JPWO2002056020A1 - 生物学的アッセイシステム用の固形物質と重合体との複合体 - Google Patents

生物学的アッセイシステム用の固形物質と重合体との複合体 Download PDF

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Abstract

生物学的試料中の被検体(例えば、抗原、DNA等)を検出するためのシステムを用いることのできる表層に特定の重合体を有する金属または半導体の複合体が開示される。

Description

技術分野
本発明は、生物学的アッセイシステムに組み込むための複合体およびその複合体を含んでなる調製物に関する。
背景技術
生物学的試料中に存在する被検体を検出する方法として、多種多様な検出手段が提供されてきている。広範に使用されている手段に、光吸収分析を包含する比色を用いるものがある。このような比色を用いる興味深いものとして、メルカプトアルキルオリゴヌクレオチドで修飾した金のナノ粒子プローブに基づくポリヌクレオチドの検出方法が報告されている(R.Elghanian et al.,SCIENCE、Vol.277.1997、pp.1078−1081)。このプローブを用いる方法は高選択的、高感度でオリゴヌクレオチドが検出できることが教示されている。この方法では、標的のポリヌクレオチドとプローブ上のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを介して凝集体が生じると、プローブの粒子と該凝集体との間にプラズモン吸収の変化[一次分散ナノ粒子はピンク色(吸収位置520nm付近)から、粒径増大に伴なって紫色(吸収位置は長波長へシフト)へ]を利用するものである。また、金の薄膜上に2〜7個のエチレンオキシ(またはエチレングリコール)単位を有するメルカプト誘導体が付着した表面についての表面プラズモン共鳴を、生物学的試料中の被検体の検出に利用することも提案されている(A.Szabo et al.,Curr.Opin.Strnct.Biol.5(1995)699−705)。
しかし、これらのプローブおよび表面は、生物学的試料が血液やその他の体液のように、多種多様のタンパク質等の非特異的吸着が生じるおそれがあり、これらが検出結果に悪影響を及ぼす傾向がある。
発明の開示
上記のElghanian等のプローブが有する高検出感度を保持したまま、生物学的試料中の被検体以外の夾雑物の悪影響を殆ど乃至は全く受けることのない、検出系の提供が望まれるであろう。本発明の目的は、かような検出系に用いることのできる調製物を提供することにある。
本発明者らは、ポリエチレンオキシド(以下、PEGともいう)セグメントをベースにする重合体の片末端にメルカプト基を初めとする一定の官能基または、そのような官能基を側鎖に有するポリマーセグメントを有する重合体と特定の金属との複合体が、生物学的試料における被検体以外の夾雑物による悪影響を殆ど受けることなく、被検体を選択的かつ高感度で測定するのに使用できることを見出した。しかも、該金属がサブミクロンサイズ(約1000nm未満)の微粒子である場合には、該複合体はキャピラリー電気泳動にかけて取り扱うことができるほど水性溶液中で安定であることが確認できた。また、金属に代えて、特定の半導体と前記重合体との複合体も該金属を用いる場合に優るとも劣らない特性を有することを見出した。特に、M.Bruchez Jr.et al.SCIENCE Vol.281.1998、pp.2013〜2016に記載されているような、生物学的蛍光標識として提案されている半導体ナノ結晶(または粒子)が、上記金属に代えて都合よく使用できることが確認された。
さらに、前記重合体からなる表層を有する半導体ナノ結晶(または粒子)は、被検体の検出系における蛍光共鳴エネルギー移動のドナーとして使用できることを見出した。
したがって、本発明によれば、光の吸収波長の変化または蛍光の発光波長を利用する生物学的被検体の検出システムを構築するための固形物質と重合体との複合体を含んでなる調製物が提供される。そして、この調製物は、
該被検体が非共有結合的に特異的結合対を形成する構成員の1員となりうるものであり、
該固形物質が金属および半導体よりなる物質群から選ばれ、
該重合体がポリエチレンオキシド(PEG)セグメントをベースにするものであり、そして分子の一つの末端に被検体(構成員の1員)と特異的結合対を形成しうる構成員のもう一方の1員の残基またはもう一方の1員と共有結合しうる官能基を有し、もう一つの末端に前記物質の表面へ安定に結合しうる非共有電子対をもつ官能基または側鎖に非共有電子対をもつ1個もしくはそれ以上の官能基をもつポリマーセグメントを有しており、そして
