JPS647264Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は車載用過給機、エヤポンプ等に適した
無潤滑式ベーン形回転圧縮機に関するものであ
り、さらに詳言すると使用し得る回転数の範囲
（1000〜12000rpm）が広く、比較的高い圧縮比と
大きな流量が得られる圧縮機に係わるものであ
る。

容積形圧縮機、特にベーン形圧縮機は遠心形圧
縮機に比べると広い範囲の回転数において安定し
た圧力特性を持ち、低速回転時にも十分な圧力と
流量を得ることができるため、回転変動の激しい
自動車エンジンのクランク軸で駆動される過給機
としての適性を備えている。

しかし、従来のベーン形圧縮機には次のような
問題点があつた。Ａ圧縮行程域でベーンはロータ
のベーン溝に押し込まれるが、ベーン自身の慣性
力とベーン溝の反発力でベーン先端は作動室の内
面に強く圧着するため、両者の間の摺動摩擦によ
る発熱と摩耗は高速回転になるにつれて著しく大
きくなる。Ｂロータが軸方向に熱膨張する。Ｃロ
ータの回転軸はグリース封入型ボールベアリング
により軸受されることが多いが、ロータ側とシー
ル側の圧力差によりボールベアリングのグリース
が漏出してベアリングの寿命が低下する。

問題Ａの対策として、特開昭52−71713号、特
開昭56−18092号はセンターハウジングに回転ス
リーブを潤滑油を介して回転自在に嵌装し、その
回転スリーブの内周面にベーンの先端を当て、回
転スリーブをベーンと共に回転させてベーン先端
の摺動摩擦を防止することを提案している。回転
スリーブによりベーン先端の摺動摩擦の問題は解
決するが、回転スリーブが潤滑油で支承するた
め、潤滑油の漏れによる汚染、境界潤滑条件等の
局部的高圧による疲れ摩耗の発生等のおそれがあ
る。問題Ｂの対策として、軸受にスラスト軸受又
はアンギユラ軸受を使用することもあるが、問題
Ｃはそのまま残ることになる。軸受をすべり軸受
（メタル）にして問題Ｃに対処すると、潤滑油を
シールする特別な手段が必要になり、寿命の長い
非接触型メカニカルシールを用いることができな
くなる。

本考案の課題は、潤滑油を使用せずにベーンと
共に回転する回転スリーブとロータの回転軸を支
承するベーン形圧縮機を提供して上記問題を解決
することにある。

前記課題を達成するため、本考案の特徴とする
手段は、センターハウジングと、そのセンターハ
ウジングを前後から囲むフロントハウジングとリ
ヤハウジングと、センターハウジングに回転可能
に嵌装された回転スリーブと、回転スリーブ内に
おいて回転するロータと、フロントハウジングと
リヤハウジングに軸受けされたロータの回転軸と
を備えた回転圧縮機において、回転スリーブとロ
ータの回転軸をそれぞれ支承する気体軸受を設け
たことにある。

回転スリーブを支承する第一気体軸受はセンタ
ーハウジングと回転スリーブの間に形成された円
筒状空隙の圧力気体室と、吐出室からセンターハ
ウジング内周面に垂直に開口する絞り部を通して
圧力気体室に抜ける高圧連通孔によつて形成され
る。ロータの回転軸を支承する第二気体軸受は回
転軸の周面との間に円筒状空隙を形成する軸受
と、その円筒状空隙から軸受を半径方向に貫通す
る複数個の放射状孔と、その放射状孔と高圧連通
孔を連通させる軸受圧力路によつて形成される。
吐出室の高圧空気は絞り部と放射状孔を通して各
気体軸受の円筒状空隙に通気されるから、回転ス
リーブとロータが荷重方向にのみ偏心する低速回
転時には、回転スリーブと回転軸は静圧のみによ
つて支承されるが、ロータの回転速度が高速にな
ると荷重方向に対して回転スリーブと回転軸は角
度的に偏心し、回りを流れる空気が絞られて動圧
が発生するから、静圧と動圧で回転スリーブと回
転軸を支承するハイブリツド気体軸受になる。

