JPS6235527B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、水中ポンプや水中モータ、その他一
般の推力軸受に使用される、らせん形溝を備えた
動圧型スラスト軸受に関する。

（従来の技術） 従来のスパイラル溝付スラスト軸受は、回転軸
を支持する固定支持面に、一方向のみのスパイラ
ル溝を切り、相対回転するこれら二面間に流体を
介在させ、スパイラル溝に軸の回転に伴う動圧を
発生させて軸推力を支持させていた。（例えば特
公昭41−12121号公報参照） ところが、このようなスパイラル溝付スラスト
軸受は、軸受表面にのみスパイラル溝を設けてい
たため、第４図に示すようなテイルテイングパツ
ド方式の軸受と比較して、衝撃的な荷重や荷重の
変動に対して弱いことがいわれていた。なお、第
４図では、回転軸１と一体に回転する上部支持体
２にデイスク３を固定し、該デイスク３に対向し
て、固定軸４に対して球面５で支持され回転しな
いようにピン６に係合された下部支持体７の上部
に、パツド８を回動しないように取り付けて構成
されている。

また、前記従来のスパイラル溝付スラスト軸受
では、高速回転になると、スパイラル溝を通つて
ポンプ・イン（流入）される流体が乱流又はキヤ
ビテーシヨンを生じ、高速回転しても本来の値ま
で動圧が高められない場合があるなどの欠点があ
つた。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明は、上記従来技術の欠点を除去すること
ができ、スパイラル溝付動圧型スラスト軸受に加
えられる衝撃荷重や荷重の変動にもよく耐え、ま
た高速回転してもスパイラル溝を通つてポンプ・
インされる流体に乱流やキヤビテーシヨンを生じ
させないようにすることにある。

（問題点を解決するための手段） 本発明は、表面及び裏面に、一方向の回転によ
つて動圧効果を生じさせるスパイラル溝をそれぞ
れ設けると共に片面のスパイラル溝形状の外周に
ランド部を設け、且つ該表裏両面を連通する貫通
孔をあけたスラストカラーを、回転軸に取付けら
れた回転カラーと固定受との間に介在させ、該回
転軸の回転によつてスラストカラーを該回転軸の
回転数以下で回転させるようにしたスラスト軸受
である。

（作用） 上記のような構成により、回転軸によつて回転
カラーを回転させると、該回転カラーに接するス
ラストカラーのスパイラル溝に動圧効果が生じ、
中央のポケツト部に流体の高圧部が形成されると
共に、回転カラーとスラストカラー間の流体摩擦
力等によつて該スラストカラー自身も同方向に回
転しようとする。また、この圧力は連通孔を介し
て反対側の面にも伝達される。この回転に伴い、
該スラストカラーの裏面に形成されたスパイラル
溝によつて固定受との間にも同様に動圧効果が生
じ、該スラストカラーの表裏両面に形成された動
圧によつて、軸推力は有効に支持される。

そしてこの際、上記スラストカラー自身の回転
は、スラストカラーが１枚の場合、回転カラーの
約半分の回転数で回転するようになる。

また、裏面が球面座の場合は、接触面積が大き
くなるため平滑の表面のみで回転する。これによ
つて表面のポケツト部に動圧が発生する。この流
体圧力は前述のように貫通孔を通じて、裏面のポ
ケツト部にも圧力がもたらされ、球面側が浮上
し、摩擦抵抗が小さくなり、裏面でも相対運動を
生じ、このスラストカラーが回転するようにな
る。

このようにして、スラストカラーの表裏両面に
流体膜が形成されるので、クツシヨン効果が生
じ、またスラストカラーの回転数（即ち軸受回転
数）が二分されるので、スパイラル溝を通つてポ
ンプ・インされる流入速度がそれだけ低減され
る。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。第１図は本発明の一実施例を示す裏面が球面
状としたスラストカラーを１枚用いた場合の縦断
面図、第２図は第１図Ａ−Ａ矢視図でスラストカ
ラーの平面図であり、第３図に裏面のスパイラル
溝の形状を示した。図において、軸１にキー止め
された回転カラー１１と、固定軸４の球面５に支
持された固定受１２との間に、１枚のスラストカ
ラー１３が介在され、該スラストカラー１３の一
方の面（表面）１３ａは平滑に、また他方の面
（裏面）１３ｂは、大きな曲率半径Ｒで加工した
球面状に形成され、これらは、内部に潤滑液を充
満した軸受室１４に収納されている。

