JPWO2002077223A1 - 新規アミノペプチダーゼおよびその遺伝子 - Google Patents

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Abstract

本発明の目的は、難分解性ペプチドを効率良く分解する麹菌由来のアミノペプチダーゼおよび該アミノペプチダーゼをコードする遺伝子を提供することである。本発明により、アスペルギルス・ニジュランス由来アミノペプチダーゼおよびこれをコードする核酸分子が提供される。特に、本発明により、配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質または、そのアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質、およびこれらをコードする核酸分子が提供される。

Description

発明の背景
本発明は、アミノペプチダーゼ及びそれをコードする遺伝子に関する。
醤油、味噌、その他のタンパク質加水分解物を含む天然調味料の製造に、麹菌が利用されている。たとえば、醤油は、製麹および発酵の2段階を経て製造される。主として、製麹段階において、麹菌(アスペルギルス(Aspergillus)属糸状菌)が生産する酵素によって原料が分解される。その際、醤油中の呈味性をよくするためには、諸味中の遊離アミノ酸の量を増加させることが重要である。
アミノ酸は、原料タンパク質から2つの段階を経て生成される。第一は、プロテアーゼによるタンパク質からのペプチドの放出であり、第二はペプチダーゼによって触媒されるペプチドの加水分解によるアミノ酸の生成である。
麹菌のペプチダーゼについては、アスペルギルス・オリゼやアスペルギルス・ソーヤ由来のもの(特開平11−346777号、DE95−1952648、WO9851163、WO9628542、WO9615504、WO9851803、WO9814599)について報告されている。そのなかでも、醤油製造においてはロイシンアミノペプチダーゼの重要性が示されている。しかしながら、これまで知られているロイシンアミノペプチダーゼについて耐塩性があるという報告はない。また、アスペルギルス属のロイシンアミノペプチダーゼの遺伝子については海附ら(特開平11−346777号)のアスペルギルス・ソーヤの報告があるが、該酵素の耐塩性についての報告はない。
また、バチルス属では耐塩性をもつロイシンアミノペプチダーゼの報告がある(Lee,G.D.ら、J.Appl.Microbiol.(1988),85(3))。
一方、浅野らはダイズが、その発芽過程において、種子中の貯蔵タンパク質を非常に短時間にアミノ酸まで分解することに着目し、ダイズ子葉中よりペプチダーゼ類(酸性アミノ酸含有ペプチドを効率的に分解するアミノペプチダーゼGX、及びロイシンアミノペプチダーゼ群)を見出し、ダイズタンパク質の効率的な加水分解を行うことに成功した(特開平9−294583号)。
ダイズのアミノペプチダーゼGXはその酵素学的諸性質から、これまでに報告されていない新規なアミノペプチダーゼであり、発芽大豆以外にはその存在は知られていない。ダイズのアミノペプチダーゼGXはN末端にグルタミン酸などの酸性アミノ酸を有するペプチドから、効率的にN末端の酸性アミノ酸を遊離する活性を有する。従って、本酵素の作用により、グルタミン酸の遊離率が高く呈味性の優れた醤油の製造が可能である。
二宮らはダイズのアミノペプチダーゼGXを遺伝子組換え技術を用いて大量生産することに成功した(特開2000−325090)が、この方法により生産したダイズのアミノペプチダーゼGXを醤油醸造に利用することは、GMO問題、コスト面等で困難である。
発明の開示
本発明は遊離アミノ酸含量が高く、呈味性の優れた醤油またはタンパク質分解物の製造に効果のある麹菌由来のアミノペプチダーゼおよび該アミノペプチダーゼをコードする遺伝子を提供することを目的とする。
本研究者らは上記課題を解決するために鋭意研究を行い、ダイズ由来アミノペプチダーゼGX遺伝子と相同性のある、アスペルギルス・ニジュランス(A.nidulans)ESTをプローブに用いることにより、アスペルギルス・ニジュランスのゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし、アスペルギルス・ニジュランス由来新規アミノペプチダーゼをコードするDNAを取得することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記(A)〜(D)のいずれかに示すタンパク質である:
(A)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(B)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
(C)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質、
(D)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
また本発明は、上記の(A)〜(D)のいずれかをコードする核酸分子、該核酸分子を含む組換え核酸分子、形質転換微生物宿主、および該形質転換微生物宿主を用いたアミノペプチダーゼの製造法である。特に本発明は、形質転換微生物宿主として形質転換糸状菌、とりわけ形質転換麹菌を含む。
また、本発明は、以下の1)〜8)の性質を有するアミノペプチダーゼである。
1)ロイシン、メチオニンをN末端に含むペプチド又はタンパク質を分解してロイシンあるいはメチオニンを遊離する。
2)至適pHが約7.0〜7.5である。
3)至適温度が約37〜45℃である。
4)食塩非存在下での活性を100%としたとき、3Mの食塩濃度下でも80%以上の残存活性を示す。
5)0℃、食塩非存在下、24時間保存の条件での活性を100%としたとき、0℃、3M食塩存在下、24時間保存の条件で80%以上の残存活性を示す。
