JPWO2002072628A1 - 生理活性を有するポリペプチドとこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド - Google Patents

生理活性を有するポリペプチドとこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド Download PDF

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Abstract

配列番号2のアミノ酸配列を有し、病原性大腸菌のベロ毒素と類似の生理活性を有するラット由来のポリペプチドと、このポリペプチドをコードし、配列番号1の塩基配列を有するポリヌクレオチドを提供する。このポリペプチドは、ベロ毒素の細胞毒性の解明や、病原性大腸菌感染に対する治療法の開発に有用である。さらにこのポリペプチドの生理活性は、運動機能抑制や神経細胞アポトーシスにしめされるように、神経変性に深く関与している。このため、このポリペプチドは、神経変性疾患の発生機序の解明や治療薬の開発に大きく貢献する。また、このポリペプチドは血管内皮細胞に存在し、血圧上昇作用を有することから、本態性高血圧の活性機序の解明や、新たな血圧硬化剤の開発にも利用することができる。

Description

技術分野
この出願の発明は、生理活性を有するポリペプチドと、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、病原菌ベロ毒素と類似した生理活性を有し、細胞毒性の解明や治療薬の開発等に有用な新規生理活性ポリペプチドと、このポリペプチドの大量製造等に有用なポリヌクレオチドに関するものである。
背景技術
腸管出血性大腸菌O157は、この菌が産生するベロ毒素(Verotoxin:VT)が溶血性尿毒症症候群を引き起こし、近年、大きな社会問題となってもいる。
この出願の発明者らは、この大腸菌O157のベロ毒素(VT1、VT2)を単離、精製し、その感染の有無を検査する手法を開発している(j.Mass Spectr.32:1140−1142,1997;愛知医報 第1483号:3−5,1996;愛知県衛生研究所年報dai25号:36,1997)。またこれらの毒素を用いて、ウサギから抗VT1抗体および抗VT2抗体を作成することにも成功している(日本生化学会 生化学第72巻第8号,2000)。
病原性大腸菌の感染は、それが産生するベロ毒素が極微量であっても感染者に劇的変化をもたらすことから、このベロ毒素と類似の生理活性を有する生体内物質の存在と、この物質に対する特異的受容体の存在が想定されてきた。
これらの生理物質とその受容体の機能が解明されれば、ベロ毒素のもつ細胞毒性効果を理解し、その病原性大腸菌感染に対する根本的な治療法の開発が可能となるものと期待される。しかしながら、現時点ではそのような生理活性物質や受容体については何ら知られていない。
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであって、病原性大腸菌O157等のベロ毒素と類似の生理活性を有する新規な生体内生理活性物質と、この物質をコードするポリヌクレオチドを提供することを課題としている。
発明の開示
この出願は、前記の発明を解決する発明として、以下の(1)〜(7)の発明を提供する。
(1)配列番号2のアミノ酸配列を有し、生理活性を有するラット由来の精製ポリペプチド。
(2)前記発明(1)のポリペプチドをコードする精製ポリヌクレオチド。
(3)配列番号1の蛋白質翻訳領域を構成する塩基配列を有する前記発明(2)のポリヌクレオチド。
(4)配列番号1の塩基配列またはその一部配列からなるポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズする非ラット動物由来のポリヌクレオチド。
(5)前記発明(4)のポリヌクレオチドから発現され、前記発明(1)のポリペプチドと50%以上の相同性を有するポリペプチド。
(6)配列番号3、4または5のアミノ酸配列を有し、生理活性を有する合成オリゴヌクレオチド。
(7)前記発明(1)のポリペプチドに対する抗体。
発明を実施するための最良の形態
発明(1)のポリペプチドは、配列番号2アミノ酸酸配列を有する単離・精製されたラット蛋白質であり、病原性大腸菌の産生するベロ毒素と類似もしくは同等の生理活性(細胞毒性)を有する。
