JPWO2003020940A1 - 高等植物のゲノム改変法 - Google Patents
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Abstract
高等植物では高効率かつ高再現性を実現することが難しいとされてきた、相同組換えを利用したゲノム配列の一部を所望の配列に改変する技術を確立した。本発明により、高等植物が本来持つゲノム配列をターゲットとして、本来の遺伝子座位を変えることなく、高効率かつ再現性良く相同組換えが起こる個体を獲得することができる。更に、特定の遺伝子を自由自在に改変した形質転換植物を作出し、遺伝子の機能解析やゲノム動態の変化に伴った遺伝子発現の機構解明に貢献することができる。
Description
発明の分野
本発明は、相同組換えを利用した高等植物でのゲノム改変するための遺伝子構築物、および該遺伝子構築物を含む植物形質転換用ベクターを用いてゲノム改変高等植物を製造する方法に係り、植物が本来持つゲノム配列をターゲットとして、本来の遺伝子座位を変えることなく、高効率かつ再現性良く相同組換えの生じた個体を獲得することができる方法に関する。
従来の技術
高等植物の内、双子葉植物への遺伝子導入には、病原菌Agrobacteriumtumefaciens(アグロバクテリウムツメファシエンス)の感染時におこるTiプラスミド中のT−DNAの植物細胞への移行と染色体組込みを利用した方法がよく使われ、Tiプラスミドから遺伝子導入に必要な領域だけを残して大腸菌との間を往復可能にした小さなバイナリーベクターが開発されている。単子葉植物では、プロトプラストへのエレクトロポレーションなどによるDNAの直接導入法が一般的に使われるが、アグロバクテリウム感染法による成功例もある。
しかし、これらの方法では、導入遺伝子の染色体上の位置およびコピー数がランダムであり、そのために導入外来遺伝子の位置効果や、コサプレッション(共抑制)、ジーン・サイレンシング等の諸現象により、導入遺伝子を期待どおりに発現させることは困難であった。
また、TOS17により遺伝子を破壊する方法で、レトロトランスポゾンを利用して遺伝子破壊を行う方法がある(Applications of retrotransposons as genetictools in plant biology.2001 Trends in Plant Science 6:127−134)。この方法は、ゲノムを改変できるが、レトロトランスポゾンはゲノム上の不特定の場所に転移するため、狙い通りのゲノム改変植物体を得ることは非常に労力を要する。さらに、遺伝子を破壊することは可能であるが、任意に変異を導入したり、置換したりすることは不可能な技術である。
T−DNAタギング法は、アグロバクテリウム法によりT−DNAをゲノムに挿入し、遺伝子破壊を行う方法である(Plant tagnology.1999 Trends in Plant Science 4:90−96)。この方法は、TOS17と同様、T−DNAはゲノム上の不特定の場所に挿入されるため、狙い通りのゲノム改変植物体を得ることは非常に労力を要する。さらに、遺伝子を破壊することは可能であるが、任意に変異を導入したり、置換したりすることは不可能な技術である。
RNA/DNAのキメラ・オリゴヌクレオチドを利用した方法で、Zhu Tらにより、RNA/DNAのキメラ・オリゴヌクレオチドを利用して、トウモロコシのゲノム上の遺伝子に一塩基置換を導入し、除草剤耐性を付与したことが報告されている(Targeted manipulation of maize genes in vivo using chimeric RNA/DNAoligonucleotides.Proc Natl Acad Sci USA 1999 Jul 20;96(15):8768−73)。この技術は、内在の遺伝子の極小さな領域に変異を導入することはできるが、大きな領域の改変には適用できない。
そこで、外来遺伝子を期待通りに発現させることができる可能性を有する方法として相同組換えを利用したゲノム改変法がある。これは、挿入したい外来遺伝子を相同遺伝子領域で挟んで、その両側で相同組換えを起こさせる方法である。相同組換えとは、相同な2本のDNA鎖の間でつなぎ換えが行われることをいう。
一方、植物のゲノム構造は動物に比べ繰返し配列が多く、特に体細胞では相同組換えが抑制されている可能性があると考えられている。アラビドプシスやタバコにおいては、ゲノムに人為的に設定したマーカー遺伝子を標的とした相同組換えが行われ、その頻度は10−4〜10−6と推定されている(Gene targeting in plants.EMBO J 1988 7:4021−4026,Extrachromosomal homologous recombination and gene targeting in plant cells after Agrobacterium mediated transformation.EMBO J 1990 9:3077−3084,Nonreciprocal homologous recombination between Agrobacterium transferred DNA and a plant chromosomal locus,Proc Natl Acad Sci USA 1993 90:7346−7350)。
しかし、このような高等植物での相同組換えを利用したゲノム改変法は、以下の萌芽的実験結果がいくつか報告されているのみである。これらの実験結果は、i)人為的に設定した遺伝子マーカーを用いた場合と、ii)植物が本来もつゲノム配列をターゲットとしたものに分けられる。
i)人為的に設定した遺伝子マーカーを用いた報告には以下のものがある。
相同組換えの頻度を上げるため、大腸菌のRecA遺伝子、RuvC遺伝子の発現や酵母菌のHOエンドヌクレアーゼ遺伝子やI−SceIエンドヌクレアーゼ遺伝子によるDNA二重鎖切断の導入がタバコやアラビドプシスのゲノム上に人為的に設定したマーカー遺伝子の相同組換えを促進することが報告されている(RecA protein stimulates homologous recombination in plants.Proc Natl Acad Sci USA 1996 93:3094−3098,Stimulation of homologous recombination in plants by expression of the bacterial resolvase RuvC.Proc Natl Acad Sci USA 1999 96:7398−7402,Enhancement of somatic intrachromosomal homologous recombination in Arabidopsis by the HO endonuclease.The Plant Cell 1996 8:2057−2066,Homologous recombination in plant cell is enhanced by in vivo induction of double strand breaks into DNA by a site−specific endonuclease.Nucleic Acid Research 1993 21:5034−5040)。
Paszkowski Jらは、タバコのプロトプラストを材料として、相同組換えによるゲノム改変に成功したことを報告している。これが植物で初めての成功例である。これにより、植物でも相同組換えによるゲノム改変の可能性が示された。ここでは、欠失させた機能しないカナマイシン耐性遺伝子(ポジティブ選抜マーカー)を最初にゲノムに組み込ませ、その細胞を材料として欠失部分を回復させる遺伝子を再度導入し、カナマイシン耐性でスクリーニングを行うという選抜システムを利用している(Gene targeting in plants.EMBO J 1988 7:4021−4026)。
Risseeuw Eらは、タバコを材料としてアグロバクテリウム法による形質転換を行い、相同組換えを起こした培養細胞を1ライン得たと報告している。彼らは、まずGUS遺伝子およびcodA遺伝子をゲノムに組み込ませ、次にその形質転換細胞を材料とし、相同組換えが生じるとGUS遺伝子の一部とcodA遺伝子が欠失し、新たにカナマイシン耐性遺伝子が組み込まれるような遺伝子を用いて再度形質転換し、5−フルオロシトシン感受性、カナマイシン耐性、GUS活性、PCR法により相同組換えを起こした細胞を選抜し、サザンブロット法により確認している(Gene targeting and instability of Agrobacterium T−DNA loci in the plant genome.Plant J 1997 Apr;11(4):717−28)。
Offringa Rらは、タバコ培養細胞を材料とし、アグロバクテリウム法を用いて遺伝子組換えを行い、相同組換えが起こったラインを1系統得たと報告している。これにより、アグロバクテリウム法が相同組換えによる植物ゲノムの改変に利用可能であることが示された。再現性については示されていない。彼らも一部を欠失させたカナマイシン耐性遺伝子をまずゲノムに組み込ませ、次にその細胞を材料として補完部分の遺伝子を用いて再度形質転換し、カナマイシンへの耐性とPCR法により相同組換えを起こした細胞を選抜し、サザンブロット法により確認している(Extrachromosomal homologous recombination and gene targeting in plant cells after Agrobacterium mediated transformation.EMBO J 1990 Oct;9(10):3077−84)。
Halfter Uらは、アラビドプシスのプロトプラストを材料とし、PEG法を用いて遺伝子組換えを行い、相同組換えが起こった4個体を得たと報告している。彼らは一部を欠失させたハイグロマイシン耐性遺伝子をまずゲノムに組み込ませ、次にその細胞を材料として補完部分の遺伝子を用いて再度形質転換し、ハイグロマイシンへの耐性とPCR法により相同組換えを起こした細胞を選抜し、サザンブロット法により確認している(Gene targeting in Arabidopsis thaliana.Mol Gen Genet 1992 Jan;231(2):186−93)。
ii)一方、植物が本来もつゲノム配列をターゲットとして相同組換えによって改変した例としては、以下の二報があるのみである。
Miao ZHらは、アラビドプシスの根を材料としてアグロバクテリウム法により形質転換し、形質転換培養細胞2580ラインから相同組換えが起こった1ラインを得ている。彼らは、ゲノム上のTGA3座にカナマイシン耐性遺伝子を相同組換えにより挿入している。これが植物本来のゲノムを相同組換えにより改変した初めての例である。彼らは、カナマイシン耐性による選抜に加え、相同組換えが起こらずに外来遺伝子が組み込まれた細胞にはβ−glucuronidaseを発現させることにより、より選抜効率を上げている。PCR法やサザンブロット法も利用して相同組換え個体を確認している。しかし、この細胞からは植物体を得ることはできず、相同組換えを起こした領域をホモで有する個体を得ることは実現できていない(Targeted disruption of the TGA3 locus in Arabidopsis thaliana.Plant J 1995 Feb;7(2):359−65)。
Yanofsky MFらは、アラビドプシスを材料としてアグロバクテリウム法により形質転換し、相同組換えが起こった1ラインを得たことを報告している。彼らは、ゲノム上のAGL5遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子を挿入し、選抜にはカナマイシン耐性とPCR法を利用しており、750のカナマイシン耐性ラインから1ラインを得、最終的にサザンブロット法およびPCR法で確認している(Targeted disruption in Arabidopsis.Nature 1997 Oct 23;389(6653):802−3)。
また、相同組換えを試みたが、相同組換えを起こした細胞を得ることはできなかったという次のような報告もある。
Thykjaer Tらは、ハスを材料としてアグロバクテリウムを用いた相同組換えを試みている。その際、codA遺伝子をネガティブ選抜マーカーとして利用しており、それをT−DNAの片側、両側等に配置した数種のベクターを用いている。しかし相同組換えを起こした細胞を得ることはできていない(Gene targeting approaches using positive−negative selection and large flanking regions.Plant Mol Biol 1997 Nov;35(4):523−30)。
Gallego MEらは、アラビドプシスを材料とし、カナマイシン耐性遺伝子をポジティブ選抜マーカーとして、codA遺伝子をネガティブ選抜マーカーとして利用している。しかし1x105の形質転換細胞から相同組換えを起こした細胞を得ることはできていない(Positive−negative selection and T−DNA stability in Arabidopsis transformation.Plant Mol Biol 1999 Jan;39(1):83−93)。
発明の概要
相同組換えを利用したゲノム改変法には種々の利点があることは先に述べた。しかしながら、高等植物において、相同組換えの頻度は極めて低い等の理由により、高等植物本来のゲノム配列を相同組換えによって改変した報告は、上記Miao ZHらおよびYanofsky MFらの二例あるだけで、いずれの報告においても再現性と信頼性の高い相同組換えの方法は開示されていない。しかも、単子葉植物においては、農業上きわめて重要であるにもかかわらず成功例は一例もなく、高等植物における再現性と信頼性の高い相同組換え方法の開発が強く望まれていた。
以上から本発明の目的は、イネ等の単子葉植物を含む種々の高等植物の細胞で、外来遺伝子導入で生ずる導入遺伝子のコピー数や位置効果あるいはコサプレッション、ジーン・サイレンシング等による発現の不安定性等、従来の形質転換法の諸問題を解決し、改変を行おうとする遺伝子領域以外はゲノムに一切変化を起こさせずに形質転換を行う方法に用いる遺伝子構築物、植物ゲノム改変用ベクターおよび該方法により形質転換された細胞から、完全な形質転換植物を作出する方法を提供することである。
発明の詳細な説明
本発明は、T−DNA由来のBR(右ボーダー配列)とBL(左ボーダー配列)の間に、下記の要素を、BRから
(1)発現可能、好ましくは高発現可能に存在させた、第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子、
(2)宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’領域を組み込むための第一のクローニング部位、
(3)発現可能、好ましくは高発現可能に存在させたポジティブ選抜マーカー遺伝子、
(4)宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の3’領域を組み込むための第二のクローニング部位および
(5)発現可能、好ましくは高発現可能に存在させた、第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子と同一であってもよい第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子
の順に含んでなる、相同組換えにより高等植物のゲノムを改変するための遺伝子構築物及び該構築物を含む植物形質転換用ベクターを提供する。
本発明における遺伝子構築物は、T−DNAのBRとBLの間において、確実に発現させるようにした、好ましくは高発現性のポジティブ選抜マーカーの5’上流と3’下流に、確実に発現させるようにした、好ましくは高発現性のネガティブ選抜マーカーを置き、ポジティプ選抜マーカーとネガティブ選抜マーカーの間に相同組換えのための配列を組み込むためのクローニング部位(好ましくはマルチプルクローニングサイト)を有する遺伝子構築物であり、これをアグロバクテリウム法による植物形質転換用ベクター中に組み込んだものを本明細書中では「基本ベクター」と呼ぶ(図2b)。
