JPWO2002103086A1 - コネクター用ワイヤーおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、電気、電子機器部品等のコネクター材料として使用されるコネクター用ワイヤーおよびその製造方法に関する。
背景技術
電気、電子機器部品等のコネクター材料として、従来、例えば特許第2742702号公報にはオス電気接栓や電子部品のリード線として使用されるめっき線が開示されている。この技術によれば、導電性のよい銅または銅合金を線材料とし、この線材料上に下地めっきとしてニッケルめっきまたは銅めっきを施し、この下地めっき上に錫または錫合金を施しためっき線構造となっている。
ところで、このような従来のめっき線では、下層めっきの種類がめっき後の製品の性能に影響を及ぼすものとなっている。例えば、銅めっきを採用した構造では、上層の錫または錫合金めっきとの相性がよく、上層の錫または錫合金が高温により液化した際にも銅表面がこの液化金属に容易にぬれるという長所がある反面、上層の錫または錫合金めっき層に対する素地金属からの有害金属の拡散防止効果が少なく、時間の経過とともに素地金属からの有害金属の拡散が進行することによってはんだぬれ性が著しく低下する短所をもっている。
一方、下層にニッケルめっきを採用した構造では、上層の錫または錫合金めっき層に対する素地金属からの有害金属の拡散防止効果は非常に優れているが、上層の錫または錫合金めっきとの相性については、上記の銅めっきを採用した構造の方が優れており、上層めっきの高温液化時におけるはんだぬれ性についても、銅めっきを採用した構造よりも劣るという短所がある。
本発明は、従来技術において、下層めっきとして銅またはニッケルを採用した構造の短所をいずれも解消し、上層の錫または錫合金めっき層に対する素地金属からの有害金属の拡散防止効果を有し、下層めっきにおける優れた特性を維持させながら、常に安定したはんだぬれ性をもつコネクター用ワイヤーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
発明の開示
本発明のコネクター用ワイヤーは、電気・電子機器部品のコネクター材料に使用されるコネクター用ワイヤーであって、銅または銅合金からなる線材料上にニッケルめっき層および銅めっき層が順に積層された2層からなる下層めっき層が形成され、この下層めっき層上に錫または錫合金からなる上層リフローめっき層が形成されていることによって特徴づけられる。
このコネクター用ワイヤーを製造する方法は、銅または銅合金からなる線材料上にニッケルめっき層および銅めっき層を順に積層することにより、これら2層からなる下層めっき層を形成し、この下層めっき層上に錫めっきまたは錫合金めっきを施した後、加熱リフロー処理を行なうことにより、上層リフローめっき層を形成することによって特徴づけられる。
本発明のコネクター用ワイヤーの線材料としては、黄銅、リン青銅など従来から用いられる材質を使用することができる。また、線材料の断面形状は、略正方形、円形など任意の形状とすることができる。
本発明のコネクター用ワイヤーによれば、時間が経過しても、常に安定したはんだぬれ性を確保することができる。これは、以下の作用によって達成されるものである。
まず、下層めっき層として銅または銅合金からなる線材料上にニッケルめっき層を施すことにより、上層めっき層の皮膜中に有害金属が拡散されるのを防ぐことができる。つまり、この拡散防止効果によって、時間が経過しても安定したはんだぬれ性を確保することができる。従来のように、下層めっき層として銅めっき層を採用した場合、このニッケルめっき層に比べ、上層めっき層に対する素地金属からの有害金属の拡散防止効果が低く、時間の経過とともに、上層めっき層への皮膜中への有害金属の拡散が進行し、環境条件によっては上層めっき層の表面が変色したり、はんだぬれ性が劣化する。本発明ではこうした不具合が解消される。
次に、ニッケルめっき層上に銅めっき層を施すことにより、はんだ付け時に銅めっき層が融解はんだとの界面となり、安定したはんだぬれ性を確保することができる。従来のように、下層めっき層としてニッケルめっき層を施しただけの場合、上層めっき層が比較的薄いコネクター用ワイヤーでは、上層めっき層に発生する可能性のあるピンホールなどの欠陥が生じた場合、下層めっき層が環境による悪影響を受け、はんだぬれ性が悪化する。本発明ではこうした不具合が解消される。
さらに、上層の錫めっきまたは錫合金めっきを施した後に加熱リフロー処理を施すことにより、上層めっき皮膜中に共析した光沢剤などの有機物や水分などの不純物が蒸発・除去されてめっき皮膜中の純度が向上する。これにより、実装時のはんだ付け不良や回路短絡事故などを引き起こすこれら不純物による悪影響を回避できる。この結果、品質が向上し、製品の信頼性を高めることができるとともに経済性においても有益である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。