6)pH7.5、0℃、24時間保存の条件での活性を100%としたとき、pH5.8〜9.5の範囲で0℃、24時間保存の条件で60%以上の残存活性を示す。
7)未変性−PAGEにより約550kD、還元、加熱SDS−PAGEにより22、33kDの分子量を示す。
8)活性化にコバルトイオン、或いは亜鉛イオンを必要とする。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、上述したとおり、麹菌由来のアミノペプチダーゼおよび、それをコードする核酸分子、および前記核酸分子を含む組換えDNAを含む形質転換微生物宿主、その形質転換微生物宿主を培養することを特徴とするアミノペプチダーゼの製造方法である。本明細書においては、本発明の麹菌由来アミノペプチダーゼタンパク質をPepEと記載し、PepEをコードする遺伝子をpepEと記載することがある。また、本明細書において、「アミノペプチダーゼ」とは、ペプチドのN−末端から順次アミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質をいう。
本発明のアミノペプチダーゼをコードする核酸分子は、アスペルギルス・ニジュランスの染色体DNA又はcDNAから取得することができる。具体的には、アスペルギルス・ニジュランス、例えばアスペルギルス・ニジュランスA26株の染色体DNAライブラリーから取得することができる。発芽大豆由来のアミノペプチダーゼGX(特開2000−325090)の遺伝子配列とアスペルギルス・ニジュランスESTデータベース中の相同性の高いEST断片の塩基配列を参考に、PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)プライマーを作製し、アスペルギルス・ニジュランス染色体DNAライブラリーを鋳型としたPCR法により本発明の核酸分子を含むクローンを取得することができる。PCR用プライマーの例としては、配列番号6及び7に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
また、本発明の核酸分子は、アスペルギルス・ニジュランスのポリ(A)RNAから調製したcDNAライブラリーから、例えば配列番号8及び9に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとするPCR、さらに配列番号10及び11に示すオリゴヌクレオチドをプライマーとする5’−RACEによって、取得することができる。上記のようにして得られるアスペルギルス・ニジュランスA26由来のPepEをコードする遺伝子を含むゲノムDNAの塩基配列を配列番号1に示す。また、cDNAの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号2に、アミノ酸配列のみを配列番号3を示す。ゲノムDNAとcDNAの塩基配列を比較した結果、ゲノムDNA中にはイントロンは見出されなかった。
本発明の核酸分子は、本発明のアミノペプチダーゼをコードするものであればよく、配列番号2に示す塩基配列のうち塩基番号72〜1628からなる塩基配列を有するDNAの他、5’末端側の不要な部分を除いたものも含まれる。「核酸分子」にはDNA、RNAおよびこれらのアナログも含まれる。使用する目的によっては、成熟タンパク質のみをコードするものであってもよい。また、コード領域において各アミノ酸をコードするコドンを同じアミノ酸をコードする他の等価のコドンに置換したものも本発明の核酸分子に含まれる。さらに、本発明の核酸分子は、コードされるアミノペプチダーゼの活性が損なわれない限り、1若しくは複数の位置での1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノペプチダーゼをコードするものであってもよい。ここで、「複数」とは、ペプチダーゼタンパク質の立体構造におけるアミノ酸残基の位置や種類によっても異なるが、通常2〜300個、好ましくは2〜170個、さらに好ましくは2〜50個、最も好ましくは2〜10個である。
上記のようなアミノペプチダーゼと実質的に同一のタンパク質をコードする核酸分子は、例えば部位特異的変異法によって、特定の部位のアミノ酸が置換、欠失、挿入、付加されるようにpepEの塩基配列を改変することによって得られる。また、上記のような改変された核酸分子は、従来知られている突然変異処理によっても取得され得る。突然変異処理としては、PepEをコードするDNAをヒドロキシルアミン等でインビトロ処理する方法、及びPepEをコードするDNAを保持するエシェリヒア属細菌を、紫外線照射またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工突然変異に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
また、上記のような塩基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位等には、麹菌の種あるいは菌株による差等、天然に生じる変異も含まれる。上記のような変異を有する核酸分子を、適当な細胞で発現させ、発現産物のPepE活性を調べることにより、PepEと実質的に同一のタンパク質をコードする核酸分子が得られる。また、変異を有するPepEをコードする核酸分子またはこれを保持する細胞から、例えば配列表の配列番号2に記載の塩基配列のうち、塩基番号72〜1628からなる塩基配列を有する核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、PepE活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を単離することによっても、PepEタンパク質と実質的に同一のタンパク質をコードする核酸分子が得られる。