発明(1)のポリペプチドは、ラットの組織から単離する方法、配列番号2のアミノ酸配列に基づき化学合成によってペプチドを調製する方法、あるいは配列番号2のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを用いて組換えDNA技術で生産する方法などにより取得することができるが、組換えDNA技術で取得する方法が好ましく用いられる。例えば、発明(3)のポリヌクレオチド(cDNAの蛋白質翻訳領域:ORF)を有するベクターからインビトロ転写によってRNAを調製し、これを鋳型としてインビトロ翻訳を行なうことによりインビトロで蛋白質を発現できる。またポリヌクレオチドを公知の方法により適当な発現ベクターに組換えれば、大腸菌、枯草菌等の原核細胞や、酵母、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の真核細胞で、ポリヌクレオチドがコードしている蛋白質を大量に発現させることができる。
発明(1)のポリペプチドをインビトロ翻訳でDNAを発現させて生産させる場合には、発明(3)のポリヌクレオチドを、RNAポリメラーゼプロモーターを有するベクターに挿入して組換えベクターを作製し、このベクターを、プロモーターに対応するRNAポリメラーゼを含むウサギ網状赤血球溶解物や小麦胚芽抽出物などのインビトロ翻訳系に添加すれば、発明(1)のポリペプチドをインビトロで生産することができる。RNAポリメラーゼプロモーターとしては、T7、T3、SP6などが例示できる。これらのRNAポリメラーゼプロモーターを含むベクターとしては、pCMV−SPORT、pKA1、pCDM8、pT3/T7 18、pT7/3 19、pBluescript IIなどが例示できる。
発明(1)のポリペプチドを、大腸菌などの微生物でDNAを発現させて生産させる場合には、微生物中で複製可能なオリジン、プロモーター、リボソーム結合部位、DNAクローニング部位、ターミネーター等を有する発現ベクターに、発明(3)のポリヌクレオチドを組換えた発現ベクターを作成し、この発現ベクターで宿主細胞を形質転換したのち、得られた形質転換体を培養すれば、このポリヌクレオチドがコードしているポリペプチドを微生物内で大量生産することができる。この際、任意の翻訳領域の前後に開始コドンと停止コドンを付加して発現させれば、任意の領域を含む蛋白質断片を得ることができる。あるいは、他の蛋白質との融合蛋白質として発現させることもできる。この融合蛋白質を適当なプロテアーゼで切断することによってこのポリヌクレオチドがコードする蛋白質部分のみを取得することもできる。大腸菌用発現ベクターとしては、pUC系、pBluescript II、pET発現システム、pGEX発現システム、pQE発現システムなどが例示できる。
発明(1)のポリペプチドを、真核細胞でDNAを発現させて生産させる場合には、発明(3)のポリヌクレオチドを、プロモーター、スプライシング領域、ポリ(A)付加部位等を有する真核細胞用発現ベクターに挿入して組換えベクターを作成し、真核細胞内に導入すれば、発明(1)のポリペプチドを真核細胞内で生産することができる。発現ベクターとしては、pKA1、pCDM8、pSVK3、pMSG、pSVL、pBK−CMV、pBK−RSV、EBVベクター、pRS、pYES2などが例示できる。また、pIND/V5−His、pFLAG−CMV−2、pEGFP−N1、pEGFP−C1などを発現ベクターとして用いれば、Hisタグ、FLAGタグ、GFPなど各種タグを付加した融合蛋白質として発現させることもできる。真核細胞としては、サル腎臓細胞COS7、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHOなどの哺乳動物培養細胞、出芽酵母、分裂酵母、カイコ細胞、アフリカツメガエル卵細胞などが一般に用いられるが、発明(1)のポリペプチドを発現できるものであれば、いかなる真核細胞でもよい。発現ベクターを真核細胞に導入するには、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法など公知の方法を用いることができる。
発明(1)のポリペプチドを原核細胞や真核細胞で発現させたのち、培養物から目的ポリペプチドを単離精製するためには、公知の分離操作を組み合わせて行うことができる。例えば、尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、超音波処理、酵素消化、塩析や溶媒沈殿法、透析、遠心分離、限外濾過、ゲル濾過、SDS−PAGE、等電点電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどが挙げられる。
発明(1)のポリペプチドには、配列番号2で表されるアミノ酸配列のいかなる部分アミノ酸配列を含むペプチド断片(5アミノ酸残基以上)も含まれる。これらのペプチド断片は抗体を作製するための抗原として用いることができる。また、発明(1)のポリペプチドには、他の任意の蛋白質との融合蛋白質も含まれる。例えば、グルタチン−S−トランスフェラーゼ(GST)や緑色蛍光蛋白質(GFP)との融合蛋白質などが例示できる。さらに、前記発明(1)のポリペプチドは、翻訳された後、細胞内で各種修飾を受ける場合がある。したがって、修飾された蛋白質も前記発明(1)の蛋白質の範囲に含まれる。このような翻訳後修飾としては、N末端メチオニンの脱離、N末端アセチル化、糖鎖付加、細胞内プロテアーゼによる限定分解、ミリストイル化、イソプレニル化、リン酸化などが例示できる。
