JPWO2005010921A1 - メタルハライドランプ - Google Patents
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Abstract
Description
この特長をいかして、石英に比べて高温で動作させることが可能となり、より高い効率で演色性に優れてメタルハライドランプを実現することができる。
セラミック発光管を用いたメタルハライドランプの一例として、特表2000−511689号公報に開示されているようなランプがある。このランプは、セラミック発光管内にNa(ナトリウム)、Tl(タリウム)、Dy(ディスプロシウム)、Ho(ホルミウム)のうち少なくとも一つのハロゲン化物に加え、Cal2(沃化カルシウム)を封入することにより、平均演色評価数Raが90以上の良好な演色性と、相関色温度3900K〜4200Kの白色光を備えたメタルハライドランプである。
しかしながら、上記の特表2000−511689号公報に記載されているメタルハライドランプの効率は、ランプの定格電力(lamp power rating)が150W(ワット)の場合に85LPW〜90LPW程度であり、石英管を使用する場合より高い効率を発揮する。ここで、「LPW」とは「Lumen Per Watt」の頭文字を取ったもので、「lm/W」の単位を有する。
近年、省エネルギーの観点から、従来のメタルハライドランプよりも効率の高い光源が望まれている。高圧ナトリウムランプの効率は約110LPW(電力定格180Wの場合)と非常に高いが、Raが約25であり、演色性が乏しい。このため、高圧ナトリウムランプは、店舖や高天井等に用いられることはあまりなく、道路灯などに使用されている。
このように店舗や高天井の照明には、ランプの効率のみならず、演色性に優れていることも重視されるが、一般に、光源の高効率化を達成しようとすると、視感度の高い緑系の発光が強められるため、演色性が低下してしまう。すなわち、高効率化と高演色性の両立は非常に困難とされている。
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、平均演色評価数Raが70以上、好ましくは85以上となる良好な演色性を保ちながら、従来のメタルハライドランプの効率(典型的には90LPW)に比べて10%以上は高い効率(100LPW以上)を示すメタルハライドランプを提供することにある。10%の効率向上(光束増加)は、人間が若干の明るさ増加を感じることができる最低レベルである。また、平均演色評価数Ra70以上という条件は、一般に工場などで作業をする場合に物の色を識別するに良好な演色性をもたらすものであると考える。
好ましい実施形態において、前記Prのハロゲン化物、前記Naのハロゲン化物、および前記Caのハロゲン化物の封入量は、いずれも、1.0mg/cm3以上である。
好ましい実施形態において、0.4≦Hc/Hp≦4.7である。
好ましい実施形態において、11.9≦Hc/Hp≦15.0である。
好ましい実施形態において、前記発光管の内径をD(mm)、前記電極先端間距離をL(mm)としたとき、4≦L/D≦9の関係を満たしている。
好ましい実施形態において、前記発光管を収納する外管を備え、前記発光管と前記外管との間が1kPa以下の減圧状態に保たれている。
好ましい実施形態において、平均演色評価数Raが70以上、ランプ効率が100LPW以上である。
本発明の照明装置は、上記いずれかのメタルハライドランプと、前記メタルハライドランプの調光を行なう手段とを備えている。
好ましい実施形態において、前記手段は、前記メタルハライドランプの電極に電力を供給する電子安定器を有し、前記電子安定器は、前記電力を定格の25%から前記定格までの範囲で調節することができる。
図2は、図1の発光管20の拡大した断面図である。
