JPWO2003008388A1 - N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−n’−プロピルウレアのi型結晶およびその製造法 - Google Patents
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Abstract
本発明によれば、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶およびその製造法が提供される。
Description
発明の背景
発明の分野
本発明は、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶およびその製造法に関する。
関連技術
腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫等の疾患治療の研究開発では、様々なアプローチによる多くの薬剤が臨床現場において使用されている。しかしながら、化学療法剤による治療では薬剤による副作用や患者の個体間差、等の問題が存在し、より優れた薬剤が望まれている。さらに、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を考えた場合、薬剤の投与形態に多様性が求められている。
例えば経口投与のための錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、または非経口投与のための座剤、テープ剤、軟膏剤に処方する場合、原薬は医薬品として製剤上求められる条件、すなわち一定の品質および効果発現を満足する処方を実現することができる特定の結晶形(結晶形態)、であることが求められる。また、医薬品としての原薬の製造方法は、工業的に安定に製造することができる方法、および工業的な規模での大量生産に適した方法であることが求められる。
WO00/43366には腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫等の疾患の治療に有効なN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアおよびその製造方法が開示されている。しかしWO00/43366には、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶形およびその製造方法は開示されていない。
発明の概要
本発明者らはN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶形には複数の多形があり、そのうちの一つが医薬製剤に求められる性質を有すること、すなわち、熱力学的に安定であり、物理的および熱的ストレスに対しても安定であることを見出した。
本発明者らはまた、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを非プロトン性極性有機溶媒に溶解させることによりこの化合物の結晶を製造できることを見出した。本発明者らは更に、非プロトン性極性有機溶媒への溶解の後、アルコール性溶媒を添加し、攪拌することにより結晶を工業的規模で生産できることを見出した。
本発明は、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶およびその製造法、特に工業的生産に適した製造法、の提供をその目的とする。
本発明による結晶は、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶(以下「I型結晶」という)である。
本発明によるI型結晶の製造法は、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを溶解させた非プロトン性極性有機溶媒から結晶を析出させる工程を含んでなるもの、である。
本発明によるI型結晶は医薬、特に悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫からなる群から選択される疾患の治療剤、として用いることができる。
発明の具体的発明
I型結晶
本発明によるI型結晶は、実施例1、実施例2、あるいは実施例3に記載の方法により製造することができる。得られたI型結晶は実施例1の表1に記載の粉末X線回折パターンを示すことを特徴とする。本発明によるI型結晶はまた、図1に記載の示差走査熱量チャートを示すことを特徴とする。
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアはI型結晶以外にII型、III型、IV型、およびV型の結晶形態をとることができる。
II型結晶は参考例1の記載の方法により製造することができ、得られたII型結晶は参考例5に記載の粉末X線回折パターンを示す。
III型結晶は参考例2の記載の方法により製造することができ、得られたIII型結晶は参考例6に記載の粉末X線回折パターンを示す。
IV型結晶は参考例3の記載の方法により製造することができ、得られたIV型結晶は参考例7に記載の粉末X線回折パターンを示す。
V型結晶は参考例4の記載の方法により製造することができ、得られたV型結晶は参考例8に記載の粉末X線回折パターンを示す。
試験例1に記載の示差走査熱量計測定の結果は、I型結晶がII型、III型、IV型、およびV型結晶に比べて熱力学的に安定な結晶形であることを示す。I型結晶はII型、III型、IV型、およびV型結晶と比較して、示差走査熱量計により測定されるDSCチャート上で単一のピーク(熱的変化)が高い温度(231〜235℃)で観察される。また、II型、III型、IV型、およびV型結晶は相転移に由来すると考えられるピークが観察されるが、I型結晶では融解による吸熱ピークのみが観察される。
試験例2に記載の示差走査熱量計測定の結果は、I型結晶がII型およびIII型結晶に比べて物理的ストレスに対して安定な結晶形であることを示す。それぞれの試料をメノウ乳鉢にて粉砕した処理前後の試料を示差走査熱量計により測定されるDSCチャートで比較した。その結果、I型結晶では処理前後でピーク形状の変化はみられなかった。一方、II型では処理前後でピーク形状が変化し、処理後のピーク形状はI型結晶のピーク形状と一致した。III型結晶では処理前後で、相転移に由来すると考えられる吸熱ピークの熱量と相転移後の吸熱ピークの熱量の比率が変化した。この結果からI型結晶は物理的ストレスに対して耐性を示すが、II型およびIII型結晶は物理的ストレスにより性質が変化することが示唆された。
試験例3に記載の示差走査熱量計測定の結果は、I型結晶がII型およびIII型結晶に比べて熱的ストレスに対して安定な結晶形であることを示す。それぞれの試料をテフロン(登録商標)パッキンでシールされたガラス容器に入れて73℃条件下で1週間放置した処理前後の試料を示差走査熱量計により測定されるDSCチャートで比較した。その結果、I型結晶では処理前後でピーク形状の変化はみられなかった。一方、II型結晶では処理前後でピークパターンに変化がみられた。III型結晶では処理前後でピーク形状が変化し、処理後のピーク形状はI型結晶のピーク形状と一致した。この結果からI型結晶は熱的ストレスに対して耐性を示すが、II型およびIII型結晶は熱的ストレスにより性質が変化することが示唆された。
医薬化合物を製剤化する際には、医薬化合物を一定の品質を維持し、かつ一定の効果発現を発揮できる特定の結晶形態、すなわち、熱力学的に安定であり、かつ物理的および熱的ストレスに対して安定な結晶形態で処方することが求められる。
