JPH045846B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、水中ポンプや水中モータ、その他一
般に推力軸受に使用される、らせん形溝を備えた
動圧型スラスト軸受に関し、特に軸封作用をも行
わせるようにした軸受装置に関する。

（従来の技術） 従来のスパイラル溝付スラスト軸受は、回転軸
を支持する固定支持面に、一方向のみのスパイラ
ル溝を切り、相対回転するこれら二面間に流体を
介在させ、スパイラル溝に軸の回転に伴う動圧を
発生させて軸推力を支持させていた（例えば特公
昭41−12121号公報参照）。ところが、これら従来
のスパイラル溝付スラスト軸受は、軸封作用を有
しないため、回転軸部には別に密封装置を必要と
した。

一方、従来の回転軸部の密封装置には、グラン
ドパツキンシールが広く一般に用いられている
が、この型式のものは完全シールが不可能で、軸
スリーブの摩耗を大きくし、信頼性、耐久性がな
いという欠点があつた。

上記のグランドパツキンシールに替わるものと
して、相対回転して対向する両端面によつて密封
作用を行なう端面シールがある。この端面シール
は、通常、対向する両端面を接触摺動させる一般
のメカニカルシールと称されているものであつ
て、第６図に示すように、回転軸１に固定して設
けられた回転リング２と、該回転リング２に対し
て摺動する静止部材３との対向する両端面で密封
作用を行なうものである。上記静止部材３は、ケ
ーシング４に一端を支持されたばね５によつて回
転リング２の端面に常時押圧されており、またケ
ーシング４の内側には、密封流体（密封されるべ
き流体）が充満されている。なお図中、６は静止
部材３とケーシング４との摺動面に設けられたＯ
リングを示す。

上記のような構成により、回転軸１が静止して
いるときは、たとえ、密封流体に圧力が生じてい
ないときでも、ばね５によつて静止部材３が回転
リング２の端面に押圧されているので、摺動面外
側に充満された密封流体は、軸を伝つて漏出する
ことはなく、密封作用が行われる。また回転軸１
が回転しているときは、密封流体が加圧されてい
るので、静止部材３は、ばね５と該密封流体の圧
力とによつて必要な押圧荷重が与えられ、軸１と
共に回転する回転リング２の端面に向つて押圧さ
れ、密封作用が行われる。

（発明が解決しようとする問題点） 上記した従来のスパイラル溝付スラスト軸受
は、軸封作用を有しないので回転軸部に密封装置
を別に必要であつたし、また、密封装置として従
来使用されている端面シールにおいては、対向す
る両端面の摺動によつて形成される密封面が、油
膜の形成が完全に行われないため接触状態にある
場合が多くて損傷を受け易く、非接触シールに比
べて寿命が短く、また漏洩量は他のシールに比べ
て比較的少ないが、完全密封は不可能であるとい
う問題点があつた。

（問題点を解決するための手段） 本発明は、上記した従来技術の問題点を解決す
るために、軸に遊隙をもつて貫通されたプレート
と対向して、その両側に、軸に一体に取付けられ
た回転円板とケーシングに取付けられた受け板と
をそれぞれ設け、上記プレートと回転円板の対向
する面の一方に、軸の回転によつて流体を外方か
ら内方に導く向きをした外方スパイラル溝と、該
外方スパイラル溝の半径方向内方に、流体を内方
から外方に導く向きをした内方スパイラル溝を設
け、また、上記プレートと受け板の対向する面の
一方に、該プレートが軸と同方向に回転すること
によつて流体を内方又は外方へ向つて排除する向
きをしたスパイラル溝を、外側又は内側ランド部
に接続して設け、前記プレートの半径方向内側と
外側を封入流体室等の低圧流体室又は密封流体室
等の高圧流体室の何れかにそれぞれ連通させたこ
とを特徴としている。

（作 用） 本発明は、上記のように構成したことにより、
駆動装置によつて回転軸が回転され、一方向にス
ラスト荷重が加えられたとき、該スラスト荷重
は、回転軸に一体に取付けられた回転円板を介し
てプレートに加えられる。該プレートと回転円板
との対向する面の一方には、流体を外方から内方
に導く外方スパイラル溝と、流体を内方から外方
に導く内方スパイラル溝が形成されているので、
プレートの外側が密封流体に接し、内側が封入流
体に接しているときは、回転円板の回転につれ
て、上記両対向面間に形成された間隙部には、上
記両スパイラル溝による動圧効果が生じ、外周部
から進入した密封流体と内周部から進入した封入
流体とがプレートの半径方向の中間位置で衝突し
合い、圧力的にバランスした位置で平衡状態を呈
すると共に、回転円板とプレート間の流体摩擦力
等によつて該プレート自身も軸と同方向に回転し
ようとする。

