JPWO2003004640A1 - 抗癌剤感受性測定用dnaアレイ - Google Patents
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- C12Q2600/106—Pharmacogenomics, i.e. genetic variability in individual responses to drugs and drug metabolism
Abstract
核酸代謝関連酵素遺伝子群、遺伝子修復関連酵素遺伝子群、薬剤耐性関連因子遺伝子群及びハウスキーピング遺伝子群の各群からの少なくとも2種以上を含む少なくとも13種以上の標的遺伝子の断片であって、次のステップ1)及び2)、1)データベースを利用したホモロジー検索により、標的遺伝子に特異性の高い断片を選択するステップ、2)1)のステップで選択された断片をプローブとして腫瘍細胞から得られたRNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行い、標的遺伝子に対する特異性を確認するステップ、を行うことにより選択された断片を、基板上に固定化してなることを特徴とする代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定用DNAアレイ。検体中の数十〜数百種の遺伝子発現を、一度だけの簡便なアッセイで定量性よく測定できる。
Description
技術分野
本発明は抗癌剤感受性の測定用DNAアレイ及び当該DNAアレイを用いた抗癌剤感受性測定法に関する。
背景技術
一般的に、癌患者に対する抗癌剤の治療効果は必ずしも高いとは言えず、その一方で副作用は比較的高頻度に発現する。近年、抗癌剤の適正使用あるいは患者個人個人に応じたオーダーメイド医療が望まれている。すなわち、抗癌剤を投与する前に、患者から採取した組織検体等を測定対象試料とし、その抗癌剤の感受性に関連している遺伝子の発現量を測定することで、効果が期待できそうなまたは副作用が少なそうな患者を絞り込んで投与するというものである。
汎用されている抗癌剤のなかでも、5−フルオロウラシル(5−FU)系薬剤等の代謝拮抗剤の分野では適正使用を目指した臨床研究が盛んである。測定対象となる遺伝子としては、代謝拮抗剤の感受性に関連しているとされているチミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase;EC2.1.1.45,以下、TSと称する)、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(dihydropyrimidine dehydrogenase;EC1.3.1.2,以下、DPDと称する)、チミジンホスホリラーゼ(thymidine phosphorylase;EC2.4.2.4,以下、TPと称する)が代表的なものであり、それらの発現パターンは生化学的酵素活性測定法(Clinical Cancer Research,5,883−889,1999)、抗体を用いた免疫学的測定法(癌と化学療法,24(6):705−712,1997)ノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法によるmRNA測定法(Clinical Cancer Research,6,1322−1327,2000)で解析され、適正使用の指標とされている。また、シスプラチンを用いた癌の化学療法においてはERCC1等のDNA修復酵素も効果を予測する因子として有用であることが示唆されている(Journal of Clinical Oncology,16,309−316,1998)。
一方、近年、数百〜数万という多種の遺伝子のmRNA発現を同時に解析できる技術として、DNAマイクロアレイ法が汎用されるようになってきた。この手法は遺伝子を網羅的に解析するのに適しており、将来汎用抗癌剤の適正使用に応用されることが期待されている。
5−フルオロウラシル等の代謝拮抗剤は生体内で種々の過程を経て代謝されるため、代謝拮抗剤の感受性を予測するには、上記3種(TS,DPD及びTP)の遺伝子発現の解析だけでは十分とは言えない。更に広範囲の遺伝子発現を解析できれば感受性の予測率も高まると予想される。また実際の癌化学療法においては数種の抗癌剤を組み合わせた併用療法が施行されることが多いため、各薬剤の感受性に関与する遺伝子発現を包括的に解析できれば個々の患者に適した併用化学療法をデザインできる可能性がある。
生化学的酵素活性測定法、抗体を用いた免疫学的測定法、ノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法によるmRNA測定法はいずれも定量性は高いものの、原則として1遺伝子につき1回のアッセイが必要なので、多種の遺伝子発現様式を同時に解析するには作業上適していない技術である。
一方、DNAマイクロアレイ法は多種の遺伝子発現解析に適しているものの、定量性はノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法に比べ格段に劣る。その原因の主たるものとして、ノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法は目的とする遺伝子に対する特異性をRNAやPCR産物のサイズにより分別することができるが、DNAマイクロアレイ法は分子サイズが表現されないドットブロットであるため特異性を分別できず、目的とする遺伝子発現以外の非特異的なシグナルを検出してしまう(いわゆるクロスハイブリダイゼーション)ことが挙げられる。目的とする遺伝子に対する特異性は、アレイ化する個々のDNA断片(以下、ターゲット断片と呼ぶ)の設定法、すなわち遺伝子(全長cDNA)のどの部分(リージョン)をターゲット断片として選択するかによって左右される。通常のDNAマイクロアレイ法の場合、設計支援ソフトなどを利用して計算上特異性が高いと予想されるリージョン(データベース上に公開されている他の遺伝子と塩基配列の重複が少ないリージョン)を選択してターゲット断片としているものの、その特異性が実証されているわけではない。また、ターゲット断片はPCRで増幅して調製されるが、その際に用いられる個々の遺伝子に特異的なプライマーがターゲット断片溶液に混入して一緒にアレイ化される結果、不均一なバックグラウンドの原因になることがある。これらの要因により、同一検体(生体由来試料)中のある特定遺伝子の発現量をDNAマイクロアレイ法で解析した結果とノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法で解析した結果が食い違うことはしばしば起こるので、DNAマイクロアレイ法の結果のみで遺伝子発現に差があると断定することはできない。実験手順としては、第一次スクリーニングとして発現量に差がありそうな遺伝子をDNAマイクロアレイ法でおおまかに絞り込み、第二次スクリーニングとしてノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法により発現量の差が確かであることを証明するのが一般的で、結局のところ少なくとも2種の測定法が必要となる。
従って、本発明の目的は代謝拮抗剤系抗癌剤及びこれと他の抗癌剤との併用療法に対する感受性を、一度だけの簡便なアッセイで、しかも高感度に定量性よく測定するための手段を提供することにある。
発明の開示
かかる実状において本発明者らは、汎用されているDNAマイクロアレイ法により一度で抗癌剤の感受性が測定できるか否かを検討した。しかし、次のような欠点があることが判明した。
すなわち、汎用されているDNAマイクロアレイ法の場合、対象とする遺伝子の種類が数百から数万と多いために、現状で使用可能な抗癌剤の作用機序から推察して薬剤感受性には関連がないと思われる遺伝子を多数含んでいる。その結果、解析に余計な労力を必要としたり、抗癌剤の作用機序に密接した遺伝子を軽視することがあるといった短所が生ずる。
更に、汎用されているDNAマイクロアレイ法の場合、支持担体(ナイロンメンブレンやガラスプレートなど)にスポットするDNA量(濃度)は一定である場合が多く、抗癌剤の感受性に密接に関連している遺伝子であるにも関わらず発現量が極めて少ないために定量できないものがある。
そこで、本発明者らは、現存するDNAマイクロアレイ法を改良すべく検討した。まず、標的遺伝子を代謝拮抗剤系抗癌剤及びこれと併用する他の抗癌剤の作用機序に関連していると考えられる遺伝子を中心に数十から数百に絞り込んだ。次にデータベースを利用したホモロジー検索により計算上で設計しただけでなく、実際にノーザンハイブリダイゼーションにより特異性を確認したものをターゲット断片とした。かくして選択された断片を基板上に固定化することにより得られたDNAアレイは、代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性を、一度の試験で高感度に判定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、核酸代謝関連酵素遺伝子群、遺伝子修復関連酵素遺伝子群、薬剤耐性関連因子遺伝子群及びハウスキーピング遺伝子群の各群からの少なくとも2種以上を含む少なくとも13種以上の標的遺伝子の断片であって、
次のステップ1)及び2)、
1)データベースを利用したホモロジー検索により、標的遺伝子に特異性の高い断片を選択するステップ、
2)1)のステップで選択された断片をプローブとして腫瘍細胞から得られたRNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行い、標的遺伝子に対する特異性を確認するステップ、
を行うことにより選択された断片を、基板上に固定化してなることを特徴とする代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定用DNAアレイを提供するものである。
また、本発明は、このDNAアレイに、癌患者由来の体液検体又は組織検体から得られたmRNAを鋳型として合成した標識cDNAプローブをハイブリダイズさせることを特徴とする当該体液検体又は組織検体の代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定方法を提供するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明のDNAアレイは、代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定に用いるものである。ここで、代謝拮抗剤系抗癌剤としては、テガフール、5−フルオロウラシル、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、カルモフール、カペシタビン、フルツロン等の5−フルオロウラシル系抗癌剤;6−メルカプトプリン、メルカプトプリンリポジド等のメルカプトプリン系抗癌剤;シタラビン、エノシタビン、ゲムシタビン等のシトシン系抗癌剤;メトトレキサート等が挙げられ、このうち5−フルオロウラシル系抗癌剤が特に好ましい。また、代謝拮抗剤と併用する他の抗癌剤としては、シスプラチン等の白金錯体系抗癌剤;CPT−11、VP−16等のトポイソメラーゼ阻害剤;ドセタキセル、パクリタキセル等のタキサン系抗癌剤等が挙げられる。
本発明における感受性の測定には、患者に対する抗癌剤の有効性及び副作用のバランスの判定、適切な併用療法の決定、適切な投与法(投与量、投与スケジュール)の判定等が含まれる。
本発明における標的遺伝子は、感受性に関連していると考えられる遺伝子であり、核酸代謝関連酵素遺伝子群、遺伝子修復関連酵素遺伝子群、薬剤耐性関連因子遺伝子群及びハウスキーピング遺伝子群の各群からの少なくとも2種以上を含む少なくとも13種以上の遺伝子である。
