JPWO2003070951A1 - 動脈硬化特異的遺伝子とその利用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、動脈硬化症の病巣において特異的に発現している遺伝子、ポリペプチド、及びその利用に関する。
背景技術
平滑筋細胞は、血管壁の形態形成及び薬理的反応に関与している重要な構成要素である。通常の場合、成人大動脈壁内側の平滑筋細胞は分裂せず、筋細胞の収縮に特化していると考えられている(収縮型)。しかし場合によっては、血管の平滑筋細胞がある程度の合成能力、細胞外基質の産出、及び細胞分裂を示すことがある。動脈硬化巣における平滑筋細胞は、増殖、遊走し細胞外基質を産生することが知られている(増殖型)。これらは平滑筋細胞が異常状態に転換したことによると考えられているが、このような転換は、アテローム性動脈硬化症の病因を研究する上で重要である(Nature 362,801−809,1990;Proc.Natl.Acad.sci.USA,70,1753−1756,1973;Circ.Res.58,427−444,1986)。
しかし平滑筋細胞が収縮型から増殖型に移行するメカニズムに関しては、現在も明らかでない。平滑筋細胞が増殖能力を有することがあることは多くの研究がすでに明らかにしており、ヒト、霊長類、ウサギ、又はラット動脈由来の平滑筋細胞を培養液中に分散すると、自然に合成能力を有するフェノタイプに転換することがすでに知られている(Physiol.Rev.59,1−61,1979;Lab.Invest.33,16−27,1975;Cell Tiss.Res.177,503−522,1977)。最近の研究から、平滑筋細胞を単離してクローニングすると、培養液中で倍化を繰り返しても、分化型(収縮型)細胞又は未分化型(増殖型)細胞はそれぞれの遺伝子発現パターンを部分的に維持し続けることも知られている(Am.J.Pathol.144,1068−1081,1994;Arterioscler.Thromb.13,1449−1455,1993)。このことから、これら2種類のフェノタイプを有する細胞は、正常血管壁において安定的に共存でき、合成型フェノタイプを有する細胞は、病気の過程中において刺激に応答することで増殖することがわかる。
アテローム性動脈硬化症の動脈及び正常な動脈から得た細胞を比較すると、増殖率に関して差があることが知られている。例えば、ウサギのアテローム性動脈硬化症の動脈又はバルーン擦過法で肥厚したラットの動脈から得た細胞を、対照である正常動脈由来の細胞との比較をしたところ、活発な増殖活動がみられることがわかっている(Atherosclerosis 36,241−248,1980;Med.Biol.62,255−259,1984;Arch.Pathol.Lab.Med.112,987−996,1988;Artery 14,266−282,1987)。一方、ヒト(AmJ Pathol 78,175−190,1975)及びウサギ(Med Biol 60,221−225,1982)から、アテローム性動脈硬化性病変が進行した動脈の細胞及び正常な動脈の細胞を得て比較したところ、違いはみられないことも知られている。さらに、ヒトから得たアテローム性動脈硬化プラーク由来細胞を調べたところ、対照である血管由来の細胞と比べて細胞死(アポトーシス)が起こりやすいこともすでにわかっている(Circ Res 81,591−599,1997)。
動物個体中のアテローム性動脈硬化性病変が進行した部分及び正常動脈部分から得た平滑筋細胞を比較するような研究はこれまで行われていない。また、細胞増殖の促進及び抑制因子に対して応答する際の、プラーク(P)由来及びノンプラーク(NP)由来の平滑筋細胞を比較する研究もこれまで行われていない。さらに、進行したアテローム性動脈硬化症動脈プラーク中における平滑筋細胞が示す特徴に関してもこれまで研究が行われていなかった。
動脈硬化の発症においては、血管平滑筋細胞の増殖が中心的役割を果たしている。しかし、従来、これらの平滑筋細胞の活性化の原因となっている遺伝子は、明かにされていなかった。
近年、動脈硬化の原因遺伝子に焦点を当てたゲノム研究が進められた。1995年12月には米国Dawin Molecular社が、フランスRPR Gencell部門、フランスGenethonと手を組んで、家系分析とポジショナル・クローニングによる粥状(アテローム性)動脈硬化の病因遺伝子の探索に着手したことが伝えられている。また、1995年10月には米国Millenium Pharmaceuticalsと米国Eli Lilly社が動脈硬化の原因遺伝子に基づいた治療薬のスクリーニングに乗り出していることが、伝えられている。
最近、血管傷害に応答して、血管平滑筋細胞によるVIII型コラーゲンの遺伝子が発現していることが報告されている(Circulation Research,80,532−541,1997)。
本発明者は、平滑筋細胞の活性化の原因となっている遺伝子の発現を解明すべく研究を進め、それらの遺伝子の一つとして、α1VIII型コラーゲンの遺伝子があることをつきとめ、これを公表した(J.Vasc.Res.37,158−169,2000)。
本発明の課題は、動脈硬化症の病巣において特異的に発現している遺伝子及びポリペプチド、及び、正常な血管平滑筋細胞において発現している該遺伝子及びポリペプチドに相同の遺伝子及びポリペプチド、更には、それらの利用を提供することにある。
発明の開示
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、アポリポタンパクE(ApoE)欠損マウス(アポEノックアウトマウス)の動脈硬化症の病巣細胞から、該細胞において特異的に発現している遺伝子をクローニングし、更に、正常な血管平滑筋細胞において発現している該遺伝子に相同の遺伝子をクローニングして本発明を完成するに至った。
即ち、今回本発明者は、正常および動脈硬化巣よりそれぞれ培養平滑筋細胞を作製し比較検討を行った。実験材料として、動脈硬化の自然発症モデルであるApoEのノックアウトマウスから胸部大動脈を摘出し、動脈硬化プラークおよび正常部分より移植片培養により培養平滑筋細胞を作製した。増殖速度は[3H]−Thymidineの取込みで測定し、遺伝子発現の比較にはディファレンシャル・ディスプレイ(Differential Display)法を用いた。その結果、正常血管及び動脈硬化巣の培養平滑筋細胞は形態学的な差異を示さなかった。増殖速度は培養細胞株によって違いは認められるものの正常血管および動脈硬化巣間での有意な差は認められなかった。増殖促進因子および抑制因子に対する反応性においても有意な差はみられなかった。
一方ディファレンシャル・ディスプレイ(Differential Display)法によって遺伝子発現を比較した結果、数種類の遺伝子において発現の差がみられた。遺伝子配列を調べた結果それらの一つはVIII型コラーゲンであり、動脈硬化平滑筋細胞において発現が亢進していた。VIII型コラーゲンの発現亢進はin vivoにおいても確認された。
そして、発現が亢進している遺伝子について同定を行った結果、発現が亢進している遺伝子の中に、今まで知られていない未知の遺伝子が存在することが確認された。これらの新規遺伝子をクローニングして、その構造を決定し、一つは「F227」(配列表の配列番号1)と、及び他の一つは「H2A」(配列表の配列番号3)と命名した。更に、正常な組織からは、該組織において発現している上記遺伝子に相同の遺伝子の「AK002873」(配列表の配列番号5)と「NM_0032374」(配列表の配列番号7をクローニングしてその構造を決定した。
本発明において取得、同定した遺伝子の発現及び該遺伝子によってコードされるタンパク質の生成を動脈硬化症診断用の遺伝子マーカー、ペプチドマーカーとして検出することで測定することにより、動脈硬化症の診断を行うことが可能であり、更に該遺伝子の発現及びタンパク質の生成の測定を行うことにより、動脈硬化症の予防又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。更には、動脈平滑筋細胞における該遺伝子の発現を抑制することにより、或いは、該遺伝子の導入によりアポトーシスを誘導して、動脈硬化症の予防或いは治療を可能とする。
すなわち、本発明は、配列表の配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA(請求項1)や、請求項1記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドをコードすることを特徴とするDNA(請求項2)や、以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA。(a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチド(請求項3)や、配列表の配列番号3に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA(請求項4)や、請求項4記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているタンパク質をコードすることを特徴とするDNA(請求項5)や、以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA。(a)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(b)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチド(請求項6)からなる。
また、本発明は、配列表の配列番号5に示される、血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列、若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA(請求項7)や、請求項7記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードすることを特徴とする遺伝子(請求項8)や、以下の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子。(c)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(d)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチド(請求項9)や、配列表の配列番号7に示される、血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列、若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA(請求項10)や、請求項10記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するするポリペプチドをコードすることを特徴とする遺伝子(請求項11)や、以下の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子。(c)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(d)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチド(請求項12)からなる。
また本発明は、請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈平滑筋細胞における該請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列からなる遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド(請求項13)や、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド(請求項14)や、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチド(請求項15)や、配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド(請求項16)や、配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチド(請求項17)や、配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなり、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とするポリペプチド(請求項18)や、配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドと類似構造を有するポリペプチド(請求項19)や、配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなり、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とするポリペプチド(請求項20)や、配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドと類似構造を有するポリペプチド(請求項21)や、請求項14〜21のいずれか記載のポリペプチドを用いて誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする抗体(請求項22)や、抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項22記載の抗体(請求項23)や、抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項22記載の抗体(請求項24)からなる。
