JPS609819B2 - 人工腎臓の滅菌方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は人工腎臓特にウェットタイプの人工腎臓の滅菌
方法に関するものである。

人工腎臓は使用前滅菌処理をしなければならないが、従
来この種の滅菌方法としては、ガス滅菌法、ホルマリン
滅菌法、ガンマ線滅菌法などが知られている。

しかしながら、ガス滅菌法及びホルマリン滅菌法は使用
時に人工腎臓内に残存するガス、薬液等を完全に洗浄す
ることは困難で、これらガス薬液が毒化して体内に注入
される危険性がある。またガンマ線滅菌法では人工腎臓
の材質の劣化が避けられず、設備的、法的な制約が伴な
うなどの不利欠点がある。こうしたことから、近時人工
腎臓に水、生理食塩水、その他の水溶液を充填し、高圧
蒸気滅菌処理を行なう方法が種々開発されている。

ところが、この方法は特に温度条件が苛酷な寒冷地にお
いて実施する場合輸送、保管時に人工腎臓内の水溶液が
凍結してしまい、透析膜の劣化や体積膨張による液もれ
等が生じて使用が不可能となることもある。このため、
寒冷地における人工腎臓の輸送、保管等には相応の注意
を払う必要があり、これに要するコストなどが崇んだり
する不利欠点があった。なお、人工腎臓に通常充填され
ている生理食塩水に、凍結防止剤としての効果をもたせ
るためには、高濃度の生理食塩水を使用しなければなら
ないが、こうした生理食塩水は−１０００〜一２０こ○
の低温状態になると塩化ナトリウムそのものが析出しや
すくなり、このため透析膜を傷付けたり、血液の乱流が
発生し、血液凝固が生じたり、あるいは患者の浸透圧バ
ランスを乱す心配がある。

また高圧蒸気滅菌装置が塩化ナトリウムの作用により錆
やすくなるという問題も懸念される。本発明はこのよう
な現状に鑑みて検討を重ねた結果提案されたものであり
、人工腎臓を高圧蒸気滅菌処理するにあたり、あらかじ
め人工腎臓内にグリセリン水溶液を充填しておくことを
その基本的特徴とするものである。

次に本発明の具体的実施例につき各種データを拳げて説
明する。

一般にグリセリンは血液、糟液等の冷凍保存に使用され
、人体に害を及ぼさないものと言われている。

そこで本発明はこの技術を応用し、適量のグリセリンを
含む水もしくは生理食塩水の水溶液をあらかじめ人工腎
臓内に充填することで寒冷地における凍結を防止し高圧
蒸気滅菌処理をスムーズに行なおうとするものである。
まず本発明者はこのグリセリン水溶液の有効性を確認す
るため、グリセリン濃度を種々変えて凍結温度の測定を
行なってみた。

なお「実験では、生理食塩水（０．９％濃度）にグリセ
リンを５〜６．５重量％含有した水溶液を試験管に入れ
て冷却したその結果が第１表である。第１表 この表からも明らかなようにグリセリン水溶液は冷凍防
止剤としてきわめて有効であり、例えば、−１ｏｏ０の
温度ではグリセリン濃度が５％以上あると凍結しないこ
とがわかる。

次にこうしたグリセリン水溶液を通常の中空糸型人工腎
臓に充填した実際に冷却してみた。

実験ではグリセリン濃度が０％、２０％、４０％、６０
％「８０％のものを用いこれらを全て段階的に−６００
０まで冷却した。その結果グリセリン濃度が０％のもの
は−１ｏｏ○で完全に透明状に凍結した。また２０％濃
度のグリセリン水溶液を充填したものは−２０つ０で白
色クリーム状に凍結し４０％濃度のものは−４０℃で同
じく白色クリーム状に凍結した。しかし６０％及び８０
％濃度のグリセリン水溶液を充填したものは−６０００
になっても凍結しなかった。そこで次に上記各サンプル
のうち凍結したものは常温で解凍した後、ＩＪ−ク試験
を行なってみた。その結果が第２表である。第２表 この表からも明らかなように、グリセリン水溶液を充填
した人工腎臓は−６０℃で温度低下してもリークの発生
が認められない。

これはグリセリン水溶液はたとえ凍結したとしても粒子
の小かし、氷晶の状態となるため、透析膜に与える影響
も少く、また体積膨張率も比較的４・さし、ことによる
ものである。ただ、上記した２０％及び４０％濃度のグ
リセリン水溶液を充填したものについては凍結により充
填液の体積膨張により栓がゆるみ、若干の液漏れが認め
られた。そこで本発明では滅菌工程前人工腎臓内に充填
するグリセリン水溶液を全充填量より３〜１０％程度減
量し、言い換えると人工腎臓内に空気を入れる（たとえ
ば全充填量が２０物上の時は１．０の‘程度空気を入れ
る）ことにより前記した栓外れという問題を解決したも
のである。その一実施例として、発明者は上記２０％濃
度のグリセリン水溶液を充填した人工腎臓の透析液側に
１０机上の空気を入れ、一６０ｏｏまで冷却してみたが
、栓の外れは全く認められなかった。以上の各実験例か
らも明らかなように、人工腎臓内にあらかじめグリセリ
ン水溶液を充填しておくと寒冷地においても凍結が防止
され、たとえグリセリン水溶液が凍結したとしても人工
腎臓の性能に茸るしい変化をおこさせることはない。こ
の場合グリセリン濃度は使用する地域保管条件などによ
って定まるが、一般には４０％濃度であれば充分である
。また栓外れについても人工腎臓内に若干の空気を入れ
ることで適切に防止することができ、たとえば５０％の
グリセリン溶液を充填した人工腎臓に１０羽の空気を入
れると−４０００の温度までは少なくとも凍結せず、一
４０ｏ０以下となって凍結してもリークや栓外れが生じ
ないことになる。なお、本発明で行なわれる高圧蒸気滅
菌は通常の高圧蒸気滅菌処理で充分である。また、グリ
セリン水溶液は人工腎臓の血液側、透析液側の両方に充
填してもよいし、あるいは透析液側にやや高濃度のグリ
セリン水溶液を入れておくと、透析膜を通って均一な濃
度となる。さらにまた、本発明が適用される人工腎臓は
中空糸型の他にもコイル型等いかなるタイプのものにも
適用することが可能である。以上説明した本発明によれ
ば、寒冷地において、高圧上記滅菌をする際や、保管、
輸送時に厳しい低温下になったとしても、人工腎臓内の
充填液が凍結せず、たとえば凍結したとしても粒子の細
かい氷晶の状態になるので、透析膜を傷付ける心配はな
く、透析膜性能に影響を与えることもなし、。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 人工腎臓を高圧蒸気滅菌処理するにあたり、あらか
   じめ人工腎臓内にグリセリン水溶液を充填しておくこと
   を特徴とする人工腎臓の滅菌方法。 ２ 人工腎臓を高圧蒸気滅菌処理するにあたり、あらか
   じめ人工腎臓内にグリセリン水溶液を注入し、かつその
   人工腎臓内に空気を入れておくことを特徴とする人工腎
   臓の滅菌方法。