JPWO2003071451A1 - 衝撃吸収体の変形挙動解析システム及び設計システム - Google Patents
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Abstract
本発明は、織り物や編み物の歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現出来、織り物や編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来る織り物や編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、更にはそれにより設計された織り物や編み物、更にはそれを用いた衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、並びにそれにより設計された衝撃吸収体を提供することを可能にすることを目的としている。そして、その構成は、織り物や編み物に使用される材料の応力歪み関係が、で表されるように構成したことを特徴とする。
Description
技術分野
本発明は、衝突時の乗員保護等を目的としてエアバッグ等の衝撃吸収体に利用される織り物(縦糸と横糸が直角に交わり、隣の糸と密着して平面的に連なり空間がない織地)または編み物(1本或いは数本の糸がループを作り、そのループに次の糸を引っ掛けて新しいループを作ることを連続して作った編地)の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、更にはそれにより設計された織り物または編み物、更にそれを利用した衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、更にはそれにより設計された衝撃吸収体に関するものである。
この出願は、日本国への出願日が2002年2月20日の特願2002−42866の外国特許出願の外国優先権利益を主張するものである。
背景技術
従来、衝突時の乗員保護等に利用されるエアバッグの変形挙動を解析する方法としては、エアバッグに使用される基布材料の応力歪み関係を経緯2方向の直交する2方向に対して該2方向の応力歪み関係を直線でモデル化した直交異方性線形弾性材料モデル(以下、「従来例1」という)、エアバッグに使用される基布材料の応力歪み関係を経緯2方向の直交する2方向に対して該2方向の応力歪み関係を直線でモデル化し、その後の応力歪み関係を直線後曲線でモデル化した直交異方性弾塑性材料モデル(以下、「従来例2」という)、エアバッグに使用される基布材料の応力歪み関係を経緯2方向の直交する2方向に対して該2方向の応力歪み関係を直線でモデル化し、その後の応力歪み関係を直線後曲線でモデル化し、最初の直線として示される弾性係数以降の応力歪み関係を歪み速度の依存性を考慮してモデル化した直交異方性弾塑性歪み速度依存材料モデル(以下、「従来例3」という)、歪み速度依存を示す項が歪みの乗数で定義された材料モデルを使用した解析モデル(以下、「従来例4」という)等を用いてエアバッグの変形挙動を解析するのが一般である。
また、ヒステリシスロスの大きい高減衰の3次元ネットをカーシートに適用したものも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1
特開2001−87077号公報
しかしながら、エアバッグ基布は平織りの織り物であり、荷重が負荷されると、先ずクリンプ(縦糸と横糸とが重なる部位の弛み)が伸ばされた後、繊維に荷重が負荷されるため非線形の挙動をとるが、前述の従来例1では線形弾性材料モデルであるためエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来ないという問題がある。
また、エアバッグに荷重が負荷され、クリンプが伸ばされるとき、そのクリンプの伸びは歪み速度(荷重の増加速度)に依存するが、前述の従来例1、2、3では何れも歪み速度の小さい領域からの解析を考慮していないためエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来ないという問題がある。
また、織り物は固体と比べてルーズな(よく伸びる)材料であるため、歪み速度の変化に敏感であり、前述の従来例4のように歪み速度依存を示す項が歪みの乗数で定義された解析モデルだけでは歪み速度の依存性を顕著に表現出来る材料構成則とは言えなかった。
また、前記特許文献1の3次元ネットを有するシートの設計でも、エアバッグで過去行われていた上記従来例1〜4の応力歪み関係を用いるのが一般であったため、引っ張り力を受けた際に織り物のクリンプや編み物のループにより基地の糸にずれが生じる等の理由から自動車衝突時にダミーに生じる加速度や荷重をシミュレーションにより正確に求めることが出来なかった。
発明の開示
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、織り物または編み物の歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現出来、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、更にはそれにより設計された織り物または編み物、更にはそれを用いた衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、更にはそれにより設計された衝撃吸収体を提供せんとするものである。
前記目的を達成するための本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムは、目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪を入力する第1の入力手段と、目的の用途に応じて想定される最低歪み速度及び最高歪み速度を入力する第2の入力手段と、特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数を入力する第3の入力手段と、前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ定数を入力する第4の入力手段と、前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数を入力する第5の入力手段と、前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存しない非弾性特性定数を入力する第6の入力手段と、前記第2の入力手段により入力された最低歪み速度及び最高歪み速度から比歪み速度定数を演算する第1の演算手段と、前記第1の演算手段により演算された比歪み速度定数を記憶する第1の記憶手段と、前記第3の入力手段により入力された繊維の太さ定数と、前記第4の入力手段により入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ定数と、前記第1の記憶手段に記憶された比歪み速度定数とから弾性定数を演算する第2の演算手段と、前記第2の演算手段により演算された弾性定数を記憶する第2の記憶手段と、前記第5の入力手段により入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数と、前記第6の入力手段により入力された歪み速度に依存しない非弾性特性定数と、前記第1の記憶手段に記憶された比歪み速度定数とから非線形定数を演算する第3の演算手段と、前記第3の演算手段により演算された非線形定数を記憶する第3の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された弾性定数と、前記第3の記憶手段に記憶された非線形定数とから、目的の用途に応じて想定される特定の織り物または編み物の応力を演算する第4の演算手段とを有することを特徴とする。
本発明は上述の如く構成したので、第1の入力手段により入力された最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪みに基づいて目的の用途に応じて想定される「歪み−応力曲線」を作成することが出来る。また、第2の入力手段により入力された最低歪み速度と最高歪み速度とによって目的の用途に応じて想定される「歪み−応力曲線」の範囲領域を作成することが出来る。
また、第1〜第6の入力手段により入力された繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、歪み速度に依存しない非弾性特性定数により材料情報を特定することが出来る。
また、第2の演算手段により、繊維の太さ定数Aと、歪み速度に依存するクリンプ解れ
更に第3の演算手段により、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数Cと、歪み速度に依存しない非弾性特性定数nと、第1の演算手段により求めた比歪み速度定数
る。
これにより、目的の用途に応じてある荷重が与えられたときの織り物または編み物に生じる応答値を予測することが出来、これにより織り物または編み物の変形挙動を解析することが出来る。
即ち、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムによれば、特定の織り物または編み物の繊維の太さと、歪み速度に依存するクリンプの解れる度合いが同定されていれば、織り物または編み物の歪み速度に依存する弾性特性を、織り物または編み物を製造する前の段階で容易に予測推定出来る。
更に、歪み速度に依存するクリンプの解れ後の非弾性特性の度合いと、歪み速度に依存しない非弾性特性の度合いが同定されていれば、織り物または編み物の歪み速度に依存する弾性特性に加えて非弾性特性、即ち、織り物または編み物の破断近くの特性までも、織り物または編み物を製造する前の段階で予測推定出来ることから、当該織り物または編み物を製造する前段階で、適用が予定される構造物に対し、適切な織り物または編み物を短期間で提供することが可能となる。
また、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムにおいて、特定の織り物または編み物の目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み、最低歪み速度及び最高歪み速度を有する基準材料の応力と、前記第4の演算手段により演算された特定の織り物または編み物の応力とを比較する比較手段と、該比較手段により比較された前記基準材料の応力と、前記特定の織り物または編み物の応力との差異が所定の許容範囲を超えた場合に、前記特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更する変更手段とを有する場合には、比較手段によって、解析する特定の織り物または編み物を予め最適化された基準材料と比較することが出来、更にその比較した応力の差異が予め設定された許容範囲を超えた場合に変更手段によって特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更することで、特定の織り物または編み物を目的の用途に応じて最適化設計出来る。許容範囲としては、比較した応力の差異が例えば、±5%以内の範囲に収まれば良好とすることが出来る。
また、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムにおいて、前記第4の演算手段により演算された応力と、前記第1の入力手段により入力された歪みとの関係を表示する表示手段を有する場合には、該表示手段により解析結果を目視することが出来、織り物または編み物の変形挙動の良否を容易に評価することが出来る。
また、本発明に係る衝撃吸収体の設計システムは、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して衝撃吸収体を設計する衝撃吸収体の設計システムであって、織り物または編み物の材料情報を入力する材料情報入力手段と、前記織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報を入力する用途条件情報入力手段と、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、前記解析モデル作成手段により作成された解析モデルに関して前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行する解析実行手段と、前記解析実行手段により実行された変形挙動解析結果を評価して判別する評価判別手段と、前記評価判別手段により不良と判別された場合に前記解析モデルの設計を変更する設計変更手段とを有することを特徴とする。
上記衝撃吸収体の設計システムによれば、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、解析モデル作成手段によりその織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成することが出来る。
そして、その作成した解析モデルに関して、解析実行手段により前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行することが出来る。解析実行手段により実行された変形挙動解析結果は、予め評価基準が設定された評価判別手段により評価して判別され、該評価判別手段により不良と判別された場合には設計変更手段により、先に作成した解析モデルの設計を変更し、その変更した新たな解析モデルに関して、解析、設計変更を繰り返して予め設定された評価基準に適合する衝撃吸収体を設計することが出来る。
また、本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの他の構成は、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して衝撃吸収体を設計する衝撃吸収体の設計システムであって、織り物または編み物の材料情報を入力する材料情報入力手段と、前記織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報を入力する用途条件情報入力手段と、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、前記解析モデル作成手段により作成された解析モデルに関して、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行する解析実行手段と、前記解析実行手段により実行された変形挙動解析結果が前記用途条件情報入力手段により入力された制約条件に一致するか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により不一致と判別された場合に、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報、及び/または前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報を変更する設計変更手段とを有することを特徴とする。
上記衝撃吸収体の設計システムによれば、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、解析モデル作成手段によりその織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成することが出来る。
そして、その作成した解析モデルに関して、解析実行手段により前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行することが出来る。解析実行手段により実行された変形挙動解析結果は、判別手段により、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報に含まれる制約条件に一致するか否かが判別され、該判別手段により不一致と判別された場合には設計変更手段により、材料情報や用途条件情報を変更して先に作成した解析モデルの設計を変更し、その変更した新たな解析モデルに関して、解析、設計変更を繰り返して予め設定された制約条件に適合する衝撃吸収体を設計することが出来る。
また、前記用途条件情報入力手段により入力される用途条件情報が、エアバッグの形状情報、エアバッグを膨張させるインフレータ情報、折り畳まれた布同士の膨らむ際の接触を定義する境界条件情報、エアバッグ展開時の内圧や減速度等の制約条件を定義する制約情報を含む場合には、衝撃吸収体の一例としてエアバッグの設計を行うことが出来る。
また、前記目的を達成するための本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法は、織り物または編み物の変形挙動を解析する方法であって、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が、
で表されることを特徴とする。
本発明は、上述の如く構成したので、織り物または編み物に作用する応力を、該織り物または編み物に生じる歪み速度の関数に、該歪み速度の関数の累乗を含む応力歪み関係式で表したことで、織り物または編み物に作用する応力として歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現出来、これにより、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開時に該エアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来る。