T−DNAとは、Agrobacterium内で保持されているTiプラスミドの一部であり、植物がAgrobacteriumに感染すると、菌体自身は植物細胞に侵入しないが、菌体内に存在するTiプラスミドの一部であるT−DNA領域が植物細胞内に転移される。T−DNAは、BR(右ボーダー配列)とBL(左ボーダー配列)によって、区切られている。各ボーダー配列は、約25bpの不完全な反復配列からなる。
本発明の遺伝子構築物は、ネガティブ選抜マーカーおよびポジティブ選抜マーカーを含む。それは、高等植物の形質転換では非相同組換えにより遺伝子導入が生ずる頻度が極めて高く、相同組換え体を非相同組換え体から効率良く選抜する必要があるからであり、その選抜のため、これらのマーカーがネガティブ選抜法とポジティブ選抜法に用いられる。
ポジティブ選抜とは、遺伝子が導入されて形質転換された細胞を選抜する時に、当該遺伝子産物が発現している細胞のみが生き残る条件にて選抜する方法である。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を導入すれば、導入された細胞がネオマイシンの類似体であるG418耐性を有することにより選抜される。
ネガティブ選抜とは、遺伝子が導入されて形質転換された細胞を選抜する時に、当該遺伝子産物が発現している細胞が死滅する条件にて選抜する方法である。例えば、ヒトヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子を細胞に導入し、チミジン類似体であるガンシクロビアの存在下で選抜すると、チミジンキナーゼ遺伝子を発現している細胞が死滅する。
本発明においては、選抜法として、ポジティブ選抜法とネガティブ選抜法を組み合わせたポジティブ・ネガティブ選抜法を利用する。この選抜法は、まずポジティブ選抜マーカーによって形質転換体を選抜し、さらにネガティブ選抜マーカーによって相同組換え以外により生じた形質転換体が致死となることを利用して、非相同組換え体を除いて相同組換え体を選択的に拾い上げる方法であり、選抜効率を高めることができる。
ネガティブ選抜マーカーは、植物細胞に対して毒性があり、ベクターを操作するために用いる大腸菌やアグロバクテリウムに対して毒性がないことが必要であり、ジフテリア毒素タンパク質A鎖遺伝子が好ましい。他にもネガティブ選抜マーカーとして利用できる遺伝子としては、codA遺伝子、シトクロムP−450遺伝子、barnase遺伝子が挙げられる。
ネガティブ選抜マーカーに関しては、以下の報告がある。Koprek Tらは、小麦のネガティブ選抜マーカーとしてcodA遺伝子と細菌由来のP−450が利用できることを報告している(Negative selection systems for transgenic barley(Hordeum vulgare L.):comparison of bacterial codA−and cytochrome P450 gene−mediated selection.Plant J 1999 Sep;19(6):719−26)。寺田らは、イネのネガティブ選抜マーカーとして、ジフテリア毒素タンパク質遺伝子(DxT−A)が利用できることを報告している(イネでのジフテリア毒素タンパク(DxT−A)遺伝子のネガティブ選抜効果とジーンターゲティング法への応用.日本分子生物学会第22回年会1999 Dec;:2P−0343)。
ポジティブ選抜マーカーとして好ましいものとして、ハイグロマイシン耐性遺伝子が挙げられる。他にもカナマイシン耐性遺伝子やイミダゾリン耐性遺伝子、グリフォセート耐性遺伝子、フォスフォマンノース−イソメラーゼ遺伝子、ブラストタイジンS耐性遺伝子、bar遺伝子およびグリフォシネート耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明の特徴の一つは、相同組換えの頻度の低い高等植物において、相同組換えが生じた細胞を効率よく選抜するため、ポジティブおよびネガティブ選抜マーカーの発現を確実にし、好ましくは高発現性とする点である。例えば、図2bおよび2cに示すように、ネガティブ選抜マーカーの発現を強化するために、プロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター)にイントロンを接続して発現を強化し、または、単子葉植物で強い発現をするユビキチンプロモーターを使用する。一方、ポジティブ選抜マーカーの発現も好ましくは強化する。そのため、ポジティブ選抜マーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子を用いる場合は、ハイグロマイシン耐性遺伝子に対して発現の強いアクチンのプロモーターを使用するのが好ましい。これら選抜マーカーを高発現とするには、他にもトウモロコシユビキチンプロモーター、イネPLDイントロン、ヒマカタラーゼイントロン等が使用できる。
本発明の別の特徴は、ネガティブ選抜マーカー遺伝子を、BL側とBR側にそれぞれ使用することである。これらは異なる遺伝子であっても良いが、好ましくは同じ遺伝子である。本発明者らは、高等植物、特に単子葉植物でこれまで相同組換えを利用したゲノム改変が成功していなかった一つの理由は、非相同組換体の中には、ネガティブ選抜マーカー遺伝子が完全な形で組み込まれないものが相当数存在し、そのためネガティブ選抜の効率が低かったのではないかと考えた。本発明では、2つのネガティブ選抜マーカーを互いに離して使用することにより、非相同組換体が選抜工程で生き残る確率を十分に低くすることができる。
本発明の遺伝子構築物において、クローニング部位は、ポジティブ選抜マーカー遺伝子と第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子との間及び、第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子との間の2カ所に存在させる。これらは、それぞれ標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’領域及び3’領域を組込むのに適する限り、任意のクローニング部位であってよい。クローニング部位をマルチプルクローニング部位とすれば、任意の遺伝子の組込みに対応できるので好ましい。マルチプルクローニング部位は希望する制限酵素部位を持つオリゴDNAを自由に設計、合成して使用することができる。
第一のクローニング部位には、相同組換えさせる遺伝子の5’領域を組込み、第二のクローニング部位には当該遺伝子の3’領域を組込む。
相同組換えさせる遺伝子は、特定のタンパク質をコードする構造遺伝子であってもよく、あるいは植物の表現形質に影響する他の遺伝子であってもよい。これらの遺伝子で、植物ゲノム中の標的とする遺伝子が機能しないようにする、または標的とする遺伝子を修飾して、組換体植物を改変することができる。標的とする遺伝子の非限定的な例として、Waxy遺伝子およびEPSPS遺伝子が挙げられる。
相同組換えさせる遺伝子の「5’領域」と「3’領域」の境界をどのように選ぶかについては特別の制限はない。例えば、標的の遺伝子の機能を抑制することを目的とする場合は、相同組換えさせる遺伝子はほぼ半々ないし、7:3〜3:7の長さに分けて、上流側を「5’領域」、下流側を「3’領域」としてよいが、一般的には各々の領域の長さは長い方が良い。但し、相同組換えを確実に行わせるため、各々の領域の長さは少なくとも1000塩基よりも長くすることが好ましく、少なくとも500塩基とする。
一方、標的遺伝子の機能の改変を目的とする場合には、相同組換えさせる遺伝子の「5’領域」と「3’領域」を各領域にわけて、それぞれのクローニング部位に挿入する。もし、相同組換えさせる遺伝子が適当なイントロンを有する場合は、イントロンの内部で5’領域と3’領域に分割することもできる。さらに、「5’領域」に相同組換えさせる遺伝子の発現に必要な機能を全部含む配列を用い、その下流に隣接する領域を「3’領域」として用いてもよいことは理解すべきである。逆に「3’領域」に相同組換えさせる遺伝子の機能を全部含む配列を用い、その上流の隣接領域を「5’領域」としてもよい。
遺伝子構築物は、ポジティブ選抜マーカーを形質転換植物の後代において部位特異的組換え系によって除くことができるように、要素(7)としてリコンビナーゼ認識配列(例えばCre/lox組換え系のlox配列、R/RS組換え系のRS配列、またはFLP−FRT組換え系のFRT配列)をポジティブ選抜マーカー遺伝子の前および後に加えることができる(図2b、2c)。Cre/lox組換え系は、Creリコンビナーゼとloxの組合せにより不要な部分を削除する方法である。R/RS組換え系は、R遺伝子がコードするリコンビナーゼとRS配列の組合わせにより、2つのRS配列に囲まれたDNA領域の欠失を誘導する方法である。また、FLP−FRT組換え系は、FLPリコンビナーゼとFRT配列の組合わせにより、2つのFRT配列に囲まれたDNA領域の欠失を誘導する方法である。
例えば、Cre/lox組換え系を加えた本発明の遺伝子構築物を用いて相同組換えした細胞に、Creリコンビナーゼを発現させると、ゲノムの相同組換えを生じた領域内の二つのlox配列にはさまれたポジティブ選抜マーカー遺伝子を含む配列が削除できる。Creリコンビナーゼを発現させ、ゲノム中の2つのlox配列に挟まれた領域が削除すると、植物ゲノム中に相同組換えで導入した遺伝子の5’領域と3’領域を、該遺伝子が本来存在する状態に連結することができる。削除の有無は、PCRやサザンブロット法で確認できる。
カルスにCreリコンビナーゼを発現させ、lox配列間の領域を削除するには、Creリコンビナーゼ遺伝子を遺伝子導入した別の植物と交配する、または相同組換えにより得られた植物体にCreリコンビナーゼ遺伝子を遺伝子導入することにより実現することができる。
Creとloxの組み合わせは、lox間の配列を削除するためだけでなく、修飾するために使用することができる。そのためには、まず、Creリコンビナーゼ遺伝子を導入した組換え植物と交配してlox間の配列を削除し、次にCreリコンビナーゼおよびlox間に組込みたい遺伝子を有する組換え体と交配することによって、削除した後に残っているlox配列部位に組込みたい遺伝子を挿入する。修飾の例としては、除草剤耐性遺伝子の挿入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また標的とした遺伝子の発現の制御が目的の場合は、抑制効果を確実にするため、転写終止領域、好ましくはEn/Spm型トランスポゾンの転写終止領域を要素(6)としてもつように設計することもできる(図2b、2c)。
上記要素(1)〜(5)および存在させる場合にはさらに要素(6)および/または(7)を所定の順序に連絡して、本発明の遺伝子構築物とすることは、通常の遺伝子工学技術で当業者が容易に行うことができる。さらに植物ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子を選択し、その5’領域および3’領域をそれぞれ第一および第二のクローニング部位に挿入することも、当業者が通常の遺伝子工学技術で容易に行うことができる。
本発明の遺伝子構築物は、適当な制限酵素部位によって、アグロバクテリウム法による植物形質転換用のベクターのT−DNA領域またはBRからBLまでの間の領域に置き換えて連絡する。得られたベクターは、本発明の基本ベクターである。この基本ベクターの第一および第二のクローニング部位に相同組換えさせる遺伝子の5’領域および3’領域をそれぞれ組込むと、本発明の遺伝子改変用ベクターとなる。
例えば、イネWaxy遺伝子およびその隣接領域を基本ベクターに導入すれば、イネWaxy遺伝子改変用ベクターが構築できる(図2c)。
本発明はまた、下記の工程からなる相同組換えを利用したゲノム改変高等植物の製造方法を提供する:
(イ)本発明の遺伝子改変用ベクターを、Tiプラスミドを含むアグロバクテリウム中に存在させ、
(ロ)当該アグロバクテリウムを植物の細胞、組織またはカルスに感染させ、
(ハ)ネガティブ選抜およびポジティブ選抜により、相同組み換えを生じた細胞、組織またはカルスを選抜し、
(ニ)選抜を細胞または組織で行った場合は、それをカルスに培養し、
(ホ)カルスを再生培地で培養して、ゲノム中にヘテロに相同組み換えを生じた植物個体に生長させ、そして
(ヘ)生じた植物を掛け合わせて、ホモに相同組み換えを有する、遺伝子改変高等植物を得る。
高等植物においては前述のように相同組換えの頻度は極めて低いため、上記(イ)〜(ロ)の工程は高頻度アグロバクテリウム形質転換法を用いて行うことが望ましい。遺伝子改変用ベクターを、高頻度アグロバクテリウム形質転換法によって、例えばイネ・カルスに導入し、ポジティブ・ネガティブ選抜法を適用して、相同組換えの生じた可能性の高いカルスを選抜する。高頻度アグロバクテリウム形質転換法とは、寺田らによりアグロバクテリウムによるイネ等への遺伝子導入技術を改良して得られた方法で、従来の5〜10倍の効率で遺伝子導入できる手法である(高頻度の形質転換効率を示すイネ・アグロバクテリウム法の開発日本育種学会第96回講演会1999 Sep;:212)。この方法は、バイナリーベクター系に基づき、高発現化したハイグロマイシン遺伝子を使用することを特徴としている。
ポジティブ・ネガティブ選抜は次の通りに行う。工程(ニ)で生じたカルスを、ポジティブ選抜用の培地に移す。培地は通常のカルス培養培地にポジティブ選抜用の成分を添加したものである。
ポジティブ選抜のために抗生物質耐性を利用する場合は、選抜用マーカー遺伝子で形質転換させていないカルスが生き残れない、または少なくとも増殖しない濃度の抗生物質を含ませておく。抗生物質がハイグロマイシンである場合は、培地1L当り10〜200mgのハイグロマイシンを含ませる。
カルスを暗所、15〜40℃の条件で2〜3週間培養する。生き残ったカルスはポジティブ選抜用マーカー遺伝子を有し、且つネガティブ選抜用マーカー遺伝子をもたない相同組換えに成功したカルスの候補として選抜する。生き残ったカルスであるかの判断は、カルスの色、増殖の差異により行う。
さらにこれらの候補カルスが、目的とする遺伝子改変が生じているカルスであることを確認するためには、PCR法による解析を行うことができる。
PCR法による解析では、カルスの細胞からDNAを抽出してPCRを行う際、プライマーの一方は挿入遺伝子部分に結合し、他方のプライマーは挿入断片の境界を越えた遺伝子の部分配列と結合するようにデザインする。遺伝子挿入が起こらなかったかあるいは非相同組換えの起きた細胞ではプライマー対は互いに近傍には存在しないので、PCRによる断片の増幅は起こらない。しかし、相同組換えが起きた細胞では、両プライマーは互いに近接した位置に結合するため、予想通りのサイズの増幅断片を生じる。この断片が検出されれば、その細胞集団に相同組換えの起きた遺伝子が存在する可能性が高い。その細胞を小集団に分けPCRにより再検討する。このサイクルを繰り返すことにより、相同組換えが生じた細胞を分離することができる。
さらに上記PCR法に代えて、またはPCR法に引き続いて、詳細なサザンブロット法による解析を行い、遺伝子改変を確認することができる。
本発明の方法は、単子葉植物、例えばイネの相同組換えを、非常に効率よく行うことが可能である。実施例に示すように、好ましい態様においては、6回の実験で、各400粒の種子からポジティブ・ネガティブ選抜後に平均100以上のカルスが得られ、ここから少なくとも毎回1個体の遺伝子改変植物が得られている通り、本発明の方法は再現性と信頼性に優れている。
目的通り、遺伝子が改変されていることが確認されたカルスは、MS培地等の再生培地で培養して、ゲノム中にヘテロに相同組み換えを生じた植物個体を得ることができ、そして、花粉および種子における改変遺伝子の構造と発現を上記同様にPCR法および/またはサザンブロット法で解析することにより、遺伝子座で相同組換えがヘテロで起こっているか否かを確認する。
得られた植物体は稔性を有するため、生じた植物を自家受粉によりまたは他の個体と掛け合わせることにより、ホモに相同組み換えを有する遺伝子改変高等植物を得ることができる。
発明の効果
以上説明したように、本発明によれば、相同組換えの頻度が低く、非相同組換えにより遺伝子導入が生ずる頻度が極めて高い高等植物において、ネガティブ選抜マーカーを相同領域の両側に接続し、更にポジティブ選抜マーカーを利用したポジティブ・ネガティブ選抜を行い、植物が本来持つゲノム配列をターゲットとして、本来の遺伝子座位を変えることなく、得られたカルス中でおよそ100分の1という割合で、しかも再現性良く相同組換えが起こる個体を獲得できる。
