JPWO2004018494A1 - 4’−チオヌクレオチド - Google Patents
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Abstract
Description
4’−チオリボヌクレオシドまたは4’−チオ−2’−デオキシリボヌクレオシドを含むRNAまたはDNAは,種々のヌクレアーゼに対して抵抗性を示すため,研究試薬および診断または治療用の薬剤として有用であることが示唆されている。
Bellonら(Biochem.Biophys.Res.Comm.,1992,184,797−803)は,1−(4−チオ−β−D−リボフラノシル)チミンを含むオリゴデオキシヌクレオチドの合成を記載する。Bellonら(Nucleic Acids Res.,1993,21,1587−1593),Leydierら(Antisense Res.Dev.1995,5,167−174)およびLeydierら(Nucleosides Nucleotides,1995,14,1027−1030)は,4’−チオ−β−D−オリゴリボヌクレオチドが高いヌクレアーゼ耐性を有することを記載する。
Dukhanら(Nucleosides Nucleotides,1999,18 1423−1424)は,4種の4’−チオリボヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドの合成を記載する。
Bellonら(Nucleic Acids Res.,1993,21,1587−1593)は,4’−チオウリジンのみからなるRNAの分解酵素に対する抵抗性を調べ,天然型U6と比較して,4’−SU6が種々の分解酵素に対して遙かに強い抵抗性を示すことを報告している。
一方,デオキシリボヌクレオシドに関しても,いくつかの合成例が報告されている。Hancoxら(Nucleic Acids Res.,1993,21,3485−3491)は,4’−チオ−2’−デオキシチミジンおよびこれを含むオリゴデオキシリボヌクレオチドの合成を記載する。Boggonら(Nucleic Acids Res.,1996,24,951−961)は,4’−チオ−2’−デオキシチミジンを含む合成DNAオリゴマーの構造を記載する。Jonesら(Nucleic Acids Res.,1996,24,4117−4122)およびJonesら(Bioorg.Med.Chem.Lett.,1997,7,1275−1278)は,4’−チオ−2’−デオキシヌクレオチドを含む合成DNAオリゴマーを記載する。Kumarら(Nucleic Acids Res.,1997,25,2773−2783)は,4’−チオ−2’−デオキシシチジンを含む合成DNAオリゴマーを記載する。
しかし,これらのいずれのオリゴリボヌクレオチド,オリゴデオキシリボヌクレオチドも化学合成により製造されている。この方法では,長鎖のオリゴヌクレオチドを得ることは困難であり,かつコストが高い。
4’−チオヌクレオシドからRNAポリメラーゼ,DNAポリメラーゼ,リバーストランスクリプターゼ等の酵素を用いてオリゴヌクレオチドを合成するためには,4’−チオヌクレオシドを三リン酸化することが必要である。
Alexandrovaら(Antiviral Chemisty & Chemotherapy,1995,7,237−242)は,4’−チオ−5−エチル−2’−デオキシウリジン 5’−三リン酸の合成およびこれがDNA合成酵素により認識されることを記載する。しかし,この特定の塩基以外の4’−チオデオキシリボヌクレオシド三リン酸または4’−チオリボヌクレオシド三リン酸はこれまでに得られていない。これは,立体選択的合成の困難性のためであると考えられる。
したがって,当該技術分野においては,RNAポリメラーゼ,DNAポリメラーゼ等の酵素により認識され伸長されることができる4’−チオヌクレオチドを合成するための新規かつ改良された方法が求められている。
したがって,本発明は,新規ヌクレオシド三リン酸,およびこれを合成する方法,ならびにこれらのヌクレオシド三リン酸を用いてオリゴヌクレオチドを製造する方法を提供することを目的とする。
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
で表される4’−チオリボヌクレオチドを提供する。
本発明はまた,式II:
[式中,B’はアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
で表される4’−チオ−2’−デオキシヌクレオチドを提供する。
本発明の4’−チオヌクレオチド類は,RNAポリメラーゼ,DNAポリメラーゼ等の酵素により認識され伸長されることができるため,ヌクレアーゼに対して抵抗性を有するRNAまたはDNAを合成するためのモノマー単位として有用である。
別の観点においては,本発明は,式I:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
で表される4’−チオリボヌクレオチドを合成する方法を提供する。該方法は,式III:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基であり,R2およびR3はそれぞれ独立してヒドロキシル基の保護基である]
の化合物を,式IV:
の化合物と反応させ,得られた中間体をピロリン酸と反応させ,次にヨード酸化,加水分解および脱保護することを含む。
さらに別の観点においては,本発明は,式II:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
で表される4’−チオ−2’−デオキシヌクレオチドを合成する方法を提供する。該方法は,式V:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基であり,R2はヒドロキシル基の保護基である]
の化合物を,式IV:
の化合物と反応させ,得られた中間体をピロリン酸と反応させ,次にヨード酸化,加水分解および脱保護することを含む。
本発明のさらに別の観点においては,本発明は,式VI:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
のヌクレオチド単位を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドを製造する方法を提供する。該方法は,本発明の4’−チオリボヌクレオチドの存在下で,RNA合成酵素によりRNA鎖伸長反応を行うことを特徴とする。RNA合成酵素としては,RNAポリメラーゼが挙げられる。
本発明のさらに別の観点においては,本発明は,式VII:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
のヌクレオチド単位を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドを製造する方法であって,本発明の4’−チオ−2’−デオキシヌクレオチドの存在下で,DNA合成酵素によりDNA鎖伸長反応を行うことを特徴とする。DNA合成酵素としては,DNAポリメラーゼ,リバーストランスクリプターゼ,ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼが挙げられる。
本発明の方法により製造される,4’−チオリボヌクレオシドまたは4’−チオ−2’−デオキシリボヌクレオシドを含むRNAまたはDNAは,種々のヌクレアーゼに対して抵抗性を示すため,研究試薬および診断または治療用の薬剤として有用である。本発明にしたがえば,酵素を用いてオリゴヌクレオチドを合成することができるため,従来の化学合成方法と比較して,より長い鎖のオリゴヌクレオチドを簡便に製造することができる。また,本発明の方法により製造される,4’−チオリボヌクレオシドを含むRNAは,逆転写酵素により認識されるため,これをテンプレートとしてcDNAを合成することができ,したがって,インビトロセレクションにおいて用いるのにきわめて有用である。
図2は,実施例10に記載される4’−チオCTPの合成スキームを示す。
図3は,実施例11に記載される4’−チオATPの合成スキームを示す。