上記▲1▼式の具体例としては、以下の▲2▼式に示される応力歪み関係式が最適である。尚、以下の▲2▼式において、「A」は織り物または編み物に使用される材料(繊維)の太さと織り密度或いは編み密度により主に定義される定数(尚、A>0)であり、「B」は歪み速度に依存する織り物のクリンプ(縦糸と横糸とが重なる部位の弛み)や編み物のループのほぐれを定義する定数であり、「C」は歪み速度に依存するクリンプやループのほぐれ後の塑性限界を超えた時の非線形挙動を定義する定数であり、「n」は歪み速度に依存しない塑性限界を超えた時の非線形挙動を定義する定数(尚、n>1)である。また、▲2▼式中の「ln」は自然対数である。
尚、「B」,「C」は以下の範囲を満たすように設定される。
上記▲2▼式に関し、材料実験を行なうことは解析シミュレーションにおいて最低限必要である。上記▲2▼式に示された定数A,B,C,nは、解析する織り物または編み物に使用される材料実験データに基づいて適宜設定される。実験によりアナログデータが求められるが解析シミュレーションではアナログデータは使用出来ないため何らかの式に置き換え、離散データとして入力する。
尚、衝撃吸収体の一例となるエアバッグに使用される基布材料の材料実験データが無い場合は、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開実験データから得られる展開時間と内圧変化、展開時間と体積変化等から、定数A,B,C,nを適当な数値範囲で最低9回の解析シミュレーションにより設定することも出来る。
また、本発明に係る織り物または編み物は、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムの変更手段により繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更して最適設計されたことを特徴とする。
これにより、目的の用途に応じた織り物または編み物が容易に設計出来る。
また、前述の衝撃吸収体の設計システム、或いは衝撃吸収体の設計方法を利用してエアバッグ等の目的の用途に応じた衝撃吸収体を設計することが出来る。
例えば、エアバッグ等の目的の用途に応じた衝撃吸収体の解析モデルを作成し、前述の織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムを利用して該衝撃吸収体の解析モデルの変形挙動を解析し、その解析結果から先の衝撃吸収体の解析モデルを変更し、その変更した衝撃吸収体の解析モデルについて再度、前述の織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムを利用して該衝撃吸収体の解析モデルの変形挙動解析を行なって衝撃吸収体を設計することで最終的に最適な衝撃吸収体の設計が出来る。
このように設計される衝撃吸収体は、エアバッグ、車両用シート、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子、遊戯用シート、椅子、ベッド、ソファー、マットレス、クッション、枕、スリッパ、サポータ、アンダーウエア等の各種の物品に適用することで、目的に応じて効果的に衝撃を吸収することが出来る。
また、衝撃吸収体が編み物で構成される場合には三次元構造の編み物を適用することが出来る。
本発明は、上述の如き構成と作用とを有するので、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が、低歪み(小さな変形)領域から高歪み(大きな変形)領域に亘ってモデル化されているため、衝撃吸収体を構成する織り物または編み物の性能を数値解析により、膨張初期や膨張途中で変形の小さい低歪み領域から、膨張した後の変形の大きい高歪み領域まで幅広い範囲で変形挙動解析を精度良く評価することが可能である。
また、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が低歪み領域からモデル化されているため、織り物または編み物で構成された衝撃吸収体の一例としてエアバッグ等に使用される場合には衝突時の乗員保護に対して、乗員が規定の位置に位置していない場合、特にエアバッグ装置の近くに位置している場合に乗員に対するエアバッグによる影響を正確に評価することが可能である。その結果、乗員の安全性に関し、従来以上のきめ細かな設計が可能である。
また、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が歪み速度を考慮してモデル化されていることから、自動車に限らず、各種移動体の衝突安全や各種の衝撃吸収体としても適用可能である。
また、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係がパラメータで表現されているため、逆解析により、使用目的に最適な基布の材料の応力歪み特性を容易に求めることが可能である。
発明を実施するための最良の形態
図により本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、及びそれを利用した衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、更にはそれにより設計された織り物または編み物、並びに衝撃吸収体の一実施形態を具体的に説明する。
本発明者等は織り物または編み物の歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現することを目的として、鋭意、実験と研究を積み重ねることにより本発明を完成させたものであり、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例として、展開時のエアバッグに要求される減速度等の物理量が明確な場合には、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式で表された材料構成則から要求される性能に合致する材料モデルを求めることによりエアバッグに最適な基布製造の指針を示すことが出来、最適なエアバッグの設計が出来るものである。
即ち、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法は、織り物または編み物の基布の材料モデルを定義するもので、前述の▲2▼式で示す応力歪み関係式からなる材料構成則を用いることで、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例として衝突時の乗員保護等に利用されるエアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来るものである。
本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式で表された材料構成則は、例えば、アメリカ合衆国法律FMVSS208に対応して同国のNHTSA−National Traffic Safety Administrationで規格化されたFMVSS208−Federal Motor Vehicle Safety Standard 208の「衝突時の乗員保護」に規定されたようにエアバッグの設計時に必要とされる基布の材料モデルを定義するものであり、この材料構成則を用いることで、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来るものである。
図1は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動を解析するシステムを含む衝撃吸収体の設計システムの一実施形態の構成を示すものである。図1において、解析・設計センター3には、制御部であって各種の演算手段、材料情報や用途条件情報を変更したり解析モデルの設計を変更する設計変更手段、基準材料の応力と解析モデルの応力とを比較する比較手段、解析実行手段となる数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果を評価して判別する評価判別手段、解析実行手段となる数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果が制約条件に一致するか否かを判別する判別手段等を兼ねるCPU(中央演算処理装置)4、記憶手段となるメモリ5、通信手段となるサーバ装置6、変形挙動解析を実行する解析実行手段となるRADIOSS、ESIグループのRAM、LSのDYNA、MSCのDYTRAN、TNOのMADYMO等の市販の数値解析装置7、織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段となるCAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)システム等の3次元形状作成装置8が設けられている。
また、CPU4には記憶手段となる材料情報データベース(以下、「材料情報DB」という)9、形状情報データベース(以下、「形状情報DB」という)10、インフレータ情報データベース(以下、「インフレータ情報DB」という)11、境界条件情報データベース(以下、「境界条件情報DB」という)12、制約条件情報データベース(以下、「制約条件情報DB」という)13、基準材料情報データベース(以下、「基準材料情報DB」という)14が接続されている。
ここで、形状情報DB10、インフレータ情報DB11、境界条件情報DB12、制約条件情報DB13及び基準材料情報DB14は、織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報データベースであり、本実施形態では、衝撃吸収体の一例としてエアバッグに関する条件情報データベースとして構成されている。
材料情報DB9には、織り物または編み物の材料情報として、各種の織り物または編み物の繊維の太さ定数A、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数B、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数C、歪み速度に依存しない非弾性特性定数n、最高歪み速
また、形状情報DB10には、図6に示すような各種エアバッグの形状情報として、展開した状態の形状データや折り畳み方の形状データ等が格納されており、インフレータ情報DB11にはエアバッグを膨張させる各種インフレータ(ガス発生装置)の出力特性情報等が格納されている。
また、境界条件情報DB12には、折り畳まれた布同士の膨らむ際のぶつかり(接触)を定義する境界条件情報が格納されており、制約条件情報DB13には、エアバッグ展開時の内圧や人体等に当たる減速度等の制約条件を定義する制約情報が格納されている。
基準材料情報DB14は、試験センター15に設けられた引張試験装置16により実験等により得られた各種の織り物または編み物の引張試験により測定された最小歪み、最大歪み、
れている。
試験センター15と解析・設計センター3との間は、通信網となるインターネット17を介してオンラインで接続されており、試験センター15で測定された基準材料情報は解析・設計センター3の基準材料情報DB14に自動的に入力或いは更新出来るように構成されている。尚、図1の破線矢印で示すように、インターネット17を介さないでオフラインで入力することも可能なようになっている。
本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システム及びこれを備えた衝撃吸収体の設計システムを利用して、特定の織り物または編み物の変形挙動解析したり、目的の用途に応じた衝撃吸収体を設計する解析・設計者18は、パーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)19を利用してインターネット17を介して解析・設計センター3にアクセスする。
図4は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより織り物または編み物の変形挙動を解析する様子を示すフローチャートである。解析・設計者18は、パソコン19を利用して解析・設計センター3のサーバ装置6によりインターネット17上に提供されるウエブサイト(ホームページ)にアクセスし、図示しない入力画面上で、入力手段となるパソコン19のキーボード及びマウスを利用して、先ず、図4のステップS21において、目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪みの値を入力する。
太さ定数Aを入力し、ステップS24において、特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ定数Bを入力する。
そして、ステップS25において、歪み速度に依存する弾性特性を求める。先ず、前記ス
において入力された繊維の太さ定数A及び歪み速度に依存するクリンプ解れ定数Bに基づ
次にステップS26において、特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数Cを入力し、ステップS27において、特定の織り物または編み物の歪み速度に依存しない非弾性特性定数nを入力する。
そして、ステップS28において、歪み速度に依存する非弾性特性を求める。先ず、前記
更に、前記ステップS26,S27において入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数C及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数nに基づいて、演算手段とな
前述した▲2▼式の右辺第2項に相当する。
そして、ステップS29において、歪み速度に依存する織り物または編み物の応力σを求める。先ず、前記ステップS25においてメモリ5に一時記憶された弾性定数{A(1−
り、目的の用途に応じて想定される特定の織り物または編み物の応力σ〔={A(1−B×
次に、ステップS30において、CPU4は基準材料情報DB14に格納された、その特定の織り物または編み物の目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み、最高歪み
そして、ステップS31において、比較手段を兼ねるCPU4は、ステップS29で求めた特定の織り物または編み物の応力σと、ステップS30で読み出した基準材料の応力σsとを比較し、特定の織り物または編み物の応力σと、基準材料の応力σsとの差異が、例えば±5%以内に収まれば、許容範囲内と判断して、変形挙動解析を終了する。
前記ステップS31において、特定の織り物または編み物の応力σと、基準材料の応力σsとの差異が±5%を超えた場合には、ステップS23,S24,S26,S27に戻り、変更手段を兼ねるパソコン19のキーボード及びマウス等により図示しない入力画面上で、再度、繊維の太さ定数A、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数B、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数C及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数nを適宜変更して再入力し、解析実行手段となるCPU4は、図4のステップS23〜ステップS31を繰り返して変形挙動を解析する。
尚、本実施形態では、許容範囲内と判断する閾値を、特定の織り物または編み物の応力σと、基準材料の応力σsとの差異が±5%を超えた場合を例にして説明したが、これに限定される必要はなく、用途に応じて適宜所定の閾値を設定することが出来る。
図5は表示手段となるパソコン19のディスプレイ上に、ステップS21で入力された歪みεと、ステップS29で求められた特定の織り物または編み物の応力σとの関係を表示した一例である。図5において、曲線aは最大歪み、曲線bは最小歪みを夫々示しており、両曲線a,bで挟まれる領域の間で、適宜、曲線c,dのような歪みが選択される。
このように、図4に示す織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して、特定の用途に応じた織り物や編み物を最適設計することが出来る。
図2は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態の構成を示すフローチャートである。図1に示す材料情報DB9に格納された材料情報は、CPU4によって図示しない入力・選択画面に表示され、材料情報入力手段となるパソコン19のキーボードやマウス等を利用して目的の用途に応じて想定される織り物または編み物の材料データを入力、或いは表示された選択肢から選択する。
また、形状情報DB10、インフレータ情報DB11、境界条件情報DB12等の用途条件情報DBに格納された各種の用途条件情報は、CPU4によって図示しない入力・選択画面に表示され、用途条件情報入力手段となるパソコン19のキーボードやマウス等を利用して特定の用途に応じて、エアバッグの形状データ、インフレータ出力特性データ、境界条件データ、制約条件データ等を入力、或いは表示された選択肢から選択する。