発明(2)は、前記発明(1)のポリペプチドをコードする精製ポリヌクレオチドであり、ラットのゲノムDNA、そのmRNAおよびcDNA(具体的には配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド)、それらの相補鎖が含まれる。
発明(3)のポリヌクレオチドは、配列番号1の翻訳領域(ORF)を構成する塩基配列を含むポリヌクレオチド(cDNA)である。発明(1)のポリペプチドはどの細胞でも発現しているので、配列番号1の塩基配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、ラット細胞から作製したラットcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、発明(3)のポリヌクレオチドと同一のクローンを容易に得ることができる。あるいは、これらのオリゴヌクレオチドをプライマーとして、ラット細胞から単離したmRNAを鋳型とするRT−PCR法を用いて、目的cDNAを合成することもできる。
なお、一般に哺乳動物遺伝子は個体差による多型が頻繁に認められる。従って配列番号1の塩基配列において、1または複数個のヌクレオチドの付加、欠失および/または他のヌクレオチドによる置換がなされているポリヌクレオチドも発明(3)のポリヌクレオチドの範囲に含まれる。
同様に、これらの変更によって生じる、1または複数個のアミノ酸の付加、欠失および/または他のアミノ酸による置換がなされているポリペプチドも、ベロ毒素と類似の生理活性を有する限り、発明(1)のポリペプチドの範囲に含まれる。
発明(4)は、配列番号1もしくはそれらの一部連続配列からなるポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドであり、ラット以外の、ヒトを含めた全哺乳動物のゲノムDNAの一部領域(ゲノムDNA断片)、そのmRNAおよびcDNAが含まれる。ここで、ストリンジェント(stringent)な条件とは、配列番号1の塩基配列またはその一部連続配列(例えば10bp以上)からなるポリヌクレオチドと、ゲノムDNAとの選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、およびその他公知の条件によって定義される。すなわち、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、またはハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによってストリンジェンシー(stringency)は増加する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、NaCl約750mM以下およびクエン酸三ナトリウム約75mM以下、より好ましくはNaCl約500mM以下およびクエン酸三ナトリウム約50mM以下、最も好ましくはNaCl約250mM以下およびクエン酸三ナトリウム約25mM以下である。ストリンジェントな有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、最も好ましくは約50%以上である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上、より好ましくは約37℃以上、最も好ましくは約42℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、およびキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。また、ハイブリダイゼーション後の洗浄の条件もストリンジェンシーに影響する。この洗浄条件もまた、塩濃度と温度によって定義され、塩濃度の減少と温度の上昇によって洗浄のストリンジェンシーは増加する。例えば、洗浄のためのストリンジェントな塩条件は、好ましくはNaCl約30mM以下およびクエン酸三ナトリウム約3mM以下、最も好ましくはNaCl約15mM以下およびクエン酸三ナトリウム約1.5mM以下である。洗浄のためのストリンジェントな温度条件は、約25℃以上、より好ましくは約42℃以上、最も好ましくは約68℃以上である。発明(4)のポリヌクレオチドは、例えば、前記のポリヌクレオチドをプローブとして、以上のとおりのストリンジェントはハイブリダイゼーションおよび洗浄処理により、ラット以外のゲノムDNAから調製したゲノムライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。