図3は、本発明ランプについての、ランプ効率(LPW)と、発光管電極間長さ対内径の比(L/D)との関係を示す図である。
図4は、本発明ランプについての、Caのハロゲン化物量とPrのハロゲン化物量とのmol比による、ランプ効率(LPW)および平均演色評価数(Ra)との関係を示す図である。
図5は、本発明の典型的なランプについて、30Wから150Wまで調光した場合の色温度の変化を示す図である。
図6(A)〜(G)は、本発明ランプの発光管の一実施形態の断面を示す図である。
図7は、本発明によるメタルハライドランプと電子安定器とを備えたシステム(照明装置)の構成例を示すブロック回路図である。
3.0≦Hn/Hp≦25.0 ・・・(式1)
0.4≦Hc/Hp≦15.0 ・・・(式2)
本発明では、上記の式1および式2を満足する比率で、Prのハロゲン化物、Naのハロゲン化物、およびCaのハロゲン化物をセラミック製発光管内に封入している点に主たる特徴点を有している。このことにより得られる効果の詳細については、後述する実施例の作用効果を説明する際に併せて説明する。
以下、図面を参照しながら、本発明によるメタルハライドランプの好ましい実施形態を説明する。
まず、図1を参照する。図1は、本実施形態のメタルハライドランプ10の構成を示す図である。この図は、球状ホウケイ酸外管11がエジソン型の金属口金12にはめ込まれた状態を示している。
本実施形態のメタルハライドランプ10は、透明な外管11と、外管11の内部に収容されたセラミック発光管20とを備えている。
口金12にはホウケイ酸ガラスフレア(外管長軸通過フレア)16が取り付けられており、外管11の長軸方向の軸(図1の点線104)に沿って外管11の内部へと延びている。
口金12の内側には、電気的に絶縁された一対の電極金属部分(不図示)が設けられており、各電極金属部分からは、ホウケイ酸ガラスフレア(外管長軸通過フレア)16を通って、引き込み電極ワイヤ14および15(アクセスワイヤ)が外管11の内部で平行に延びている。ワイヤ14および15は、例えばニッケルまたは軟鋼から形成されている。
ワイヤ15のうち、外管長軸104に対して平行な部分は、ランプの動作時にワイヤ15の表面から光電子が発生しないように、酸化アルミニウムセラミックチューブ18の内部を通っている。また、ワイヤ15の外管長軸104に対して平行な部分は、ガス不純物を捕捉(吸着)するためのゲッター19を支持している。
セラミック発光管20は、後述するように多様な構成をとり得る。図1に示す発光管20の構成は一例に過ぎない。図示されている発光管20は、可視光に対して半透明である多結晶アルミナ壁を有するシェル構造を有している。
この発光管20は、本管25と、1対の小さな内径/外径セラミック切頭円筒シェル部分21(「チューブ21」と称しても良い)とを有している。チューブ21は、本管25の2つの開口端部のそれぞれに焼き嵌めされている。
発光管20は、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(いわゆるYAG)、窒化アルミ、アルミナ、イットリア、ジルコニアなどの材料から好適に形成され得る。
次に、図2を参照しながら、発光管20の構成を詳細に説明する。図2は、図1の発光管20を拡大した断面図である。
図2に示す発光管20の本管25は、内径Dのシェル部分101、チューブ21に接続される一対の円筒シェル部分102、および、シェル部分101と各円筒シェル部分102とを連結する一対の円錐シェル部分103を有している。
各チューブ21からは、例えばニオビウムから形成されるリード線26が外側にチューブ21から延びている。2本のリード線26は、それぞれ、図1に示すワイヤ14、15を電気的に接続され、ランプ電力を供給するための導線として用いられる。