更に、本発明によれば、特定の遺伝子を自由自在に改変した形質転換植物を作出することができる。例えば本法によりイネの澱粉合成に関わるWaxy遺伝子の改変を行った場合には、Waxy遺伝子の発現を制御できるイネが得られる。遺伝子改変イネは、同遺伝子座に部位特異的組換えに必要な配列を組込んでいるため、部位特異的組換えによるさらなるゲノム改変の可能性も有する。また、遺伝子の機能解析やゲノム動態の変化に伴った遺伝子発現の機構解明に貢献することができる。
また、相同組換えが生じた個体を植物体として再生させることも可能であり、その植物体は稔性も有するため、相同組換えを起こしたゲノムをホモで有する個体をも獲得することができる。
実施例
実施例1
コントロールベクターとWaxyターゲットベクター
ベクター、pRIT(図2a)、pINA134(図2b)、pRW(図2c)の構築には、pVS1に由来する、pGSGlucベクター(Saalbach I,Pickardt T,Machemehl F,
methionine−rich 2S albumin of the Brazil nut(Betholletia excelsa H.B.K.)is stably expressed and inherited in transgenic grain legumes.Mol Gen Genet 242:226−236)のrepおよびsta領域、およびスペクチノマイシン耐性遺伝子を用いた。
実施例1−1
pRITの構築
pGSGlucをSalIで消化して得られる約9.4kbpの断片をセルフライゲーションしpGS−SalIを構築した。これをHindIIIで消化し、HindIIIで消化したpIG221(Tanaka A,Mita S,Ohta S,Kyozuka J,Shimamoto K,Nakamura K(1990)Enhancement of foreign gene expression by a dicot intron in rice but not in tobacco is correlated with an increased level of mRNA and an efficient splicing of the intron.Nucleic Acids Res.18:6767−6770)とライゲーションした後EcoRIおよびBglIIで消化して得られる12.4kbpの断片を、EcoRI、NotI、BglII部位を持つ合成リンカーを用いてセルフライゲーションし、pGSIGを得た。pAch1(Bilang R,Iida S,Peterhans A,Potrykus I,Paszkowski J(1991)The 3’−terminal region of the hygromycin−B−resistance gene is important for its activity in Escherichia coli and Nicotiana tabacum.Gene 100:247−250)からイネのActin1プロモーター、その第1イントロン、hph遺伝子およびCaMV35Sターミネーターを含む2.6kbpの断片を切りだし、pGSIGのEcoRI部位に挿入することにより、右ボーダーと左ボーダー間に、第1イントロンを持つイネActin1プロモーター制御下のhph遺伝子(ActP−int−hph gene)と、CaMV35S制御下のgusA遺伝子を持つpRITを構築した。
実施例1−2
pINA134の構築
ジフテリア毒素A鎖遺伝子(DT−A遺伝子)は、pMC1DpA(Yagi T,Ikawa Y,Yoshida K,Shigetani Y,Takeda N,Mabuchi I,Yamamoto T,Aizawa S(1990)Homologous recombination at c−fyn locus of mouse embryonic stem cells with use of diphtheria toxin A−fragment gene in negative selection.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9918−9922)をテンプレートとしたPCRによって断片を獲得し、pCKR138(Izawa T,Miyazaki C,Yamamoto M,Terada R,Iida S,and Shimamoto K(1991)Introduction and transposition of the maize transposable element Ac in rice(Oriza sativa L.).Mol Gen Genet 227:391−396)のhph遺伝子のコーディング部分と置換することにより、CaMV35Sプロモーター、DT−A、CaMV35Sターミネーターを接続し、プラスミドp35SP−DT−Aを構築した。CaMV35SプロモーターとDT−A遺伝子の間にヒマカタラーゼイントロン(Ohta S,Mita S,Hattori T,Nakamura K(1990)Construction and expression in tobacco of a β−glucuronidase(GUS)reporter gene containing an intron within the coding sequence.Plant Cell Physiol 31:805−813)を挿入し、p35SP−int−DT−Aを構築した。挿入する断片はPCRによって獲得した。pAHC27(Takimoto I,Chritstensen AH,Quail PH,Uchimiya H,Toki S(1994)Non−systemic expression of a stress−responsive maize polyubiquitin gene(Ubi−1)in transgenic rice plants.Plant Mol Biol 26:1007−1012)をPstIで消化して得られるトウモロコシUbiquitin1プロモーターとその第1イントロンを含む2.0kbの断片と、p35SP−DT−AのCaMV35Sプロモーターを置換し、プラスミドpUbiP−int−DT−Aを構築した。Tn930(Grindley NDF and Joyce CM(1981)Analysis of the structure and function of the kanamycin−resistance transposon Tn903.Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.45:125−133)由来のカナマイシン耐性遺伝子をpUbiP−int−DT−AのCaMV35Sターミネーターの3‘末端にDT−Aと同方向になるように挿入し、そのカナマイシン耐性遺伝子の3’末端にp35SP−int−DT−Aのプロモーターからターミネーターまで含む断片を逆向きに挿入し、pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−Aを構築した。pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−Aのカナマイシン耐性遺伝子中に有るHindIII部位をHindIIIによる消化および平滑末端化、セルフライゲーションにより除去し、pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)を構築した。pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)のUbiquitin1プロモーターからCaMV35Sプロモーターにはさまれる領域をHindIIIで切り出し、pGS−SalIのHindIII部位に挿入し、pGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−Aを構築した。構築後、HindIIIで部分消化してリンカー(5’−AGC TGG GAT CCC−3’)を挿入することにより、2ヶ所あるHindIII部位をそれぞれ除去し、pGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)を構築した。
トウモロコシのEn/Spmトランスポゾン(Gierl A,Schwarz−Sommer Z,and Saedler H(1985)Molecular interactions between the components of the En−Itransposable element system of Zea mays.EMBO J.4:579−583)の転写終止領域は、PCRによって1.0kbの断片として合成し、pAch1のCaMV35Sターミネーターの3‘末端に挿入してpAch1−En/Spmを構築した。バクテリオファージP1(Kanegae Y,Lee G,Sato Y,Tanaka M,Nakai M,Sakaki T,Sugano S and Saito I(1995)Efficient gene activation in mammalian cells by using recombinant adenovirus expressing site−specific Cre recombinase.Nucl Acids Res 23:3816−3821)由来のCre/loxP部位特異的組換え系のloxP配列と、ターゲティングベクターを構築する際に相同配列を挿入するクローニング部位は、PCRによって合成し、pAch1−En/SpmのActP−int−hph−En/Spm遺伝子の5’末端と3‘末端に挿入し、pAch1−En/Spm2を構築した。これをpGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)のカナマイシン耐性遺伝子の領域と置換してpINA134を構築した。
実施例1−3
pRWの構築
日本稲品種「シモキタ」のWaxy遺伝子とその周辺領域67kbを含むBACクローン、123−D4をHindIIIで消化し、Waxy遺伝子を含む14.7kbの断片をpBC(Stratagene Co.)のHindIII部位に挿入した。これをXbaIで消化し、得られる6.3kb、6.18kbの断片をそれぞれpBluescript SK−(Stratagene Co.)のXbaI部位に挿入し、pBluescrip−Waxy6.3kbおよびpBluescrip−Waxy6.8kbを構築した。pBluescrip−Waxy6.8kbの3’側のマルチクローニング部位にあるNotI部位にAscIリンカーを挿入した後、SmaIおよびAscIで消化して得られる6.8kbの断片をpINA134のPmeIおよびAscI部位間に挿入し、pINA−Waxy6.8kbを構築した。Waxy遺伝子のプロモーター領域を含む6.3kbの断片を持つpBluescriptはHindIIIで消化し、得られる6.3kbの断片をpINA−Waxy6.8kbのHindIII部位に挿入し、Waxyターゲティングベクター、pRWを構築した。
これらのベクターは、それぞれAgrobacterium tumefaciens EHA101株(Hood EE,Fraley RT,Chilton M−D(1986)The hyper−virulence of Agrobacterium tumefaciens strain A281 on legumes.Plant Physiol.83:529−534)にエレクトロポレーション法(Sambook,J,Fritsch,EF,Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory,manual,2nd Edn.Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press)により導入した。
実施例2 形質転換
アグロバクテリウムを用いた形質転換の多くはHieiら(Hiei Y,Ohta S,Komari T,Kumashiro T(1994)Efficient transformation of rice(Oryza sativa L.)mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T−DNA.The Plant Journal 6:271−282)の方法に従った。ただし、イネの培養には、Gelriteの代わりにAgarose Type I(Sigma Co.)を用いた。日本晴れの完熟種子を用いてカルスを誘導した。種子は、籾を取り除き、70%エタノールに1分浸漬した後、2.5%sodium hypochloriteに20分間浸漬して滅菌した。その後滅菌水ですすぎ、Agarose Trype Iを用いた2N6培地に移し、暗所、28℃で3−4週間培養した。その後別の2N6培地に移し、3−7日間培養した。
pRIT、pINA134、pRWをそれぞれ保有するアグロバクテリウムEHA101株は、125mg/lスペクチノマイシンを含むAB培地(Chilton MD,Currier TC,Farrand SK,Bendich AJ,Gordon MP,Nester EW(1974)Agrobacterium tumefaciens DNA and PS8 bacteriophage DNA not detected in crown gall tumors.Proc Natl Acad Sci USA 71:3672−3676)上で28℃、3日間培養した。培養後、集菌し、400μMアセトシリンゴンを含むAAM溶液(Hiei Y,Ohta S,Komari T,Kumashiro T(1994)Efficient transformation of rice(Oryza sativa L.)mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T−DNA.The Plant Journal 6:271−282)に懸濁し、1−2時間、28℃、100rpmで振盪した。バクテリアの濃度をOD600=0.18に調整した溶液にカルスを3−4分間浸漬し、過剰のバクテリアを滅菌したペーパータオルで取り除いた後に、400μMのアセトシリンゴンを含む0.8%Agarose Type Iの2N6−AS培地に移し、暗所、28℃で3日間培養した。500mg/lのセフォタキシムを含む滅菌水でカルスを洗い、滅菌したペーパータオルで過剰の水分を取り除いた後に、50mg/lハイグロマイシン、500mg/lセフォタキシムを含む0.8%Agarose Type Iの2N6−CH培地に移し、暗所、28℃で3−4週間培養した。継続的に増殖するカルスの数を数え、2N6−CH溶液を入れたマルチウェル・プレートにそれぞれのカルスを移し、以後の解析に用いた。
pRWの形質転換におけるポジティブ・ネガティブ選抜の形質転換効率とエスケープ・カルス(ハイグロマイシン耐性であるが、相同組換えを起こしていないカルス)の数を調べるために、pRITおよびpINA134の形質転換から得られたカルスの数をpRWの場合と比較した。これは、感染前のカルスの生重と得られたカルスの数に基づいて行った。各実験では、400粒の完熟種子から健康な約40gFW(グラム生重)のカルスが得られた。1−5gFWのカルスをpRIT、pINA134の形質転換に用い、残りをpRWのために用いた。2N6−CH上で選抜した後、ハイグロマイシン耐性のカルスの数を数えた。
カルスの再分化には、MS塩(Murashige,T.and Skoog.F.(1962)A revised medium for rapid growth and bioassays with tobacco tissue cultures.Plant Physiol.15,473)、30g/lスクロース、30g/lソルビトール、1mg/l NAA、2mg/l BAP、50mg/lハイグロマイシン、500mg/lセフォタキシム、0.8%Agarose Type Iを含むMSRE培地を用いた。再分化した植物体は、30g/lスクロース、50mg/lハイグロマイシン、500mg/lセフォタキシム、0.8%Agarose Type Iを含むMS培地で生育させ、その後温室へ移した。
実施例3
ターゲティングされたカルスの検出