そして、図2のステップS1において、解析モデル作成手段となるCAD等の3次元形状作成装置8により、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用したエアバッグの解析モデル(図6(a)参照)を作成する。
エアバッグの解析モデルは、織り物または編み物からなるエアバッグに使用する材料の材料モデルデータと、エアバッグの形状データと、図7に示すようなインフレータ(ガス発生装置)の情報、更には折り畳まれた布同士の膨らむ際のぶつかり(接触)を定義する境界条件等を考慮して作成される。
次にステップS2において、解析実行手段となるRADIOSS等の市販の数値解析装置7により、3次元形状作成装置8により作成された解析モデルに関して、図4に示した前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して、その織り物または編み物により設計されたエアバッグの変形挙動解析を実行する。
即ち、▲2▼式に示して前述した本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式を用いて、織り物または編み物により設計されたエアバッグの変形挙動解析を実行する。
▲2▼式に示して前述した応力歪み関係式は、FORTRAN等の一般のコンピュータプログラム言語を用いて離散点としてプログラム化し、Mecalog社製のRADIOSSやESI社製のPAMやLS社製のLS−DYNA等の市販の衝突解析アプリケーションソフトに容易に組み込むことが出来る。組み込む方法はサブルーチン等を使用することが出来、組み込み完了後にエアバッグの展開解析を行う。
本実施形態では、▲2▼式の定数A,B,C,nを固定とし、ステップS3において、図6(b)に示すような解析結果が得られる。
そして、ステップS4において、評価判別手段を兼ねるCPU4により数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果を評価し、評価結果が良好であれば設計終了とする。また、評価結果が不良であれば、前記ステップS1に戻り、ステップS3での評価結果に応じて、設計変更手段を兼ねるCPU4により、エアバッグの形状データやインフレータ出力特性データを変更してエアバッグの解析モデルの設計を変更し、再度、▲2▼式に示して前述した応力歪み関係式(定数A,B,C,nは固定)を用いて新たなエアバッグの解析モデルの変形挙動を解析し(ステップS2)、その解析結果を評価する(ステップS3、S4)。
エアバッグの解析モデルの設計を変更するに際しては、例えば、目的の設計条件に合致するようにエアバッグの形状やインフレータの出力等を変更し、目的の設計条件になるまでステップS1〜ステップS4を繰り返してエアバッグの設計を行なう。
図3は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態の構成を示すフローチャートであり、図3においてステップS11〜ステップS13は、図2に示した第1実施形態のステップS1〜ステップS3と略同様である。
本実施形態では、ステップS11のエアバッグの解析モデルの作成に際して材料モデル、形状データ、インフレータ情報、境界条件に加えてエアバッグの内圧や人体等に当たる減速度等の制約条件が目的関数として設定され、形状情報DB10、インフレータ情報DB11、境界条件情報DB12、制約条件情報DB13等の用途条件情報DBに格納された各種の用途条件情報は、CPU4によって図示しない入力・選択画面に表示され、用途条件情報入力手段となるパソコン19のキーボードやマウス等を利用して特定の用途に応じて、エアバッグの形状データ、インフレータ出力特性データ、境界条件データ、制約条件データ等を入力、或いは表示された選択肢から選択する。
ステップS12において、▲2▼式に示して前述した本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式を用いて、前述の第1実施形態と同様に、数値解析装置7により織り物または編み物により設計されるエアバッグの解析モデルの変形挙動の解析を実行する。
▲2▼式に示す応力歪み関係式の定数A,B,C,nは、先ず、初期設定値を用いてエアバッグの解析モデルの変形挙動の解析を行ない、ステップS13において解析結果を評価した後、ステップS14において、判別手段を兼ねるCPU4により、数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果が用途条件情報入力手段により入力された制約条件に一致するか否かを判別し、その解析結果と、ステップS11で解析モデルの作成に際して予め設定された制約条件とが一致すれば設計終了とする。
また、前記ステップS14において、その解析結果と、ステップS11で解析モデルの作成に際して予め設定された制約条件とが一致しなければ、ステップS15に進み、設計変更手段を兼ねるCPU4により、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報や用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報を変更する。
即ち、設計変数としてエアバッグの形状や折り畳み方等の形状、インフレータの出力特性を変更すると共に、▲2▼式に示す応力歪み関係式の材料定数A,B,C,nを適宜変更して前記ステップS11に戻り、該ステップS11でエアバッグの解析モデルの設計を変更して、再度、▲2▼式に示して前述した新たな応力歪み関係式を用いて新たなエアバッグの解析モデルの変形挙動を解析し(ステップS12)、ステップS14においてステップS13の解析結果と、ステップS11の制約条件が一致するまで▲2▼式の応力歪み関係式の定数A,B,C,nを適宜設定変更すると共にエアバッグの解析モデルの設計を変更してエアバッグの解析モデルの変形挙動の解析を繰り返す。
本実施形態では▲2▼式の応力歪み関係式の定数A,B,C,nを適宜設定変更すると共にエアバッグの形状や折り畳み方、更にはインフレータの出力特性等を変更可能な設計変数として、自動的に最適化するよう構成したものである。
従って、予め設定した制約条件の目標値に対してエアバッグの材料の最適化以外にも、例えば、材料は同じでエアバッグの形状や使用されるインフレータ等も最適化の変数として取り扱うものである。
本実施形態において、コンピュータシステムを用いて自動的に最適化を行なう場合、例えば、Engineous社製のiSIGHT等の市販の最適化プログラムソフトを使用し、適切な設計変数と制約関数、例えば、エアバッグ展開時の内圧や減速度等を指定すれば目的の制約条件に最も近似するパラメータを自動的に算出することが出来、この算出されたパラメータを▲2▼式の応力歪み関係式に代入することでエアバッグに最適な基布の応力歪み特性を求めることが出来、その解析結果を参考にしてエアバッグに最適な基布の開発や製造をより効率化することが出来る。
例えば、図8に示すように、制約条件として減速度(重力加速度)を設定した場合、▲2▼式の応力歪み関係式において、初期の定数A,B,C,nを、A=1400、B=−0.02、C=−0.08、n=1.8と設定した時の減速度は「○」で示す曲線で示され、図3に示す最適化フローに従って、最終的に定数A,B,C,nを、A=3000、B=0.06、C=−0.1、n=2.1と設定した時の減速度は「■」で示す曲線で示される。
図8に示すように、「○」で示す曲線は目標減速度から外れているが、図3に示す本実施形態の最適化により「■」で示す曲線は目標減速度に一致させることが出来た。
目標減速度に最適化するに当たり、初期値は従来の比較的太い繊維径から開始し、最終的に求まったパラメータから繊維径を推定すると比較的細い繊維径になっている。ここで、比較的太い繊維径とは350dtex(10000m当たりの繊維の重さg)以上で、比較的細い繊維径とは350dtex(10000m当たりの繊維の重さg)より小さいものをいう。
これにより、エアバッグ格納部のコンパクト化及びエアバッグの軽量化を図ることが出来、車体重量を低減して燃費の向上に寄与し、環境規制にも有利な車体設計を行なうことが出来る。
また、図9(a),(b)は制約条件として引っ張り荷重を布断面積で除した応力σ、エアバッグが膨張した後の体積を夫々設定した場合に図3に示す最適化フローに従って▲2▼式のパラメータの変更を繰り返し、最終的に目標応力値、目標体積値に一致する様子を示す。
最適設計は、前述した▲2▼式のパラメータを適当な数値範囲で変更しながら、目標値に近づくように設計する。図9(a),(b)に示すグラフの各横軸は▲2▼式のパラメータの変更の回数(イタレーション)を示し、各縦軸は夫々応力σ、体積を示す。制約条件として目標応力値、目標体積値が夫々設定され、▲2▼式のパラメータの変更を繰り返して、これ等の目標値に収束させることが出来る。
例えば、図9(a)では、目標減速度になるように前述した▲2▼式で示される応力σが、所定の目標応力値(例えば、基布の破断強度)へ収束していく最適設計の状態を示す。これにより、制約された減速度の中で、破断しない基布にするためのナイロン66の材料の力学的特性(応力ひずみ関係)を求め、エアバッグ基布の開発に活かすことが出来る。
図9(b)では、目標減速度になるように膨張時のエアバッグの体積を基布の折り畳み前の外形状を変更しながら目標体積値へ収束していく最適設計の状態を示す。これにより、制約された減速度の中で衝突時に必要とされる乗員を保護するために必要なエアバッグの体積値を目標に初期の基布の外形状を求めることで設計時に必要なエアバッグの格納部分の設計に使用することが出来る。
即ち、何れの場合も、前述した▲2▼式で示されるエアバッグに使用される基布(織り物または編み物)の材料構成式が重要となり、該▲2▼式により現実に即したエアバッグの解析モデルを構築することでエアバッグ設計の最適化が容易に且つ確実に出来るものである。
ここで、エアバッグの膨張した後の体積を目標値にしたものは、比較的細い繊維径の材料を使用しており、この場合は材料のパラメータは固定で、エアバッグの形状を変更する最適化の一例を示す。
図10(a)は前述の▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Aを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数B=1、C=0.1、n=1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数Aを1.0と2.0に設定したものである。
また、図10(b)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Bを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数A=1、C=0.1、n=1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数Bを1.0と2.0に設定したものである。
また、図10(c)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Cを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数A=1、B=1、n=1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数Cを0.1と0.2に設定したものである。
また、図10(d)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数nを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数A=1、B=1、C=0.1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数nを1.0と2.0に設定したものである。
これ等の定数A,B,C,nの振れの特性を考慮して、▲2▼式で示す応力歪み関係式において、各定数A,B,C,nを適宜設定すれば好ましい。
図11(a)はエアバッグの材料として175dtex(10000m当たりの繊維の重さg)のナイロン66で比較的細いレオナ繊維からなる織り物をエアバッグの基布として引張速度0.3cm/sec(図11(a)の「○」、「●」曲線で示す)及び1000cm/sec(図11(a)の「□」、「■」曲線で示す)で引張試験を行なった実験データ(図11(a)の「○」、「□」曲線で示す)と、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーション(図11(a)の「●」、「■」曲線で示す)とによる応力σと歪みεとの関係を比較した図である。
ここで、引張試験は、各レオナ繊維からなる織り物または編み物を短冊状の布に形成し、引張試験装置により上下に引っ張って、その時に生じる荷重を検知し、その荷重を布断面積で除した値を応力σとし、引っ張られて伸びた長さを初期の布の長さで除した値を歪みεとして求める試験である。
また、図11(b)はエアバッグの材料として470dtex(10000m当たりの繊維の重さg)のナイロン66からなる比較的太いレオナ繊維からなる織り物をエアバッグの基布として引張速度0.3cm/sec(図11(b)の「○」、「●」曲線で示す)、1000cm/sec(図11(b)の「□」、「■」曲線で示す)で引張試験を行なった実験データ(図11(b)の「○」、「□」曲線で示す)と、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーション(図11(b)の「●」、「■」曲線で示す)とによる応力σと歪みεとの関係を比較した図である。
図11(a),(b)に示すように、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションは、各種条件で引張試験を行なった実験データと極めて近似していることが分かる。
図12(a)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合にエアバッグに生じる内圧変化を実験データ(図12(a)の「○」曲線で示す)と、従来例1で前述した直交異方性弾性解析方法により解析したシミュレーション(図12(a)の「■」曲線で示す)と、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーション(図12(a)の「●」曲線で示す)とで比較した図である。
図12(a)に示されたエアバッグは繊維175dtex使用で、インフレータ圧力175kpa(キロパスカル)での平板非使用時(展開のみ)の実施例で、用途は国産小型車向けである。
図12(a)に示すように、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションは、従来の直交異方性弾性解析方法により解析したシミュレーションと比較しても実験データと極めて近似していることが分かる。
図12(b)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合に膨張したエアバッグの体積変化を初期直径600mmでの実験データ(図12(b)の「□」曲線で示す)と、初期直径650mmでの図2に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態により解析したシミュレーション(図12(b)の「○」曲線で示す)と、初期直径600mmでの図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーション(図12(b)の「●」曲線で示す)とで比較した図である。
図12(b)に示されたエアバッグは繊維175dtex使用で、インフレータ圧力200kpaでの平板衝突時の最適化例で、用途は国産軽自動車向けである。
図12(b)に示すように、図2に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態により解析したシミュレーションは、実験データと極めて近似していることが分かるが、図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーションによれば更に実験データに近似していることが分かる。
図12では形状を変化させて最適化したものであるが、図13では折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合に、前記▲2▼式に示す定数A,B,C,nを変化させてエアバッグの体積を第2実施形態により解析した最適化シミュレーション結果を歪み速度が速い場合(図13の「■」曲線で示す)と、歪み速度が遅い場合(図13の「●」曲線で示す)で示し、最適化前の初期値としてのエアバッグ基布の応力歪み関係を歪み速度が速い場合(図13の「□」曲線で示す)と、歪み速度が遅い場合(図13の「○」曲線で示す)とで示して比較した図である。
図13に示されたエアバッグも繊維175dtex使用で、インフレータ圧力200kpaでの平板衝突時の最適化例で、用途は国産軽自動車向けである。
図13に示すように、図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーションは、各種条件で試験を行なった実験データと極めて近似していることが分かる。