2本のリード線26の一方は、図1に示すようにワイヤ14が外管長軸104と交差する位置で、溶接によってワイヤ14に接続されている。2本のリード線26の他方は、図1に示すようにワイヤ15が外管長軸104と交差する位置で、溶接によってワイヤ15に接続されている。このように発光管20は、ワイヤ14およびワイヤ15との溶接部分の間に配置され、発光管20の長さ方向の軸が外管長軸104とほぼ一致するように支持されている。こうして、ランプ動作に必要な入力電力は、ワイヤ14、15を介して発光管20のリード線26に供給される。
リード線26は、ガラスフリット27によってチューブ21の内表面に固定され、封止されている。このため、リード線26の熱膨張特性(線膨張係数)は、チューブ21およびガラスフリット27の熱膨張特性(線膨張係数)に近いことが好ましい。
チューブ21の内側には、モリブデン引き込みワイヤ29が配置されている。ワイヤ29の一端は、リード線26の一端に溶接によって接続され、他端はタングステン主電極軸31の一端に溶接によって接続されている。主電極軸31の他端(先端部分)には、タングステンコイルからなる電極32が設けられ、溶接によって主電極31と一体化されている。
リート線26の直径は、例えば0.9mmである。主電極軸31の直径は、例えば0.5mmである。これらのサイズは用途に応じて適宜適切な大きさに変更可能である。
本実施形態のランプの構成を規定するパラメータのうちで特に重要なもの、発光管20の2つの電極32の間の長さまたは距離「L(電極間距離)」、および、電極間における本管25の内径「D」によって定義される比L/Dである。
本実施形態では、1対の電極32の先端部の中心を結ぶ直線(「電極間直線」と称することにする)に沿って電極間距離Lが測定される。一方、本管25の内径Dは、この電極間直線に実質的に直交する「平面」に沿って測定される。本明細書において、「実質的に直交する」場合には、上記の「平面」に対して「電極間直線」が正確に直交する場合のみならず、この「平面」と「電極間直線」とが直角から僅かにずれた角度で交差している場合を含む。具体的には、本管25の形状や、本管25の内部における電極32の位置が図2に示すものから変化した場合、内径を規定する平面(本管25の内壁面に垂直な面)と電極間直線との関係が「垂直」から外れる場合がある。このように内径Dを規定する面と電極間直線とが正確に直交しない場合でも、そのことに起因して発光特性の低下が通常のランプ設計において問題にならない程度であれば良い。
後述するように、L/Dは、発光管20から放射される光の量、活性材料原子の励起状態の分布、材料輝線の広がり等に影響する常用なパラメータである。
以下、本実施形態に係るメタルハライドランプの具体的な実施例を説明する。なお、以下に説明する各実施例では、図6(D)に示す形状の発光管を使用している。この発光管は、管壁構造の両端が半球となるように切断された直円柱の断面を有している。
本実施例のメタルハライドランプの基本的な構成は、図1および図2を参照して説明した通りのものであるが、本実施例では、ランプの定格電力を150Wに設定し、外管11内を1kPaの減圧状態に保持している。本実施例の発光管20は、多結晶アルミナから構成されており、その内部には定格電力で点灯している時のランプ電圧が80〜95Vの範囲となるに適した量の水銀0.1〜4.0mgと、封入ハロゲン化物を発光管内容積に合わせて総量5.5〜19mg封入した。用意したハロゲン化物は、ヨウ化プラセオジムと、ヨウ化ナトリウムと、ヨウ化カルシウムがそれぞれ、mol比で1:10:0.5、1:10:2および1:10:10、すなわち、Caのハロゲン化物量(Hc)とPrのハロゲン化物量(Hp)とのmol比が、Hc/Hp=0.5、2.0、10の3通りである。発光管20の内部には、更に、300K(ケルビン)において200Paの圧力を示すXe(キセノン)ガスが封入されている。
本実施例では、上記の構成を有するメタルハライドランプであって、発光管20の内径Dに対する電極間距離Lの比L/Dを0.6から20まで種々変化させたランプを用意し、各ランプを定格電力150Wで点灯させた状態でランプの光出力特性を評価した。