30mgFWのカルスを2ml容のプラスティック・チューブに入れ、直径3mmの陶器製の玉(Nikkato Co.)を5個と0.5mlのCTAB溶液(Plant DNA isolation kit.Kurabo Co.)を加えて、FastPrep tissue crusher(FP120;Bio 101 Co.)で速度6.5、20秒間粉砕した。これを65℃で0.5−2時間保温し、自動DNA抽出装置(NA2000.Kurabo Co.)によってDNAを抽出、精製した。葉の場合は10mgFWの葉を用い、チューブごと液体窒素で凍結し、葉を簡単に粉砕した後にFastPrep tissue crusherで、速度6.5、10秒間粉砕した。他の操作は、カルスの場合と同様にDNAを抽出した。得られたDNAは10mM Tris−EDTA緩衝液(pH8.0)に溶解し、260nmの吸収により定量した。PCRはLA Taq(Takara Co.)を用いた。反応条件は、94℃、1分、1サイクル、94℃、1分、60℃、20分、32サイクル、72℃、10分、1サイクルで行った。相同組換えの確認用には、プライマーとしてH1F;5’−GTA TAA TGT ATG CTA TAC GAA GTT ATG TTT−3’とW2R;5’−GTT TGG TCA TAT TAT GTA CTT AAG CTA AGT−3’を用いた。Waxy遺伝子の元のプロモーターを確認するためには、Pro1;5’−ACA CAA ATA ACT GCA GTC TC−3’とEx2;GAG CTG GGA CGT GGT GAG AGC CGA CAT G−3’を用いた。増幅したDNAは0.6%アガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウム・ブロマイドを用いて可視化した。
実施例4
胚乳と花粉のヨード染色
胚乳はカミソリで切断した。約は裂開直前に採取し、染色前に固定溶液(酢酸:エタノール=1:3v/v)で処理した。胚乳と花粉は、ヨード溶液(0.18%(w/v)ヨード、1%(w/v)ヨウ化カリウム)で染色した。
実施例5
a.サザンブロット分析
日本晴れおよび形質転換体のDNAは、緑葉からCTAB法で抽出し、精製した(Murray MG,Thompson WF.(1980)Rapid isolation of high molecular weight plant DNA.Nucleic Acids Res 8:4321−4325)。BACクローン123−D4のプラスミドDNAは核酸抽出キット(Qiaprep Spin Maxiprep Kit.Qiagen Co.)で単離した。HindIII、KpnI、MunI、EcoRVで単離したDNAをそれぞれ消化し、0.7%アガロースゲルを用いて分離し、Hybond N膜(Amersham Co.)に転写した。プラスミド、Adh1−antiWxをEcoRIで消化して得られる2.7kbpの断片をcWx2.7プローブとして利用した。cWx2.7プローブは2.3kbのWaxyコーディング領域と約400bpのWaxy第1イントロンを含んでいる。プラスミド、pBluescrip−Waxy6.3kbをXhoIで消化して得られる4.1kbpの断片をpWx4.1プローブとして利用した。これらの断片はジゴキシゲニンで標識した(Boehringer Mannheim Biochemica)。F1Hm;5’−GTA GGT AGA CCG GGG GCA ATG AG−3’およびR2Hm;5’−ACG CCC GAC AGT CCC GGC TCC GG−3’をプライマーとして、PCR DIG probe synthesis Kit(Roche Co.)用いてhph遺伝子の標識プローブを作成した。PCRの条件は、94℃、2分、1サイクル、94℃、30秒、60℃、45秒、68℃、45秒を38サイクル、72℃、3分、1サイクルで行った。DNAを転写した膜は、50%ホルムアミド、5xSSC、2%blocking solution(Boehringer Mannheim Biochemica)、0.2%SDS、0.1%ラウリルサルコシンを含む溶液に標識した断片を加え、42℃でハイブリダイズした。ハイブリダイズしたプローブは、CDP−Star(Boehringer Mannheim)と抗ジゴキシゲニン・アルカリフォスファターゼ(Boehringer Mannheim)を用いて検出した。
b.組換え領域の塩基配列解析
形質転換体の緑葉から単離したDNAを鋳型とし、DNAポリメラーゼ、AmpliTaq Gold(Perkin Elmer)を用いてPCRを行った。反応条件は、94℃、10分、1サイクル、94℃、0.5分、55℃、0.5分、72℃、1分、36サイクル、72℃、10分、1サイクルで行った。
プライマーは、WxR−F1;5’−AAG CTT CTA TTG ATG CAT AC−3’およびWxR−R1391;5’−GAC AGG ACA AGAG CTG AGG GGA AC−3’、WxR−F1276;5’−TAT AAT GGC CCA GAG TAG TA−3’およびWxR−R1788;5’−TTG CCC AGT TGC CCA AAG AA−3’、WxR−F1713;5’−CTC TCC CCT CCT CTC CCT TTC T−3’およびWxR−R2396;5’−TCC TTG GAT TAT GTG ATG GA−3’、WxR−F2363;5’−CCA ATC CAA TCC AAT CCA TCA C−3’およびWxR−R2925;5’−CCC TCT TCT CTC CCT TTT GAC C−3’、WxR−F2887;5’−TGG TGT TGT CCT TCT GTG GTC A−3’およびWxR−R3831;5’−CGT CGT CGT CGG GGT TCA GGT A−3’、WxR−F3509;5’−GTC AGC CTC CCT CTC CCT TCT C−3’およびWxR−R4701;5’−TAC AGC CGT GGG AGA GGA GAT A−3’、WxR−F4451;5’−AAG TCA AAT TAG CCA CGT AG−3’およびWxR−R5625;5’−CGG CTT GGC GTA CGT TGC AT−3’、WxR−F5447;5’−CAC GCA CAC CCC AAA CAG AC−3’およびWxR−R7899;5’−CTT GGG TTA AAA TCT TGC GA−3’、WxR−F7675;5’−AAC TGT TCT TGA TCA TCG CA−3’およびWxR−R9867;5’−ATT GTA TAC CGT TCC GTA TC−3’、WxR−F9709;5’−AGG AGA AGT ATC CGG GCA AG−3’およびWxR−R12465;5’−TCT TGA CTT GTC CCG GAC CAT−3’、WxR−F14654;5’−CTT ATA TTG TGG GAC GGA GA−3’およびWxR−R15022;5’−AGA AGC CTA ATA TAC CAC GA−3’、WxR−F−284;5’−ATG CAA TGA GAA GAT CTG TA−3’およびWxR−R209;5’−TCT TAT AAG CCG GAG TCT TG−3’の12組を用いてそれぞれ反応を行った。得られた12種の断片の配列をBigDyeTMTerminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit V3.0(Applied Biosystem)、ABI PRISM登録商標 377 DNA Sequencer、ABI PRISM登録商標 3100 Genetic Analyzer(共にApplied Biosystem)および各種プライマーを用いて解読した。
実施例6
効果的なポジティブ・ネガティブ選抜のために、ハイグロマイシン・フォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(hph)をポジティブ選抜マーカーとして、ジフテリア毒素A鎖遺伝子(DT−A;Pappenheimer,AM Jr(1977)Diphtheria toxin.Annu Rev Biochem 46:69−94)をネガティブ選抜マーカーとして選んだ。DT−Aは植物を含む真核生物に毒性を持っており、これはエロンゲーション・ファクターのADPリボシル化を介したタンパク質合成を阻害することによる(Yagi T,Ikawa Y,Yoshida K,Shigetani Y,Takeda N,Mabuchi I,Yamamoto T,Aizawa S(1990)Homologous recombination at c−fyn locus of mouse embryonic stem cells with use of diphtheria toxin A−fragment gene in negative selection.Proc.Natl.Acad.Sci.usa 87:9918−9922、Czako M and An G(1991)Expression of DNA coding for diphtheria toxin chain A is toxic to plant cells.Plant Physiol 95:687−692、Bellen HJ,D’evelyn D,Harvey M,Elledge SJ(1992)Isolation of temperature−sensitive diphtheria toxin in yeast and their effects on Drosophila Cells.Development 114 787−796)。形質転換頻度を調査するために、ポジティブ・コントロールベクターとしてpRITを、ネガティブ・コントロールベクターとしてpINA134を使用した。pRWと同様、pRITおよびpINA134もhphをポジティブ選抜マーカーとして持っており、形質転換効率をできるだけ高めるために、イネactin1プロモーターとその第1イントロンを使用した。
pRITを用いて形質転換を行ったところ、400粒の完熟種子より1500の独立したカルスが得られことを確認した。ネガティブ選抜の効果を調べるために同様の方法でpINA134を形質転換したところ、99%以上の致死率を確認した。PCRによる解析により、生存できなかったカルスはDT−A遺伝子を持つことが示唆された。pINA134を形質転換して生き残ったカルスの多くは、DT−A遺伝子の一部または全体を欠失してT−DNAが組み込まれていた。これらの結果は、高い活性を持つプロモーターに接続したDT−A遺伝子がイネのネガティブ選抜に有効であることを示唆している。また、2つのDT−A遺伝子を離れて配置することにより、2つのDT−A遺伝子が共に削られて組み込まれる確率が極めて低いことも示唆している。
WaxyターゲットベクターであるpRWを用いて形質転換を行った。この際、形質転換効率、ポジティブ・ネガティブ選抜効果を確認するために、同時にpRITおよびpINA134も形質転換に用い、得られたハイグロマイシン耐性カルスの数を数えた。表1に示すように、6回の形質転換実験で、平均すると、一回当たりpRITの場合は約1500、pINA134は約60、pRWは約100のカルスが得られた。
H1FとW2Rプライマーを組み合わせたPCRによってWaxy座位の相同組換えを確認した。H1Fプライマーは、En/Spm配列の3‘末にあるloxP配列を、W2Rプライマーは相同組換えが起こる領域の外の配列をコードしている。相同組換えが起こったカルスに対してこれらのプライマーを用いれば、約8kbの断片の増幅が確認できる。6回の実験で得られた合計630の生存カルスをこれらのプライマーで解析し、6個の独立した陽性カルス(ラインA−I、A−II、B、C、E、F)を見出した。表1に示すように、各実験で得られたカルスのうち、平均100分の1のカルスがPCRで陽性であった。一方、まれに異なる鎖長の断片が増幅されることもあった。これは不規則な組み込みやDT−A遺伝子が欠失して組み込まれたものであると考えられる。
PCRで陽性であった6個体の再生植物(ラインA−I、A−II、B、C、E、F)の緑葉からDNAを単離し、HindIII、MunIおよびEcoRVで消化してサザン解析を行った。組換え前は14.7kbのWaxy断片が、PCRで陽性であった組換え体では6.3kbと12.1kbに変化していた。これは、相同組換えにより第1イントロン部分にHindIII部位が挿入されたことによる。6.3kbの断片はWaxyプロモーター領域、pW4.1とハイブリダイズし、12.1kbの断片はhph遺伝子のコーディング領域、Hm0.9およびWaxy遺伝子のコーディング領域、cWx2.7とハイブリダイズした。同様のことはMunI、EcoRVを用いた解析からも確認できた。また、検出されたシグナルの強さから、すべての個体で対立遺伝子の片方のみで相同組換えが起こっていると推察された。
相同組換えされたカルス(ラインA−I、A−II、B、C、E、F)すべては、植物体に再生することができ、稔性があり、種子が得られた。このうちA−Iについて、ヨード染色とPCRにより、Waxy遺伝子の分離を解析した。Waxy遺伝子を持つ日本晴れの花粉と種子の澱粉は、アミロースとアミロペクチンから成り、ヨード染色により濃紺色に染まる。一方、waxy遺伝子を持つ糯米の澱粉はアミロペクチンのみから成り、赤茶色に染まる。A−Iは、濃紺色に染まった花粉と赤茶色との比は1:1であった。また、得られた種子53粒を染色したところ、13粒が赤茶色に染まった。A−II、B、C、E、Fの種子を用いて同様の実験を行ったところ、染色の比率はA−Iとほぼ同様であった。これらは、A−I、A−II、B、C、E、Fの個体ではWaxy対立遺伝子の片方のみで相同組換えが起こったことを示唆している。次に、得られた種子の遺伝子型を区別するために、種子を発芽させ、緑葉からDNAを単離し、PCR解析を行った。相同組換えを起こしたことを確認するためには、プライマー、H1FおよびW2Rを、元のWaxy座位の検出にはPro1およびEx2を用いた。Pro1とEx2は、第1イントロン付近の1.3kbの断片を増幅する。PCR解析の結果、ヨード染色による表現型とPCR解析による遺伝子型は完全に一致し、濃紺色に染まった種子のうち27粒は遺伝子型がヘテロであった。つまり、F1個体では遺伝子型が1:2:1で分離しており、相同組換えは対立遺伝子の片側のみで起こったことが示された。加えて、相同組換えが起こった遺伝子が次世代に正確に遺伝することが示された。
ゲノム遺伝子に予期せぬ再構成が生じた結果、Waxy遺伝子が機能しなくなった可能性もあるため、hph−En/Spm遺伝子がWaxyの第1イントロンに正確に組み込まれていることをサザン分析により確認した。A−Iの後代はHindIII、KpnI、MunIおよびEcoRVで、A−II、B、C、E、Fの後代はそれぞれHindIII、MunIおよびEcoRVでゲノムDNAを消化して分析に用いた。また解析にはそれぞれ複数の個体を用いた。これらの制限酵素は、日本晴れとシモキタのWaxy座位間で多型が無く、hph−En/Spm遺伝子にも存在することから選定した。プローブにはpW4.1、Hm0.9、cWx2.7を用いた。その結果、予想通りの鎖長の断片がすべてのF1個体で確認され、目的通りの相同組換えが起こり、後代に正確に遺伝していることが分かった。
ラインA−I、B、Cの個体の後代で組換え領域がホモである個体のゲノムDNAを用い、相同組換えを起こしたと予想されるWaxy領域の塩基配列を解読し、予定外の欠失、挿入等の変異、異常が全く起こっていないことを確認した。
以上のように、独立の6回の実験で得られた6個体の形質転換体のサザン解析、F1個体のPCR解析、表現型と遺伝子型、サザン分析の分離様式およびラインA−I、BおよびCの組換え領域の配列解析結果から、得られたイネは正確に相同組換えが起こったものであることが示された。また、この遺伝子改変法に再現性のあることが示された。
a.1−5gFWのカルスを用いたpRITの形質転換で得られたハイグロマイシン耐性カルスの数を、pRWの形質転換に用いたカルスの重量(約40gFW)相当に換算した数。
b.1−5gFWのカルスを用いたpINA134の形質転換で得られるハイグロマイシン耐性カルスの数をpRWの形質転換に用いたカルスの重量(約40gFW)相当に換算した数。
c.40gFWのカルスを用いたpRWの形質転換で得られたハイグロマイシン耐性カルスの数
d.<8.6x10−4
参考文献
上記文献の他、以下の文献を参考文献とした。
(1)Echt CS Schwartz D(1981)Evidence for the inclusion of controlling elements within the structural gene at the waxy locus in maize.Genetics 99:275−284.