尚、上記試験としては、静的展開試験(平板非使用、展開のみ)として、エアバッグとインフレータのみで無負荷時のエアバッグに生じる損傷を確認する試験を実施し、更にインパクター試験として421.7N(43kgf)の平板を時速25kmでハンドルに向かって移動させ、ハンドルとの距離が600mmのところでエアバッグを展開させ、エアバッグにインパクター(平板)を衝突させ、エアバッグの損傷と載荷能力を確認するための試験を実施した。
上記▲2▼式において、織り物または編み物で構成された基布を1.66×10−5m/secの歪み速度(変形速度)で引張試験をしたとき、歪みεが10%(0.1)のときの応力σが50MPa以下の応力歪み関係を有する基布が最適である。
歪みεが10%(0.1)以下は、エアバッグの展開初期の歪みεに相当し、その歪み域でのエアバッグと乗員との関係は、規定外着座(Out of Position)の関係になる。この規定外着座の位置ではエアバッグの展開が乗員に損傷を与えないことが米国法規等で規定されており、初期の基布の応力σを50MPa以下に設定すれば、乗員への加速度及び損傷を低減することが出来る。
歪みεが10%(0.1)を超える場合には、逆に歪みεに対して応力σが急激に立ち上がる特性が好ましい。これは、歪みεに対して応力σが急激に立ち上がれば基布は硬い特性となり、乗員に対する拘束作用が有効に働くためである。
また、エアバッグの展開を容易にするための基布の摩擦特性としては、2m/secの摩擦速度で動摩擦係数が0.1以下が好ましく、更に好ましい動摩擦係数は0.01以上、且つ0.02以下である。ここで、動摩擦係数はアルミニウムの表面をアルマイト処理してコーティングした硬質アルマイト処理材と基布との間で発生する動摩擦係数である。展開速度の遅延は車の衝突速度が速い場合には致命的な問題となるからである。
図14は衝撃吸収体1となる三次元構造の編み物であり、多数の細い糸をよったもので形成された両側の編地メッシュ1a,1bと、多数の太い糸からなる弓状の連結糸1cとをループを作って編みこんで結合したものである。連結糸1cは弾性と復元性を有するバネの役割をし、優れた体圧分散性を維持する。また、編地メッシュ1a,1b組織や連結糸1cとの隙間を空気が自由に通り抜けることで高い通気性が得られるものである。
このような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1として利用した場合には小さい入力に対しては弾性特性が優先し、大きな入力に対しては減衰性能が作用する弾性を有しながら高減衰特性を発揮する。
特にこのような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1として使用する場合には、物品の本体フレーム枠体2に該三次元構造の編み物を張設してハンモック構造とすることで、三次元構造の編み物の衝撃吸収性能を最大限に発揮することが出来る。
このような衝撃吸収体1で人体等をハンモック状態で支持し、外力に対して多自由度振動モデルで受動対応し、外力に反応しながら外力を吸収する支持体を製作することが出来る。これにより、運転動作と長時間走行による姿勢変化にスムーズに対応するダイナミックな体圧分散によるフィット性の向上と、姿勢保持及び慣性力、振動等の吸収が可能となる。
三次元構造の編み物の材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、繊維状に成形可能で、シート地として要求される強度を発現出来れば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等に代表される熱可塑性ポリエステル樹脂類、ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン樹脂類、或いは、これ等の樹脂を2種類以上混合した樹脂等が適用可能である。
また、連結糸1cの繊維太さは422dtex(10000m当たりの繊維の重さg)以上が好ましく、更に好ましくは666dtex(10000m当たりの繊維の重さg)以上である。
これにより、衝撃吸収体1に加わる着座者等の荷重を6角型(ハニカム型)、方形型、菱型等の編地メッシュ1a,1bの変形と、連結糸1cの倒れにより支持することが出来、応力集中が起きない柔構造とすることが出来る。連結糸1cは弓状の他にストレート状(I字状)でも良いし、8の字ストレート状でも良いし、クロス状(X字状)でも良い。
図15〜図21は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体1をエアバッグ以外の各物品に適用した場合の一例を示す図であり、図15は車両用シートの一例としてカーシートに利用した場合、図16はオフィスチェアに利用した場合、図17はチャイルドシートに利用した場合、図18は車椅子に利用した場合、図19はベビーカーに利用した場合、図20は椅子に利用した場合、図21は家具の一例としてソファー(カウチ)に利用した場合である。
そして、本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された前述したような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1とし、各物品の本体フレーム枠体2に該三次元構造の編み物を張設してハンモック構造とすることで、三次元構造の編み物の衝撃吸収性能を最大限に発揮することが出来るものである。
尚、上記物品の他にも本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された前述したような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1とし、該衝撃吸収体1をスポーツ用品の一例として跳び箱や機械体操用等のマット、寝具用品の一例としてベッド、マットレス、クッション、枕、医療用品の一例としてサポータ、日用品としてスリッパの中敷、遊園地やゲームセンター等に設置される遊戯用シート、肌着等のアンダーウエア等にも広く適用出来るものである。これ等の物品では衝撃吸収体1を単層或いは複数層だけ積層して使用することが出来る。
例えば、図14に示す三次元構造の編み物を衝撃吸収体1の一例として、図22に示すように尻パット(サポータ或いは下着の一種)21を履いた老人が、不意に転倒する時を模擬したシミュレーションを行った場合の一例について以下に説明する。人体モデルとして、自動車衝突シミュレーションで用いられるダミー人形23を用いた。そして、滑り易い床22上で、図22(a)に示すように、中腰姿勢(杖をついて歩いているイメージ)から、図22(b)に示すように、初速度ゼロで自重で倒れる設定とした。
尻パット21は簡単のために床22と接触する部分のみをモデル化した。従って、尻パット21を人体に固定するために必要な止め具等は省略した。尻パット21の厚さは10mmとした。尚、図22(a),(b)に示す床22は透明な床22の下方から見た図としてある。
図22に示すダミー人形23の腰部での加速度を測定して緩衝効果を評価した。尻パット21を付けていない場合の加速度が最も大きく、急激に減速する。一方、緩衝効果の高い材料により構成された尻パット21を付けている場合は加速度が小さく、衝撃を緩やかに受け止める。
シミュレーション結果では、尻パット21を装着しない場合の加速度を「1」として、加速度比(尻パット21を付けた場合の加速度/尻パット21を付けていない場合の加速度)はウレタン製の尻パット21で0.80、図14に示す三次元構造の編み物製の尻パット21で0.73であった。従って、三次元構造の編み物製の尻パット21が緩衝性能に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システム及び衝撃吸収体の設計システムの制御系の構成を説明するブロック図である。
図2は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用してエアバッグの変形挙動解析を行ない、エアバッグを設計する衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態の構成を示すフローチャートである。
図3は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用してエアバッグの変形挙動解析を行ない、エアバッグを設計する衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態の構成を示すフローチャートである。
図4は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより織り物または編み物の変形挙動を解析する様子を示すフローチャートである。
図5は織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析された応力と歪みとの関係を表示手段により表示した様子を示す図である。
図6はエアバッグの解析モデルと解析結果を示す図である。
図7はインフレータ情報の一例を示す図である。
図8は減速度を制約条件として最適化により目標減速度に近づけた様子を示す図である。
図9は(a)は減速度を制約条件として最適化により目標応力に近づけた様子を示す図、(b)はエアバッグ膨張した後の体積を制約条件として最適化により目標体積に近づけた様子を示す図である。
図10は(a)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Aを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図、(b)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Bを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図、(c)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Cを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図、(d)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数nを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図である。
図11は(a)はエアバッグの材料として175dtex(10000m当たりの繊維の重さg)の比較的細い繊維径からなる織り物を引張速度0.3cm/sec、1000cm/secで引張試験を行なった実験データと、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションとによる応力σと歪みεとの関係を比較した図、(b)はエアバッグの材料として470dtex(10000m当たりの繊維の重さg)の比較的太い繊維径からなる織り物を引張速度0.3cm/sec、1000cm/secで引張試験を行なった実験データと、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションとによる応力σと歪みεとの関係を比較した図である。
図12は(a)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合にエアバッグに生じる内圧変化を実験データと、従来の直交異方性弾性解析方法により解析したシミュレーションと、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションとで比較した図、(b)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合に膨張したエアバッグの体積変化を実験データと、図2に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態により解析したシミュレーションと、図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーションとで比較した図である。
図13は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合の体積を▲2▼式で示す定数A,B,C,nを変化させて第2実施形態により解析した最適化シミュレーション結果と、最適化前の初期値としてのエアバッグ基布の応力歪み関係とを歪み速度が速い場合と遅い場合とで比較した図である。
図14は三次元構造の編み物の一例を示す斜視図である。
図15は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をカーシートに適用した場合の一例を示す図である。
図16は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をオフィスチェアに適用した場合の一例を示す図である。
図17は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をチャイルドシートに適用した場合の一例を示す図である。
図18は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体を車椅子に適用した場合の一例を示す図である。
図19は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をベビーカーに適用した場合の一例を示す図である。
図20は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体を椅子に適用した場合の一例を示す図である。
図21は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をソファー(カウチ)に適用した場合の一例を示す図である。
図22は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体の一例として尻パットを履いた老人が、不意に転倒する時を模擬したシミュレーションを行った場合の一例を説明する図である。
本発明は、衝突時の乗員保護等を目的としてエアバッグ等の衝撃吸収体に利用される織り物(縦糸と横糸が直角に交わり、隣の糸と密着して平面的に連なり空間がない織地)または編み物(1本或いは数本の糸がループを作り、そのループに次の糸を引っ掛けて新しいループを作ることを連続して作った編地)の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、更にはそれにより設計された織り物または編み物、更にそれを利用した衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、更にはそれにより設計された衝撃吸収体に関するものである。
この出願は、日本国への出願日が2002年2月20日の特願2002−42866の外国特許出願の外国優先権利益を主張するものである。
背景技術
従来、衝突時の乗員保護等に利用されるエアバッグの変形挙動を解析する方法としては、エアバッグに使用される基布材料の応力歪み関係を経緯2方向の直交する2方向に対して該2方向の応力歪み関係を直線でモデル化した直交異方性線形弾性材料モデル(以下、「従来例1」という)、エアバッグに使用される基布材料の応力歪み関係を経緯2方向の直交する2方向に対して該2方向の応力歪み関係を直線でモデル化し、その後の応力歪み関係を直線後曲線でモデル化した直交異方性弾塑性材料モデル(以下、「従来例2」という)、エアバッグに使用される基布材料の応力歪み関係を経緯2方向の直交する2方向に対して該2方向の応力歪み関係を直線でモデル化し、その後の応力歪み関係を直線後曲線でモデル化し、最初の直線として示される弾性係数以降の応力歪み関係を歪み速度の依存性を考慮してモデル化した直交異方性弾塑性歪み速度依存材料モデル(以下、「従来例3」という)、歪み速度依存を示す項が歪みの乗数で定義された材料モデルを使用した解析モデル(以下、「従来例4」という)等を用いてエアバッグの変形挙動を解析するのが一般である。
また、ヒステリシスロスの大きい高減衰の3次元ネットをカーシートに適用したものも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1
特開2001−87077号公報
しかしながら、エアバッグ基布は平織りの織り物であり、荷重が負荷されると、先ずクリンプ(縦糸と横糸とが重なる部位の弛み)が伸ばされた後、繊維に荷重が負荷されるため非線形の挙動をとるが、前述の従来例1では線形弾性材料モデルであるためエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来ないという問題がある。
また、エアバッグに荷重が負荷され、クリンプが伸ばされるとき、そのクリンプの伸びは歪み速度(荷重の増加速度)に依存するが、前述の従来例1、2、3では何れも歪み速度の小さい領域からの解析を考慮していないためエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来ないという問題がある。
また、織り物は固体と比べてルーズな(よく伸びる)材料であるため、歪み速度の変化に敏感であり、前述の従来例4のように歪み速度依存を示す項が歪みの乗数で定義された解析モデルだけでは歪み速度の依存性を顕著に表現出来る材料構成則とは言えなかった。