上記スラストカラー１３は、第２図に示すよう
に、その表面１３ａにスパイラル溝１５ａ（図で
黒い部分）が、軸１と回転カラー１１の矢印方向
の回転によつて流体がスラストカラー１３の周辺
部より溝１５に沿つて中心のポケツト部１６ａ
（図で黒い部分で凹部を形成している。）へ誘導さ
れ、回転カラー１１とスラストカラー１３との間
で動圧効果を生じるような向きに形成されてい
る。

一方、該スラストカラー１３の裏面１３ｂのス
パイラル溝１５ｂは、第３図に示されており、ス
ラストカラー１３自身が回転カラー１１との流体
摩擦等により、回転軸１の回転と同方向に回転す
るのに伴い、周辺部より溝１５ｂに沿つてポケツ
ト部１６ｂへ流体を流入する向きに形成されてい
る。この実施例の場合、上方からみてスラストカ
ラー１３が回転軸１と同じ反時計方向（下方から
みれば時計方向）に回転しようとするので、裏面
１３ｂのスパイラル溝１５ｂの向きは、裏面から
みた場合、第２図に示された表面１３ａのスパイ
ラル溝１５ａと同じ向きに形成されている。な
お、図中、１８は外周に残されたランド部を示
す。また、スラストカラーの表裏両面の中心部に
形成されポケツト部１６ａ，１６ｂを貫通する10
μｍ〜２mmの孔１７が、最高圧力を示す中心部に
穿設されているので、スラストカラーの両面の圧
力はバランスされている。そして該スラストカラ
ーは、回転初期には、表面の平滑面において運動
が生じ→動圧流体→ポケツト部の貫通孔１７を通
つて裏面のポケツト部１６ｂに圧力をもたらす
（ランド部１８がシールとなつて圧力を漏らさな
い。）→球面の裏側が浮上し→スラストカラー１
３が回転するようになる。

この実施例では、スラストカラー１３には、耐
摩耗性、耐食性、耐熱性に優れたSiC（炭化珪
素）が使用され、また、回転カラー１１及び固定
受１２には、８％カーボンを含有した高鉛青銅が
使用される。なお、上記スラストカラーを構成す
るセラミツクス材は、耐食性に優れている反面、
加工性が悪いため、その表面に３〜10μｍ（ミク
ロンメータ）の極めて浅いスパイラル状の溝加工
を施すことは容易ではないが、本発明で、所定形
状のスパイラル状の樹脂マスクで遮蔽した上、微
粉のアルミナ質研削材を上記樹脂マスク上に噴射
するシヨツトブラスト加工法により、極めて短時
間にスパイラル溝を形成する。なお、スパイラル
状溝の形成方法については、先願に係る特願昭58
−121567号明細書に記載されている。

この実施例によれば、回転軸１に荷重負荷をか
けた状態で矢印方向に回転させると、スラストカ
ラー１３自身も回転軸の回転数以下で回転し、そ
の表裏両面のスパイラル溝１５ａ，１５ｂの周辺
部より潤滑油をポケツト部１６ａ，１６ｂへ向つ
て強制移動させるのに伴い、動圧を発生し、対向
両面間に所要の厚さの液膜が形成され、推力荷重
を支える。

上記のように、両面に同じ向きのスパイラル溝
を設けたスラストカラーを用いることで軸受回転
数を２分することが可能になつたので、このスラ
ストカラーを複数枚重ねることにより、種々の適
切な回転数（なお、潤滑液によつて流体圧力値は
変化する）を選ぶことができる。従つて、高速回
転に伴い、スパイラル溝を通つてポンプ・インさ
れる流体が乱流やキヤビテーシヨンを生じるのを
防ぐことができる。また衝撃に対しても、スラス
トカラーの両面に形成された液膜によるクツシヨ
ン効果が有効に作用して衝撃変動荷重によく耐
え、しかも前記のように高速回転で安定な軸受性
が得られる。

第５図は、スラスト軸受試験装置の概要図であ
つて、供試軸受２１Ａ，２１Ｂの一方の軸受２１
Ａは、可変速モータ（10〜5000rpm）２４よりプ
ーリ２５を経て駆動される回転軸２３の端に取り
付けられ、他方の軸受２１Ｂは、油圧シリンダ
（〜10000Kgｆ）２８、ロードセル３０を経て推力
軸２７の端部に取付けられる。図中、２２は軸
受、２６はトルクメータ、２９は油圧ポンプを示
す。