本発明によるI型結晶は熱力学的に安定であり、物理的ストレスに対して耐性を示し、熱的ストレスに対して耐性を示した。このI型結晶の性質は、医薬製剤として処方される医薬化合物の結晶形態に求められている性質を有している。
I型結晶の製造
本発明による製造法においては、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを溶解させた非プロトン極性溶媒からI型結晶を析出させることができ、好ましくは、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを約60℃から沸点までの温度範囲の非プロトン性極性有機溶媒に溶解させ、次いで溶媒を冷却、好ましくは室温まで冷却、することによりI型結晶を析出させることができる。
非プロトン性極性有機溶媒はN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対し約5倍〜約50倍V/Wの量、好ましくは、約10〜約20倍V/Wの量、であることができる。
非プロトン性極性有機溶媒は、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドであることができる。より好ましくは、約80〜約100℃の温度範囲のN,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドを約10〜約20倍V/Wの量で加えることができる。
本発明による製造法においては非プロトン性有機溶媒からの析出工程の後に、アルコール性溶媒を更に添加することにより、好ましくはアルコール性溶媒を添加し撹拌することにより、結晶を収率よく製造することができる。アルコール性溶媒は、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対して約5倍〜約50倍V/Wの量、好ましくは、約10〜約30倍V/Wの量、で加えることができる。
アルコール性溶媒は、炭化水素の1以上の水素が水酸基により置換されたものを意味し、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、またはブタノール、好ましくは、メタノールであることができる。より好ましくはメタノールを約10〜約30倍V/Wの量で加えることができる。
本発明による製造法においては、好ましくは、非プロトン性極性有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い、アルコール性溶媒としてメタノールを用いることができる。
本発明による製造法では1Kgスケール(実施例1)、3gスケール(実施例2)の大小スケールにおいて安定してI型結晶を製造することができる。さらに晶析工程の収率は92%(実施例1)、90%(実施例2)であり、大小スケールにおいて安定して高収率である。
実施例3に記載した方法は、実施例1および2の方法とアルコール性溶媒を加えて攪拌しない点で異なる。この方法によりI型結晶を収率50%で得ることができる。
参考例1および3に記載した方法はN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを10倍V/Wのピリジンに溶媒の沸点に加温して溶解した溶液を攪拌冷却する晶析法である。この製造方法では22gスケールではII型結晶(参考例1)、1gスケールではIV型結晶(参考例3)が得られた。これらの製造法においては、スケールの相違により晶析する結晶形態が変化した。
参考例2および4に記載した方法はN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを150〜170倍V/Wの2−プロパノールに溶媒の沸点に加温して溶解した溶液を攪拌冷却する晶析法である。この製造方法では22gスケールではIII型結晶(参考例2)、2gスケールではV型結晶(参考例4)が得られた。これらの製造法においては、スケールの相違により晶析する結晶形態が変化した。
I型結晶の用途/医薬組成物
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアは、腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移等の治療に有効である(WO00/43366参照)。従って、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶は悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移等の治療に有効である。
本発明によれば、本発明によるI型結晶を含む医薬組成物が提供される。本発明による医薬組成物は悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移の治療に用いることができる。
本発明によればまた、本発明によるI型結晶を、薬学上許容される担体と共にほ乳類に投与することを含んでなる、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移の治療法が提供される。
本発明によるI型結晶は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与方法で、ヒトおよびヒト以外の動物に投与することが出来る。従って、本発明による化合物を有効成分とする医薬組成物は、投与経路に応じた適当な剤形に処方される。
具体的には、経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤などが挙げられ、非経口剤としては、座剤、テープ剤、軟膏剤などが挙げられる。
これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤などを用いて常法により製造することができる。
賦形剤としては、例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などがそれぞれ挙げられる。
本発明による医薬組成物中、本発明による化合物の含有量は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中0.5〜50重量%、好ましくは、1〜20重量%である。
投与量は患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、例えば0.1〜100mg/kg、好ましくは1〜50mg/kgの範囲であり、これを1日1回または数回に分けて投与する。
本発明によるI型結晶は他の医薬と組み合わせて投与することができる。投与は、同時に、あるいは経時的にすることができる。例えば、対象疾患が悪性腫蕩の場合、本発明による化合物により腫瘍を退縮させ、次いで、抗ガン剤を投与することにより腫瘍を効果的に消滅させることができる。抗ガン剤の種類や投与間隔等はガンの種類や患者の状態等に依存して決定できる。悪性腫瘍以外の疾患も同様に治療できる。
本発明によれば更に、本発明によるI型結晶を疾患の原因となる組織(例えば、腫瘍組織、網膜症組織、関節リウマチ組織)に接触させて治療する方法が提供される。本発明による化合物と疾患の原因となる組織との接触は、例えば、全身投与(経口投与等)、局所投与(経皮投与等)により実施できる。
実 施 例