図4は,実施例12に記載される4’−チオGTPの合成スキームを示す。
図5は,実施例13に記載される4’−チオ−2’−デオキシUTPの合成スキームを示す。
図6は,実施例14に記載される4’−チオ−2’−デオキシCTP,4’−チオ−2’−デオキシATPおよび4’−チオ−2’−デオキシGTPの合成スキームを示す。
図7は,T7RNAポリメラーゼを用いる4’−チオUTPの取り込み実験の概要を示す。
図8は,T7RNAポリメラーゼを用いる4’−チオUTPの取り込み実験の結果を示す。
図9は,T7RNAポリメラーゼを用いる4’−チオUTPおよび4’−チオCTPの取り込み実験の概要を示す。
図10は,T7RNAポリメラーゼを用いる4’−チオUTPおよび4’−チオCTPの取り込み実験の結果を示す。
図11は,4’−チオUTPおよび4’−チオCTPを含有するRNAからの逆転写酵素によるcDNA合成実験の概要を示す。
図12は,4’−チオUTPおよび4’−チオCTPを含有するRNAからの逆転写酵素によるcDNA合成実験の結果を示す。
図13は,4’−チオUTPおよび4’−チオCTPを含有するRNAのRNase耐性を示す。
発明の詳細な説明
本発明のヌクレオシド三リン酸は,公知の4−チオ糖から出発して,糖に塩基を立体選択的に導入し,次に5’位に選択的にリン酸基を導入することにより製造することができる。
4’−チオウリジンは,4−チオ糖
の2,3および5位のヒドロキシル基を適切に保護し,プンメラー(Pummerer)反応を用いて塩基を立体選択的に導入することにより得ることができる。
[式中,R1,R2およびR3は,独立してヒドロキシル保護基であり,R1とR2,およびR2とR3は一緒になって二官能性のヒドロキシル保護基であってもよい]。
R3は,電子供与性の置換基をもつアシル保護基であるほど立体選択性が向上し,好ましくは2,4−ジメトキシベンゾイル基である。
プンメラー反応によって得られた18のウリジン誘導体は,フッ化アンモニウム,メチルアミンを用いて脱保護をおこない,19の4’−チオウリジンへと変換することができる。次に,19の4’−チオウリジンより4’−チオUTPを合成する(図1)。
19の化合物の5’位をモノメトキシトリチル化および2’,3’位をアセチル化して化合物20を得る。続いて脱モノメトキシトリチル化を行い,21のアセチル体を得る。得られた化合物21より,Ecksteinらの方法(Luding,J.and Eckstein,F.(1989)J.Org.Chem.,54,631−635)を応用して,24の4’−チオUTPを合成する。すなわち,サリチルホスホロクロリダイトを用いて22の中間体へと導き,ピロリン酸で処理して23のシクロトリホスファイト体へ誘導する。次にヨード酸化,加水分解および脱アセチル化を経て,目的物の4’−チオUTPを得ることができる。
28の4’−チオCTPは,25のN4−ベンゾイル−4’−チオシチジンから,上述の4’−チオUTPと同様の工程により製造することができる(図2)。
4’−チオITPは,4’−チオヒポキサンチンから,上述の4’−チオUTPと同様の工程により製造することができる。
4’−チオATPおよび4’−チオGTPは,図3および図4に記載されるスキームにより製造することができる。すなわち,2’,3’位のヒドロキシル基およびプリン環のアミノ基を適切に保護した後,4’−チオCTPの製造と同様に,Ecksteinらの方法(上述)にしたがってサリチルホスホロクロリダイトと反応させ,次にピロリン酸と反応させてシクロトリホスファイト中間体を得る。続いてヨード酸化,加水分解および脱保護を行うことにより,32の4’−チオATPおよび37の4’−チオGTPを得ることができる。
4’−チオ−2’−デオキシリボヌクレオシド三リン酸は,4’−チオリボヌクレオシド三リン酸と同様に製造することができる。出発物質としては4’−チオ−2’−デオキシリボヌクレオシドを用い,次に,サリチルホスホロクロリダイトと反応させ,得られた中間体をピロリン酸と反応させ,次にヨード酸化,加水分解および脱保護することにより,目的とする4’−チオ−2’−デオキシリボヌクレオシド三リン酸を得ることができる(図5,6)。
本発明の4’−チオヌクレオチド類は,ポリメラーゼを用いるDNAまたはRNAの合成反応の基質として用いることができる。本発明の4’−チオリボヌクレオチドがRNAポリメラーゼにより認識されることを確認するためには,適切なテンプレートの存在下でRNAポリメラーゼを作用させて,4’−チオリボヌクレオチドがオリゴマー中に取り込まれるか否かを調べる。実施例15および16に示されるように,本発明にしたがって合成した4’−チオヌクレオチドはT7RNAポリメラーゼにより認識され,天然のヌクレオチドと同様に合成オリゴマー鎖中に取り込まれることが見いだされた。
すなわち,本発明の別の観点においては,本発明は,4’−チオヌクレオチド類を用いるオリゴヌクレオチドの製造方法を提供する。オリゴヌクレオチドは,本発明の4’−チオヌクレオシド三リン酸の存在下で,RNAまたはDNA合成酵素RNAポリメラーゼ,DNAポリメラーゼ等の酵素によりオリゴヌクレオチド鎖を伸長させることにより製造することができる。RNA合成酵素としては,種々の生物に由来する各種のRNAポリメラーゼを用いることができ,DNA合成酵素としては種々の生物に由来するDNAポリメラーゼ,リバーストランスクリプターゼ,ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ等を用いることができる。伸長反応の条件は,用いるポリメラーゼにより様々であるが,当業者は適切な反応条件を選択することができる。反応においては,本発明の4’−チオヌクレオシド三リン酸に加えて,天然のヌクレオシド三リン酸または当該技術分野において知られる修飾ヌクレオシド三リン酸が存在していてもよい。
本発明の方法により得られるオリゴヌクレオチドは,アンチセンスオリゴヌクレオチド,リボザイム,プライマー,アプタマー,アンチジーン,RNAi,siRNA,プローブ等として,診断,治療および研究試薬として使用することができる。好ましくは,本発明のオリゴヌクレオチドは約6から約50ヌクレオチドの長さである。本発明のより好適な実施態様においては,オリゴヌクレオチドは約12から約20ヌクレオチドの長さである。オリゴヌクレオチドは,修飾された糖,例えば2’位に置換基を有する糖を含んでいてもよく,アデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシル以外の核酸,例えばヒポキサンチン,5−アルキルシチジン,5−アルキルウリジン,5−ハロウリジン,6−アザピリミジン,6−アルキルピリミジン等を含んでいてもよい。また,ホスホジエステル以外のヌクレオシド間結合,例えばホスホロチオエート結合を含んでいてもよい。
本発明のオリゴヌクレオチドは,ヌクレアーゼ耐性および熱安定性が高いため,インビトロおよびインビボにおいて使用するのに適しており,特に遺伝子治療において有用である。また,本発明の4’−チオリボヌクレオシドを含むRNAは逆転写酵素により認識されてcDNAが合成されるため,インビトロセレクションにおいて用いるのにきわめて有用である。
本明細書において明示的に引用される全ての特許および参考文献の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。また,本出願が有する優先権主張の基礎となる出願である日本特許出願2002−242259号の明細書および図面に記載の内容は全て本明細書の一部としてここに引用する。
実施例においては,次の略号を用いる
Bz ベンゾイル
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMBz ジメトキシベンゾイル
DMTr 4,4’−ジメトキシトリチル
MMTr 4−メトキシトリチル
Ms メタンスルホニル
Tf トリフルオロエタンスルホニル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TIPDS 1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル
TMS トリメチルシリル
Ts p−トルエンスルホニル
