド中の含量は10〜30%以上であることが望ましい。ペプチド成分としてリジン及びアルギニンは活性本体であるから必須であるがそれ以外はアミノ酸の種類は問わない。ペプチドは化学合成、発酵法、天然タンパク質の加水分解、天然ペプチド等、種々の方法で入手できるが、いずれでも使用できる。
本発明の組成物中におけるリジンとアルギニンの配合比率は、質量換算で1:0.1〜2、好ましくは1:0.5〜2、より好ましくは、ほぼ1:1である。その理由は、ストレスの負荷により血中リジン濃度は影響を受けないが、血中アルギニン濃度が減少し、リジンの単独投与だけではストレスによる血中アルギニン濃度の減少が増幅されることとなるからである。従って、本発明の組成物を用いて、リジンとアルギニンを併用投与することにより、ストレスを負荷した場合の血中アルギニン濃度を維持することができ、同時にリジンによる抗ストレス作用を発揮しうるのである。なお、好ましい形態において、本発明の組成物はL-リジンを塩酸塩の形態で、L-アルギニンを遊離体の形態で含有しうる。
(本発明の組成物の用法、用量、及び製剤の形態等)
本発明の組成物は、精神的ストレスまたは精神的プレッシャーが高まる期間の前または最中に少なくとも1回、好ましくは一定時間を置いて数回摂取される。より好ましくは、ストレッサーが発生する前に少なくとも1回摂取される。このようなストレッサーとしては、例えば、プレゼンテーション、試験、運転、緊張の多いスポーツ・イベント、ビジネス・ミーティングなどがあり、精神的に苛酷な状況の直前に服用する方法もある。
本発明の組成物をストレッサーに感受性の人に投与する場合の投与量は、当該人の年齢、ストレスに対する感受性の程度などにより変動し、一概に規定することはできないが、一般成人に対して、経口投与の場合は、一日服用量が、遊離体換算で0.1〜50g、より好ましくは0.5〜20gのリジンを含有する。
本発明の組成物は、飲食品又は健康補助食品の形態として投与、又は摂取することが可能であり、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、シロップ剤、液剤等として、経口的に安全に投与することができる。経口投与用製剤とするには、公知の方法に従い、有効成分であるリジン及びアルギニンを例えば、賦形剤(例、乳糖、白糖、デンプン等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)又は滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール 6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。そのコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(ローム社製、ドイツ、メタアクリル酸・アクリル酸共重合)及び色素(例、ベンガラ、二酸化チタン等)等が用いられる。経口投与用製剤は速放性製剤、徐放性製剤のいずれであってもよい。あるいは、一般の飲食品の形態として摂取することができ、例えば、清涼飲料、ゼリー、菓子、ジュース等が考えられるがこれらに限定されるものではない。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下のような試験計画に従って、ストレス負荷試験を行った。
1.試験デザイン:無作為割付による二重盲検群間比較試験
2.試験実施場所:川崎地区
3.被験者数:108人、各群54名×2群
4.食品形態:カプセル剤
試験食:L-リジン塩酸塩、およびL-アルギニンを使用(重量比1:1)
対照食:タピオカスターチを使用
5.摂取量:各群とも各食品(0号ハードカプセル(ホワイト))を6個/1回、2回/日、計12個を摂取
試験食(グループ1):L-リジン塩酸塩として 2.64g/日 摂取
L-アルギニンとして 2.64g/日 摂取
対照食(グループ2):タピオカスターチを6.00g/日 摂取
6.方法:各群とも各食品を1日2回(朝食後および夕食後)
7.摂取期間:7日間
8.ストレステスト:知能テスト
被験者に騒がしい場所で想像力、文章作成力、計算スピード、分析力をテストする知能ストレステスト(17分)を与えて、テストの20分前、終わった直後、終わって40分後にストレス唾液マーカーを測定した。
9.評価項目
唾液生化学(コルチゾール)
自覚症状 (不安症状、ストレス症状)
体重、体脂肪率
ストレス負荷試験(知能ストレステスト)試験のスケジュールと観察項目を図2に示した。
[試験開始2週間前]
(1)試験の概要を被験者に医師より説明の上、インフォームドコンセントの実施後、同意書の作成を行なった。
(2)不安評価問診表(STAI−X1、STAI−X2)
被験者を説明会後に行なうSTAI−X1テストのスコアに基づき層別し、プラセボとL-リジン塩酸塩+L-アルギニンにランダムに割り付けた。
[試験前7日目]
(1)カプセル食品を渡した。
(2)体重、体脂肪率を測定した。
(3)唾液採取コルチゾール測定矢内原研究所株式会社(静岡県富士宮市)にて分析した。
[試験7日前〜当日]
カプセル食品の摂取、毎日の体の自己観察記録
[試験当日]
(1)唾液採取
コルチゾール測定
(2)アンケート
不安評価問診表(STAI−X1、STAI−X2)
日内変動の影響を避けるため、ストレス負荷試験は朝10時より12時までの間に行う。
唾液摂取とアンケートのタイミングは図3の通りである。
(3)体重、体脂肪率測定(タイミング:最後の唾液サンプルを取る後)
[結果]
日常生活の不安レベル(STAI−X2、男女別々)をカプセル摂取前と後に計った。STAI−X2の高いスコアは高い不安レベルを示している。図4に示したように、試験食(Lys&Arg)のグループでSTAI−X2スコアが有意に減少していることが明らかになった(2-way ANOVA, p<0.05)。