このプレートの回転に伴い、該プレートの裏面
と受け板との間にも相対回転運動を生じるが、こ
のプレートと受け板との対向面には、プレートの
上記のような軸と同方向の回転により流体を半径
方向に排除する向きのスパイラル溝がランド部に
接続して形成されているので、これらの両対向面
には互いに強力な密着作用を生じ、プレートは受
け板に強く圧着され、固着された状態となる。

従つて、該プレートは、回転円板によるスラス
ト荷重を支えるスラストカラーとして十分な機能
を果す（そのため密封面に適宜圧力流体凹所を設
けることも可能である。）と共に、該プレートと
回転円板との摺動間隙部には、前記のように密封
流体を含む２種類の流体がそれぞれの動圧効果に
より、圧力的にバランスした位置で平衡状態を呈
するので端面シール作用も完全に行われることに
なる。

（実施例） 次に、本発明の実施例を図面と共に説明する。

第１図は、本発明の軸受装置の第１実施例を示
す要部縦断面図であつて、図において、回転軸１
１に一体に形成ないし取付けられた回転円板１２
に対向して、プレート１３が軸１１に遊隙をもつ
て貫通して設けられ、該プレート１３の裏側は、
ケーシング１４に固定して取付けられた受け板１
５によつて支持され、かつ受け板１５の外周部端
縁に形成された突縁１５ａによつてプレート１３
が外方へ移動するのを阻止している。

上記プレート１３の回転円板１２と対向する面
（図の左側の面）には、第２図に示すように、そ
の外周部に、破線矢印で示す方向の回転軸１１の
回転によつて、プレート１３の外周に充満された
密封流体１６を半径方向内方に導く向きをした外
方スパイラル溝１７が設けられており、また軸の
貫通孔１１ａに接する内縁部近傍には環状凹所１
８が形成され、該環状凹所１８に接してその外側
に、軸１１の破線矢印方向の回転によつて、プレ
ート１３の内周に導入された封入流体１９を半径
方向外方へ導く向きをした内方スパイラル溝２０
が設けられており、前記外方スパイラル溝１７と
の間には、各スパイラル溝間の隆起部２１と同じ
高さのランド２２が形成されている。

一方、プレート１３の裏面、即ち受け板１５と
対向している面には、第３図に示すように、軸１
１の貫通孔１１ｂに接する内縁部に環状のランド
２３が設けられ、該環状ランド２３の外側に、該
プレート１３が前記軸１１の破線矢印方向と同方
向に回転したとき、該プレート１３と受け板１５
の両対向面間の間隙部に介在する流体を半径方向
外方へ排除する向きをしたスパイラル溝２４が設
けられている。なお図中、２５は密封流体室（高
圧流体室）、２６はグリース等の封入流体室（低
圧流体室）、２７はオイルシールを示す。

上記のように構成されているので、回転軸１１
が回転され、駆動側へ向つて図示の矢印方向にス
ラスト荷重が加えられると、該スラスト荷重は、
回転軸１１と一体に取付けられた回転円板１２を
介してプレート１３に加えられる。該プレート１
３と回転円板１２との対向面間には、前記のよう
に流体を外方から内方へ導く外方スパイラル溝１
７と、流体を内方から外方へ導く内方スパイラル
溝２０とが形成されているので、回転円板１２の
回転につれて、上記両対向面間に形成された間隙
部には、各スパイラル溝の半径位置Ａ〜Ｄにおけ
る圧力状態を線図で表わした第４図に示すよう
に、上記両スパイラル溝１７と２０による動圧効
果が生じ、プレート１３の外周部Ｄから進入した
既に密封圧力を有する密封流体と、内周部Ａから
進入した封入流体とが、プレート１３の半径方向
の中間位置で衝突し合い、圧力的にバランスした
位置Ａ〜Ｄで平衡状態を呈すると共に、回転円板
１２とプレート１３間の流体摩擦力等によつて該
プレート１３自身も軸１１と同方向に回転しよう
とする。

このプレート１３の回転に伴い、該プレート１
３の裏面と受け板１５との間にも相対回転運動を
生じるが、このプレート１３と受け板１５との対
向面には、上記のようなプレート１３の回転によ
り流体を半径方向に排除する向きのスパイラル溝
２４が内側の環状ランド２３に接続して形成され
ているので、これらの両対向面には互いに強力な
密着作用を生じ、プレート１３は受け板１５に強
く圧着され、固着された状態となる。

従つて、該プレート１３は、回転円板１２によ
るスラスト荷重を第４図のＡ〜Ｄの位置に示す動
圧効果によつて支えるスラストカラーとして、十
分な機能を果すと共に、該プレート１３と回転円
板１２との摺動間隙には、密封流体と封入流体と
が前記のように圧力的にバランスした位置Ａ〜Ｄ
で平衡状態を呈するので、端面シール作用も完全
に行われる。

