JPS6313386Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は直接噴射式デイーゼル機関に使用する
ピストンの燃焼室の構造に関する。

［従来技術］ ピストンに燃焼室を形成し、この燃焼室に多噴
孔ノズルから燃料を噴射するようにした直接噴射
式デイーゼル機関の場合、ノズルからの噴霧が燃
焼室壁面と衝突した後、燃料の蒸発および空気と
の混合が速やかに行われる必要がある。ところ
が、従来の燃焼室の側壁面は単純な円筒面又は円
鍾面に近い形状をしているため、噴射された燃料
が燃焼室の側壁面に当たる面積は小さく蒸発し難
く、又側壁への燃料の付着を防止するための噴霧
の勢いを弱くすると、燃焼室内に起きている強い
空気の渦流によつて燃料が流され、燃料の適正な
アレジン乃至調整が狂つて来やすいという問題が
生ずる。

又一般的に噴霧は燃焼室の入口付近に向けた方
が機関の出力は向上する。これは入口付近では燃
焼室に流入しようとする空気の流れが強いため燃
料の蒸発、混合が促進されるためと考えられる。
しかし機関が暖機されていない状態では、暖機運
転中は回転速度も低く負荷も小さいため、上記と
は反対に燃焼室の深い部分に向けた方が、空気の
流れが弱いために、可燃混合気を形成しやすく又
燃料が空気に奪われる熱量も少なくなり、燃料の
着火が容易となり未燃燃料の排出が少なくなる。

以上の如くにすると暖機運転乃至低速運転中に
おける燃焼問題は解決されるが、燃料付着面積が
狭く、空気の流れが弱いため通常運転における燃
焼および排ガスに悪影響が出てくる。

例えば、実開昭54−79302号公報には燃料の衝
突域に鋭角に突起している環状のリツプ部を設
け、燃料流を分割する技術が開示されている。し
かしながら、かかる公知技術ではリツプ部の上側
の壁面が彎曲した形状であり、そために暖機時や
低速時に燃料付着面積が拡大し、上部側壁の部分
にたまる傾向があり、したがつて燃焼室の下部に
向つて流れない。その結果、均一なスキツシユ流
が生成できず、混合作用にむらが生ずる。

また例えば実開昭53−69606号公報には下部側
壁が円形で上部側壁が四角形に形成されている。
したがつて前記の公知例と同様に、燃焼室の下部
に燃料が流れにくく、燃料混合にむらができる。

また、英国特許第1187787号明細書には、燃焼
室を円鍾状の上下の部分に形成し、単噴孔ノズル
でその燃焼室の下部付近に燃料を噴射し、保護的
に上部側壁部分に燃料を噴射するものが開示され
ている。しかしながら、かかる公知技術は通常使
用されている多噴孔ノズルに実施しては、前述の
如く通常の運転時と暖機又は低速運転時との燃焼
問題を解決することはできない。

また特開昭55−51917号公報には燃焼室の周縁
をピストン上面より下げ、上記周縁とピストン上
面との間に斜面部（または段部）を形成し、噴霧
の軸心と直角方向の部分をピストン頂面とシリン
ダヘツド下面との間の狭い斜面部に沿つて入り込
ませ、この隙間にあつた空気を有効に燃焼させる
技術が開示されている。しかしながら、かかる公
知技術では、燃焼室の深い部分への噴霧の付着、
蒸発は促進されず、低速運転中における燃焼問題
は解決されない。

また特開昭53−136111号公報にはピストン内部
に作りつけられた回転体形状の燃焼室のくぼみの
ピストン底の下方に、該燃焼室くぼみを上下両部
にへだてる境界となる挾さく部（頂部）を形成
し、噴霧を挾さく部の最挾断面より下方に衝突さ
せ、ピストン上昇時にできる空気のスカツシユ効
果を高めるようにした技術が開示されている。し
かしながら、かかる公知技術では、燃焼室下部へ
の噴霧の付着、蒸発は促進されず、低速運転中に
おける燃焼問題は解決されない。

また特公昭52−33242号公報では燃焼室の側壁
と噴霧との衝突域は直線を含む凹面に形成され、
噴霧と側壁との衝突角が20゜から60゜の範囲内であ
り、ピストンの動きに対しても衝突角があまり変
化しないように側壁が形成されている。

しかしながら、かかる公知技術では噴霧の付着
範囲が狭くて蒸発の促進性が低く、燃焼問題は解
決されない。

［考案の目的］ したがつて本考案の目的は、暖機運転中又は低
速運転中において燃料は付着面積が広く、空気の
流れが弱くても比較的に均一な空気との混合が達
成されるデイーゼル機関の燃焼室の構造を提供す
るにある。