製造例:N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの製造
(1)環化工程
メチル 2−アミノ−(4,5−ジメトキシ)ベンゾエート(750.0g)にホルムアミド(5250ml)を加え、150〜155℃にて12時間攪拌した。室温まで放冷し、3時間攪拌した後、5℃にて3時間攪拌した。析出物を濾過し、水(1500ml)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、6,7−ジメトキシ−4−キナゾロン(670.4g)を取得した。(収率=91.6%)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6/ppm);7.97(1H,s)、7.43(1H,s)、7.12(1H,s)、3.89(3H,s)、3.86(3H,s)
(2)クロロ化工程
6,7−ジメトキシ−4−キナゾロン(670.4g)をトルエン(3350ml)およびPOCl3(861g)に加え、還流にて7.5時間攪拌した。氷(15kg)および48%NaOH水溶液(1982g)を15℃以上にならないように反応液に加えた。反応液(懸濁液)を濾過し、濾取したケーキを水(2L)にて洗浄した。濾取したケーキを水(6.5L)にて30分間リパルプ洗浄後、濾過し、水(2L)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、4−クロル−6,7−ジメトキシキナゾリン(692.1g)を取得した。(収率=94.7%)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6/ppm);8.86(1H,s)、7.43(1H,s)、7.37(1H,s)、4.00(3H,s)、3.98(3H,s)
(3)フェノール部位導入工程
48%NaOH水溶液(2596g)に水(2110ml)、4−アミノ−3−クロロフェノール・HCl(644g)、2−ブタノン(1380ml)、4−クロル−6,7−ジメトキシキナゾリン(692.1g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(192g)を加え、還流にて2時間攪拌した。反応後、2−ブタノンを留去した。濾過後、残留物を水(12L)にて洗浄した。ケーキをメタノール(1400ml)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、4−[(4−アミノ−3−クロルフェニル)オキシ]−6,7−ジメトキシキナゾリン(944.6g)を取得した。(収率=92.4%)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6/ppm);8.52(1H,s)、7.50(1H,s)、7.35(1H,s)、7.20(1H,d,J=2.68Hz)、6.98(1H,dd,J=2.68,8.78Hz)、6.84(1H,d,J=8.78Hz)、5.33(2H,brs)、3.97(3H,s)、3.95(3H,s)
(4)ウレア化
4−[(4−アミノ−3−クロルフェニル)オキシ]−6,7−ジメトキシキナゾリン(944.6g)にN,N−ジメチルアセトアミド(4720ml)、ピリジン(1350g)、クロロ炭酸フェニル(888g)を加え、室温にて2時間攪拌した。n−プロピルアミン(719g)を反応液に添加し、室温にて2時間攪拌した。反応液にメタノール(9240ml)を加え、室温にて30分攪拌後、5℃にて一晩攪拌した。析出物を濾取した後、メタノール(1900ml)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、表題の化合物(1.098Kg)を取得した。(収率=92.5%)
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz):δ0.91(t,J=7.3Hz,3H)、1.41−1.53(m,2H)、3.05−3.12(m,2H)、3.97(s,3H)、3.99(s,3H)、6.99(t,J=5.4Hz,1H)、7.22(dd,J=2.7Hz,9.0Hz,1H)、7.38(s,1H)、7.46(d,J=2.9Hz,1H)、7.54(s,1H)、8.04(s,1H)、8.20(d,J=9.3Hz,1H)、8.55(s,1H)
質量分析値(ESI−MS,m/z):417(M++1)
実施例1:I型結晶の製造(N,N−ジメチルホルムアミド+メタノール溶媒)
製造例の記載に従って製造したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(1,098g)をN,N−ジメチルホルムアミド(11L)に80℃に加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、ついでメタノール(22L)を加えて室温にて2時間攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて結晶(1.010g)を得た。
粉末X線回折装置(理学電気(株)製 X線回折RINT DMAX−2000)を使用してCu−Kα放射線(40kV、40mA、λ=1.541Å)にて上記のようにして得られた結晶のX線回折パターンを測定した(スキャンスピード:5°/min、走査範囲:5.000〜40.000°、フィルター:Kβフィルタ)。
表1は実施例1で得られた結晶における>20%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
実施例2:I型結晶の製造(N,N−ジメチルホルムアミド+メタノール溶媒)
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(3.0g)をN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に80℃に加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、ついでメタノール(60ml)を加えて室温にて2時間攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて結晶(2.7g)を得た。得られた結晶の粉末X線回折パターンを測定した結果、I型結晶であることを確認した(データ省略)。
実施例3:I型結晶の製造(N,N−ジメチルアセトアミド溶媒)
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(1.0g)をN,N−ジメチルアセトアミド(10ml)に150℃に加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに室温で一晩攪拌した。濾過による固液分離後、固形分をN,N−ジメチルアセトアミド(4ml)にて洗浄してウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて結晶(0.5g)を得た。得られた結晶の粉末X線回折パターンを測定した結果、I型結晶であることを確認した(データ省略)。
参考例1:II型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(22.0g)をピリジン(220ml)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに室温にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、固形分をピリジン(30ml)にて洗浄してウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて11型結晶(17.4g)を得た。