第1図は本発明のコネクター用ワイヤーの実施形態を示す模式的断面図である。
コネクター用ワイヤー1は、黄銅からなる断面形状が略正方形の角線11の表面に、下層めっき層の第1層としてニッケルめっき層12が施され、このニッケルめっき層12上に下層めっき層の第2層として銅めっき層13が施されている。さらに、この銅めっき層13上に上層めっき層としてリフロー錫めっき層14が施されている。
このコネクター用ワイヤー1を製造する方法は、まず、黄銅からなる断面形状が略正方形の角線11の表面にニッケルめっき層12および銅めっき層13を順に積層することにより、これら2層からなる下層めっき層を形成する。その後、この銅めっき層13上に上層めっき層として錫めっき層14を施した後、加熱リフロー処理を行ない、その後直ちに急冷することによって製造される。
本実施形態のコネクター用ワイヤー1の製造においては、下層めっき層の第1層のニッケルめっき層12を施すためのめっき液として、ワット浴やスルファミン酸浴等のニッケルめっき液が使用される。また、下層めっき層の第2層として銅めっき層13を施すためのめっき液は、シアン浴や硫酸浴等の銅めっき液が使用される。さらに、上層めっき層の錫めっき層を施すためのめっき液は、硫酸浴やアルカリ浴および有機スルフォン酸浴等の錫めっき液が使用される。なお、本実施形態では上層めっき層として錫めっき層14が形成されているが、これに替えて、錫合金めっき層を施してもよい。この場合、ホウフッ化浴や有機スルフォン酸浴等の錫合金めっき液を使用する。
また、リフロー処理を施す手段としては、電気・ガスなどを使用した雰囲気炉や高周波誘導炉などの加熱装置を使用することができる。また、このリフロー処理直後に冷却を行う方法として、水・湯などの液体中を通す方法が採用できる。
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
本発明の実施例1は、断面形状が略正方形で、その一辺が0.64mmの黄銅製の角線上に、膜厚0.5μmのニッケルめっき層、膜厚0.5μmの銅めっき層、膜厚1.5μmの錫上層リフローめっき層が順に積層されてなる。
この実施例1との比較のために、従来技術による比較例1、比較例2を作成し、これらを評価する。
[比較例1]
比較例1は、実施例1と同様の角線上に、膜厚1.0μmのニッケル下層めっき層、膜厚1.5μmの錫上層リフローめっき層が順に積層されてなる。
[比較例2]
比較例2は、実施例1と同様の角線上に、膜厚1.0μmの銅下層めっき層、膜厚1.5μmの錫上層リフローめっき層が順に積層されてなる。
以上の実施例1、比較例1および比較例2の外観およびはんだぬれ性について、種々の条件下で加熱試験を行った後の経時的な変化、さらに加熱試験後、SO2ガス雰囲気中に放置した後の経時的な変化の評価を行なった。この評価結果を表1に示す。
評価内容のうち、「外観」とは、変色の発生がなく、初期と同レベルの外観を保持しているか否かを評価したものであり、これを保持している場合は「○」を、また変色の発生が見られる場合は「×」を附すことにより、その評価を表す。「はんだぬれ性」とは、上層めっき層すなわち錫上層リフローめっき層が施された後、ぬれ、はんだの付着面積、外観の3項目についての試験(はんだぬれ性試験)を行い、「はんだぬれ性」の評価はこれらの総合的な評価として表した。この評価は、使用可能とされるものを「○」(合格)、使用条件によっては使用可能とされるものを「△」(条件付き合格)、使用が不可能とされるものを「×」(不合格)として表す。
本評価における加熱試験は、上層めっき層に対する素地金属からの有害金属の拡散による影響の評価を行なうことを目的としており、130℃の高温雰囲気中に試験材料を曝すことにより、拡散を促進させて行なうものである。例えば、下層めっき層に銅が用いられている場合、上層めっき層に対する素地金属からの有害金属の拡散は、時間の経過とともに常温でも進行するが、これを高温雰囲気中に曝すことにより、短時間で試験結果を得るようにしたものである。またSO2ガス雰囲気を用いた理由は、SO2ガスは、純錫に対しては変色させるなどの影響を与えないが、亜鉛などの一部有害金属を含む錫に対してはこれを変色させる作用があることから、こうした有害金属の拡散の影響による変色という外観の評価を行なうことができるとともに、こうした変色部位におけるはんだぬれ性の評価を行なうことができることによる。
<実施例2、3、4>