該複合体が非共有電子対をもつ官能基と物質の表面との結合を介して形成される、
ことを特徴とするものである。
また、光の変化または蛍光の発光波長の変化を利用する生物学的被検体の検出システムを構築するための固形物質と重合体との前記複合体の使用も提供される。
さらにまた、前記複合体における重合体分子の一つの末端に被検体(例えば、抗原またはDNA)に対する第一抗体または第一相補鎖を有し、そして固体物質が半導体からなる複合体を用いる生物学的試料中の被検体の検出方法も提供される。該検出方法の好ましい態様では、被検体に対する第二抗体または第二相補鎖であって、一定の蛍光性色素で修飾されたものを検出用に共存させる。
本発明によれば、金属または半導体表面上で親水性でしかもモビリティの高いPEGが複数ブラシ状構造をとるものと推察されることからも理解できるが、該表面上への被検体以外のタンパク質等の非特異的吸着を避けることができる。一方、被検体はそれぞれ、特異的結合対を形成する構成員間の結合によって、特異的に吸着される。また、該表面へのPEGブラシ状構造物の結合は、水性溶液中で極めて安定であり、例えば、キャピラリー電気泳動処理を経ても、実質的に開裂しない。
また、本発明に従う一定の複合体は、それ自体、本発明者らが知る限り従来技術文献に未載である。したがって、詳細については後述するが、本発明によれば、新規な複合体も提供される。
発明を実施するための最良の形態
本発明に従う、複合体を形成する固形物質は、その形状は任意のものであることができるが、好ましくは、プレート、ストリップ、マイクロチップおよびサブミクロンサイズの微粒子であることを企図している。さらに、複合体の水性溶媒中での安定性を利用する観点に立てば、生物学的な被検体の検出システムにキャピラリー電気泳動を組み込むことのできる微粒子の形態であることが好ましい。サブミクロンサイズの語は、通常、粒子の平均径が1000μm未満であることを意味するが、本発明の目的に沿う場合は、、必ずしも1000μm未満であることに限定されず、極めてサイズが小さい粒子を意味するものとして使用している。しかし、一般的に、内径25〜100μmのキャピラリーを備えたキャピラリー電気泳動を行うことができるサイズであることが、本発明の微粒子のサイズとして理解されている。より具体的には、平均粒径は0.1nm〜数ミクロン、好ましくは1nm〜100nm、特に好ましくは、10nm〜100nmの範囲にある。このようなサイズの固体物質、(金属または半導体)微粒子の複合体を調製するには市販の微粒子を使用するか、或いは、例えば、それ自体既知の金属または半導体のコロイド状沈殿の生成法、それぞれの塩溶液の脱塩もしくは還元処理等を利用できる。
金属としては、例えば、被検体が複合体に結合することにより、その表面の形状の変化(例えば、厚くなる)に伴ないプラズモン吸収の変化が検出できるものであればその種類を問うことなく使用できる。しかし、好ましいものとしては金、銀、白金、アルミニウムを挙げることができる。一方、半導体は、蛍光を発光する半導体であれば、いずれの種類の半導体であってもよいが、例えば、III−V型(または3B族−5B族)に属するInP、InAsおよびGaAs等、ならびにII−VI型(または2B族−6B族)に属するCdS、CdSe、ZeSeおよびZeS等を好ましいものとして挙げることができる。
以上のような固形物質は重合体との複合体として提供される。本発明の目的に沿う重合体は、PEGセグメントをベース(もしくは主要部)にするものである。ベースにするとは、PEGセグメントが固体物質表面上に十分な親水性を付与し、そして生物学的試料における被検体以外の夾雑物の非特異的吸着を回避できるように作用する状態にあることを意味する。別の観点からは、重合体の1分子中にエチレンオキシドの反復単位を3以上好ましくは5以上、特に好ましくは10以上有することを、PEGセグメントをベースにすると称している。