参考例2:III型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(22.0g)を2−プロパノール(3.75L)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに5℃にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を室温で減圧乾燥させてIII型結晶(21.6g)を得た。
参考例3:IV型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(1.0g)をピリジン(10ml)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに室温にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を60℃で減圧乾燥させてIV型結晶(0.8g)を得た。
参考例4:V型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(2.0g)を2−プロパノール(300ml)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに5℃にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を室温で減圧乾燥させてV型結晶(1.5g)を得た。
参考例5:II型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表2は参考例1で得られたII型結晶における>35%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
参考例6:III型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表3は参考例2で得られたIII型結晶における>30%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
参考例7:IV型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表4は参考例3で得られたIV型結晶における>50%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
参考例8:V型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表5は参考例4で得られたV型結晶における>20%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
試験例1:示差走査熱量計によるDSCチャート測定
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 Pyris1)を使用し、1〜5mgの試料をアルミニウム製浅皿容器に詰めて測定(窒素気流下、昇温速度:5℃/分、測定範囲30℃→250℃)した。結果は図1〜5に示される通りであった。
試験例2:乳鉢粉砕処理前後の示差走査熱量計によるDSCチャート測定
乳鉢による粉砕は、試料各500mgをメノウ乳鉢にて粉砕処理した。粉砕前後の試料の示差走査熱量計によるDSCチャート測定は試験例1と同じ条件にて測定した。結果は図6〜8に示されるとおりであった。
試験例3:加熱試験(73℃)処理前後の示差走査熱量計によるDSCチャート測定
試料各1.2gをガラス容器に入れてテフロン(登録商標)パッキンでシールした。これを73℃に設定した恒温装置に1週間放置した。処理前後の試料の示差走査熱量計によるDSCチャート測定は試験例1と同じ条件にて測定した。結果は図9〜11に示される通りであった。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶のDSCチャートである。
図2は、参考例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのII型結晶のDSCチャートである。
図3は、参考例2で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIII型結晶のDSCチャートである。
図4は、参考例3で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIV型結晶のDSCチャートである。
図5は、参考例4で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのV型結晶のDSCチャートである。
図6は、粉砕処理後の実施例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶のDSCチャートである。
図7は、粉砕処理後の参考例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのII型結晶のDSCチャートである。
図8は、粉砕処理後の参考例2で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIII型結晶のDSCチャートである。
図9は、加温処理後の実施例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶のDSCチャートである。
図10は、加温処理後の参考例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのII型結晶のDSCチャートである。
図11は、加温処理後の参考例2で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIII型結晶のDSCチャートである。
発明の分野
本発明は、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶およびその製造法に関する。
関連技術
腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫等の疾患治療の研究開発では、様々なアプローチによる多くの薬剤が臨床現場において使用されている。しかしながら、化学療法剤による治療では薬剤による副作用や患者の個体間差、等の問題が存在し、より優れた薬剤が望まれている。さらに、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を考えた場合、薬剤の投与形態に多様性が求められている。
例えば経口投与のための錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤、または非経口投与のための座剤、テープ剤、軟膏剤に処方する場合、原薬は医薬品として製剤上求められる条件、すなわち一定の品質および効果発現を満足する処方を実現することができる特定の結晶形(結晶形態)、であることが求められる。また、医薬品としての原薬の製造方法は、工業的に安定に製造することができる方法、および工業的な規模での大量生産に適した方法であることが求められる。