ここでいう「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成される条件をいう。この条件は個々の配列のGC含量や繰り返し配列の有無などに依存するため明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高い核酸分子同士、例えば65%以上の相同性を有する核酸分子同士がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸分子同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗滌条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。このような条件でハイブリダイズする遺伝子の中には途中にストップコドンが発生したものや、活性中心の変異により活性を失ったものも含まれる可能性があるが、それらについては、市販の活性発現ベクターにつなぎPepE活性を後述の方法で測定することによって容易に取り除くことができる。
また、本発明の核酸分子は、アスペルギルス属の他の種に属する微生物、例えばアスペルギルス・オリゼの染色体DNA又はcDNAから取得することもできる。具体的には、アスペルギルス・オリゼ、例えばアスペルギルス・オリゼRIB40(ATCC42149)のcDNAライブラリーからPCR法により取得することができる。上記アスペルギルス・ニジュランスのPepEの塩基配列をもとに、PCR用のオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、アスペルギルス・オリゼ、例えばアスペルギルス・オリゼRIB40の菌体より調製したcDNAライブラリーを鋳型とするPCRを行うことにより調製することができる。PCR用プライマーとしては、5’−RACE用には配列番号12及び13に示す塩基配列、3’−RACE用には配列番号14及び15に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。
上記のようにして得られるアスペルギルス・オリゼRIB40のpepEに対応する遣伝子cDNAの塩基配列及びアミノ酸配列を配列番号4に、アミノ酸配列のみを配列番号5に示す。配列番号2に示すアスペルギルス・ニジュランスのPepEのアミノ酸配列と配列番号4に示すアスペルギルス・オリゼの対応するアミノペプチダーゼのアミノ酸配列は、約77%の相同性を有しており、成熟タンパク質部分では約120アミノ酸残基が異なっている。アスペルギルス・オリゼのpepE対応遺伝子とアスペルギルス・ニジュランスのpepEとの相同性は、コード領域では約71%であった。
本発明の一つの実施態様において、本発明の核酸分子は、配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸からなり、かつ、ペプチドからアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む。また、本発明の別の実施態様では、本発明の核酸分子は、配列表の配列番号4に示す塩基配列のうち、塩基番号73〜1602からなる塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペプチドからアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードする核酸分子を含む。
以下に示す実施例においては、本発明の核酸分子は上記のようにして得られたDNAである。その塩基配列が明らかとなったので、アスペルギルス・ニジュランスA26もしくはアスペルギルス・オリゼRIB40、又はアスペルギルス・ニジュランスもしくはアスペルギルス・オリゼの他の菌株のゲノムDNAから、PCR又はハイブリダイゼーション等により、これらの菌株から対応するアミノペプチダーゼをコードする核酸分子を容易にクローニングすることができる。従って、そのような核酸分子も本発明の範囲である。
本発明の核酸分子は本発明のアミノペプチダーゼを製造するために使用することができる。
本発明の核酸分子は、麹菌等の糸状菌の育種、あるいはアミノペプチダーゼPepEの製造に利用することができる。例えば、本発明の一つの実施態様において、本発明のアミノペプチダーゼをコードするDNAを、糸状菌(例えばアスペルギルス・オリゼ)細胞内に好ましくはマルチコピーで導入することにより、PepE活性を増大させることができる。また、本発明の核酸分子を適当な宿主で発現させることにより、PepEを製造することができる。このようにして得られる麹菌等の糸状菌又はそれらより得られるPepEを、醤油、味噌、その他のタンパク質加水分解物を含む調味料等の製造に利用することができる。
本発明の核酸分子を導入する糸状菌としては、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・ニジュランス等のアスペルギルス属、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)等のニューロスポラ属、リゾムコール・ミーヘイ(Rhizomucor miehei)等のリゾムコール属に属する糸状菌が挙げられる。アスペルギルス属糸状菌が特に好ましい。