本発明の実施例2、3、4は、断面形状が略正方形で、その一辺が0.64mmの黄銅製の角線上に、それぞれ膜厚0.25μm、0.5μm、1.0μmのニッケルめっき層およびニッケルめっき層とそれぞれ同じ膜厚の銅めっき層が下層めっき層として順に積層され、この下層めっき層上に膜厚1.0μmの錫上層リフローめっき層が積層されてなる。
この実施例2〜4との比較のために、従来技術による比較例3〜8を作成し、これらを評価する。
[比較例3〜5]
比較例3、4、5は、実施例1と同様の角線上に、それぞれ膜厚0.5μm、1.0μm、2.0μmニッケル下層めっき層が形成され、この下層めっき層上に膜厚1.0μmの錫上層リフローめっき層が積層されてなる。
[比較例6〜8]
比較例6、7、8は、実施例1と同様の角線上に、それぞれ膜厚0.5μm、1.0μm、2.0μm銅下層めっき層が形成され、この下層めっき層上に膜厚1.0μmの錫上層リフローめっき層が積層されてなる。
以上の実施例2〜4、比較例3〜8について、初期および加速経時処理後のはんだぬれ性について評価を行なった。この評価結果を表2に示す。
ここで行なわれた加速経時処理とは、試験片を一定の高さに吊るし、その下方から蒸留水を沸騰させることにより、試験片を常に水蒸気に曝した状態とし、環境による試験片の経時的な変化を調べる方法である。本試験では、試験片を温度100℃、湿度90%の条件で、24時間曝した後のはんだぬれ性を評価した。
この各試験における試験片の上層めっき層の膜厚は、1.0μmとしたが、これはコネクター用ワイヤーに用いられる膜厚が比較的薄いことを考慮し、実用に則した条件として設定されたものである。これにより、上層めっき層に発生する可能性のあるピンホールなどの欠陥によって、下層めっき層が受ける影響について評価できる。
表1から明らかなように、下層めっき層として銅めっきのみを採用した場合は、経時的に上層めっき層に有害金属の拡散が進行し、外観およびはんだぬれ性の悪化がみられる。これに対し、下層めっき層の第1層としてニッケルめっき層を用いた実施例1および下層めっきとしてニッケルめっき層を用いた比較例1では、有害金属の拡散防止効果が高く、時間が経過しても安定したはんだぬれ性が確保される。
また、表2から明らかなように、下層めっき層がニッケルめっき層のみの構成である比較例3〜5では、上層めっき層に発生する可能性のあるピンホールなどの欠陥により、ニッケル下層めっき層が環境による悪影響を受け、はんだぬれ性が劣化する。従って、本実施例2〜4のように、下層めっきの第2層として環境によるはんだぬれ性の悪影響を受けにくい銅めっき層を施した構成とした場合、はんだ付け時に銅めっき層が融解はんだとの界面となり、安定したはんだぬれ性が確保される。
以上のように、本発明に係るコネクター用ワイヤーでは、下層めっき層としてニッケルめっき層および銅めっき層が順に積層された2層構造としたので、下層めっき層としてニッケルめっき層のみ、あるいは銅めっき層のみの構造の不具合をいずれも解消することができる。つまり、本発明に係るコネクター用ワイヤーによれば、製品を劣化させずに保存することができ、また、時間が経過しても良好なはんだぬれ性を確保することができる。
なお、本実施形態では、線材料の断面形状が略正方形であるもの(角線)を用いたが、これに限ることなく、例えば、断面形状が円形である丸線を用いることもできる。
また、各めっき層の膜厚は、各実施例におけるめっき層の膜厚に限定されることなく、本請求の範囲に含まれる3層からなるめっき層の構成であれば、膜厚は適宜選択可能であることはいうまでもない。
産業上の利用可能性
以上のように、本発明に係るコネクター用ワイヤーおよびその製造方法では、時間が経過しても製品を劣化させずに保存することができ、しかも、優れたはんだぬれ性を確保できる点で有用である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施形態を示す模式的断面図である。
Claims (2)
- 電気・電子機器部品のコネクター材料に使用されるコネクター用ワイヤーであって、銅または銅合金からなる線材料上にニッケルめっき層および銅めっき層が順に積層された2層からなる下層めっき層が形成され、この下層めっき層上に錫または錫合金からなる上層リフローめっき層が形成されていることを特徴とするコネクター用ワイヤー。
- 電気・電子機器部品のコネクター材料に使用されるコネクター用ワイヤーを製造する方法であって、銅または銅合金からなる線材料上にニッケルめっき層および銅めっき層を順に積層することにより、これら2層からなる下層めっき層を形成し、この下層めっき層上に錫めっきまたは錫合金めっきを施した後、加熱リフロー処理を行なうことにより、上層リフローめっき層を形成することを特徴とするコネクター用ワイヤーの製造方法。
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