WO00/43366には腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫等の疾患の治療に有効なN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアおよびその製造方法が開示されている。しかしWO00/43366には、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶形およびその製造方法は開示されていない。
発明の概要
本発明者らはN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶形には複数の多形があり、そのうちの一つが医薬製剤に求められる性質を有すること、すなわち、熱力学的に安定であり、物理的および熱的ストレスに対しても安定であることを見出した。
本発明者らはまた、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを非プロトン性極性有機溶媒に溶解させることによりこの化合物の結晶を製造できることを見出した。本発明者らは更に、非プロトン性極性有機溶媒への溶解の後、アルコール性溶媒を添加し、攪拌することにより結晶を工業的規模で生産できることを見出した。
本発明は、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶およびその製造法、特に工業的生産に適した製造法、の提供をその目的とする。
本発明による結晶は、医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶(以下「I型結晶」という)である。
本発明によるI型結晶の製造法は、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを溶解させた非プロトン性極性有機溶媒から結晶を析出させる工程を含んでなるもの、である。
本発明によるI型結晶は医薬、特に悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫からなる群から選択される疾患の治療剤、として用いることができる。
発明の具体的発明
I型結晶
本発明によるI型結晶は、実施例1、実施例2、あるいは実施例3に記載の方法により製造することができる。得られたI型結晶は実施例1の表1に記載の粉末X線回折パターンを示すことを特徴とする。本発明によるI型結晶はまた、図1に記載の示差走査熱量チャートを示すことを特徴とする。
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアはI型結晶以外にII型、III型、IV型、およびV型の結晶形態をとることができる。
II型結晶は参考例1の記載の方法により製造することができ、得られたII型結晶は参考例5に記載の粉末X線回折パターンを示す。
III型結晶は参考例2の記載の方法により製造することができ、得られたIII型結晶は参考例6に記載の粉末X線回折パターンを示す。
IV型結晶は参考例3の記載の方法により製造することができ、得られたIV型結晶は参考例7に記載の粉末X線回折パターンを示す。
V型結晶は参考例4の記載の方法により製造することができ、得られたV型結晶は参考例8に記載の粉末X線回折パターンを示す。
試験例1に記載の示差走査熱量計測定の結果は、I型結晶がII型、III型、IV型、およびV型結晶に比べて熱力学的に安定な結晶形であることを示す。I型結晶はII型、III型、IV型、およびV型結晶と比較して、示差走査熱量計により測定されるDSCチャート上で単一のピーク(熱的変化)が高い温度(231〜235℃)で観察される。また、II型、III型、IV型、およびV型結晶は相転移に由来すると考えられるピークが観察されるが、I型結晶では融解による吸熱ピークのみが観察される。
試験例2に記載の示差走査熱量計測定の結果は、I型結晶がII型およびIII型結晶に比べて物理的ストレスに対して安定な結晶形であることを示す。それぞれの試料をメノウ乳鉢にて粉砕した処理前後の試料を示差走査熱量計により測定されるDSCチャートで比較した。その結果、I型結晶では処理前後でピーク形状の変化はみられなかった。一方、II型では処理前後でピーク形状が変化し、処理後のピーク形状はI型結晶のピーク形状と一致した。III型結晶では処理前後で、相転移に由来すると考えられる吸熱ピークの熱量と相転移後の吸熱ピークの熱量の比率が変化した。この結果からI型結晶は物理的ストレスに対して耐性を示すが、II型およびIII型結晶は物理的ストレスにより性質が変化することが示唆された。
試験例3に記載の示差走査熱量計測定の結果は、I型結晶がII型およびIII型結晶に比べて熱的ストレスに対して安定な結晶形であることを示す。それぞれの試料をテフロン(登録商標)パッキンでシールされたガラス容器に入れて73℃条件下で1週間放置した処理前後の試料を示差走査熱量計により測定されるDSCチャートで比較した。その結果、I型結晶では処理前後でピーク形状の変化はみられなかった。一方、II型結晶では処理前後でピークパターンに変化がみられた。III型結晶では処理前後でピーク形状が変化し、処理後のピーク形状はI型結晶のピーク形状と一致した。この結果からI型結晶は熱的ストレスに対して耐性を示すが、II型およびIII型結晶は熱的ストレスにより性質が変化することが示唆された。
医薬化合物を製剤化する際には、医薬化合物を一定の品質を維持し、かつ一定の効果発現を発揮できる特定の結晶形態、すなわち、熱力学的に安定であり、かつ物理的および熱的ストレスに対して安定な結晶形態で処方することが求められる。
本発明によるI型結晶は熱力学的に安定であり、物理的ストレスに対して耐性を示し、熱的ストレスに対して耐性を示した。このI型結晶の性質は、医薬製剤として処方される医薬化合物の結晶形態に求められている性質を有している。
I型結晶の製造
本発明による製造法においては、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを溶解させた非プロトン極性溶媒からI型結晶を析出させることができ、好ましくは、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを約60℃から沸点までの温度範囲の非プロトン性極性有機溶媒に溶解させ、次いで溶媒を冷却、好ましくは室温まで冷却、することによりI型結晶を析出させることができる。
非プロトン性極性有機溶媒はN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対し約5倍〜約50倍V/Wの量、好ましくは、約10〜約20倍V/Wの量、であることができる。
非プロトン性極性有機溶媒は、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドであることができる。より好ましくは、約80〜約100℃の温度範囲のN,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドを約10〜約20倍V/Wの量で加えることができる。
本発明による製造法においては非プロトン性有機溶媒からの析出工程の後に、アルコール性溶媒を更に添加することにより、好ましくはアルコール性溶媒を添加し撹拌することにより、結晶を収率よく製造することができる。アルコール性溶媒は、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対して約5倍〜約50倍V/Wの量、好ましくは、約10〜約30倍V/Wの量、で加えることができる。
