JPS6218479B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、架線工事などにおいて使用する油圧
駆動式ウインチ装置に関する。

近年、たとえば高圧電線の架線工事や鉄塔の組
立て工事は増々大規模なものとなつてきている
が、これらの工事に使用されるウインチは、エン
ジンなどの駆動源の動力を純機械的な変速機構等
を介してウインチドラムを駆動する構成となつて
いる。すなわち、ウインチドラムの回転速度や回
転方向を変えるには、その機械的な変速機構を操
作するため、その切換え操作は円滑になし得ない
とともに、現場で必要な微速が得られにくかつ
た。従つて、鉄塔組立時のボルト合わせの時など
は、一旦部材を高所に吊り上げたのち、ウインチ
を停止し、しかるのちワイヤの尻手を人手でゆる
めて荷を少しづつすべらせて降ろす所謂「ずり込
み」操作に頼つていた。この方法はワイヤに加わ
る荷重が比較的小さいときには、さほど支障がな
いものであるが、荷重が大きいときには、尻手側
のワイヤに手が引き込まれ、不測の事故を起すと
いう危険があつた。

そこで、最近、ワイヤの尻手操作を機械により
自動的に行なわせようとする。いわゆるワインダ
が開発されたが、このワインダーによる尻手操作
の方式は吊り上げにはよいが、吊り下ろしの時は
上記同様ワインダーによる尻手張力を弱くし、ウ
インチドラムとワイヤの摩擦張力（ブレーキ力）
を荷重より小として、ワイヤをドラム上ですべら
せるから「ずり込み」作用には変りはなく、従つ
てブレーキ力が吊り上げ荷重より小となり、且つ
尻手張力は、摩擦クラツチ板相互の機械的な摩擦
によるブレーキ作用を利用する方法であるため、
使用に伴いその摩擦クラツチ板がたちまち摩耗
し、耐久性が著しく劣る。さらに、摩擦クラツチ
板相互の摩擦係数を基礎とするため、そのブレー
キ作用が不安定であり、かつ信頼性の劣るもので
あつた。そのため、労働安全法のデリツク構造規
格第26条に定める「吊上荷重の1.5倍のブレーキ
力」が無いので、法違反と指摘され業界の近年の
重大問題として研究されていたが、解決出来なか
つた。

本発明は、上記事情に着目してなされたもの
で、その第１の目的は、ウインチドラムの回転状
況に応じてワイヤの尻手操作を自動的に行なわせ
得るとともに、ワイヤの尻手張力が如何なる場合
も安定し、安全且適法に行なうことができるよう
にすることにあり、第２の目的は第１の目的に加
えて限られた駆動源の動力を最大限有効に利用し
てウインチの能力を高めることにある。

以下、本発明の一実施例を図面にもとづいて説
明する。

第１図はその油圧駆動式ウインチ装置の全体を
示すもので、１は台板であり、この台板１の上に
は、油圧ウインチユニツト２、ワインダーユニツ
ト３および油圧ポンプユニツト４が着脱自在に取
付け固定されるようになつている。また、上記各
ユニツト２，３，４はそれぞれ油圧輸送用の着脱
自在な耐高圧性ホース５，６，７によつて互いに
連結されている。

油圧ウインチユニツト２は、油圧モータ８、油
圧制御ユニツト９、ギヤーケース部１０およびウ
インチドラム１１からなり、油圧制御ユニツト９
によつて制御駆動される油圧モータ８により、ギ
ヤーケース部１０を介してウインチドラム１１を
回転駆動するようになつている。さらにギヤーケ
ース部１０には把止め車１２とラチエツト爪１３
が設けられ、巻上げ時においてウインチドラム１
１の把止めを行なうようになつている。また、油
圧制御ユニツト９は、後述するように４ポート３
位置切換弁からなる正逆回転操作用制御弁１４、
二次圧切換え弁１５、カウンターバランス弁１
６、短絡弁１７、チエツク弁１８および安全弁１
９からなり、上記逆回転操作用制御弁１４を正逆
回転切換えハンドル２０によつて操作し、所定の
動作を行なわせるものである。なお、油圧制御ユ
ニツト９は、カウンタバランス弁１６、短絡弁１
７およびチエツク弁１８の部分と、その他の部材
とが区分けされ、それぞれの部分を分割できるよ
うになつている。そして、これら油圧機器は第２
図で示すよう接続されている。すなわち、油圧ウ
インチユニツト２の圧力油の入口２１と出口２２
に対して正逆回転操作用制御弁１４を介して油圧
モータ８が接続され、かつ油圧モータ８と正逆回
転操作用制御弁１４の間に直列にカウンタバラン
ス弁１６が接続されている。また、短絡弁１７は
油圧モータ８の両端に対し並列に接続され、非常
時において開放するようになつている。さらに、
二次圧切換え弁１５は、上記正逆回転操作用制御
弁１４と連動して操作されるようになつている。
安全弁１９は入口２１と出口２２に対して並列に
接続され、一定以上の圧力を逃がすようになつて
いる。