実施例1 2,3,5−トリ−O−p−メトキシベンジル−D−リビトール(3)の合成
D−リボース(60g,0.4mol)をアリルアルコール(1.8L,26.4mol)に溶解し,濃硫酸(6.4mL,0.12mol)を0℃にて加え,その後室温にてオーバーヘッドで撹拌した。次いで反応液に重曹を加えて中和し,反応液をセライト濾過した。得られたろ液を減圧下にて溶媒留去し減圧乾燥して,黄色油状の残渣を得た。続いて水素化ナトリウム(64g,1.6mol)のTHF(700mL)溶液に,0℃下にてDMF(300mL)に溶解した残渣を3時間かけてカニュレーションした。反応液を再び室温に戻し4時間撹拌した後,再度0℃下にて塩化パラメトキシベンジル(190mL,1.4mol)を10mL/15minの速度で滴下した。100mL滴下したところで室温に戻しH2の発生状況をみながら,慎重に滴下をつづけた。滴下終了後,室温にて撹拌し,13時間後水素化ナトリウム(4.0g,0.1mol)と塩化パラメトキシベンジル(30mL,0.22mol)を加えて24時間撹拌し,反応液を飽和塩化アンモニウム水溶液にて中和した。つづいて酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を水(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。ついで綿栓ろ過後に溶媒を留去し,得られた褐色の残渣を減圧乾燥後,クロロホルム(1.2L)に溶解し,酸素を封入した。そこに水(800mL)を加え塩化パラジウム(21.2g,0.12mol)を加え,50℃にてオーバーヘッドで撹拌した。9時間後に塩化パラジウム(7.0g,0.04mol)を加え,28時間後に反応液を室温に戻してセライトろ過し,濃縮した後酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を水(×2),飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。ついで綿栓ろ過後に溶媒を留去し得られた褐色の残渣を減圧乾燥した。残渣を乾燥後,メタノール(1.2L)に溶解し,アルゴン雰囲気下,0℃にて水素化ホウ素ナトリウム(30.3g,0.8mol)を加え20分撹拌後,室温に戻して撹拌した。1時間後,再び0℃にて水素化ホウ素ナトリウム(7.8g,0.2mol)を加え,次いで室温に戻して撹拌した。1.5時間後,反応液の溶媒を留去し,残渣をメタノールにて2回共沸し,残渣を酢酸エチルに溶解し水で分液した。有機層を水(×2),飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。ついで綿栓ろ過後に溶媒を留去し,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=5:1→1:1)により精製し,化合物3(162.4g,79%)を無色透明の油状物質として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:7.30−6.81(m,12H,Ar),4.66−4.40(m,6H,CH2),3.94−3.53(m,16H,H−1,2,3,4,5,MeO×3),2.71(br s,1H,4−OH),2.36(br s,1H,1−OH).
実施例2 1,4−アンヒドロ−2,3,5−トリ−O−p−メトキシベンジル−4−チオ−D−リビトー ル(5)の合成
アルゴン雰囲気下,化合物3(162g,0.32mol)のピリジン溶液(900mL)に0℃にて塩化メシル(122mL,1.6mol)を加え,同温度で30分撹拌した。次いで反応溶液に氷を加え20分撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×2),飽和食塩水(×1)にて洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去し,トルエンで3回共沸した。残渣を減圧乾燥した後,アルゴン雰囲気下MEK(1L)に溶解し,室温にて臭化リチウム(278g,3.2mol)を加えて加熱還流した。12時間後反応液を室温に戻し,酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を水(×2),飽和食塩水(×1)にて洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去し,得られた残渣を減圧乾燥した後,アルゴン雰囲気下DMF(1L)に溶解し,室温にて硫化ナトリウム・九水和物(92.2g,0.38mol)を加え100℃にて30分撹拌した。次いで反応溶液を室温に戻し,酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を水(×2),飽和食塩水(×1)にて洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去し,得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=10:1→1:1)で粗精製した後,ヘキサン,酢酸エチルより再結晶した。化合物5(69.1g,42%)を白色の結晶として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:7.26−6.81(m,12H,Ar),4.52−4.38(m,6H,CH2),4.01−3.95(m,1H,H−2),3.91(t,1H,H−3,J3,2=4.0,J3,4=4.0Hz),3.80(s,9H,MeO×3),3.66−3.60(m,1H,H−4),3.45−3.40(m,2H,H−5a,H−5b),3.02(dd,1H,H−1a,J1a,1b=10.6,J1a,2=6.5Hz),2.87(dd,1H,H−1b,J1b,1a=10.6,J1b,2,=5.2Hz).
実施例3 1,4−アンヒドロ−2−O−(4−メトキシベンゾイル)−3,5−O−(1,1,3,3−テトライ ソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−4−チオ−D−リビトール(13b)の合成
アルゴン雰囲気下化合物12(997mg,2.5mmol)のピリジン溶液(15mL)に0℃にて,塩化4−メトキシベンゾイル(723μL,5.1mmol)を加え,室温にて18.5時間撹拌した。反応液に氷を加え10分間撹拌した。次いで,酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去し,トルエンで3回共沸した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=50:1→35:1)で精製し,化合物13b(1.3g,96%)を無色油状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 527(MH+).
FAB−HLRS 計算値C25H42O6SSi2(MH+)527.2319.実測値527.2311.
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.95−6.61(m,4H,Ar),5.71−5.69(m,1H,H−2),4.35(dd,1H,H−3 J3,2=3.5,J3,4=9.4Hz),4.12(dd,1H,H−5a,J5a,4=2.9,J5a,5b=12.6Hz),3.98(dd,1H,H−5b,J5b,4=3.2,J5b,5a=12.6Hz),3.69(m,1H,H−4),3.24(dd,1H,H−1β,J1β,2=3.2,J1β,1α=12.6Hz),3.04(m,6H,Me2N),2.91(d,1H,H−1α,J1α,1β=12.6Hz),1.13−0.87(m,28H,TIPDS).
13C NMR(100MHz,CDCl3)δ:166.40,153.59,131.73,117.34,110.94,110.81,75.95,75.21,60.16,51.29,40.44,31.60,17.84,17.77,17.70,17.66,17.52,17.45,13.87,13.75,13.15,13.09.