また、前記特許文献1の3次元ネットを有するシートの設計でも、エアバッグで過去行われていた上記従来例1〜4の応力歪み関係を用いるのが一般であったため、引っ張り力を受けた際に織り物のクリンプや編み物のループにより基地の糸にずれが生じる等の理由から自動車衝突時にダミーに生じる加速度や荷重をシミュレーションにより正確に求めることが出来なかった。
発明の開示
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、織り物または編み物の歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現出来、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開時にエアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、更にはそれにより設計された織り物または編み物、更にはそれを用いた衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、更にはそれにより設計された衝撃吸収体を提供せんとするものである。
前記目的を達成するための本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムは、目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪を入力する第1の入力手段と、目的の用途に応じて想定される最低歪み速度及び最高歪み速度を入力する第2の入力手段と、特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数を入力する第3の入力手段と、前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ定数を入力する第4の入力手段と、前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数を入力する第5の入力手段と、前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存しない非弾性特性定数を入力する第6の入力手段と、前記第2の入力手段により入力された最低歪み速度及び最高歪み速度から比歪み速度定数を演算する第1の演算手段と、前記第1の演算手段により演算された比歪み速度定数を記憶する第1の記憶手段と、前記第3の入力手段により入力された繊維の太さ定数と、前記第4の入力手段により入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ定数と、前記第1の記憶手段に記憶された比歪み速度定数とから弾性定数を演算する第2の演算手段と、前記第2の演算手段により演算された弾性定数を記憶する第2の記憶手段と、前記第5の入力手段により入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数と、前記第6の入力手段により入力された歪み速度に依存しない非弾性特性定数と、前記第1の記憶手段に記憶された比歪み速度定数とから非線形定数を演算する第3の演算手段と、前記第3の演算手段により演算された非線形定数を記憶する第3の記憶手段と、前記第2の記憶手段に記憶された弾性定数と、前記第3の記憶手段に記憶された非線形定数とから、目的の用途に応じて想定される特定の織り物または編み物の応力を演算する第4の演算手段とを有することを特徴とする。
本発明は上述の如く構成したので、第1の入力手段により入力された最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪みに基づいて目的の用途に応じて想定される「歪み−応力曲線」を作成することが出来る。また、第2の入力手段により入力された最低歪み速度と最高歪み速度とによって目的の用途に応じて想定される「歪み−応力曲線」の範囲領域を作成することが出来る。
また、第1〜第6の入力手段により入力された繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、歪み速度に依存しない非弾性特性定数により材料情報を特定することが出来る。
また、第2の演算手段により、繊維の太さ定数Aと、歪み速度に依存するクリンプ解れ
更に第3の演算手段により、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数Cと、歪み速度に依存しない非弾性特性定数nと、第1の演算手段により求めた比歪み速度定数
る。
これにより、目的の用途に応じてある荷重が与えられたときの織り物または編み物に生じる応答値を予測することが出来、これにより織り物または編み物の変形挙動を解析することが出来る。
即ち、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムによれば、特定の織り物または編み物の繊維の太さと、歪み速度に依存するクリンプの解れる度合いが同定されていれば、織り物または編み物の歪み速度に依存する弾性特性を、織り物または編み物を製造する前の段階で容易に予測推定出来る。
更に、歪み速度に依存するクリンプの解れ後の非弾性特性の度合いと、歪み速度に依存しない非弾性特性の度合いが同定されていれば、織り物または編み物の歪み速度に依存する弾性特性に加えて非弾性特性、即ち、織り物または編み物の破断近くの特性までも、織り物または編み物を製造する前の段階で予測推定出来ることから、当該織り物または編み物を製造する前段階で、適用が予定される構造物に対し、適切な織り物または編み物を短期間で提供することが可能となる。
また、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムにおいて、特定の織り物または編み物の目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み、最低歪み速度及び最高歪み速度を有する基準材料の応力と、前記第4の演算手段により演算された特定の織り物または編み物の応力とを比較する比較手段と、該比較手段により比較された前記基準材料の応力と、前記特定の織り物または編み物の応力との差異が所定の許容範囲を超えた場合に、前記特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更する変更手段とを有する場合には、比較手段によって、解析する特定の織り物または編み物を予め最適化された基準材料と比較することが出来、更にその比較した応力の差異が予め設定された許容範囲を超えた場合に変更手段によって特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更することで、特定の織り物または編み物を目的の用途に応じて最適化設計出来る。許容範囲としては、比較した応力の差異が例えば、±5%以内の範囲に収まれば良好とすることが出来る。
また、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムにおいて、前記第4の演算手段により演算された応力と、前記第1の入力手段により入力された歪みとの関係を表示する表示手段を有する場合には、該表示手段により解析結果を目視することが出来、織り物または編み物の変形挙動の良否を容易に評価することが出来る。
また、本発明に係る衝撃吸収体の設計システムは、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して衝撃吸収体を設計する衝撃吸収体の設計システムであって、織り物または編み物の材料情報を入力する材料情報入力手段と、前記織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報を入力する用途条件情報入力手段と、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、前記解析モデル作成手段により作成された解析モデルに関して前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行する解析実行手段と、前記解析実行手段により実行された変形挙動解析結果を評価して判別する評価判別手段と、前記評価判別手段により不良と判別された場合に前記解析モデルの設計を変更する設計変更手段とを有することを特徴とする。
上記衝撃吸収体の設計システムによれば、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、解析モデル作成手段によりその織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成することが出来る。
そして、その作成した解析モデルに関して、解析実行手段により前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行することが出来る。解析実行手段により実行された変形挙動解析結果は、予め評価基準が設定された評価判別手段により評価して判別され、該評価判別手段により不良と判別された場合には設計変更手段により、先に作成した解析モデルの設計を変更し、その変更した新たな解析モデルに関して、解析、設計変更を繰り返して予め設定された評価基準に適合する衝撃吸収体を設計することが出来る。
また、本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの他の構成は、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して衝撃吸収体を設計する衝撃吸収体の設計システムであって、織り物または編み物の材料情報を入力する材料情報入力手段と、前記織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報を入力する用途条件情報入力手段と、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、前記解析モデル作成手段により作成された解析モデルに関して、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行する解析実行手段と、前記解析実行手段により実行された変形挙動解析結果が前記用途条件情報入力手段により入力された制約条件に一致するか否かを判別する判別手段と、前記判別手段により不一致と判別された場合に、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報、及び/または前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報を変更する設計変更手段とを有することを特徴とする。
上記衝撃吸収体の設計システムによれば、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、解析モデル作成手段によりその織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成することが出来る。
そして、その作成した解析モデルに関して、解析実行手段により前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行することが出来る。解析実行手段により実行された変形挙動解析結果は、判別手段により、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報に含まれる制約条件に一致するか否かが判別され、該判別手段により不一致と判別された場合には設計変更手段により、材料情報や用途条件情報を変更して先に作成した解析モデルの設計を変更し、その変更した新たな解析モデルに関して、解析、設計変更を繰り返して予め設定された制約条件に適合する衝撃吸収体を設計することが出来る。
また、前記用途条件情報入力手段により入力される用途条件情報が、エアバッグの形状情報、エアバッグを膨張させるインフレータ情報、折り畳まれた布同士の膨らむ際の接触を定義する境界条件情報、エアバッグ展開時の内圧や減速度等の制約条件を定義する制約情報を含む場合には、衝撃吸収体の一例としてエアバッグの設計を行うことが出来る。
また、前記目的を達成するための本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法は、織り物または編み物の変形挙動を解析する方法であって、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が、
で表されることを特徴とする。
本発明は、上述の如く構成したので、織り物または編み物に作用する応力を、該織り物または編み物に生じる歪み速度の関数に、該歪み速度の関数の累乗を含む応力歪み関係式で表したことで、織り物または編み物に作用する応力として歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現出来、これにより、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開時に該エアバッグに作用する応力や、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来る。
上記▲1▼式の具体例としては、以下の▲2▼式に示される応力歪み関係式が最適である。尚、以下の▲2▼式において、「A」は織り物または編み物に使用される材料(繊維)の太さと織り密度或いは編み密度により主に定義される定数(尚、A>0)であり、「B」は歪み速度に依存する織り物のクリンプ(縦糸と横糸とが重なる部位の弛み)や編み物のループのほぐれを定義する定数であり、「C」は歪み速度に依存するクリンプやループのほぐれ後の塑性限界を超えた時の非線形挙動を定義する定数であり、「n」は歪み速度に依存しない塑性限界を超えた時の非線形挙動を定義する定数(尚、n>1)である。また、▲2▼式中の「ln」は自然対数である。
尚、「B」,「C」は以下の範囲を満たすように設定される。
上記▲2▼式に関し、材料実験を行なうことは解析シミュレーションにおいて最低限必要である。上記▲2▼式に示された定数A,B,C,nは、解析する織り物または編み物に使用される材料実験データに基づいて適宜設定される。実験によりアナログデータが求められるが解析シミュレーションではアナログデータは使用出来ないため何らかの式に置き換え、離散データとして入力する。
尚、衝撃吸収体の一例となるエアバッグに使用される基布材料の材料実験データが無い場合は、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例としてエアバッグの展開実験データから得られる展開時間と内圧変化、展開時間と体積変化等から、定数A,B,C,nを適当な数値範囲で最低9回の解析シミュレーションにより設定することも出来る。
また、本発明に係る織り物または編み物は、前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムの変更手段により繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更して最適設計されたことを特徴とする。
これにより、目的の用途に応じた織り物または編み物が容易に設計出来る。
また、前述の衝撃吸収体の設計システム、或いは衝撃吸収体の設計方法を利用してエアバッグ等の目的の用途に応じた衝撃吸収体を設計することが出来る。
例えば、エアバッグ等の目的の用途に応じた衝撃吸収体の解析モデルを作成し、前述の織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムを利用して該衝撃吸収体の解析モデルの変形挙動を解析し、その解析結果から先の衝撃吸収体の解析モデルを変更し、その変更した衝撃吸収体の解析モデルについて再度、前述の織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムを利用して該衝撃吸収体の解析モデルの変形挙動解析を行なって衝撃吸収体を設計することで最終的に最適な衝撃吸収体の設計が出来る。
このように設計される衝撃吸収体は、エアバッグ、車両用シート、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子、遊戯用シート、椅子、ベッド、ソファー、マットレス、クッション、枕、スリッパ、サポータ、アンダーウエア等の各種の物品に適用することで、目的に応じて効果的に衝撃を吸収することが出来る。
また、衝撃吸収体が編み物で構成される場合には三次元構造の編み物を適用することが出来る。
本発明は、上述の如き構成と作用とを有するので、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が、低歪み(小さな変形)領域から高歪み(大きな変形)領域に亘ってモデル化されているため、衝撃吸収体を構成する織り物または編み物の性能を数値解析により、膨張初期や膨張途中で変形の小さい低歪み領域から、膨張した後の変形の大きい高歪み領域まで幅広い範囲で変形挙動解析を精度良く評価することが可能である。
また、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が低歪み領域からモデル化されているため、織り物または編み物で構成された衝撃吸収体の一例としてエアバッグ等に使用される場合には衝突時の乗員保護に対して、乗員が規定の位置に位置していない場合、特にエアバッグ装置の近くに位置している場合に乗員に対するエアバッグによる影響を正確に評価することが可能である。その結果、乗員の安全性に関し、従来以上のきめ細かな設計が可能である。