上記のような糸状菌に本発明の核酸分子を導入するためのベクターとしては特に制限されず、糸状菌の育種等に通常用いられているものを使用することができる。例えば、アスペルギルス・オリゼに用いられるベクターとしては、pUNG(Lee,B.R.et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,44,425−431(1995))、pMARG(Tsuchiya,K.et al.,Appl.Microbiol.Biotechnol.,40,327−332(1993))、pUSC(Gomi,K.et al.,Agric.Biol.Chem.51,2549−2555(1987))等が挙げられる。pUNGはアスペルギルス・オリゼniaD300(Minetoki,T.et al.,Curr.Genet.30,432−438(1996))のniaD−(硝酸資化能欠損)を相補するマーカーを、pMARGはアスペルギルス・オリゼM2−3(Gomi,K.et al.,Agric.Biol.Chem.,51(9),2549−2555(1987))のargB−(アルギニン要求)を相補するマーカーを、pUSCはアスペルギルス・オリゼNS4(Yamada,O.et al.,Biosci.Biotech.Biochem.,61(8),1367−1369(1997))のsC−(ATPスルフリラーゼ欠損)を相補するマーカーを、それぞれ有している。
これらのベクターのうち、pUNG及びpMARGは、グルコアミラーゼ遺伝子(glaA)のプロモーター及びα−アミラーゼ遺伝子(amyBのターミネーター)を有しており、該プロモーターの下流に本発明のDNA(例えば配列番号2において塩基番号72〜1628を含む領域)をフレームを合わせて挿入することにより、該プロモーター制御下でPepEを発現させることができる。また、pUSCはプロモーターを含んでいないので、これを用いる場合は、本発明のDNAを挿入したpUC19等のプラスミドとpUSCとの共形質転換(co−transformation)により宿主糸状菌に導入することによってPepEを発現させることができる。
また、以下の表1中に示した文献に記載されているベクター、プロモーター及びマーカーも宿主糸状菌に応じて使用することができる。表1中、プロモーターは天然にその制御下にある遺伝子がコードする酵素名で示してある。
Figure 2002077223
糸状菌の形質転換は、上記文献に記載されている方法の他、任意の公知の方法を採用することができる。例えばアスペルギルス・オリゼは以下のようにして形質転換することができる。
DPY培地(グルコース2%、ペプトン1%、酵母エキス0.5%、pH5.0)に菌体(分生子)を植菌し、30℃で24時間程度激しく振盪培養する。培養液をミラクロス(Myracloth、CALBIO CHEM社製)又は滅菌したガーゼ等で濾過し、菌体を回収し、滅菌水で洗浄し、水分をよく切る。この菌体を、試験管に入れ、酵素液(1.0%ヤタラーゼ(Yatalase、宝酒造(株)製)、または0.5%ノボザイム(NovoZyme、ノボノルディスク社製)及び0.5%セルラーゼ(例えばCellulase Onozuka、ヤクルト社製)、0.6M(NHSO、50mMリンゴ酸、pH5.5)を加え、30℃で3時間程度穏やかに振盪する。顕微鏡でプロトプラスト化の程度を観察し、良好であれば氷中に保存する。
上記酵素反応液をミラクロスで濾過して菌体残渣を除去し、プロトプラストを含む濾液に等量の緩衝液A(1.2Mソルビトール、50mM CaCl、35mM NaCl、10mM Tris−HCl、pH7.5)を加えて氷中に置く。これを0℃、1500〜2,500rpmで5〜10分間遠心した後、緩やかに停止させ、ペレットを緩衝液Aで洗浄し、適量の緩衝液Aに懸濁する。100〜200μlのプロトプラスト懸濁液に20μl以下のDNA溶液(5〜10μg)を加え、20〜30分氷中に置く。緩衝液B(60%ポリエチレングリコール6000、50mM CaCl、10mM Tris−HCl、pH7.5)を250μl加えて穏やかに混合し、再び緩衝液Bを250μl加えて穏やかに混合した後、さらに緩衝液Bを850μl加えて穏やかに混合し、20分室温で静置する。その後、10mlの緩衝液Aを加えて試験管を反転させ、0℃、1,500〜2,500rpmで5分間〜10分間遠心し、ペレットを500μlの緩衝液Aに懸濁する。
上記懸濁液の適量を、予め分注し保温しておいた5mlのトップアガーに加えて、下層培地(1.2Mソルビトールを含有し、マーカーに応じて調製した選択培地)に重層し、30℃で培養する。生育した菌体を選択培地に植え継いで、形質転換体であることを確認する。さらに、菌体から組換えDNAを調製し、制限酵素解析又はサザン解析等によって、本発明のDNAが導入されていることを確認しておくことが好ましい。
上記のようにして得られる形質転換体を、使用するプロモーターに適した条件で培養することによってpepEが発現し、PepEが得られる。例えば、アスペルギルス・オリゼを宿主に用い、プロモーターとしてグルコアミラーゼプロモーターを使用する場合には、小麦フスマ、リン酸カリウム等を含む培地に形質転換アスベルギルス・オリゼの胞子を懸濁し、約30℃にて約3日間培養することによりPepEを産生させることができる。必要に応じて培養物を蒸留水等で希釈し、ストマッカー等で処理することによってPepEを含む酵素粗抽出液を得ることができる。得られた粗抽出液はゲル濾過、種々のクロマトグラフィー等を用いることによって更にPepEを精製することもできる。得られたPepEは更に塩析、等電点沈殿、ゲル濾過、イオンクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等によって精製して、タンパク質の分解のために使用することができる。しかしながら、本発明の核酸分子を導入しPepE活性の向上した形質転換微生物の培養物をタンパク質分解酵素とともにタンパク質原料と直接混合してタンパク質またはその混合物に作用させることにより、遊離アミノ酸含量が高く、呈味の強いタンパク質加水分解物を得ることもできる。作用させるタンパク質原料としては、例えば大豆、小麦、小麦グルテン等が挙げられ、さらに脱脂大豆あるいは膨化や可溶化等の加工をされた種々のタンパク質あるいはこれらの種々の原料からの分離タンパク質であってもよい。
PepE活性は、例えば1mM Leu−pNA(50mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.5)0.75mlに酵素粗抽出液0.02ml、100mM塩化亜鉛0.015mlを加え、37℃で10分間反応させた、40%酢酸を0.25ml添加して反応を停止させた後、反応液の405nmの吸光度を測定することにより測定することができる。種々の調製物中の活性は1分間あたりに1μmolのパラニトロアニリドを生成する酵素活性を1ユニット(U)として比較することができる。
