JPS642778B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はエンジン・シリンダーの構造に関する
ものである。

最近、エンジン・シリンダーにセラミツクを使
用することがとみに試みられる様になつた。セラ
ミツクを使用するとシリンダーの耐久性と燃料効
率を大巾に改善することが予想されるためであ
る。

しかしながらこれらのセラミツクは、高価であ
ると共に加工や成形およびその焼成品の信頼性に
関して多くの問題が残されており、末だに実用化
段階には到つていない。

本発明は以上の様な状況に鑑みてなされたもの
であり、熱衝撃に強く、安価かつ信頼性に優れた
セラミツク製エンジン・シリンダーの新規な構造
を提供せんとするものである。

本発明の特徴は、少くともシリンダー内面の摺
動部を、セラミツク・リング体と金属体が互に交
互に積層された複合積層体で構成したことであり
これによつて、エンジン作動時、この金属体の部
分が優先的に摩耗し、セラミツクリング間に凹所
が形成され、この部分に潤滑油が保油される様に
なる。無潤滑状態では、ピストンリングが摩耗し
てしまうが、上記構成によつて油膜が形成され、
摩耗が防がれる。

また、セラミツク部分の縦断面での切口面は、
金属のパーライトの様な一種のラメラー組織を示
し、セラミツクの脆さは密着する金属によつてあ
る程度カバーされてくる。更に切口の面でのセラ
ミツクは非常に薄い層であり、しかも熱伝導性の
良い金属が密着接触しているために、急激な温度
変化が起こつても熱はいち早く、この金属に吸収
され、熱シヨツクは吸収される。

このために耐熱衝撃性が著しく向上することで
ある。

また成形、加工、組立が容易であることであ
る。

以上が本発明の特徴であり、その要旨は、エン
ジンシリンダーの少くとも内面摺動面が、セラミ
ツク・リング体と金属体が互に交互に積層された
複合積層体から成ることを特徴とするエンジン・
シリンダーの構造である。

次に本発明構造を図面によつて説明する。

本発明では、少くとも摺動部が上記した様にセ
ラミツクと金属の複合積層体から成つていること
が必要であり、これ以外の部分は必ずしも積層体
にする必要はない。

図１は、摺動部のみを複合積層体にして、これ
以外の外側の部分は金属の連続体によつて形成し
て、両者を一種の嵌合状態で結合させたときのも
のであり、図２は、摺動部のみならず全体を複合
積層体で形成させたときのものである。

図１において、１はセラミツクリング体３と金
属体４を交互に重ね合せて高度に密着させて複合
積層体にしたものであり、この積層体１の外側に
外筒金属２が鋳造あるいは嵌合されるが、外筒金
属の収縮力によつて、積層体１は、圧縮固定され
る。外筒を鋳造金属で形成する場合も、結果的に
は１とは一種の嵌合結合になる。

また、高温の鋳造金属を積層体１の周囲に鋳造
した際、１は激しい熱衝撃にさらされ通常のセラ
ミツクでは例外なく熱割れを起こすが、本発明で
は、セラミツクはリング状に分割されているの
で、これに十分耐えることができる。

積層体１の円周側面の外に上下面（軸方向）も
外筒金属で包囲した場合、軸方向の収縮力によつ
て、１は軸方向にも圧縮固定される。この場合、
ボルトの様な緊締具で軸方向の圧縮固定が不要に
なる場合もある。

いずれにせよ、積層体１は、半径方向、軸方向
の収縮力を常時受けることになる。これによつて
１は安定的に保持される。また同時にセラミツク
と金属間および外筒金属との接触面は、高度に密
着する様になる。

実際のエンジンとして使用した場合、積層体１
の内表面は、激しい熱衝撃と摩耗雰囲気にさらさ
れるが、熱はこの金属層の部分を通つて拡散吸収
されると共に、セラミツクの個々のリングは互に
物理的には縁の切れた状態であるので、熱割れに
は十分耐えることができる。