また本発明は、請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する動脈硬化症診断用プローブ(請求項25)や、請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列が、請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部からなる請求項25記載の動脈硬化症診断用プローブ(請求項26)や、請求項25又は26記載のDNAの少なくとも1つ以上を固定化させたことを特徴とする動脈硬化症診断用マイクロアレイ又はDNAチップ(請求項27)や、請求項22〜24のいずれか記載の抗体及び/又は請求項25又は26記載の診断用プローブを含有することを特徴とする動脈硬化症診断薬(請求項28)や、請求項22〜24のいずれか記載の抗体及び/又は請求項項25又は26記載の診断用プローブを含有することを特徴とする動脈硬化症診断キット(請求項29)からなる。
さらに本発明は、被検組織から試料を得、該試料における請求項請求項1、4、7、又は10記載の遺伝子の発現を測定することを特徴とする動脈硬化症の診断方法(請求項30)や、請求項30記載の遺伝子の発現の測定が、定量的PCRの使用を含んでいることを特徴とする動脈硬化症の診断方法(請求項31)や、PCRプライマーとして、配列表の配列番号9(Forward)と配列表の配列番号10(Reverse)のプライマー、及び/又は配列表の配列番号11(Forward)と配列表の配列番号12(Reverse)のプライマーを用いることを特徴とする請求項31記載の動脈硬化症の診断方法(請求項32)や、請求項30〜32のいずれか記載の遺伝子の発現の測定が、マイクロアレイ法、DNAチップ法、RT−PCR法又はノーザンブロッティング法を用いて行われることを特徴とする動脈硬化症の診断方法(請求項33)や、被検組織から試料を取得、培養し、該試料における遺伝子の発現により生成される配列表の配列番号2、4、6及び8に記載されるポリペプチドの一つ以上を測定することを特徴とする動脈硬化症の診断方法(請求項34)や、請求項22〜24のいずれか記載の抗体を用いることを特徴とする請求項34記載の動脈硬化症の診断方法(請求項35)や、動脈硬化発症モデル動物に、被検物質を投与し、配列表の配列番号1、4、7及び10に記載される塩基配列を有する遺伝子の一つ以上の遺伝子の発現、及び/又は配列表の配列番号2、4、6及び8に記載されるポリペプチドの一つ以上のポリペプチド又はその部分ポリペプチドの生成を測定することを特徴とする動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニング方法(請求項36)や、動脈硬化発症モデル動物が、ApoE欠損マウスであることを特徴とする請求項36記載の動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニング方法(請求項37)や、動脈平滑筋細胞に、請求項13記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、動脈平滑筋細胞における該請求項1、4、7又は10記載の塩基配列からなる遺伝子の発現を制御することを特徴とする動脈硬化発症遺伝子の発現抑制方法(請求項38)や、請求項4〜12のいずれか記載のDNA遺伝子を、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入し、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とする血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法(請求項39)や、請求項39記載の血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法を用いて動脈硬化症を発症している平滑筋細胞の治療を行うことを特徴とする動脈硬化発症細胞の遺伝子治療方法(請求項40)からなる。
発明を実施するための最良の形態
(遺伝子のクローニング、同定)
本邦死因の2、3位を占める脳卒中、心臓病は動脈硬化が原因となって発症する疾患である。従って、動脈硬化の発症、進展を予防することは臨床上最も重要な課題の1つとなっている。動脈硬化の発症、進展の機構を解明するには、動脈硬化症の病巣で発現している遺伝子を取得し、クローニングすることが重要となる。今回、本発明者は動脈硬化の自然発症モデルであるApoEノックアウトマウスからの動脈硬化巣と正常血管からそれぞれ平滑筋細胞を単離・培養し、ディファレンシャル・ディスプレイ(Differential Display)を用いて遺伝子発現を比較した。その結果動脈硬化巣で発現の亢進している3種類の遺伝子を取得し、うち1つはVIII型コラーゲンであった。他の2つについては新規の遺伝子であったため今回全配列を明らかにした。また、別途、ヒト及びマウスの心臓遺伝子ライブラリーから、上記遺伝子と相同の遺伝子を取得し、全配列を決定した。
前記動脈硬化巣で発現する2種類の新規遺伝子のうち1つはデータベースに全く未登録のものであった。この遺伝子は動脈以外でも多くの組織で発現しており組織の維持や再生などの基本的な病態に関係していると推測された。他の1つは登録されている機能不明の遺伝子からalternative splicingによって生じた産物であると考えられる。2つの遺伝子は、動脈硬化巣において発現し、病態に関係していることが確認された。
(本発明の遺伝子、該遺伝子によってコードされるポリペプチド及びその抗体)
本発明において、ApoEノックアウトマウスの動脈硬化巣からクローニングした新規遺伝子「F227」、「H2A」、「AK002873」及び「NM_0032374」の構造を、それぞれ配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に示した。該遺伝子がコードするポリペプチド(タンパク質)を、配列表の配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8に示した。なお、「AK002873」及び「NM_0032374」は、NCBIのデータベースで検索することができる。本発明は、該配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に示される塩基配列(遺伝子)若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列、更には、該塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドをコードするDNA配列を含むものである。
更に、次の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA;
(a)配列表の配列番号2及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列表の配列番号2及び配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチド、及び、次の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子;
(c)配列表の配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(d)配列表の配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチド、を含むものである。
また、本発明は、配列表の配列番号1、3、5又は7の塩基配列の遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈平滑筋細胞における該遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むものである。
本発明において、種々のDNA配列の変異は、周知の遺伝子工学的遺伝子変異手段によって、行うことができる。
なお、上記本発明の塩基配列において、「塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば、種々の要素を組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
更に、本発明は、配列表の配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、該配列表の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチドを含むものである。本発明のポリペプチドを取得するには、本発明の遺伝子を適宜の発現ベクター−宿主細胞発現系に導入し、発現することによって取得することができる。
更に、本発明は、本発明のポリペプチドによって誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。該抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクロナール抗体を挙げることができる。該抗体の作製は、本発明のポリペプチドを抗原として、常法により作製することができる。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドとの抗原抗体反応により、本発明遺伝子の平滑筋細胞における発現の有無の検出に利用することができ、動脈硬化症の診断に利用することができる。
(本発明の遺伝子及び該遺伝子によってコードされるポリペプチドの利用)
本発明において、動脈硬化巣からクローニングした新規遺伝子「F227」(配列表の配列番号1)及び「H2A」(配列表の配列番号3)、及び正常の平滑筋細胞からクローニングした「AK002873」及び「NM_0032374」は、該塩基配列のアンチセンス鎖等を用いることにより診断用プローブとして、動脈硬化症の診断に用いることができる。該診断用プローブや前記本発明ポリペプチドに特異的に結合する抗体を装備して、動脈硬化症診断キットとして利用することができる。
また、本発明のDNAを少なくとも1つ以上デバイス上に固定して、動脈硬化症診断用マイクロアレイとして利用することができる。該マイクロアレイには、VIII型コラーゲンのような動脈硬化症の病巣で発現している遺伝子を合わせて固定することができる。マイクロアレイの調製は、常法により行うことができる(Science 270,467−470,1995、細胞工学別冊 ゲノムサイエンスシリーズ▲1▼「DNAマイクロアレイと最新PCR法」株式会社秀潤社(2000年3月16日))。
本発明における動脈硬化症の診断方法は、被検組織として、平滑筋細胞における本発明の遺伝子やタンパク質(ポリペプチド)の発現を測定することよりなる。
遺伝子の検出には、汎用されているマイクロアレイ法、DNAチップ法又はノーザンブロッティング法等を便利に用いることができる。また、ATAC−PCR(adaptor−tagged competitive PCR)、TaqMan PCR、EST(expressed sequence tags)、SAGE(serial analyasis of gene expression)等の公知の遺伝子の検出方法等も適宜使用することができる。ポリペプチドの検出には、本発明の抗体を用いた免疫学的測定法、例えば放射免疫測定法(RIA法)、酵素免疫測定法(ELISA法)などの免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA法)等公知の免疫学的測定法を用いることができる。
本発明における動脈硬化症の診断は、本発明において取得した遺伝子の発現に基づく遺伝子産物(本発明のポリペプチド)の血中濃度を測定することにより行うこともできる。これらの診断法は、動脈硬化の定量的診断に適用可能である。
本発明における動脈硬化症の診断方法に用いる、平滑筋細胞における本発明の遺伝子やタンパク質(ポリペプチド)の発現の測定方法は、動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニングに用いることができる。動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニングを行うには、動脈硬化発症モデル動物に、被検物質を投与し、本発明の遺伝子の発現、及び/又は本発明のポリペプチドの生成を測定することにより行う。本発明において、動脈硬化症の診断における遺伝子の発現の診断には、定量的PCRを使用することができる。該PCRの実施に際しては、プライマーとして、「H2A」遺伝子に対しては配列表の配列番号9(Forward)及び配列番号10(Reverse)、「AK002873」に対しては、配列表の配列番号11(Forward)及び配列番号12(Reverse)を用いることができる。該動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニングに用いる、動脈硬化発症モデル動物としては、動脈硬化の自然発症モデルであるApoE欠損マウスが有利に利用することができる。ApoE欠損(apoE−/−)マウスは、動脈(大動脈)においてアテローム性動脈硬化性病変を自然発生的に発症し、これらの病変はヒトのアテローム性動脈硬化性病変に似た特徴を示す(Arterioscler Thromb 14,141−147,1994)。