ここで、核酸代謝関連酵素としては、チミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase:TS)、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(dihydropyrimidine dehydrogenase:DPD)、オロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ(orotate phosphoribosyltransferase:OPRT(ウリジンモノホスフェートシンセターゼ(uridine monophosphate synthetase:UMPS)))、チミジンホスホリラーゼ(thymidine phosphorylase:TP)、チミジンキナーゼ1(thymidine kinase 1:TK1)、リボヌクレオシド−ジホスフェートリダクターゼM1サブユニット(ribonucleoside−diphosphate reductase M1 subunit:RRM1)、リボヌクレオシド−ジホスフェートリダクターゼM2サブユニット(ribonucleoside−diphosphate reductase M2 subunit:RRM2)、ウリジンシチジンキナーゼ2(uridine cytidine kinase 2:UCK2)、ウリジンホスホリラーゼ(uridine phosphorylase:UP)、シチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase:CDA)、5′ヌクレオチダーゼ(5′nucleotidase:NT5)、IMPデヒドロゲナーゼ1(IMP dehydrogenase 1:IMPD)、メチレンテトラヒドロフォレートデヒドロゲナーゼ(methylenetetrahydrofolate dehydrogenase:MTHFD1)、RNAポリメラーゼ2(RNA polymerase 2:RP2)、ウリジンモノホスフェートキナーゼ(uridinemonophosphate kinase:UMPK)、CTPシンターゼ(CTP synthase:CTPS)、デオキシシチジレートデアミナーゼ(deoxycytidylate deaminase:DCD)、デオキシシチジンキナーゼ(deoxycytidine kinase:DCK)、ホスホリボシルピロホスフェートシンセターゼ(phosphoribosyl pyrophosphate synthetase:PRPS)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(hypoxanthinephosphoribosyltransferase 1:HPRT1)、フォリルポリグルタメートシンセターゼ(folylpolyglutamate synthetase:FPGS)、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼA(nucleoside diphosphate kinase A:NDKA)、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼB(nucleoside diphosphate kinase B:NDKB)、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(adeninephosphoribosyltransferase:APRT)、アデノシンキナーゼ(adenosinekinase:AK)等が挙げられる。これらの酵素遺伝子のうち、少なくともTS、DPD、ORRT、TP及びTK1の遺伝子を含むのが特に好ましい。
遺伝子修復関連酵素としては、DNA切除修復蛋白ERCC1(DNA excisionrepair protein ERCC1:ERCC1)、ウラシル−DNAグリコシラーゼ(uracil−DNA glycosylase:UDG)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(poly(ADP−ribose)polymerase:PARP)、DNAリガーゼI(DNA ligase I:LIG1)、DNAリガーゼIII(DNA ligase III:LIG3)、DNAリガーゼIV(DNA ligase IV:LIG4)、DNAポリメラーゼβ(DNA polymerase β:POLB)、DNAポリメラーゼδ(DNA polymerase δ:POLD)、DNA−修復蛋白XRCC1(DNA−repair protein XRCC1:XRCC1)等が挙げられる。これらの酵素遺伝子のうち、少なくともERCC1及びUDGを含むのが好ましい。
薬剤耐性関連因子としては、トポイソメラーゼ1(topoisomerase 1:TOP1)、P−グリコプロテイン(P−glycoprotein:MDR1)、平衡ヌクレオシドトランスポーター1(equilibrative nucleoside transporter 1:ENT1)、多剤耐性関連蛋白1(multidrug resistance−associated protein 1:MRP1)、トポイソメラーゼ2α(topoisomerase 2α:TOP2A)、トポイソメラーゼ2β(topoisomerase 2β:TOPB)、熱ショック蛋白27(heatshockprotein 27:Hsp27)、平衡ヌクレオシドトランスポーター2(equilibrative nucleoside transporter 2:ENT2)等が挙げられる。これらの因子遺伝子のうち少なくともTOP1、MDR1、ENT1及びMRP1の遺伝子を含むのが好ましい。
ハウスキーピング遺伝子としては、グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase:GAPDH)、βアクチン(β−actin:ACTB)及び40Sリボソーマル蛋白S9(40Sribosomal protein S9:RSP9)等が挙げられる。GAPDH、ACTB、RSP9から選ばれる2種以上を含むのが好ましい。これらの遺伝子は、内部標準として使用されるものである。
その他の遺伝子としては、E2F1、p53、VEGFβ(VEGF β)、インテグリンα3(integrin α3)、Mn SOD、Cu/Zn SOD、増殖細胞核抗原(Proliferating cell nuclear antigen:PCNA)等が挙げられる。
これらの標的遺伝子の断片をすべて固定化するのが望ましいが、特に、TS、DPD、OPRT、TP、TK1、ERCC1、UDG、TOP1、MDR1、ENT1及びMRP1の11種の遺伝子と、GAPDH、ACTB及びRSP9のうちの2種以上との合計の13種以上の遺伝子の断片を固定化すると前記感受性のより効率的な測定が可能であり好ましい。
これらの標的遺伝子の配列について、まずデータベースを利用したホモロジー検索により、各標的遺伝子に特異性の高い断片を選択する(ステップ1)。
このホモロジー検索は、例えばBlast Search等により行うことができる。断片の設計条件としては、例えばGC含量が40〜60%で重複配列が少なく、Tm値が75〜85℃、サイズ200〜600bp等が挙げられる。
次にステップ1で設計された断片をプローブとして腫瘍細胞から得られたRNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行うことにより、特異性を確認する(ステップ2)。ステップ1で設計された断片は、計算上は標的遺伝子に対する特異性が高いはずであるが、実際にはクロスハイブリダイゼーションが高い確率で起こる。実際、ステップ1で第1選択された断片が、ステップ2で特異的であることが確認できたものは10〜20%にすぎない。
ステップ2は、まず、cDNAライブラリーを鋳型としてPCR法にて増幅することによりDNA断片を得る。次に、このDNA断片を鋳型として放射性プローブを酵素的に合成し、種々の腫瘍細胞から調製した全RNAをブロットしたメンブレンを用いてノーザンハイブリダイゼーションを実施し、特異性を確認する。すなわち特定遺伝子から転写されるmRNAのサイズ(文献情報やデータベースサーチにて調査できる)に対応したシグナルが検出され、しかも他のサイズのシグナルがほとんど検出されない(クロスハイブリダイゼーションがほとんどない)ことが特異性の条件となる。
特異性が充分でないDNA断片については、対応する遺伝子の他のリージョンからDNA断片を設計し直し、再度ノーザンハイブリダイゼーションを実施する。このような作業を特異性が充分になるまで繰り返すことで、アレイ化するDNA断片のリージョンを最適化し、ターゲット断片を得る。ターゲット断片は、プラスミド(pCR2.1−TOPO)にクローニングする。
なお、ターゲット断片をPCRで増幅する時に用いるプライマーとして、クローニングベクターのマルチプルクローニングサイトの配列を元にユニバーサルプライマーを設計し、すべてのターゲット断片が一組のユニバーサルプライマーで増幅できるようにする。当該ユニバーサルプライマーとしては、配列番号1及び2に示される塩基配列を有するプライマーが特に好ましい。また、スポッティング溶液に混入するプライマー量ができるだけ少なくなるようにユニバーサルプライマーの量を最適化する。その結果、すべてのターゲット断片のスポットにおけるバックグラウンドが低く抑えられ、ばらつきが少なくなる。
かくして選択された各標的遺伝子のターゲット断片を基板(支持担体)上に固定化すれば、本発明のDNAアレイが得られる。ここで使用される基板としては、通常公知のものが挙げられ、例えば、ガラスプレート、プラスチックプレート、メンブレン(ナイロン製等)、ビーズ等が挙げられ、好ましくはガラスプレートである。また、当該アレイへの断片の固定化は、通常公知のスポッティング手段が利用でき、例えば、特表平10−503841号公報記載のようなターゲットDNAを含む溶液に先の割れたピンを浸して支持体の上に圧着することにより移していく表面接着方式(stanford方式)、ターゲットDNAを含む溶液をインクジェットプリンタと同様の原理で支持体に吹き付けるインクジェット・圧電放出方式、光リソグラフの技術を利用して、ターゲットDNAを直接支持体の上で合成する光リソグラフ方式等により行われ、好ましくはstanford方式である。
ノーザンハイブリダイゼーションによる解析で得られた個々の遺伝子の発現量に基づいて、発現量の多い遺伝子については基板(支持担体)に固定化するターゲット断片の量を少なく、発現量の少ない遺伝子については多くすることにより、すべての標的遺伝子のmRNAを定量できるようにするのが好ましい。
得られた本発明のDNAアレイを用いて前記抗癌剤の感受性を測定するには、当該DNAアレイに、癌患者由来の体液検体又は組織検体から得られたmRNAを鋳型として合成した標識cDNAプローブをハイブリダイズさせることにより実施できる。
ここで癌患者由来の体液としては、血液、尿等が挙げられる。また組織としては、癌組織が挙げられる。検体からmRNAの採取は常法により行われ、mRNAは全RNAに含まれたままでも、全RNAから単離したもののいずれでもよい。また標識cDNAは、mRNAを鋳型として逆転写酵素反応を利用して標識する。ここで、標識としては、蛍光標識、放射性同位体による標識が挙げられるが、蛍光標識が特に好ましい。
ハイブリダイゼーションの条件は、常法により行うことができる。ハイブリダイズの定量は標識プローブ量、例えば蛍光量を定量することにより行われる。
本発明DNAアレイの定量性のバリデーションを取るために、52種の遺伝子発現の測定値をノーザンハイブリダイゼーション法で得られた測定値と比較したところ、食い違うことがほとんどなかった。また、特徴のある発現様式を示す(平均的な発現量よりも2倍以上差のある)遺伝子を判別することも、ノーザンハイブリダイゼーションと同程度の精度で可能であった。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されるものではない。
実施例1
(1)ターゲット断片の調製
A.DNA断片の選択と設計