重合体は、その分子の一つの末端にある一定の被検体と特異的結合対を形成しうる構成員のもう一方(被検体に対して)の1員の残基またはその1員と共有結合を形成しうる官能基を有する。この官能基は、非共有結合的(例えば、水素結合、疎水結合等)に特異的結合対を形成しうる構成員の1員たる被検体に対するもう一方の1員に共有結合しうるものである。本発明によれば、生物学的試料における被検体として、ポリ(もしくはオリゴ)ヌクレオチド、タンパク質、糖、ホルモン等を意図しており、そして、特異的結合対を形成しうる構成員の組み合わせとしては、抗原と抗体との対、ビオチンとアビジンとの対、糖とレクチンとの対、ホルモンもしくはシグナル伝達物質と対応する受容体タンパク質との対、酵素とその基質もしくは阻害剤との対、および一定のヌクレオチド配列からなる核酸断片と該配列とストリンジェントな条件下でハイブリッドを形成する核酸断片との対の利用を意図している。これらの対の構成員は、いずれが被検体であってもよい。なお、このような被検体を含む生物学的試料はヒトを初めとする哺乳動物由来の生物学的流体(尿、血液、等)や、組織切片が挙げられる。したがって、該官能基は、タンパク質、糖、ヌクレオチド中の官能基、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等と共有結合を形成しうる基であればよく、限定されるものでないが、それぞれ、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基、メルカプト基等であることができる、特に、緩和な還元アミノ化反応により、アミノ基と共有結合を形成しうるアルデヒド基が好ましい。本発明に関し、アルデヒド基は、その保護された形態である、アセタールまたはケタールの形態をも包含する概念で使用している。
重合体は、もう一つの末端に金属または半導体からなる固体物質表面へ安定に結合しうる非共有電子対をもつ官能基または側鎖に非共有電子対をもつ1個もしくはそれ以上の官能基をもつポリマーセグメントを有している。ここにいう、結合は、該表面への官能基を介する化学吸収(吸着)によるものであり、配位結合または半イオン性結合に類するものと推定できる。したがって、かような官能基としては、限定されるものでないが、メルカプト基(−SH)、スルフ−低級アルキル基(−S−Alk)、第二級アミン残基(=NH)、第三級アミン残基(=N−)を挙げることができる。なお、本明細書全体を通じて、低級アルキル基と称する場合には、炭素数1〜6個の直鎖もしくは分枝のアルキル基を意味し、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、sec.−ブチル、tert.−ブチル、ペンチル、ヘキシル等を挙げることができる。したがって、上記のスルフ−低級アルキルは、メチルチオ(−SCH)、エチルチオ(−SC)等を挙げることができる。
このような基または残基を末端に有するとは、重合体のPEGセグメントに適当な二価の基(例えば、アルキレン)および/または他のポリマーセグメント(例えば、ポリラクチド、ポリプロピレンオキシド、等)を介するか、適当な化合物の残余部を介して上記のような官能基が共有結合していることを意味する。したがって、重合体の一方の末端は、例えば、
Figure 2002056020
(ここで、kは1〜8の整数である)がPEGセグメントに共有結合していてもよいし、或いは、システイニル(Cys−)、メチオニル(Met−)もしくはアルギニル(Arg−)等がPEGセグメントに共有結合していてもよい。また、これらの残基を側鎖にもつポリマーセグメントとは、例えば、上記のようなアミノ酸残基を反復単位とするポリマーセグメントや、ポリアミンセグメントをいい、本発明で用いる重合体では、これらのセグメントが必要により連結基(例えば、−COO−、−CONH−、−NH−等)を介してPEGセグメントに共有結合しているか、他のポリアミンセグメントが、同様にPEGセグメントに共有結合している。なお、本発明に関連していうところの「ポリマー」という接頭辞は、当業者に共通に認識されているポリマーだけでなく、反復単位が数個からなるオリゴマーの概念も包含するものとして使用している。以上に挙げた重合体は、殆どが公知であり、また、新規であっても、公知の重合体と同様に製造することができる。
末端にメルカプト基を有する重合体の代表例としては、下記式(I)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2002056020
上式中、L、LおよびLは独立して、原子価結合またはリンカーを表し、但し、mが0である場合には、LとLは一緒になって原子価結合または1個のリンカーとなることができ、
Bは式
Figure 2002056020
を表し、ここでRおよびRは独立して、水素原子、低級アルキル基であり、そしてpは2〜5の整数であり、
Xは水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基を表すか、あるいは特異的結合対を形成しうる構成員の1員の残基を表すが、但し、Xが水素原子のときはLが原子価結合であり、