また、ワインダーユニツト３は、油圧モータ２
４、歯車伝達機構２５、ワインダーリール２６、
短絡弁２７、リリーフ弁２８からなり、上記油圧
モータ２４、短絡弁２７およびリリーフ弁２８
は、ワインダーユニツト２の圧力油の入口２９と
出口３０に対してそれぞれ並列に接続されてい
る。そして、リリーフ弁２８に制御されながら油
圧モータ２４は動作し、上記リールワインダ２６
によるワイヤ３１の巻上げ速度がウインチドラム
１１の巻上げ速度よりもわずかに速くなるように
なつている。なお、巻戻し時においても同様であ
る。すなわち、リリーフ弁２８の開度を設定する
ことにより、圧力油を出口３０側へ逃がして一定
以上の圧力上昇を防止するものである。すなわ
ち、ワインダーリール２６は巻取時も巻戻し時に
も、略一定のトルクでウインチドラム１１の速度
に追従して作動するようになつている。したがつ
て、第１図で示すワイヤ３１の尻手側のたるみを
常に吸収し、安定した尻手取りを行なわせること
ができるものである。

一方、油圧ポンプユニツト４は、上記両ユニツ
ト２，３に圧力油を供給するものであり、これは
油槽３２、複数たとえば２個の油圧ポンプ３３，
３４、アンロード弁３５およびエンジン３６から
なり、エンジン３６により、各油圧ポンプ３３，
３４を駆動し、各油圧ポンプ３３，３４の吐出油
を吐出口３７に送り込み合流させるようになつて
いる。さらに、上記アンロード弁３５は、チエツ
ク弁３８以降の吐出口３７に流込む油の圧力が一
定値以上になると、一方の油圧ポンプ３４から流
れ出る油をアンロード弁３５へ逃がし、油槽３２
へ戻すようになつている。なお、第２図中３９
は、戻し口４０に連通する戻し管４１の先端に取
り付けられたフイルタである。

次に具体的な作動について説明する。まず、ウ
インチを使用しない場合は、正逆回転操作用制御
弁１４を第２図で示すような中立の状態としてお
く。この場合において油圧ポンプユニツト４から
送られてくる油は、その正逆回転操作用制御弁１
４に阻止され、油圧モータ８側へは流れ込まな
い。しかして安全弁１９の２次側が二次圧切換え
弁１５によつて出口２２に通じているから、その
２次側の圧力は下り、安全弁１９のスプールは、
入口２１側の圧力に押されて開き、油を入口２１
から出口２２へ直接に逃がし、無負荷となるた
め、油温の上昇を防止できる。

そこで、ウインチドラム１１によりワイヤ３１
を巻き上げる場合には、正逆回転切換えハンドル
２０を右側へ引くが、このときには、制御弁１４
を通つた油が二次圧切換え弁１５を通じて安全弁
１９のばね側に入り、その安全弁１９のスプール
を開きながら入口２１側の油を出口２２側へ逃が
すことになる。つまり、入口２１と正転回路Ａ間
の圧力差が常に一定となり、制御弁１４を通る流
量は、油圧モータ８に加わる負荷に拘わらず一定
となつている。したがつて、微速運転も安定し、
安全弁１９はこの作用面からみれば圧力補償器と
しての役目をなす。また、この圧力補償器として
の作用は、制御弁１４を逆に切り換えた場合でも
同様に作用する。

そこで、制御弁１４を逆に切り換えると、ウイ
ンチドラム１１の回転方向が変り、ワイヤ３１を
巻き戻すことになる。この場合においては、ワイ
ヤ３１に加わる負荷によつてウインチドラム１１
が巻き戻し方向へ強制的に回されるため、油圧モ
ータ８は、油圧ポンプとして作用する。つまり、
油をその回転方向へ押し出そうとする。しかし、
チエツク弁１８に阻止されて流れることはない。
したがつて、ウインチドラム１１は、ブレーキ状
態となる。しかるに、カウンタバランス弁１６
は、入口２１側の油の圧力ａを受けるので、開
き、油を流すことになり、そのブレーキ状態は解
け、ウインチドラム１１を回転させることができ
る。このときのカウンタバランス弁１６の開度は
制御弁１４の開度に比例する。したがつて、わず
かに開けば、ワイヤ３１を静かに巻き戻すことが
できる。これによりワイヤのずり込み操作を安全
に行なうことができる。

