JPS6257422B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、溶融金属の連続鋳造における電磁誘
導撹拌方法に係り、特に一組の励磁コイルに夫々
周波数の異なる交流を流すことによつて誘起され
る電磁誘導撹拌作用を利用して鋳造品の未凝固部
分の溶鋼を効果的に撹拌し、該溶鋼の中心偏析を
減少させて品質の良好な鋳造品を得ることを目的
とするものである。

従来、この種の電磁誘導撹拌方法として、例え
ば特公昭52−44295号公報に、連続鋳造品の未凝
固部分の溶誘金属を交流によつて励起される磁界
を利用して電磁誘導撹拌するに際し、前記交流を
励磁コイルに間欠的に流すようにしたものが提案
されているが、この方法では励磁コイルに交流を
流した時は溶融金属が整流する一方、その交流を
断じた時は該溶融金属の整流が一時的に慣性で乱
流として、整流と乱流の混合撹拌作用を利用せん
とするものであり、交流を流した整流時が必ず存
在して、該整流時には回転流動のためにホワイト
バンドが発生し、柱状晶が成長し、溶鋼芯部の濃
厚偏析も助成される欠点があつた。また、特公昭
53−6932号公報には、この種溶鋼の中央未凝固部
分に電磁撹拌装置により電磁力を利用させてこれ
を撹拌する方法として、前記電磁撹拌装置に通電
する電流の方向を切換えるようにしたものが提案
されているが、この方法では、急激な反転流動時
に溶鋼流動が一時的に止められる為その際撹拌流
がほとんど存在しないから、溶鋼プール内の温度
の均一化が得にくく、分断されて生じた等軸晶核
も溶鋼プール内で再溶解してしまつて、等軸晶帯
が得難い欠点があつた。

本発明は、上記従来例の欠点を改善すべく、こ
の種連続鋳造品の未凝固部分の溶融金属を励磁コ
イルに流す交流で励起される磁界を利用して電磁
誘導撹拌をするに際し、該撹拌が常時発生し、か
つ該撹拌の方向や強さが常に変化して、均一混合
撹拌がより促進されると共に乱流撹拌が得られる
ようにしたものであり、この結果溶鋼プールの温
度が均一化されて柱状晶の分断により生じた等軸
晶核が再溶解されにくく、鋳造品の中央部に広い
等軸晶帯が得られるようにすると共に、溶鋼の電
磁界面を一方向のみでなく他方向から撹拌するこ
とによりホワイトバンドの発生自体も抑制できる
ようにせんとするものである。このため、本発明
にかかる溶融金属の連続鋳造における電磁誘導撹
拌方法は、複数対の励磁コイルの各対に夫々周波
数の異なる交流を流すようにしたものであり、該
異なる周波数で励起される夫々の励磁コイルに発
生する磁界の合成によつて、溶融金属に誘起され
る撹拌が、その運動方向並びに強さの点で時々
刻々変化し、多様にして連続的な撹拌が得られる
ようにして、上記の目的を達成するようにしたも
のである。

本発明方法の電磁誘導撹拌方法において、複数
対の励磁コイルに負荷する交流は、１〜60Hzとし
て、各対間の交流の周波数の差は、0.03〜0.25Hz
と設定している。鋳型内又はシエル厚の厚い最終
凝固域の鋳片内の溶鋼を電磁誘導撹拌する場合
は、それぞれ鋳型銅壁又は鋳片の凝固部を通して
磁力線を溶鋼に到達させる為に、減衰の小さい低
周波数、例えば１〜20Hzの交流を用いる方が好ま
しい。