形質転換微生物の培養物または粗精製酵素をタンパク質に作用させる実用的条件としては、たとえば0.2〜50%濃度のタンパク質原料に形質転換微生物の培養物をタンパク質分解酵素存在下で混合し、5〜60℃にて4時間〜10日間反応させればよい。
反応終了後、未反応のタンパク質原料、菌体などの不溶物は遠心分離や濾過等、従来の分離法を用いて除去すればよい。また、必要に応じて減圧濃縮、逆浸透法などにより濃縮を行い、濃縮物は、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理により粉末化または顆粒化することもできる。かくして遊離アミノ酸含有量が高く、呈味性の強いタンパク質加水分解物を得ることができる。
実施例
実施例1.アスペルギルス・ニジュランスのpepEゲノムDNAのクローニング
発芽大豆由来のアミノペプチダーゼGXの配列をもとに、アスペルギルス・ニジュランスのESTデータベース(http://www.genome.ou.edu/fungal.html)を用いて、ホモロジー検索したところ、相同性の高いEST obd03a1.f1を見出した。
この情報を下に、アスペルギルス・ニジュランス ゲノムライブラリーからアスペルギルス・ニジュランスpepEのクローニングを以下のように行なった。
アスペルギルス・ニジュランス ゲノムライブラリーはFungal Genetics Stock Center(Kansas City,USA)より購入した。本ライブラリーはアスペルギルス・ニジュランスのゲノムDNAを制限酵素で切断した後、コスミドベクターに連結させ、エシェリヒア・コリに導入したものである。ライブラリーのスクリーニングは以下のようにおこなった。即ち、コスミドベクターを含む大腸菌を鋳型DNA源として、EST obd03a1.f1の塩基配列に基づいて合成した下記の配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いたPCRにより、目的遺伝子が含まれる大腸菌クローンをスクリーニングした。
Figure 2002077223
Figure 2002077223
<配列表フリーテキスト>
配列番号6,7:PCRプライマー
PCR反応は、94℃3分間の熱変性後、94℃30秒、52℃10秒、72℃30秒の反応を25サイクルで行なった。その結果、4個のクローンに目的遺伝子が含まれることが明らかとなった。これらのクローンよりコスミドベクターを回収し、塩基配列を決定した。本塩基配列およびこの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号2に、アミノ酸配列のみを配列番号3に示す。
本遺伝子をプラスミドpUC19に挿入して得られたプラスミドで形質転換されたエシェリヒア・コリJM109株は、プライベートナンバーAJ13856が付され2001年3月19日に経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1−1−1中央第6、郵便番号305−8566)に寄託され、受託番号FERM P−18263が付与され、平成14年3月11日付けで同センターにおいて受託番号FERM BP−7949として国際寄託へ移管されている。
実施例2.アスペルギルス・ニジュランスのpepE cDNAのクローニング
アスペルギルス・ニジュランスA26をYG培地(酵母エキストラクト0.5%,グルコース2.5%,微量元素0.1%、pH6.5)50mlで30℃、48時間振とう培養した(微量元素:FeSO・7HO 0.1%,ZnSO・7HO 0.88%,CuSO・5HO 0.04%,MnSO・4HO 0.015%,Na・10HO 0.01%,(NH)6MoO24・4HO 0.005%)。
菌体を回収し、液体窒素にて凍結後、乳鉢を用いて粉砕した。粉砕物より、RN easy Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いて全RNAの調製を行ない、Micro FAST Track Kit(Invitorogen社)を用いてmRNAの調製を行なった。このmRNAから、cDNA synthesis kit(Promega社)を用いcDNAを合成し、cDNA PCR Library Kit(TaKaRa社)を用いて、cDNAライブラリーの作製を行った。
cDNAライブラリーを鋳型として、アスペルギルス・ニジュランスゲノムDNA配列よりデザインした下記配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーに用いたPCRおよび5’−RACEにより、pepE cDNAのクローニングを行った。
Figure 2002077223
<配列表フリーテキスト>
配列番号8〜11:PCRプライマー
PCRの反応条件は、94℃9分間の熱変性の後、94℃30秒、55℃30秒、72℃30秒の反応を30サイクル行い、さらに72℃5分の反応を行った。その結果、配列番号8及び9のプライマーを用いたPCRにより約1800bpのDNA断片が、配列番号10及び11のプライマーを用いた5’−RACEにより約250bpの増幅断片が得られた。これらのDNA断片の塩基配列および塩基配列から予想されるアミノ酸配列を配列番号2に示す。
上記アスペルギルス・ニジュランスpepE cDNA断片を、pBluescriptに挿入して得られたプラスミドで形質転換されたエシェリヒア・コリJM109株は、プライベートナンバーAJ13857が付され、2001年3月19日に経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6、郵便番号305−8566)に寄託され、受託番号FERM P−18264が付与され、平成14年3月11日付けで同センターにおいて受託番号FERM BP−7950として国際寄託に移管されている。