mは0〜10,000の整数であり、そして
nは10〜20,000の整数である。なお、特異的結合対は上記の意味を有する。
これらの重合体は、例えば、特開平11−322917号公報に記載の方法に従って製造することができる。
他方、官能基を側鎖にもつポリマーセグメントを有する重合体の代表例としては、下記式(II)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2002056020
上式中、R′、R′およびR′は独立して低級アルキル基を表し、
′はC1−6アルキレンまたは原子価結合を表し、
X′は水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基を表すか、あるいは特異的結合対を形成しうる構成員の1員の残基を表すが、但し、X′が水素原子であるときはL′が原子価結合であり、
m′は1〜10,000の整数であり、
n′は10〜20,000の整数であり、そして
p′は2〜6の整数である。なお、特異的結合対は式(I)について定義したのと同義である。
これらの重合体は、例えば、Y.Nagasaki et al.,Macromol.Rapid Commun.1997、18、827またはK.Kataoka et al.,Macromolecules 1999、32.6892−6894に記載の方法に従って都合よく製造することができる。これらの重合体のうち、特に、製造の容易さの観点から好ましいものとしては、式(II)における、R′、R′およびR′がそれぞれメチル基であり、L′−X′が−CHCHCHOであり、そして、p′が2である、重合体を挙げることができる。
本発明の複合体の形成は、重合体を溶解しうる溶体、例えば、水、テトラヒドロフラン、低級アルカノール、芳香族炭化水素中で溶媒が液体状態を維持しうる温度において、金属または半導体と重合体(特異的結合対を形成する構成員の1員と共有結合しうる官能基は場合によって保護しておき)を複合体が形成できるのに十分な時間接触させればよい。金属または半導体が微粒子である場合には、それらの原料となりうる塩等の希釈液から微粒子を調製する際に、重合体を共存させてもよい。
通常、金属または半導体の原子またはモル当量当たり、10倍以上(理論的に上限はない。)、好ましくは10〜10倍の重合体を金属または半導体と接触させればよい。
こうして、金属または半導体表面上にPEGをベースとする重合体がブラシ状に結合した複合体を得ることができる。重合体の結合割合は、限定されるものでないが、例えば金粒子を用いる場合、複合体全体のゼータ電位が±1mV以内の中性粒子となるようにするのがよい。
こうして調製された複合体は、例えば、特異的結合対を形成する構成員の1員と共有結合しうる官能基(例えば、アルデヒド基:−CHO)が保護されている場合(例えば、アセタール残基:−CH(OC)には、さらに必要により、その後保護基(この例ではアセタール)を離脱し、前記1員と共有結合させてもよい。
本発明の調製物は、このような重合体を、必要により、緩衝剤や、溶媒、さらに上記官能基を有する場合には、必要により、上記共有結合を形成しうる縮合剤等と共に含むことができる。
こうして、提供できる調製物または組成物は、重合体が官能基を有する場合には、上述のように、例えば、プローブとしてのオリゴヌクレオチド、抗原もしくは抗体等を複合体に共有結合することにより、生物学的アッセイシステム中に組み込んで使用できる検出手段を提供できる。例えば、蛍光を発光する半導体粒子を用いて複合体を形成した場合、使用する半導体の種類や粒径によって蛍光の発光位置が異なるものを作成できる。したがって、異なる種類の半導体を用いた複合体に、それぞれ異なる、例えばオリゴヌクレオチドプローブを担持させておくと、それらに相補性の核酸もしくはその断片を多重検出しうる検出システムを構築できる。このような使用態様の概念図を図1に示す。
また、上記のように調製した半導体表層に被検体(例えば、抗原またはDNA)特異的結合対を形成しうる構成員の1員(例えば、第一抗体または相補鎖DNA)が共有結合した重合体を有する複合体を用いて生物学的試料中の被検体を検出する場合には、上記抗原またはDNAに対する、それぞれ第二抗体または第二相補鎖(第一相補鎖と重複しない部分で被検体DNAに相補的である)を蛍光性色素で修飾したものを、該検出系に共存させると、半導体−重合体(第一抗体または第一相補鎖DNA)−被検体(抗原またはDNA)−第二抗体または第二相補鎖からなるコンジュゲートが形成され、半導体と蛍光性色素との組み合わせを選択することにより、半導体から蛍光性色素へのエネルギー移動が起こり、蛍光性色素が本来発光する波長と異なる波長でコンジュゲートを発光させることが可能である。本発明に従う複合体は、このような検出系で使用することもできる。