なお、プレートにセラミツクス材を使用し、ま
た回転円板と受け板に鋳鉄、超硬合金等を使用す
れば、耐摩耗性が一段と向上する。この場合、セ
ラミツクス材へのスパイラル状の溝加工は、所定
形状のスパイラル状の樹脂マスクでセラミツクス
材の表面を遮蔽した上、微粉のアルミナ質研削材
を上記樹脂マスク上に噴射するシヨツトブラスト
加工法により、極めて短時間にスパイラル溝を形
成する。なお、スパイラル状溝の形成方法につい
ては、先願に係る特願昭58−121567号明細書に記
載されている。

第５図は、本発明の第２実施例を示す要部縦断
面図であつて、この図に使用された符号のうち、
第１図における符号と同一のものは、同一ないし
同様の構造を示すものとする。この実施例では、
回転軸１１従つてこれと一体の回転円板１２に加
えられるスラスト荷重が、第１実施例（第１図）
では被動側から駆動側に向つてかけられていたの
に対し、駆動側（図の右側）から被動側にかけら
れている点、及びプレート１３の外周部に封入流
体１９が、また内周部に密封流体１６がそれぞれ
導かれるように構成されている点で、第１実施例
と異る外、その他の点では一致しており、作用の
点でも本質的に異るところはない。

なお、前記実施例において、スパイラル溝をプ
レートの両側面に設けた例について説明したが、
これらのスパイラル溝を回転円板側及び受け板側
にそれぞれ設けても同様の作用を行なうことは勿
論であり、また、回転円板とプレートの対向面に
形成される外方スパイラル溝と内方スパイラル溝
の間に、ランドを形成した例について説明した
が、このランド部はなくてもよい。

また、プレートの両面を平滑面に形成した例に
ついて説明したが、一方の面を平滑面とし、他方
の面、例えば受け板と対向する面を球面状に形成
することも可能である。これにより、回転円板の
傾きに順応する働きも生じる。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明によれば、プレー
トと受け板の対向面に設けられた、プレートが軸
と共に回転しようとする動きによつてこれらの対
向間隙部にある流体を排除するようにしたスパイ
ラル溝により、回転軸の回転につれて自動的にプ
レートの裏面を受け板に密着固定させることがで
き、また回転円板とプレートの対向面に設けられ
た、流体を外方から内方へ導く外方スパイラル溝
と内方から外方へ導く内方スパイラル溝により、
プレートと回転円板との摺動間隙部において、密
封流体を含む２種類の流体がそれぞれの動圧効果
により互いに圧力的にバランスした位置で平衡状
態を維持するので、スラスト軸受として十分な機
能を有すると共に、密封面の損傷がなく従つて長
期間の使用に耐え、かつ完全密封の可能な密封装
置としての機能をも有する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の軸受装置の第１実施例を示す
要部縦断面図、第２図及び第３図はスパイラル溝
を具えたプレートの表面及び裏面の平面図、第４
図はプレート面における圧力状態を示す線図、第
５図は本発明の第２実施例を示す要部縦断面図、
第６図は従来の端面シール装置の要部断面図であ
る。 １１…回転軸、１２…回転円板、１３…プレー
ト、１４…ケーシング、１５…受け板、１７…外
方スパイラル溝、２０…内方スパイラル溝、２４
…スパイラル溝、２３…ランド、２５…密封流体
室、２６…封入流体室。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 軸に貫通されたプレートと対向して、その両
   側に、軸に一体に取付けられた回転円板と、ケー
   シングに取付けられた受け板とをそれぞれ設け、
   上記プレートと回転円板の対向する面の一方に、
   軸の回転によつて流体を外方から内方に導く向き
   の外方スパイラル溝と、該外方スパイラル溝の半
   径方向内方に、流体を内方から外方に導く向きの
   内方スパイラル溝を設け、また、上記プレートと
   受け板の対向する面の一方に、該プレートの軸と
   同方向の回転によつて流体を内方又は外方へ向つ
   て排除する向きのスパイラル溝を、外側又は内側
   ランド部に接続して設け、前記プレートの半径方
   向内側と外側を封入流体室等の低圧流体室又は密
   封流体室等の高圧流体室の何れかにそれぞれ連通
   させたことを特徴とする軸受装置。 ２ 前記プレートの半径方向内側を封入流体室に
   連通させ、同じく半径方向外側を密封流体室に連
   通させた特許請求の範囲第１項記載の軸受装置。 ３ 前記プレートの半径方向内側を密封流体室に
   連通させ、同じく半径方向外側を封入流体室に連
   通させた特許請求の範囲第１項記載の軸受装置。