図3は、従来例と本発明の典型的なランプについて、ランプ効率[LPW]と比L/Dとの関係を示している。
ここで、従来の高効率ランプ(以降、「従来ランプ」と称する)と本発明ランプとの相違点は封入物の種類のみにあり、その他の構成は同じである。従来ランプの封入物はNa、Tl、Dy、Ho、TmおよびCaのヨウ化物であり、これらを特表2000−511689号公報に記載されている第一の実施例にしたがって用いた。すなわち、Naが29mol%、Tlが6.5mol%、Hoが6.5mol%、Tmが6.5mol%、Caが45mol%となるように発光管内容積に合わせてハロゲン化物の総量を5.5〜19mg封入した。
従来ランプにおけるランプ効率は、図3に示すように、典型的にはL/Dによらず、約90LPWである。ところが、本発明ランプにおいて、電極間距離Lと内径DとがL/D≧1.0という関係を満たす場合に、従来より約10%以上の高い効率を得ることができることがわかった。さらに、L/Dがこの範囲にあるとき、Raは70から90であり、非常に良好な演色性も得られることがわかった。
特にL/D≧4という関係を満たす場合、本発明ランプのランプ効率は113LPWとなるため、従来ランプのランプ効率90LPWに比べて25%以上も高い効率が得られる。つまり、L/D≧4のとき、ランプ効率が高いランプとして使用される高圧ナトリウム灯のランプ効率110LPWと同等以上の高い効率が得られることが分かった。また、高圧ナトリウム灯では、Raの値が20〜30程度であるのに対し、本発明ランプのRaは70〜90の非常に良好な値を示し、高効率と高演色の両立を実現している。
本発明ランプのランプ効率は、従来ランプのランプ効率に比べて25%以上増加するので、発光性能を維持しつつ、従来の照明設計で用いられている照明の灯数を25%低減することができる。さらに、L/D≧4の関係を満たす範囲では、発光管20を水平となる状態で点灯した場合においても放電アークの湾曲が抑えられ、点灯中のちらつきを防止する効果が確認された。
電極間距離Lおよび内径Dは、7≦L/D≦9という関係を満たすことが更に好ましい。この場合、本発明ランプのランプ効率は最大化され、120LPW以上の高い値を達成することができる。このとき、従来ランプの90LPWに比べて、本発明ランプの高いものでは、約35%もランプ効率を改善することができる。
なお、図3のグラフからは、L/D>9という関係を満たすと、ランプ効率が低下傾向にあることがわかる。しかしながら、電極間距離Lと内径Dとが9<L/D≦20という関係を満たしていれば、本発明ランプのランプ効率は、従来ランプのランプ効率90LPWよりも高いことが分かる。
電極間距離Lと内径DとがL/D>20という関係を満たすとき、電極間距離Lが非常に大きくなり、通常の点灯回路を用いた放電の始動および放電の維持が困難となるか、または、内径Dが小さくなり、管壁における電子の消滅に起因して放電の維持が困難となる。したがって、電極間距離Lと内径Dとは、L/D<20という関係を満たすことが好ましい。
なお、本実施例では、Hc/Hpを0.5、2.0、および10に3種類の値に設定したが、1.0≦L/D≦20の範囲において、100LPW以上を実現するためには、Hc/Hp≦2.0に設定する心要がある。ただし、Hc/Hp≦15.0であれば、従来ランプよりもランプ効率を向上させることができる。
また、L/D≧4であれば、Hc/Hp≦15の範囲すべてにおいて100LPW以上の高いランプ効率を実現できる。
本発明の効果を得るためには、発光管内にハロゲン化プラセオジム、ハロゲン化ナトリウム、およびハロゲン化カルシウムを少なくとも1mol%以上は封入する必要がある。
