JPS6214048Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はコンペンセータに関する。より詳しく
は、本考案は、捲糸機で巻取られる糸条の張力変
動を調整するコンペンセータであり、例えばオー
プンエンド精紡機の捲取機構のように高巻取速度
で糸条を巻取る装置に適するコンペンセータであ
る。

定速度で送り出される糸条をトラバースしなが
らボビンに巻取る場合には、糸条のトラバースの
ため綾振り支点からボビンの巻取位置までの距離
が時々刻々変化し、その結果、大きな張力変動が
生じる。その上、ロータリトラバース装置により
糸条をトラバースしている場合には、巻取ドラム
の溝深さがその周面上で一様でないので、溝深さ
の変化によつても巻取張力が変動する。又巻玉が
コーン形状の場合はコーンの大径部及び小径部の
巻径のちがいにより張力が変動する。一方、ボビ
ン上に巻取られたパツケージの巻径増加につれト
ラバース手段からパツケージまでの所謂綾振り自
由長が変化し、その結果、トラバース幅が巻径増
加につれて減少し、これによつても徐々に張力が
変化する。これら種々の要因により生ずる張力変
動を十分調整しないまま巻取りを行なうと、次の
ような問題が生じる。糸条が巻取ドラムの溝から
瞬間的に外れて隣接する溝に移つたり、トラバー
スガイドから外れて糸条張力により綾振り中心に
移動したりして所謂シヨートトラバースが生じ
る。また、巻取糸条が過大張力により切断する糸
切れ（オープンエンド精紡機では、トツプ切れ）
が生じ易い。加えて過大張力によつて、巻取パツ
ケージの端面が膨出するような巻玉形状の不良が
発生する。

従つて、糸条をパツケージに巻取る際には、糸
条の張力変動をできるだけ小さく保つ必要があ
る。これにより、巻取りパツケージの巻玉形状を
良好として、移送時の荷崩れが防止されるととも
に、後工程におけるパツケージからの糸条の解舒
性が向上できる。また、張力変動を小さくするこ
とにより、巻取りパツケージ内の糸条密度や糸条
張力を均一とでき、巻上げ糸条の強伸度や染色性
を一様とする必要がある場合に対応することがで
きる。

巻取糸条の張力を調整するコンペンセータとし
て、実公昭48−2349号公報には、Ｌ字状アームを
取着したＣ字状管状体を固定軸に遊嵌させ、その
自重によつて固定軸まわりに揺動して糸条張力を
調整するようにしたものが開示されている。この
コンペンセータは構造が簡便であり且つ糸掛け時
には固定軸に沿つて摺動させ作業位置から待避さ
せて作業性を損ねないようにできるので好ましい
ものである。しかし、このコンペンセータでは、
以下の理由のため、オープンエンド精紡機のよう
な高速巻取りに十分追従できない。第１に、Ｃ字
状管状体を固定軸に嵌合させそのまわりに回動さ
せるため、摩擦力の影響を受けることがあげられ
る。次に、このコンペンセータの構造上、糸条張
力が小さくなりアームが下動したときに比べ糸条
張力が大きくアームが上動したときの方がより大
きな力がコンペンセータから糸条に作用し、糸条
張力が一層高められてしまう。更に、コンペンセ
ータの取付位置の関係から低張力時にコンペンセ
ータの張力調整機能が失われてしまい易い。

本考案は上述した従来装置の欠点を解消し、糸
条張力の変動に対して追従性がよく、しかも糸条
張力が低いときにも張力調整作用があるコンペン
セータを提供することを目的とする。本考案で
は、この目的を、機台に固定可能な保持部材、該
保持部材に取付けられた板ばね、および板ばねの
長さ方向に交差して該板ばねの自由端部に取着さ
れた糸ガイドからなるコンペンセータにより達成
する。本考案においては、板ばね自身の長さ方向
の曲がりと巾方向の捩じりによる三次元的な変位
を糸ガイドに与えて糸条張力を調整するため、張
力変動に対する追従性が良い。しかも糸条張力が
ないときにはコンペンセータから糸条に張力を付
与するよう板ばねの取付位置を設定することによ
り、低張力時にも張力調整機能を果させることが
できる。