［考案の構成］ 本考案によれば、ピストンの上部に形成された
多噴孔ノズルから燃料が噴射されるデイーゼル機
関の燃焼室において、燃焼室の側壁は上部側壁お
よび下部側壁で形成され、その上部側壁は上方に
向つて拡がつて円鍾状に傾斜しており、またその
下部側壁は下方に向つて拡がつて円鍾状に傾斜し
ており、そして上部側壁と下部側壁との交差面は
鈍角をなした頂部を形成し、頂部近傍および頂部
下方の下部側壁の円鍾状部分を燃料の衝突域とし
ている。

［考案の作用効果］ したがつて多噴孔ノズルから鈍角に形成されて
いる頂部近傍および頂部下方の下部側壁の円鍾状
部分に噴射された燃料は上下の同一長さに対して
比較的に面積が広い下部側壁に沿つて流下するの
で、付着範囲が広くなり、空気の渦流が弱い下方
の領域でも、比較的に均一な空気との混合が得ら
れる。それ故に暖機時や低速時の燃焼作用が良好
に行われる。また、頂部近傍に噴射された燃料は
頂部を通過するときに、この部分が絞られている
ために生ずる空気の剥離によつて、燃料の霧化が
向上し、この傾向は特に高速時において著しく、
したがつて本考案によれば低速、高速を問わず、
燃料の蒸発燃焼が向上する。

このように鈍角の頂部に対して上下の側壁を円
鍾状に形成して、その頂部近傍および頂部下方の
下部側壁の円鍾状部分に燃料を噴射することによ
つて、燃料が頂部から滴下することなく側壁に沿
つて流れ、付着面積が広くなるので、低速（暖
機）高速のいずれも燃焼が良好となり未燃燃料の
排出が少なくなる。

［実施例］ 以下本考案の一実施例を図面について説明す
る。

図においてピストン１の上部には燃焼室２が形
成され、この燃焼室内には、ピストン１の上方に
配置されたノズル３から燃料が噴射される。燃焼
室２の側壁４は、上部側壁５および下部側壁６か
らなる。上部側壁５および下部側壁６は、それぞ
れ垂直乃至鉛直面に対して角度αおよび角度βを
もつて傾斜してそれぞれ円鍾状をしており、互い
に交差してて頂部Ａを形成している。頂部Ａは鈍
角θをなしており、燃焼室の深さをＤとした場
合、頂部Ａの底壁からの高さはＤ／２〜4D／５
の範囲が好ましい。

又下部側壁６の頂部Ａ近傍はノズル２からの燃
料Ｆが噴霧となつて当る衝突域８とされ、更に必
要に応じて上部側壁５の頂部Ａ近傍も衝突域７と
される。衝突域７，８は断面が直線となるように
形成するのが好ましい。

従つて、噴霧された燃料は比較的に面積が広い
下部側壁に沿つて流下して付着面積が広くなり、
空気の渦流が弱い下方でも、比較的に均一な空気
の燃焼作用が行われる。また、燃料が頂部を通過
するときに、絞られた頂部により生ずる空気の剥
離によつて燃料の霧化が向上し、この傾向は高速
時において著しく、その結果、高速時の燃焼作用
も良好に行われる。

［まとめ］ 以上説明したように本考案によれば、鈍角の頂
部に対して上下の側壁を円鍾状に形成し、その頂
部近傍および頂部下方の下部側壁の円鍾状部分に
燃料を噴射するので、燃料が頂部から滴下するこ
となく側壁に沿つて流れ、付着面積が広くなり、
低速（暖機）高速のいずれも燃焼が良好となり、
未燃燃料の排出が少なくなる。

【図面の簡単な説明】

図は本考案によるデイーゼル機関の燃焼室の構
造の一実施例を示す要部断面図である。 １……ピストン、２……燃焼室、３……ノズ
ル、４……側壁、５……上部側壁、６……下部側
壁、７，８……衝突域、Ａ……頂部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンの上部に形成された多噴孔ノズルから
   燃料が噴射されるデイーゼル機関の燃焼室におい
   て、燃焼室の側壁は上部側壁および下部側壁で形
   成され、その上部側壁は上方に向つて拡がつて円
   鍾状に傾斜しており、またその下部側壁は下方に
   向つて拡がつて円鍾状に傾斜しており、そして上
   部側壁と下部側壁との交差面は鈍角をなした頂部
   を形成し、頂部近傍および頂部下方の下部側壁の
   円鍾状部分を燃料の衝突域としたことを特徴とす
   るデイーゼル機関の燃焼室の構造。