アルコール性溶媒は、炭化水素の1以上の水素が水酸基により置換されたものを意味し、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、またはブタノール、好ましくは、メタノールであることができる。より好ましくはメタノールを約10〜約30倍V/Wの量で加えることができる。
本発明による製造法においては、好ましくは、非プロトン性極性有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用い、アルコール性溶媒としてメタノールを用いることができる。
本発明による製造法では1Kgスケール(実施例1)、3gスケール(実施例2)の大小スケールにおいて安定してI型結晶を製造することができる。さらに晶析工程の収率は92%(実施例1)、90%(実施例2)であり、大小スケールにおいて安定して高収率である。
実施例3に記載した方法は、実施例1および2の方法とアルコール性溶媒を加えて攪拌しない点で異なる。この方法によりI型結晶を収率50%で得ることができる。
参考例1および3に記載した方法はN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを10倍V/Wのピリジンに溶媒の沸点に加温して溶解した溶液を攪拌冷却する晶析法である。この製造方法では22gスケールではII型結晶(参考例1)、1gスケールではIV型結晶(参考例3)が得られた。これらの製造法においては、スケールの相違により晶析する結晶形態が変化した。
参考例2および4に記載した方法はN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを150〜170倍V/Wの2−プロパノールに溶媒の沸点に加温して溶解した溶液を攪拌冷却する晶析法である。この製造方法では22gスケールではIII型結晶(参考例2)、2gスケールではV型結晶(参考例4)が得られた。これらの製造法においては、スケールの相違により晶析する結晶形態が変化した。
I型結晶の用途/医薬組成物
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアは、腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移等の治療に有効である(WO00/43366参照)。従って、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶は悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移等の治療に有効である。
本発明によれば、本発明によるI型結晶を含む医薬組成物が提供される。本発明による医薬組成物は悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移の治療に用いることができる。
本発明によればまた、本発明によるI型結晶を、薬学上許容される担体と共にほ乳類に投与することを含んでなる、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫、および固形癌の転移の治療法が提供される。
本発明によるI型結晶は、経口および非経口(例えば、直腸投与、経皮投与)のいずれかの投与方法で、ヒトおよびヒト以外の動物に投与することが出来る。従って、本発明による化合物を有効成分とする医薬組成物は、投与経路に応じた適当な剤形に処方される。
具体的には、経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、懸濁剤などが挙げられ、非経口剤としては、座剤、テープ剤、軟膏剤などが挙げられる。
これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、希釈剤などを用いて常法により製造することができる。
賦形剤としては、例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などがそれぞれ挙げられる。
本発明による医薬組成物中、本発明による化合物の含有量は、その剤型に応じて異なるが、通常全組成物中0.5〜50重量%、好ましくは、1〜20重量%である。
投与量は患者の年齢、体重、性別、疾患の相違、症状の程度などを考慮して、個々の場合に応じて適宜決定されるが、例えば0.1〜100mg/kg、好ましくは1〜50mg/kgの範囲であり、これを1日1回または数回に分けて投与する。
本発明によるI型結晶は他の医薬と組み合わせて投与することができる。投与は、同時に、あるいは経時的にすることができる。例えば、対象疾患が悪性腫蕩の場合、本発明による化合物により腫瘍を退縮させ、次いで、抗ガン剤を投与することにより腫瘍を効果的に消滅させることができる。抗ガン剤の種類や投与間隔等はガンの種類や患者の状態等に依存して決定できる。悪性腫瘍以外の疾患も同様に治療できる。
本発明によれば更に、本発明によるI型結晶を疾患の原因となる組織(例えば、腫瘍組織、網膜症組織、関節リウマチ組織)に接触させて治療する方法が提供される。本発明による化合物と疾患の原因となる組織との接触は、例えば、全身投与(経口投与等)、局所投与(経皮投与等)により実施できる。
実 施 例
製造例:N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの製造
(1)環化工程
メチル 2−アミノ−(4,5−ジメトキシ)ベンゾエート(750.0g)にホルムアミド(5250ml)を加え、150〜155℃にて12時間攪拌した。室温まで放冷し、3時間攪拌した後、5℃にて3時間攪拌した。析出物を濾過し、水(1500ml)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、6,7−ジメトキシ−4−キナゾロン(670.4g)を取得した。(収率=91.6%)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6/ppm);7.97(1H,s)、7.43(1H,s)、7.12(1H,s)、3.89(3H,s)、3.86(3H,s)
(2)クロロ化工程
6,7−ジメトキシ−4−キナゾロン(670.4g)をトルエン(3350ml)およびPOCl3(861g)に加え、還流にて7.5時間攪拌した。氷(15kg)および48%NaOH水溶液(1982g)を15℃以上にならないように反応液に加えた。反応液(懸濁液)を濾過し、濾取したケーキを水(2L)にて洗浄した。濾取したケーキを水(6.5L)にて30分間リパルプ洗浄後、濾過し、水(2L)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、4−クロル−6,7−ジメトキシキナゾリン(692.1g)を取得した。(収率=94.7%)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6/ppm);8.86(1H,s)、7.43(1H,s)、7.37(1H,s)、4.00(3H,s)、3.98(3H,s)
(3)フェノール部位導入工程