なお、本発明の効果を得るためには、Prのハロゲン化物、Naのハロゲン化物、およびCaのハロゲン化物の封入量は、いずれも、1.0mg/cm3以上に設定することが好ましく、2.0〜25mg/cm3。の範囲に設定することがより好ましい。
本実施例では発光管材料に透光性セラミックを使用しているが、例えば石英製の発光管を使用した場合、Prと石英が反応し、寿命早期に失透等の問題が発生する。また、Caについても同様であり、石英製の発光管で本実施例の封入物を使用した場合には本発明の効果を得ることはできない。
本実施例のランプが実施例1のランプと異なる点は、発光管20内部に、水銀を0.5mg、封入ハロゲン化物として、ヨウ化プラセオジムと、ヨウ化ナトリウムの比が1:10、合計9mgとなるように封入し、Caのハロゲン化物量(Hc)とPrのハロゲン化物量(Hp)とのmol比Hc/Hpが0.2から18の範囲となるとなるようにヨウ化カルシウムを加えた。
また、2つの電極32間の本管25の内径Dは約4mmである。発光管20の放電領域201内における2つの電極32間の電極間距離Lは、約32mmであり、同じ値のアーク長が得られる。その他の点は実験の形態1と同一である。従来、ランプの定格電力15OWの場合において、電極間距離Lは10mm程度であったことを考慮すると、本発明ランプの電極間距離Lは極めて長い。定格電力150〜200Wの場合、本発明ランプの電極間距離Lを20mm〜50mmの範囲内に設定することが好ましい。電極間距離Lが20mmを下まわると、同じ管壁負荷では内径Dが大きくなるため、アークが湾曲して、発光管が割れるおそれがある。一方、電極間距離Lが50mmを超えると、ランプの始動が困難になる。
本発明ランプを定格電力150Wで点灯させてランプの光出力特性を評価した。
図4は、本発明ランプについて、Caのハロゲン化物量(Hc)とPrのハロゲン化物量(Hp)とのmol比Hc/Hpに対するランプ効率[LPW]および平均演色評価数Raとの関係を示す。図4に示すように、Hc/Hpの比が高くなるほど効率が低下し、Hc/Hp=15のとき、効率は117LPWとなる。Hc/Hpの比が15を超えてさらに高くなると、効率は急激に低下する。
一方、RaはHc/Hpの比が高くなるに従って一律に上昇する。Hc/Hp=0.4のとき。Raは70である。すなわち、0.4≦Hc/Hp≦15.0の範囲では、従来ランプが示す効率90LPWよりも25%以上も高い効率(115LPW以上の効率)と、Ra70以上の良好な演色性を兼ね備えることができる。
25%の効率上昇は、人間がはっきりと明るさの向上を感じることができる量である。従来ランプより25%の効率アップは画期的な効率であることを意味する。
なお、Hc/Hp=4.7のとき、効率125LPWであることから、Hc/Hp≦4.7の範囲では、Ra70以上の良好な演色性を保ったまま、従来ランプと比べて約40%も高い効率である125LPWを示している。
なお、Hc/Hp=11.9のとき、効率は120LPWであり、Raが90であることから、Hc/Hp≧11.9の範囲では、従来ランプの効率(90LPW)より25%以上も高い効率(115LPW以上の効率)と、Raが90以上という非常に良好な演色性得ることができる。更に、duvは0.005以下という黒体軌跡に近い優れた白色光を呈していることも確認した。
また、本発明ランプでは、11.9≦Hc/Hp≦15.0の範囲で、従来ランプの演色性(Ra90〜92)と同等の演色性を得ることができている。
実施例1について説明したように、ランプ効率は電極間距離Lと内径Dの比L/Dによって変化する。実施例2では、L/D=8に設定しているが、Hc/Hp≦15であれば、実施例1で示したように、L/D≧1.0の範囲で従来ランプの効率90LPWを超える高い効率が達成される。
実施例1、2のいずれの場合も、ヨウ化プラセオジムとヨウ化ナトリウムの比を1:10に設定しているが、この比が、1:3〜1:25の範囲内にあれば、同様に高い効率で良好な演色性を発揮させることができる。