本発明においては、本発明の遺伝子である、配列表の配列番号1、3、5又は7の塩基配列からなる遺伝子を用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、該アンチセンスオリゴヌクレオチドを動脈平滑筋細胞に導入して、該動脈硬化発症遺伝子の発現抑制を行い、動脈硬化症の予防又は治療を行うことができる。
該動脈硬化発症遺伝子の発現抑制を行うについて、アンチセンスオリゴヌクレオチドの調製を行うには、配列表の配列番号1、3、5又は7の塩基配列からなる遺伝子にストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該遺伝子の発現の抑制作用を有する塩基配列を調製する。アンチセンスオリゴヌクレオチドの大きさについては、遺伝子の発現を抑制できるものであれば特に制限はされないが、生体への投与及び安定性等を考慮すれば、12〜40塩基対、特に15〜25塩基対程度のものが好ましい。
アンチセンスオリゴヌクレオチドの動脈平滑筋細胞への導入は、この分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、動脈平滑筋細胞へ直接投与することができる。また、必要に応じて薬学的に許容される細胞内導入試薬、例えば、リポフェクチン試薬、リポフェクトアミン試薬、DOTAP試薬、Tfx試薬、リポソーム及び高分子担体等と共に投与することができる。この場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それ単独、或いは、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、稀釈剤、pH緩衝剤、可溶化剤、溶解補助剤等の調剤用配合成分を添加することができる。
アンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に投与するには、注射剤のような形で投与することができる。この場合には、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、水や生理食塩水又はブドウ糖溶液等に溶解させて調製し、必要に応じて緩衝剤、保存剤或いは安定化剤等を含有させて投与することができる。
また、細胞への取りこみの促進や標的とする細胞への指向性を高める目的で、アンチセンスオリゴヌクレオチドを発現させるようにデザインされたプラスミドやウイルスベクターを遺伝子治療用のベクターとして用いることができる。該ベクターとしては、例えば、ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、レトロウィルスベクター等のウイルスベクター等を挙げることができる。
また、本発明の配列表の配列番号3、5又は7に示される遺伝子及びその変異遺伝子を、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入し、活性化された平滑筋細胞や血管内皮等の血管細胞にアポトーシスを誘導することにより血管平滑筋細胞の動脈硬化形成を抑制することができる。該遺伝子の平滑筋細胞への導入は、真核細胞への公知の遺伝子導入方法を用いることができ、例えば、DNA−リン酸カルシウム沈殿法(リン酸カルシウム法)或いはリポフェクタミン等の市販試薬とDNAを混合して細胞を処理する方法(リポフェクション)、更には、レトロウイルス法、電気穿孔法等のトランスフェクション法を用いることができる。
この血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法を用いて、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞の治療を行うことにより、動脈硬化発症細胞の遺伝子治療を行うことができる。
また、本発明の配列表の配列番号3、5又は7の遺伝子は、活性化された細胞に、アポトーシスを誘導するので、該遺伝子を癌細胞に導入し、アポトーシスを誘導することにより、癌細胞や組織の死滅・除去を目的とした遺伝子治療に用いることができる。
実施例1.F277(配列表の配列番号1)及びH2A(配列表の配列番号3)遺伝子のクローニング及び同定
A.大動脈のプラーク(P)及びノンプラーク(NP)部分から得た平滑筋細胞の培養
エクスプラント法で平滑筋細胞(SMC)組織を樹立した。4.5g/lのグルコース、10%のウシ胎児血清(Gibco BRL社製)及び抗生物質(100μg/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン硫酸塩、及び25μg/mlのアンフォテリシンB)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)を用いて細胞を培養した。
B.培養細胞からのRNAの調製
トリ・リージェント(TRI REAGENT)(Sigma社製)を用い、上記培養細胞から以下の方法によりRNAの精製を行った。
(精製方法)
1.平板培地の表面積10cm2につき、1mlのトリ・リージェントをとり、5分間室温で放置する。
2.1.5ml用マイクロ遠心分離管に溶解液を1mlずつ分注する。
3.1mlずつ分注した溶解液に、0.2mlのクロロホルムを加え、15秒間、はげしく混和した後、室温で2〜15分間放置する。
4.4℃、12000×gで15分間遠心分離を行う。
5.溶解液の各チューブについて、無色の水溶液相(最上相)を新しいチューブに移す。
6.0.5mlのイソプロパノールを加え、混和した後、室温で5〜10分間放置する。
7.4℃、12000×gで10分間RNAをペレット化する。
8.75%のエタノール1mlでRNAペレットを洗浄し、4℃、7500×gで5分間、Vortexスターラーで回転する。
9.RNAペレットを乾燥し、次にRNaseフリーの水又はバッファーに再懸濁する。
C.ディファレンシャル・ディスプレイ法(Differential Display法)を用いた、大動脈のプラーク(P)及びノンプラーク(NP)の遺伝子発現の比較、解析
ディファレンシャル・ディスプレイ法(SCIENCE 257,967−971,1992;Molecular Biotechnology 10,261−267,1998)を用いて、P及びNPの遺伝子発現を比較、解析した。用いた方法を、以下に示す。
1.以下の反応混合物を用いて、37℃で30秒間20μgのトータルRNAをDNaseで処理した。
10UのRNase阻害剤(Rnasin、Promega社製)
10UのDNase I(Promega社製)
10mMのTris−HClバッファー(pH8.3)
50mMのKCl
1.5mMのMgCl2
20μgのトータルRNA
DEPC処理水を加えて50μlにする。
30℃,30分間
2.フェノール/クロロホルムで抽出する。
3.1/10Volの3MのNaAc pH4.8及び2.5Volのエタノールを使用し、−70℃で20分間沈澱させる。
4.4℃で5分間回転する。
5.20μlのDEPC処理水に再懸濁する。
6.65℃で5分間RNAを変性した後、氷冷する。
7.アンカーオリゴ−dT(T12NA、T12NT、T12NG、T12NC)プライマーを稀釈し、最終濃度を50μMとする。
8.(4つのチューブにおいて)逆転写する。
10μlのDEPC処理水
1μlのDNAフリー・トータルRNA
4μlの5×逆転写バッファー
2μlの0.1MのDTT
1μlの10mMのdNTPストック
1μlの逆転写酵素
1μlのT12NA,T12NT,T12NG、又はT12NC
(各々の反応に用いる)
37℃、60分間
9.PCR反応ストックを作る(総量100μl)
15μl 32P−dATP
50μl 10×PCRバッファー
5μl 0.2mMのdNTP
10μl Taqポリメラーゼ(5U/μl)
20μl H2O
10.それぞれのRNAサンプルを、逆転写に用いたのと同じT12NA、T12NT、T12NG、又はT12NCの四種類のアンカーオリゴ−dTプライマー(各RNAサンプルに4チューブ)と混合する。
2μl RT−PCR生成物
12μl RCR反応ストック
45μl H2O
3μl 各チューブ内のオリゴ−dTプラス・プライマー
(T12NA,T12NT,T12NG,又はT12NC)
11.各チューブに入っている前記溶液をエッペンドルフ小型チューブ(Eppendorf社製)三つ(それぞれ19μl)に分け、各チューブ(この場合では、三つの異なるランダム・プライマーを使用した)にそれぞれ1μlのランダム・プライマーを加え、更に各チューブに鉱物油を一滴加える。
12.PCRサイクル
94℃、5分間、以下の3ステップ、40サイクルにリンクする
94℃、30秒
40℃、2分間
72℃、30秒
72℃、5分間にリンク、4℃に維持
13.6%シーケンシャル・ゲルを調製する。
30g 尿素
6ml 5×TBEバッファー
9ml 38:2アクリルアミド
23ml 水、穏やかに混和
120μlの20%ASPに60μlのTEMEDを添加したもの
14.各PCR反応チューブに、ローディング・バッファー(シーケンシャル・ゲルで用いられるものと同じもの)を5μlずつ加える。
15.反応液を、95℃で3分間変性させる。
16.1×TBEバッファーを用いて、1300Vの電圧で20分間、ゲルをプレラン(Prerun)する。
17.相当するサンプル間でパラレルに、サンプルをのせる。
18.勾配ゲル中で1100Vの電圧で、1300Vの電圧で4〜5時間ゲルを電気泳動する。
19.ゲルドライヤーで1時間、ゲルを乾かす。
20.一晩X線フィルムに露光する。
上記比較、解析において、3匹のApoE欠損マウス(#1−3)に由来するプラーク(P)及びノンプラーク(NP)の培養平滑筋細胞の遺伝子発現を比較した結果のX線写真を第1図に示す。なお、図中のJ212は、VIII型コラーゲンを意味する。
D.特異的に発現するDNAの単離、増幅
以下の方法を用いて、動脈硬化症の平滑筋細胞に特異的に発現する遺伝子のDNAの単離、増幅を行った。
(DNAの単離、増幅法)
1.ゲルから発現変動するバンドを切りだし、37℃で1時間50μlのH2Oに入れ、その後5分間煮沸する。
2.二次的PCR
40μl 水
1μl ゲルから分離されたDNA画分
2μl 2mM dNTP
1μl オリゴ−T12NXプライマー(一次反応に対応)
1μl ランダム・プライマー(一次反応に対応)
5μl 10×PCRバッファー
鉱物油一滴を添加する。
3.前記(#12)と同様、PCRサイクリングを行う。
4.TBEバッファーにて、2%アガロース・ゲルを用いてサンプルを電気泳動する。
E.特異的に発現するDNAの精製
以下の方法を用いて、動脈硬化症の平滑筋細胞に特異的に発現する遺伝子のDNAの精製を行った。
(QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN社製)を用いた精製法)
1.カミソリでアガロース・ゲルからDNAバンドを切り取り、1.5mlのエッペンドルフチューブ(Eppendorf社製)に入れ、重量を計測する。
2.ゲル(100mg〜100μl)の3容量のバッファーQGを加える。
3.50℃、10分間インキュベートする(アガロースが完全に溶解するまで)。もし、溶液の色が紫になっていたら、10μlの3M酢酸ナトリウムを加える。
4.1ゲル容量のイソプロパノールを加え、混合する。
5.収集チューブにカラムを設置し、サンプルをカラムに注入し、更に1分間高速で遠心分離する。
6.流下通過物を捨て、再度カラムを収集チューブに設置し、0.5mlのQX1を注入し、1分間回転する。
7.バッファーPE0.75mlでカラムを洗浄する(1分間高速で)。
8.流下通過物を捨て、再度カラムを収集チューブに設置し、再度1分間回転する。
9.カラムを、1.5mlエッペンドルフチューブに設置する。
10.50μlの滅菌蒸留水でDNAを溶離する(1分間放置し、1分間回転する。)。
11.アガロース・ゲルでフラグメントを確認する。
F.ディファレンシャリーに発現したDNAのpGEM−Tベクターへのクローニング
以下の方法により、ディファレンシャリーに発現したDNAをpGEM−Tベクターへクローニングした。
(pGEM−Tベクターシステム(Promega社製))
1.以下のように、リゲーション反応の準備をする。
2×ラピッド・リゲーション・バッファー:5μl
pGEM−Tベクター:1μl
T4DNAリガーゼ:1μl
PCR生成物:3μl
2.混合し、4℃で一晩インキュベートする。
3.JM109コンピテントセルを用いて形質転換を行う。
G.シークエンシング
蛍光標識によるダイデオキシチェーンターミネーション法を用いて、DNA配列の分析を行った。
本発明において取得した遺伝子のDNA配列の分析結果について、F277の塩基配列を配列表の配列番号1に、及びH2Aの塩基配列を配列表の配列番号3に示す。該遺伝子のコーディング領域におけるペプチド配列を、それぞれ配列表の配列番号2(F277)及び4(H2A)に示す。
H.5′RACE