記票時点でのストレス感情を示す問診票(STAI−X1)の結果は図5に示した(男女別々)。知能ストレスの後STAI−X1スコアが上がっているがその上がりが試験食(Lys&Arg)のグループで有意にブロックされていることが明らかになった(2-way ANOVA, p<0.05)。
次に、個人知能テストスコアを計ったが(Min=0%、Max=100%)がカプセル摂取による変化は観察されなかった。プラセボのスコアは55.45+/−2.4%; 試験食(Lys&Arg)グループのスコアは53.40+/−2.2%であった。
唾液コルチゾールのレベルを図6に示した。ストレス負荷前の唾液コルチゾールレベルは試験食(Lys&Arg)グループではプラセボより低かったが、試験食(Lys&Arg)グループの場合だけ、ストレス負荷によるコルチゾールの変化があった(2-way ANOVA, p<0.05)。女性コルチゾールは男性コルチゾールより30%低く、カプセルやストレスによる変化も低かった。以上の実験において、プラセボの体脂肪率は22.04+/−0.98%、プラセボの摂取後の体脂肪率は22.70+/−0.99、試験食(Lys&Arg)の摂取前の体脂肪率は21.00+/−0.99、試験食(Lys&Arg)の摂取後の体脂肪率は20.70+/−1.03であった。また、以上の図4〜6において、グラフ中に示したa,b,cの文字は、異なる文字の場合には危険率p<0.05で有意差があることを意味する(2-way ANOVA)。
[結論]
日常生活の不安レベル
日常生活の不安レベルを評価しているSTAI−X2問診表のスコアとベースライン唾液コルチゾールは試験食(Lys&Arg)により有意に下がった。
精神的ストレス反応
7日間試験食(Lys&Arg)を摂取することにより、急性の精神的ストレスに対する急性の精神ストレス感情はプラセボグループと比べると有意に好転したことを確認できた。
リジン(2.64g/日)及びアルギニン(2.64g/日)の7日間の摂取は、副作用がまったくなく安全なアミノ酸の組み合わせであることが確認された。リジン及びアルギニンを含有する本発明の組成物を投与することにより、急性ストレスと日常生活不安を好転させる効果があり、ストレス緩和のための組成物として有用である。

Claims (18)

  1. リジン及びアルギニンを有効成分として含有することを特徴とするストレス及び/又はストレスによる障害を軽減するための組成物。リジン及びアルギニンは塩の形態であっても良い。
  2. 前記ストレスの原因が、精神的な緊張、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、将来の事象についての精神的不安及び緊張、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである請求項1に記載の組成物。
  3. 前記ストレスの原因が、将来に発生する事象であって、人前での発表、試験、自動車の運転、反復作業、知的労働、更年期、及び月経からなる群より選択される何れかに対する精神的な不安である請求項1に記載の組成物。
  4. 前記障害が、イライラ、社会不安障害、精神疲労、及び睡眠障害からなる群より選択される何れかである請求項1に記載の組成物。
  5. リジンとアルギニンの質量比が、1:0.1〜2である請求項1〜4何れか一項に記載の組成物。
  6. 一日服用量が、遊離体換算で0.5〜20gのリジンを含有する請求項1〜5何れか一項に記載の組成物。
  7. リジン及びアルギニンが、L体である請求項1〜6何れか一項に記載の組成物。
  8. 請求項1〜7何れか一項に記載の組成物を含有することを特徴とする飲食品又は健康補助食品。
  9. リジン及びアルギニンを有効成分として含有し、ストレッサーに感受性の人に対して当該ストレッサーの発生前に少なくとも1回投与して用いられることを特徴とするストレス緩和剤。リジン及びアルギニンは塩の形態であっても良い。
  10. 前記ストレッサーが、人前での発表、試験、自動車の運転、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである請求項9に記載のストレス緩和剤。
  11. リジン及びアルギニンが、L体である請求項9又は10に記載のストレス緩和剤。
  12. リジン及びアルギニンを質量換算で1:0.1〜2の比率で含有する組成物からなることを特徴とする健康補助食品。リジン及びアルギニンは塩の形態であっても良い。
  13. リジン及びアルギニンが、L体である請求項12に記載の健康補助食品。
  14. ストレッサーによるストレス応答反応抑制用のストレス緩和剤の製造のための、リジン及びアルギニン、又はそれらの塩の使用。
  15. 前記ストレッサーが、人前での発表、試験、自動車の運転、反復作業、知的労働、更年期における精神的不安定、並びに月経前の精神的不安定及び緊張からなる群より選択される何れかである請求項14に記載の使用。
  16. リジン及びアルギニンが、L体である請求項14又は15に記載の使用。
  17. 精神的ストレス又は精神的プレッシャーが高まる期間の前又はその間に少なくとも1回、質量比で1:0.1〜2の割合で含まれるリジン及びアルギニンを、1日あたり0.5〜20gのリジンが摂取されるように投与するためのストレス緩和用薬剤の製造のためのリジン及びアルギニン、又はそれらの塩の使用。
  18. リジン及びアルギニンが、L体である請求項17に記載の使用。
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