本実施例におけるランプの構成は、封入したハロゲン化物の比率を除いて、実施例2におけるランプの構成と同一である。
本実施例では、Caのハロゲン化物量(Hc)とPrのハロゲン化物量(Hp)とのmol比Hc/Hpを0.4から15.0の範囲で変化させ、また、Naのハロゲン化物量(Hn)とPrのハロゲン化物量(Hp)とのmol比Hn/Hpを3.0から25.0の範囲で変化させた。
図5は、それらの内、Pr:Na:Caを、1:3:0.4、1:3:2、1:10:0.4、1:10:10、1:25:2、1:25:15と変化させた例について、ランプへの入力電力(W)と色温度(K)の関係を示している。
図5においては、比較のため、従来ランプとして、実施例1と同様に特表2000−511689号公報に記載されているランプに準じたランプ(従来ランプ)の入力電力と色度との関係をも示している。
図5に示すように、従来ランプへの入力電力を低下させると、色温度が上昇するが、本発明ランプでは、入力電力を定格電力の25%に低下させた場合でも、色温度変化が約300K以内に抑制され、優れた調光特性を有している。
図5に示すように、Hn/Hpによってランプの色温度がほぼ決定され、Hc/Hpによる色温度への影響は少ない。さらに、実施したHn/HpやHc/Hpの範囲であれば、これらの比によらず優れた調光特性が得られる。
従来ランプの色温度変動の原因は、封入しているTlと他の封入物(特にDyやHoのような3A族)が、温度に強く依存して異なった蒸気圧特性を示すからである。このため、定格電力を下回る入力電力では、発光のバランスが崩れ、調光時の低温状態でも強く発光するTlが緑色の発光色を呈し、ランプの色温度が上昇する。
これに対し、本発明ランプでは、主な発光がPrおよびNaから発せられるため、温度変化に対する蒸気圧変動は相対的にほぼ等しい。加えて、Caのハロゲン化物を混合しているため、点灯条件の変動に対しても、封入物の発光バランスを安定させるという、PrおよびNaだけでは見られない優れた調光特性が得られる。
なお、本実施例では、L/Dを8に設定したが、L/Dが1.0≦L/D≦20の関係を満足する限り、同様に良好な調光特性が得られた。
本実施例のメタルハライドランプを調光する際、電子安定器を使用して行なうことが好ましい。図7は、本発明によるメタルハライドランプと電子安定器とを備えたシステム(照明装置)の構成例を示すブロック回路図である。図7に示す電子安定器は、商用電源1から交流電流を受け取り、直流電流に変換する昇圧チョッパ2と、直流電流を周波数および波形の調整された交流電流に変換する点灯する回路部3とを備えており、点灯回路部3から出力される交流電流は、本発明に係るメタルハライドランプ7に供給される。
この電子安定器は、第1制御回路4、第2制御回路5、および設定部6を更に備えており、第1制御回路4は、昇圧チョッパ2の出力する電圧および電流の大きさは、第1制御回路4によって検知され、設定部6によって設定された値を示すように制御される。点灯回路部3の出力波形および周波数は、第2制御回路5によって制御される。
メタルハライドランプ7の調光は、設定部6によって設定された値を持つ出力が昇圧チョッパ2から得られるように第1制御回路4が昇圧チョッパ2の動作を制御することによって行なわれる。
このような構成を有する電子安定器を用いることにより、メタルハライドランプの寿命末期まで、安定した瞬時調光を行うことができるだけでなく、定格電力で点灯する場合にも、電源電圧変動による影響を少なくすることができる。
図7の装置では、ランプ7に入力する電力を定格ランプ電力の25%まで低下しても、前述したように、色温度変化が約300K以内に抑制され、優れた調光特性が得られる。
本発明のメタルハライドランプによれば、実施例1から3について説明したように、寿命中のランプ電圧上昇が少なく、寿命末期まで電気特性変化の少ない良好なランプ特性が得られる。