ディファレンシャリーに発現したDNAを、5′末端に伸長するために、5′RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)システム(Gibco BRL社製)を用いて5′RACEを行った(Proc.Natl.Acad.Sci,USA,85,8998−9002,1988)。
実験は、5′RACEプロトコル(5′RACE Instruction Manual)に従って行った。
I.cDNAライブラリーPCR
(マウス腎臓cDNA(Takara社製))
ディファレンシャリーに発現した遺伝子の全cDNAをクローニングするために、マウス腎臓のcDNAライブラリーを用いてPCRを行った。
ライブラリーを構築するベクター及び関係する遺伝子の塩基配列から順方向及び逆方向のプライマーをそれぞれ設計した。
[F277(配列表の配列番号1)及びH2A(配列表の配列番号3)遺伝子のホモロジー検索]
本発明において、取得し、同定した遺伝子について、BLASTホモロジー検索を実施した。クローンF277について実施したホモロジー検索の結果を第2図に、及びクローンH2Aについて実施した結果を第3図に示す。
ホモロジー検索の結果、クローンF277は、近似の遺伝子が報告されていない全く新規な遺伝子であることが確認された。また、クローンH2Aは、「正常」マウス全遺伝子データーベース検索によりヒットした相同遺伝子とC末端側のアミノ酸34個が全く相違している新規な遺伝子であることが確認された。
実施例2.「AK002873」(配列表の配列番号5)及び「NM_0032374」(配列表の配列番号7)遺伝子のクローニング及び同定
正常なヒト及びマウスの心臓cDNAライブラリーから、実施例1と同様にして、該細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している実施例1の遺伝子と相同な遺伝子をクローニングし、同定した。該遺伝子を、一つは「AK002873」(配列表の配列番号5)と、及び他の一つは「NM_0032374」(配列表の配列番号7)と命名し、該遺伝子の構造を同配列表に示した。この実施例で取得したAK002873(健常マウス由来)及びNM_0032374(健常ヒト由来)遺伝子と、実施例1で取得したH2A(動脈硬化症発症マウス由来)遺伝子がコードするアミノ酸配列の対比を、第4図に示す。
第4図から明らかなように、動脈硬化症において発現している遺伝子(H2A)と正常血管平滑筋細胞の遺伝子とは、C末から21番目のR(Arg)(枠内)より下流で顕著に相違している。したがって、これらの遺伝子をPCRを用いて特異的に増幅するには、該R(Arg)の上流及び下流のプライマー1対を用いることにより、行うことができる。
実施例3.動脈硬化症発現遺伝子の機能の解析
[動脈硬化症発現遺伝子(H2A)発現ベクターの作製]
クローニングを容易に行うために、PCR法を用いてpcDNA−H2Aを作製した。オリゴヌクレオチドプライマーがH2Aの配列に基づいた翻訳開始点と終止コドンを含むように設計した(H2Aセンスプライマー:5’−ATGGCGGCTTTGCGGCCCGGAAGC−3’、アンチセンスプライマー:5’−CACTTCCACATCGCACTGTTCATC−3’)。特異的なKpnI及びXhoIクローニング部位を作製するために、KpnI部位をセンスプライマーの5´末端で合成し、XhoI部位をアンチセンスプライマーの5´末端で合成した。0.5μMのセンス及びアンチセンスプライマー、200μMの各dNTP、及び2.5UのPyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を含む1×PyrobestバッファーII中でプラスミドDNAを0.1ng増幅した。増幅反応はDNA thermocycler(Perkin−Elmer Cetus Instruments社製)を用いて行った。PCR産物をKpnI及びXhoIで消化し、QIA quick Gel Extraction kit(Qiagen社製)で精製した後、DNA断片をpcDNA3.1(+)(Invitrogen社製)のKpnI部位とXhoI部位内でクローニングし、pcDNA−H2Aを作製した。
[培養平滑筋細胞へのトランスフエクション]
説明書記載の方法で、陽イオン脂質リポフェクトアミン(Gibco−BRL社製)を用いてマウス血管平滑筋細胞(VSMC)へのトランスフェクションを行った。顕微鏡による解析のために、2ウェルLab−Tekチェンバーカバーグラス(Nalge Nunc社製)1枚あたり、1×104個の細胞を、1μgのプラスミドDNAと4μLのリポフェクトアミンを各チェンバー毎に使用して24時間後にトランスフェクトした。
[アポトーシスを起こした細胞の形態的解析と核染色]
核の形態的な解析を行うため、VSMCを組織培養チェンバースライド(Nalge Nunc社製)を用いて培養した。断片化したアポトーシスを起こした核を解析するために、VSMCをメタノール/酢酸=3:1(v/v)で固定し、蛍光染料(Hoechst 33258,10μmol/L)で染色した。写真はニコンEFD2蛍光顕微鏡で撮影した(第5図)。
トランスフェクトした細胞培養物の形態的解析により、コントロールにおいては細胞の生存に変化はなかったが(第5図A)、pcDNA−H2Aをトランスフェクトした培養細胞では細胞死が起こることが明らかになった(第5図B)。コントロールにおいては染色体の染色は見られなかったが(第5図C、E)、(pcDNA−H2Aをトランスフェクトした細胞では、)染色体が均一に染色されたアポトーシスを起こしている核中に広がっていたことから、通常の核構造とアポトーシスの特性が失われていることが示唆された(第5図D、F)。以上の結果からH2Aの発現は血管平滑筋細胞にアポトーシスを起こさせていることが明らかになった。血管平滑筋細胞は動脈硬化の発症に際して活性化され、増殖、遊走と細胞外基質の産生を開始するが、H2Aは、血管平滑筋細胞にアポトーシスを誘導して動脈硬化形成を抑制しているものと考えられる。H2Aを動脈硬化血管で遺伝子治療により発現させれば動脈硬化の進展を抑制することができる。
産業上の利用可能性
本邦死因の2、3位を占める脳卒中、心臓病は、動脈硬化が原因となって発症する疾患である。従って、動脈硬化の発症、進展を予防することは臨床上最も重要な課題の1つとなっている。本発明においては、動脈硬化症の病巣と正常血管からそれぞれの平滑筋細胞を培養し、ディファレンシャル・ディスプレイを用いて遺伝子発現を比較し、その結果動脈硬化症の病巣で発現の亢進している2種類の新規遺伝子と、該遺伝子と相同の、正常の平滑筋細胞で発現している遺伝子を取得した。本遺伝子の取得、同定により、この遺伝子の発現の測定を行うことが可能となり、動脈硬化症の診断や該測定法を用いた動脈硬化症の予防及び治療薬のスクリーニングが可能となった。更に、本発明により、動脈硬化症の病巣において発現し、病態に関係する、これらの遺伝子の発現を抑制することにより、動脈硬化の予防及び治療を可能とする。また、本発明においては、動脈硬化症において発現している本発明の遺伝子が、血管細胞にアポトーシスを誘導することを確認しており、該遺伝子を動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入して、動脈硬化形成を抑制することができる。したがって、該方法により、遺伝子治療を行うことができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
第1図は、3匹のApoE欠損マウス(#1−3)から、プラーク(P)とノンプラーク(NP)の平滑筋細胞を培養して遺伝子発現を比較した結果のX線写真を示す図である。
第2図は、取得したクローンF277について、BLASTホモロジー検索を実施した結果を示す図である。
第3図は、取得したクローンH2Aについて、BLASTホモロジー検索を実施した結果を示す図である。
第4図は、本発明の実施例において取得した遺伝子、H2A、AK002873、NM_032374がコードするアミノ酸配列を対比した結果を示す図である。
第5図は、本発明の動脈硬化症で発現している遺伝子の導入により、アポトーシスを起こした細胞の形態的解析のために、蛍光染料で染色した核を蛍光顕微鏡で撮影した写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化症の病巣において特異的に発現している遺伝子、ポリペプチド、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
平滑筋細胞は、血管壁の形態形成及び薬理的反応に関与している重要な構成要素である。通常の場合、成人大動脈壁内側の平滑筋細胞は分裂せず、筋細胞の収縮に特化していると考えられている(収縮型)。しかし場合によっては、血管の平滑筋細胞がある程度の合成能力、細胞外基質の産出、及び細胞分裂を示すことがある。動脈硬化巣における平滑筋細胞は、増殖、遊走し細胞外基質を産生することが知られている(増殖型)。これらは平滑筋細胞が異常状態に転換したことによると考えられているが、このような転換は、アテローム性動脈硬化症の病因を研究する上で重要である(Nature 362, 801-809, 1990;Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 70, 1753-1756, 1973;Circ. Res. 58, 427-444, 1986)。
【0003】
しかし平滑筋細胞が収縮型から増殖型に移行するメカニズムに関しては、現在も明らかでない。平滑筋細胞が増殖能力を有することがあることは多くの研究がすでに明らかにしており、ヒト、霊長類、ウサギ、又はラット動脈由来の平滑筋細胞を培養液中に分散すると、自然に合成能力を有するフェノタイプに転換することがすでに知られている(Physiol. Rev. 59, 1-61, 1979;Lab. Invest. 33, 16-27, 1975;Cell Tiss. Res. 177, 503-522, 1977)。最近の研究から、平滑筋細胞を単離してクローニングすると、培養液中で倍化を繰り返しても、分化型(収縮型)細胞又は未分化型(増殖型)細胞はそれぞれの遺伝子発現パターンを部分的に維持し続けることも知られている(Am. J. Pathol. 144, 1068-1081, 1994;Arterioscler. Thromb. 13, 1449-1455, 1993)。このことから、これら2種類のフェノタイプを有する細胞は、正常血管壁において安定的に共存でき、合成型フェノタイプを有する細胞は、病気の過程中において刺激に応答することで増殖することがわかる。
【0004】
アテローム性動脈硬化症の動脈及び正常な動脈から得た細胞を比較すると、増殖率に関して差があることが知られている。例えば、ウサギのアテローム性動脈硬化症の動脈又はバルーン擦過法で肥厚したラットの動脈から得た細胞を、対照である正常動脈由来の細胞との比較をしたところ、活発な増殖活動がみられることがわかっている(Atherosclerosis 36, 241-248, 1980;Med. Biol. 62, 255-259, 1984;Arch. Pathol. Lab. Med. 112, 987-996, 1988;Artery 14, 266-282, 1987)。一方、ヒト(Am J Pathol 78, 175-190,1975)及びウサギ(Med Biol 60, 221-225,1982)から、アテローム性動脈硬化性病変が進行した動脈の細胞及び正常な動脈の細胞を得て比較したところ、違いはみられないことも知られている。さらに、ヒトから得たアテローム性動脈硬化プラーク由来細胞を調べたところ、対照である血管由来の細胞と比べて細胞死(アポトーシス)が起こりやすいこともすでにわかっている(Circ Res 81,591-599,1997)。
【0005】
動物個体中のアテローム性動脈硬化性病変が進行した部分及び正常動脈部分から得た平滑筋細胞を比較するような研究はこれまで行われていない。また、細胞増殖の促進及び抑制因子に対して応答する際の、プラーク(P)由来及びノンプラーク(NP)由来の平滑筋細胞を比較する研究もこれまで行われていない。さらに、進行したアテローム性動脈硬化症動脈プラーク中における平滑筋細胞が示す特徴に関してもこれまで研究が行われていなかった。
【0006】
動脈硬化の発症においては、血管平滑筋細胞の増殖が中心的役割を果たしている。しかし、従来、これらの平滑筋細胞の活性化の原因となっている遺伝子は、明かにされていなかった。
【0007】
近年、動脈硬化の原因遺伝子に焦点を当てたゲノム研究が進められた。1995年12月には米国Dawin Molecular社が、フランスRPR Gencell部門、フランスGenethonと手を組んで、家系分析とポジショナル・クローニングによる粥状(アテローム性)動脈硬化の病因遺伝子の探索に着手したことが伝えられている。また、1995年10月には米国Millenium Pharmaceuticalsと米国Eli Lilly社が動脈硬化の原因遺伝子に基づいた治療薬のスクリーニングに乗り出していることが、伝えられている。
【0008】
最近、血管傷害に応答して、血管平滑筋細胞によるVIII型コラーゲンの遺伝子が発現していることが報告されている(Circulation Research,80, 532-541,1997)。
【0009】