発明(5)のポリペプチドは、前記発明(4)のポリヌクレオチドから産生させる非ラット動物由来のポリペプチドであって、前記発明(1)のラット由来ポリペプチドと50%以上、好ましくは75%以上、最も好ましくは90%以上のアミノ酸相同性を有し、発明(1)のポリペプチドと同様の生理活性を有するポリペプチドである。この発明(5)のポリペプチドは、発明(1)のポリペプチドと同様の公知の組換えDNA技術等により取得することができる。
発明(6)のオリゴペプチドは、発明(1)のポリペプチドの一部であって、それぞれ配列番号3、4および5の8アミノ酸残基からなるペプチドである。これらのオリゴペプチドは、後記実施例に示したように発明(1)のポリペプチドと同様の生理活性を有しており、細胞毒性の解明や薬剤等の開発に使用することができる。これらのオリゴペプチドは、公知のペプチド合成法によって作成することができる。
発明(7)の抗体は、発明(1)ポリペプチドを抗原として用いて動物を免役した後、血清から得ることが出きる。抗原としては配列番号2のアミノ酸配列に基づき化学合成したペプチドや、真核細胞や原核細胞で発現させたポリペプチド蛋白質を用いることが出きる。あるいは、上記の真核細胞用発現ベクターを注射や遺伝子銃によって、動物の筋肉や皮膚に導入した後、血清を採取することによって作製することができる(例えば、特開平7−313187号公報の発明)。動物としては、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどが用いられる。免疫した動物の脾臓から採取したB細胞をミエローマと融合させてハイブリドーマを作製すれば、ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生することができる。
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明するが、この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。
実施例
実施例1
cDNAのクローニング
以下のの手順にしたがって目的とするcDNAを純化した。
ラット脳より分離したmRNAを鋳型にしてcDNAを作成し、これを2本鎖とした後、λgt11系のベクターに組み込み、ラット脳のcDNAライブラリーを作成した。次いで、このcDNAライブラリーをパッケイジング後、宿主大腸菌に感染させ寒天培地上で培養してプラークを生じさせ、プラークに含まれる蛋白質をニトロセルロース膜に移し取ってレプリカを作成し、レプリカを抗VT2ウサギ抗体と反応させ、さらにパーオキシダーゼをラベルした抗ウサギIgGヤギ抗体を用いて抗VT2抗体陽性のプラークを検出する操作を3回以上繰り返し、cDNAを純化した。純化したcDNAを増幅し、塩基配列を決定した。
その結果、得られたcDNAクローンは、配列番号1の塩基配列からなることが確認された。
実施例2
インビトロ翻訳によるポリペプチドの産生
実施例1でクローニングしたcDNAよりmRNAを調製した。ウサギ網状赤血球のライゼートを用い、哺乳動物無細胞系の蛋白質合成系において上記mRNAより翻訳される蛋白質を得た。翻訳された蛋白質をSDS−電気泳動、ウエスタンブロット後、抗VT2抗体と反応する分子量5kDaのペプチドを確認した。
さらに、得られた分子量5kDaペプチドのN−末端から6アミノ酸残基の配列を決定し、クローン化されたcDNAのORF領域を決定した。
その結果、cDNAのORF領域にコードされている43アミノ酸残基からなるポリペプチドの理論上の分子量と、SDS−電気泳動で得られた分子量が一致していた。
実施例3
ポリペプチドに対する抗体の作製
実施例1で得たcDNAクローンがコードするポリペプチドのアミノ酸配列(配列番号2に基づき、配列番号3、4および5のアミノ酸配列のC−末端にCys残基を付加したオリゴペプチドを化学的に合成した。次いで、マレインイミドを用い、合成オリゴペプチドのそれぞれにハプテン(アセチル化されたウシ血清アルブミン)を共有結合させ、3種類の抗原分子を作成した。これらの抗原分子をフロイントの完全アジュバントと混合し、ウサギに接種して免疫した。免疫スケジュールは、4週間おきに3種類の抗原を3回接種とした。ELISA法にてウサギ抗体の産生を確認した後、最終的に、3種類の抗原をそれぞれのウサギに接種してブーストを行い抗血清を採取した。この抗血清から、プロテインG−セファロースを用いたアフィニティークロマト法にてIgG画分を精製し、配列番号3、4および5の各オリゴペプチドに対するウサギ抗体を得た。
得られた抗体はそれぞれ、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのN−末端側、中央部分およびC−末端側部分を認識するため、これらの抗体を組み合わせて使用することにより、ポリペプチドをより正確に確認することが可能である。
実施例4
ポリペプチドの発現分布
実施例1で得られたポリヌクレオチドの塩基配列(配列番号1)に基づいてPCRプライマーを合成し、公知のRT−PCT法によりラット各種臓器におけるmRNA発現量を定量した。対照としてβ−アクチンを定量し、これを1.0として標準化したデータを図1に示す。