実施例3.アスペルギルス・オリゼのpepE相同cDNAのクローニング
(1)アスペルギルス・オリゼcDNAライブラリーの構築
アスペルギルス・オリゼRIB40(ATCC42149)を、DPY培地50mlで30℃、64時間培養した。菌体をろ過により集め、1gを回収した。この菌体を直ちに液体窒素で凍結し、乳鉢で粉砕した後、RNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社)にて全RNAを得た。このRNAからmRNA Purification Kit(Pharmacia社)を用いてmRNAを精製し、cDNA PCR library kit(TaKARa社)または3’−RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends(GIBCO BRL)により、cDNAライブラリーを構築した。
(2)アスペルギルス・オリゼcDNAライブラリーのスクリーニング
実施例2で得たアスペルギルス・ニジュランスのPepE配列を参考に、配列番号12及び13で示したオリゴヌクレオチドをプライマーに用いた5’−RACEおよび配列番号14及び15を用いた3’−RACEによって、アスペルギルス・オリゼのpepEに相同なcDNAのクローニングを行った。
Figure 2002077223
Figure 2002077223
<配列表フリーテキスト>
配列番号12〜15:PCRプライマー
5’RACEのPCR反応は、95℃で9分熱変性した後、94℃30秒、53℃30秒、72℃1分の反応を35サイクル行った。これにより約1400bpのアスペルギルス・オリゼpepE断片を得た。3’RACEのPCR反応は、95℃で9分熱変性した後、94℃30秒、60℃30秒、72℃1分の反応を35サイクル行った。これにより約300bのアスペルギルス・オリゼのpepE相同遺伝子断片を得た。
上記遺伝子断片の塩基配列を決定したところ、全長pepE相同配列を含むことが明らかとなった。この塩基配列およびこの塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を配列番号4に示す。また、アミノ酸配列のみを配列番号5に示す。
本遺伝子配列をプラスミドpBluescriptに挿入して得られたプラスミドで形質転換されたエシェリヒア・コリDH5α株は、プライベートナンバーAJ13858が付され、2001年3月19日に経済産業省産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター、日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6、郵便番号305−8566)に寄託され、受託番号FERM P−18265が付与されて、平成14年3月11日付けで同センターにおいて受託番号FERM BP−7951として国際寄託に移管されている。
実施例4. アスペルギルス・オリゼにおけるpepEの発現
(1)形質転換アスペルギルス・オリゼの作製
実施例3で得たアスペルギルス・オリゼのpepE cDNAをpBluescriptのSmaIサイトに連結してプラスミドpBSAopepEを作成した。本プラスミドからpepE cDNAをEcoRI、XbaIで切り出し、マーカー遺伝子niaDを含むベクターpUNG1(Lee,B.R.et al.,Applied Microbiology Biotechnology,44,425−431(1995))のグルコアミラーゼプロモーターの下流に連結し、形質転換用のプラスミドpNGAPEを作成した。本プラスミドDNA10μgにより形質転換を行った。
DPY培地にアスペルギルス・オリゼniaD300株の分生子を植菌し、30℃で24時間振とう培養した。培養液を滅菌したガーゼでろ過し、菌体を回収し、滅菌水で洗浄した。この菌体を試験管に入れ、酵素液20ml(1.0%ヤタラーゼ(Yatalase,宝酒造(株)製))を加え、30℃で3時間穏やかに振とうした。顕微鏡でプロトプラスト化の程度を観察し、氷中に保存した。
上記酵素反応液をミラクロスでろ過して菌体残さを除去し、プロトプラストを含むろ液に等量の緩衝液A(1.2Mソルビトール、50mM CaCl、35mM NaCl、10mM Tris−HCl、pH7.5)を加えて氷中に置いた。これを0℃、1,500rpmで5分間遠心したのち、穏やかに停止させ、ペレットを10mlの緩衝液Aで2回洗浄し、1mlの緩衝液Aに懸濁した。
100μlのプロトプラスト懸濁液に10μlのDNA溶液(10μg)を加え、30分間氷中に置いた。緩衝液B(60%PEG(ポリエチレングリコール)6000、50mM CaCl、10mM Tris−HCl、pH7.5)を250μl加えて穏やかに混合し、再び緩衝液Bを250μl加えて穏やかに混合した後、さらに緩衝液Bを850μl加えて穏やかに混合し、20分間室温で静置した。その後、10mlの緩衝液Aを加えて、試験管を反転させ、0℃、1,500rpmで5分間遠心し、ペレットを500μlの緩衝液Aに懸濁した。
上記懸濁液をあらかじめ分注し保温しておいた5mlのトップアガー培地に加え、ツアペックドックス培地(1.2Mソルビトール、0.3%硝酸ナトリウム、0.2%塩化カリウム、0.1%リン酸カリウム、0.05%硫酸マグネシウム七水和物、0.002%硫酸第一鉄七水和物、2%グルコース、pH5.5)に重層し、30℃で培養した。生育した菌体10株をツアペックドックス培地に植え継いで、安定した形質転換体を得た。
(2)pepEの産生
上述のようにして得られた形質転換体を小麦フスマで培養し、その抽出液についてアミノペプチダーゼ活性を測定した。