後記表2及び3に示すように、核酸代謝関連遺伝子を中心に、5−FUの感受性に関連していると考えられる遺伝子を52種類選択した。DNA断片の設計は、原則としてGC含量が40〜60%で重複配列が少なくTm値が75〜85℃、サイズが200〜600bpであることを条件とし、クロスハイブリダイゼーションをできるだけ回避するために他の遺伝子と重複する配列がほとんどないことをデータベースを利用したホモロジー検索(Blast Search)により確認した。PCRで増幅する時に用いる個々の遺伝子に特異的なプライマー(specificprimer[forward/reverse])はTm値が59〜61℃となるように設計支援ソフト(Primer ExpressTM、PEバイオシステムズ)を用いて設定した。
B.DNA断片の合成と精製
DNA断片は、ヒト由来のcDNAライブラリーを鋳型として、特異的プライマーとExTaqTM(TaKaRa)を用いてPCR反応(熱変性を94℃で1分,アニーリングを60℃で1分,伸長反応を72℃で1分を1サイクルとして、計30サイクル)により増幅した。PCR産物溶液をスピンカラム(ミニプレップスピンカラム、Aetna)により精製し、蒸留水で溶出した。
(2)ノーザンハイブリダイゼーション
A.全RNAの調製と精製
表1記載の14種のヒト腫瘍細胞からRNeasy midi kitTM(QIAGEN)を用いて全RNAを抽出し、蒸留水で溶出した。溶液中に混在している可能性のあるDNAをDNaseを用いて分解し(37℃、30分)、フェノール・クロロホルムを用いて除タンパクし、エタノール沈殿により精製・濃縮し、蒸留水に溶解して全RNA溶液を得た。
B.ノーザンブロット
前記の14種のヒト腫瘍細胞から調製した全RNA(各5μg)を1重量%変性アガロースゲルにて電気泳動した。臭化エチジウムにより染色し、紫外線下で写真撮影してRNAが分解していないことを確認した。ゲル中のRNAをキャピラリ法によりナイロンメンブレンにブロットし、紫外線によりメンブレンに固定(クロスリンク)した。
C.プローブの調製
上記(1)で調製したDNA断片を鋳型として、ランダムプライム法(rediprimeTMII、アマシャムファルマシア)により[α−32P]dCTPにてラベルしたプローブを合成した。プローブ中に取り込まれなかった[α−32P]dCTPをゲル濾過法(ProbeQuantTM G−50マイクロスピンカラム、アマシャムファルマシア)により取り除いた。
D.ノーザンハイブリダイゼーション
上記(2)Bと(2)Cで調製されたブロットとプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを実施した。ブロットをハイブリダイゼーションバッファー(ラピッドハイブリバッファー、アマシャムファルマシア)中にて65℃、30分プレハイブリダイズし、そこに熱変性させたプローブを添加して、65℃で2時間ハイブリダイズした。次にブロットを洗浄し(0.1重量%SDSを含む2×SSC(0.15mol/L NaCl/0.15mol/Lクエン酸3ナトリウム)溶液で2回、0.1重量%SDSを含む1×SSC溶液で1回、0.1重量%SDSを含む0.1×SSC溶液で2回)、遮光下で一晩イメージングプレート(富士フィルム)に露光した。翌日、イメージングプレートを画像解析装置(STORM、Molecular Dynamics Inc.)でスキャンし、画像データを保存した。
E.DNA断片の評価と再設計
ノーザンハイブリダイゼーションの画像を見て、DNA断片の特異性を評価した。すなわち、目的とする遺伝子のmRNAと同じサイズのシグナルが見られ、それ以外のシグナルがほとんど見られないときには特異性があるものと判断し、対して目的とする遺伝子のmRNAのサイズにシグナルが認められなかったり、他のシグナルが認められた(クロスハイブリダイセーション)時には特異性に乏しいと評価した。後者の場合、同一遺伝子のmRNAの他のリージョンから上記(1)Aに示した条件でDNA断片を再設計した。以下、DNA断片の特異性が確認されるまで、設計、合成及びノーザンハイブリダイゼーションの工程を繰り返し(多いもので6回)、ターゲット断片(本発明のDNAアレイに乗せる遺伝子のリージョン)を決定した。
(3)DNAアレイの作成とハイブリダイゼーション
一連の工程は、Stanford方式を基本としており、一部改変したものである。
A.ターゲット断片のクローニング
ターゲット断片を質・量ともに安定に供給するには、ロットによるばらつきが生じ易いcDNAライブラリーを鋳型として用いるのは望ましくない。そこで、図1で示すように、個々のターゲット断片(PCR産物の状態にある)をTAクローニング法によりプラスミド(pCR−TOPO vector、Invitrogen)にクローニングすることにより、すべてのターゲット断片に対応した52種類のクローンを得た。
B.ターゲット断片の調製
上記のクローンを鋳型とし、上記(1)に準じた方法でターゲット断片を増幅した。ただし、プライマーとしてユニバーサルプライマーを用いた(配列番号1、2)。得られたPCR産物をエタノール沈殿法により洗浄した後、蒸留水で溶かした。溶液の一部を取って濃度算出(吸光度測定による)及び純度検定(アガロースゲル電気泳動による)に用いた。ターゲット断片溶液は一度室温真空下で乾固し、Micro Spotting Solution(BM)にて0.5−10pmol/μLの濃度になるように溶解した(表2及び3に個々のターゲット断片の濃度を示す)。得られたターゲット断片の塩基配列を配列番号3〜配列番号54に示した。
C.スポッティングと後処理
あらかじめポリLリジンコートしてあるスライドガラスに、スポッター(OmniGrid,GENEMACHINES)を用いて95℃で3分熱変性したターゲット断片をスポッティングした。その後、紫外線にてターゲット断片をスライドガラスにクロスリンクし、ブロッキング溶液(8重量%Block A in PBS)の入ったラックに入れて30分振盪したのちTEバッファーで洗浄して乾燥させた。スライドガラスは使用するまでデシケーターに入れて遮光下で保存した。このようにして本発明DNAアレイを得た。
D.蛍光DNAプローブの調製
腫瘍細胞から調整した全RNA(上記(2)と同一の方法による)を鋳型に、個々の遺伝子のmRNAに特異的なプライマーを用いて、逆転写酵素反応を利用して蛍光標識した。標識反応に必要な試薬は以下の通りである。
・逆転写酵素SuperscriptII(Gibco BRL)
・(反応バッファー、DTT)
・プライマー混合液(52種の遺伝子に特異的なリバースプライマーを混合したもの。リバースプライマーは参考例1にて用いた特異的プライマーのうちの片方)
・dATP,dGTP,dCTP,dTTP(アマシャムファルマシア)
・Cy3−dUTP(アマシャムファルマシア)
・Cy5−dUTP(アマシャムファルマシア)
・0.5M EDTA
・1N NaOH
・1M Tris−HCl(pH7.5)
・TEバッファー
全RNA(30μg)、プライマー混合液(50pmol each)と蒸留水を混合し、9μLに調整したものを65℃で2分間熱変性して氷上で急冷した。反応バッファー(1×)、DTT(10mM)、dTTP(0.2mM)、dATP(0.5mM)、dGTP(0.5mM)、dCTP(0.5mM)、Cy3−dUTP又はCy5−dUTP(0.1mM)、Superscript II(10U/μL)を添加し、蒸留水にて全量を20μLとした(括弧内は終濃度を示す)。42℃で60分反応させた後蒸留水20μL、0.5M EDTA5μL、1N NaOH5μLを添加して65℃で60分インキュベートすることによりRNAを分解し、25μLの1M Tris−HClを加えて中和した。200−400μLのTEバッファーを加え、反応液を限外濾過法(Microcon−30、ミリポア)により脱塩・濃縮し(この工程で、プローブに取り込まれなかったCy3−dUTP又はCy5−dUTPや、リバースプライマーも除去される)、最終的に約10μLのプローブ溶液を得た。
E.ハイブリダイゼーション
上記蛍光DNAプローブ溶液に20×SSCを3μLと蒸留水を加え、20μLとし(終濃度3×SSC)、95℃で3分間熱変性させ、室温で放置して冷却させた。そこに10重量%SDSを2μLと蒸留水を加えて40μLとし(終濃度0.5重量%)、A〜Cの工程で作製したDNAアレイに滴下して、カバーグラスを上からかぶせて覆った(気泡が入らないように静かに乗せた)。DNAアレイをハイブリダイゼーションチャンバーにセットし、65℃で10〜20時間インキュベートした後、0.2重量%SDSを含む2×SSC溶液中に入れてカバーグラスを静かに外し、そのまま5分間洗浄した。更に、0.2重量%SDSを含む2×SSC溶液中で1回、0.2重量%SDSを含む0.2×SSC溶液中で2回の洗浄の工程を繰り返し、最後に0.2×SSCで2回リンスした(洗浄の工程はすべて室温で行った)。DNAアレイをラックに入れ、600rpmで20秒間遠心して水分を飛ばし、室温で乾燥させてから、DNAマイクロアレイ用蛍光スキャナー(GenePix,Axon)で蛍光シグナルを測定した。
試験1:DNA断片の特異性
ノーザンハイブリダイゼーションにおいて、プローブ合成の鋳型として用いたDNA断片の特異性は、同一遺伝子であっても設計されたリージョンによって様々だった。実例として、XRCC1とE2F1を図2に示す。XRCC1では898−1265ntのリージョンは良好(目的とする遺伝子のmRNAと同じ長さのサイズに強いシグナルが見られた)だったが、187−494ntはクロスハイブリダイゼーションが多く不適と判断された。同様に、E2F1では1014−1309ntのリージョンは良好だったが、788−1087ntは不適であった。他の遺伝子についても程度の差はあるものの特異性は多様だった。最終的に、対象遺伝子において最も特異性の良好だったDNA断片を選択してターゲット断片とした。
試験2:ノーザンハイブリダイゼーションの定量性
DNAアレイの定量性は、ノーザンハイブリダイゼーションと比較することにより確認できる。そこで、本発明者らが採用したノーザンハイブリダイゼーションの測定系(実施例1(2))の定量性を改めて確認するために、RNA量と測定値(シグナル強度)との相関関係を調べた。
前記の14種のヒト腫瘍細胞由来の全RNAを変性アガロースゲルで電気泳動後、ナイロンメンブレンにブロットし、GAPDH(glyceraldehydes−3−phosphate dehydrogenase)のターゲットDNAから合成したプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを実施した(方法の詳細は実施例1(2)と同じ)。結果を画像解析用ソフト(ImageQuant、Molecular Dynamics Inc)で解析し、GAPDH mRNAと対応するシグナル強度を定量した。
泳動した全RNA量とノーザンハイブリダイゼーションの測定値との関係を図3に示す。全RNA量とシグナル強度の間の直線関係は明らかであり(r=0.95、p<0.01)、定量性が高いことが示された。
試験3:ユニバーサルプライマーのバックグラウンドに及ぼす影響
図1に示すように、ユニバーサルプライマー(forward(pCR−F)/reverse(pCR−R))をベクターのマルチクローニングサイトの配列を元に設計した。ユニバーサルプライマーを用いることで、52種すべてのターゲット断片を一定の効率で増幅できるようになったため、特異的プライマーと比較してターゲット断片の安定供給が容易になった。
ターゲット断片をスポッティングするときに混入してくるプライマーのバックグラウンドに及ぼす影響を調べるために、ユニバーサルプライマー(5スポット)と特異的プライマー(表2及び表3に記載の5種のターゲットDNA断片[TS,DPD,OPRT,LIG4,GAPDH]の両端約20bpの配列に対応するプライマーをそれぞれ1スポットずつ)を等量ずつスライドガラスにスポットし、実施例1(3)で示した手順によりハイブリダイゼーションを行い、それぞれのシグナル強度を測定した。