なお、上記油圧ウインチユニツト２の回路にお
けるチエツク弁１８およびカウンターバランス弁
１６は、以上の作用によりホース５，６，７に切
断事故が起きた場合の安全装置ともなる。

一方、油圧ウインチユニツト２を経た油はホー
ス６を介してワインダユニツト３に送り込まれ
る。このように送り込まれる油は油圧モータ２４
を駆動し、歯車機構２５を介してワインダリール
２６を回転させる。このとき、ワインダリール２
６の巻上げ速度がウインチドラム１１の巻上げ速
度よりも速くなるように、設定されている。した
がつて、ワインダリール２６はリリーフ弁２８の
設定圧力に従いワイヤ３１によつて引つ張られる
ので、油圧モータ２４は全速回転できなくなり、
余分の油は、リリーフ弁２８を通じて出口３０側
に流れる。このとき入口２９側の油圧は、リリー
フ弁２８の設定圧、たとえば７Kg／cm²とすればそ
の圧力まで上昇するから、油圧モータ２４はそれ
に応じた回転力を生み、ワインダリール２６を回
転してワイヤ３１を引張る。このようにしてワイ
ンダリール２６の巻上げ速度は、ウインチドラム
１１の巻上げ速度に追従し、一方、リリーフ弁２
８を通過する流量はそれに応じて変化するが、圧
力は略一定なので、油圧モータ２４およびワイン
ダリール２６の回転力も略一定となる。したがつ
て、ワイヤ３１の尻手取りを行なう力も安定す
る。

なお、ウインチはワインダーの尻手張力の数10
倍或いは数100倍の力で巻き上げることができる
から、ワインダーの張力は小さくてよい。

また、ウインチドラム１１を逆転するときにお
いては、ワインダリール２６はワイヤ３１に引か
れて回転し、逆に油圧モータ２４を回転させるの
で、その油圧モータ２４は油圧ポンプとして作用
することになる。つまり、出口３０側から入口２
９側へ油が流れることになり、入口２９側におい
てはその入口２９から流れ込む油と合流すること
になる。そして、この入口２９側の圧力はリリー
フ弁２８の設定圧力に等しく調整され、したがつ
て、ワインダーリール２６を廻す回転力もその圧
力に応じた一定の値となる。このため、ワイヤ３
１には一定の張力を常に加えることができ、ワイ
ヤ３１がウインチドラム１１をすべることがな
い。つまり、ウインチ操作に従う吊り下ろし動作
を行なわせることができる。

また、油圧ポンプユニツト４においては、各油
圧ポンプ３３，３４がエンジン３６により、駆動
されている。吐出圧力が比較的低い場合は、２台
の油圧ポンプ３３，３４の吐出量が合流して、吐
出口３７へ送り込まれる。ここでアンロード弁３
５の設定圧力を50Kg／cm²とすれば、その吐出圧力
が50Kg／cm²となると、アンロード弁３５が開き、
一方の油圧ポンプ３４から吐出する油は油槽３２
へ直接に戻される。したがつて、吐出量は減少す
るが、吐出圧力は、その50Kg／cm²を越え、120
Kg／cm²位まで高めることができる。

このような構成によれば、比較的馬力の小さい
エンジン３６でも大きな巻き上げ力を発揮させる
ことができる。つまり、２個の油圧ポンプを使用
し、上記例では、50Kg／cm²まではその２個の油圧
ポンプ３３，３４の吐出量を合せてウインチを高
速に駆動し、50Kg／cm²を越えれば一方の油圧ポン
プ３４を無負荷とし、他方の油圧ポンプ３３の吐
出量のみでウインチを低速で駆動し、高負荷に応
じられるようにしたものである。すなわち、負荷
と速度を最大限に活用することができる。