交流の周波数の差は、等軸晶帯を得る一方偏析
度を低く抑える観点から上記範囲に設定してい
る。

この様に設定された周波数の異なる交流を励磁
コイルに流すことにより、励磁コイルで励起され
た磁界が時々刻々とその方向と強さを変化させ結
果として鋳片状の溶鋼の運動方向と撹拌強度を好
適に変化させることになる。この現象により、溶
鋼プール中心部の溶鋼の撹拌もよく行われる結
果、温度分布が均一になり、広い等軸晶帯が得ら
れるものであり、また、従来の撹拌と異なり、乱
流撹拌である為、一方向にのみ凝固界面を洗う従
来の撹拌に比べてマツシーゾーン内の合金元素の
洗い出しが不均一に行われ、従来のような明瞭な
ホワイトバンドは現われにくいものであり、さら
にまた、比較的弱い撹拌で広い等軸晶帯が得られ
る為、ホワイトバンドより洗い出された合金元素
の蓄積による濃厚偏析帯を形成することがなく、
中心偏析が減少し、改善されることにより、品質
の良好な鋳造品が得られるものである。

各対の励磁コイルに流す交流の周波数差に関し
て好ましくは１〜20Hzの場合は0.04〜0.2Hz、50
〜60Hzの場合は、0.06〜0.20Hzの範囲で周波数に
差を設ければよく、偏析度を更に低く抑制するこ
とができる。

尚本発明方法においては、鋳片内の溶鋼の運動
方向を限定するものではないが、好ましくは鋳片
の軸芯まわりに運動させればよい。又電磁誘導撹
拌する位置は、鋳型内、鋳片の中間凝固域、鋳片
の最終凝固域の何れでもよく又これらの領域の２
箇所以上でもよい。

以下、本発明を図面に示す実施例について詳細
に説明する。

第１図Ａは、本発明の溶融金属の連続鋳造にお
ける電磁誘導撹拌方法に用いる装置の概略の説明
図にして、電磁コイル１ａ，１ｂ，１ｃ，１ｄの
回転磁界を利用して連続鋳造片の残存溶鋼を種々
の方向に流動撹拌して鋳造品の溶融金属部におけ
る濃厚偏析、柱状晶、気孔およびホワイトバンド
の生成あるいは成長が阻止されるようにする。電
磁コイルは、例えば断面角形をなす鋳片の外周四
面の各面に夫々電磁コイル１ａ，１ｂ，１ｃ，１
ｄを一定距離をおいて対称的に配置し、電磁コイ
ル１ａと１ｃ、１ｂと１ｄとからなる２対の電磁
コイルを配置している。図面で示す鋳片の断面で
みて上下に配置した一対の電磁コイル１ａ，１ｃ
をＶ相とし、左右に配置した一対の電磁コイル１
ｂ，１ｄをＵ相とし、該各VU相には例えば、第
２図に示す如き、Ｕ相の電磁コイルには２Hzの交
流を連続的に供給する一方、Ｖ相の電磁コイルに
は2.5Hzの交流を連続的に供給するようにする
と、これら一組のＶ相Ｕ相の電磁コイルに流れる
周波数の異なる２相の交流によつてそれらが合成
された磁界が連続鋳造片の残存溶鋼に付与され
る。この磁界は第３図に示す如く、運動の方向及
び磁界強度が時々刻々変化し、たとえばスタート
時点の両相の周波数が０時における中心原点から
始まり、連続的に磁界強度を種々に変えながら方
向を変えて再び中心原点に戻る１サイクルの旋回
を繰り返すもので、連続鋳造片の残存溶鋼には常
に乱流撹拌が得られ、その結果残存溶鋼が均一に
混合される。従つて、このような磁界によつて溶
鋼プール内の溶鋼流動が決まつた方向に生じず、
時々刻々変化すると共にその運動方向を反転もす
るので、溶媒の均一混合撹拌がより促進されて、
乱流撹拌が得られやすく、また溶鋼プール内が均
一に混合される結果、軸芯部の濃厚偏析帯の形成
を妨げる一方、等軸晶の生成も助け、さらに凝固
界面を一方向にのみ撹拌しないので、ホワイトバ
ンドの抑制効果もあるものである。