したがって、本発明によれば、生物学的試料中の被検体(例えば、抗原またはDNA)の検出方法において、本発明の半導体粒子を含んでなる複合体における重合体が、特異的結合対を形成しうる構成員の一員として被検体に対する、例えば、第一抗体または少なくとも1部は相補性を有する第一相補鎖を重合体の一端に共有結合したものであり、かような重合体と半導体からなる複合体、ならびに被検体に対する第二抗体または第一相補鎖と異なる部分に相補性を有する第二相補鎖であって、蛍光性色素で修飾されたものを、該生物学的試料と一緒にし、そして半導体から蛍光性色素への蛍光共鳴エネルギー移動により生じる蛍光性色素の異なる波長での発光の存在を被検体の存在の指標とすることを特徴とする検出方法が提供できる。かような半導体と蛍光性色素との組み合わせの例は、半導体の発光スペクトルと蛍光性色素の吸収スペクトルとが重複するものが挙げられる(Willard et al.,Nano Lett.,Vol.No.9.2001,pp.469−474参照)。かような組み合わせに使用できる蛍光性色素としては、限定されるものでないが、テキサスレッド、FITC、Alexa Fluor 532(Molecular Probe製)、BODIPY493/503(Molecular Probe製)、BODIPY FL(Molecular Probe製)、BODIPY TR(Molecular Probe製)、Eosin(Molecular Probe製)、Fluorescein(Molecular Probe製)、Oregon Green 488(Molecular Probe製)、Rhodamine Green dye(Molecular Probe製)、Rhodamine Red dye(Molecular Probe製)などが挙げられる。
以下、特定の例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明をこれらの例に限定することを意図するものではない。
実施例1:半導体粒子複合体の製造法:
この実施例では、使用重合体(下記式で示されるα−acetal−PEG−PAMA):
Figure 2002056020
(上述のKataoka et al.,Macromolecules、1999、32、6892−6894に記載の方法に従って得られた。PEG Mw=5000g/mol、PAMA(ポリ[(2−N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート])の重合度m=68)を分散安定剤として用いCdS半導体粒子を作成した。
蒸留水40ml中に、上記α−acetal−PEG−PAMA 1.05×10−7molを溶解し、CdCl 6×10−5mol、NaS・9HO 6×10−5molの順で添加し、次いで、室温で24時間撹拌した。こうしてCdS複合体を得た。
得られたCdS複合体懸濁液を、装置としてP/ACE(商標)システムMDQ(ベックマン・コールター株式会社)を用い、そして光源Arレーザー(488nm)にて励起、520±10〜20nmで蛍光の発光を解析するキャピラリー電気泳動にかけた。なお、粒子(複合体)の移動相として、100mMリン酸緩衝溶液を用いた(pH7.5)。
結果を図2に示す。
実施例2:金粒子複合体の製造法:
使用重合体:下記式で示されるα−acetal−PEG−SH(Mn=5000)
Figure 2002056020
Acetal−PEG−SH:HAuCl=1/6:1(モル比)
の比で混合した水溶液にHAuClに対して10倍モル量のNaBHを添加し、還元法により金コロイドを調整した。末端アセタール基をpH2塩酸で処理しアルデヒド基に返還後、p−アミノフェニル−β−D−ラクトピラノシドと反応し、ラクトース−PEG−SHで修飾した金コロイド水溶液(平均粒径:8.7nm)を得た。この金コロイド−リン酸緩衝水溶液(pH7.5)を実施例1と同条件でキャピラリー電気泳動した。結果を図3に示す。
なお、Acetal−PEG−SHは、下記のとおりに製造した。