本発明者は、平滑筋細胞の活性化の原因となっている遺伝子の発現を解明すべく研究を進め、それらの遺伝子の一つとして、α1VIII型コラーゲンの遺伝子があることをつきとめ、これを公表した(J. Vasc. Res. 37, 158-169,2000)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとしている課題】
【0010】
本発明の課題は、動脈硬化症の病巣において特異的に発現している遺伝子及びポリペプチド、及び、正常な血管平滑筋細胞において発現している該遺伝子及びポリペプチドに相同の遺伝子及びポリペプチド、更には、それらの利用を提供することにある。
【問題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究の結果、アポリポタンパクE(ApoE)欠損マウス(アポEノックアウトマウス)の動脈硬化症の病巣細胞から、該細胞において特異的に発現している遺伝子をクローニングし、更に、マウス及びヒトの正常な血管平滑筋細胞において発現している該遺伝子に相同の遺伝子をクローニングして本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、今回本発明者は、正常および動脈硬化巣よりそれぞれ培養平滑筋細胞を作製し比較検討を行った。実験材料として、動脈硬化の自然発症モデルであるApoEのノックアウトマウスから胸部大動脈を摘出し、動脈硬化プラークおよび正常部分より移植片培養により培養平滑筋細胞を作製した。増殖速度は[3H]-Thymidineの取込みで測定し、遺伝子発現の比較にはディファレンシャル・ディスプレイ(Differential Display)法を用いた。その結果、正常血管及び動脈硬化巣の培養平滑筋細胞は形態学的な差異を示さなかった。増殖速度は培養細胞株によって違いは認められるものの正常血管および動脈硬化巣間での有意な差は認められなかった。増殖促進因子および抑制因子に対する反応性においても有意な差はみられなかった。
【0013】
一方ディファレンシャル・ディスプレイ(Differential Display)法によって遺伝子発現を比較した結果、数種類の遺伝子において発現の差がみられた。遺伝子配列を調べた結果それらの一つはVIII型コラーゲンであり、動脈硬化平滑筋細胞において発現が亢進していた。VIII型コラーゲンの発現亢進はin vivoにおいても確認された。
【0014】
そして、発現が亢進している遺伝子について同定を行った結果、発現が亢進している遺伝子の中に、今まで知られていない未知の遺伝子が存在することが確認された。これらの新規遺伝子をクローニングして、その構造を決定し、一つは「F227」(配列表の配列番号1)と、及び他の一つは「H2A」(配列表の配列番号3)と命名した。更に、マウス及びヒトの正常な組織からは、該組織において発現している上記遺伝子に相同の遺伝子の「AK002873」(配列表の配列番号5)と「NM_0032374」(配列表の配列番号7をクローニングしてその構造を決定した。
【0015】
本発明において取得、同定した遺伝子の発現及び該遺伝子によってコードされるタンパク質の生成を動脈硬化症診断用の遺伝子マーカー、ペプチドマーカーとして検出することで測定することにより、動脈硬化症の診断を行うことが可能であり、更に該遺伝子の発現及びタンパク質の生成の測定を行うことにより、動脈硬化症の予防又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。更には、動脈平滑筋細胞における該遺伝子の発現を抑制することにより、或いは、該遺伝子の導入によりアポトーシスを誘導して、動脈硬化症の予防或いは治療を可能とする。
【0016】
すなわち、本発明は、(1)配列表の配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNAや、(2)上記(1)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドをコードすることを特徴とするDNAや、(3)以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA。(a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドや、(4)配列表の配列番号3に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNAや、(5)上記(4)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているタンパク質をコードすることを特徴とするDNAや、(6)以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA。(a)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(b)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドからなる。
【0017】
また、本発明は、(7)配列表の配列番号5に示される、血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列、若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNAや、(8)上記(7)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードすることを特徴とする遺伝子や、(9)以下の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子。(c)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(d)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドや、(10)配列表の配列番号7に示される、血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列、若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNAや、(11)上記(10)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するするポリペプチドをコードすることを特徴とする遺伝子や、(12)以下の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子。(c)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(d)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドからなる。
【0018】
また本発明は、(13)上記(1)、(4)、(7)、又は(10)記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈平滑筋細胞における該(1)、(4)、(7)、又は(10)記載の塩基配列からなる遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドや、(14)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチドや、(15)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチドや、(16)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチドや、(17)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチドや、(18)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなり、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とするポリペプチドや、(19)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドと類似構造を有するポリペプチドや、(20)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなり、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とするポリペプチドや、(21)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドと類似構造を有するポリペプチドや、(22)上記(14)〜(21)のいずれか記載のポリペプチドを用いて誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする抗体や、(23)抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする上記(22)記載の抗体や、(24)抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする上記(22)記載の抗体からなる。
【0019】
また本発明は、(25)上記(1)、(4)、(7)、又は(10)記載の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する動脈硬化症診断用プローブや、(26)上記(1)、(4)、(7)、又は(10)記載の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列が、上記(1)、(4)、(7)、又は(10)記載の塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部からなる上記(25)記載の動脈硬化症診断用プローブや、(27)上記(25)又は(26)記載のDNAの少なくとも1つ以上を固定化させたことを特徴とする動脈硬化症診断用マイクロアレイ又はDNAチップや、(28)上記(22)〜(24)のいずれか記載の抗体及び/又は上記(25)又は(26)記載の診断用プローブを含有することを特徴とする動脈硬化症診断薬や、(29)上記(22)〜(24)のいずれか記載の抗体及び/又は上記(25)又は(26)記載の診断用プローブを含有することを特徴とする動脈硬化症診断キットからなる。
【0020】
さらに本発明は、(30)被検組織から試料を得、該試料における上記(1)、(4)、(7)、又は(10)記載の遺伝子の発現を測定することを特徴とする動脈硬化症の診断方法や、(31)上記(30)記載の遺伝子の発現の測定が、定量的PCRの使用を含んでいることを特徴とする動脈硬化症の診断方法や、(32)PCRプライマーとして、配列表の配列番号9(Forward)と配列表の配列番号10(Reverse)のプライマー、及び/又は配列表の配列番号11(Forward)と配列表の配列番号12(Reverse)のプライマーを用いることを特徴とする上記(31)記載の動脈硬化症の診断方法や、(33)上記(30)〜(32)のいずれか記載の遺伝子の発現の測定が、マイクロアレイ法、DNAチップ法、RT−PCR法又はノーザンブロッティング法を用いて行われることを特徴とする動脈硬化症の診断方法や、(34)被検組織から試料を取得、培養し、該試料における遺伝子の発現により生成される配列表の配列番号2、4、6及び8に記載されるポリペプチドの一つ以上を測定することを特徴とする動脈硬化症の診断方法や、(35)上記(22)〜(24)のいずれか記載の抗体を用いることを特徴とする上記(34)記載の動脈硬化症の診断方法や、(36)動脈硬化発症モデル動物に、被検物質を投与し、配列表の配列番号1、4、7及び10に記載される塩基配列を有する遺伝子の一つ以上の遺伝子の発現、及び/又は配列表の配列番号2、4、6及び8に記載されるポリペプチドの一つ以上のポリペプチド又はその部分ポリペプチドの生成を測定することを特徴とする動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニング方法や、(37)動脈硬化発症モデル動物が、ApoE欠損マウスであることを特徴とする上記(36)記載の動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニング方法や、(38)動脈平滑筋細胞に、上記(13)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、動脈平滑筋細胞における該上記(1)、(4)、(7)又は(10)記載の塩基配列からなる遺伝子の発現を抑制することを特徴とする動脈硬化発症遺伝子の発現抑制方法や、(39)上記(4)〜(12)のいずれか記載のDNA遺伝子を、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入し、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とする血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法や、(40)上記(39)記載の血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法を用いて動脈硬化症を発症している平滑筋細胞の治療を行うことを特徴とする動脈硬化発症細胞の遺伝子治療方法からなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(遺伝子のクローニング、同定)
