JPS6350296Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は２色同時編込み編ができる太糸用手編
機に関する。

〔従来の技術〕

従来、太糸用手編機は、中細糸用編針よりもフ
ツク、ステム、シヤンクが全体的に大きい太糸用
の編針を針床に６〜10mmのピツチで列設し、平編
み編成を行うものが知られているが、２色同時編
込み編みのできるものは提供されていない。

太糸編みでは、フツクに太糸を保持して編針が
引き込まれる際の抵抗力が中細糸編みの場合より
もかなり強いものである。

従つて、太糸用の編針を、中細糸用の編針の場
合と同様に定位置を保持すべくばねで付勢し、バ
ツトに下降圧力が作用することにより付勢に抗し
て約６mm程度下方に変位可能にして針床に列装す
ると、引き込みの際の強い抵抗力によつてバツト
がキヤリジのカムと係合しないところまで過度に
下降し編成不良になつてしまう。

そこで、上記編成不良を回避すべく、バツトを
高くするとキヤリジの編成通路及びカム等が大き
くなり、ひいてはキヤリジが全体的に大型化して
しまうので、従来の太糸用手編機では編針を定位
置から全く下降しないようにしている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

従来の編針が定位置より全く下降しないように
した太糸用手編機において２色同時編込み編みを
可能にすべく、キヤリジに選針装置と、これによ
り前後に選針された編針をさらに前後に振り分け
る振分カムを設けるようにすると、選針装置によ
り前後に選針された編針のうち、例えば後に選針
された編針がフツクに保持している太糸による抵
抗が強いために前方に盲動し、そのバツトと振分
カムとが衝突し、いわゆる針当りの状態になり易
い。この場合、バツトが下降する余地が無く、か
つ振分カムが上方に撓む余地がないので、バツト
あるいは振分カムが損傷したり、キヤリジが停止
して編成が不能になつてしまう。

本考案は上記従来の欠点を解消し、２色同時編
込み編みのできる太糸用手編機を提供しようとす
るものである。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は、編針を定位置より僅かに下降できる
ように針床に列設するとともに、キヤリジに所要
の選針信号により編針を前後に選針する選針装置
を設け、それらの内側のところには、弾板で形成
した振分カムを設けている。そして、上記振分カ
ムの選針装置側に規制部と押下傾斜部を延設し、
かつ上下に撓み得るようにしてあり、しかも押下
傾斜部はキヤリジの移動方向と平行に配置され、
かつ下縁がキヤリジの進行方向に上向きに傾斜し
ている。

また、上記規制部はキヤリジの移動方向に斜交
した状態に配置され、押下傾斜部とバツトの係合
により上方に撓んだときに、この規制部の下縁が
定位置にあるバツトの上端よりも下方に位置する
ようになつている。

〔作用〕

本考案においては、選針装置で所要の選針信号
により前後に選針され、さらに振分カムで前後に
振り分けられた編針にそれぞれ別の色の太糸を給
糸して２色同時編込み編みができる。

また、上記の如く選針された編針が盲動してバ
ツトと振分カムの押下傾斜部とが衝突したときに
は、バツトが押下傾斜部の下縁に押圧されて僅か
に下降する一方、押下傾斜部が押圧されて上方に
撓み、これによりバツトが押下傾斜部に沿いなが
らその前あるいは後に振り分けられる。

しかも、バツトとの係合により押下傾斜部及び
規制部が上方に撓んだときにも、規制部の下縁が
定位置にあるバツトの上端より下方に位置してい
て、このバツトに係合しそれを選針されたとおり
前あるいは後に振り分ける。

〔実施例〕

以下には図示の実施例について説明する。

１はキヤリジで、針床２に移動自在に装架して
いる。

３は太糸用の編針で、バツト４を針溝５に前後
動自在に嵌挿し、所定のピツチ（６〜10mm）で列
設している。

また、各編針３は、針溝５の下方に横架した支
持板６の上面との間に僅かな隙間（0.5〜１mm）
をあけ、しかもバツト４の上側部分が針溝５から
突出した定位置（第２図）を保持するように、シ
ヤンクの下側に当接させた板ばね７により各別に
付勢されている。