以上説明したように本発明は、ウインチドラム
によつて巻上げ巻き戻しをするワイヤの尻手側を
ワインダリールに巻き付け、そのワインダリール
を、リリーフ弁を並列に接続した油圧モータによ
り、駆動するようにしたから、ウインチドラムの
速度よりもワインダリールの回転を速く回転する
ように付勢しておけばリリーフ弁の設定圧力に応
じて常に一定の張力を加えることができる。した
がつて、安定した尻手取りを自動的に行なうこと
ができる。すなわち、一般にウインチドラムにワ
イヤをｎ回捲き付けたときのワイヤの摩擦張力Ｆ
はワイヤとウインチドラムの摩擦係数をμとする
とき、尻手張力ｆのe²〓ⁿ〓倍となるが、（Ｆ＝ｆ
×e²〓ⁿ〓）ここで荷重の吊り上げの時捲き付け数
を只一巻だけ増やして使用すれば約2.4倍
（e²〓^×1×0.¹⁴）だけ摩擦張力（ブレーキ力）が増大
するのであるが、吊り下ろしの時も同様以上のブ
レーキ力が確保されるから十分に安全なブレーキ
力が安定的に得られ、従つて法の趣旨である「荷
重の1.5倍のブレーキ力」を十二分に満足させる
使い方が出来る。

さらに、本発明の油圧ポンプユニツトにおいて
は、複数の油圧ポンプを使用し、これらの油圧ポ
ンプを段階的に使用するようにし、低負荷の場合
には、多くの油圧ポンプを使用してウインチを高
速に駆動し、高負荷の場合は使用する油圧ポンプ
を少なくして高圧でウインチを強力に低速で駆動
するようにしたものである。したがつて、ウイン
チの能力、すなわち負荷と速度を最大限に活用す
ることができる。また、このような構成とすれば
エンジンなどの駆動源を小馬力にすることが可能
となり、軽量化、低コスト化を図ることができ
る。

また、全体的に油圧方式を採用するので、動作
が安定するとともに、その操作性を良くすること
ができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の斜視図、第２図は
その油圧回路図である。 １…台板、２…油圧ウインチユニツト、３…ワ
インダーユニツト、４…油圧ポンプユニツト、
５，６，７…ホース、８…油圧モータ、９…油圧
制御ユニツト、１０…ギヤーケース部、１１…ウ
インチドラム、１２…把止め車、１３…ラチエツ
ト爪、１４…正逆回転操作用制御弁、１５…二次
圧切換え弁、１６…カウンターバランス弁、１７
…短絡弁、１８…チエツク弁、１９…安全弁、２
０…正逆回転切換えハンドル、２４…油圧モー
タ、２５…歯車減速機、２６…ワインダリール、
２７…短絡弁、２８…リリーフ弁、３１…ワイ
ヤ、３２…油槽、３３，３４…油圧ポンプ、３５
…アンロード弁、３６…エンジン、３８…チエツ
ク弁。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 油圧ポンプユニツトと、この油圧ポンプユニ
   ツトに正逆回転操作用制御弁とカウンタバランス
   弁を介して接続され上記制御弁によつて圧力油の
   流入方向が変えられる第１の油圧モーターを有
   し、この第１の油圧モーターでウインチドラムを
   回転駆動する油圧ウインチユニツトと、上記油圧
   ポンプユニツトに第２の油圧モーターとリリーフ
   弁を並列に接続し、かつこの第２の油圧モータに
   ワインダリールを連結したワインダーユニツトと
   を具備し、油圧ウインチユニツトのウインチドラ
   ムにワイヤを巻き付けるとともに、そのワイヤの
   尻手をワインダーユニツトのワインダリールに巻
   き付けてワイヤの巻上げ巻戻しを行なうようにし
   た油圧駆動式ウインチ装置。 ２ 駆動源によつて駆動される複数の油圧ポンプ
   を有し、このうち必要数の油圧ポンプに設定圧力
   値以上の圧力油を油槽に戻すアンロード弁を接続
   し、設定圧力値に達しないアンロード弁に属する
   油圧ポンプにより圧力油を供給するようにした油
   圧ポンプユニツトと、この油圧ポンプユニツトに
   正逆回転操作用制御弁とカウンタバランス弁を介
   して接続され上記制御弁によつて圧力油の流入方
   向が変えられる油圧モーターを有し、この油圧モ
   ーターでウインチドラムを回転駆動する油圧ウイ
   ンチユニツトと、上記油圧ポンプユニツトに油圧
   モータとリリーフ弁を並列に接続し、油圧モータ
   ーにワインダリールを連結したワインダーユニツ
   トとを具備し、油圧ウインチユニツトのウインチ
   ドラムにワイヤを巻き付けるとともに、そのワイ
   ヤの尻手をワインダーユニツトのワインダリール
   に巻き付けてワイヤの巻上げ巻戻しを行なうよう
   にした油圧駆動式ウインチ装置。