(2)Hajdukiewicz P,Svab Z,Maliga P(1994)The small,versatile pPZP family of Agrobacterium binary vectors for plant transformation.Plant Mol Biol 25:989−994
(3)McElroy D,Blowers AD,Jenes B,Wu R(1991)Construction of expression vectors based on the rice actin(Act1)5’region for use in monocot transformation.Mol Gen Genet 231:150−160
(4)Nelson,OE(1962)The Waxy locus in maize.I.Intralocus recombination frequency estimates by pollen and by conventional analyses.Genetics 47:737−742
(5)Wessler,SR,Varagona,MJ(1985)Molecular basis of mutations in the Waxy locus of maize:correlation with the fine Structure genetic map.Proc.Nail.Acad.Sci.usa 82:4177−4181
(6)US Patent No 6187994,Application No 9765613
(7)国際公開番号WO9925821、国際出願番号WO98US24610(8)US Patent No 5464764,Application No 014083
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、イネWaxy遺伝子を例とした高等植物ゲノム改変の概念図を示す。a.は、導入遺伝子とWaxy遺伝子間で相同組み換えが生じる際の模式図であり、b.は、Waxy座に相同組み換えが生じた際の模式図である。
図2は、ゲノム改変用ベクターの模式図を示す。a.は、コントロールベクター、b.は、基本ベクターpINA134、c.は、Waxy遺伝子改変用ベクターの模式図である。図中、pUbiはトウモロコシ・ユビキチン1プロモーター、iUbiはトウモロコシ・ユビキチン1第1イントロン、DTはジフテリア毒素タンパク質A鎖、loxはバクテリオファージのCre/lox組換えのlox配列、pActはイネ・アクチンプロモーター、iActはイネ・アクチン第1イントロン、hphはハイグロマイシン耐性遺伝子、t35Sはカリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター、En/SpmはEn/Spm型トランスポゾンの転写終止領域、iCatはヒマ・カタラーゼ遺伝子の第1イントロン、p35Sはカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、およびtNosはノパリンシンセターゼターミネーターを表す。
図3は、pUbiP−int−DT−A、p35SP−int−DT−A、およびpUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)の模式を示す。
図4は、pGS−SalI.pGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)の模式を示す。
図5は、ベクターpINA134の構築模式図であり、pAch1−En/SpmおよびpAch1−En/Spm2の模式を示す。
図6は、Waxy座、ベクター、および相同組換え後の物理地図模式図を示す。
図7は、相同組み換え個体の解析を示す。aは、HIF、W2Rプライマーを用いたPCRによる解析を示す。また、PCRで陽性であった個体の再生植物の緑葉からDNAを単離し、HindIIIまたはMunIで消化してサザン解析を行った結果を示す。bは、HindIIIを用いたゲノムサザン解析を示す。cは、MunIを用いたゲノムサザン解析を示す。図中、RCVは陽性コントロールベクターおよびNは非組換え体を表し、A1、A2、B、C、E、FはそれぞれラインA−I、A−II、B、C、E、Fの個体を表す。
図8は、ヨード染色の結果を示す。
図9は、相同組換え個体の再生の様子を示す。aは、ハイグロマイシン耐性カルス、bは再生イネ、およびcは出穂後の再生イネを示す。
本発明は、相同組換えを利用した高等植物でのゲノム改変するための遺伝子構築物、および該遺伝子構築物を含む植物形質転換用ベクターを用いてゲノム改変高等植物を製造する方法に係り、植物が本来持つゲノム配列をターゲットとして、本来の遺伝子座位を変えることなく、高効率かつ再現性良く相同組換えの生じた個体を獲得することができる方法に関する。
従来の技術
高等植物の内、双子葉植物への遺伝子導入には、病原菌Agrobacteriumtumefaciens(アグロバクテリウムツメファシエンス)の感染時におこるTiプラスミド中のT−DNAの植物細胞への移行と染色体組込みを利用した方法がよく使われ、Tiプラスミドから遺伝子導入に必要な領域だけを残して大腸菌との間を往復可能にした小さなバイナリーベクターが開発されている。単子葉植物では、プロトプラストへのエレクトロポレーションなどによるDNAの直接導入法が一般的に使われるが、アグロバクテリウム感染法による成功例もある。
しかし、これらの方法では、導入遺伝子の染色体上の位置およびコピー数がランダムであり、そのために導入外来遺伝子の位置効果や、コサプレッション(共抑制)、ジーン・サイレンシング等の諸現象により、導入遺伝子を期待どおりに発現させることは困難であった。
また、TOS17により遺伝子を破壊する方法で、レトロトランスポゾンを利用して遺伝子破壊を行う方法がある(Applications of retrotransposons as genetictools in plant biology.2001 Trends in Plant Science 6:127−134)。この方法は、ゲノムを改変できるが、レトロトランスポゾンはゲノム上の不特定の場所に転移するため、狙い通りのゲノム改変植物体を得ることは非常に労力を要する。さらに、遺伝子を破壊することは可能であるが、任意に変異を導入したり、置換したりすることは不可能な技術である。
T−DNAタギング法は、アグロバクテリウム法によりT−DNAをゲノムに挿入し、遺伝子破壊を行う方法である(Plant tagnology.1999 Trends in Plant Science 4:90−96)。この方法は、TOS17と同様、T−DNAはゲノム上の不特定の場所に挿入されるため、狙い通りのゲノム改変植物体を得ることは非常に労力を要する。さらに、遺伝子を破壊することは可能であるが、任意に変異を導入したり、置換したりすることは不可能な技術である。
RNA/DNAのキメラ・オリゴヌクレオチドを利用した方法で、Zhu Tらにより、RNA/DNAのキメラ・オリゴヌクレオチドを利用して、トウモロコシのゲノム上の遺伝子に一塩基置換を導入し、除草剤耐性を付与したことが報告されている(Targeted manipulation of maize genes in vivo using chimeric RNA/DNAoligonucleotides.Proc Natl Acad Sci USA 1999 Jul 20;96(15):8768−73)。この技術は、内在の遺伝子の極小さな領域に変異を導入することはできるが、大きな領域の改変には適用できない。
そこで、外来遺伝子を期待通りに発現させることができる可能性を有する方法として相同組換えを利用したゲノム改変法がある。これは、挿入したい外来遺伝子を相同遺伝子領域で挟んで、その両側で相同組換えを起こさせる方法である。相同組換えとは、相同な2本のDNA鎖の間でつなぎ換えが行われることをいう。
一方、植物のゲノム構造は動物に比べ繰返し配列が多く、特に体細胞では相同組換えが抑制されている可能性があると考えられている。アラビドプシスやタバコにおいては、ゲノムに人為的に設定したマーカー遺伝子を標的とした相同組換えが行われ、その頻度は10−4〜10−6と推定されている(Gene targeting in plants.EMBO J 1988 7:4021−4026,Extrachromosomal homologous recombination and gene targeting in plant cells after Agrobacterium mediated transformation.EMBO J 1990 9:3077−3084,Nonreciprocal homologous recombination between Agrobacterium transferred DNA and a plant chromosomal locus,Proc Natl Acad Sci USA 1993 90:7346−7350)。
しかし、このような高等植物での相同組換えを利用したゲノム改変法は、以下の萌芽的実験結果がいくつか報告されているのみである。これらの実験結果は、i)人為的に設定した遺伝子マーカーを用いた場合と、ii)植物が本来もつゲノム配列をターゲットとしたものに分けられる。
i)人為的に設定した遺伝子マーカーを用いた報告には以下のものがある。
相同組換えの頻度を上げるため、大腸菌のRecA遺伝子、RuvC遺伝子の発現や酵母菌のHOエンドヌクレアーゼ遺伝子やI−SceIエンドヌクレアーゼ遺伝子によるDNA二重鎖切断の導入がタバコやアラビドプシスのゲノム上に人為的に設定したマーカー遺伝子の相同組換えを促進することが報告されている(RecA protein stimulates homologous recombination in plants.Proc Natl Acad Sci USA 1996 93:3094−3098,Stimulation of homologous recombination in plants by expression of the bacterial resolvase RuvC.Proc Natl Acad Sci USA 1999 96:7398−7402,Enhancement of somatic intrachromosomal homologous recombination in Arabidopsis by the HO endonuclease.The Plant Cell 1996 8:2057−2066,Homologous recombination in plant cell is enhanced by in vivo induction of double strand breaks into DNA by a site−specific endonuclease.Nucleic Acid Research 1993 21:5034−5040)。
Paszkowski Jらは、タバコのプロトプラストを材料として、相同組換えによるゲノム改変に成功したことを報告している。これが植物で初めての成功例である。これにより、植物でも相同組換えによるゲノム改変の可能性が示された。ここでは、欠失させた機能しないカナマイシン耐性遺伝子(ポジティブ選抜マーカー)を最初にゲノムに組み込ませ、その細胞を材料として欠失部分を回復させる遺伝子を再度導入し、カナマイシン耐性でスクリーニングを行うという選抜システムを利用している(Gene targeting in plants.EMBO J 1988 7:4021−4026)。
Risseeuw Eらは、タバコを材料としてアグロバクテリウム法による形質転換を行い、相同組換えを起こした培養細胞を1ライン得たと報告している。彼らは、まずGUS遺伝子およびcodA遺伝子をゲノムに組み込ませ、次にその形質転換細胞を材料とし、相同組換えが生じるとGUS遺伝子の一部とcodA遺伝子が欠失し、新たにカナマイシン耐性遺伝子が組み込まれるような遺伝子を用いて再度形質転換し、5−フルオロシトシン感受性、カナマイシン耐性、GUS活性、PCR法により相同組換えを起こした細胞を選抜し、サザンブロット法により確認している(Gene targeting and instability of Agrobacterium T−DNA loci in the plant genome.Plant J 1997 Apr;11(4):717−28)。
Offringa Rらは、タバコ培養細胞を材料とし、アグロバクテリウム法を用いて遺伝子組換えを行い、相同組換えが起こったラインを1系統得たと報告している。これにより、アグロバクテリウム法が相同組換えによる植物ゲノムの改変に利用可能であることが示された。再現性については示されていない。彼らも一部を欠失させたカナマイシン耐性遺伝子をまずゲノムに組み込ませ、次にその細胞を材料として補完部分の遺伝子を用いて再度形質転換し、カナマイシンへの耐性とPCR法により相同組換えを起こした細胞を選抜し、サザンブロット法により確認している(Extrachromosomal homologous recombination and gene targeting in plant cells after Agrobacterium mediated transformation.EMBO J 1990 Oct;9(10):3077−84)。
Halfter Uらは、アラビドプシスのプロトプラストを材料とし、PEG法を用いて遺伝子組換えを行い、相同組換えが起こった4個体を得たと報告している。彼らは一部を欠失させたハイグロマイシン耐性遺伝子をまずゲノムに組み込ませ、次にその細胞を材料として補完部分の遺伝子を用いて再度形質転換し、ハイグロマイシンへの耐性とPCR法により相同組換えを起こした細胞を選抜し、サザンブロット法により確認している(Gene targeting in Arabidopsis thaliana.Mol Gen Genet 1992 Jan;231(2):186−93)。
ii)一方、植物が本来もつゲノム配列をターゲットとして相同組換えによって改変した例としては、以下の二報があるのみである。
Miao ZHらは、アラビドプシスの根を材料としてアグロバクテリウム法により形質転換し、形質転換培養細胞2580ラインから相同組換えが起こった1ラインを得ている。彼らは、ゲノム上のTGA3座にカナマイシン耐性遺伝子を相同組換えにより挿入している。これが植物本来のゲノムを相同組換えにより改変した初めての例である。彼らは、カナマイシン耐性による選抜に加え、相同組換えが起こらずに外来遺伝子が組み込まれた細胞にはβ−glucuronidaseを発現させることにより、より選抜効率を上げている。PCR法やサザンブロット法も利用して相同組換え個体を確認している。しかし、この細胞からは植物体を得ることはできず、相同組換えを起こした領域をホモで有する個体を得ることは実現できていない(Targeted disruption of the TGA3 locus in Arabidopsis thaliana.Plant J 1995 Feb;7(2):359−65)。
Yanofsky MFらは、アラビドプシスを材料としてアグロバクテリウム法により形質転換し、相同組換えが起こった1ラインを得たことを報告している。彼らは、ゲノム上のAGL5遺伝子にカナマイシン耐性遺伝子を挿入し、選抜にはカナマイシン耐性とPCR法を利用しており、750のカナマイシン耐性ラインから1ラインを得、最終的にサザンブロット法およびPCR法で確認している(Targeted disruption in Arabidopsis.Nature 1997 Oct 23;389(6653):802−3)。
また、相同組換えを試みたが、相同組換えを起こした細胞を得ることはできなかったという次のような報告もある。
Thykjaer Tらは、ハスを材料としてアグロバクテリウムを用いた相同組換えを試みている。その際、codA遺伝子をネガティブ選抜マーカーとして利用しており、それをT−DNAの片側、両側等に配置した数種のベクターを用いている。しかし相同組換えを起こした細胞を得ることはできていない(Gene targeting approaches using positive−negative selection and large flanking regions.Plant Mol Biol 1997 Nov;35(4):523−30)。
Gallego MEらは、アラビドプシスを材料とし、カナマイシン耐性遺伝子をポジティブ選抜マーカーとして、codA遺伝子をネガティブ選抜マーカーとして利用している。しかし1x105の形質転換細胞から相同組換えを起こした細胞を得ることはできていない(Positive−negative selection and T−DNA stability in Arabidopsis transformation.Plant Mol Biol 1999 Jan;39(1):83−93)。
発明の概要
相同組換えを利用したゲノム改変法には種々の利点があることは先に述べた。しかしながら、高等植物において、相同組換えの頻度は極めて低い等の理由により、高等植物本来のゲノム配列を相同組換えによって改変した報告は、上記Miao ZHらおよびYanofsky MFらの二例あるだけで、いずれの報告においても再現性と信頼性の高い相同組換えの方法は開示されていない。しかも、単子葉植物においては、農業上きわめて重要であるにもかかわらず成功例は一例もなく、高等植物における再現性と信頼性の高い相同組換え方法の開発が強く望まれていた。
以上から本発明の目的は、イネ等の単子葉植物を含む種々の高等植物の細胞で、外来遺伝子導入で生ずる導入遺伝子のコピー数や位置効果あるいはコサプレッション、ジーン・サイレンシング等による発現の不安定性等、従来の形質転換法の諸問題を解決し、改変を行おうとする遺伝子領域以外はゲノムに一切変化を起こさせずに形質転換を行う方法に用いる遺伝子構築物、植物ゲノム改変用ベクターおよび該方法により形質転換された細胞から、完全な形質転換植物を作出する方法を提供することである。
発明の詳細な説明
本発明は、T−DNA由来のBR(右ボーダー配列)とBL(左ボーダー配列)の間に、下記の要素を、BRから
(1)発現可能、好ましくは高発現可能に存在させた、第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子、
(2)宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’領域を組み込むための第一のクローニング部位、
(3)発現可能、好ましくは高発現可能に存在させたポジティブ選抜マーカー遺伝子、
(4)宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の3’領域を組み込むための第二のクローニング部位および
(5)発現可能、好ましくは高発現可能に存在させた、第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子と同一であってもよい第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子
の順に含んでなる、相同組換えにより高等植物のゲノムを改変するための遺伝子構築物及び該構築物を含む植物形質転換用ベクターを提供する。