48%NaOH水溶液(2596g)に水(2110ml)、4−アミノ−3−クロロフェノール・HCl(644g)、2−ブタノン(1380ml)、4−クロル−6,7−ジメトキシキナゾリン(692.1g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(192g)を加え、還流にて2時間攪拌した。反応後、2−ブタノンを留去した。濾過後、残留物を水(12L)にて洗浄した。ケーキをメタノール(1400ml)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、4−[(4−アミノ−3−クロルフェニル)オキシ]−6,7−ジメトキシキナゾリン(944.6g)を取得した。(収率=92.4%)
1H−NMR(400MHz,DMSO−d6/ppm);8.52(1H,s)、7.50(1H,s)、7.35(1H,s)、7.20(1H,d,J=2.68Hz)、6.98(1H,dd,J=2.68,8.78Hz)、6.84(1H,d,J=8.78Hz)、5.33(2H,brs)、3.97(3H,s)、3.95(3H,s)
(4)ウレア化
4−[(4−アミノ−3−クロルフェニル)オキシ]−6,7−ジメトキシキナゾリン(944.6g)にN,N−ジメチルアセトアミド(4720ml)、ピリジン(1350g)、クロロ炭酸フェニル(888g)を加え、室温にて2時間攪拌した。n−プロピルアミン(719g)を反応液に添加し、室温にて2時間攪拌した。反応液にメタノール(9240ml)を加え、室温にて30分攪拌後、5℃にて一晩攪拌した。析出物を濾取した後、メタノール(1900ml)にて洗浄した。濾過物を減圧乾燥して、表題の化合物(1.098Kg)を取得した。(収率=92.5%)
1H−NMR(DMSO−d6,400MHz):δ0.91(t,J=7.3Hz,3H)、1.41−1.53(m,2H)、3.05−3.12(m,2H)、3.97(s,3H)、3.99(s,3H)、6.99(t,J=5.4Hz,1H)、7.22(dd,J=2.7Hz,9.0Hz,1H)、7.38(s,1H)、7.46(d,J=2.9Hz,1H)、7.54(s,1H)、8.04(s,1H)、8.20(d,J=9.3Hz,1H)、8.55(s,1H)
質量分析値(ESI−MS,m/z):417(M++1)
実施例1:I型結晶の製造(N,N−ジメチルホルムアミド+メタノール溶媒)
製造例の記載に従って製造したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(1,098g)をN,N−ジメチルホルムアミド(11L)に80℃に加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、ついでメタノール(22L)を加えて室温にて2時間攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて結晶(1.010g)を得た。
粉末X線回折装置(理学電気(株)製 X線回折RINT DMAX−2000)を使用してCu−Kα放射線(40kV、40mA、λ=1.541Å)にて上記のようにして得られた結晶のX線回折パターンを測定した(スキャンスピード:5°/min、走査範囲:5.000〜40.000°、フィルター:Kβフィルタ)。
表1は実施例1で得られた結晶における>20%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
実施例2:I型結晶の製造(N,N−ジメチルホルムアミド+メタノール溶媒)
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(3.0g)をN,N−ジメチルホルムアミド(30ml)に80℃に加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、ついでメタノール(60ml)を加えて室温にて2時間攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて結晶(2.7g)を得た。得られた結晶の粉末X線回折パターンを測定した結果、I型結晶であることを確認した(データ省略)。
実施例3:I型結晶の製造(N,N−ジメチルアセトアミド溶媒)
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(1.0g)をN,N−ジメチルアセトアミド(10ml)に150℃に加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに室温で一晩攪拌した。濾過による固液分離後、固形分をN,N−ジメチルアセトアミド(4ml)にて洗浄してウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて結晶(0.5g)を得た。得られた結晶の粉末X線回折パターンを測定した結果、I型結晶であることを確認した(データ省略)。
参考例1:II型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(22.0g)をピリジン(220ml)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに室温にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、固形分をピリジン(30ml)にて洗浄してウエット結晶を60℃で減圧乾燥させて11型結晶(17.4g)を得た。
参考例2:III型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(22.0g)を2−プロパノール(3.75L)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに5℃にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を室温で減圧乾燥させてIII型結晶(21.6g)を得た。
参考例3:IV型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(1.0g)をピリジン(10ml)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに室温にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を60℃で減圧乾燥させてIV型結晶(0.8g)を得た。
参考例4:V型結晶の製造
N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレア(2.0g)を2−プロパノール(300ml)に還流温度まで加温して溶解した後、溶液を室温まで攪拌冷却し、さらに5℃にて一晩攪拌した。濾過による固液分離後、ウエット結晶を室温で減圧乾燥させてV型結晶(1.5g)を得た。
参考例5:II型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表2は参考例1で得られたII型結晶における>35%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
参考例6:III型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表3は参考例2で得られたIII型結晶における>30%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