実施例4 1,4−アンヒドロ−2−O−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−3,5−O−(1,1,3,3−テ トライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−4−チオ−D−リビトール(13c)の合成
アルゴン雰囲気下4−ジメチルアミノ安息香酸(1.1g,6.4mmol)の塩化メチレン溶液(40mL)に,塩化チオニル(933μL,12.8mmol)を加えて2時間加熱還流しながら撹拌し,室温に戻して減圧下溶媒を留去した。得られた残渣(533mg)をアルゴン雰囲気下化合物12(375mg,0.96mmol)のピリジン溶液(5mL)に0℃にて加え,室温にて8時間撹拌した。8時間後再び先の残渣を(355mg)を加え,21時間後ピリジン(5mL)を加えて50℃にて6時間加熱した。反応液に氷を加え10分間撹拌した。次いで,酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去し,トルエンで3回共沸した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=50:1→20:1)で精製し,化合物13c(476mg,92%)を無色油状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 540(MH+).
FAB−HLRS 計算値C26H45NO5SSi2(MH+)540.2635.実測値540.2637.
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:7.95−6.61(m,4H,Ar),5.71−5.69(m,1H,H−2),4.35(dd,1H,H−3 J3,2=3.5,J3,4=9.4Hz),4.12(dd,1H,H−5a,J5a,4=2.9,J5a,5b=12.6Hz),3.98(dd,1H,H−5b,J5b,4=3.5,J5b,5a=12.6Hz),3.69(m,1H,H−4),3.24(dd,1H,H−1β,J1β,2=3.2,J1β,1α=12.6Hz),3.04(m,6H,Me2N)2.91(d,1H,H−1α,J1α,1β=12.6Hz),1.13−0.87(m,28H,TIPDS).
13C NMR(100MHz,CDCl3)δ:166.40,153.59,131.73,117.34,110.94,110.81,75.95,75.21,60.16,50.03,40.44,31.60,17.84,17.77,17.71,17.67,17.52,17.45,13.87,13.75,13.15,13.09.
実施例5 1,4−アンヒドロ−2−O−(4−メトキシベンゾイル)−3,5−O−(1,1,3,3−テトライ ソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−4−チオ−D−リビトール−1−オキシド(14b)の合 成
化合物13b(1.1g,2.3mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)に−78℃にてオゾンガスを20分間バブリングした。反応液にオゾン臭が消えるまでアルゴンをバブリングした後,室温まで昇温した。減圧下溶媒を留去した後,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=4:1→1:3)で精製し,化合物14b(1.0g,82%)を無色あめ状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 543(MH+).
FAB−HLRS 計算値C25H42O7SSi2(MH+)543.2253.実測値543.2251.
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:8.06−6.90(m,4H,Ar),5.84−5.82(m,1H,H−2),4.61(d,1H,H−5a,J5a,5b=12.9Hz),4.23(dd,1H,H−5b,J5b,4=2.9,J5b,5a=12.9Hz),4.17(dd,1H,H−3 J3,2=3.5,J3,4=12.0Hz),3.86(s,3H,MeO),3.61(dd,1H,H−1β,J1β,2=5.3,J1β,1α=15.5Hz),3.48(dd,1H,H−4,J4,5b=2.1,J4,3=12.0Hz),2.93(d,1H,H−1α,J1α,1β=15.5Hz),1.09−0.87(m,28H,TIPDS).
13C NMR(100MHz,CDCl3)δ:165.42,163.84,132.20,122.24,113.96,73.31,73.15,68.48,55.79,55.75,54.59,17.72,17.64,17.58,17.54,17.53,17.49,17.31,17.30,13.81,13.51,13.02,13.00.
実施例6 1−[2−O−(4−メトキシトリチル)−3,5−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシ ロキサン−1,3−ジイル)−4−チオ−β−D−リボフラノシル]ウラシル(15b)
アルゴン雰囲気下,ウラシル(408mg)のトルエン懸濁液(20mL)に室温にてトリエチルアミン(1.0mL,7.3mmol),TMSOTf(2.6mL,14.6mmol)を加え,反応液が二層の溶液になるまで撹拌した。この反応溶液に塩化メチレン(10mL)を加え,一層の溶液とし,室温にてこの反応溶液を化合物14b(987mg,1.8mmol)の塩化メチレン溶液(20mL)に15分かけて滴下した。続いてトリエチルアミン(1.0mL,7.3mmol)のトルエン溶液(10mL)を室温にて5分かけて滴下した。反応溶液に氷を加え,10分間撹拌した後酢酸エチルで希釈し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=49:1→1:1)で精製し,化合物15b(904mg,77%)を白色泡状物質として得た。
FAB−LBMS m/z 637(MH+).
FAB−HLRS 計算値C29H44N2O8SSi2(MH+)637.2435.実測値637.2435.
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:9.28(br s,1H,NH),8.22(dd,1H,H−6,J6,5=8.2),8.02−6.94(m,4H,Ar),6.01(s,1H,H−1’),5.76(dd,1H,H−5,J5,6=8.2,J5.NH=2.1Hz),5.62(d,1H,H−2’.J2’,3’=3.5),4.45(dd,1H,H−3’J3’,2’=3.5,J3’,4’=9.4Hz),4.18−4.06(m,2H,H−5’a,H−5’b),3.87(s,3H,MeO),3.73−3.71(m,1H,H−4’),1.15−0.86(m,28H,TIPDS).
13C NMR(100MHz,CDCl3)δ:164.01,163.38,163.10,15013,140.653,131.79,121.73,113.53,102.19,102.17,78.06,71.24,62.54,57.92,55.40,55.39,50.69,17.47,17.36,17.34,17.27,16.99,16.96,16.83,16.79,13.34,13.18,13.10,13.48.
実施例7 1−[5−O−(4−メトキシトリチル)−2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラ ノシル]ウラシル(20)
アルゴン雰囲気下,1−(4−チオ−β−D−リボフラノシル)ウラシル(131mg,0.5mmol;化合物15をNH4F/MeOH,MeNH2/MeOHで脱保護することにより製造)のピリジン(4mL)溶液に塩化4−メトキシトリチル(232mg,0.75mmol)を加え,室温にて14時間撹拌した。アルゴン雰囲気下無水酢酸(188μL,2mmol),DMAP(5mg,0.05mmol)を加え室温にて2時間撹拌した。メタノールを加えて30分撹拌し,反応液を減圧下溶媒留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1→1:1)で精製し,化合物20(214mg,70%)を無色透明の固体として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.07(br s,1H,NH),7.77(d,1H,H−6,J6,5=7.9),7.47−6.85(m,14H,MMTr),6.37(d,1H,H−1’,J1’,2’=7.3),5.68(dd,1H,H−2’,J2’,1’=7.3,J2’,3’=4.0),5.54−5.51(m,1H,H−3’),5.62(dd,1H,H−5,J5,6=7.9,J5,NH=2.6Hz),3.81(s,3H,MeO),3.62−3.53(m,2H,H−5’a,H−4’),3.40−3.35(m,1H,H−5’b),2.12−2.00(m,6H,AcO×2).