本邦死因の2、3位を占める脳卒中、心臓病は動脈硬化が原因となって発症する疾患である。従って、動脈硬化の発症、進展を予防することは臨床上最も重要な課題の1つとなっている。動脈硬化の発症、進展の機構を解明するには、動脈硬化症の病巣で発現している遺伝子を取得し、クローニングすることが重要となる。今回、本発明者は動脈硬化の自然発症モデルであるApoEノックアウトマウスからの動脈硬化巣と正常血管からそれぞれ平滑筋細胞を単離・培養し、ディファレンシャル・ディスプレイ(Differential Display)を用いて遺伝子発現を比較した。その結果動脈硬化巣で発現の亢進している3種類の遺伝子を取得し、うち1つはVIII型コラーゲンであった。他の2つについては新規の遺伝子であったため今回全配列を明らかにした。また、別途、ヒト及びマウスの心臓遺伝子ライブラリーから、上記遺伝子と相同の遺伝子を取得し、全配列を決定した。
【0022】
前記動脈硬化巣で発現する2種類の新規遺伝子のうち1つはデータベースに全く未登録のものであった。この遺伝子は動脈以外でも多くの組織で発現しており組織の維持や再生などの基本的な病態に関係していると推測された。他の1つは登録されている機能不明の遺伝子からalternative splicingによって生じた産物であると考えられる。2つの遺伝子は、動脈硬化巣において発現し、病態に関係していることが確認された。
【0023】
(本発明の遺伝子、該遺伝子によってコードされるポリペプチド及びその抗体)
本発明において、クローニングした新規遺伝子「F227」、「H2A」、「AK002873」及び「NM_0032374」の構造を、それぞれ配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に示した。該遺伝子がコードするポリペプチド(タンパク質)を、配列表の配列番号2、配列番号4、配列番号6、及び配列番号8に示した。なお、「AK002873」及び「NM_0032374」は、NCBIのデータベースで検索することができる。本発明は、該配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、及び配列番号7に示される塩基配列(遺伝子)若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列、更には、該塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドをコードするDNA配列を含むものである。
【0024】
更に、次の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA;
(a)配列表の配列番号2及び配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列表の配列番号2及び配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチド、
及び、次の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子;
(c)配列表の配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(d)配列表の配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチド、
を含むものである。
【0025】
また、本発明は、配列表の配列番号1、3、5又は7の塩基配列の遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈平滑筋細胞における該遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むものである。
【0026】
本発明において、種々のDNA配列の変異は、周知の遺伝子工学的遺伝子変異手段によって、行うことができる。
【0027】
なお、上記本発明の塩基配列において、「塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば、種々の要素を組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0028】
更に、本発明は、配列表の配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、該配列表の配列番号に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチドを含むものである。本発明のポリペプチドを取得するには、本発明の遺伝子を適宜の発現ベクター−宿主細胞発現系に導入し、発現することによって取得することができる。
【0029】
更に、本発明は、本発明のポリペプチドによって誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む。該抗体としては、モノクローナル抗体及びポリクロナール抗体を挙げることができる。該抗体の作製は、本発明のポリペプチドを抗原として、常法により作製することができる。本発明の抗体は、本発明のポリペプチドとの抗原抗体反応により、本発明遺伝子の平滑筋細胞における発現の有無の検出に利用することができ、動脈硬化症の診断に利用することができる。
【0030】
(本発明の遺伝子及び該遺伝子によってコードされるポリペプチドの利用)
本発明において、動脈硬化巣からクローニングした新規遺伝子「F227」(配列表の配列番号1)及び「H2A」(配列表の配列番号3)、及び正常の平滑筋細胞からクローニングした「AK002873」及び「NM_0032374」は、該塩基配列のアンチセンス鎖等を用いることにより診断用プローブとして、動脈硬化症の診断に用いることができる。該診断用プローブや前記本発明ポリペプチドに特異的に結合する抗体を装備して、動脈硬化症診断キットとして利用することができる。
【0031】
また、本発明のDNAを少なくとも1つ以上デバイス上に固定して、動脈硬化症診断用マイクロアレイとして利用することができる。該マイクロアレイには、VIII型コラーゲンのような動脈硬化症の病巣で発現している遺伝子を合わせて固定することができる。マイクロアレイの調製は、常法により行うことができる(Science 270, 467−470, 1995、細胞工学別冊 ゲノムサイエンスシリーズ(1)「DNAマイクロアレイと最新PCR法」株式会社秀潤社(2000年3月16日))。
【0032】
本発明における動脈硬化症の診断方法は、被検組織として、平滑筋細胞における本発明の遺伝子やタンパク質(ポリペプチド)の発現を測定することよりなる。
【0033】
遺伝子の検出には、汎用されているマイクロアレイ法、DNAチップ法又はノーザンブロッティング法等を便利に用いることができる。また、ATAC−PCR(adaptor-tagged competitive PCR)、TaqMan PCR、EST(expressed sequence tags)、SAGE(serial analyasis of gene expression)等の公知の遺伝子の検出方法等も適宜使用することができる。ポリペプチドの検出には、本発明の抗体を用いた免疫学的測定法、例えば放射免疫測定法(RIA法)、酵素免疫測定法(ELISA法)などの免疫測定法、蛍光免疫測定法(FIA法)等公知の免疫学的測定法を用いることができる。
【0034】
本発明における動脈硬化症の診断は、本発明において取得した遺伝子の発現に基づく遺伝子産物(本発明のポリペプチド)の血中濃度を測定することにより行うこともできる。これらの診断法は、動脈硬化の定量的診断に適用可能である。
【0035】
本発明における動脈硬化症の診断方法に用いる、平滑筋細胞における本発明の遺伝子やタンパク質(ポリペプチド)の発現の測定方法は、動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニングに用いることができる。動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニングを行うには、動脈硬化発症モデル動物に、被検物質を投与し、本発明の遺伝子の発現、及び/又は本発明のポリペプチドの生成を測定することにより行う。本発明において、動脈硬化症の診断における遺伝子の発現の診断には、定量的PCRを使用することができる。該PCRの実施に際しては、プライマーとして、「H2A」遺伝子に対しては配列表の配列番号9(Forward)及び配列番号10(Reverse)、「AK002873」に対しては、配列表の配列番号11(Forward)及び配列番号12(Reverse)を用いることができる。該動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニングに用いる、動脈硬化発症モデル動物としては、動脈硬化の自然発症モデルであるApoE欠損マウスが有利に利用することができる。ApoE欠損(apoE−/−)マウスは、動脈(大動脈)においてアテローム性動脈硬化性病変を自然発生的に発症し、これらの病変はヒトのアテローム性動脈硬化性病変に似た特徴を示す(Arterioscler Thromb 14, 141-147, 1994)。
【0036】
本発明においては、本発明の遺伝子である、配列表の配列番号1、3、5又は7の塩基配列からなる遺伝子を用いてアンチセンスオリゴヌクレオチドを調製し、該アンチセンスオリゴヌクレオチドを動脈平滑筋細胞に導入して、該動脈硬化発症遺伝子の発現抑制を行い、動脈硬化症の予防又は治療を行うことができる。
【0037】
該動脈硬化発症遺伝子の発現抑制を行うについて、アンチセンスオリゴヌクレオチドの調製を行うには、配列表の配列番号1、3、5又は7の塩基配列からなる遺伝子にストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該遺伝子の発現の抑制作用を有する塩基配列を調製する。アンチセンスオリゴヌクレオチドの大きさについては、遺伝子の発現を抑制できるものであれば特に制限はされないが、生体への投与及び安定性等を考慮すれば、12〜40塩基対、特に15〜25塩基対程度のものが好ましい。
【0038】
アンチセンスオリゴヌクレオチドの動脈平滑筋細胞への導入は、この分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、動脈平滑筋細胞へ直接投与することができる。また、必要に応じて薬学的に許容される細胞内導入試薬、例えば、リポフェクチン試薬、リポフェクトアミン試薬、DOTAP試薬、Tfx試薬、リポソーム及び高分子担体等と共に投与することができる。この場合、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、それ単独、或いは、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、稀釈剤、pH緩衝剤、可溶化剤、溶解補助剤等の調剤用配合成分を添加することができる。
【0039】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞に投与するには、注射剤のような形で投与することができる。この場合には、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、水や生理食塩水又はブドウ糖溶液等に溶解させて調製し、必要に応じて緩衝剤、保存剤或いは安定化剤等を含有させて投与することができる。
【0040】
また、細胞への取りこみの促進や標的とする細胞への指向性を高める目的で、アンチセンスオリゴヌクレオチドを発現させるようにデザインされたプラスミドやウイルスベクターを遺伝子治療用のベクターとして用いることができる。該ベクターとしては、例えば、ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、アデノウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、レトロウィルスベクター等のウイルスベクター等を挙げることができる。
【0041】
また、本発明の配列表の配列番号3、5又は7に示される遺伝子及びその変異遺伝子を、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入し、活性化された平滑筋細胞や血管内皮等の血管細胞にアポトーシスを誘導することにより血管平滑筋細胞の動脈硬化形成を抑制することができる。該遺伝子の平滑筋細胞への導入は、真核細胞への公知の遺伝子導入方法を用いることができ、例えば、DNA−リン酸カルシウム沈殿法(リン酸カルシウム法)或いはリポフェクタミン等の市販試薬とDNAを混合して細胞を処理する方法(リポフェクション)、更には、レトロウイルス法、電気穿孔法等のトランスフェクション法を用いることができる。
【0042】
この血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法を用いて、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞の治療を行うことにより、動脈硬化発症細胞の遺伝子治療を行うことができる。
【0043】