また、本発明のメタルハライドランプによれば、寿命中の光特性変化(特に色温度変化)が少なく、さらに製造時の色特性バラツキ(個体差)も小さいことが確認された。これは、Pr、Na、およびCaのハロゲン化物を混合して用いたことによって得られる本発明に特有の効果であり、調光時にも発光バランス安定の効果として発現される。
なお、実施例1〜3のいずれの場合も、特に好ましい例として、外管11の内部を1kPaの減圧状態に設定しているが、外管11の内部を例えば50kPa以下の窒素雰囲気に設定しても良い。その場合、ランプ効率が僅かに低下するが、実施例のランプと同様に、高効率かつ良好な演色性を兼ね備え、かつ、調光特性に優れたメタルハライドランプを提供することができる。なお、外管11の内部を50kPaの窒素雰囲気に設定した場合、効率が120LPWを超える範囲でのみ、2〜3LPW程度の効率低下が生じるため、外管11の内部は1kPa以下の減圧状態に設定することが好ましい。
実施例1〜3のランプでは、Pr、Na、およびCaのハロゲン化物としてヨウ化物を用いたが、Pr、Na、およびCaの臭化物または、Pr、Na、およびCaのヨウ化物および臭化物の組み合わせを用いてよい。このような場合にも、高効率かつ良好な演色性を兼ね備え、調光特性に優れたメタルハライドランプを提供することができる。
[発光管の形態]
前述したように発光管20は、図1および図2に示す形態とは異なる他の幾何学的形状を有していてもよい。
図6(A)〜図6(G)は、発光管20が採用しえる種々の形態の例を示しており、発光管の長軸に沿った断面図である。管壁内表面および管壁外表面は、発光管の長軸を回転軸とする回転体の表面であるが、ここでは必ずしも必要でないので図示しない。
このような管壁内表面の内径Dは、電極間の(すなわち、電極先端間距離Lにわたる)断面図の内面積を求めて、この面積をLで除算することにより求めることができる。他の種類の内表面は、その内径を求めるために、より煩雑な平均化手順を必要とする場合があり得る。
以下、各発光管の形状の説明とそれぞれの発光管を用いた時の特長を記す。この時、発光管形状以外の条件は等しい。
図6(A)は、発光管中央部の断面が楕円形である発光管を示す。
図6(B)は、発光管中央部の両端が平坦となるように切断された、直円柱の断面を有する発光管を示す。この発光管形状は、点灯中の色温度の変化が小さいといった特徴を持つ。よって、発光色の変化が気になる場合に特に有効である。
図6(C)は、発光管中央部の両端が半球であり、発光管中央部の側面が凹状となる断面を有する発光管を示す。
図6(D)は、発光管中央部の両端が半球となるように切断された直円柱の断面を有する発光管を示す。
図6(E)は、発光管中央部の両端が半球であり、発光管中央部の側面が楕円形である断面を有する発光管を示す。
図6(F)は、実施例1および2で使用した形状である。
図6(G)は、発光管中央部の両端の直径が大きく、かつ、平坦となるように切断された直円柱の断面を有する発光管を示す。
図6(A)と図6(E)の発光管は、大量に生産した場合の色温度の個々ばらつきが特に少ないといった特徴を持つ。そのため、大量に天井照明などで使用され、色温度バラツキが目立つ場合は、特に好ましい発光管形状となる。
図6(C)と図6(G)の発光管は、始動時の光立ち上がりが早いといった特徴を持つ。設計にもよるが、定格光出力に達するまでの時間が10〜20%程度短くできる。また、水平点灯時のアーク湾曲が特に少なく、点灯時のちらつきが特に少ないランプを得ることができる。
図6(D)と図6(F)の発光管は、点灯中の色温度の変化がもっとも少ないランプを得ることができる。
図6(B)の発光管は、構造が簡単なため生産コストが低いといった特徴がある。