実施例8 1−(2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル)ウラシル(21)
化合物20(199mg,0.32mmol)を80%酢酸水溶液に溶解し,室温にて11時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に滴下し,酢酸エチルで分液した。水層をクロロホルムで7回抽出し,有機層を飽和食塩水(×1)で洗浄し,Na2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1→AcOEt)で精製し,化合物21(93mg,84%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.23(br s,1H,NH),8.08(d,1H,H−6,J6,5=7.9),6.36(d,1H,H−1’,J1’,2’=7.3),5.85(m,1H,H−5),5.69(dd,1H,H−2’,J2’,1’=7.3,J2’,3’=4.0),5.49(m,1H,H−3’),4.16−4.04(m,1H,H−5’a),3.86−3.82(m,1H,H−5’b),3.56−3.55(m,1H,H−4’),2.42(br s,1H,OH),2.17(s,3H,AcO),2.06(s,3H,AcO)
実施例9 4’−チオウリジン5’−三リン酸(24)
化合物21(89mg,0.26mmol)をピリジン共沸し,ピリジン(260μL)に溶解した。アルゴン雰囲気下,ジオキサン(780μL)を加え,室温にて撹拌した。サリチルホスホロクロリダイト(58mg,2.9mmol)のジオキサン溶液を加えて10分撹拌した。0.5Mビスブチルアンモニウムピロリン酸のDMF溶液(780μL)を加え,ブチルアミン(260μL)を素早く加え10分攪拌した。ピリジン/水(98/2,v/v)中1%ヨウ素(5mL)を加え,5分攪拌した。5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液を数滴加え40分攪拌した。反応液にアンモニア水を(8mL)加え3.5時間攪拌し,減圧下溶媒留去した。残渣を水300mLに溶解し,イオン交換クロマトグラフィー(H2O→1N TEAB)にて精製したのち,塩交換カラム(H+型)にて精製し,減圧下溶媒留去した。残渣を水5mLに溶解し,塩交換カラム(Na+型)にて精製し,減圧下溶媒留去した。化合物24(80mg,55%)を薄黄色油状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C9H12N2Na3O14P3S(M+)563.8893.実測値563.8892
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−5.68(d,J=20Hz),−10.56(d,J=20Hz),−21.27(t,J=20Hz).
実施例10 4’−チオCTP(28)の合成(図2)
N4−ベンゾイル−1−[5−O−(4−メトキシトリチル)−2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル]シトシン(26)
アルゴン雰囲気下,化合物25(302mg,0.83mmol)のピリジン(10mL)溶液に塩化4−メトキシトリチル(383mg,1.2mmol)を加え,室温にて9時間撹拌した。アルゴン雰囲気下,無水酢酸(313μL,3.32mmol)を加え室温にて3時間撹拌した。メタノールを加えて5分撹拌し,反応液を減圧下溶媒留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1→AcOEt)で精製し,化合物26(579mg,97%)を白色の泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 720(MH+)
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:8.86(br s,1H,NH),8.32(d,1H,H−6,J6,5=7.6),7.89−7.88(m,2H,o−Bz),7.61−7.27(m,15H,MMTr,m−Bz,p−Bz,H−5),6.90−6.87(m,2H,MMTr),6.53(d,1H,H−1’,J1’,2’=6.2),5.70−5.68(m,1H,H−3’),5.17(m,1H,H−2’),3.82(s,3H,MeO),3.63−3.56(m,2H,H−5’a,H−4’),3.46−3.44(m,1H,H−5’b),2.08(s,3H,AcO),2.06(s,3H,AcO).
N4−ベンゾイル−1−(2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル)シトシン(27)
化合物26(420mg,058mmol)を80%酢酸水溶液に溶解し,室温にて24時間撹拌した。反応液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に滴下し,クロロホルムで分液した。水層をクロロホルムで3回抽出し,有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×1),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=1:1→AcOEt→アセトン:AcOEt=1:3)で精製し,化合物27(239mg,92%)を白色泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 448(MH+)
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:9.11(br s,1H,NH),8.75(d,1H,H−6,J6,5=7.6),7.86−7.84(m,2H,o−Bz),7.60−7.43(m,4H,H−5,m−Bz,p−Bz),6.45(d,1H,H−1’,J1’, 2’=6.7),5.83−5.80(m,1H,H−3’),5.58−5.68(m,1H,H−2’),4.45(br s,1H,OH),4.07−4.04(m,1H,H−5’a),3.90−3.86(m,1H,H−5’b),3.61−3.60(m,1H,H−4’),2.11(s,3H,AcO),2.01(s,3H,AcO)
4’−チオシチジン5’−三リン酸(28)
化合物24の合成と同様,化合物27(71mg,0.16mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(50mg,0.24mmol)と処理することにより,化合物28(68mg,75%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C9H12N3Na3O13P3S(M−H)+563.8893.実測値563.8892.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−6.28(d,J=20Hz),−10.49(d,J=20Hz),−21.24(t,J=20Hz).
実施例11 4’−チオATP(32)の合成(図3)
N6−ベンゾイル−9−[5−O−(4−メトキシトリチル)−2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル]アデニン(30)
アルゴン雰囲気下,化合物29(77mg,0.2mmol))のピリジン(2mL)溶液に塩化4−メトキシトリチル(92mg,0.3mmol)を加え,室温にて撹拌した。12時間後,さらに塩化4−メトキシトリチル(92mg,0.3mmol)を加え,室温にて撹拌した。24時間後,反応液に無水酢酸(94μL,1.0mmol)を加え室温にて12時間撹拌した。反応液に氷水を加えて5分撹拌した後,減圧下溶媒留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後,減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=1:2→AcOEt)で精製し,化合物30(100mg,68%)を無色のグラス状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 730(MH+).
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.99(br s,1H),8.74(s,1H),8.24(s,1H),8.02(m,2H),7.64−7.28(m,15H),6.86(m,2H),6.31(d,1H,J=7.3),6.02(m,1H),5.72(m,1H),3.80(s,3H),3.68(m,1H),3.55(m,2H),2.14 and 1.98(each s,each 3H).
N6−ベンゾイル−9−(2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル)アデニン(31)
アルゴン雰囲気下,化合物30(104mg,0.14mmol)の塩化メチレン(2mL)溶液に0℃下,トリフルオロ酢酸(20μL)を加えた後,室温に昇温し5時間撹拌した。反応液にトリエチルアミン(140μL)を加え減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:アセトン=0:1→1:2)で精製し,化合物31(53mg,79%)を白色泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 472(MH+).