キヤリジ１は平面略横長矩形で、前側部分に設
けたスライダ８を溝板９の前縁に摺動自在に嵌合
し、後側部分に設けたキヤリジパイプ１０を針床
２の後側部に設けたレール棒１１に摺動自在に嵌
合している。

１２，１２は上記スライダ８の左右外方のとこ
ろに回転自在に軸支したローラで、溝板９の前縁
上面を転動するようになつている。

１３，１３は上記キヤリジパイプ１０の両端部
に形成した開口１４，１４に臨ませて回転自在に
軸支したローラで、レール棒１１上を転動するよ
うになつている。

１５，１５はキヤリジ１の左右両側部分に設け
たいわゆる選針ドラム式の選針装置で、それは、
キヤリジ１の移動に関連して回転するドラムの周
囲に放射状に装架された選針片（図示していな
い）が、所要の選針信号によつて、バツト４の上
端部に係合する位置と係合しない位置とに変位
し、所定位置に揃列待機した編針３のうち、この
選針片がバツト４に係合した編針３を前方に押動
し、選針片がバツトに係合しない編針３を所定位
置に留めることにより、編針３を前後２位置に選
針するものである。

１６，１６は選針装置１５，１５の内側のとこ
ろに設けた振分カムで、金属弾板により形成して
あり、略菱形の基部１７，１７の前側部分に取付
部１８，１８を一体に形成するとともに、基部１
７，１７の選針装置側の角部分に、外方に向けて
規制部１９，１９と押下傾斜部２０，２０を連続
させて延設している。

規制部１９，１９と押下傾斜部２０，２０は、
先端の尖つた細長い板状をなし、基端で基部１７
と一体に連続していて全体が基部１７に対し90゜
捻回し、平面略へ字形に折曲した状態に成形され
ている。

また、規制部１９，１９の下縁２１は水平に成
形され、押下傾斜部２０の下縁２２は先端に向か
つて斜め上方に傾斜した状態に成形されている。
２３，２３は取付部１８，１８に形成したねじ孔
である。

振分カム１６，１６はキヤリジ１の下面に取付
部１８，１８をねじ止めし、押下傾斜部２０をキ
ヤリジ１の移動方向と平行にし、かつ先端を選針
装置１５，１５の側にむけ、下縁２２がキヤリジ
１の移動方向に上向きに傾斜した状態に配置して
いる。

また、規制部１９は、係合するバツト４を前方
に振り分けるようにキヤリジの移動方向に斜交さ
せ、かつ下縁２１を水平（針床２に対して平行）
に成形するとともに、この規制部１９及び押下傾
斜部２０の上縁とキヤリジ１の下面との間に所要
の間隔をあけて、これら両部１９，２０が上方に
撓み得るようになつている（第２、５、７図）。

そして、規制部１９と押下傾斜部２０が上方に
撓んだとき（第５図鎖線）、規制部１９の下縁２
１が定位置にあるバツト４の上端よりも下方に位
置するようになつている。また上記下縁２１，２
２は略片刃状に成形してある。

２４，２４は振分カム１６，１６の内側に略逆
ハ字形に配置した主カムで、キヤリジ１にはこれ
ら振分カム１６，１６、主カム２４，２４の他
に、所要の諸カムを配置して所定の編成通路、例
えば２色同時編込み編みの編成通路２５，２６を
形成している。

２７は地糸用糸口、２８は配色糸用糸口で、こ
れらはキヤリジ１の前部に装着したアーム（図示
していない）に設けられている。

上記糸口２７，２８に各別に給糸された太糸
（図示いていない）による２色同時編込み編みの
実施の際に、キヤリジ１の移動にともない選針装
置１５に導入されて所要の選針信号により前後２
位置に選針された編針３が、例えばフツクに保持
している太糸の引張力により後方の選針位置より
も少しく前方に盲動し、そのバツト４ａの上端部
と押下傾斜部２０の下縁２２が衝突したときに
は、バツト４ａが支持板６により阻止されるとこ
ろまで僅かに下降する一方、押下傾斜部２０及び
規制部１９が上方に撓む（第５図鎖線）。