ユニバーサルプライマー(5スポット)のシグナル強度の平均値は27.3、標準偏差(SD)は6.5、変動係数(CV)は24.0%であったのに対し、特異的プライマー(5スポット)のシグナル強度の平均値は22.9、標準偏差(SD)は12.0、変動係数(CV)は52.4%であった。シグナル強度はほぼ同等であったものの、ユニバーサルプライマーの方がSD、CVともに小さいことより、ユニバーサルプライマーの方がスポット間におけるバックグラウンドのばらつきに及ぼす影響が比較的小さいことが示された。
更に、バックグラウンドを極力抑えるために、ターゲット断片を増幅するときに用いるユニバーサルプライマーの必要最少量を検討した。forward/reverseプライマーをそれぞれ10,20,30,40,50pmol用いてPCRにかけ、産物をアガロースゲル泳動したところ、20pmol以下では産物量が減少することが確認できたので、ユニバーサルプライマーの必要最少量を30pmolと決定した。
実施例2 ヒト腫瘍細胞中の種々の遺伝子発現量の測定
(1)ノーザンハイブリダイゼーション法による測定
DNAアレイに乗せるターゲット断片を決定する過程で、前記の14種のヒト腫瘍細胞における52種の遺伝子のノーザンハイブリダイゼーションの結果を元に(実施例1(2)参照)、それぞれの遺伝子の発現量を画像解析した。なお、発現量は、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH,ACTB,RSP9)の発現量の平均値に対する相対値として表わした。
(2)DNAアレイによる測定
52種の遺伝子ターゲット断片を乗せたDNAアレイを作製し、ノーザンハイブリダイゼーションで用いた14種の細胞から抽出した全RNAを元に調製した蛍光DNAプローブを用いてハイブリダイゼーションを実施し、それぞれの遺伝子の発現量を測定した(方法の詳細は実施例1(3)と同じ)。なお、発現量は、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH,ACTB,RSP9)の発現量の平均値に対する相対値として表わした。
(3)ノーザンハイブリダイゼーション法とDNAアレイの相関
前記の14種のヒト腫瘍細胞における52種の遺伝子の発現量について、ノーザンハイブリダイゼーション法とDNAアレイで測定した結果の相関を調べるために回帰分析した(表4)。相関の程度(相関係数)は、遺伝子の種類によってまちまちであったが、20種の遺伝子については5%未満の危険率において有意な相関が認められた。9種の遺伝子については、有意ではなかったものの、相関する傾向が認められた(p<0.1)。3種のハウスキーピング遺伝子を含む12種の遺伝子(MTHFD1、SOD1、AK、E2F1、POLD、LIG3、RSP9、HPRT1、ACTB、UDG、GAPDH、LIG1)については、発現量のばらつきが細胞間で小さいため正規分布をしているとは言い難く、相関性は低い又は評価不能であった。
(4)DNAアレイの判定力
実際に医療現場で使用されることを想定した場合、診断(薬剤の適正使用)を使用目的とするこのようなツールは、通常ある閾値を境にして陽性又は陰性であると評価される。例えば、RT−PCR法で測定したTSやDPDのmRNAレベルを5−FUの適正使用の指標と見なした研究でも、レベルの高低を判断するための閾値が設定されている(Clinical Cancer Research,6,1322−1327,2000)。本発明のDNAアレイの診断判定力をノーザンハイブリダイゼーションと比較することにより以下の方法で評価した。
前記の14種のヒト腫瘍細胞を臨床検体に相当するものと見なし、すべての細胞について52種の遺伝子発現量を本発明のDNAアレイ及びノーザンハイブリダイゼーションにより測定した(それぞれの測定法において、測定ポイントは52種遺伝子×14種細胞=728ポイント算出された)。本発明のDNAアレイの測定値をもとに、各遺伝子について14種の細胞が示す発現量の中央値を求めた。中央値を基準とみなしたときの14種の細胞における相対的発現量(中央値に対する発現量の比)を算出した。閾値を2倍と設定し、相対的発現量が閾値を越える(2以上または0.5以下)較差が見られた細胞を「陽性」、閾値を越えないものを「陰性」と判定した。またノーザンハイブリダイゼーションによる判定結果を信頼性の高いものとみなし、本発明のDNAアレイによる判定結果が一致すれば「真」、一致しなければ「偽」と評価した。図4に示すように、陽性・陰性の判定結果が「真」であったのは82.3%と高率であった。また、陽性と判定された75ポイントのうち、77.3%(58/75)がノーザンハイブリダイゼーションの結果と一致した。また、相反する結果(例えば、両方とも真陽性だがノーザンハイブリダイゼーションによる相対的発現量が0.3で本発明のDNAアレイによる相対的発現量が2.5のようにまったく食い違っているという意味)は1例もなかった。このように、本発明のDNAアレイは、ノーザンハイブリダイゼーションとほぼ同程度の診断判定力があることが示された。
(5)DNAアレイの検出力
試験4の4)において、判定の対象となった728ポイント(52種遺伝子×14種細胞)のうち、測定不可能であった62ポイントについてはノーザンハイブリダイゼーションでも検出されたかった。このことより、本発明のDNAアレイはノーザンハイブリダイゼーションと同等以上の検出力を有していることが示された。
実施例3 可移植性ヒト腫瘍株中の種々の遺伝子発現量とTS−1に対する感受性との相関
(1)TS−1に対する感受性試験
本発明のDNAアレイを臨床応用する際、例えば癌組織中に発現している52種の遺伝子発現量と5−FU系抗癌剤の抗腫瘍効果との間の相関を解析することにより、感受性規定因子として実際にどの遺伝子が重要であるのかを見極めるために用いることが想定される。
本試験では、抗腫瘍効果を検討する実験モデルとして、11種の可移植性ヒト腫瘍株(xenograft。由来は、胃癌4株、大腸癌3株、肺癌2株、乳癌2株)のTS−1に対する感受性試験を実施した(TS−1は大鵬薬品工業(株)が開発した5−FU系抗癌剤の1種であり、5−FUのプロドラッグであるテガフール、DPD阻害剤であるギメラシル及びorotate phosphoribosyl transferaseの阻害剤であるオテラシルカリウムをモル比にして1:0.4:1にて含有している配合剤である)。各種xenograftをヌードマウスの背部皮下に移植し、100−200mm3の大きさに達したときに対照群(薬剤非投与群)とTS−1投与群に群分けし(1群あたり6匹)、翌日から1日1回、14日間連日TS−1を10mg/kg/day(FT量として)の用量で経口投与し、投薬終了翌日に腫瘍体積を測定して対照群の腫瘍体積と比較し、腫瘍増殖抑制率(inhibition rate,IR)を求めた。IRは以下の式により算出した。
IR(%)=(1−[TS−1投薬群の相対腫瘍体積]/[対照群の相対腫瘍体積])×100
(相対腫瘍体積)=(判定時の腫瘍体積)/(群分け時の腫瘍体積)
(2)本発明のDNAアレイによる測定
上記の11種のxenograftから抽出した全RNAを材料とし、52種の遺伝子の発現量を測定した。試験方法は、実施例2に準じて行った。なお、発現量は、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH,ACTB,RSP9)の発現量の平均値に対する相対値として表わした。
(3)11種のxenograft中の遺伝子発現量とTS−1に対する感受性との相関
上記(1)および(2)の検討により得られた11種のxenograft中の52種の遺伝子発現量とTS−1に対する感受性(IR,%)との関連を調べるために、総当り(52通り)で回帰分析を実施した。その結果、相関係数(P値:Pearsonの積率相関係数)の絶対値が0.5を上回った遺伝子が4種(UDG,PCNA,TS,TK1)あった(図5)。P値は0.05以上0.1未満であり、統計上有意ではなかったものの、N数が11と少なかったこともあり、相関の傾向は回帰直線から見ても十分に判定できた。これら4種の遺伝子にTSが含まれていたことは注目に値する。TSは、5−FU系抗癌剤の感受性規定因子の代表的なものであり、TS発現量が高いと5−FU系抗癌剤は奏効しにくいとの知見が基礎・臨床の双方から得られている。本検討でも、TS発現量とTS−1の抗腫瘍効果の間には負の相関(r=−0.53)があった点でこれまでの知見と一致している。さらに、確認試験として測定精度が極めて高いとされているリアルタイムRT−PCR法により11種のxenograft中のTS発現量(GAPDHに対する相対発現量)を測定し、TS−1に対する感受性との相関を解析したところ、相関係数は−0.65で有意な(P=0.030)相関が認められた(図6)。この結果より、本発明のDNAアレイは5−FU系抗癌剤の感受性規定因子の候補を52種の遺伝子から絞り込む上で有用であることが示された。さらにN数を増やせば、臨床検体を用いて5−FU系抗癌剤の感受性規定因子を絞り込むことも可能であろうし、絞り込まれた遺伝子の発現量を解析することで、5−FU系抗癌剤の適正使用の指標とすることができる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、検体中の数十〜数百種の遺伝子発現を、一度だけの簡便なアッセイで定量性よく測定できる。本発明の測定法を用いて被検体(例えば癌患者の末梢血単核球や腫瘍組織から抽出した全RNA)中の、代謝拮抗剤系抗癌剤又はこれと他の抗癌剤の併用の作用機序に関連している遺伝子発現様式を解析することで、これらの抗癌剤の適正使用の指標とすることができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、ユニバーサルプライマーの配列と、ターゲット断片が組み込まれたクローンの構造を示す図である。
図2は、プローブを合成するための鋳型となるDNAフラグメントを遺伝子の異なるリージョンから設定すると、特異性に差異がある場合があることを示すノーザンハイブリダイゼーションの画像の実例を示す図である。
図3は、ノーザンハイブリダイゼーションにおいて全RNA量と測定値の間の相関を示す図である。
図4は、本発明の診断判定力をノーザンハイブリダイゼーションと比較することで評価したことを示す図である。
図5は、11種のxenograftのTS−1に対する感受性と52種の遺伝子のうち相関関係の高かった4種の遺伝子発現量との相関を示す図である。
図6は、11種のxenograftのTS−1に対する感受性とTS発現量との相関を示す図である。
本発明は抗癌剤感受性の測定用DNAアレイ及び当該DNAアレイを用いた抗癌剤感受性測定法に関する。
背景技術
一般的に、癌患者に対する抗癌剤の治療効果は必ずしも高いとは言えず、その一方で副作用は比較的高頻度に発現する。近年、抗癌剤の適正使用あるいは患者個人個人に応じたオーダーメイド医療が望まれている。すなわち、抗癌剤を投与する前に、患者から採取した組織検体等を測定対象試料とし、その抗癌剤の感受性に関連している遺伝子の発現量を測定することで、効果が期待できそうなまたは副作用が少なそうな患者を絞り込んで投与するというものである。