また、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係が歪み速度を考慮してモデル化されていることから、自動車に限らず、各種移動体の衝突安全や各種の衝撃吸収体としても適用可能である。
また、織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係がパラメータで表現されているため、逆解析により、使用目的に最適な基布の材料の応力歪み特性を容易に求めることが可能である。
発明を実施するための最良の形態
図により本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システム、及びそれを利用した衝撃吸収体の設計方法及び設計システム、更にはそれにより設計された織り物または編み物、並びに衝撃吸収体の一実施形態を具体的に説明する。
本発明者等は織り物または編み物の歪み速度の依存性を現実に近い形態で表現することを目的として、鋭意、実験と研究を積み重ねることにより本発明を完成させたものであり、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例として、展開時のエアバッグに要求される減速度等の物理量が明確な場合には、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式で表された材料構成則から要求される性能に合致する材料モデルを求めることによりエアバッグに最適な基布製造の指針を示すことが出来、最適なエアバッグの設計が出来るものである。
即ち、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法は、織り物または編み物の基布の材料モデルを定義するもので、前述の▲2▼式で示す応力歪み関係式からなる材料構成則を用いることで、例えば、織り物または編み物により設計された衝撃吸収体の一例として衝突時の乗員保護等に利用されるエアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来るものである。
本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式で表された材料構成則は、例えば、アメリカ合衆国法律FMVSS208に対応して同国のNHTSA−National Traffic Safety Administrationで規格化されたFMVSS208−Federal Motor Vehicle Safety Standard 208の「衝突時の乗員保護」に規定されたようにエアバッグの設計時に必要とされる基布の材料モデルを定義するものであり、この材料構成則を用いることで、エアバッグの展開時にダミーに生じる荷重や加速度をシミュレーションにより正確に求めることが出来るものである。
図1は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動を解析するシステムを含む衝撃吸収体の設計システムの一実施形態の構成を示すものである。図1において、解析・設計センター3には、制御部であって各種の演算手段、材料情報や用途条件情報を変更したり解析モデルの設計を変更する設計変更手段、基準材料の応力と解析モデルの応力とを比較する比較手段、解析実行手段となる数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果を評価して判別する評価判別手段、解析実行手段となる数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果が制約条件に一致するか否かを判別する判別手段等を兼ねるCPU(中央演算処理装置)4、記憶手段となるメモリ5、通信手段となるサーバ装置6、変形挙動解析を実行する解析実行手段となるRADIOSS、ESIグループのRAM、LSのDYNA、MSCのDYTRAN、TNOのMADYMO等の市販の数値解析装置7、織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段となるCAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援設計)システム等の3次元形状作成装置8が設けられている。
また、CPU4には記憶手段となる材料情報データベース(以下、「材料情報DB」という)9、形状情報データベース(以下、「形状情報DB」という)10、インフレータ情報データベース(以下、「インフレータ情報DB」という)11、境界条件情報データベース(以下、「境界条件情報DB」という)12、制約条件情報データベース(以下、「制約条件情報DB」という)13、基準材料情報データベース(以下、「基準材料情報DB」という)14が接続されている。
ここで、形状情報DB10、インフレータ情報DB11、境界条件情報DB12、制約条件情報DB13及び基準材料情報DB14は、織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報データベースであり、本実施形態では、衝撃吸収体の一例としてエアバッグに関する条件情報データベースとして構成されている。
材料情報DB9には、織り物または編み物の材料情報として、各種の織り物または編み物の繊維の太さ定数A、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数B、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数C、歪み速度に依存しない非弾性特性定数n、最高歪み速
また、形状情報DB10には、図6に示すような各種エアバッグの形状情報として、展開した状態の形状データや折り畳み方の形状データ等が格納されており、インフレータ情報DB11にはエアバッグを膨張させる各種インフレータ(ガス発生装置)の出力特性情報等が格納されている。
また、境界条件情報DB12には、折り畳まれた布同士の膨らむ際のぶつかり(接触)を定義する境界条件情報が格納されており、制約条件情報DB13には、エアバッグ展開時の内圧や人体等に当たる減速度等の制約条件を定義する制約情報が格納されている。
基準材料情報DB14は、試験センター15に設けられた引張試験装置16により実験等により得られた各種の織り物または編み物の引張試験により測定された最小歪み、最大歪み、
れている。
試験センター15と解析・設計センター3との間は、通信網となるインターネット17を介してオンラインで接続されており、試験センター15で測定された基準材料情報は解析・設計センター3の基準材料情報DB14に自動的に入力或いは更新出来るように構成されている。尚、図1の破線矢印で示すように、インターネット17を介さないでオフラインで入力することも可能なようになっている。
本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システム及びこれを備えた衝撃吸収体の設計システムを利用して、特定の織り物または編み物の変形挙動解析したり、目的の用途に応じた衝撃吸収体を設計する解析・設計者18は、パーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)19を利用してインターネット17を介して解析・設計センター3にアクセスする。
図4は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより織り物または編み物の変形挙動を解析する様子を示すフローチャートである。解析・設計者18は、パソコン19を利用して解析・設計センター3のサーバ装置6によりインターネット17上に提供されるウエブサイト(ホームページ)にアクセスし、図示しない入力画面上で、入力手段となるパソコン19のキーボード及びマウスを利用して、先ず、図4のステップS21において、目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪みの値を入力する。
太さ定数Aを入力し、ステップS24において、特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ定数Bを入力する。
そして、ステップS25において、歪み速度に依存する弾性特性を求める。先ず、前記ス
において入力された繊維の太さ定数A及び歪み速度に依存するクリンプ解れ定数Bに基づ
次にステップS26において、特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数Cを入力し、ステップS27において、特定の織り物または編み物の歪み速度に依存しない非弾性特性定数nを入力する。
そして、ステップS28において、歪み速度に依存する非弾性特性を求める。先ず、前記
更に、前記ステップS26,S27において入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数C及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数nに基づいて、演算手段とな
前述した▲2▼式の右辺第2項に相当する。
そして、ステップS29において、歪み速度に依存する織り物または編み物の応力σを求める。先ず、前記ステップS25においてメモリ5に一時記憶された弾性定数{A(1−
り、目的の用途に応じて想定される特定の織り物または編み物の応力σ〔={A(1−B×
次に、ステップS30において、CPU4は基準材料情報DB14に格納された、その特定の織り物または編み物の目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み、最高歪み
そして、ステップS31において、比較手段を兼ねるCPU4は、ステップS29で求めた特定の織り物または編み物の応力σと、ステップS30で読み出した基準材料の応力σsとを比較し、特定の織り物または編み物の応力σと、基準材料の応力σsとの差異が、例えば±5%以内に収まれば、許容範囲内と判断して、変形挙動解析を終了する。
前記ステップS31において、特定の織り物または編み物の応力σと、基準材料の応力σsとの差異が±5%を超えた場合には、ステップS23,S24,S26,S27に戻り、変更手段を兼ねるパソコン19のキーボード及びマウス等により図示しない入力画面上で、再度、繊維の太さ定数A、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数B、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数C及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数nを適宜変更して再入力し、解析実行手段となるCPU4は、図4のステップS23〜ステップS31を繰り返して変形挙動を解析する。
尚、本実施形態では、許容範囲内と判断する閾値を、特定の織り物または編み物の応力σと、基準材料の応力σsとの差異が±5%を超えた場合を例にして説明したが、これに限定される必要はなく、用途に応じて適宜所定の閾値を設定することが出来る。
図5は表示手段となるパソコン19のディスプレイ上に、ステップS21で入力された歪みεと、ステップS29で求められた特定の織り物または編み物の応力σとの関係を表示した一例である。図5において、曲線aは最大歪み、曲線bは最小歪みを夫々示しており、両曲線a,bで挟まれる領域の間で、適宜、曲線c,dのような歪みが選択される。
このように、図4に示す織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して、特定の用途に応じた織り物や編み物を最適設計することが出来る。
図2は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態の構成を示すフローチャートである。図1に示す材料情報DB9に格納された材料情報は、CPU4によって図示しない入力・選択画面に表示され、材料情報入力手段となるパソコン19のキーボードやマウス等を利用して目的の用途に応じて想定される織り物または編み物の材料データを入力、或いは表示された選択肢から選択する。
また、形状情報DB10、インフレータ情報DB11、境界条件情報DB12等の用途条件情報DBに格納された各種の用途条件情報は、CPU4によって図示しない入力・選択画面に表示され、用途条件情報入力手段となるパソコン19のキーボードやマウス等を利用して特定の用途に応じて、エアバッグの形状データ、インフレータ出力特性データ、境界条件データ、制約条件データ等を入力、或いは表示された選択肢から選択する。
そして、図2のステップS1において、解析モデル作成手段となるCAD等の3次元形状作成装置8により、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用したエアバッグの解析モデル(図6(a)参照)を作成する。
エアバッグの解析モデルは、織り物または編み物からなるエアバッグに使用する材料の材料モデルデータと、エアバッグの形状データと、図7に示すようなインフレータ(ガス発生装置)の情報、更には折り畳まれた布同士の膨らむ際のぶつかり(接触)を定義する境界条件等を考慮して作成される。
次にステップS2において、解析実行手段となるRADIOSS等の市販の数値解析装置7により、3次元形状作成装置8により作成された解析モデルに関して、図4に示した前述の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して、その織り物または編み物により設計されたエアバッグの変形挙動解析を実行する。
即ち、▲2▼式に示して前述した本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式を用いて、織り物または編み物により設計されたエアバッグの変形挙動解析を実行する。
▲2▼式に示して前述した応力歪み関係式は、FORTRAN等の一般のコンピュータプログラム言語を用いて離散点としてプログラム化し、Mecalog社製のRADIOSSやESI社製のPAMやLS社製のLS−DYNA等の市販の衝突解析アプリケーションソフトに容易に組み込むことが出来る。組み込む方法はサブルーチン等を使用することが出来、組み込み完了後にエアバッグの展開解析を行う。
本実施形態では、▲2▼式の定数A,B,C,nを固定とし、ステップS3において、図6(b)に示すような解析結果が得られる。
そして、ステップS4において、評価判別手段を兼ねるCPU4により数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果を評価し、評価結果が良好であれば設計終了とする。また、評価結果が不良であれば、前記ステップS1に戻り、ステップS3での評価結果に応じて、設計変更手段を兼ねるCPU4により、エアバッグの形状データやインフレータ出力特性データを変更してエアバッグの解析モデルの設計を変更し、再度、▲2▼式に示して前述した応力歪み関係式(定数A,B,C,nは固定)を用いて新たなエアバッグの解析モデルの変形挙動を解析し(ステップS2)、その解析結果を評価する(ステップS3、S4)。
エアバッグの解析モデルの設計を変更するに際しては、例えば、目的の設計条件に合致するようにエアバッグの形状やインフレータの出力等を変更し、目的の設計条件になるまでステップS1〜ステップS4を繰り返してエアバッグの設計を行なう。
図3は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態の構成を示すフローチャートであり、図3においてステップS11〜ステップS13は、図2に示した第1実施形態のステップS1〜ステップS3と略同様である。
本実施形態では、ステップS11のエアバッグの解析モデルの作成に際して材料モデル、形状データ、インフレータ情報、境界条件に加えてエアバッグの内圧や人体等に当たる減速度等の制約条件が目的関数として設定され、形状情報DB10、インフレータ情報DB11、境界条件情報DB12、制約条件情報DB13等の用途条件情報DBに格納された各種の用途条件情報は、CPU4によって図示しない入力・選択画面に表示され、用途条件情報入力手段となるパソコン19のキーボードやマウス等を利用して特定の用途に応じて、エアバッグの形状データ、インフレータ出力特性データ、境界条件データ、制約条件データ等を入力、或いは表示された選択肢から選択する。
ステップS12において、▲2▼式に示して前述した本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法の織り物または編み物に使用される材料の応力歪み関係式を用いて、前述の第1実施形態と同様に、数値解析装置7により織り物または編み物により設計されるエアバッグの解析モデルの変形挙動の解析を実行する。
▲2▼式に示す応力歪み関係式の定数A,B,C,nは、先ず、初期設定値を用いてエアバッグの解析モデルの変形挙動の解析を行ない、ステップS13において解析結果を評価した後、ステップS14において、判別手段を兼ねるCPU4により、数値解析装置7により実行された変形挙動解析結果が用途条件情報入力手段により入力された制約条件に一致するか否かを判別し、その解析結果と、ステップS11で解析モデルの作成に際して予め設定された制約条件とが一致すれば設計終了とする。