そして、キヤリジ１の引き続く移動にともな
い、バツト４ａが下縁２２に沿いながらその後側
に振り分けられる。また、このバツト４ａの次に
振分カム１６に導入され、定位置にあり、かつ前
位置に選針されたバツト４ｂが、上方に撓んだ規
制部１９にこれが原位置に復帰する以前に係合す
ることになつたときには、その下縁２１がバツト
４ｂの上端よりも下方に位置していて、これに係
合したバツト４ｂが所期どおり前方に振り分けら
れる（第６、７図）。これによりバツト４ｂが不
用意に下縁２１をくぐり抜けて後方に振り分けら
れることがない。

かくして前後に振り分けられて編成通路２５，
２６に導入された編針３にそれぞれ所要の太糸が
給糸されて２色同時編込み編みが行われる。

〔考案の効果〕

以上述べたところから明らかなように本考案に
よれば、太糸による２色同時編込み編みができる
とともに、その編成の際に、選針装置により前後
２位置に選針された編針が盲動して、そのバツト
と押下傾斜部とが衝突したときには、バツトが押
下傾斜部の下縁に押圧されて僅かに下降する一
方、押下傾斜部及び規制部が押圧されて上方に撓
み、バツトが押下傾斜部の下縁に沿いながらその
前方あるいは後方に振り分けられ、いわゆる針当
りの状態になつてキヤリジが停止し編成不能にな
つたり、振分カム及びバツトが損傷したりするこ
とがない。

また、押下傾斜部とバツトとの衝突により上方
に撓んだ規制部が原位置に復帰しないうちに、前
あるいは後に選針された編針の定位置にあるバツ
トが規制部に係合するようになつたときにも、規
制部の下縁がこのバツトの上端より下方に位置し
ていて、これと係合し、所期どおり前あるいは後
に振り分けられるので、盲動したバツトと押下傾
斜部の衝突にともない、適正に選針された他のバ
ツトが規制部の下縁をくぐり抜けることにより選
針態様が乱れる不都合がない。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図はキヤリ
ジの底面図、第２図はキヤリジを針床に装架した
状態を示した要部の側面図、第３図は振分カムの
斜視図、第４、５図はバツトと押下傾斜部が衝突
した状態を示した要部の底面図及び正面図、第
６、７図は押下傾斜部と衝突したバツトがその後
方に振り分けられた状態を示した要部の底面図及
び正面図である。 ２……針床、３……編針、４，４ａ，４ｂ……
バツト、１……キヤリジ、１５，１５……選針装
置、１６，１６……振分カム、１８，１８……取
付部、１９……規制部、２０……押下傾斜部、２
１……下縁。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 針床に列装した太糸用の編針を僅かに上方に持
   ち上げられた定位置に保持し、かつバツトに下降
   圧力が作用することにより僅かに下方に変位し得
   るようにし、またキヤリジの両側部分に、所要の
   選針信号により上記編針を前後２位置に選針する
   選針装置を設け、さらにこれら各選針装置の内側
   のところに弾板で形成した振分カムを取り付ける
   とともに、各振分カムの選針装置側に上下に撓み
   得るように延設した規制部と押下傾斜部のうち押
   下傾斜部をキヤリジの移動方向と平行にし、かつ
   その下縁をキヤリジの移動方向に上向きに傾斜さ
   せ、また、規制部をキヤリジの移動方向に斜交さ
   せ、かつその下縁を、上記押下傾斜部とバツトの
   係合により上方に撓んだときに、定位置にあるバ
   ツトの上端よりも下方に位置するようにしてなる
   ことを特徴とする太糸用手編機。