本考案の圧縮機を図面に示す実施例に基づいて
説明する。第１図及び第２図に示す実施例の圧縮
機は回転軸１とロータ５が一体であり、回転軸１
の一端に固定したプーリ２０を介してエンジンク
ランク軸（図示せず）等の回転駆動を受ける。回
転軸１のプーリ２０の側端部にメカニカルシール
１１と軸受１４を組付ける。ロータ５は軸方向の
前後をフロントハウジング２１とリヤハウジング
２３により囲まれ、その周囲に設けた複数のベー
ン溝５４にそれぞれベーン４が嵌装される。セン
ターハウジング２２にロータ５の周面を囲む回転
スリーブ３を遊合し、両者の間に圧力気体室９を
形成する。各ハウジング２１，２２，２３はボル
ト２５により一体に組付け、リヤハウジング２３
にガスケツトを介して吸入室７３と吐出室６３を
設けたリヤカバー２４を組付ける。圧縮機はリヤ
ハウジング２３に設けた吸入孔７から吸入した気
体を回転スリーブ３、ベーン４、ロータ５、フロ
ントハウジング２１、リヤハウジング２３で囲ま
れる作動室において圧縮し、圧縮した気体を吐出
孔６から吐出弁６２を経て吐出する。

吐出弁６２を出た気体は吐出室６３に溜めら
れ、吐出口６４を通じて外部気体回路に入るが、
一部は逆止弁６８を経てリヤハウジング２３内に
設けた圧力室６９へ流入する。圧力室６９は同じ
くリヤハウジング２３に設けた環状通路９３と連
通し、環状通路９３は軸方向に延びる複数の高圧
連通孔９２と連通する。各高圧連通孔９２は回転
スリーブとセンターハウジング２２の間の圧力気
体室９へ絞り部９１を介して開口する。このよう
にして、第一気体軸受が形成され、回転スリーブ
の低速回転時には静圧気体軸受として回転スリー
ブを支承し、高速回転時には動圧も加わつたハイ
ブリツド気体軸受として回転スリーブを支承す
る。

回転軸１の軸受１４，１６に複数の半径方向に
貫通する放射状孔１４１，１６１を設け、各放射
状孔をフロントハウジング２１、リヤハウジング
２３に設けた軸受圧力路１４２，１６２と連通す
る。この軸受圧力路１４２，１６２は軸受１４，
１６の外周に設けてもよい。軸受圧力路１４２を
フロント連通孔９２１を介して高圧連通孔９２
に、軸受圧力路１６２を直接圧力室６９にそれぞ
れ接続して吐出室６３と連通させる。このよう
に、第二気体軸受を形成し、ロータの低速回転時
には静圧気体軸受として回転軸を支承し、高速回
転時には動圧も加わつたハイブリツド気体軸受と
して回転軸１を支承する。放射状孔１４１から軸
受１４に注入された気体はメカニカルシール室１
０へ入り、他方、放射状孔１６１から軸受１６に
注入された気体はリヤカバー２４に設けた細孔２
４６から吸入室７３へ出る。

さらに、ロータ５の軸方向スラスト力を受ける
ため、軸受圧力溝１４２，１６２からロータ５の
前後の端面に開口するロータ噴出孔１４５，１６
５を設け、ロータ５とフロントハウジング２１並
びにリヤハウジング２３の間に気体を噴出させ
る。この結果、ロータ５の両側のフロントハウジ
ング２１とリヤハウジング２３の間のクリアラン
スの一方が小さくなると、自動的に小さくなつた
側の気体の反力が大きくなるので、ロータ５の両
側のクリアランスは常にバランスする。

軸受１４に続くメカニカルシール１１も非接触
型にすることが望ましい。第３図に非接触型メカ
ニカルシールの一例を示すが、値の公知のものも
同様に用いることができる。メカニカルシール１
１の固定リング１７に噴出孔１７１を設け、シー
ルリング１８と固定リング１７の間に気体通路と
なるクリアランスを発生させる。この固定リング
１７とシールリング１８の間のクリアランスはメ
カニカルシール室１０の圧力により調整されるた
め、メカニカルシールから漏れる気体量を最小に
制御することができる。シールリングにらせん溝
又は放射状溝を設けた非接触型メカニカルシール
でも同様な効果が得られる。