一般に電磁撹拌では、強い撹拌を行う程、柱状
晶が分断される一方、等軸晶核が生成されて、広
い等軸晶が得られるが、従来の強撹拌は整流撹拌
となり、凝固界面を優先的に洗浄する結果、マツ
シーゾーン内の合金元素の濃化した溶媒が洗い出
され、ホワイトバンドと呼ばれる負偏析帯が強く
生じ、又、洗い出された合金元素が残溶鋼プール
内に蓄積され、濃厚偏析帯のコアを形成し、中心
偏析を助長することにもなる。又、一方、従来の
弱撹拌では、ホワイトバンドは軽減されるが、柱
状晶の分断がおこりにくく、等軸晶帯の形成も少
なくなる。さらに上記、従来の整流の撹拌では溶
鋼プール中心部の溶鋼の撹拌がほとんど行われな
い為、温度分布が均一化されることも少なく、柱
状晶の分断により生じた等軸晶核も再溶解されや
すく、等軸晶帯の形成に不利である。

これに対し、上記の如く本発明実施例の方法で
は溶鋼プール内の溶鋼の運動方向、強さが時間と
共に変化し、溶鋼プール中心部の溶鋼の撹拌もよ
く行われる結果、温度分布が均一になり、広い等
軸晶帯が得られるものであり、且つこのような乱
流撹拌によつて、一方向にのみ凝固界面を洗う従
来の撹拌に比べてマツシーゾーン内の合金元素の
洗い出しが不均一に行われ、従来のような明瞭な
ホワイトバンドは現われにくいものであり、また
比較的弱い撹拌で広い等軸晶帯が得られる為、ホ
ワイトバンドより洗い出された合金元素の蓄積に
よる濃厚偏析帯を形成することがなく、中心偏析
が減少し、改善されるものである。

前記説明においては、２対の励磁コイルを鋳片
まわりに配置したものであるが、第１図Ｂのよう
に鋳片まわりに等間隔を置いて３対の励磁コイル
を配置してもよい。また、長方形断面の鋳片に対
しては、第１図Ｃのようにその大きさに応じ、励
磁コイルを多数組配置してもよい。このような場
合は隣り合う励磁コイルには0.03〜0.25Hzの周波
数差を有する交流を流すようにすればよく、前記
説明と同様の効果が得られる。

実施例 0.6％Ｃ鋼の連続鋳造の場合について実験し
た。

0.6％Ｃ鋼の成分は１例として Ｃ：0.61、Si：1.65、Mn：0.85、Ｐ：0.025、
Ｓ：0.020、Al：0.030、 のものである。

このような0.6％Ｃ鋼を300×400mm断面のサイ
ズの連鋳機で0.9ｍ／minの引抜速度、タンデイ
ツシユ内溶鋼過熱度50℃で鋳造し、鋳片の凝固シ
エル厚105mmの所で２、10、20Hzで撹拌実験を行
つた。又、凝固シエル厚55mmの所で50、60Hzで撹
拌実験を行つた。なお回転磁界の磁束密度は、コ
イル中心部分で夫々約1100ガウスと250ガウスで
ある。

第４図は、本発明方法として60Hzと60.1Hzで周
波数をずらして撹拌を行つた場合と、従来法とし
てずらさなかつた場合のホワイトバンド部のＣ負
偏析度と等軸晶率の関係を示すもので本発明方法
により、同じ負偏析度の場合の等軸晶率が著しく
増加していることが分かる。

ここで、 ホワイトバンド部負偏析度＝（ホワイトバンド部の合金元素の濃度−鋼の平均の合金元素の濃度）／（鋼の平均の合
金元素の濃度） である。

第５図は、本発明方法として２Hzと2.1Hzで周
波数をずらして撹拌を行つた場合と、従来法とし
てずらさなかつた場合の鋳片内Ｃの中心偏析度と
ホワイトバンド部のＣの負偏析度の関係を示すも
ので、本発明方法により、ホワイトバンド部の負
偏析度が同じ場合でも中心偏析度の低下が大きい
ことが分かる。