また、前記ステップS14において、その解析結果と、ステップS11で解析モデルの作成に際して予め設定された制約条件とが一致しなければ、ステップS15に進み、設計変更手段を兼ねるCPU4により、材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報や用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報を変更する。
即ち、設計変数としてエアバッグの形状や折り畳み方等の形状、インフレータの出力特性を変更すると共に、▲2▼式に示す応力歪み関係式の材料定数A,B,C,nを適宜変更して前記ステップS11に戻り、該ステップS11でエアバッグの解析モデルの設計を変更して、再度、▲2▼式に示して前述した新たな応力歪み関係式を用いて新たなエアバッグの解析モデルの変形挙動を解析し(ステップS12)、ステップS14においてステップS13の解析結果と、ステップS11の制約条件が一致するまで▲2▼式の応力歪み関係式の定数A,B,C,nを適宜設定変更すると共にエアバッグの解析モデルの設計を変更してエアバッグの解析モデルの変形挙動の解析を繰り返す。
本実施形態では▲2▼式の応力歪み関係式の定数A,B,C,nを適宜設定変更すると共にエアバッグの形状や折り畳み方、更にはインフレータの出力特性等を変更可能な設計変数として、自動的に最適化するよう構成したものである。
従って、予め設定した制約条件の目標値に対してエアバッグの材料の最適化以外にも、例えば、材料は同じでエアバッグの形状や使用されるインフレータ等も最適化の変数として取り扱うものである。
本実施形態において、コンピュータシステムを用いて自動的に最適化を行なう場合、例えば、Engineous社製のiSIGHT等の市販の最適化プログラムソフトを使用し、適切な設計変数と制約関数、例えば、エアバッグ展開時の内圧や減速度等を指定すれば目的の制約条件に最も近似するパラメータを自動的に算出することが出来、この算出されたパラメータを▲2▼式の応力歪み関係式に代入することでエアバッグに最適な基布の応力歪み特性を求めることが出来、その解析結果を参考にしてエアバッグに最適な基布の開発や製造をより効率化することが出来る。
例えば、図8に示すように、制約条件として減速度(重力加速度)を設定した場合、▲2▼式の応力歪み関係式において、初期の定数A,B,C,nを、A=1400、B=−0.02、C=−0.08、n=1.8と設定した時の減速度は「○」で示す曲線で示され、図3に示す最適化フローに従って、最終的に定数A,B,C,nを、A=3000、B=0.06、C=−0.1、n=2.1と設定した時の減速度は「■」で示す曲線で示される。
図8に示すように、「○」で示す曲線は目標減速度から外れているが、図3に示す本実施形態の最適化により「■」で示す曲線は目標減速度に一致させることが出来た。
目標減速度に最適化するに当たり、初期値は従来の比較的太い繊維径から開始し、最終的に求まったパラメータから繊維径を推定すると比較的細い繊維径になっている。ここで、比較的太い繊維径とは350dtex(10000m当たりの繊維の重さg)以上で、比較的細い繊維径とは350dtex(10000m当たりの繊維の重さg)より小さいものをいう。
これにより、エアバッグ格納部のコンパクト化及びエアバッグの軽量化を図ることが出来、車体重量を低減して燃費の向上に寄与し、環境規制にも有利な車体設計を行なうことが出来る。
また、図9(a),(b)は制約条件として引っ張り荷重を布断面積で除した応力σ、エアバッグが膨張した後の体積を夫々設定した場合に図3に示す最適化フローに従って▲2▼式のパラメータの変更を繰り返し、最終的に目標応力値、目標体積値に一致する様子を示す。
最適設計は、前述した▲2▼式のパラメータを適当な数値範囲で変更しながら、目標値に近づくように設計する。図9(a),(b)に示すグラフの各横軸は▲2▼式のパラメータの変更の回数(イタレーション)を示し、各縦軸は夫々応力σ、体積を示す。制約条件として目標応力値、目標体積値が夫々設定され、▲2▼式のパラメータの変更を繰り返して、これ等の目標値に収束させることが出来る。
例えば、図9(a)では、目標減速度になるように前述した▲2▼式で示される応力σが、所定の目標応力値(例えば、基布の破断強度)へ収束していく最適設計の状態を示す。これにより、制約された減速度の中で、破断しない基布にするためのナイロン66の材料の力学的特性(応力ひずみ関係)を求め、エアバッグ基布の開発に活かすことが出来る。
図9(b)では、目標減速度になるように膨張時のエアバッグの体積を基布の折り畳み前の外形状を変更しながら目標体積値へ収束していく最適設計の状態を示す。これにより、制約された減速度の中で衝突時に必要とされる乗員を保護するために必要なエアバッグの体積値を目標に初期の基布の外形状を求めることで設計時に必要なエアバッグの格納部分の設計に使用することが出来る。
即ち、何れの場合も、前述した▲2▼式で示されるエアバッグに使用される基布(織り物または編み物)の材料構成式が重要となり、該▲2▼式により現実に即したエアバッグの解析モデルを構築することでエアバッグ設計の最適化が容易に且つ確実に出来るものである。
ここで、エアバッグの膨張した後の体積を目標値にしたものは、比較的細い繊維径の材料を使用しており、この場合は材料のパラメータは固定で、エアバッグの形状を変更する最適化の一例を示す。
図10(a)は前述の▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Aを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数B=1、C=0.1、n=1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数Aを1.0と2.0に設定したものである。
また、図10(b)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Bを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数A=1、C=0.1、n=1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数Bを1.0と2.0に設定したものである。
また、図10(c)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Cを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数A=1、B=1、n=1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数Cを0.1と0.2に設定したものである。
また、図10(d)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数nを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図であり、この時、定数A=1、B=1、C=0.1を固定とし、歪みεを0から1.0まで変化させ、歪み速度比を10として、定数nを1.0と2.0に設定したものである。
これ等の定数A,B,C,nの振れの特性を考慮して、▲2▼式で示す応力歪み関係式において、各定数A,B,C,nを適宜設定すれば好ましい。
図11(a)はエアバッグの材料として175dtex(10000m当たりの繊維の重さg)のナイロン66で比較的細いレオナ繊維からなる織り物をエアバッグの基布として引張速度0.3cm/sec(図11(a)の「○」、「●」曲線で示す)及び1000cm/sec(図11(a)の「□」、「■」曲線で示す)で引張試験を行なった実験データ(図11(a)の「○」、「□」曲線で示す)と、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーション(図11(a)の「●」、「■」曲線で示す)とによる応力σと歪みεとの関係を比較した図である。
ここで、引張試験は、各レオナ繊維からなる織り物または編み物を短冊状の布に形成し、引張試験装置により上下に引っ張って、その時に生じる荷重を検知し、その荷重を布断面積で除した値を応力σとし、引っ張られて伸びた長さを初期の布の長さで除した値を歪みεとして求める試験である。
また、図11(b)はエアバッグの材料として470dtex(10000m当たりの繊維の重さg)のナイロン66からなる比較的太いレオナ繊維からなる織り物をエアバッグの基布として引張速度0.3cm/sec(図11(b)の「○」、「●」曲線で示す)、1000cm/sec(図11(b)の「□」、「■」曲線で示す)で引張試験を行なった実験データ(図11(b)の「○」、「□」曲線で示す)と、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーション(図11(b)の「●」、「■」曲線で示す)とによる応力σと歪みεとの関係を比較した図である。
図11(a),(b)に示すように、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションは、各種条件で引張試験を行なった実験データと極めて近似していることが分かる。
図12(a)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合にエアバッグに生じる内圧変化を実験データ(図12(a)の「○」曲線で示す)と、従来例1で前述した直交異方性弾性解析方法により解析したシミュレーション(図12(a)の「■」曲線で示す)と、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーション(図12(a)の「●」曲線で示す)とで比較した図である。
図12(a)に示されたエアバッグは繊維175dtex使用で、インフレータ圧力175kpa(キロパスカル)での平板非使用時(展開のみ)の実施例で、用途は国産小型車向けである。
図12(a)に示すように、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションは、従来の直交異方性弾性解析方法により解析したシミュレーションと比較しても実験データと極めて近似していることが分かる。
図12(b)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合に膨張したエアバッグの体積変化を初期直径600mmでの実験データ(図12(b)の「□」曲線で示す)と、初期直径650mmでの図2に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態により解析したシミュレーション(図12(b)の「○」曲線で示す)と、初期直径600mmでの図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーション(図12(b)の「●」曲線で示す)とで比較した図である。
図12(b)に示されたエアバッグは繊維175dtex使用で、インフレータ圧力200kpaでの平板衝突時の最適化例で、用途は国産軽自動車向けである。
図12(b)に示すように、図2に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態により解析したシミュレーションは、実験データと極めて近似していることが分かるが、図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーションによれば更に実験データに近似していることが分かる。
図12では形状を変化させて最適化したものであるが、図13では折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合に、前記▲2▼式に示す定数A,B,C,nを変化させてエアバッグの体積を第2実施形態により解析した最適化シミュレーション結果を歪み速度が速い場合(図13の「■」曲線で示す)と、歪み速度が遅い場合(図13の「●」曲線で示す)で示し、最適化前の初期値としてのエアバッグ基布の応力歪み関係を歪み速度が速い場合(図13の「□」曲線で示す)と、歪み速度が遅い場合(図13の「○」曲線で示す)とで示して比較した図である。
図13に示されたエアバッグも繊維175dtex使用で、インフレータ圧力200kpaでの平板衝突時の最適化例で、用途は国産軽自動車向けである。
図13に示すように、図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーションは、各種条件で試験を行なった実験データと極めて近似していることが分かる。
尚、上記試験としては、静的展開試験(平板非使用、展開のみ)として、エアバッグとインフレータのみで無負荷時のエアバッグに生じる損傷を確認する試験を実施し、更にインパクター試験として421.7N(43kgf)の平板を時速25kmでハンドルに向かって移動させ、ハンドルとの距離が600mmのところでエアバッグを展開させ、エアバッグにインパクター(平板)を衝突させ、エアバッグの損傷と載荷能力を確認するための試験を実施した。
上記▲2▼式において、織り物または編み物で構成された基布を1.66×10−5m/secの歪み速度(変形速度)で引張試験をしたとき、歪みεが10%(0.1)のときの応力σが50MPa以下の応力歪み関係を有する基布が最適である。
歪みεが10%(0.1)以下は、エアバッグの展開初期の歪みεに相当し、その歪み域でのエアバッグと乗員との関係は、規定外着座(Out of Position)の関係になる。この規定外着座の位置ではエアバッグの展開が乗員に損傷を与えないことが米国法規等で規定されており、初期の基布の応力σを50MPa以下に設定すれば、乗員への加速度及び損傷を低減することが出来る。
歪みεが10%(0.1)を超える場合には、逆に歪みεに対して応力σが急激に立ち上がる特性が好ましい。これは、歪みεに対して応力σが急激に立ち上がれば基布は硬い特性となり、乗員に対する拘束作用が有効に働くためである。
また、エアバッグの展開を容易にするための基布の摩擦特性としては、2m/secの摩擦速度で動摩擦係数が0.1以下が好ましく、更に好ましい動摩擦係数は0.01以上、且つ0.02以下である。ここで、動摩擦係数はアルミニウムの表面をアルマイト処理してコーティングした硬質アルマイト処理材と基布との間で発生する動摩擦係数である。展開速度の遅延は車の衝突速度が速い場合には致命的な問題となるからである。
図14は衝撃吸収体1となる三次元構造の編み物であり、多数の細い糸をよったもので形成された両側の編地メッシュ1a,1bと、多数の太い糸からなる弓状の連結糸1cとをループを作って編みこんで結合したものである。連結糸1cは弾性と復元性を有するバネの役割をし、優れた体圧分散性を維持する。また、編地メッシュ1a,1b組織や連結糸1cとの隙間を空気が自由に通り抜けることで高い通気性が得られるものである。
このような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1として利用した場合には小さい入力に対しては弾性特性が優先し、大きな入力に対しては減衰性能が作用する弾性を有しながら高減衰特性を発揮する。
特にこのような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1として使用する場合には、物品の本体フレーム枠体2に該三次元構造の編み物を張設してハンモック構造とすることで、三次元構造の編み物の衝撃吸収性能を最大限に発揮することが出来る。
このような衝撃吸収体1で人体等をハンモック状態で支持し、外力に対して多自由度振動モデルで受動対応し、外力に反応しながら外力を吸収する支持体を製作することが出来る。これにより、運転動作と長時間走行による姿勢変化にスムーズに対応するダイナミックな体圧分散によるフィット性の向上と、姿勢保持及び慣性力、振動等の吸収が可能となる。
三次元構造の編み物の材料としては、熱可塑性樹脂が好ましく、繊維状に成形可能で、シート地として要求される強度を発現出来れば良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等に代表される熱可塑性ポリエステル樹脂類、ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン樹脂類、或いは、これ等の樹脂を2種類以上混合した樹脂等が適用可能である。
また、連結糸1cの繊維太さは422dtex(10000m当たりの繊維の重さg)以上が好ましく、更に好ましくは666dtex(10000m当たりの繊維の重さg)以上である。
これにより、衝撃吸収体1に加わる着座者等の荷重を6角型(ハニカム型)、方形型、菱型等の編地メッシュ1a,1bの変形と、連結糸1cの倒れにより支持することが出来、応力集中が起きない柔構造とすることが出来る。連結糸1cは弓状の他にストレート状(I字状)でも良いし、8の字ストレート状でも良いし、クロス状(X字状)でも良い。
図15〜図21は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体1をエアバッグ以外の各物品に適用した場合の一例を示す図であり、図15は車両用シートの一例としてカーシートに利用した場合、図16はオフィスチェアに利用した場合、図17はチャイルドシートに利用した場合、図18は車椅子に利用した場合、図19はベビーカーに利用した場合、図20は椅子に利用した場合、図21は家具の一例としてソファー(カウチ)に利用した場合である。