小麦フスマ20g、リン酸カリウム0.3g、蒸留水14mlをよく攪拌した後、三角フラスコに入れ、120℃で30分間オートクレーブすることによって培地を作成した。胞子を十分形成させたシャーレに滅菌水8mlを注ぎ、攪拌して胞子懸濁液を調製し、これを前記培地に散布した。胞子を接種した培地を良く混和し、30℃で3日間培養した。上記のようにして作成したフスマ麹に10倍量の蒸留水を添加してストマッカーで5分間処理することで、酵素粗抽出液を得た。
上述のように調製した酵素粗抽出液中のアミノペプチダーゼ活性を以下のように測定した。即ち、1mM Leu−pNA(50mMリン酸ナトリウムバッファー、pH7.5)0.75mlに酵素粗抽出液0.02ml、100mM 塩化亜鉛0.015mlを加え、37℃で10分間反応させた後、40%酢酸を0.25ml添加して反応を停止した。反応液の405nmの吸光度を測定し、活性を測定した。活性は1分間あたりに1μmolのパラニトロアニリドを生成する酵素活性を1ユニット(U)とした。対照としてマーカー遺伝子のみを含むベクターDNAで形質転換して得られた形質転換体についても同様に酵素粗抽出液を調製し、前述した方法でアミノペプチダーゼ活性を測定した。
その結果、本発明の遺伝子を導入した株において顕著なアミノペプチダーゼ活性の上昇が認められた(表2)。従って、導入したアミノペプチダーゼ遺伝子が実際に発現し、アミノペプチダーゼが産生されたことが示された。
Figure 2002077223
実施例5.PepEの特性解析
(1)pepEの精製
小麦フスマ培地20gを300mlフラスコに入れ、120℃、20分間オートクレーブすることによって培地を作製した。
実施例4で作成したPepE高発現形質転換株の胞子懸濁液を調製し、これを前記培地に接種した。胞子を接種した培地をよく混和し、30℃で5日間培養した。途中48時間後に培地を撹拌して手入れを行った。
上記のようにして作製したフスマ麹を10倍量(w/w)の20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4),1mM EDTA,1mM PMSF(フェニルメタンスルフォニルフルオリド)に浸漬し、4℃で16時間静置後、ガーゼ濾過及び遠心分離(4℃、10分間、7,500rpm)により得られた上清を酵素粗抽出液とした。
この酵素粗抽出液に硫酸アンモニウムを添加し、40%−60%硫安沈殿画分を取得した。この沈殿を20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に溶解した。これを孔径0.45μmのフィルターで濾過した。あらかじめ、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、150mM NaClで平衡化した脱塩用カラム(アマシャムファルマシア製 HiTrap Desalting(25ml))に前述の濾液を供し、同緩衝液で溶出した。得られた活性画分を限外濾過することにより、濃縮した。
次に、あらかじめ、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)で平衡化した陰イオン交換カラム(アマシャムファルマシア製HiTrap Q−sepharose HP(25ml))に、上記で得た試料を吸着させ、カラム体積の3倍量の同緩衝液で洗浄した。洗浄後、緩衝液のNaCl濃度を0Mから1Mにカラム体積の20倍量で直線的に増加させて溶出した。溶出液中に回収された活性画分を、限外濾過にて濃縮した。
得られた試料を、HiLoad 26/60 Superdex 200pg(アマシャムファルマシア製)を用い、ゲル濾過クロマトグラフィーにより分画した。あらかじめ、20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)、150mM NaClで平衡化したこのカラムに試料を供し、同緩衝液で溶出して活性画分を回収した。以上の操作により、精製PepEを得た。
(2)PepEの活性測定
本酵素液のアミノペプチダーゼ活性の測定は以下のように行った。即ち、基質液(1mM Leu−pNA、50mM リン酸ナトリウムバッファー(pH7.5),2mM塩化コバルト)0.73mlに酵素粗抽出液0.02mlを加え、37℃で10分間反応させた後、40%酢酸を0.25ml添加して反応を停止した。本反応液の405nmの吸光値を測定し、活性値を算出した。なお、活性は1分間あたりに1μmolのパラニトロアニリドを生成する酵素活性を1ユニットとした。
以下に本酵素の酵素学的諸性質を示す。
(i)基質特異性
前記活性測定法において、Leu−pNAの代わりにX−pNAを用い、各種X−pNAの分解活性を測定した。Leu−pNAの分解活性を100とした時の相対活性を下表(表3)に示す。本酵素はN末端にLeuを含むペプチドを効率よく分解することがわかった。
Figure 2002077223
(ii)至適温度
前記活性測定法において、各種温度でLAP活性を測定した。37℃での活性値を100とした時の、相対活性を図1に示す。
(iii)反応液中食塩濃度の影響
前記活性測定法において、NaClを各濃度添加した際のLAP活性を測定した。NaCl無添加区の活性値を100とした時の、相対活性を図2に示す。本酵素は高濃度の食塩下でも、十分にその活性を保持していることがわかった。
(iv)至適pH
前記活性測定法において、50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.5)の代わりに、終濃度50mMとなるよう、各種pH緩衝液を反応液に加えた。リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中におけるLAP活性を100とした。各pHにおける活性を図3に示す。
(v)pH安定性
精製酵素を50mM各種pH緩衝液中、0℃で24時間保存した後、前記活性測定方法(pH7.5)でLAP活性を測定した。pH7.5リン酸緩衝液で保存した際の活性値を100とした時の相対活性値を表4に示す。