図1の結果から明らかなように、このポリペプチドはラットの全身性に発現するが、中枢神経系(大脳、視床下部、小脳、延髄)で発現が多く、特に脊髄での発現が大きいことが確認された。そして、肝臓・腎臓と続き、最も少ない発現部位は骨格筋であった。
また、加齢に伴う発現量の増加が見られた。スプラグドーリー系ラットを長期飼育し、2−4ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、30ヶ月齢のラットの肝臓の病理標本を作成した。これらの病理標本でmRNAの発現の有無並びに発現量を比較するため、各標本でin situハイブリダイゼーションを行った。
結果は、図2に示したとおりであり、加齢に伴って発現量が増加した。24ヶ月齢では肝臓血管内皮細胞で発現が顕著であった。
実施例5
合成オリゴペプチドのin vivo生理活性
配列番号3、4および5のオリゴペプチドを合成し、それぞれ、10−6M濃度のオリゴペプチド溶液0.075mlを、ペントバルビタール麻酔下のラット第4脳室に投与した。
図3は、麻酔から覚醒した後のラットの状態である。ラットは動き回ることができず、無動の状態が以後2週間も継続し、摂食や摂水ができなかったため体重は著しく減少した。しかしながら、3週目に入ると運動機能は回復した。
さらに、3種の合成ペプチドをそれぞれラットに静脈注射すると、図4に示したように、用量依存的な血圧上昇が観察された。またこれらの血圧上昇はL−NAME(NO合成酵素阻害薬)前処置によって消失した。
実施例6
合成オリゴペプチドのin vitro生理活性
配列番号3、4および5の合成オリゴペプチドを、ラットの褐色細胞腫の細胞株PC12、およびヒト子宮頚部癌細胞株HeLa細胞の培地に添加した。
結果は図5に示したとおであり、神経細胞成長因子存在下のPC12細胞(Dif−PC12)では継代(p−4;p−19;p−36)に従って樹状突起が消失し、細胞数も19代(p−19)で減少した。また、神経細胞成長因子の非存在下のPC12細胞も、19代で細胞数が減少した。一方、ヒト由来のHeLa細胞では、4代および19代で細胞数が減少した。
継代した細胞からDNAを抽出し、電気泳動したところ、図6に示したように「はしご状」のバンドが観察され、アポトーシスによるDNA断片化が生じていることが確認された。
産業上の利用可能性
この出願の発明によって、病原性大腸菌のベロ毒素と同等もしくは類似の生理活性を有する新規ポリペプチドと、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。このポリペプチドは、ベロ毒素の細胞毒性の解明や、病原性大腸菌感染に対する治療法の開発に有用である。さらにこのポリペプチドの生理活性は、運動機能抑制や神経細胞アポトーシスにしめされるように、神経変性に深く関与している。このため、このポリペプチドは、神経変性疾患の発生機序の解明や治療薬の開発に大きく貢献する。また、このポリペプチドは血管内皮細胞に存在し、血圧上昇作用を有することから、本態性高血圧の活性機序の解明や、新たな血圧降下剤の開発にも利用することができる。
【配列表】
Figure 2002072628
Figure 2002072628
Figure 2002072628
Figure 2002072628

【図面の簡単な説明】
図1は、この発明のポリヌクレオチドから転写されるmRNA量を、ラットの各臓器ごとに示したグラフである。
図2は、この発明のポリヌクレオチドのラット肝臓におけるmRNA量を測定したin situハイブリダイゼーションの結果を示す。
図3は、この発明の合成オリゴペプチドを脳室投与したラットの状態を示す。
図4は、この発明の合成オリゴペプチドを静脈注射したラットの血圧変化を示す。
図5は、この発明のオリゴペプチドの存在下で培養した細胞形態の継代変化を示す。
図6は、図5に示した培養細胞から抽出したDNAの電気泳動像を示す。

Claims (7)

  1. 配列番号2のアミノ酸配列を有し、生理活性を有するラット由来の精製ポリペプチド。
  2. 請求項1のポリペプチドをコードする精製ポリヌクレオチド。
  3. 配列番号1の蛋白質翻訳領域を構成する塩基配列を有する請求項2のポリヌクレオチド。
  4. 配列番号1の塩基配列またはその一部配列からなるポリヌクレオチドがストリンジェントな条件下でハイブリダイズする非ラット動物由来のポリヌクレオチド。
  5. 請求項4のポリヌクレオチドから発現され、請求項1のポリペプチドと50%以上の相同性を有するポリペプチド。
  6. 配列番号3、4または5のアミノ酸配列を有し、生理活性を有する合成オリゴヌクレオチド。
  7. 請求項1のポリペプチドに対する抗体。
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