本発明における遺伝子構築物は、T−DNAのBRとBLの間において、確実に発現させるようにした、好ましくは高発現性のポジティブ選抜マーカーの5’上流と3’下流に、確実に発現させるようにした、好ましくは高発現性のネガティブ選抜マーカーを置き、ポジティプ選抜マーカーとネガティブ選抜マーカーの間に相同組換えのための配列を組み込むためのクローニング部位(好ましくはマルチプルクローニングサイト)を有する遺伝子構築物であり、これをアグロバクテリウム法による植物形質転換用ベクター中に組み込んだものを本明細書中では「基本ベクター」と呼ぶ(図2b)。
T−DNAとは、Agrobacterium内で保持されているTiプラスミドの一部であり、植物がAgrobacteriumに感染すると、菌体自身は植物細胞に侵入しないが、菌体内に存在するTiプラスミドの一部であるT−DNA領域が植物細胞内に転移される。T−DNAは、BR(右ボーダー配列)とBL(左ボーダー配列)によって、区切られている。各ボーダー配列は、約25bpの不完全な反復配列からなる。
本発明の遺伝子構築物は、ネガティブ選抜マーカーおよびポジティブ選抜マーカーを含む。それは、高等植物の形質転換では非相同組換えにより遺伝子導入が生ずる頻度が極めて高く、相同組換え体を非相同組換え体から効率良く選抜する必要があるからであり、その選抜のため、これらのマーカーがネガティブ選抜法とポジティブ選抜法に用いられる。
ポジティブ選抜とは、遺伝子が導入されて形質転換された細胞を選抜する時に、当該遺伝子産物が発現している細胞のみが生き残る条件にて選抜する方法である。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子を導入すれば、導入された細胞がネオマイシンの類似体であるG418耐性を有することにより選抜される。
ネガティブ選抜とは、遺伝子が導入されて形質転換された細胞を選抜する時に、当該遺伝子産物が発現している細胞が死滅する条件にて選抜する方法である。例えば、ヒトヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子を細胞に導入し、チミジン類似体であるガンシクロビアの存在下で選抜すると、チミジンキナーゼ遺伝子を発現している細胞が死滅する。
本発明においては、選抜法として、ポジティブ選抜法とネガティブ選抜法を組み合わせたポジティブ・ネガティブ選抜法を利用する。この選抜法は、まずポジティブ選抜マーカーによって形質転換体を選抜し、さらにネガティブ選抜マーカーによって相同組換え以外により生じた形質転換体が致死となることを利用して、非相同組換え体を除いて相同組換え体を選択的に拾い上げる方法であり、選抜効率を高めることができる。
ネガティブ選抜マーカーは、植物細胞に対して毒性があり、ベクターを操作するために用いる大腸菌やアグロバクテリウムに対して毒性がないことが必要であり、ジフテリア毒素タンパク質A鎖遺伝子が好ましい。他にもネガティブ選抜マーカーとして利用できる遺伝子としては、codA遺伝子、シトクロムP−450遺伝子、barnase遺伝子が挙げられる。
ネガティブ選抜マーカーに関しては、以下の報告がある。Koprek Tらは、小麦のネガティブ選抜マーカーとしてcodA遺伝子と細菌由来のP−450が利用できることを報告している(Negative selection systems for transgenic barley(Hordeum vulgare L.):comparison of bacterial codA−and cytochrome P450 gene−mediated selection.Plant J 1999 Sep;19(6):719−26)。寺田らは、イネのネガティブ選抜マーカーとして、ジフテリア毒素タンパク質遺伝子(DxT−A)が利用できることを報告している(イネでのジフテリア毒素タンパク(DxT−A)遺伝子のネガティブ選抜効果とジーンターゲティング法への応用.日本分子生物学会第22回年会1999 Dec;:2P−0343)。
ポジティブ選抜マーカーとして好ましいものとして、ハイグロマイシン耐性遺伝子が挙げられる。他にもカナマイシン耐性遺伝子やイミダゾリン耐性遺伝子、グリフォセート耐性遺伝子、フォスフォマンノース−イソメラーゼ遺伝子、ブラストタイジンS耐性遺伝子、bar遺伝子およびグリフォシネート耐性遺伝子等が挙げられる。
本発明の特徴の一つは、相同組換えの頻度の低い高等植物において、相同組換えが生じた細胞を効率よく選抜するため、ポジティブおよびネガティブ選抜マーカーの発現を確実にし、好ましくは高発現性とする点である。例えば、図2bおよび2cに示すように、ネガティブ選抜マーカーの発現を強化するために、プロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター)にイントロンを接続して発現を強化し、または、単子葉植物で強い発現をするユビキチンプロモーターを使用する。一方、ポジティブ選抜マーカーの発現も好ましくは強化する。そのため、ポジティブ選抜マーカーとしてハイグロマイシン耐性遺伝子を用いる場合は、ハイグロマイシン耐性遺伝子に対して発現の強いアクチンのプロモーターを使用するのが好ましい。これら選抜マーカーを高発現とするには、他にもトウモロコシユビキチンプロモーター、イネPLDイントロン、ヒマカタラーゼイントロン等が使用できる。
本発明の別の特徴は、ネガティブ選抜マーカー遺伝子を、BL側とBR側にそれぞれ使用することである。これらは異なる遺伝子であっても良いが、好ましくは同じ遺伝子である。本発明者らは、高等植物、特に単子葉植物でこれまで相同組換えを利用したゲノム改変が成功していなかった一つの理由は、非相同組換体の中には、ネガティブ選抜マーカー遺伝子が完全な形で組み込まれないものが相当数存在し、そのためネガティブ選抜の効率が低かったのではないかと考えた。本発明では、2つのネガティブ選抜マーカーを互いに離して使用することにより、非相同組換体が選抜工程で生き残る確率を十分に低くすることができる。
本発明の遺伝子構築物において、クローニング部位は、ポジティブ選抜マーカー遺伝子と第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子との間及び、第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子との間の2カ所に存在させる。これらは、それぞれ標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’領域及び3’領域を組込むのに適する限り、任意のクローニング部位であってよい。クローニング部位をマルチプルクローニング部位とすれば、任意の遺伝子の組込みに対応できるので好ましい。マルチプルクローニング部位は希望する制限酵素部位を持つオリゴDNAを自由に設計、合成して使用することができる。
第一のクローニング部位には、相同組換えさせる遺伝子の5’領域を組込み、第二のクローニング部位には当該遺伝子の3’領域を組込む。
相同組換えさせる遺伝子は、特定のタンパク質をコードする構造遺伝子であってもよく、あるいは植物の表現形質に影響する他の遺伝子であってもよい。これらの遺伝子で、植物ゲノム中の標的とする遺伝子が機能しないようにする、または標的とする遺伝子を修飾して、組換体植物を改変することができる。標的とする遺伝子の非限定的な例として、Waxy遺伝子およびEPSPS遺伝子が挙げられる。
相同組換えさせる遺伝子の「5’領域」と「3’領域」の境界をどのように選ぶかについては特別の制限はない。例えば、標的の遺伝子の機能を抑制することを目的とする場合は、相同組換えさせる遺伝子はほぼ半々ないし、7:3〜3:7の長さに分けて、上流側を「5’領域」、下流側を「3’領域」としてよいが、一般的には各々の領域の長さは長い方が良い。但し、相同組換えを確実に行わせるため、各々の領域の長さは少なくとも1000塩基よりも長くすることが好ましく、少なくとも500塩基とする。
一方、標的遺伝子の機能の改変を目的とする場合には、相同組換えさせる遺伝子の「5’領域」と「3’領域」を各領域にわけて、それぞれのクローニング部位に挿入する。もし、相同組換えさせる遺伝子が適当なイントロンを有する場合は、イントロンの内部で5’領域と3’領域に分割することもできる。さらに、「5’領域」に相同組換えさせる遺伝子の発現に必要な機能を全部含む配列を用い、その下流に隣接する領域を「3’領域」として用いてもよいことは理解すべきである。逆に「3’領域」に相同組換えさせる遺伝子の機能を全部含む配列を用い、その上流の隣接領域を「5’領域」としてもよい。
遺伝子構築物は、ポジティブ選抜マーカーを形質転換植物の後代において部位特異的組換え系によって除くことができるように、要素(7)としてリコンビナーゼ認識配列(例えばCre/lox組換え系のlox配列、R/RS組換え系のRS配列、またはFLP−FRT組換え系のFRT配列)をポジティブ選抜マーカー遺伝子の前および後に加えることができる(図2b、2c)。Cre/lox組換え系は、Creリコンビナーゼとloxの組合せにより不要な部分を削除する方法である。R/RS組換え系は、R遺伝子がコードするリコンビナーゼとRS配列の組合わせにより、2つのRS配列に囲まれたDNA領域の欠失を誘導する方法である。また、FLP−FRT組換え系は、FLPリコンビナーゼとFRT配列の組合わせにより、2つのFRT配列に囲まれたDNA領域の欠失を誘導する方法である。
例えば、Cre/lox組換え系を加えた本発明の遺伝子構築物を用いて相同組換えした細胞に、Creリコンビナーゼを発現させると、ゲノムの相同組換えを生じた領域内の二つのlox配列にはさまれたポジティブ選抜マーカー遺伝子を含む配列が削除できる。Creリコンビナーゼを発現させ、ゲノム中の2つのlox配列に挟まれた領域が削除すると、植物ゲノム中に相同組換えで導入した遺伝子の5’領域と3’領域を、該遺伝子が本来存在する状態に連結することができる。削除の有無は、PCRやサザンブロット法で確認できる。
カルスにCreリコンビナーゼを発現させ、lox配列間の領域を削除するには、Creリコンビナーゼ遺伝子を遺伝子導入した別の植物と交配する、または相同組換えにより得られた植物体にCreリコンビナーゼ遺伝子を遺伝子導入することにより実現することができる。
Creとloxの組み合わせは、lox間の配列を削除するためだけでなく、修飾するために使用することができる。そのためには、まず、Creリコンビナーゼ遺伝子を導入した組換え植物と交配してlox間の配列を削除し、次にCreリコンビナーゼおよびlox間に組込みたい遺伝子を有する組換え体と交配することによって、削除した後に残っているlox配列部位に組込みたい遺伝子を挿入する。修飾の例としては、除草剤耐性遺伝子の挿入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また標的とした遺伝子の発現の制御が目的の場合は、抑制効果を確実にするため、転写終止領域、好ましくはEn/Spm型トランスポゾンの転写終止領域を要素(6)としてもつように設計することもできる(図2b、2c)。
上記要素(1)〜(5)および存在させる場合にはさらに要素(6)および/または(7)を所定の順序に連絡して、本発明の遺伝子構築物とすることは、通常の遺伝子工学技術で当業者が容易に行うことができる。さらに植物ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子を選択し、その5’領域および3’領域をそれぞれ第一および第二のクローニング部位に挿入することも、当業者が通常の遺伝子工学技術で容易に行うことができる。
本発明の遺伝子構築物は、適当な制限酵素部位によって、アグロバクテリウム法による植物形質転換用のベクターのT−DNA領域またはBRからBLまでの間の領域に置き換えて連絡する。得られたベクターは、本発明の基本ベクターである。この基本ベクターの第一および第二のクローニング部位に相同組換えさせる遺伝子の5’領域および3’領域をそれぞれ組込むと、本発明の遺伝子改変用ベクターとなる。
例えば、イネWaxy遺伝子およびその隣接領域を基本ベクターに導入すれば、イネWaxy遺伝子改変用ベクターが構築できる(図2c)。
本発明はまた、下記の工程からなる相同組換えを利用したゲノム改変高等植物の製造方法を提供する:
(イ)本発明の遺伝子改変用ベクターを、Tiプラスミドを含むアグロバクテリウム中に存在させ、
(ロ)当該アグロバクテリウムを植物の細胞、組織またはカルスに感染させ、
(ハ)ネガティブ選抜およびポジティブ選抜により、相同組み換えを生じた細胞、組織またはカルスを選抜し、
(ニ)選抜を細胞または組織で行った場合は、それをカルスに培養し、
(ホ)カルスを再生培地で培養して、ゲノム中にヘテロに相同組み換えを生じた植物個体に生長させ、そして
(ヘ)生じた植物を掛け合わせて、ホモに相同組み換えを有する、遺伝子改変高等植物を得る。
高等植物においては前述のように相同組換えの頻度は極めて低いため、上記(イ)〜(ロ)の工程は高頻度アグロバクテリウム形質転換法を用いて行うことが望ましい。遺伝子改変用ベクターを、高頻度アグロバクテリウム形質転換法によって、例えばイネ・カルスに導入し、ポジティブ・ネガティブ選抜法を適用して、相同組換えの生じた可能性の高いカルスを選抜する。高頻度アグロバクテリウム形質転換法とは、寺田らによりアグロバクテリウムによるイネ等への遺伝子導入技術を改良して得られた方法で、従来の5〜10倍の効率で遺伝子導入できる手法である(高頻度の形質転換効率を示すイネ・アグロバクテリウム法の開発日本育種学会第96回講演会1999 Sep;:212)。この方法は、バイナリーベクター系に基づき、高発現化したハイグロマイシン遺伝子を使用することを特徴としている。
ポジティブ・ネガティブ選抜は次の通りに行う。工程(ニ)で生じたカルスを、ポジティブ選抜用の培地に移す。培地は通常のカルス培養培地にポジティブ選抜用の成分を添加したものである。
ポジティブ選抜のために抗生物質耐性を利用する場合は、選抜用マーカー遺伝子で形質転換させていないカルスが生き残れない、または少なくとも増殖しない濃度の抗生物質を含ませておく。抗生物質がハイグロマイシンである場合は、培地1L当り10〜200mgのハイグロマイシンを含ませる。
カルスを暗所、15〜40℃の条件で2〜3週間培養する。生き残ったカルスはポジティブ選抜用マーカー遺伝子を有し、且つネガティブ選抜用マーカー遺伝子をもたない相同組換えに成功したカルスの候補として選抜する。生き残ったカルスであるかの判断は、カルスの色、増殖の差異により行う。
さらにこれらの候補カルスが、目的とする遺伝子改変が生じているカルスであることを確認するためには、PCR法による解析を行うことができる。
PCR法による解析では、カルスの細胞からDNAを抽出してPCRを行う際、プライマーの一方は挿入遺伝子部分に結合し、他方のプライマーは挿入断片の境界を越えた遺伝子の部分配列と結合するようにデザインする。遺伝子挿入が起こらなかったかあるいは非相同組換えの起きた細胞ではプライマー対は互いに近傍には存在しないので、PCRによる断片の増幅は起こらない。しかし、相同組換えが起きた細胞では、両プライマーは互いに近接した位置に結合するため、予想通りのサイズの増幅断片を生じる。この断片が検出されれば、その細胞集団に相同組換えの起きた遺伝子が存在する可能性が高い。その細胞を小集団に分けPCRにより再検討する。このサイクルを繰り返すことにより、相同組換えが生じた細胞を分離することができる。
さらに上記PCR法に代えて、またはPCR法に引き続いて、詳細なサザンブロット法による解析を行い、遺伝子改変を確認することができる。
本発明の方法は、単子葉植物、例えばイネの相同組換えを、非常に効率よく行うことが可能である。実施例に示すように、好ましい態様においては、6回の実験で、各400粒の種子からポジティブ・ネガティブ選抜後に平均100以上のカルスが得られ、ここから少なくとも毎回1個体の遺伝子改変植物が得られている通り、本発明の方法は再現性と信頼性に優れている。
目的通り、遺伝子が改変されていることが確認されたカルスは、MS培地等の再生培地で培養して、ゲノム中にヘテロに相同組み換えを生じた植物個体を得ることができ、そして、花粉および種子における改変遺伝子の構造と発現を上記同様にPCR法および/またはサザンブロット法で解析することにより、遺伝子座で相同組換えがヘテロで起こっているか否かを確認する。
得られた植物体は稔性を有するため、生じた植物を自家受粉によりまたは他の個体と掛け合わせることにより、ホモに相同組み換えを有する遺伝子改変高等植物を得ることができる。
発明の効果
以上説明したように、本発明によれば、相同組換えの頻度が低く、非相同組換えにより遺伝子導入が生ずる頻度が極めて高い高等植物において、ネガティブ選抜マーカーを相同領域の両側に接続し、更にポジティブ選抜マーカーを利用したポジティブ・ネガティブ選抜を行い、植物が本来持つゲノム配列をターゲットとして、本来の遺伝子座位を変えることなく、得られたカルス中でおよそ100分の1という割合で、しかも再現性良く相同組換えが起こる個体を獲得できる。
更に、本発明によれば、特定の遺伝子を自由自在に改変した形質転換植物を作出することができる。例えば本法によりイネの澱粉合成に関わるWaxy遺伝子の改変を行った場合には、Waxy遺伝子の発現を制御できるイネが得られる。遺伝子改変イネは、同遺伝子座に部位特異的組換えに必要な配列を組込んでいるため、部位特異的組換えによるさらなるゲノム改変の可能性も有する。また、遺伝子の機能解析やゲノム動態の変化に伴った遺伝子発現の機構解明に貢献することができる。
また、相同組換えが生じた個体を植物体として再生させることも可能であり、その植物体は稔性も有するため、相同組換えを起こしたゲノムをホモで有する個体をも獲得することができる。
実施例
実施例1
コントロールベクターとWaxyターゲットベクター
ベクター、pRIT(図2a)、pINA134(図2b)、pRW(図2c)の構築には、pVS1に由来する、pGSGlucベクター(Saalbach I,Pickardt T,Machemehl F,
methionine−rich 2S albumin of the Brazil nut(Betholletia excelsa H.B.K.)is stably expressed and inherited in transgenic grain legumes.Mol Gen Genet 242:226−236)のrepおよびsta領域、およびスペクチノマイシン耐性遺伝子を用いた。
実施例1−1
pRITの構築