Figure 2002077223
(vi)食塩溶液中での安定性
精製酵素を0−4M NaCl,20mMリン酸緩衝液(pH7.5)中、0℃で24時間保存した後、保存塩濃度と同じ塩濃度の反応液中での活性を測定した。その結果を表5に示す。
Figure 2002077223
(vii)金属イオンの影響
前記活性測定法において、塩化コバルトの代わりに各種2価金属塩を用い、各種X−pNAの分解活性を測定した。塩化コバルトを加えた際のLeu−pNAの分解活性を100とした時の相対活性を表6に示す。
Figure 2002077223
本発明により、遊離アミノ酸含有量が高く、呈味の強いタンパク質加水分解物を得る手段が提供される。特に、多量の食塩を含む醤油醸造下でペプチドを効率よく分解するアミノペプチダーゼおよびこれをコードする核酸分子が提供され、これによって醤油またはタンパク質加水分解物の呈味性を更に高めることが可能となる。
本発明の核酸分子を発現可能な形態で導入された宿主は、本発明のタンパク質を産生するために利用することが可能となる。
【配列表】
Figure 2002077223
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【図面の簡単な説明】
図1は、PepE活性の温度依存性を示したグラフである。横軸は温度、縦軸は37℃における活性値を100としたときのロイシンアミノペプチダーゼ活性の相対値である。
図2は、PepEに対する反応液中の食塩濃度の影響を示すグラフである。横軸はNaCl濃度(M)、縦軸はNaCl無添加の場合の活性値を100としたときのNaCl濃度におけるロイシンアミノペプチダーゼ活性の相対値である。
図3は、PepE活性のpH依存性を示したグラフである。横軸はpH、縦軸はリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)中における活性値を100としたときのロイシンアミノペプチダーゼ活性の相対値である。

Claims (9)

  1. 下記(A)〜(D)のいずれかに示すタンパク質:
    (A)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (B)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (C)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質、
    (D)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質。
  2. 下記(A)〜(D)のいずれかに示すタンパク質をコードする核酸分子:
    (A)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (B)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (C)配列表の配列番号2のアミノ酸番号1〜519で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質、
    (D)配列表の配列番号4のアミノ酸番号1〜510で表されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質、
  3. 下記(a)〜(d)のいずれかに示すDNAである請求項2記載の核酸分子:
    (a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列のうち、塩基番号72〜1628からなる塩基配列を含むDNA、
    (b)配列表の配列番号4に記載の塩基配列のうち、塩基番号73〜1602からなる塩基配列を含むDNA、
    (c)前記(a)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするDNA、
    (d)前記(b)のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペプチドのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  4. 配列番号2又は配列番号4に示す塩基配列を有する請求項3記載の核酸分子。
  5. 請求項2記載の核酸分子を含む組換え核酸分子。
  6. 請求項2記載の核酸分子が発現可能な形態で導入された形質転換微生物宿主。
  7. 糸状菌又は酵母又はエシェリヒア属細菌である請求項6記載の形質転換微生物宿主。
  8. 請求項7記載の形質転換微生物宿主を培養し、前記形質転換微生物宿主に導入された核酸分子を発現させ、産生されたタンパク質を回収することを特徴とするアミノペプチダーゼの製造法。
  9. 以下の1)〜8)の性質を有するアミノペプチダーゼ
    1)ロイシン、メチオニンをN末端に含むペプチド又はタンパク質を分解してロイシンあるいはメチオニンを遊離する;
    2)至適pHが7.0〜7.5である、
    3)至適温度が37〜45℃である;
    4)食塩非存在下での活性を100%としたとき、3Mの食塩濃度下でも80%以上の残存活性を示す;
    5)0℃、食塩非存在下、24時間保存の条件での活性を100%としたとき、0℃、3M食塩存在下、24時間保存の条件で80%以上の残存活性を示す;
    6)pH7.5、0℃、24時間保存の条件での活性を100%としたとき、pH5.8〜9.5の範囲で0℃、24時間保存の条件で60%以上の残存活性を示す;
    7)未変性ポリアクリルアミドゲル上で550kDの分子量を示し、変性ポリアクリルアミドゲル上で22、33kDの分子量を示す;
    8)活性化にコバルトイオン、または亜鉛イオンを必要とする。
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