アルゴン置換した受器中に蒸留テトラヒドロフラン(THF)20mlと開始剤3,3−ジエトキシ−1−プロパノール0.2mmol(0.032ml)を加え、さらに当量のカリウムナフタレンを加えて15分撹拌することでメタル化を行った。その後、エチレンオキシド22.7mmol(1,135ml)を加え、室温で2日間撹拌し重合させた。停止剤としてN−スクシンイミゾル−3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)0.4mmol(0.125g)を少量の蒸留THFに溶解させ、この溶液に対し前記の重合反応溶液を等圧滴下漏斗にて氷冷下で滴下した。一晩撹拌して停止反応を行った後に、飽和食塩水洗浄・クロロホルム抽出、エーテル再沈、ベンゼン凍結乾燥を経て、ポリマーを回収した。回収したポリマーはH−NMRにて構造を確認し、末端に導入されたSPDP残基の量は、2−メルカプトエタノールと反応させることによって遊離した2−チオピリドンのUV吸収によっても確認した。
PEG−SS−Py 2.0×10−2mmol(100mg)を蒸留水4mlに溶解させ、さらに5倍mol量のジチオトレイトール0.1mmol(15.42mg)を加え、室温で30分撹拌した。反応後、飽和食塩水洗浄・クロロホルム抽出・エーテル再沈を経てポリマー(以下、PEG5000と略記する)を回収した。回収したポリマーはH−NMRによって構造を確認し、さらに2−ピリジルジスルフィド(2−PDS)との反応により、末端SH基の定量を行った。
実施例3:
テキサスレッドアビジン(Molecular Probe社製)0.3μmol/L溶液に調製したビオチン化PEG(biotin−PEG−PAMA)を表層に有するCdS粒子を0.025、0.25及び2.5mmol/mL加え、蛍光分光器(日立蛍光光度計F−2500)を用い400nmの励起波長にて測定を行った。結果を図4に示す。
このエネルギー移動度をCdS濃度に対してプロットすると比例関係が得られ(図5参照)、定量性が確認された。
なお、上記CdS粒子は次のごとく調製した:
ガラス容器中において未反応PEG除去後のα−Acetal−PEG−PAMA(PEG/PAMA=5000/14000)0.5gに酢酸水溶液22mlを加え、35℃で5時間撹拌し末端のアセタール基をアルデヒドに変換した。反応後、10mol/1−NaOH37.4mlを用いて中和し、Biocytin Hydrazide(PIERCE社製)1.0×10−3mol(0.038g)を加え2時間撹拌し反応させた。この溶液にNaBHを2.6×10−4mol加え、還元した後、未反応のビオチン、NaBHを除去するために1日間水透析を行った(水交換3回)、透析終了後、凍結乾燥により回収し、H−NMR測定を行い、ビオチンの導入を確認した。
バイアルに超純水8ml、上で調製したbiotin−PEG−PAMA2.465×10−6mol(0.048g)を入れ、30分間撹拌し溶解させた。その後、スターラーで撹拌中に、CdCl溶液、NaS溶液(それぞれ2.0×10−5mol)を順に添加し、1時間撹拌を行った。サンプルは暗所で保管し、1日後、蛍光スペクトル測定を行った。
産業上の利用分野
本発明によれば、生物学的試料中の被検体と安定なコンジュゲートを形成でき、かつ、光の吸収波長の変化または蛍光の発光波長の変化をもたらすことのできる複合体が提供される。したがって、本発明は生物学的試料の検出業またはそのような検出試薬の製造業において利用できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に従う、半導体複合体の調製物を用いる被検体DNAの多重検出法の概念図である。図中のR、GおよびBは、それぞれ、赤、緑および青に着色していることを意味し、それらの記号にアポストロフィが付されているものは対応するものから色調が変化した着色を意味する。
図2は、実施例1で得られたCdS複合体のキャピラリー電気泳動の結果を示すエレクトロフェログラムである。
図3は、実施例2で得られたAu複合体のキャピラリー電気泳動の結果を示すエレクトロフェログラムである。
図4は、実施例3に記載する本発明に従う、複合体粒子(ビオチン化PEGを表層に有する半導体CdS粒子:特異的結合対を形成しうる構成員がビオチンである。)と蛍光性色素テキサスレッドで修飾したアビジンとの混合液の吸収極大の強度の変化を示す図である。半導体から蛍光性色素への蛍光エネルギーの移動が濃度依存的に生じることが示されている。
図5は、複合体粒子濃度とテキサスレッドで修飾したアビジンの発光強度の関係を示すグラフである。

Claims (23)

  1. 光の吸収波長の変化または蛍光の発光波長の変化を利用する生物学的被検体の検出システムを構築するための固形物質と重合体との複合体を含んでなる調製物であって、