pGSGlucをSalIで消化して得られる約9.4kbpの断片をセルフライゲーションしpGS−SalIを構築した。これをHindIIIで消化し、HindIIIで消化したpIG221(Tanaka A,Mita S,Ohta S,Kyozuka J,Shimamoto K,Nakamura K(1990)Enhancement of foreign gene expression by a dicot intron in rice but not in tobacco is correlated with an increased level of mRNA and an efficient splicing of the intron.Nucleic Acids Res.18:6767−6770)とライゲーションした後EcoRIおよびBglIIで消化して得られる12.4kbpの断片を、EcoRI、NotI、BglII部位を持つ合成リンカーを用いてセルフライゲーションし、pGSIGを得た。pAch1(Bilang R,Iida S,Peterhans A,Potrykus I,Paszkowski J(1991)The 3’−terminal region of the hygromycin−B−resistance gene is important for its activity in Escherichia coli and Nicotiana tabacum.Gene 100:247−250)からイネのActin1プロモーター、その第1イントロン、hph遺伝子およびCaMV35Sターミネーターを含む2.6kbpの断片を切りだし、pGSIGのEcoRI部位に挿入することにより、右ボーダーと左ボーダー間に、第1イントロンを持つイネActin1プロモーター制御下のhph遺伝子(ActP−int−hph gene)と、CaMV35S制御下のgusA遺伝子を持つpRITを構築した。
実施例1−2
pINA134の構築
ジフテリア毒素A鎖遺伝子(DT−A遺伝子)は、pMC1DpA(Yagi T,Ikawa Y,Yoshida K,Shigetani Y,Takeda N,Mabuchi I,Yamamoto T,Aizawa S(1990)Homologous recombination at c−fyn locus of mouse embryonic stem cells with use of diphtheria toxin A−fragment gene in negative selection.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:9918−9922)をテンプレートとしたPCRによって断片を獲得し、pCKR138(Izawa T,Miyazaki C,Yamamoto M,Terada R,Iida S,and Shimamoto K(1991)Introduction and transposition of the maize transposable element Ac in rice(Oriza sativa L.).Mol Gen Genet 227:391−396)のhph遺伝子のコーディング部分と置換することにより、CaMV35Sプロモーター、DT−A、CaMV35Sターミネーターを接続し、プラスミドp35SP−DT−Aを構築した。CaMV35SプロモーターとDT−A遺伝子の間にヒマカタラーゼイントロン(Ohta S,Mita S,Hattori T,Nakamura K(1990)Construction and expression in tobacco of a β−glucuronidase(GUS)reporter gene containing an intron within the coding sequence.Plant Cell Physiol 31:805−813)を挿入し、p35SP−int−DT−Aを構築した。挿入する断片はPCRによって獲得した。pAHC27(Takimoto I,Chritstensen AH,Quail PH,Uchimiya H,Toki S(1994)Non−systemic expression of a stress−responsive maize polyubiquitin gene(Ubi−1)in transgenic rice plants.Plant Mol Biol 26:1007−1012)をPstIで消化して得られるトウモロコシUbiquitin1プロモーターとその第1イントロンを含む2.0kbの断片と、p35SP−DT−AのCaMV35Sプロモーターを置換し、プラスミドpUbiP−int−DT−Aを構築した。Tn930(Grindley NDF and Joyce CM(1981)Analysis of the structure and function of the kanamycin−resistance transposon Tn903.Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.45:125−133)由来のカナマイシン耐性遺伝子をpUbiP−int−DT−AのCaMV35Sターミネーターの3‘末端にDT−Aと同方向になるように挿入し、そのカナマイシン耐性遺伝子の3’末端にp35SP−int−DT−Aのプロモーターからターミネーターまで含む断片を逆向きに挿入し、pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−Aを構築した。pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−Aのカナマイシン耐性遺伝子中に有るHindIII部位をHindIIIによる消化および平滑末端化、セルフライゲーションにより除去し、pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)を構築した。pUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)のUbiquitin1プロモーターからCaMV35Sプロモーターにはさまれる領域をHindIIIで切り出し、pGS−SalIのHindIII部位に挿入し、pGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−Aを構築した。構築後、HindIIIで部分消化してリンカー(5’−AGC TGG GAT CCC−3’)を挿入することにより、2ヶ所あるHindIII部位をそれぞれ除去し、pGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)を構築した。
トウモロコシのEn/Spmトランスポゾン(Gierl A,Schwarz−Sommer Z,and Saedler H(1985)Molecular interactions between the components of the En−Itransposable element system of Zea mays.EMBO J.4:579−583)の転写終止領域は、PCRによって1.0kbの断片として合成し、pAch1のCaMV35Sターミネーターの3‘末端に挿入してpAch1−En/Spmを構築した。バクテリオファージP1(Kanegae Y,Lee G,Sato Y,Tanaka M,Nakai M,Sakaki T,Sugano S and Saito I(1995)Efficient gene activation in mammalian cells by using recombinant adenovirus expressing site−specific Cre recombinase.Nucl Acids Res 23:3816−3821)由来のCre/loxP部位特異的組換え系のloxP配列と、ターゲティングベクターを構築する際に相同配列を挿入するクローニング部位は、PCRによって合成し、pAch1−En/SpmのActP−int−hph−En/Spm遺伝子の5’末端と3‘末端に挿入し、pAch1−En/Spm2を構築した。これをpGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)のカナマイシン耐性遺伝子の領域と置換してpINA134を構築した。
実施例1−3
pRWの構築
日本稲品種「シモキタ」のWaxy遺伝子とその周辺領域67kbを含むBACクローン、123−D4をHindIIIで消化し、Waxy遺伝子を含む14.7kbの断片をpBC(Stratagene Co.)のHindIII部位に挿入した。これをXbaIで消化し、得られる6.3kb、6.18kbの断片をそれぞれpBluescript SK−(Stratagene Co.)のXbaI部位に挿入し、pBluescrip−Waxy6.3kbおよびpBluescrip−Waxy6.8kbを構築した。pBluescrip−Waxy6.8kbの3’側のマルチクローニング部位にあるNotI部位にAscIリンカーを挿入した後、SmaIおよびAscIで消化して得られる6.8kbの断片をpINA134のPmeIおよびAscI部位間に挿入し、pINA−Waxy6.8kbを構築した。Waxy遺伝子のプロモーター領域を含む6.3kbの断片を持つpBluescriptはHindIIIで消化し、得られる6.3kbの断片をpINA−Waxy6.8kbのHindIII部位に挿入し、Waxyターゲティングベクター、pRWを構築した。
これらのベクターは、それぞれAgrobacterium tumefaciens EHA101株(Hood EE,Fraley RT,Chilton M−D(1986)The hyper−virulence of Agrobacterium tumefaciens strain A281 on legumes.Plant Physiol.83:529−534)にエレクトロポレーション法(Sambook,J,Fritsch,EF,Maniatis,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory,manual,2nd Edn.Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press)により導入した。
実施例2 形質転換
アグロバクテリウムを用いた形質転換の多くはHieiら(Hiei Y,Ohta S,Komari T,Kumashiro T(1994)Efficient transformation of rice(Oryza sativa L.)mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T−DNA.The Plant Journal 6:271−282)の方法に従った。ただし、イネの培養には、Gelriteの代わりにAgarose Type I(Sigma Co.)を用いた。日本晴れの完熟種子を用いてカルスを誘導した。種子は、籾を取り除き、70%エタノールに1分浸漬した後、2.5%sodium hypochloriteに20分間浸漬して滅菌した。その後滅菌水ですすぎ、Agarose Trype Iを用いた2N6培地に移し、暗所、28℃で3−4週間培養した。その後別の2N6培地に移し、3−7日間培養した。
pRIT、pINA134、pRWをそれぞれ保有するアグロバクテリウムEHA101株は、125mg/lスペクチノマイシンを含むAB培地(Chilton MD,Currier TC,Farrand SK,Bendich AJ,Gordon MP,Nester EW(1974)Agrobacterium tumefaciens DNA and PS8 bacteriophage DNA not detected in crown gall tumors.Proc Natl Acad Sci USA 71:3672−3676)上で28℃、3日間培養した。培養後、集菌し、400μMアセトシリンゴンを含むAAM溶液(Hiei Y,Ohta S,Komari T,Kumashiro T(1994)Efficient transformation of rice(Oryza sativa L.)mediated by Agrobacterium and sequence analysis of the boundaries of the T−DNA.The Plant Journal 6:271−282)に懸濁し、1−2時間、28℃、100rpmで振盪した。バクテリアの濃度をOD600=0.18に調整した溶液にカルスを3−4分間浸漬し、過剰のバクテリアを滅菌したペーパータオルで取り除いた後に、400μMのアセトシリンゴンを含む0.8%Agarose Type Iの2N6−AS培地に移し、暗所、28℃で3日間培養した。500mg/lのセフォタキシムを含む滅菌水でカルスを洗い、滅菌したペーパータオルで過剰の水分を取り除いた後に、50mg/lハイグロマイシン、500mg/lセフォタキシムを含む0.8%Agarose Type Iの2N6−CH培地に移し、暗所、28℃で3−4週間培養した。継続的に増殖するカルスの数を数え、2N6−CH溶液を入れたマルチウェル・プレートにそれぞれのカルスを移し、以後の解析に用いた。
pRWの形質転換におけるポジティブ・ネガティブ選抜の形質転換効率とエスケープ・カルス(ハイグロマイシン耐性であるが、相同組換えを起こしていないカルス)の数を調べるために、pRITおよびpINA134の形質転換から得られたカルスの数をpRWの場合と比較した。これは、感染前のカルスの生重と得られたカルスの数に基づいて行った。各実験では、400粒の完熟種子から健康な約40gFW(グラム生重)のカルスが得られた。1−5gFWのカルスをpRIT、pINA134の形質転換に用い、残りをpRWのために用いた。2N6−CH上で選抜した後、ハイグロマイシン耐性のカルスの数を数えた。
カルスの再分化には、MS塩(Murashige,T.and Skoog.F.(1962)A revised medium for rapid growth and bioassays with tobacco tissue cultures.Plant Physiol.15,473)、30g/lスクロース、30g/lソルビトール、1mg/l NAA、2mg/l BAP、50mg/lハイグロマイシン、500mg/lセフォタキシム、0.8%Agarose Type Iを含むMSRE培地を用いた。再分化した植物体は、30g/lスクロース、50mg/lハイグロマイシン、500mg/lセフォタキシム、0.8%Agarose Type Iを含むMS培地で生育させ、その後温室へ移した。
実施例3
ターゲティングされたカルスの検出
30mgFWのカルスを2ml容のプラスティック・チューブに入れ、直径3mmの陶器製の玉(Nikkato Co.)を5個と0.5mlのCTAB溶液(Plant DNA isolation kit.Kurabo Co.)を加えて、FastPrep tissue crusher(FP120;Bio 101 Co.)で速度6.5、20秒間粉砕した。これを65℃で0.5−2時間保温し、自動DNA抽出装置(NA2000.Kurabo Co.)によってDNAを抽出、精製した。葉の場合は10mgFWの葉を用い、チューブごと液体窒素で凍結し、葉を簡単に粉砕した後にFastPrep tissue crusherで、速度6.5、10秒間粉砕した。他の操作は、カルスの場合と同様にDNAを抽出した。得られたDNAは10mM Tris−EDTA緩衝液(pH8.0)に溶解し、260nmの吸収により定量した。PCRはLA Taq(Takara Co.)を用いた。反応条件は、94℃、1分、1サイクル、94℃、1分、60℃、20分、32サイクル、72℃、10分、1サイクルで行った。相同組換えの確認用には、プライマーとしてH1F;5’−GTA TAA TGT ATG CTA TAC GAA GTT ATG TTT−3’とW2R;5’−GTT TGG TCA TAT TAT GTA CTT AAG CTA AGT−3’を用いた。Waxy遺伝子の元のプロモーターを確認するためには、Pro1;5’−ACA CAA ATA ACT GCA GTC TC−3’とEx2;GAG CTG GGA CGT GGT GAG AGC CGA CAT G−3’を用いた。増幅したDNAは0.6%アガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウム・ブロマイドを用いて可視化した。
実施例4
胚乳と花粉のヨード染色
胚乳はカミソリで切断した。約は裂開直前に採取し、染色前に固定溶液(酢酸:エタノール=1:3v/v)で処理した。胚乳と花粉は、ヨード溶液(0.18%(w/v)ヨード、1%(w/v)ヨウ化カリウム)で染色した。
実施例5
a.サザンブロット分析
日本晴れおよび形質転換体のDNAは、緑葉からCTAB法で抽出し、精製した(Murray MG,Thompson WF.(1980)Rapid isolation of high molecular weight plant DNA.Nucleic Acids Res 8:4321−4325)。BACクローン123−D4のプラスミドDNAは核酸抽出キット(Qiaprep Spin Maxiprep Kit.Qiagen Co.)で単離した。HindIII、KpnI、MunI、EcoRVで単離したDNAをそれぞれ消化し、0.7%アガロースゲルを用いて分離し、Hybond N膜(Amersham Co.)に転写した。プラスミド、Adh1−antiWxをEcoRIで消化して得られる2.7kbpの断片をcWx2.7プローブとして利用した。cWx2.7プローブは2.3kbのWaxyコーディング領域と約400bpのWaxy第1イントロンを含んでいる。プラスミド、pBluescrip−Waxy6.3kbをXhoIで消化して得られる4.1kbpの断片をpWx4.1プローブとして利用した。これらの断片はジゴキシゲニンで標識した(Boehringer Mannheim Biochemica)。F1Hm;5’−GTA GGT AGA CCG GGG GCA ATG AG−3’およびR2Hm;5’−ACG CCC GAC AGT CCC GGC TCC GG−3’をプライマーとして、PCR DIG probe synthesis Kit(Roche Co.)用いてhph遺伝子の標識プローブを作成した。PCRの条件は、94℃、2分、1サイクル、94℃、30秒、60℃、45秒、68℃、45秒を38サイクル、72℃、3分、1サイクルで行った。DNAを転写した膜は、50%ホルムアミド、5xSSC、2%blocking solution(Boehringer Mannheim Biochemica)、0.2%SDS、0.1%ラウリルサルコシンを含む溶液に標識した断片を加え、42℃でハイブリダイズした。ハイブリダイズしたプローブは、CDP−Star(Boehringer Mannheim)と抗ジゴキシゲニン・アルカリフォスファターゼ(Boehringer Mannheim)を用いて検出した。
b.組換え領域の塩基配列解析
形質転換体の緑葉から単離したDNAを鋳型とし、DNAポリメラーゼ、AmpliTaq Gold(Perkin Elmer)を用いてPCRを行った。反応条件は、94℃、10分、1サイクル、94℃、0.5分、55℃、0.5分、72℃、1分、36サイクル、72℃、10分、1サイクルで行った。