さらに別の多くの構成が可能である。各構成は、それぞれ異なる理由から望ましい形態とされる。従って、各構成はそれぞれ利点および欠点を有する。つまり、特定の活性材料および他のランプ特性を考慮した場合には、多くの構成のうちある所定の発光管の構成が、他よりも多くの利点を有することになる。図6(A)〜図6(F)に示すいずれの発光管構成においても、放電領域に提供される、本発明によるイオン化可能材料を用い、かつ、電極間距離Lと直径Dとが上述の関係(すなわち、L/D≧1.0)を満たす場合に、従来に比べて高いランプ効率を有するアーク放電ハロゲン化金属ランプが得られる。
なお、実施例1、2、3は発光管20内に水銀を封入した場合の結果のみ記載したが、無水銀とした場合についても同様に本発明の効果を得ることができる。
本実施例1、2、3では、定格電力が150Wのランプであるが、本発明のメタルハライドランプの定格電力は150Wに限定されるものではない。定格電力が上昇すると、全消費電力に対する電極ロスなどのロス電力の割合が減少するために、ランプの発光効率は上昇する。これに対して、定格電力が低下すると、ロス電力の割合が増加するため発光効率は低下する。よって、本実施例の発光効率は、定格電力が150W程度のランプについての値であり、ランプの定格電力によって、その値は異なるが、効果には関係なく相対的に従来ランプと比較して発光効率が改善されたランプを得ることができる。
このように本発明によれば、従来に比べて高いランプ効率と良好な演色性を両立したメタルハライドランプが実現できる。さらに、本発明のメタルハライドランプはハロゲン化カルシウムとハロゲン化プラセオジムの混合による優れた効果として、最冷点温度の変動による影響が少ない設計になっており、調光時の色安定性に対しても有利に働く。
0.4≦Hc/Hp≦15.0 ・・・(式2)
以下、本発明によるメタルハライドランプの第1の実施例を説明する。
以下、本発明によるメタルハライドランプの第2の実施例を説明する。
以下、本発明によるメタルハライドランプの第3の実施例を説明する。
前述したように発光管20は、図1および図2に示す形態とは異なる他の幾何学的形状を有していてもよい。
Claims (9)
- セラミックから形成された発光管と、一対の対向する電極とを備えたメタルハライドランプであって、
前記発光管の内部に封入されたPr(プラセオジム)のハロゲン化物、Na(ナトリウム)のハロゲン化物、およびCa(カルシウム)のハロゲン化物を有しており、
前記Prのハロゲン化物の封入量Hp[mol]、前記Naのハロゲン化物の封入量Hn[mol]、および前記Caのハロゲン化物の封入量Hc[mol]が、
0.4≦Hc/Hp≦15.0
および
3.0≦Hn/Hp≦25.0
の関係を満たす、メタルハライドランプ。 - 前記Prのハロゲン化物、前記Naのハロゲン化物、および前記Caのハロゲン化物の封入量は、いずれも、1.0mg/cm3以上である、請求項1に記載のメタルハライドランプ。
- 0.4≦Hc/Hp≦4.7である、請求項1に記載のメタルハライドランプ。
- 11.9≦Hc/Hp≦15である、請求項1に記載のメタルハライドランプ。
- 前記発光管の内径をD(mm)、前記電極先端間距離をL(mm)としたとき、4≦L/D≦9の関係を満たす、請求項1に記載のメタルハライドランプ。
- 前記発光管を収納する外管を備え、
前記発光管と前記外管との間が1kPa以下の減圧状態に保たれている請求項1に記載のメタルハライドランプ。 - 平均演色評価数Raが70以上、ランプ効率が100LPW以上である、請求項1に記載のメタルハライドランプ。
- 請求項1から7のいずれかに記載のメタルハライドランプと、
前記メタルハライドランプの調光を行なう手段と、
を備えた照明装置。 - 前記手段は、前記メタルハライドランプの電極に電力を供給する電子安定器を有し、
前記電子安定器は、前記電力を定格の25%から前記定格までの範囲で調節することができる、請求項8に記載の照明装置。
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