汎用されている抗癌剤のなかでも、5−フルオロウラシル(5−FU)系薬剤等の代謝拮抗剤の分野では適正使用を目指した臨床研究が盛んである。測定対象となる遺伝子としては、代謝拮抗剤の感受性に関連しているとされているチミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase;EC2.1.1.45,以下、TSと称する)、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(dihydropyrimidine dehydrogenase;EC1.3.1.2,以下、DPDと称する)、チミジンホスホリラーゼ(thymidine phosphorylase;EC2.4.2.4,以下、TPと称する)が代表的なものであり、それらの発現パターンは生化学的酵素活性測定法(Clinical Cancer Research,5,883−889,1999)、抗体を用いた免疫学的測定法(癌と化学療法,24(6):705−712,1997)ノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法によるmRNA測定法(Clinical Cancer Research,6,1322−1327,2000)で解析され、適正使用の指標とされている。また、シスプラチンを用いた癌の化学療法においてはERCC1等のDNA修復酵素も効果を予測する因子として有用であることが示唆されている(Journal of Clinical Oncology,16,309−316,1998)。
一方、近年、数百〜数万という多種の遺伝子のmRNA発現を同時に解析できる技術として、DNAマイクロアレイ法が汎用されるようになってきた。この手法は遺伝子を網羅的に解析するのに適しており、将来汎用抗癌剤の適正使用に応用されることが期待されている。
5−フルオロウラシル等の代謝拮抗剤は生体内で種々の過程を経て代謝されるため、代謝拮抗剤の感受性を予測するには、上記3種(TS,DPD及びTP)の遺伝子発現の解析だけでは十分とは言えない。更に広範囲の遺伝子発現を解析できれば感受性の予測率も高まると予想される。また実際の癌化学療法においては数種の抗癌剤を組み合わせた併用療法が施行されることが多いため、各薬剤の感受性に関与する遺伝子発現を包括的に解析できれば個々の患者に適した併用化学療法をデザインできる可能性がある。
生化学的酵素活性測定法、抗体を用いた免疫学的測定法、ノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法によるmRNA測定法はいずれも定量性は高いものの、原則として1遺伝子につき1回のアッセイが必要なので、多種の遺伝子発現様式を同時に解析するには作業上適していない技術である。
一方、DNAマイクロアレイ法は多種の遺伝子発現解析に適しているものの、定量性はノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法に比べ格段に劣る。その原因の主たるものとして、ノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法は目的とする遺伝子に対する特異性をRNAやPCR産物のサイズにより分別することができるが、DNAマイクロアレイ法は分子サイズが表現されないドットブロットであるため特異性を分別できず、目的とする遺伝子発現以外の非特異的なシグナルを検出してしまう(いわゆるクロスハイブリダイゼーション)ことが挙げられる。目的とする遺伝子に対する特異性は、アレイ化する個々のDNA断片(以下、ターゲット断片と呼ぶ)の設定法、すなわち遺伝子(全長cDNA)のどの部分(リージョン)をターゲット断片として選択するかによって左右される。通常のDNAマイクロアレイ法の場合、設計支援ソフトなどを利用して計算上特異性が高いと予想されるリージョン(データベース上に公開されている他の遺伝子と塩基配列の重複が少ないリージョン)を選択してターゲット断片としているものの、その特異性が実証されているわけではない。また、ターゲット断片はPCRで増幅して調製されるが、その際に用いられる個々の遺伝子に特異的なプライマーがターゲット断片溶液に混入して一緒にアレイ化される結果、不均一なバックグラウンドの原因になることがある。これらの要因により、同一検体(生体由来試料)中のある特定遺伝子の発現量をDNAマイクロアレイ法で解析した結果とノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法で解析した結果が食い違うことはしばしば起こるので、DNAマイクロアレイ法の結果のみで遺伝子発現に差があると断定することはできない。実験手順としては、第一次スクリーニングとして発現量に差がありそうな遺伝子をDNAマイクロアレイ法でおおまかに絞り込み、第二次スクリーニングとしてノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法により発現量の差が確かであることを証明するのが一般的で、結局のところ少なくとも2種の測定法が必要となる。
従って、本発明の目的は代謝拮抗剤系抗癌剤及びこれと他の抗癌剤との併用療法に対する感受性を、一度だけの簡便なアッセイで、しかも高感度に定量性よく測定するための手段を提供することにある。
発明の開示
かかる実状において本発明者らは、汎用されているDNAマイクロアレイ法により一度で抗癌剤の感受性が測定できるか否かを検討した。しかし、次のような欠点があることが判明した。
すなわち、汎用されているDNAマイクロアレイ法の場合、対象とする遺伝子の種類が数百から数万と多いために、現状で使用可能な抗癌剤の作用機序から推察して薬剤感受性には関連がないと思われる遺伝子を多数含んでいる。その結果、解析に余計な労力を必要としたり、抗癌剤の作用機序に密接した遺伝子を軽視することがあるといった短所が生ずる。
更に、汎用されているDNAマイクロアレイ法の場合、支持担体(ナイロンメンブレンやガラスプレートなど)にスポットするDNA量(濃度)は一定である場合が多く、抗癌剤の感受性に密接に関連している遺伝子であるにも関わらず発現量が極めて少ないために定量できないものがある。
そこで、本発明者らは、現存するDNAマイクロアレイ法を改良すべく検討した。まず、標的遺伝子を代謝拮抗剤系抗癌剤及びこれと併用する他の抗癌剤の作用機序に関連していると考えられる遺伝子を中心に数十から数百に絞り込んだ。次にデータベースを利用したホモロジー検索により計算上で設計しただけでなく、実際にノーザンハイブリダイゼーションにより特異性を確認したものをターゲット断片とした。かくして選択された断片を基板上に固定化することにより得られたDNAアレイは、代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性を、一度の試験で高感度に判定できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、核酸代謝関連酵素遺伝子群、遺伝子修復関連酵素遺伝子群、薬剤耐性関連因子遺伝子群及びハウスキーピング遺伝子群の各群からの少なくとも2種以上を含む少なくとも13種以上の標的遺伝子の断片であって、
次のステップ1)及び2)、
1)データベースを利用したホモロジー検索により、標的遺伝子に特異性の高い断片を選択するステップ、
2)1)のステップで選択された断片をプローブとして腫瘍細胞から得られたRNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行い、標的遺伝子に対する特異性を確認するステップ、
を行うことにより選択された断片を、基板上に固定化してなることを特徴とする代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定用DNAアレイを提供するものである。
また、本発明は、このDNAアレイに、癌患者由来の体液検体又は組織検体から得られたmRNAを鋳型として合成した標識cDNAプローブをハイブリダイズさせることを特徴とする当該体液検体又は組織検体の代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定方法を提供するものである。
発明を実施するための最良の形態
本発明のDNAアレイは、代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定に用いるものである。ここで、代謝拮抗剤系抗癌剤としては、テガフール、5−フルオロウラシル、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、カルモフール、カペシタビン、フルツロン等の5−フルオロウラシル系抗癌剤;6−メルカプトプリン、メルカプトプリンリポジド等のメルカプトプリン系抗癌剤;シタラビン、エノシタビン、ゲムシタビン等のシトシン系抗癌剤;メトトレキサート等が挙げられ、このうち5−フルオロウラシル系抗癌剤が特に好ましい。また、代謝拮抗剤と併用する他の抗癌剤としては、シスプラチン等の白金錯体系抗癌剤;CPT−11、VP−16等のトポイソメラーゼ阻害剤;ドセタキセル、パクリタキセル等のタキサン系抗癌剤等が挙げられる。
本発明における感受性の測定には、患者に対する抗癌剤の有効性及び副作用のバランスの判定、適切な併用療法の決定、適切な投与法(投与量、投与スケジュール)の判定等が含まれる。
本発明における標的遺伝子は、感受性に関連していると考えられる遺伝子であり、核酸代謝関連酵素遺伝子群、遺伝子修復関連酵素遺伝子群、薬剤耐性関連因子遺伝子群及びハウスキーピング遺伝子群の各群からの少なくとも2種以上を含む少なくとも13種以上の遺伝子である。
ここで、核酸代謝関連酵素としては、チミジル酸シンターゼ(thymidylate synthase:TS)、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(dihydropyrimidine dehydrogenase:DPD)、オロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ(orotate phosphoribosyltransferase:OPRT(ウリジンモノホスフェートシンセターゼ(uridine monophosphate synthetase:UMPS)))、チミジンホスホリラーゼ(thymidine phosphorylase:TP)、チミジンキナーゼ1(thymidine kinase 1:TK1)、リボヌクレオシド−ジホスフェートリダクターゼM1サブユニット(ribonucleoside−diphosphate reductase M1 subunit:RRM1)、リボヌクレオシド−ジホスフェートリダクターゼM2サブユニット(ribonucleoside−diphosphate reductase M2 subunit:RRM2)、ウリジンシチジンキナーゼ2(uridine cytidine kinase 2:UCK2)、ウリジンホスホリラーゼ(uridine phosphorylase:UP)、シチジンデアミナーゼ(cytidine deaminase:CDA)、5′ヌクレオチダーゼ(5′nucleotidase:NT5)、IMPデヒドロゲナーゼ1(IMP dehydrogenase 1:IMPD)、メチレンテトラヒドロフォレートデヒドロゲナーゼ(methylenetetrahydrofolate dehydrogenase:MTHFD1)、RNAポリメラーゼ2(RNA polymerase 2:RP2)、ウリジンモノホスフェートキナーゼ(uridinemonophosphate kinase:UMPK)、CTPシンターゼ(CTP synthase:CTPS)、デオキシシチジレートデアミナーゼ(deoxycytidylate deaminase:DCD)、デオキシシチジンキナーゼ(deoxycytidine kinase:DCK)、ホスホリボシルピロホスフェートシンセターゼ(phosphoribosyl pyrophosphate synthetase:PRPS)、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(hypoxanthinephosphoribosyltransferase 1:HPRT1)、フォリルポリグルタメートシンセターゼ(folylpolyglutamate synthetase:FPGS)、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼA(nucleoside diphosphate kinase A:NDKA)、ヌクレオシドジホスフェートキナーゼB(nucleoside diphosphate kinase B:NDKB)、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(adeninephosphoribosyltransferase:APRT)、アデノシンキナーゼ(adenosinekinase:AK)等が挙げられる。これらの酵素遺伝子のうち、少なくともTS、DPD、ORRT、TP及びTK1の遺伝子を含むのが特に好ましい。