ここで中心偏析度とは 中心偏析度＝鋳片中心部の合金元素の濃度／鋼の平均
の合金元素の濃度 である。

第６図、第７図は夫々、本発明方法において、
一方の相の周波数が60Hzと２Hzの場合、片方の周
波数を大きくしていつた時の中心偏析度の変化を
示すもので、これらより、両相の周波数の差を
0.03〜0.25Hzとすれば中心偏析度を低く抑制でき
る。第６図の60Hzの場合には、0.06〜0.2Hzの周
波数差の時、中心偏析度の低下が更に大きく、ま
た第７図の２Hzの場合には、0.04〜0.2Hzの周波
数差の時、中心偏析度の低下が更に大きいことが
分かる。

第８図は本発明の方法において、２、10、20Hz
の場合と50、60Hzの場合の周波数差による中心偏
析の改善効果を示すもので、２、10、20Hzの場合
や、中心偏析度≦1.15の領域は50、60Hzの場合に
は、この領域は、ほとんど変化しないことがわか
つた。

なお、上記実施例はないが、Ｕ相を一定周波数
にしてＶ相を0.03〜0.25Hzの範囲で連続的に変化
させても前記説明と同等かあるいは同等以上の効
果を奏し得るものである。

上記実施例では鋳片の中間凝固域と最終凝固域
での電磁誘導撹拌について説明したが、鋳型内域
で本発明方法により鋳型内溶鋼を電磁誘導撹拌し
ても本実施例と同等程度の効果が期待できる。

上記実施例に詳記した如く、本発明は溶融金属
の連結鋳造における電磁誘導撹拌方法として、連
続鋳造品の未凝固部分の溶融金属をその外周に設
けた複数対の励磁コイルに交流を流して励起され
る磁界で電磁誘導撹拌するに際し、上記各対の励
磁コイルに流す交流の周波数を異ならせて、それ
らの合成磁界が常時回転方向と強度を変えるよう
にしたことを特徴とするもので簡単な工程よりな
る電磁誘導撹拌方法によつて良好な品質の連続鋳
造品を得ることが出来るものである。

本発明方法は、通常の垂直タイプの連続鋳造に
加え、水平タイプの連続鋳造にも適用でき、その
適用範囲の広い且つ実用性の高いものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明方法に用いる一組の電磁コイル
の配置の一例を示す説明図、第２図は第１図の電
磁コイルに夫々流す交流の周波数線図、第３図は
第１図の電磁コイルに第２図の交流を流した場合
の合成磁界のベクトル線図、第４図は本発明方法
と従来法による鋳片内ホワイトバンド部のＣの負
偏析度と等軸晶率の関係線図、第５図は本発明方
法と従来法による鋳片内中心偏析度とホワイトバ
ンド部負偏析度の関係線図、第６図は本発明方法
による60Hz撹拌時の周波数差と中心偏析度の関係
線図、第７図は本発明方法による２Hz撹拌時の周
波数差と中心偏析度の関係線図、第８図は本発明
方法による各周波数に対する適正周波数差の線図
である。 １……電磁コイル。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 連続鋳造品の未凝固部分の溶融金属をその外
   周に設けた複数対の励磁コイルに交流を流して励
   起される磁界で電磁誘導撹拌するに際し、上記鋳
   造品を挟んで対向配置した各対の励磁コイルには
   １〜60Hzの交流を流すと共に、隣合う対の励磁コ
   イルに流す交流の周波数を0.03〜0.25Hzの範囲で
   異ならせ、上記励磁コイルにより励起される合成
   磁界を変化させて上記溶融金属の運動方向と撹拌
   強度とを変える様にしたことを特徴とする溶融金
   属の連続鋳造における電磁誘導撹拌方法。 ２ 特許請求の範囲第１項記載の電磁誘導撹拌方
   法において、上記一対の励磁コイルには１〜20Hz
   の交流を流し、該励磁コイルと隣り合う励磁コイ
   ルに上記交流の周波数と0.04〜0.2Hzの範囲で異
   なる周波数の交流を流すもの。 ３ 特許請求の範囲１項記載の電磁誘導撹拌方法
   において、上記一対の励磁コイルに50〜60Hzの交
   流を流し且つ該励磁コイルと隣り合う励磁コイル
   に0.06〜0.2Hzの範囲で異なる周波数の交流を流
   すもの。