    該被検体が非共有結合的に特異的結合対を形成しうる構成員の1員となりうるものであり、
    固形物質が金属および半導体よりなる物質群から選ばれ、
    重合体がポリエチレンオキシド(PEG)セグメントをベースにするものであり、そして該重合体分子の一つの末端に該特異的結合対を形成しうる構成員のもう一方の1員の残基または該もう一方の1員と共有結合しうる官能基を有し、そしてもう一つの末端に前記固形物質の表面へ安定に結合しうる非共有電子対をもつ官能基または側鎖に非共有電子対をもつ1個もしくはそれ以上の官能基をもつポリマーセグメントを有しており、そして
    複合体が非共有電子対をもつ官能基と物質の表面との結合を介して形成されている、
    ことを特徴とする調製物。
  2. 固形物質が、金、銀、白金およびアルミニウムよりなる群から選ばれる金属である請求項1記載の調製物。
  3. 固形物質が、蛍光を発光する半導体である請求項1記載の調製物。
  4. 固形物質がIII−V型(または3B族−5B族)ならびにII−VI型(または2B族−6B族)に属する半導体よりなる群から選ばれる請求項1記載の調製物。
  5. III−V型に属する半導体が、InP、InAs、およびGaAsよりなる群から選ばれ、そしてII−VI型に属する半導体がCdS、CdSe、ZeSeおよびZeSよりなる群から選ばれる請求項4記載の調製物。
  6. 固形物質がサブミクロンサイズの粒子である請求項1に記載の調製物。
  7. 固形物質が2種以上の蛍光を発光する半導体をそれぞれ含んでなる複合体の組み合わせである請求項3に記載の調製物。
  8. 重合体が、構成員の1員と共有結合しうる官能基として、アルデヒド基を有するものである請求項1に記載の調製物。
  9. 重合体が、非共有電子対をもつ官能基として、メルカプト、スルフ−低級アルキル、第二級アミン残基および第三級アミン残基よりなる群から選ばれる基を有するものである請求項1に記載の調製物。
  10. 重合体が式(I)
    Figure 2002056020
    (上式中、L、LおよびLは独立して、原子価結合またはリンカーを表し、但し、mが0である場合には、LとLは一緒になって原子価結合または1個のリンカーとなることができ、
    Bは式
    Figure 2002056020
    を表し、ここでRおよびRは独立して、水素原子、低級アルキル基であり、そしてpは2〜5の整数であり、
    Xは水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基を表すか、あるいは被検体と特異的結合対を形成しうる構成員のもう一方の1員の残基を表すが、但し、Xが水素原子のときはLが原子価結合であり、
    mは0〜10,000の整数であり、そして
    nは10〜20,000の整数である。)
    で表される請求項1に記載の調製物。
  11. 重合体が式(II)
    Figure 2002056020
    (上式中、R′、R′およびR′は独立して低級アルキル基を表し、
    ′はC1−6アルキレンまたは原子価結合を表し、
    X′は水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基を表すか、あるいは被検体と特異的結合対を形成しうる構成員のもう一方の1員の残基を表すが、但し、X′が水素原子であるときはL′が原子価結合であり、
    m′は1〜10,000の整数であり、
    n′は10〜20,000の整数であり、そして
    p′は2〜6の整数である。)
    で表される請求項1に記載の調製物。
  12. 特異的結合対が、抗原と抗体との対、ビオチンとアビジンとの対、糖とレクチンとの対、ホルモンもしくはシグナル伝達物質と対応する受容体タンパク質との対、酵素とその基質もしくは阻害剤との対、および一定のヌクレオチド配列からなる核酸断片と該配列とストリンジェントな条件下でハイブリッドを形成する核酸断片との対からなる群より選ばれる請求項1に記載の調製物。
  13. 検出システムにおける被検体の検出に際し、キャピラリー電気泳動の使用を伴う請求項6または10に記載の調製物。
  14. サブミクロンサイズの半導体粒子と、式(II)
    Figure 2002056020
    (上式中、R′、R′およびR′は独立して低級アルキル基を表し、
    ′はC1−6アルキレンまたは原子価結合を表し、