遺伝子修復関連酵素としては、DNA切除修復蛋白ERCC1(DNA excisionrepair protein ERCC1:ERCC1)、ウラシル−DNAグリコシラーゼ(uracil−DNA glycosylase:UDG)、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(poly(ADP−ribose)polymerase:PARP)、DNAリガーゼI(DNA ligase I:LIG1)、DNAリガーゼIII(DNA ligase III:LIG3)、DNAリガーゼIV(DNA ligase IV:LIG4)、DNAポリメラーゼβ(DNA polymerase β:POLB)、DNAポリメラーゼδ(DNA polymerase δ:POLD)、DNA−修復蛋白XRCC1(DNA−repair protein XRCC1:XRCC1)等が挙げられる。これらの酵素遺伝子のうち、少なくともERCC1及びUDGを含むのが好ましい。
薬剤耐性関連因子としては、トポイソメラーゼ1(topoisomerase 1:TOP1)、P−グリコプロテイン(P−glycoprotein:MDR1)、平衡ヌクレオシドトランスポーター1(equilibrative nucleoside transporter 1:ENT1)、多剤耐性関連蛋白1(multidrug resistance−associated protein 1:MRP1)、トポイソメラーゼ2α(topoisomerase 2α:TOP2A)、トポイソメラーゼ2β(topoisomerase 2β:TOPB)、熱ショック蛋白27(heatshockprotein 27:Hsp27)、平衡ヌクレオシドトランスポーター2(equilibrative nucleoside transporter 2:ENT2)等が挙げられる。これらの因子遺伝子のうち少なくともTOP1、MDR1、ENT1及びMRP1の遺伝子を含むのが好ましい。
ハウスキーピング遺伝子としては、グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase:GAPDH)、βアクチン(β−actin:ACTB)及び40Sリボソーマル蛋白S9(40Sribosomal protein S9:RSP9)等が挙げられる。GAPDH、ACTB、RSP9から選ばれる2種以上を含むのが好ましい。これらの遺伝子は、内部標準として使用されるものである。
その他の遺伝子としては、E2F1、p53、VEGFβ(VEGF β)、インテグリンα3(integrin α3)、Mn SOD、Cu/Zn SOD、増殖細胞核抗原(Proliferating cell nuclear antigen:PCNA)等が挙げられる。
これらの標的遺伝子の断片をすべて固定化するのが望ましいが、特に、TS、DPD、OPRT、TP、TK1、ERCC1、UDG、TOP1、MDR1、ENT1及びMRP1の11種の遺伝子と、GAPDH、ACTB及びRSP9のうちの2種以上との合計の13種以上の遺伝子の断片を固定化すると前記感受性のより効率的な測定が可能であり好ましい。
これらの標的遺伝子の配列について、まずデータベースを利用したホモロジー検索により、各標的遺伝子に特異性の高い断片を選択する(ステップ1)。
このホモロジー検索は、例えばBlast Search等により行うことができる。断片の設計条件としては、例えばGC含量が40〜60%で重複配列が少なく、Tm値が75〜85℃、サイズ200〜600bp等が挙げられる。
次にステップ1で設計された断片をプローブとして腫瘍細胞から得られたRNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行うことにより、特異性を確認する(ステップ2)。ステップ1で設計された断片は、計算上は標的遺伝子に対する特異性が高いはずであるが、実際にはクロスハイブリダイゼーションが高い確率で起こる。実際、ステップ1で第1選択された断片が、ステップ2で特異的であることが確認できたものは10〜20%にすぎない。
ステップ2は、まず、cDNAライブラリーを鋳型としてPCR法にて増幅することによりDNA断片を得る。次に、このDNA断片を鋳型として放射性プローブを酵素的に合成し、種々の腫瘍細胞から調製した全RNAをブロットしたメンブレンを用いてノーザンハイブリダイゼーションを実施し、特異性を確認する。すなわち特定遺伝子から転写されるmRNAのサイズ(文献情報やデータベースサーチにて調査できる)に対応したシグナルが検出され、しかも他のサイズのシグナルがほとんど検出されない(クロスハイブリダイゼーションがほとんどない)ことが特異性の条件となる。
特異性が充分でないDNA断片については、対応する遺伝子の他のリージョンからDNA断片を設計し直し、再度ノーザンハイブリダイゼーションを実施する。このような作業を特異性が充分になるまで繰り返すことで、アレイ化するDNA断片のリージョンを最適化し、ターゲット断片を得る。ターゲット断片は、プラスミド(pCR2.1−TOPO)にクローニングする。
なお、ターゲット断片をPCRで増幅する時に用いるプライマーとして、クローニングベクターのマルチプルクローニングサイトの配列を元にユニバーサルプライマーを設計し、すべてのターゲット断片が一組のユニバーサルプライマーで増幅できるようにする。当該ユニバーサルプライマーとしては、配列番号1及び2に示される塩基配列を有するプライマーが特に好ましい。また、スポッティング溶液に混入するプライマー量ができるだけ少なくなるようにユニバーサルプライマーの量を最適化する。その結果、すべてのターゲット断片のスポットにおけるバックグラウンドが低く抑えられ、ばらつきが少なくなる。
かくして選択された各標的遺伝子のターゲット断片を基板(支持担体)上に固定化すれば、本発明のDNAアレイが得られる。ここで使用される基板としては、通常公知のものが挙げられ、例えば、ガラスプレート、プラスチックプレート、メンブレン(ナイロン製等)、ビーズ等が挙げられ、好ましくはガラスプレートである。また、当該アレイへの断片の固定化は、通常公知のスポッティング手段が利用でき、例えば、特表平10−503841号公報記載のようなターゲットDNAを含む溶液に先の割れたピンを浸して支持体の上に圧着することにより移していく表面接着方式(stanford方式)、ターゲットDNAを含む溶液をインクジェットプリンタと同様の原理で支持体に吹き付けるインクジェット・圧電放出方式、光リソグラフの技術を利用して、ターゲットDNAを直接支持体の上で合成する光リソグラフ方式等により行われ、好ましくはstanford方式である。
ノーザンハイブリダイゼーションによる解析で得られた個々の遺伝子の発現量に基づいて、発現量の多い遺伝子については基板(支持担体)に固定化するターゲット断片の量を少なく、発現量の少ない遺伝子については多くすることにより、すべての標的遺伝子のmRNAを定量できるようにするのが好ましい。
得られた本発明のDNAアレイを用いて前記抗癌剤の感受性を測定するには、当該DNAアレイに、癌患者由来の体液検体又は組織検体から得られたmRNAを鋳型として合成した標識cDNAプローブをハイブリダイズさせることにより実施できる。
ここで癌患者由来の体液としては、血液、尿等が挙げられる。また組織としては、癌組織が挙げられる。検体からmRNAの採取は常法により行われ、mRNAは全RNAに含まれたままでも、全RNAから単離したもののいずれでもよい。また標識cDNAは、mRNAを鋳型として逆転写酵素反応を利用して標識する。ここで、標識としては、蛍光標識、放射性同位体による標識が挙げられるが、蛍光標識が特に好ましい。
ハイブリダイゼーションの条件は、常法により行うことができる。ハイブリダイズの定量は標識プローブ量、例えば蛍光量を定量することにより行われる。
本発明DNAアレイの定量性のバリデーションを取るために、52種の遺伝子発現の測定値をノーザンハイブリダイゼーション法で得られた測定値と比較したところ、食い違うことがほとんどなかった。また、特徴のある発現様式を示す(平均的な発現量よりも2倍以上差のある)遺伝子を判別することも、ノーザンハイブリダイゼーションと同程度の精度で可能であった。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されるものではない。
実施例1
(1)ターゲット断片の調製
A.DNA断片の選択と設計
後記表2及び3に示すように、核酸代謝関連遺伝子を中心に、5−FUの感受性に関連していると考えられる遺伝子を52種類選択した。DNA断片の設計は、原則としてGC含量が40〜60%で重複配列が少なくTm値が75〜85℃、サイズが200〜600bpであることを条件とし、クロスハイブリダイゼーションをできるだけ回避するために他の遺伝子と重複する配列がほとんどないことをデータベースを利用したホモロジー検索(Blast Search)により確認した。PCRで増幅する時に用いる個々の遺伝子に特異的なプライマー(specificprimer[forward/reverse])はTm値が59〜61℃となるように設計支援ソフト(Primer ExpressTM、PEバイオシステムズ)を用いて設定した。
B.DNA断片の合成と精製
DNA断片は、ヒト由来のcDNAライブラリーを鋳型として、特異的プライマーとExTaqTM(TaKaRa)を用いてPCR反応(熱変性を94℃で1分,アニーリングを60℃で1分,伸長反応を72℃で1分を1サイクルとして、計30サイクル)により増幅した。PCR産物溶液をスピンカラム(ミニプレップスピンカラム、Aetna)により精製し、蒸留水で溶出した。
(2)ノーザンハイブリダイゼーション
A.全RNAの調製と精製
表1記載の14種のヒト腫瘍細胞からRNeasy midi kitTM(QIAGEN)を用いて全RNAを抽出し、蒸留水で溶出した。溶液中に混在している可能性のあるDNAをDNaseを用いて分解し(37℃、30分)、フェノール・クロロホルムを用いて除タンパクし、エタノール沈殿により精製・濃縮し、蒸留水に溶解して全RNA溶液を得た。
B.ノーザンブロット
前記の14種のヒト腫瘍細胞から調製した全RNA(各5μg)を1重量%変性アガロースゲルにて電気泳動した。臭化エチジウムにより染色し、紫外線下で写真撮影してRNAが分解していないことを確認した。ゲル中のRNAをキャピラリ法によりナイロンメンブレンにブロットし、紫外線によりメンブレンに固定(クロスリンク)した。
C.プローブの調製
上記(1)で調製したDNA断片を鋳型として、ランダムプライム法(rediprimeTMII、アマシャムファルマシア)により[α−32P]dCTPにてラベルしたプローブを合成した。プローブ中に取り込まれなかった[α−32P]dCTPをゲル濾過法(ProbeQuantTM G−50マイクロスピンカラム、アマシャムファルマシア)により取り除いた。
D.ノーザンハイブリダイゼーション
上記(2)Bと(2)Cで調製されたブロットとプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを実施した。ブロットをハイブリダイゼーションバッファー(ラピッドハイブリバッファー、アマシャムファルマシア)中にて65℃、30分プレハイブリダイズし、そこに熱変性させたプローブを添加して、65℃で2時間ハイブリダイズした。次にブロットを洗浄し(0.1重量%SDSを含む2×SSC(0.15mol/L NaCl/0.15mol/Lクエン酸3ナトリウム)溶液で2回、0.1重量%SDSを含む1×SSC溶液で1回、0.1重量%SDSを含む0.1×SSC溶液で2回)、遮光下で一晩イメージングプレート(富士フィルム)に露光した。翌日、イメージングプレートを画像解析装置(STORM、Molecular Dynamics Inc.)でスキャンし、画像データを保存した。