第２図の実施例は、ロータ５の側面５２に開口
するロータ噴出孔１４５，１６５が作動室の漏れ
回路を形成するため、圧縮比を余り高くすること
はできないし、又、ベーン溝への圧力干渉も生ず
る。そこで、噴出孔に代えて、第４図の実施例に
示すように、リヤハウジング２３側の回転軸１に
スラスト板２７をナツト等で固着する。スラスト
板２７はリヤプレート２８とリヤハウジング２３
に囲まれ、リヤプレート２８とリヤハウジング２
３にそれぞれ複数のスラスト噴射孔２７０，２８
０が設けられる。リヤプレート２８はセンターハ
ウジング２２とリヤハウジング２３にはさまれて
リヤハウジングとの間に圧力室６９を形成する。
リヤプレート２８にスラスト噴射孔２８０と圧力
室６９を連通する複数の放射状の孔２７１を穿設
する。他方、リヤハウジング２３に吐出室６３と
連通する第２圧力室６９２を設け、第２圧力室６
９２からスラスト板２７に対するリヤハウジング
側のスラスト噴射孔２７０を穿つ。軸受１６は回
転軸１の内周側に配設し、軸受１６の軸心に軸受
圧力路１６２を設け、その軸受圧力路から放射状
孔１６１を穿つ。

軸受１６からスラスト板２７のリヤハウジング
側へ流入した気体を吸入室７３へ導く連通孔７３
３を設ける。かかるスラスト板はフロントハウジ
ング内に設けてもよい。

上記の通り、本考案の圧縮機は潤滑油を使用せ
ずに回転スリーブを気体軸受のみにより支承する
ので、ベーンと回転スリーブ間の摩擦熱は低減
し、同時にセンターハウジングと回転スリーブも
非接触に維持されるため、その間の摩擦抵抗も著
しく小さい。又、ロータの回転軸も潤滑油、グリ
ース等の潤滑剤を使用せずに気体軸受により非接
触で軸受けするため、寿命が長く軸受抵抗も少な
い。さらに、スラスト板又はロータに対して噴射
孔から気体を噴射してスラストを受けるため、ロ
ータの軸方向のクリアランスを保持することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本考案の一実施例の圧縮機
の軸断面図及び横断面図、第３図は第１図の部分
拡大図、第４図は他の実施例の第１図に相当する
図である。 １：回転軸、３：回転スリーブ、５：ロータ、
９：圧力気体室、１１：メカニカルシール、１
４，１６：軸受、２０：プーリ、２１：フロント
ハウジング、２２：センターハウジング、２３：
リヤハウジング、２７：スラスト板、２８：リヤ
プレート、５２：ロータ側面、６３：吐出室、９
１：絞り部、９２：高圧連通孔、１４１：放射状
孔、１４２：軸受圧力路、１４５：ロータ噴出
孔、２７０，２８０：スラスト噴射孔。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ センターハウジングと、前記センターハウジ
   ングの前後を囲むフロントハウジングとリヤハ
   ウジングと、センターハウジング内に回転可能
   に嵌装した回転スリーブと、前記回転スリーブ
   内において回転するロータと、前記リヤハウジ
   ングに隣接して設けられた吐出室と、前記フロ
   ントハウジング及びリヤハウジングに軸受けさ
   れた前記ロータの回転軸を備えた回転圧縮機で
   あつて、前記センターハウジングと前記回転ス
   リーブの間に形成された円筒状空隙の圧力気体
   室と、前記センターハウジング内周面に開口す
   る絞り部と、前記吐出室から前記リヤハウジン
   グと前記センターハウジングを通つて前記絞り
   部に至る高圧連通孔とからなる第一気体軸受に
   よつて前記回転スリーブを支承し、前記フロン
   トハウジング及び前記リヤハウジングに設けら
   れて前記回転軸の周面との間に円筒状空隙を形
   成する軸受と、前記軸受を半径方向に貫通する
   放射状孔と、前記放射状孔を前記高圧連通孔に
   連通させる軸受圧力路とからなる第二気体軸受
   によつて前記回転軸を支承したことを特徴とす
   る回転圧縮機。 ２ 第二気体軸受の軸受圧力路にロータ側面に開
   口するロータ噴出孔を設けたことを特徴として
   なる実用新案登録請求の範囲第１項記載の回転
   圧縮機。