以下、添付図面を参照して、本考案を詳細に説
明する。

第１図において円柱状または図示していないが
方形状等適宜な断面形状をした固定軸１が、オー
プンエンド精紡機（図示せず）等の機台に沿つて
延在している。本考案の保持部材であり且つ前記
固定軸１の断面形状に対応した断面形状（実施例
ではＣ形断面）を有する管状体３が固定軸１に嵌
合され、それ自体のばね作用により定位置に固定
されている。管状体３は、第１図の表側におい
て、その下端が３つの舌状体３ａ，３ｂ，３ｃに
分離されている。両側の舌状体３ａ，３ｃは、そ
の先端が、外向きに折り返えされており、中央の
舌状体３ｂは真直ぐに延びている。なお、第１図
の裏側において管状体３は、舌状体３ａ，３ｃと
対称な２つの舌状体３ｄ（１つのみ図示）を具備
している。舌状体３ａ，３ｃ，３ｄは管状体３を
固定軸１に嵌合する際に適宜な工具（図示せず）
により把持し固定軸１周面に沿い案内するために
用いられる。

管状体３の中央の舌状体３ｂに、厚みが薄く矩
形状をした板ばね５が、リベツト７止めまたは溶
接等の適宜の方法により取付けられている。更
に、板ばね５の自由端またはその近傍位置に糸ガ
イド９が一体樹脂成形、溶接、かしめ等の適宜な
方法により取着されている。糸ガイド９は、鋼ワ
イア等の従来から糸ガイドとして広く採用されて
いる材料により製作されており、その先端部近傍
に糸係止用屈曲部９ａが形成されている。なお、
糸係止部の形状は図示した形状に限られず、糸ガ
イドとして広く用いられている形状であれば、い
ずれでもよい。ここに、糸ガイド９は板ばね５の
長さ方向に交差して取着される。換言すれば、糸
ガイド９は板ばね５の延長線上に位置していな
い。

管状体３を固定軸１に嵌合し、そのまわりに適
宜角度回動させて所定初期位置にセツトし、張力
零の糸条が糸ガイド９に接触走行したときに、糸
ガイド９から糸条に所定の張力が付加されるよう
にする。本実施例のように、固定軸１が円形断面
を有し、保持部材がＣ形断面を有すると、上述し
た所定初期位置へのセツトが容易に行える。この
ようにセツトした本考案のコンペンセータの糸ガ
イド９に、糸条１１を接触走行させる。糸条張力
の変動につれて、板ばね５がその厚み方向（矢印
Ａ）に撓む。それとともに、糸ガイド９の糸係止
用屈曲部９ａが糸ガイド９の板ばね５への取着点
から離れているため、板ばね５が捩られる（矢印
Ｂ）。板ばね５の撓みおよび捩りの組合せ弾性変
形により、糸ガイド９は三次元的に動き、その結
果、広範な糸条張力の変動を吸収調整することが
できる。しかも、従来装置のような摩擦係合部分
がないため、追従性が高く、巻取速度の高速化に
良く対応することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例の斜視図である。 １……固定軸、３……管状体（保持部材）、５
……板ばね、９……糸ガイド、１１……糸条。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 糸条の捲取機構に使用される糸条張力のコン
   ペンセータであつて、前記捲取機構の機台に取
   付けられた保持部材から、実質的に糸条の捲取
   通路方向に平行に板ばねを延在させ、該板ばね
   の自由端から前記糸条の捲取方向と交差する方
   向に糸ガイドを突設し、該糸ガイドの自由端に
   設けられた糸係止部が前記糸条の捲取通路領域
   に位置するようになし、これによつて前記板ば
   ねが捲取中の糸条張力の変化に応じて、長さ方
   向の曲げと捩じりによる三次元的変位を受ける
   ように構成されたコンペンセータ。 ２ 前記保持部材がＣ形断面の管状体であり、円
   形断面を有し前記機台に平行な固定軸に弾発的
   に嵌着することによつて、該固定軸に沿つて摺
   動可能になされている実用新案登録請求の範囲
   第１項に記載されたコンペンセータ。 ３ 前記板ばねと糸ガイドの糸係止部とが実質的
   に同一平面上にある実用新案登録請求の範囲第
   １項又は第２項に記載されたコンペンセータ。