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.98(br s,1H),8.81(s,1H),8.19(s,1H),8.00(m,2H),7.59−7.48(m,3H),6.28(m,1H),6.14(d,1H,J=7.3),5.69(m,1H),4.75(m,1H),4.09(m,1H),3.93(m,1H),3.66(m,1H),2.16 and 1.95(each s,each 3H).
4’−チオアデノシン5’−三リン酸(32)
化合物24の合成と同様,化合物31(53mg,0.11mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(25mg,0.12mmol)と処理することにより化合物32(45mg,68%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C10H13N5Na3O12P3S(MH+)589.9265.実測値589.9268.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−5.30(d,J=20Hz),−10.39(d,J=20Hz),−20.88(t,J=20Hz).
実施例12 4’−チオGTP(37)の合成(図4)
N2−(N,N’−ジブチルアミノメチレン)−9−(4−チオ−β−D−リボフラノシル)グアニン(34)
アルゴン雰囲気下,化合物33(106mg,0.46mmol)のDMF(3mL)溶液にN,N’−ジブチルホルムアミドジメチルアセタール(302μL,0,92mmol)を加え,室温にて3.5時間撹拌した。反応液を減圧下溶媒留去した後,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(20%MeOH in CHCl3)で精製し,化合物34(139mg,69%)を白色の固体として得た。
FAB−HRMS 計算値C19H30N6O4S(MH+)439.2153.実測値439.2156.
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:8.54(s,1H,N=CH),8.08(s,1H,H−8),5.74(d,1H,H−1’,J1’,2’=6.6),5.48(d,1H,2’−OH,J2’−OH’,2’=6.0),5.31(d,1H,3’−OH,J3’−OH’,3’=4.5),5.14(m,1H,5’−OH),4.60−4.55(m,1H,H−2’),4.19−4.17(m,1H,H−3’),3.80−3.55(m,2H,H−5’a,b),3.48−3.48(m,5H,H−4’,n−Bu),1.56−0.82(m,14H,n−Bu).
N2−(N,N’−ジブチルアミノメチレン)−9−[5−O−(4−メトキシトリチル)−2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル]グアニン(35)
アルゴン雰囲気下,化合物34(135mg,0.31mmol)のピリジン(4mL)溶液に塩化4−メトキシトリチル(143mg,0.47mmol)を加え,室温にて撹拌した。23時間後,さらに塩化4−メトキシトリチル(47mg,0.16mmol)を加え,室温にて撹拌した。71時間後,反応液に無水酢酸(117μL,1.24mmol)を加え室温にて3時間撹拌した。反応液にメタノールを加えて5分撹拌した後,減圧下溶媒留去した。
残渣を酢酸エチルに溶解し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後,減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=1:2→AcOEt)で精製し,化合物35(158mg,64%)を白色の泡状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C43H50N6O7S(MH+)795.3528.実測値795.3519.
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ:8.64(s,1H,N=CH),8.44(br s,1H,NH),8.00(s,1H,H−8),7.47−7.44(m,2H,o−Bz),7.35−7.21(m,14H,MMTr,m−Bz,p−Bz),6.86−6.83(m,2H,MMTr),6.08−6.05(m,1H,H−3’),5.87(d,1H,H−1’,J1’,2’=4.3),5.56−5.12(m,1H,H−2’),3.80(s,3H,MeO),3.77−3.70(m,1H,H−5’a),3.48−3.29(m,6H,H−4’,n−Bu,H−5’b),2.08(s,3H,AcO),2.01(s,3H,AcO),1.65−0.94(m,14H,n−Bu).
N2−(N,N’−ジブチルアミノメチレン)−9−(2,3−O−ジアセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル)グアニン(36)
アルゴン雰囲気下,化合物35(150mg,0.19mmol)の塩化メチレン(3ml)溶液に0℃下,トリフルオロ酢酸(30μL)を加えた後,室温に昇温し5時間撹拌した。次いで,反応液にトリエチルアミン(120μL)を加え減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(AcOEt:アセトン=3:1→1:1)で精製し,化合物36(93mg,92%)を白色泡状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C23H34N6O6S(MH+)523.2339.実測値523.2346.
1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ:8.60(s,1H,N=CH),8.07(s,1H,H−8),6.13−6.11(m,1H,H−2’),6.06(d,1H,H−1’,J1’,2’=6.2),5.69−5.67(m,1H,H−3’),5.43−5.41(m,1H,5’−OH),3.84−3.79(m,1H,H−5’a),3.74−3.66(m,1H,H−5’b),3.59−3.54(m,1H,H−4’),3.48−3.34(m,4H,n−Bu),2.08(s,3H,AcO),1.97(s,3H,AcO),1.61−0.89(m,14H,n−Bu).
4’−チオグアノシン5’−三リン酸(37)
化合物24の合成と同様,化合物36(52mg,0.1mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(20mg,0.15mmol)と処理することにより化合物37(25mg,41%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C10H14N5Na3O13P3S(MH+)605.9215.実測値605.9214.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−5.15(d,J=20Hz),−10.41(d,J=20Hz),−20.79(t,J=20Hz),
実施例13 4’−チオ−2’−デオキシUTP(45)の合成(図5)
1−[2−ブロモ−2−デオキシ−3,5−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−4−チオ−β−D−リボフラノシル]ウラシル(40)
化合物39(757mg,1.5mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液にジメチルアミノピリジン(733mg,6.0mmol),トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.5mL,3.0mmol)を加え,室温で10分撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。得られた残渣をトルエンで共沸した後,1,4−ジオキサン(15mL)に溶解した。その溶液に臭化リチウム(195mg,2.25mmol)と三フッ化ホウ素−ジエチルエーテルコンプレックス(285μL,2.25mmol)を加え,50℃で1.5時間加熱した。反応液に酢酸エチルを加え,水で分液した。有機層を飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1→1:1)で精製し,化合物40(561mg,66%)を白色の泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 566,568(MH+)
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.65(br s,1H),8.41(d,1H,J=8.6),5.99(s,1H),5.68(dd,1H,J=2.0 and 8.6),4.31(m,1H),4.14−3.98(m,3H),3.67(m,1H),1.57−0.92(m,28H).
1−[2−デオキシ−3,5−O−(1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン−1,3−ジイル)−4−チオ−β−D−リボフラノシル]ウラシル(41)
化合物40(519mg,0.92mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に水素化トリブチルスズ(371μL,1.38mmol)続いてV−70(57mg,0.18mmol)を加え室温で10分間撹拌した。溶媒を留去し,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=10:1→2:1)で精製し,化合物41(440mg,98%)を白色の泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 487(MH+)
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.62(br s,1H),8.28(d,1H,J=8.6),5.97(d,1H,J=6.6),5.68(dd,1H,J=2.0 and 8.6),4.37(m,1H),4.11(dd,1H,J=3.3 and 12.5),3.30(m,1H),2.45(m,1H),2.24(m,1H),1.61−0.94(m,28H).