E.DNA断片の評価と再設計
ノーザンハイブリダイゼーションの画像を見て、DNA断片の特異性を評価した。すなわち、目的とする遺伝子のmRNAと同じサイズのシグナルが見られ、それ以外のシグナルがほとんど見られないときには特異性があるものと判断し、対して目的とする遺伝子のmRNAのサイズにシグナルが認められなかったり、他のシグナルが認められた(クロスハイブリダイセーション)時には特異性に乏しいと評価した。後者の場合、同一遺伝子のmRNAの他のリージョンから上記(1)Aに示した条件でDNA断片を再設計した。以下、DNA断片の特異性が確認されるまで、設計、合成及びノーザンハイブリダイゼーションの工程を繰り返し(多いもので6回)、ターゲット断片(本発明のDNAアレイに乗せる遺伝子のリージョン)を決定した。
(3)DNAアレイの作成とハイブリダイゼーション
一連の工程は、Stanford方式を基本としており、一部改変したものである。
A.ターゲット断片のクローニング
ターゲット断片を質・量ともに安定に供給するには、ロットによるばらつきが生じ易いcDNAライブラリーを鋳型として用いるのは望ましくない。そこで、図1で示すように、個々のターゲット断片(PCR産物の状態にある)をTAクローニング法によりプラスミド(pCR−TOPO vector、Invitrogen)にクローニングすることにより、すべてのターゲット断片に対応した52種類のクローンを得た。
B.ターゲット断片の調製
上記のクローンを鋳型とし、上記(1)に準じた方法でターゲット断片を増幅した。ただし、プライマーとしてユニバーサルプライマーを用いた(配列番号1、2)。得られたPCR産物をエタノール沈殿法により洗浄した後、蒸留水で溶かした。溶液の一部を取って濃度算出(吸光度測定による)及び純度検定(アガロースゲル電気泳動による)に用いた。ターゲット断片溶液は一度室温真空下で乾固し、Micro Spotting Solution(BM)にて0.5−10pmol/μLの濃度になるように溶解した(表2及び3に個々のターゲット断片の濃度を示す)。得られたターゲット断片の塩基配列を配列番号3〜配列番号54に示した。
C.スポッティングと後処理
あらかじめポリLリジンコートしてあるスライドガラスに、スポッター(OmniGrid,GENEMACHINES)を用いて95℃で3分熱変性したターゲット断片をスポッティングした。その後、紫外線にてターゲット断片をスライドガラスにクロスリンクし、ブロッキング溶液(8重量%Block A in PBS)の入ったラックに入れて30分振盪したのちTEバッファーで洗浄して乾燥させた。スライドガラスは使用するまでデシケーターに入れて遮光下で保存した。このようにして本発明DNAアレイを得た。
D.蛍光DNAプローブの調製
腫瘍細胞から調整した全RNA(上記(2)と同一の方法による)を鋳型に、個々の遺伝子のmRNAに特異的なプライマーを用いて、逆転写酵素反応を利用して蛍光標識した。標識反応に必要な試薬は以下の通りである。
・逆転写酵素SuperscriptII(Gibco BRL)
・(反応バッファー、DTT)
・プライマー混合液(52種の遺伝子に特異的なリバースプライマーを混合したもの。リバースプライマーは参考例1にて用いた特異的プライマーのうちの片方)
・dATP,dGTP,dCTP,dTTP(アマシャムファルマシア)
・Cy3−dUTP(アマシャムファルマシア)
・Cy5−dUTP(アマシャムファルマシア)
・0.5M EDTA
・1N NaOH
・1M Tris−HCl(pH7.5)
・TEバッファー
全RNA(30μg)、プライマー混合液(50pmol each)と蒸留水を混合し、9μLに調整したものを65℃で2分間熱変性して氷上で急冷した。反応バッファー(1×)、DTT(10mM)、dTTP(0.2mM)、dATP(0.5mM)、dGTP(0.5mM)、dCTP(0.5mM)、Cy3−dUTP又はCy5−dUTP(0.1mM)、Superscript II(10U/μL)を添加し、蒸留水にて全量を20μLとした(括弧内は終濃度を示す)。42℃で60分反応させた後蒸留水20μL、0.5M EDTA5μL、1N NaOH5μLを添加して65℃で60分インキュベートすることによりRNAを分解し、25μLの1M Tris−HClを加えて中和した。200−400μLのTEバッファーを加え、反応液を限外濾過法(Microcon−30、ミリポア)により脱塩・濃縮し(この工程で、プローブに取り込まれなかったCy3−dUTP又はCy5−dUTPや、リバースプライマーも除去される)、最終的に約10μLのプローブ溶液を得た。
E.ハイブリダイゼーション
上記蛍光DNAプローブ溶液に20×SSCを3μLと蒸留水を加え、20μLとし(終濃度3×SSC)、95℃で3分間熱変性させ、室温で放置して冷却させた。そこに10重量%SDSを2μLと蒸留水を加えて40μLとし(終濃度0.5重量%)、A〜Cの工程で作製したDNAアレイに滴下して、カバーグラスを上からかぶせて覆った(気泡が入らないように静かに乗せた)。DNAアレイをハイブリダイゼーションチャンバーにセットし、65℃で10〜20時間インキュベートした後、0.2重量%SDSを含む2×SSC溶液中に入れてカバーグラスを静かに外し、そのまま5分間洗浄した。更に、0.2重量%SDSを含む2×SSC溶液中で1回、0.2重量%SDSを含む0.2×SSC溶液中で2回の洗浄の工程を繰り返し、最後に0.2×SSCで2回リンスした(洗浄の工程はすべて室温で行った)。DNAアレイをラックに入れ、600rpmで20秒間遠心して水分を飛ばし、室温で乾燥させてから、DNAマイクロアレイ用蛍光スキャナー(GenePix,Axon)で蛍光シグナルを測定した。
試験1:DNA断片の特異性
ノーザンハイブリダイゼーションにおいて、プローブ合成の鋳型として用いたDNA断片の特異性は、同一遺伝子であっても設計されたリージョンによって様々だった。実例として、XRCC1とE2F1を図2に示す。XRCC1では898−1265ntのリージョンは良好(目的とする遺伝子のmRNAと同じ長さのサイズに強いシグナルが見られた)だったが、187−494ntはクロスハイブリダイゼーションが多く不適と判断された。同様に、E2F1では1014−1309ntのリージョンは良好だったが、788−1087ntは不適であった。他の遺伝子についても程度の差はあるものの特異性は多様だった。最終的に、対象遺伝子において最も特異性の良好だったDNA断片を選択してターゲット断片とした。
試験2:ノーザンハイブリダイゼーションの定量性
DNAアレイの定量性は、ノーザンハイブリダイゼーションと比較することにより確認できる。そこで、本発明者らが採用したノーザンハイブリダイゼーションの測定系(実施例1(2))の定量性を改めて確認するために、RNA量と測定値(シグナル強度)との相関関係を調べた。
前記の14種のヒト腫瘍細胞由来の全RNAを変性アガロースゲルで電気泳動後、ナイロンメンブレンにブロットし、GAPDH(glyceraldehydes−3−phosphate dehydrogenase)のターゲットDNAから合成したプローブを用いてノーザンハイブリダイゼーションを実施した(方法の詳細は実施例1(2)と同じ)。結果を画像解析用ソフト(ImageQuant、Molecular Dynamics Inc)で解析し、GAPDH mRNAと対応するシグナル強度を定量した。
泳動した全RNA量とノーザンハイブリダイゼーションの測定値との関係を図3に示す。全RNA量とシグナル強度の間の直線関係は明らかであり(r=0.95、p<0.01)、定量性が高いことが示された。
試験3:ユニバーサルプライマーのバックグラウンドに及ぼす影響
図1に示すように、ユニバーサルプライマー(forward(pCR−F)/reverse(pCR−R))をベクターのマルチクローニングサイトの配列を元に設計した。ユニバーサルプライマーを用いることで、52種すべてのターゲット断片を一定の効率で増幅できるようになったため、特異的プライマーと比較してターゲット断片の安定供給が容易になった。
ターゲット断片をスポッティングするときに混入してくるプライマーのバックグラウンドに及ぼす影響を調べるために、ユニバーサルプライマー(5スポット)と特異的プライマー(表2及び表3に記載の5種のターゲットDNA断片[TS,DPD,OPRT,LIG4,GAPDH]の両端約20bpの配列に対応するプライマーをそれぞれ1スポットずつ)を等量ずつスライドガラスにスポットし、実施例1(3)で示した手順によりハイブリダイゼーションを行い、それぞれのシグナル強度を測定した。
ユニバーサルプライマー(5スポット)のシグナル強度の平均値は27.3、標準偏差(SD)は6.5、変動係数(CV)は24.0%であったのに対し、特異的プライマー(5スポット)のシグナル強度の平均値は22.9、標準偏差(SD)は12.0、変動係数(CV)は52.4%であった。シグナル強度はほぼ同等であったものの、ユニバーサルプライマーの方がSD、CVともに小さいことより、ユニバーサルプライマーの方がスポット間におけるバックグラウンドのばらつきに及ぼす影響が比較的小さいことが示された。
更に、バックグラウンドを極力抑えるために、ターゲット断片を増幅するときに用いるユニバーサルプライマーの必要最少量を検討した。forward/reverseプライマーをそれぞれ10,20,30,40,50pmol用いてPCRにかけ、産物をアガロースゲル泳動したところ、20pmol以下では産物量が減少することが確認できたので、ユニバーサルプライマーの必要最少量を30pmolと決定した。
実施例2 ヒト腫瘍細胞中の種々の遺伝子発現量の測定
(1)ノーザンハイブリダイゼーション法による測定
DNAアレイに乗せるターゲット断片を決定する過程で、前記の14種のヒト腫瘍細胞における52種の遺伝子のノーザンハイブリダイゼーションの結果を元に(実施例1(2)参照)、それぞれの遺伝子の発現量を画像解析した。なお、発現量は、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH,ACTB,RSP9)の発現量の平均値に対する相対値として表わした。
(2)DNAアレイによる測定
52種の遺伝子ターゲット断片を乗せたDNAアレイを作製し、ノーザンハイブリダイゼーションで用いた14種の細胞から抽出した全RNAを元に調製した蛍光DNAプローブを用いてハイブリダイゼーションを実施し、それぞれの遺伝子の発現量を測定した(方法の詳細は実施例1(3)と同じ)。なお、発現量は、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH,ACTB,RSP9)の発現量の平均値に対する相対値として表わした。
(3)ノーザンハイブリダイゼーション法とDNAアレイの相関
前記の14種のヒト腫瘍細胞における52種の遺伝子の発現量について、ノーザンハイブリダイゼーション法とDNAアレイで測定した結果の相関を調べるために回帰分析した(表4)。相関の程度(相関係数)は、遺伝子の種類によってまちまちであったが、20種の遺伝子については5%未満の危険率において有意な相関が認められた。9種の遺伝子については、有意ではなかったものの、相関する傾向が認められた(p<0.1)。3種のハウスキーピング遺伝子を含む12種の遺伝子(MTHFD1、SOD1、AK、E2F1、POLD、LIG3、RSP9、HPRT1、ACTB、UDG、GAPDH、LIG1)については、発現量のばらつきが細胞間で小さいため正規分布をしているとは言い難く、相関性は低い又は評価不能であった。
(4)DNAアレイの判定力