本発明のスラスト軸受を、上記第５図のスラス
ト軸受試験装置で、部材２１Ａと２１Ｂを回転カ
ラーと固定受とし、その間にスラストカラーを介
在させてテストした結果を例示する。

10℃水道水中で、回転カラー２１Ａが3000rpm
のとき、スラストカラーは約半分の回転数で回転
していることが確認された。このときのスラスト
荷重は10000Kgｆである。このことは、ポケツト
中心部の貫通孔１７によつて表面、裏面ともに圧
力がバランスしたため、同程度の回転数となつた
ものである。また、固定受２１Ｂ側のカラー形状
が球面状になつており、自在受の役目を十分果す
ことが判明した。

なお、上記実施例において、スラストカラーの
形状が表面を平滑に、裏面を球面状にそれぞれ形
成したものについて説明したが、このような形状
のものに限らないことは勿論であり、表裏両面と
も平滑にすることも勿論可能である。この場合、
貫通孔がなくても高速回転時、表裏両面に動圧が
発生し、スラストカラーは浮上して回転軸よりも
低速で回転するが、本発明のように、片面、通常
固定受側の片面のスパイラル溝形状の外周にラン
ド部を設け、且つ表裏両面を貫通孔で連通させる
ようにしたことにより、起動時において、外周に
ランド部を設けた面の裏面つまり、ランド部を設
けていない面において固体摺擦が行なわれて動圧
が発生し、この動圧によつてスラスト荷重を支
え、次いで貫通孔から伝達した動圧によつて外周
にランド部を設けた側の摺動面を浮上させるもの
であるから、外周にランド部を設けた面の固体摺
擦は極めて軽い負荷状態で行われることになり、
動圧軸受に固有の起動・停止時の固体接触による
軸受部の損傷に関しては、主として外周にランド
部が設けられている面の裏面つまり、外周にラン
ド部が設けられていない面の側においてのみ配慮
すれば良いこととなり、安価で且つ、信頼性の高
いスラスト軸受を提供できる。

また、第１図において回転カラー及び固定受が
潤滑液を充満した軸受室に収納したものを図示し
たが、これも一使用例に過ぎないことは勿論であ
る。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明によれば、スラス
トカラーの表裏両面に液膜が形成されるので、ス
パイラル溝付動圧軸受が従来のテイルテイングパ
ツド方式の軸受より弱いとされた衝撃的な荷重に
も十分耐えることができ、スパイラル軸受本来の
特性である流体摩擦を利用して損失動力を軽減
し、テイルテイングパツド軸受に比べてスラスト
荷重5000Kgｆのとき約1/5以下とし、また負荷能
力を向上して、テイルテイングパツド軸受に比べ
て５倍以上とし（潤滑液50％プロピレングリコー
ル、φ86の軸受径で従来軸受が2000Kgｆのもの
が、本発明軸受は10000Kgｆ）、高温環境にもよく
耐え、テイルテイングパツド軸受では100℃以下
であつたものが、本発明では200℃以上にも耐え
るなどの特徴を維持すると共に、本発明ではスラ
ストカラーによつて軸受回転数が２分されるの
で、高速回転仕様を満足し、また多少の寸法公差
や組立の不備（ミス・アライメント）があつて
も、底部を自在受に形成することによつて安定な
軸受性能を有することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示すスラスト軸受
の縦断面図、第２図は第１図Ａ−Ａ矢視図、第３
図は裏面を球面状としたときのスパイラル溝形状
を示す図、第４図は従来のテイルテイングパツド
型軸受の縦断面図、第５図はスラスト軸受試験装
置の概要図である。 １……回転軸、１１……回転カラー、１３……
スラストカラー、１２……固定受、１５ａ，１５
ｂ……スパイラル溝、１６ａ，１６ｂ……ポケツ
ト部、１７……貫通孔、１８……ランド部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 表面及び裏面に一方向の回転によつて動圧効
   果を生じさせるスパイラル溝をそれぞれ設けると
   共に片面のスパイラル溝形状の外周にランド部を
   設け、且つ該表裏両面を連通する貫通孔をあけた
   スラストカラーを、回転軸に取付けられた回転カ
   ラーと固定受との間に介在させ、該回転軸の回転
   によつてスラストカラーを該回転軸の回転数以下
   で回転させるようにしたことを特徴とするスラス
   ト軸受。 ２ 前記スパイラル溝形状の外周にランド部が形
   成された面とこれと対向する面が球面状である特
   許請求の範囲第１項記載のスラスト軸受。