    X′は水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基を表すか、あるいは特異的結合対を形成しうる構成員の1員の残基を表すが、但し、X′が水素原子であるときはL′が原子価結合であり、
    m′は1〜10,000の整数であり、
    n′は10〜20,000の整数であり、そして
    p′は2〜6の整数である。)
    で表される重合体とが該粒子の表面に式(II)中の第三級アミン残基を介して結合した形態にある複合体。
  15. 半導体が、III−V型(または3B族−5B族)ならびにII−VI型(または2B族−6B族)に属するものよりなる群から選ばれる請求項12記載の複合体。
  16. III−V型に属する半導体が、InP、InAs、およびGaAsよりなる群から選ばれ、そしてII−VI型に属する半導体がCdS、CdSe、ZeSeおよびZeSよりなる群から選ばれる請求項12記載の複合体。
  17. 式(II)におけるR′、R′およびR′がそれぞれメチル基であり、L′−X′が基
    Figure 2002056020
    ドの残基、
    (ここで、qは1〜6の整数である。)
    である請求項13または14記載の複合体。
  18. 光の吸収波長の変化または蛍光の発光波長の変化を利用する生物学的被検体の検出システムを構築するための固形物質と重合体との複合体の使用であって、
    被検体が非共有結合的に特異的結合対を形成しうる構成員の1員となりうるものであり、該複合体における固形物質が金属および半導体よりなる物質群から選ばれ、該重合体がポリエチレンオキシド(PEG)セグメントをベースにするものであり、そして該重合体該重合体分子の一つの末端に該特異的結合対を形成しうる構成員のもう一方の1員の残基または該もう一方の1員と共有結合しうる官能基を有し、そしてもう一つの末端に前記固形物質の表面へ安定に結合しうる非共有電子対をもつ官能基または側鎖に非共有電子対をもつ1個もしくはそれ以上の官能基をもつポリマーセグメントを有しており、そして
    該複合体が非共有電子対をもつ官能基と物質の表面との結合を介して形成されている、
    ことを特徴とする使用。
  19. 複合体が式(II)
    Figure 2002056020
    (上式中、R′、R′およびR′は独立して低級アルキル基を表し、
    ′はC1−6アルキレンまたは原子価結合を表し、
    X′は水素原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはアルデヒド基を表すか、あるいは特異的結合対を形成しうる構成員の1員の残基を表すが、但し、X′が水素原子であるときはL′が原子価結合であり、
    m′は1〜10,000の整数であり、
    n′は10〜20,000の整数であり、そして
    p′は2〜6の整数である。)
    で表される重合体とInP、InAs、GaAs、CdS、CdSe、ZeSeおよびZeSよりなる群から選ばれる半導体とから形成される請求項18記載の使用。
  20. 請求項10または11に記載の式(I)または式(II)で表される重合体のうち、XまたはX′が非共有結合的に特異的結合対を形成しうる構成員の1員の残基を表す重合体と金、銀、白金およびアルミニウム、ならびに蛍光を発光する半導体との複合体を前記構成員の他の1員に相当する被検体を含む疑いのある生物学的試料と接触させて、該複合体と被検体から形成されたコンジュゲートを検出し、検出されたコンジュゲートのレベルを被検体レベルの指標とすることを特徴とする生物学的試料中の被検体の検出方法。
  21. 複合体が蛍光を発光する半導体から調製されたものである請求項20記載の方法。
  22. 該複合体を蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のドナーとして用い、該コンジュゲートに特異的に結合することができ、かつ、該蛍光共鳴エネルギー移動のアクセプターとして作用しうる蛍光性色素で修飾した他の有機化合物をアクセプターとして用いることにより形成されるドナー−アクセプター対を介して該コンジュゲートを検出する請求項21記載の方法。
  23. 請求項10または11に記載の式(I)または式(II)で表される重合体のうち、XまたはX′が非共有結合的に特異的結合対を形成しうる構成員の1員の残基を表す重合体と蛍光を発光する半導体との複合体の、生物学的試料中の被検体を検出するための蛍光共鳴エネルギー移動のドナーとしての使用。
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