実際に医療現場で使用されることを想定した場合、診断(薬剤の適正使用)を使用目的とするこのようなツールは、通常ある閾値を境にして陽性又は陰性であると評価される。例えば、RT−PCR法で測定したTSやDPDのmRNAレベルを5−FUの適正使用の指標と見なした研究でも、レベルの高低を判断するための閾値が設定されている(Clinical Cancer Research,6,1322−1327,2000)。本発明のDNAアレイの診断判定力をノーザンハイブリダイゼーションと比較することにより以下の方法で評価した。
前記の14種のヒト腫瘍細胞を臨床検体に相当するものと見なし、すべての細胞について52種の遺伝子発現量を本発明のDNAアレイ及びノーザンハイブリダイゼーションにより測定した(それぞれの測定法において、測定ポイントは52種遺伝子×14種細胞=728ポイント算出された)。本発明のDNAアレイの測定値をもとに、各遺伝子について14種の細胞が示す発現量の中央値を求めた。中央値を基準とみなしたときの14種の細胞における相対的発現量(中央値に対する発現量の比)を算出した。閾値を2倍と設定し、相対的発現量が閾値を越える(2以上または0.5以下)較差が見られた細胞を「陽性」、閾値を越えないものを「陰性」と判定した。またノーザンハイブリダイゼーションによる判定結果を信頼性の高いものとみなし、本発明のDNAアレイによる判定結果が一致すれば「真」、一致しなければ「偽」と評価した。図4に示すように、陽性・陰性の判定結果が「真」であったのは82.3%と高率であった。また、陽性と判定された75ポイントのうち、77.3%(58/75)がノーザンハイブリダイゼーションの結果と一致した。また、相反する結果(例えば、両方とも真陽性だがノーザンハイブリダイゼーションによる相対的発現量が0.3で本発明のDNAアレイによる相対的発現量が2.5のようにまったく食い違っているという意味)は1例もなかった。このように、本発明のDNAアレイは、ノーザンハイブリダイゼーションとほぼ同程度の診断判定力があることが示された。
(5)DNAアレイの検出力
試験4の4)において、判定の対象となった728ポイント(52種遺伝子×14種細胞)のうち、測定不可能であった62ポイントについてはノーザンハイブリダイゼーションでも検出されたかった。このことより、本発明のDNAアレイはノーザンハイブリダイゼーションと同等以上の検出力を有していることが示された。
実施例3 可移植性ヒト腫瘍株中の種々の遺伝子発現量とTS−1に対する感受性との相関
(1)TS−1に対する感受性試験
本発明のDNAアレイを臨床応用する際、例えば癌組織中に発現している52種の遺伝子発現量と5−FU系抗癌剤の抗腫瘍効果との間の相関を解析することにより、感受性規定因子として実際にどの遺伝子が重要であるのかを見極めるために用いることが想定される。
本試験では、抗腫瘍効果を検討する実験モデルとして、11種の可移植性ヒト腫瘍株(xenograft。由来は、胃癌4株、大腸癌3株、肺癌2株、乳癌2株)のTS−1に対する感受性試験を実施した(TS−1は大鵬薬品工業(株)が開発した5−FU系抗癌剤の1種であり、5−FUのプロドラッグであるテガフール、DPD阻害剤であるギメラシル及びorotate phosphoribosyl transferaseの阻害剤であるオテラシルカリウムをモル比にして1:0.4:1にて含有している配合剤である)。各種xenograftをヌードマウスの背部皮下に移植し、100−200mm3の大きさに達したときに対照群(薬剤非投与群)とTS−1投与群に群分けし(1群あたり6匹)、翌日から1日1回、14日間連日TS−1を10mg/kg/day(FT量として)の用量で経口投与し、投薬終了翌日に腫瘍体積を測定して対照群の腫瘍体積と比較し、腫瘍増殖抑制率(inhibition rate,IR)を求めた。IRは以下の式により算出した。
IR(%)=(1−[TS−1投薬群の相対腫瘍体積]/[対照群の相対腫瘍体積])×100
(相対腫瘍体積)=(判定時の腫瘍体積)/(群分け時の腫瘍体積)
(2)本発明のDNAアレイによる測定
上記の11種のxenograftから抽出した全RNAを材料とし、52種の遺伝子の発現量を測定した。試験方法は、実施例2に準じて行った。なお、発現量は、3種のハウスキーピング遺伝子(GAPDH,ACTB,RSP9)の発現量の平均値に対する相対値として表わした。
(3)11種のxenograft中の遺伝子発現量とTS−1に対する感受性との相関
上記(1)および(2)の検討により得られた11種のxenograft中の52種の遺伝子発現量とTS−1に対する感受性(IR,%)との関連を調べるために、総当り(52通り)で回帰分析を実施した。その結果、相関係数(P値:Pearsonの積率相関係数)の絶対値が0.5を上回った遺伝子が4種(UDG,PCNA,TS,TK1)あった(図5)。P値は0.05以上0.1未満であり、統計上有意ではなかったものの、N数が11と少なかったこともあり、相関の傾向は回帰直線から見ても十分に判定できた。これら4種の遺伝子にTSが含まれていたことは注目に値する。TSは、5−FU系抗癌剤の感受性規定因子の代表的なものであり、TS発現量が高いと5−FU系抗癌剤は奏効しにくいとの知見が基礎・臨床の双方から得られている。本検討でも、TS発現量とTS−1の抗腫瘍効果の間には負の相関(r=−0.53)があった点でこれまでの知見と一致している。さらに、確認試験として測定精度が極めて高いとされているリアルタイムRT−PCR法により11種のxenograft中のTS発現量(GAPDHに対する相対発現量)を測定し、TS−1に対する感受性との相関を解析したところ、相関係数は−0.65で有意な(P=0.030)相関が認められた(図6)。この結果より、本発明のDNAアレイは5−FU系抗癌剤の感受性規定因子の候補を52種の遺伝子から絞り込む上で有用であることが示された。さらにN数を増やせば、臨床検体を用いて5−FU系抗癌剤の感受性規定因子を絞り込むことも可能であろうし、絞り込まれた遺伝子の発現量を解析することで、5−FU系抗癌剤の適正使用の指標とすることができる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、検体中の数十〜数百種の遺伝子発現を、一度だけの簡便なアッセイで定量性よく測定できる。本発明の測定法を用いて被検体(例えば癌患者の末梢血単核球や腫瘍組織から抽出した全RNA)中の、代謝拮抗剤系抗癌剤又はこれと他の抗癌剤の併用の作用機序に関連している遺伝子発現様式を解析することで、これらの抗癌剤の適正使用の指標とすることができる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、ユニバーサルプライマーの配列と、ターゲット断片が組み込まれたクローンの構造を示す図である。
図2は、プローブを合成するための鋳型となるDNAフラグメントを遺伝子の異なるリージョンから設定すると、特異性に差異がある場合があることを示すノーザンハイブリダイゼーションの画像の実例を示す図である。
図3は、ノーザンハイブリダイゼーションにおいて全RNA量と測定値の間の相関を示す図である。
図4は、本発明の診断判定力をノーザンハイブリダイゼーションと比較することで評価したことを示す図である。
図5は、11種のxenograftのTS−1に対する感受性と52種の遺伝子のうち相関関係の高かった4種の遺伝子発現量との相関を示す図である。
図6は、11種のxenograftのTS−1に対する感受性とTS発現量との相関を示す図である。
Claims (7)
- 核酸代謝関連酵素遺伝子群、遺伝子修復関連酵素遺伝子群、薬剤耐性関連因子遺伝子群及びハウスキーピング遺伝子群の各群からの少なくとも2種以上を含む少なくとも13種以上の標的遺伝子の断片であって、
次のステップ1)及び2)、
1)データベースを利用したホモロジー検索により、標的遺伝子に特異性の高い断片を選択するステップ、
2)1)のステップで選択された断片をプローブとして腫瘍細胞から得られたRNAに対してノーザンハイブリダイゼーションを行い、標的遺伝子に対する特異性を確認するステップ、
を行うことにより選択された断片を、基板上に固定化してなることを特徴とする代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定用DNAアレイ。 - 基板上への各断片の固定量が、腫瘍細胞における標的遺伝子の発現量に応じて調節されている請求項1記載のDNAアレイ。
- ステップ2)で選択された断片を、配列番号1及び2で示される塩基配列を有するユニバーサルプライマーを用いるPCRにより取得するものである請求項1又は2記載のDNAアレイ。
- 核酸代謝関連酵素遺伝子群が、少なくともチミジル酸シンターゼ遺伝子、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ遺伝子、オロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、チミジンホスホリラーゼ遺伝子及びチミジンキナーゼ1遺伝子を含む遺伝子群であり;
遺伝子修復関連酵素遺伝子群が、少なくともDNA切除修復蛋白ERCC1遺伝子及びウラシル−DNAグリコシラーゼ遺伝子を含む遺伝子群であり;
薬剤耐性関連遺伝子群が、少なくともトポイソメラーゼ1遺伝子、P−グリコプロテイン遺伝子、平衡ヌクレオシドトランスポーター1遺伝子及び多剤耐性関連蛋白1遺伝子を含む遺伝子群であり;
ハウスキーピング遺伝子群が、グリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子、β−アクチン遺伝子及び40Sリボソーム蛋白S9遺伝子から選ばれる2種以上の遺伝子群である請求項1〜3のいずれか1項記載のDNAアレイ。 - 各標的遺伝子断片が、200〜600bpである請求項1〜4のいずれか1項記載のDNAアレイ。
- 少なくとも次の(A)、(B)、(C)及び(D)の断片を、基板上に固定化してなることを特徴とする代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定用DNAアレイ。
(A)配列番号3で示される塩基配列を有するチミジル酸シンターゼ遺伝子断片、配列番号4で示される塩基配列を有するジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ遺伝子断片、配列番号5で示される塩基配列を有するオロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子断片、配列番号6で示される塩基配列を有するチミジンホスホリラーゼ遺伝子断片及び配列番号7で示される塩基配列を有するチミジンキナーゼ1遺伝子断片を含む核酸代謝関連酵素遺伝子群の断片;
(B)配列番号28で示される塩基配列を有するDNA切除修復蛋白ERCC1遺伝子断片及び配列番号29で示される塩基配列を有するウラシル−DNAグリコシラーゼ遺伝子断片を含む遺伝子修復関連遺伝子群の断片;
(C)配列番号37で示される塩基配列を有するトポイソメラーゼ1遺伝子断片、配列番号38で示される塩基配列を有するP−グリコプロテイン遺伝子断片、配列番号39で示される塩基配列を有する平衡ヌクレオシドトランスポーター1遺伝子断片及び配列番号40で示される塩基配列を有する多剤耐性関連蛋白1遺伝子断片を含む薬剤耐性関連遺伝子群の断片;
(D)配列番号52で示される塩基配列を有するグリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ遺伝子断片、配列番号53で示される塩基配列を有するβ−アクチン遺伝子断片及び配列番号54で示される塩基配列を有する40Sリボソーム蛋白S9遺伝子断片から選ばれる2種以上のハウスキーピング遺伝子群の断片。 - 請求項1〜6のいずれか1項記載のDNAアレイに、癌患者由来の体液検体又は組織検体から得られたmRNAを鋳型として合成した標識cDNAプローブをハイブリダイズさせることを特徴とする当該体液検体又は組織検体の代謝拮抗剤系抗癌剤又は当該抗癌剤と他の抗癌剤との併用に対する感受性の測定方法。
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