1−(2−デオキシ−4−チオ−β−D−リボフラノシル)ウラシル(42)
化合物41(437mg,0.9mmol)のメタノール(20mL)溶液にフッ化アンモニウム(666mg,18mmol)を加え,70℃で加熱還流した。1時間後溶媒を留去し,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(MeOH in CHCl3=5%→25%)で精製し,化合物42(193mg,88%)を白色固体として得た。
FAB−LRMS m/z 245(MH+)
1H NMR(270MHz,DMSO−d6+D2O)δ:7.95(d,1H,J=7.9),6.22(dd,1H,J=7.4 and 8.0),5.65(d,1H,J=7.9),4.31(m,1H),3.54(m,1H),3.26(m,1H),2.13(m,2H).
1−[2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−3−O−アセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル]ウラシル(43)
アルゴン雰囲気下,化合物42(122mg,0.5mmol)のピリジン(3mL)溶液に塩化4,4’−ジメトキシトリチル(203mg,1.5mmol)を加え,室温にて12時間撹拌した。アルゴン雰囲気下,無水酢酸(141μL,3.32mmol)を加え室温にて1時間撹拌した。メタノールを加えて5分撹拌し,反応液を減圧下溶媒留去した。残渣を酢酸エチルに溶解し,水で分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×3),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=2:1→1:2)で精製し,化合物43(233mg,79%)を白色の泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 589(MH+)
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:8.24(br s,1H),7.65(d,1H,J=8.0),7.42−7.25(m,9H),6.83(m,4H),6.44(m,1H),5.41(m,2H),3.78(s,6H),3.59(m,1H),3.48(m,1H),3.29(m,1H),2.46(m,1H),2.11(m,1H),2.09(s,3H).
1−[2−デオキシ−3−O−アセチル−4−チオ−β−D−リボフラノシル]ウラシル(44)
化合物43(420mg,058mmol)ジクロロメタン溶液(2mL)にトリフルオロ酢酸(200μL)を加え,室温で撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(×2),飽和食塩水(×1)で洗浄しNa2SO4乾燥した。綿栓濾過後に減圧下溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:AcOEt=1:2→AcOEt)で精製し,化合物44(30mg,32%)を白色泡状物質として得た。
FAB−LRMS m/z 287(MH+)
1H NMR(270MHz,CDCl3)δ:9.25(br s,1H),8.07(d,1H,J=8.0),6.43(m,1H),5.79(d,1H,J=8.0),5.41(m,1H),3.98(m,1H),3.77(m,1H),3.57(m,1H),2.75(br s,1H),2.50(m,1H),2.35(m,1H),2.09(s,3H).
4’−チオ−2’−デオキシウリジン5’−三リン酸(45)
化合物24の合成と同様,化合物44(28mg,0.1mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(30mg,0.15mmol)と処理することにより化合物45(40mg,72%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C9H13N2Na3O13P3S(MH+)550.9044.実測値550.9023.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−6.51(d,J=20Hz),−10.42(d,J=20Hz),−21.08(t,J=20Hz).
実施例14 4’−チオ−2’−デオキシCTP(47),−ATP(49),および−GTP(51)の合成 (図6)
4’−チオ−2’−デオキシシチジン5’−三リン酸(47)
化合物24の合成と同様,化合物46(39mg,0.1mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(30mg,0.15mmol)と処理することにより化合物47(36mg,65%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C9H14N3Na3O12P3S(MH+)549.9204.実測値549.9219.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−6.18(d,J=20Hz),−10.37(d,J=20Hz),−21.21(t,J=20Hz).
4’−チオ−2’−デオキシアデノシン5’−三リン酸(49)
化合物24の合成と同様,化合物48(41mg,0.1mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(30mg,0.15mmol)と処理することにより化合物49(35mg,61%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C10H14N5Na3O11P3S(MH+)573.9316.実測値549.9237.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−5.54(d,J=20Hz),−10,54(d,J=20Hz),−20.64(t,J=20Hz).
4’−チオ−2’−デオキシグアノシン5’−三リン酸(51)
化合物24の合成と同様,化合物50(46mg,0.1mmol)をサリチルホスホロクロリダイト(30mg,0.15mmol)と処理することにより化合物51(32mg,55%)を白色の粉状物質として得た。
FAB−HRMS 計算値C10H14N5Na3O12P3S(MH+)589.9265.実測値589.9239.
31P−NMR(108MHz,D2O)δ:−5.30(d,J=20Hz),−10.68(d,J=20Hz),−20.60(t,J=20Hz).