参考例7:IV型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表4は参考例3で得られたIV型結晶における>50%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
参考例8:V型結晶の粉末X線回折図
粉末X線回折パターンは実施例1と同じ条件にて測定した。
表5は参考例4で得られたV型結晶における>20%の相対強度を有するピークのピーク位置および相対強度(%)を示す。
試験例1:示差走査熱量計によるDSCチャート測定
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 Pyris1)を使用し、1〜5mgの試料をアルミニウム製浅皿容器に詰めて測定(窒素気流下、昇温速度:5℃/分、測定範囲30℃→250℃)した。結果は図1〜5に示される通りであった。
試験例2:乳鉢粉砕処理前後の示差走査熱量計によるDSCチャート測定
乳鉢による粉砕は、試料各500mgをメノウ乳鉢にて粉砕処理した。粉砕前後の試料の示差走査熱量計によるDSCチャート測定は試験例1と同じ条件にて測定した。結果は図6〜8に示されるとおりであった。
試験例3:加熱試験(73℃)処理前後の示差走査熱量計によるDSCチャート測定
試料各1.2gをガラス容器に入れてテフロン(登録商標)パッキンでシールした。これを73℃に設定した恒温装置に1週間放置した。処理前後の試料の示差走査熱量計によるDSCチャート測定は試験例1と同じ条件にて測定した。結果は図9〜11に示される通りであった。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶のDSCチャートである。
図2は、参考例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのII型結晶のDSCチャートである。
図3は、参考例2で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIII型結晶のDSCチャートである。
図4は、参考例3で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIV型結晶のDSCチャートである。
図5は、参考例4で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのV型結晶のDSCチャートである。
図6は、粉砕処理後の実施例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶のDSCチャートである。
図7は、粉砕処理後の参考例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのII型結晶のDSCチャートである。
図8は、粉砕処理後の参考例2で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIII型結晶のDSCチャートである。
図9は、加温処理後の実施例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのI型結晶のDSCチャートである。
図10は、加温処理後の参考例1で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのII型結晶のDSCチャートである。
図11は、加温処理後の参考例2で得られたN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアのIII型結晶のDSCチャートである。
Claims (16)
- 医薬製剤に適したN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶。
- 示差走査熱量計によるDSCチャート測定において231〜235℃に単一のピークが認められる、請求項1または2に記載の結晶。
- N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを溶解させた非プロトン性極性有機溶媒から結晶を析出させる工程を含んでなる、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶の製造法。
- 結晶を析出させる工程が、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアを約60℃から沸点までの温度範囲の非プロトン性極性有機溶媒に溶解させ、次いで溶媒を冷却する工程を含んでなる、請求項4に記載の製造法。
- 非プロトン性極性有機溶媒がN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対し約5倍〜約50倍V/Wの量であることを特徴とする、請求項4または5に記載の製造法。
- 非プロトン性極性有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドであり、約80℃〜約100℃の温度範囲であり、かつN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対し約10倍〜約20倍V/Wの量であることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造法。
- 結晶を析出させる工程の後に、アルコール性溶媒を加える工程を更に含んでなる、請求項4〜7のいずれか一項に記載の製造法。
- アルコール性溶媒を、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対して約5倍〜約50倍V/Wの量で加えることを特徴とする、請求項8に記載の製造法。
- アルコール性溶媒がメタノールであり、かつN−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアに対して約10倍〜約30倍V/Wの量で加えることを特徴とする、請求項8または9に記載の製造法。
- 非プロトン性極性有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドであり、アルコール性溶媒がメタノールであることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の製造法。
- 請求項4〜11のいずれか一項に記載の製造法により得ることができる、N−{2−クロロ−4−[(6,7−ジメトキシ−4−キナゾリニル)オキシ]フェニル}−N’−プロピルウレアの結晶。
- 請求項1、2、3、または12に記載の結晶を含んでなる、医薬組成物。
- 悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、またはカポジ肉腫の治療に用いられる、請求項13に記載の医薬組成物。
- 悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、またはカポジ肉腫の治療用医薬の製造のための、請求項1、2、3、または12に記載の結晶の使用。
- 請求項1、2、3、または12に記載の結晶の治療上の有効量をほ乳類に投与することを含んでなる、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、乾癬、アテローム性動脈硬化症、またはカポジ肉腫の治療方法。
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