また、本発明の配列表の配列番号3、5又は7の遺伝子は、活性化された細胞に、アポトーシスを誘導するので、該遺伝子を癌細胞に導入し、アポトーシスを誘導することにより、癌細胞や組織の死滅・除去を目的とした遺伝子治療に用いることができる。
【0044】
(実施例)
【0045】
(実施例1)
[F277(配列表の配列番号1)及びH2A(配列表の配列番号3)遺伝子のクローニング及び同定]
A.大動脈のプラーク(P)及びノンプラーク(NP)部分から得た平滑筋細胞の培養
エクスプラント法で平滑筋細胞(SMC)組織を樹立した。4.5g/lのグルコース、10%のウシ胎児血清(Gibco BRL社製)及び抗生物質(100μg/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン硫酸塩、及び25μg/mlのアンフォテリシンB)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)を用いて細胞を培養した。
【0046】
B.培養細胞からのRNAの調製
トリ・リージェント(TRI REAGENT)(Sigma社製)を用い、上記培養細胞から以下の方法によりRNAの精製を行った。
(精製方法)
1.平板培地の表面積10cm2につき、1mlのトリ・リージェントをとり、5分間室温で放置する。
2.1.5ml用マイクロ遠心分離管に溶解液を1mlずつ分注する。
3.1mlずつ分注した溶解液に、0.2mlのクロロホルムを加え、15秒間、はげしく混和した後、室温で2〜15分間放置する。
4.4℃、12000×gで15分間遠心分離を行う。
5.溶解液の各チューブについて、無色の水溶液相(最上相)を新しいチューブに移す。
6.0.5mlのイソプロパノールを加え、混和した後、室温で5〜10分間放置する。
7.4℃、12000×gで10分間RNAをペレット化する。
8.75%のエタノール1mlでRNAペレットを洗浄し、4℃、7500×gで5分間、Vortexスターラーで回転する。
9.RNAペレットを乾燥し、次にRNaseフリーの水又はバッファーに再懸濁する。
【0047】
C.ディファレンシャル・ディスプレイ法(Differential Display法)を用いた、大動脈のプラーク(P)及びノンプラーク(NP)の遺伝子発現の比較、解析
ディファレンシャル・ディスプレイ法(SCIENCE 257, 967-971, 1992; Molecular Biotechnology 10, 261-267, 1998)を用いて、P及びNPの遺伝子発現を比較、解析した。用いた方法を、以下に示す。
1.以下の反応混合物を用いて、37℃で30秒間20μgのトータルRNAをDNaseで処理した。
10UのRNase阻害剤(Rnasin、Promega社製)
10UのDNase I(Promega社製)
10mMのTris−HClバッファー(pH8.3)
50mMのKCl
1.5mMのMgCl2
20μgのトータルRNA
DEPC処理水を加えて50μlにする。
30℃,30分間
2.フェノール/クロロホルムで抽出する。
3.1/10Volの3MのNaAc pH4.8及び2.5Volのエタノールを使用し、−70℃で20分間沈澱させる。
4.4℃で5分間回転する。
5.20μlのDEPC処理水に再懸濁する。
6.65℃で5分間RNAを変性した後、氷冷する。
7.アンカーオリゴ−dT(T12NA、T12NT、T12NG、T12NC)プライマーを稀釈し、最終濃度を50μMとする。
8.(4つのチューブにおいて)逆転写する。
10μlのDEPC処理水
1μlのDNAフリー・トータルRNA
4μlの5×逆転写バッファー
2μlの0.1MのDTT
1μlの10mMのdNTPストック
1μlの逆転写酵素
1μlのT12NA,T12NT,T12NG、又はT12NC
(各々の反応に用いる)
37℃、60分間
9.PCR反応ストックを作る(総量100μl)
15μl 32P−dATP
50μl 10×PCRバッファー
5μl 0.2mMのdNTP
10μl Taqポリメラーゼ(5U/μl)
20μl H2O
10.それぞれのRNAサンプルを、逆転写に用いたのと同じT12NA、T12NT、T12NG、又はT12NCの四種類のアンカーオリゴ−dTプライマー(各RNAサンプルに4チューブ)と混合する。
2μl RT−PCR生成物
12μl RCR反応ストック
45μl H2O
3μl 各チューブ内のオリゴ−dTプラス・プライマー
(T12NA,T12NT,T12NG,又はT12NC)
11.各チューブに入っている前記溶液をエッペンドルフ小型チューブ(Eppendorf社製)三つ(それぞれ19μl)に分け、各チューブ(この場合では、三つの異なるランダム・プライマーを使用した)にそれぞれ1μlのランダム・プライマーを加え、更に各チューブに鉱物油を一滴加える。
12.PCRサイクル
94℃、5分間、以下の3ステップ、40サイクルにリンクする
94℃、30秒
40℃、2分間
72℃、30秒
72℃、5分間にリンク、4℃に維持
13.6%シーケンシャル・ゲルを調製する。
30g 尿素
6ml 5×TBEバッファー
9ml 38:2アクリルアミド
23ml 水、穏やかに混和
120μlの20%ASPに60μlのTEMEDを添加したもの
14.各PCR反応チュ−ブに、ローディング・バッファー(シーケンシャル・ゲルで用いられるものと同じもの)を5μlずつ加える。
15.反応液を、95℃で3分間変性させる。
16.1×TBEバッファーを用いて、1300Vの電圧で20分間、ゲルをプレラン(Prerun)する。
17.相当するサンプル間でパラレルに、サンプルをのせる。
18.勾配ゲル中で1100Vの電圧で、1300Vの電圧で4〜5時間ゲルを電気泳動する。
19.ゲルドライヤーで1時間、ゲルを乾かす。
20.一晩X線フィルムに露光する。
【0048】
上記比較、解析において、3匹のApoE欠損マウス(#1−3)に由来するプラーク(P)及びノンプラーク(NP)の培養平滑筋細胞の遺伝子発現を比較した結果のX線写真を図1に示す。なお、図中のJ212は、VIII型コラーゲンを意味する。
【0049】
D.特異的に発現するDNAの単離、増幅
以下の方法を用いて、動脈硬化症の平滑筋細胞に特異的に発現する遺伝子のDNAの単離、増幅を行った。
【0050】
(DNAの単離、増幅法)
1.ゲルから発現変動するバンドを切りだし、37℃で1時間50μlのH2Oに入れ、その後5分間煮沸する。
2.二次的PCR
40μl 水
1μl ゲルから分離されたDNA画分
2μl 2mM dNTP
1μl オリゴ−T12NXプライマー(一次反応に対応)
1μl ランダム・プライマー(一次反応に対応)
5μl 10×PCRバッファー
鉱物油一滴を添加する。
3.前記(#12)と同様、PCRサイクリングを行う。
4.TBEバッファーにて、2%アガロース・ゲルを用いてサンプルを電気泳動する。
【0051】
E.特異的に発現するDNAの精製
以下の方法を用いて、動脈硬化症の平滑筋細胞に特異的に発現する遺伝子のDNAの精製を行った。
(QIAquickゲル抽出キット(QIAGEN社製)を用いた精製法)
1.カミソリでアガロース・ゲルからDNAバンドを切り取り、1.5mlのエッペンドルフチューブ(Eppendorf社製)に入れ、重量を計測する。
2.ゲル(100mg〜100μl)の3容量のバッファーQGを加える。
3.50℃、10分間インキュベートする(アガロースが完全に溶解するまで)。もし、溶液の色が紫になっていたら、10μlの3M酢酸ナトリウムを加える。
4.1ゲル容量のイソプロパノ−ルを加え、混合する。
5.収集チューブにカラムを設置し、サンプルをカラムに注入し、更に1分間高速で遠心分離する。
6.流下通過物を捨て、再度カラムを収集チューブに設置し、0.5mlのQX1を注入し、1分間回転する。
7.バッファーPE0.75mlでカラムを洗浄する(1分間高速で)。
8.流下通過物を捨て、再度カラムを収集チューブに設置し、再度1分間回転する。
9.カラムを、1.5mlエッペンドルフチューブに設置する。
10.50μlの滅菌蒸留水でDNAを溶離する(1分間放置し、1分間回転する。)。
11.アガロース・ゲルでフラグメントを確認する。
【0052】
F.ディファレンシャリーに発現したDNAのpGEM−Tベクターへのクローニング
以下の方法により、ディファレンシャリーに発現したDNAをpGEM−Tベクターへクローニングした。
(pGEM−Tベクターシステム(Promega社製))
1.以下のように、リゲーション反応の準備をする。
2×ラピッド・リゲーション・バッファー:5μl
pGEM−Tベクター:1μl
T4DNAリガーゼ:1μl
PCR生成物:3μl
2.混合し、4℃で一晩インキュベートする。
3.JM109コンピテントセルを用いて形質転換を行う。
【0053】
G.シークエンシング
蛍光標識によるダイデオキシチェーンターミネーション法を用いて、DNA配列の分析を行った。
【0054】
本発明において取得した遺伝子のDNA配列の分析結果について、F277の塩基配列を配列表の配列番号1に、及びH2Aの塩基配列を配列表の配列番号3に示す。該遺伝子のコーディング領域におけるペプチド配列を、それぞれ配列表の配列番号2(F277)及び4(H2A)に示す。
【0055】
H.5′RACE
ディファレンシャリーに発現したDNAを、5′末端に伸長するために、5′RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)システム(Gibco BRL社製)を用いて5′RACEを行った(Proc. Natl.Acad. Sci.USA,85,8998-9002,1988)。
【0056】
実験は、5′RACEプロトコル(5′RACE Instruction Manual)に従って行った。
I.cDNAライブラリーPCR
(マウス腎臓cDNA(Takara社製))
ディファレンシャリーに発現した遺伝子の全cDNAをクローニングするために、マウス腎臓のcDNAライブラリーを用いてPCRを行った。
【0057】
ライブラリーを構築するベクター及び関係する遺伝子の塩基配列から順方向及び逆方向のプライマーをそれぞれ設計した。
【0058】
[F277(配列表の配列番号1)及びH2A(配列表の配列番号3)遺伝子のホモロジー検索]
本発明において、取得し、同定した遺伝子について、BLASTホモロジー検索を実施した。クローンF277について実施したホモロジー検索の結果を図2に、及びクローンH2Aについて実施した結果を図3に示す。
【0059】
ホモロジー検索の結果、クローンF277は、近似の遺伝子が報告されていない全く新規な遺伝子であることが確認された。また、クローンH2Aは、「正常」マウス全遺伝子データーベース検索によりヒットした相同遺伝子とC末端側のアミノ酸34個が全く相違している新規な遺伝子であることが確認された。
【0059】
(実施例2)
[「AK002873」(配列表の配列番号5)及び「NM_0032374」(配列表の配列番号7)遺伝子のクローニング及び同定]
正常なヒト及びマウスの心臓cDNAライブラリーから、実施例1と同様にして、該細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している実施例1の遺伝子と相同な遺伝子をクローニングし、同定した。該遺伝子を、一つは「AK002873」(配列表の配列番号5)と、及び他の一つは「NM_0032374」(配列表の配列番号7)と命名し、該遺伝子の構造を同配列表に示した。この実施例で取得したAK002873(健常マウス由来)及びNM_0032374(健常ヒト由来)遺伝子と、実施例1で取得したH2A(動脈硬化症発症マウス由来)遺伝子がコードするアミノ酸配列の対比を、図4に示す。
【0060】
図4から明らかなように、動脈硬化症において発現している遺伝子(H2A)と正常血管平滑筋細胞の遺伝子とは、C末から21番目のR(Arg)(枠内)より下流で顕著に相違している。したがって、これらの遺伝子をPCRを用いて特異的に増幅するには、該R(Arg)の上流及び下流のプライマー1対を用いることにより、行うことができる。
【0061】
(実施例3)
動脈硬化症発現遺伝子の機能の解析
[動脈硬化症発現遺伝子(H2A)発現ベクターの作製]
クローニングを容易に行うために、PCR法を用いてpcDNA-H2Aを作製した。オリゴヌクレオチドプライマーがH2Aの配列に基づいた翻訳開始点と終止コドンを含むように設計した(H2Aセンスプライマー:5’- ATGGCGGCTTTGCGGCCCGGAAGC -3’、アンチセンスプライマー:5’- CACTTCCACATCGCACTGTTCATC -3’)。特異的なKpn I及びXho Iクローニング部位を作製するために、Kpn I部位をセンスプライマーの5´末端で合成し、Xho I部位をアンチセンスプライマーの5´末端で合成した。0.5μMのセンス及びアンチセンスプライマー、200μMの各dNTP、及び2.5UのPyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を含む1×Pyrobest バッファーII中でプラスミドDNAを0.1ng増幅した。増幅反応はDNA thermocycler(Perkin-Elmer Cetus Instruments社製)を用いて行った。PCR産物をKpn I及びXho Iで消化し、QIA quick Gel Extraction kit(Qiagen社製)で精製した後、DNA断片をpcDNA3.1(+)(Invitrogen社製)のKpn I部位とXho I部位内でクローニングし、pcDNA-H2Aを作製した。