プライマーは、WxR−F1;5’−AAG CTT CTA TTG ATG CAT AC−3’およびWxR−R1391;5’−GAC AGG ACA AGAG CTG AGG GGA AC−3’、WxR−F1276;5’−TAT AAT GGC CCA GAG TAG TA−3’およびWxR−R1788;5’−TTG CCC AGT TGC CCA AAG AA−3’、WxR−F1713;5’−CTC TCC CCT CCT CTC CCT TTC T−3’およびWxR−R2396;5’−TCC TTG GAT TAT GTG ATG GA−3’、WxR−F2363;5’−CCA ATC CAA TCC AAT CCA TCA C−3’およびWxR−R2925;5’−CCC TCT TCT CTC CCT TTT GAC C−3’、WxR−F2887;5’−TGG TGT TGT CCT TCT GTG GTC A−3’およびWxR−R3831;5’−CGT CGT CGT CGG GGT TCA GGT A−3’、WxR−F3509;5’−GTC AGC CTC CCT CTC CCT TCT C−3’およびWxR−R4701;5’−TAC AGC CGT GGG AGA GGA GAT A−3’、WxR−F4451;5’−AAG TCA AAT TAG CCA CGT AG−3’およびWxR−R5625;5’−CGG CTT GGC GTA CGT TGC AT−3’、WxR−F5447;5’−CAC GCA CAC CCC AAA CAG AC−3’およびWxR−R7899;5’−CTT GGG TTA AAA TCT TGC GA−3’、WxR−F7675;5’−AAC TGT TCT TGA TCA TCG CA−3’およびWxR−R9867;5’−ATT GTA TAC CGT TCC GTA TC−3’、WxR−F9709;5’−AGG AGA AGT ATC CGG GCA AG−3’およびWxR−R12465;5’−TCT TGA CTT GTC CCG GAC CAT−3’、WxR−F14654;5’−CTT ATA TTG TGG GAC GGA GA−3’およびWxR−R15022;5’−AGA AGC CTA ATA TAC CAC GA−3’、WxR−F−284;5’−ATG CAA TGA GAA GAT CTG TA−3’およびWxR−R209;5’−TCT TAT AAG CCG GAG TCT TG−3’の12組を用いてそれぞれ反応を行った。得られた12種の断片の配列をBigDyeTMTerminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit V3.0(Applied Biosystem)、ABI PRISM登録商標 377 DNA Sequencer、ABI PRISM登録商標 3100 Genetic Analyzer(共にApplied Biosystem)および各種プライマーを用いて解読した。
実施例6
効果的なポジティブ・ネガティブ選抜のために、ハイグロマイシン・フォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(hph)をポジティブ選抜マーカーとして、ジフテリア毒素A鎖遺伝子(DT−A;Pappenheimer,AM Jr(1977)Diphtheria toxin.Annu Rev Biochem 46:69−94)をネガティブ選抜マーカーとして選んだ。DT−Aは植物を含む真核生物に毒性を持っており、これはエロンゲーション・ファクターのADPリボシル化を介したタンパク質合成を阻害することによる(Yagi T,Ikawa Y,Yoshida K,Shigetani Y,Takeda N,Mabuchi I,Yamamoto T,Aizawa S(1990)Homologous recombination at c−fyn locus of mouse embryonic stem cells with use of diphtheria toxin A−fragment gene in negative selection.Proc.Natl.Acad.Sci.usa 87:9918−9922、Czako M and An G(1991)Expression of DNA coding for diphtheria toxin chain A is toxic to plant cells.Plant Physiol 95:687−692、Bellen HJ,D’evelyn D,Harvey M,Elledge SJ(1992)Isolation of temperature−sensitive diphtheria toxin in yeast and their effects on Drosophila Cells.Development 114 787−796)。形質転換頻度を調査するために、ポジティブ・コントロールベクターとしてpRITを、ネガティブ・コントロールベクターとしてpINA134を使用した。pRWと同様、pRITおよびpINA134もhphをポジティブ選抜マーカーとして持っており、形質転換効率をできるだけ高めるために、イネactin1プロモーターとその第1イントロンを使用した。
pRITを用いて形質転換を行ったところ、400粒の完熟種子より1500の独立したカルスが得られことを確認した。ネガティブ選抜の効果を調べるために同様の方法でpINA134を形質転換したところ、99%以上の致死率を確認した。PCRによる解析により、生存できなかったカルスはDT−A遺伝子を持つことが示唆された。pINA134を形質転換して生き残ったカルスの多くは、DT−A遺伝子の一部または全体を欠失してT−DNAが組み込まれていた。これらの結果は、高い活性を持つプロモーターに接続したDT−A遺伝子がイネのネガティブ選抜に有効であることを示唆している。また、2つのDT−A遺伝子を離れて配置することにより、2つのDT−A遺伝子が共に削られて組み込まれる確率が極めて低いことも示唆している。
WaxyターゲットベクターであるpRWを用いて形質転換を行った。この際、形質転換効率、ポジティブ・ネガティブ選抜効果を確認するために、同時にpRITおよびpINA134も形質転換に用い、得られたハイグロマイシン耐性カルスの数を数えた。表1に示すように、6回の形質転換実験で、平均すると、一回当たりpRITの場合は約1500、pINA134は約60、pRWは約100のカルスが得られた。
H1FとW2Rプライマーを組み合わせたPCRによってWaxy座位の相同組換えを確認した。H1Fプライマーは、En/Spm配列の3‘末にあるloxP配列を、W2Rプライマーは相同組換えが起こる領域の外の配列をコードしている。相同組換えが起こったカルスに対してこれらのプライマーを用いれば、約8kbの断片の増幅が確認できる。6回の実験で得られた合計630の生存カルスをこれらのプライマーで解析し、6個の独立した陽性カルス(ラインA−I、A−II、B、C、E、F)を見出した。表1に示すように、各実験で得られたカルスのうち、平均100分の1のカルスがPCRで陽性であった。一方、まれに異なる鎖長の断片が増幅されることもあった。これは不規則な組み込みやDT−A遺伝子が欠失して組み込まれたものであると考えられる。
PCRで陽性であった6個体の再生植物(ラインA−I、A−II、B、C、E、F)の緑葉からDNAを単離し、HindIII、MunIおよびEcoRVで消化してサザン解析を行った。組換え前は14.7kbのWaxy断片が、PCRで陽性であった組換え体では6.3kbと12.1kbに変化していた。これは、相同組換えにより第1イントロン部分にHindIII部位が挿入されたことによる。6.3kbの断片はWaxyプロモーター領域、pW4.1とハイブリダイズし、12.1kbの断片はhph遺伝子のコーディング領域、Hm0.9およびWaxy遺伝子のコーディング領域、cWx2.7とハイブリダイズした。同様のことはMunI、EcoRVを用いた解析からも確認できた。また、検出されたシグナルの強さから、すべての個体で対立遺伝子の片方のみで相同組換えが起こっていると推察された。
相同組換えされたカルス(ラインA−I、A−II、B、C、E、F)すべては、植物体に再生することができ、稔性があり、種子が得られた。このうちA−Iについて、ヨード染色とPCRにより、Waxy遺伝子の分離を解析した。Waxy遺伝子を持つ日本晴れの花粉と種子の澱粉は、アミロースとアミロペクチンから成り、ヨード染色により濃紺色に染まる。一方、waxy遺伝子を持つ糯米の澱粉はアミロペクチンのみから成り、赤茶色に染まる。A−Iは、濃紺色に染まった花粉と赤茶色との比は1:1であった。また、得られた種子53粒を染色したところ、13粒が赤茶色に染まった。A−II、B、C、E、Fの種子を用いて同様の実験を行ったところ、染色の比率はA−Iとほぼ同様であった。これらは、A−I、A−II、B、C、E、Fの個体ではWaxy対立遺伝子の片方のみで相同組換えが起こったことを示唆している。次に、得られた種子の遺伝子型を区別するために、種子を発芽させ、緑葉からDNAを単離し、PCR解析を行った。相同組換えを起こしたことを確認するためには、プライマー、H1FおよびW2Rを、元のWaxy座位の検出にはPro1およびEx2を用いた。Pro1とEx2は、第1イントロン付近の1.3kbの断片を増幅する。PCR解析の結果、ヨード染色による表現型とPCR解析による遺伝子型は完全に一致し、濃紺色に染まった種子のうち27粒は遺伝子型がヘテロであった。つまり、F1個体では遺伝子型が1:2:1で分離しており、相同組換えは対立遺伝子の片側のみで起こったことが示された。加えて、相同組換えが起こった遺伝子が次世代に正確に遺伝することが示された。
ゲノム遺伝子に予期せぬ再構成が生じた結果、Waxy遺伝子が機能しなくなった可能性もあるため、hph−En/Spm遺伝子がWaxyの第1イントロンに正確に組み込まれていることをサザン分析により確認した。A−Iの後代はHindIII、KpnI、MunIおよびEcoRVで、A−II、B、C、E、Fの後代はそれぞれHindIII、MunIおよびEcoRVでゲノムDNAを消化して分析に用いた。また解析にはそれぞれ複数の個体を用いた。これらの制限酵素は、日本晴れとシモキタのWaxy座位間で多型が無く、hph−En/Spm遺伝子にも存在することから選定した。プローブにはpW4.1、Hm0.9、cWx2.7を用いた。その結果、予想通りの鎖長の断片がすべてのF1個体で確認され、目的通りの相同組換えが起こり、後代に正確に遺伝していることが分かった。
ラインA−I、B、Cの個体の後代で組換え領域がホモである個体のゲノムDNAを用い、相同組換えを起こしたと予想されるWaxy領域の塩基配列を解読し、予定外の欠失、挿入等の変異、異常が全く起こっていないことを確認した。
以上のように、独立の6回の実験で得られた6個体の形質転換体のサザン解析、F1個体のPCR解析、表現型と遺伝子型、サザン分析の分離様式およびラインA−I、BおよびCの組換え領域の配列解析結果から、得られたイネは正確に相同組換えが起こったものであることが示された。また、この遺伝子改変法に再現性のあることが示された。
a.1−5gFWのカルスを用いたpRITの形質転換で得られたハイグロマイシン耐性カルスの数を、pRWの形質転換に用いたカルスの重量(約40gFW)相当に換算した数。
b.1−5gFWのカルスを用いたpINA134の形質転換で得られるハイグロマイシン耐性カルスの数をpRWの形質転換に用いたカルスの重量(約40gFW)相当に換算した数。
c.40gFWのカルスを用いたpRWの形質転換で得られたハイグロマイシン耐性カルスの数
d.<8.6x10−4
参考文献
上記文献の他、以下の文献を参考文献とした。
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【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、イネWaxy遺伝子を例とした高等植物ゲノム改変の概念図を示す。a.は、導入遺伝子とWaxy遺伝子間で相同組み換えが生じる際の模式図であり、b.は、Waxy座に相同組み換えが生じた際の模式図である。
図2は、ゲノム改変用ベクターの模式図を示す。a.は、コントロールベクター、b.は、基本ベクターpINA134、c.は、Waxy遺伝子改変用ベクターの模式図である。図中、pUbiはトウモロコシ・ユビキチン1プロモーター、iUbiはトウモロコシ・ユビキチン1第1イントロン、DTはジフテリア毒素タンパク質A鎖、loxはバクテリオファージのCre/lox組換えのlox配列、pActはイネ・アクチンプロモーター、iActはイネ・アクチン第1イントロン、hphはハイグロマイシン耐性遺伝子、t35Sはカリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター、En/SpmはEn/Spm型トランスポゾンの転写終止領域、iCatはヒマ・カタラーゼ遺伝子の第1イントロン、p35Sはカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター、およびtNosはノパリンシンセターゼターミネーターを表す。
図3は、pUbiP−int−DT−A、p35SP−int−DT−A、およびpUbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)の模式を示す。
図4は、pGS−SalI.pGS−SalI−UbiP−int−DT−A/35SP−int−DT−A(ΔHindIII)の模式を示す。
図5は、ベクターpINA134の構築模式図であり、pAch1−En/SpmおよびpAch1−En/Spm2の模式を示す。
図6は、Waxy座、ベクター、および相同組換え後の物理地図模式図を示す。
図7は、相同組み換え個体の解析を示す。aは、HIF、W2Rプライマーを用いたPCRによる解析を示す。また、PCRで陽性であった個体の再生植物の緑葉からDNAを単離し、HindIIIまたはMunIで消化してサザン解析を行った結果を示す。bは、HindIIIを用いたゲノムサザン解析を示す。cは、MunIを用いたゲノムサザン解析を示す。図中、RCVは陽性コントロールベクターおよびNは非組換え体を表し、A1、A2、B、C、E、FはそれぞれラインA−I、A−II、B、C、E、Fの個体を表す。
図8は、ヨード染色の結果を示す。
図9は、相同組換え個体の再生の様子を示す。aは、ハイグロマイシン耐性カルス、bは再生イネ、およびcは出穂後の再生イネを示す。
Claims (14)
- T−DNA由来のBR(右ボーダー配列)とBL(左ボーダー配列)の間に、下記の要素を、BRから下記の順に含んでなる、相同組換えにより高等植物のゲノムを改変するための遺伝子構築物:
(1)発現可能に存在させた、第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子、
(2)宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’領域を組み込むための第一のクローニング部位、
(3)発現可能に存在させたポジティブ選抜マーカー遺伝子、
(4)宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の3’領域を組み込むための第二のクローニング部位および
(5)発現可能に存在させた、第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子と同一であってもよい第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子。 - さらに、第一のクローニング部位の後に、(6)転写終止領域、好ましくはEn/Spm型トランスポゾンの転写終止領域を含む、請求項1の遺伝子構築物。
- さらに、ポジティブ選抜マーカー遺伝子の前および後に(7)リコンビナーゼ認識配列を含む、請求項1または請求項2の遺伝子構築物。
- 宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’および3’領域を組み込むための各クローニング部位の一方または両方がマルチプルクローニングサイトである、請求項1ないし3のいずれか1項の遺伝子構築物。
- 発現可能に存在させた第一のネガティブ選抜マーカー遺伝子は、トウモロコシ・ユビキチン1プロモーター(pUbi)と、カリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター(t35S)との間に存在する、請求項1ないし4のいずれか1項の遺伝子構築物。
- ポジティブ選抜マーカー遺伝子を、イネ・アクチンプロモーター(pAct)およびイネ・アクチン第1イントロン(iAct)と、カリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター(t35S)との間に存在させることにより発現可能に存在させた、請求項1ないし5のいずれか1項の遺伝子構築物。
- 第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子を、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(p35S)およびヒマ・カタラーゼ第1イントロンと、カリフラワーモザイクウイルス35Sターミネーター(t35S)との間に存在させることにより発現可能に存在させた、請求項1ないし6のいずれか1項の遺伝子構築物。
- 第一および第二のネガティブ選抜マーカー遺伝子の転写方向が、互いに向き合っている、請求項1ないし7のいずれか1項の遺伝子構築物。
- ポジティブ選抜マーカー遺伝子が、ハイグロマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子および除草剤耐性遺伝子(例えばbar遺伝子)からなる群から選抜され、ネガティブ選抜マーカー遺伝子が、ジフテリア毒素タンパク質A鎖遺伝子(DT−A)、codA遺伝子、シトクロムP−450遺伝子およびbarnase遺伝子からなる群から選抜される、請求項1ないし8のいずれか1項の遺伝子構築物。
- 請求項1ないし9のいずれか1項の遺伝子構築物を含む、植物形質転換用ベクター。
- 第一のクローニング部位に宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の5’領域を組み込み、第二のクローニング部位に宿主ゲノム中の標的遺伝子と相同組換えさせる遺伝子の3’領域を組み込んだ、請求項1ないし9のいずれか1項の遺伝子構築物を含む、植物形質転換用ベクター。
- 下記の工程からなる相同組換えを利用したゲノム改変高等植物(好ましくは単子葉植物)の製造方法:
(イ)請求項11の植物形質転換用ベクターを、Tiプラスミドを含むアグロバクテリウム中に存在させ、
(ロ)当該アグロバクテリウムを植物の細胞、組織またはカルスに感染させ、
(ハ)ネガティブ選抜およびポジティブ選抜により、相同組み換えを生じた細胞、組織またはカルスを選抜し、
(ニ)選抜を細胞または組織で行った場合は、それをカルスに培養し、
(ホ)カルスを再生培地で培養して、ゲノム中にヘテロに相同組み換えを生じた植物個体に生長させ、そして
(ヘ)生じた植物を掛け合わせて、ホモに相同組み換えを有する、遺伝子改変高等植物を得る。 - 工程(ニ)、(ホ)または(ヘ)の前後に、植物細胞のゲノム中の相同組み換えを生じた領域から、ポジティブ選抜マーカー遺伝子およびそのプロモーター、ターミネーター、および存在する場合は転写終止領域を削除する工程を含む、請求項12の方法。
- 削除する工程が、Cre/lox組換え系、R/RS組換え系、またはFLP−FRT組換え系である請求項13の方法。
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