そして、本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された前述したような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1とし、各物品の本体フレーム枠体2に該三次元構造の編み物を張設してハンモック構造とすることで、三次元構造の編み物の衝撃吸収性能を最大限に発揮することが出来るものである。
尚、上記物品の他にも本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された前述したような三次元構造の編み物を衝撃吸収体1とし、該衝撃吸収体1をスポーツ用品の一例として跳び箱や機械体操用等のマット、寝具用品の一例としてベッド、マットレス、クッション、枕、医療用品の一例としてサポータ、日用品としてスリッパの中敷、遊園地やゲームセンター等に設置される遊戯用シート、肌着等のアンダーウエア等にも広く適用出来るものである。これ等の物品では衝撃吸収体1を単層或いは複数層だけ積層して使用することが出来る。
例えば、図14に示す三次元構造の編み物を衝撃吸収体1の一例として、図22に示すように尻パット(サポータ或いは下着の一種)21を履いた老人が、不意に転倒する時を模擬したシミュレーションを行った場合の一例について以下に説明する。人体モデルとして、自動車衝突シミュレーションで用いられるダミー人形23を用いた。そして、滑り易い床22上で、図22(a)に示すように、中腰姿勢(杖をついて歩いているイメージ)から、図22(b)に示すように、初速度ゼロで自重で倒れる設定とした。
尻パット21は簡単のために床22と接触する部分のみをモデル化した。従って、尻パット21を人体に固定するために必要な止め具等は省略した。尻パット21の厚さは10mmとした。尚、図22(a),(b)に示す床22は透明な床22の下方から見た図としてある。
図22に示すダミー人形23の腰部での加速度を測定して緩衝効果を評価した。尻パット21を付けていない場合の加速度が最も大きく、急激に減速する。一方、緩衝効果の高い材料により構成された尻パット21を付けている場合は加速度が小さく、衝撃を緩やかに受け止める。
シミュレーション結果では、尻パット21を装着しない場合の加速度を「1」として、加速度比(尻パット21を付けた場合の加速度/尻パット21を付けていない場合の加速度)はウレタン製の尻パット21で0.80、図14に示す三次元構造の編み物製の尻パット21で0.73であった。従って、三次元構造の編み物製の尻パット21が緩衝性能に優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システム及び衝撃吸収体の設計システムの制御系の構成を説明するブロック図である。
図2は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用してエアバッグの変形挙動解析を行ない、エアバッグを設計する衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態の構成を示すフローチャートである。
図3は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用してエアバッグの変形挙動解析を行ない、エアバッグを設計する衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態の構成を示すフローチャートである。
図4は本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析システムにより織り物または編み物の変形挙動を解析する様子を示すフローチャートである。
図5は織り物または編み物の変形挙動解析システムにより解析された応力と歪みとの関係を表示手段により表示した様子を示す図である。
図6はエアバッグの解析モデルと解析結果を示す図である。
図7はインフレータ情報の一例を示す図である。
図8は減速度を制約条件として最適化により目標減速度に近づけた様子を示す図である。
図9は(a)は減速度を制約条件として最適化により目標応力に近づけた様子を示す図、(b)はエアバッグ膨張した後の体積を制約条件として最適化により目標体積に近づけた様子を示す図である。
図10は(a)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Aを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図、(b)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Bを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図、(c)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数Cを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図、(d)は▲2▼式で示す応力歪み関係式において、定数nを2倍に変化させた時の応力σと歪みεとの関係の振れを示す図である。
図11は(a)はエアバッグの材料として175dtex(10000m当たりの繊維の重さg)の比較的細い繊維径からなる織り物を引張速度0.3cm/sec、1000cm/secで引張試験を行なった実験データと、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションとによる応力σと歪みεとの関係を比較した図、(b)はエアバッグの材料として470dtex(10000m当たりの繊維の重さg)の比較的太い繊維径からなる織り物を引張速度0.3cm/sec、1000cm/secで引張試験を行なった実験データと、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションとによる応力σと歪みεとの関係を比較した図である。
図12は(a)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合にエアバッグに生じる内圧変化を実験データと、従来の直交異方性弾性解析方法により解析したシミュレーションと、本発明に係る織り物または編み物の変形挙動解析方法及び変形挙動解析システムにより解析したシミュレーションとで比較した図、(b)は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合に膨張したエアバッグの体積変化を実験データと、図2に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第1実施形態により解析したシミュレーションと、図3に示す本発明に係る衝撃吸収体の設計システムの第2実施形態により解析した最適化シミュレーションとで比較した図である。
図13は折り畳まれたエアバッグに平板が衝突した場合の体積を▲2▼式で示す定数A,B,C,nを変化させて第2実施形態により解析した最適化シミュレーション結果と、最適化前の初期値としてのエアバッグ基布の応力歪み関係とを歪み速度が速い場合と遅い場合とで比較した図である。
図14は三次元構造の編み物の一例を示す斜視図である。
図15は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をカーシートに適用した場合の一例を示す図である。
図16は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をオフィスチェアに適用した場合の一例を示す図である。
図17は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をチャイルドシートに適用した場合の一例を示す図である。
図18は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体を車椅子に適用した場合の一例を示す図である。
図19は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をベビーカーに適用した場合の一例を示す図である。
図20は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体を椅子に適用した場合の一例を示す図である。
図21は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体をソファー(カウチ)に適用した場合の一例を示す図である。
図22は本発明に係る衝撃吸収体の設計システムを利用して設計された衝撃吸収体の一例として尻パットを履いた老人が、不意に転倒する時を模擬したシミュレーションを行った場合の一例を説明する図である。
Claims (14)
- 織り物または編み物の変形挙動を解析するシステムであって、
目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み及びその間の少なくとも1点の歪みを入力する第1の入力手段と、
目的の用途に応じて想定される最低歪み速度及び最高歪み速度を入力する第2の入力手段と、
特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数を入力する第3の入力手段と、
前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ定数を入力する第4の入力手段と、
前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数を入力する第5の入力手段と、
前記特定の織り物または編み物の歪み速度に依存しない非弾性特性定数を入力する第6の入力手段と、
前記第2の入力手段により入力された最低歪み速度及び最高歪み速度から比歪み速度定数を演算する第1の演算手段と、
前記第1の演算手段により演算された比歪み速度定数を記憶する第1の記憶手段と、
前記第3の入力手段により入力された繊維の太さ定数と、前記第4の入力手段により入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ定数と、前記第1の記憶手段に記憶された比歪み速度定数とから弾性定数を演算する第2の演算手段と、
前記第2の演算手段により演算された弾性定数を記憶する第2の記憶手段と、
前記第5の入力手段により入力された歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数と、前記第6の入力手段により入力された歪み速度に依存しない非弾性特性定数と、前記第1の記憶手段に記憶された比歪み速度定数とから非線形定数を演算する第3の演算手段と、
前記第3の演算手段により演算された非線形定数を記憶する第3の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶された弾性定数と、前記第3の記憶手段に記憶された非線形定数とから、目的の用途に応じて想定される特定の織り物または編み物の応力を演算する第4の演算手段と、
を有することを特徴とする織り物または編み物の変形挙動解析システム。 - 前記特定の織り物または編み物の目的の用途に応じて想定される最小歪み、最大歪み、最低歪み速度及び最高歪み速度を有する基準材料の応力と、前記第4の演算手段により演算された特定の織り物または編み物の応力とを比較する比較手段と、
前記比較手段により比較された前記基準材料の応力と、前記特定の織り物または編み物の応力との差異が所定の許容範囲を超えた場合に、前記特定の織り物または編み物の繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうち少なくとも1つを変更する変更手段と、
を有することを特徴とするクレーム1に記載の織り物または編み物の変形挙動解析システム。 - 前記第4の演算手段により演算された応力と、前記第1の入力手段により入力された歪みとの関係を表示する表示手段を有することを特徴とするクレーム1またはクレーム2に記載の織り物または編み物の変形挙動解析システム。
- 前記クレーム1〜3のいずれか1項に記載の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して衝撃吸収体を設計する衝撃吸収体の設計システムであって、
織り物または編み物の材料情報を入力する材料情報入力手段と、
前記織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報を入力する用途条件情報入力手段と、
前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、
前記解析モデル作成手段により作成された解析モデルに関して前記クレーム1〜3のいずれか1項に記載の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行する解析実行手段と、
前記解析実行手段により実行された変形挙動解析結果を評価して判別する評価判別手段と、
前記評価判別手段により不良と判別された場合に前記解析モデルの設計を変更する設計変更手段と、
を有することを特徴とする衝撃吸収体の設計システム。 - 前記クレーム1〜3のいずれか1項に記載の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して衝撃吸収体を設計する衝撃吸収体の設計システムであって、
織り物または編み物の材料情報を入力する材料情報入力手段と、
前記織り物または編み物の特定の用途に応じて設定される用途条件情報を入力する用途条件情報入力手段と、
前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報と、前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報とに基づいて、その織り物または編み物をその特定の用途に適用した解析モデルを作成する解析モデル作成手段と、
前記解析モデル作成手段により作成された解析モデルに関して前記クレーム1〜3のいずれか1項に記載の織り物または編み物の変形挙動解析システムを利用して変形挙動解析を実行する解析実行手段と、
前記解析実行手段により実行された変形挙動解析結果が前記用途条件情報入力手段により入力された制約条件に一致するか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により不一致と判別された場合に、前記材料情報入力手段により入力された織り物または編み物の材料情報、及び/または前記用途条件情報入力手段により入力された用途条件情報を変更する設計変更手段と、
を有することを特徴とする衝撃吸収体の設計システム。 - 前記用途条件情報入力手段により入力される用途条件情報は、エアバッグの形状情報、エアバッグを膨張させるインフレータ情報、折り畳まれた布同士の膨らむ際の接触を定義する境界条件情報、エアバッグ展開時の内圧や減速度等の制約条件を定義する制約情報を含むことを特徴とするクレーム5に記載の衝撃吸収体の設計システム。
- 衝撃吸収体の設計方法であって、クレーム7に記載の織り物または編み物の変形挙動解析方法を利用して衝撃吸収体を設計することを特徴とする衝撃吸収体の設計方法。
- 衝撃吸収体の解析モデルを作成し、クレーム7に記載の織り物または編み物の変形挙動解析方法を利用して前記衝撃吸収体の解析モデルの変形挙動を解析し、その解析結果から前記衝撃吸収体の解析モデルを変更し、その変更した衝撃吸収体の解析モデルについて再度、クレーム7に記載の織り物または編み物の変形挙動解析方法を利用して該衝撃吸収体の解析モデルの変形挙動解析を行なって衝撃吸収体を設計することを特徴とする衝撃吸収体の設計方法。
- クレーム2に記載の織り物の変形挙動解析システムの前記変更手段により繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更して最適設計されたことを特徴とする織り物。
- クレーム2に記載の編み物の変形挙動解析システムの前記変更手段により繊維の太さ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ定数、歪み速度に依存するクリンプ解れ後の非弾性特性定数、及び歪み速度に依存しない非弾性特性定数のうちの少なくとも1つを変更して最適設計されたことを特徴とする編み物。
- クレーム4〜6のいずれか1項に記載の衝撃吸収体の設計システム、或いはクレーム8またはクレーム9に記載の衝撃吸収体の設計方法により設計されたことを特徴とする衝撃吸収体。
- 前記衝撃吸収体は、エアバッグ、車両用シート、チャイルドシート、ベビーカー、車椅子、遊戯用シート、椅子、ベッド、ソファー、マットレス、クッション、枕、スリッパ、サポータ、アンダーウエアのうちの少なくとも1つに使用されることを特徴とするクレーム12に記載の衝撃吸収体。
- 前記編み物は三次元構造の編み物であることを特徴とするクレーム12またはクレーム13に記載の衝撃吸収体。
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