【0062】
[培養平滑筋細胞へのトランスフェクション]
説明書記載の方法で、陽イオン脂質リポフェクトアミン(Gibco-BRL社製)を用いてマウス血管平滑筋細胞(VSMC)へのトランスフェクションを行った。顕微鏡による解析のために、2ウェルLab-Tek チェンバーカバーグラス(Nalge Nunc社製)1枚あたり、1×104個の細胞を、1μgのプラスミドDNAと4μLのリポフェクトアミンを各チェンバー毎に使用して24時間後にトランスフェクトした。
【0063】
[アポトーシスを起こした細胞の形態的解析と核染色]
核の形態的な解析を行うため、VSMCを組織培養チェンバースライド(Nalge Nunc社製)を用いて培養した。断片化したアポト−シスを起こした核を解析するために、VSMCをメタノール/酢酸=3:1(v/v)で固定し、蛍光染料(Hoechst 33258, 10μmol/L)で染色した。写真はニコンEFD2蛍光顕微鏡で撮影した(図5)。
【0064】
トランスフェクトした細胞培養物の形態的解析により、コントロールにおいては細胞の生存に変化はなかったが(図5A)、pcDNA-H2Aをトランスフェクトした培養細胞では細胞死が起こることが明らかになった(図5B)。コントロールにおいては染色体の染色は見られなかったが(図5C、E)、(pcDNA-H2Aをトランスフェクトした細胞では、)染色体が均一に染色されたアポトーシスを起こしている核中に広がっていたことから、通常の核構造とアポトーシスの特性が失われていることが示唆された(第5図D、F)。以上の結果からH2Aの発現は血管平滑筋細胞にアポトーシスを起こさせていることが明らかになった。血管平滑筋細胞は動脈硬化の発症に際して活性化され、増殖、遊走と細胞外基質の産生を開始するが、H2Aは、血管平滑筋細胞にアポトーシスを誘導して動脈硬化形成を抑制しているものと考えられる。H2Aを動脈硬化血管で遺伝子治療により発現させれば動脈硬化の進展を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本邦死因の2、3位を占める脳卒中、心臓病は、動脈硬化が原因となって発症する疾患である。従って、動脈硬化の発症、進展を予防することは臨床上最も重要な課題の1つとなっている。本発明においては、動脈硬化症の病巣と正常血管からそれぞれの平滑筋細胞を培養し、ディファレンシャル・ディスプレイを用いて遺伝子発現を比較し、その結果動脈硬化症の病巣で発現の亢進している2種類の新規遺伝子と、該遺伝子と相同の、正常の平滑筋細胞で発現している遺伝子を取得した。本遺伝子の取得、同定により、この遺伝子の発現の測定を行うことが可能となり、動脈硬化症の診断や該測定法を用いた動脈硬化症の予防及び治療薬のスクリーニングが可能となった。更に、本発明により、動脈硬化症の病巣において発現し、病態に関係する、これらの遺伝子の発現を抑制することにより、動脈硬化の予防及び治療を可能とする。また、本発明においては、動脈硬化症において発現している本発明の遺伝子が、血管細胞にアポトーシスを誘導することを確認しており、該遺伝子を動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入して、動脈硬化形成を抑制することができる。したがって、該方法により、遺伝子治療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1図は、3匹のApoE欠損マウス(#1−3)から、プラーク(P)とノンプラーク(NP)の平滑筋細胞を培養して遺伝子発現を比較した結果のX線写真を示す図である。
【図2】第2図は、取得したクローンF277について、BLASTホモロジー検索を実施した結果を示す図である。
【図3】第3図は、取得したクローンH2Aについて、BLASTホモロジー検索を実施した結果を示す図である。
【図4】第4図は、本発明の実施例において取得した遺伝子、H2A、AK002873、NM_032374がコードするアミノ酸配列を対比した結果を示す図である。
【図5】第5図は、本発明の動脈硬化症で発現している遺伝子の導入により、アポトーシスを起こした細胞の形態的解析のために、蛍光染料で染色した核を蛍光顕微鏡で撮影した写真である。
Claims (40)
- 配列表の配列番号1に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA。
- 請求項1記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチドをコードすることを特徴とするDNA。
- 以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA。
(a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチド。 - 配列表の配列番号3に示される塩基配列若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA。
- 請求項4記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現しているタンパク質をコードすることを特徴とするDNA。
- 以下の(a)又は(b)のポリペプチドをコードするDNA。
(a)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ動脈硬化症において発現しているポリペプチド - 配列表の配列番号5に示される、血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列、若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA。
- 請求項7記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードすることを特徴とする遺伝子。
- 以下の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子。
(c)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(d)配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチド。 - 配列表の配列番号7に示される、血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドをコードする遺伝子の塩基配列、若しくはその相補的配列又はこれらの配列の一部若しくは全部を含む配列からなることを特徴とするDNA。
- 請求項10記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するするポリペプチドをコードすることを特徴とする遺伝子。
- 以下の(c)又は(d)のポリペプチドをコードする遺伝子。
(c)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド
(d)配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチド。 - 請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ動脈平滑筋細胞における該請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列からなる遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド。
- 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。
- 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチド。
- 配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列からなることを特徴とするポリペプチド。
- 配列表の配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、動脈硬化症において発現しているタンパク質の類似構造を有するポリペプチド。
- 配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列からなり、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とするポリペプチド。
- 配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドと類似構造を有するポリペプチド。
- 配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列からなり、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とするポリペプチド。
- 配列表の配列番号8に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、正常平滑筋細胞において発現し、かつ動脈硬化症において発現している配列表の配列番号2のポリペプチドと相同性を有し、更に血管細胞にアポトーシスを誘導するポリペプチドと類似構造を有するポリペプチド。
- 請求項14〜21のいずれか記載のポリペプチドを用いて誘導され、該ポリペプチドに特異的に結合することを特徴とする抗体。
- 抗体が、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項22記載の抗体。
- 抗体が、ポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項22記載の抗体。
- 請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有する動脈硬化症診断用プローブ。
- 請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列が、請求項1、4、7、又は10記載の塩基配列のアンチセンス鎖の全部又は一部からなる請求項25記載の動脈硬化症診断用プローブ。
- 請求項25又は26記載のDNAの少なくとも1つ以上を固定化させたことを特徴とする動脈硬化症診断用マイクロアレイ又はDNAチップ。
- 請求項22〜24のいずれか記載の抗体及び/又は請求項25又は26記載の診断用プローブを含有することを特徴とする動脈硬化症診断薬。
- 請求項22〜24のいずれか記載の抗体及び/又は請求項項25又は26記載の診断用プローブを含有することを特徴とする動脈硬化症診断キット。
- 被検組織から試料を得、該試料における請求項請求項1、4、7、又は10記載の遺伝子の発現を測定することを特徴とする動脈硬化症の診断方法。
- 請求項30記載の遺伝子の発現の測定が、定量的PCRの使用を含んでいることを特徴とする動脈硬化症の診断方法。
- PCRプライマーとして、配列表の配列番号9(Forward)と配列表の配列番号10(Reverse)のプライマー、及び/又は配列表の配列番号11(Forward)と配列表の配列番号12(Reverse)のプライマーを用いることを特徴とする請求項31記載の動脈硬化症の診断方法。
- 請求項30〜32のいずれか記載の遺伝子の発現の測定が、マイクロアレイ法、DNAチップ法、RT−PCR法又はノーザンブロッティング法を用いて行われることを特徴とする動脈硬化症の診断方法。
- 被検組織から試料を取得、培養し、該試料における遺伝子の発現により生成される配列表の配列番号2、4、6及び8に記載されるポリペプチドの一つ以上を測定することを特徴とする動脈硬化症の診断方法。
- 請求項22〜24のいずれか記載の抗体を用いることを特徴とする請求項34記載の動脈硬化症の診断方法。
- 動脈硬化発症モデル動物に、被検物質を投与し、配列表の配列番号1、4、7及び10に記載される塩基配列を有する遺伝子の一つ以上の遺伝子の発現、及び/又は配列表の配列番号2、4、6及び8に記載されるポリペプチドの一つ以上のポリペプチド又はその部分ポリペプチドの生成を測定することを特徴とする動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニング方法。
- 動脈硬化発症モデル動物が、ApoE欠損マウスであることを特徴とする請求項36記載の動脈硬化症予防又は治療薬のスクリーニング方法。
- 動脈平滑筋細胞に、請求項13記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、動脈平滑筋細胞における該請求項1、4、7又は10記載の塩基配列からなる遺伝子の発現を抑制することを特徴とする動脈硬化発症遺伝子の発現抑制方法。
- 請求項4〜12のいずれか記載のDNA遺伝子を、動脈硬化症を発症している平滑筋細胞に導入し、血管細胞にアポトーシスを誘導することを特徴とする血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法。
- 請求項39記載の血管平滑筋細胞の動脈硬化形成抑制方法を用いて動脈硬化症を発症している平滑筋細胞の治療を行うことを特徴とする動脈硬化発症細胞の遺伝子治療方法。
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