またセラミツクには外筒金属の収縮力によつて
常時圧縮力が作用しているので、これも熱割れに
は有利に作用する。

また万一セラミツク部分に亀裂が発生しても中
間の金属がこれを保持しているので、内部に破片
が逸入することは避けられる。

耐摩耗性については、切口のラメラー組織の部
分のセラミツクの部分が分担し、金属のみの場合
に比較して大巾に向上する。面的な摩耗について
はオールセラミツクの場合とそん色ない状態であ
る。

またシリンダーの気密性の問題は、積層部は十
分な気密性を有していないが、外筒部が金属の連
続体によつて作られているために、この部分での
十分なシールが得られる。

また潤滑性に関しては、セラミツクリング間の
金属が優先的に摩耗し、この部分に凹部が形成さ
れ、ここに潤滑油が保油され、油膜が形成される
ので、ピストンリングの摩耗が防がれる。また予
じめ上記凹部を形成させておくと保油潤滑性が更
に良くなる。

複合積層体の部分のセラミツクと金属の部分の
厚さは、セラミツクでは、材質に応じて変つてく
るが、アルミナを使用した場合、概ね1.5〜６mm、
金属は、ステンレス、アルミニウムを使つた場合
0.05〜1.5mmが適当であり、特にピストンリング
の巾よりも薄くする必要がある。

図２において、１はセラミツクと金属の複合積
層体であり、この場合は全体が複合積層体からな
つている。２はセラミツクリング体、３は金属体
である。

本例の場合はセラミツクリングの間の金属の部
分に、図に示す様に、デザインに特別の工夫がな
されており、セラミツクリングが横方向にズレな
い様になつている。

次に本発明を実施例について説明する。

実施例 １ 積層体 内径70mm、外径80mm、高さ100mm セラミツクリング（アルミナ）の厚さ2.0mm、
接触面が密着する様に両面研摩。

金 属 セラミツクリングの間に0.1mmの金属板（ステ
ンレス）をはさむ様な形で重ね合せ密着させて、
外筒の溶湯を鋳造した。

外 筒 溶湯成分 アルミ合金（シルミン） 積層体の部分に鋳造して鋳包んだ。

セラミツクと金属の複合積層体は外筒金属の凝
固、冷却時の収縮力によつて圧縮固定された。

尚上記金属薄板をセラミツクリングの間にはさ
む方法としては、上記した、別固に用意した金属
板をはさむ方法の外に予じめセラミツク表面に被
覆しておき、これを重ね合せることもできる。

次に、これに必要な機械加工を行い、空冷２サ
イクルエンジンのシリンダーとして使用した。

現在使用して1000Km走行するもエンジントラブ
ルは全く発生せず、エンジンとして十分使用でき
ることを確認した。通常アルミナは耐熱割性が小
さいために、この様な用途には使用できないが、
本発明構造にすると、十分使用できる。高価な窒
化物、炭化物等を使用しなくても十分使えること
を確認できた。

しかも構造は、単に板を積層するだけで良いの
で、セラミツクを複雑形状に一体成形する必要も
なく、安価に作ることができた。

実施例 ２ 実施例１と同じ寸法、要領で作成したセラミツ
クリングにスクリーン印刷によつて銀ロー材をプ
リントし、これを重ね合せて650℃に炉中加熱、
加圧して、積層体を作成した。

次に、これに、鋳鉄で製造した外筒を約400℃
に加熱して焼きバメし、実施例１と同じ要領でエ
ンジン・シリンダーに加工し、実機テストに供し
た。

走行時間は現在１千時間を越えるが、末だにエ
ンジントラブルは起こつていない。

本発明は、以上詳記した様に、少くとも摺動部
がセラミツクと金属の積層体から成る新しい構造
のシリンダーであり、経済的に安価であると共
に、成形、か工性、および信頼性が共に著しく優
れたものである。

【図面の簡単な説明】

図１〜２は本発明構造の説明図であり、図１は
摺動部のみを複合積層体で構成した場合のもので
あり、図２は全体を積層構造にしたものである。 図１で、１は複合積層体、２は外筒、３はセラ
ミツクリング体、４は金属体である。 図２で、１は積層体、２はセラミツクリング
体、３は金属体である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ エンジン・シリンダーの少くとも内面摺動面
   がセラミツク・リング体と金属体が互に交互に積
   層された複合積層体から成ることを特徴とするエ
   ンジン・シリンダーの構造。