実施例15 T7RNAポリメラーゼによる4’−チオUTPのRNA鎖への取り込み
実施例9で得られた4’−チオUTPを用いて,T7RNAポリメラーゼを用いた取り込み実験を行った。実験には,T7プロモーター配列を含む二本鎖DNAを用いた(図7)。ATP,GTP,CTP,UTPすべてのヌクレオチドが存在する場合,図に示される相補的な26merのRNAが合成されるはずである。
反応は,40mM Tris−HCl,PH8.0,8mM MgCl2 2mMスペルミジン,5mM DTT,0.4mM NTP,17nM[γ−32P]GTP,2.0μMテンプレートDNAおよび100UのT7 RNAポリメラーゼを含む20μL中で行った。NTPはそれぞれ,(1)GTP,(2)GTP+ATP,(3)GTP+ATP+CTP,(4)GTP+ATP+CTP+UTP,および(5)GTP+ATP+CTP+4’−チオUTPであった。上記の反応溶液を37℃で3時間インキュベーションし,反応を停止した。つづいて,20%変性ポリアクリルアミドゲル(30×40×0.05cm,1800V,1時間,1×TEB)にて電気泳動を行い,オートラジオグラフィーにて解析した。
結果を図8に示す。レーン1では,Gの2merと3merに対応するバンド,およびラダーが見られた。レーン2では予測された6merで鎖伸長の停止したバンドが観察され,さらに1残基伸長したバンドがわずかに見られた。レーン3では予測された9merで鎖伸長の停止したバンドが観察され,さらに1残基伸長したバンドがわずかに見られた。レーン4では全長産物である26merのバンドが観察された。UTPのかわりに4’−チオUTPを用いたレーン5では,レーン4とほぼ同程度の割合で全長産物のバンドが観察された。すなわち,4’−チオUTPも天然のUTPと同様にT7 RNAポリメラーゼにより基質として認識され,RNA鎖に取り込まれることが示された。
実施例16 T7RNAポリメラーゼによる4’−チオUTPおよび4’−チオCTPの RNA鎖への取り込み
4’−チオUTPおよび4’−チオCTPを用いて,T7 RNAポリメラーゼを用いた取込み実験を行った。実験には,T7プロモーター配列を含む47mer2本鎖DNAを用いた(図9)。ATP,GTP,CTP,UTPすべてのヌクレオチドが存在する場合,図に示される30merのRNAが合成されるはずである。
反応は,40mM Tris−HCl,pH8.0,8mM MgCl2,2mMスペルミジン,5mM DTT,0.4mM NTP,17nM[γ−32P]GTP,2.0μMテンプレートDNAおよび100UのT7 RNAポリメラーゼを含む20μL中で行った。NTPはそれぞれ1)ATP,GTP,CTP,UTP,2)UTPの代わりに4’−チオUTPを用いた系,3)CTPの代わりに4’−チオCTPを用いた系,4)UTPおよびCTPを4’−チオUTPおよび4’−チオCTPに置き換えた系であった。上記の反応溶液を37℃で3時間インキュベートし,反応を停止した。つづいて,20%変性ポリアクリルアミドゲル(30X40X0.05cm,1800V,1時間,1XTEB)にて電気泳動を行い,オートラジオグラフィーにて解析した。
UTPの代わりに4’−チオUTPを用いた系,CTPの代わりに4’−チオCTPを用いた系,両NTPを修飾NTPに置換した系のいずれにおいても,全長産物である30mer RNAが観察された。天然NTPを用いた場合の転写効率を100とした場合の相対効率を図10に示す。この結果から,4’−チオU丁Pおよび4’−チオCTPもT7 RNAポリメラーゼにより基質として認識され,RNA鎖に効率よく取り込まれることが示された。
実施例17 4’−チオUTPおよび4’−チオCTP含有RNA鎖からのcDNAの合成
実施例16において転写反応によって得られた4’−チオRNAをテンプレートとし,逆転写酵素を用いて,cDNAが得られるかについて検討した。本実験を行うためには,より鎖長の長いRNAが必要であり,図11に示す76mer2本鎖DNAをテンプレートとして用いた。まずGTP,ATP,4’−チオUTPおよび4’−チオCTP存在下,T7 RNAポリメラーゼによる転写反応を行った。反応は実施例16と同様の条件で行い,効率良く4’−チオRNAへと転写できた。得られた59merの4’−チオRNAをテンプレートとして逆転写酵素によるcDNAへの逆転写を行った。
反応は以下の方法で行った。5’末端をラジオラベルしたプライマー4μL(20pmol),59merRNA 6μL(20pmol),を混和後それぞれの溶液に以下のdNTPを加えた。
レーン1: プライマー
レーン2: 酵素なし
レーン3およびレーン7: dTTP
レーン4およびレーン8: dTTP,dTCP
レーン5およびレーン9: dTTP,dCTP,dATP
レーン2およびレーン6およびレーン10: dTTP,dCTP,dATP,dGTP
以上各々の反応溶液を70℃,15分インキュベートし,ただちに0℃にて1分以上インキュベートした。ついで上記の溶液に0.1M DTT 2μL,5Xファーストストランドバッファー(250mM Tris−HCl(PH8.3),375mM KCl,15mM MgCl2)4μL,RNase Out 1μL,SuperScriptTM II RNase−リバーストランスクリプターゼ(Invitrogen)1μLを加えた。ただし,レーン2のみはSuperScriptTM II RNase−リバーストランスクリプターゼのかわりに滅菌水1μLを加えた。上記の反応溶液を混和した後42℃にて50分間インキュベート後反応を停止し,12%変性ポリアクリルアミドゲル(30X30X0.05cm,1300V,1時間,1X TBE)にて電気泳動を行い,オートラジオグラフィーにて解析した。結果を図12に示す。
4’−チオRNAをテンプレートとした場合でも逆転写反応は進行し,天然RNAをテンプレートとした場合と遜色ない効率でcDNAへと逆転写できることが明かとなった。また得られたcDNAはシークエンシングを行い,これにより配列に誤りがないことを確認した。
実施例18 4’−チオUTPおよび4’−チオCTP含有RNA鎖のRNaseA耐性
実施例16で得られた59merの4’−チオRNAの酵素耐性の実験をRNase Aを用いて行った。
反応は10mM Tris−HCl(PH7.4),5mM EDTA(PH7.5),300mM NaCl,RNase A 0.25mM,天然型RNAあるいは4’−チオRNA 80pmolを含む30μL中で行った。上記の反応溶液を0℃にてインキュベートした。サンプリングは30秒,1分,3分,5分,10分,30分,60分,にて反応溶液4μLを,10M尿素,50mM EDTA,XC(0.1%),BPB(0.1%),を含むローディング溶液7μLと混和し反応を停止させた。つづいて,16%変性ポリアクリルアミドゲル(30X30X0.05cm,600V,1時間30分,1XTBE)にて電気泳動を行い,オートラジオオグラフィーにて解析した。結果を図13に示す。
天然型RNAが30秒で90%以上,酵素分解を受ける条件下,4’−チオRNAは高い抵抗性を示し,その半減期は12分であった。4’−チオRNAの1時間後の完全鎖長産物の残存量は,天然型RNAの30秒後の完全鎖長産物の残存量より多いことから,RNase Aに対して100倍以上安定であることが明らかとなった。
Claims (6)
- 式I:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
の化合物。 - 式II:
[式中,B’はアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
の化合物。 - 式I:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
の化合物を合成する方法であって,式III:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基であり,R2およびR3はそれぞれ独立してヒドロキシル基の保護基である]
の化合物を,式IV:
の化合物と反応させ,得られた中間体をピロリン酸と反応させ,次にヨード酸化,加水分解および脱保護することにより式Iの化合物を得ることを含む方法。 - 式II:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
の化合物を合成する方法であって,式V:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基であり,R2はヒドロキシル基の保護基である]
の化合物を,式IV:
の化合物と反応させ,得られた中間体をピロリン酸と反応させ,次にヨード酸化,加水分解および脱保護することにより式Vの化合物を得ることを含む方法。 - 式VI:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
のヌクレオチド単位を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドを製造する方法であって,請求項1の化合物または請求項3に記載の方法により製造される化合物の存在下で,RNA合成酵素によりRNA鎖伸長反応を行うことを特徴とする方法。 - 式VII:
[式中,Bはアデニン,グアニン,シトシン,チミン,ウラシルおよびヒポキサンチンからなる群より選択される核酸塩基である]
のヌクレオチド単位を少なくとも1つ含むオリゴヌクレオチドを製造する方法であって,請求項2の化合物または請求項4記載の方法により製造される化合物の存在下で,DNA合成酵素によりDNA鎖伸長反応を行うことを特徴とする方法。
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