JPS6054516B2 - 斜板式圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は斜板式圧縮機に係り、とくに斜板と該斜板と
ピストンとを係留させるためのシューとの摺動部分の改
良に関する。

運転の静粛さ、円滑さおよび圧縮効率の高さ等の利点
により、車両空調用冷媒圧縮機として、斜板式圧縮機が
近時多く採用される傾向にあり、その技術も高度な進歩
を遂げてきた。

その中でも、より小型化することを要求されて、オイル
ポンプを使用しての強制給油方式を廃止して、冷媒中に
含まれる油を直接的に利用して各摺動部の潤滑を行う方
式を採用するに至つたのは、該技術分野においては革命
的なことであつた。上記潤滑方式は、外部冷凍回路より
圧縮機へ帰還した油を含んだ冷媒もしくは、該圧縮機内
に入つてから冷媒より分離された油を、圧縮機の各摺動
部を巧みに巡回させて潤滑に供するようにしたことを特
徴とするものであるが、該潤滑方式には宿命的な弱点が
不可避である。つまり、ある速度以上で運転される場合
には、比較的大量の帰還冷媒が有るため、各摺動部の潤
滑が十分に行なわれるが、低負荷低速運転時には、帰還
冷媒が少くなり、潤滑に供せられる油が不足し、その結
果摩耗が異常に進み、さらに摩擦発熱による高温化のた
め最悪の場合には焼付現象を招来するということである
。また車両空調用冷媒圧縮機はエンジンルーム内に設置
されるのが一般的で、高温に曝されるのが常であり、と
くに近時では排気ガス無公害化対策のため、エンジン自
体もより高温になり易い傾向にあるため、圧縮機自体も
高温となり易く、その結果油の粘性が低下し、必然的に
潤滑効果も低下するものである。 ここで図を参照しな
がら斜板式圧縮機の構成を述べておくと、対向した位置
に適数個のシリンダボア１、１を有し対接したシリンダ
ブロック２、２の端部は、バルブプレート３、３を介在
してハウジング４１、４２によつて密閉されている。

シリンダブロック２、２の軸心部を貫通して回転自在に
支承された駆動軸５には斜板６が固着され、該斜板６は
シリンダボア１、１内に嵌挿されたピストン７とボール
８およびシュー９を介して係留されており、前記斜板６
の回転力によつてピストン７がシリンダボア１、１内を
往復動する。ハウジング４１、４２には吸入室４３、４
４および吐出室４５、４６が形成されておりそれぞれ弁
（図示せず）を介してシリンダボア１、１と連通される
とともに、外部冷凍回路と連通されている。ただし帰還
冷媒を導入するための外部管路と吸入室４３、４４との
間では、油を含む帰還冷媒の１部もしくは全部を斜板室
１０に導入したり、冷媒より分離された油を巧みに導い
て、各摺動部の潤滑を行う手段が構じられている。なお
前記ボール８およびシュー９に関しては、第３図に示し
たごとき一体形状の軸受部材２０であつても、また第４
図に示したごときボールを切断した形状の軸受部材２１
であつても実施可能であり、本発明においてはこれらも
含めてシューと総称する。上記摺動部分のうちで、とく
に過酷な摺動条件が強いられ、常に良好な潤滑状態を実
現することが困難であるとされているのは、斜板６とシ
ュー９との摺動部分である。

該摺動部分においては、冷凍負荷が大きな場合には面圧
が１００〜１５０ｋ９１ｃＦ１ｆとなることもまれでは
なく、液圧縮を生起した場合には５００ｋ９１ｄの面圧
に達することがあり、その摺動速度は１０〜２０ＴｒＩ
．ＩＳｅＣにもなる。そしてシュー９自体の複雑な運動
に伴つて、斜板６の平面に対しての姿勢も複雑に変化し
、斜板６の平面上に油粒が存在していても油膜を形成す
ることができない状態となる場合も発生し、そのときに
は金属接一触を余儀無くされるものであつた。金属接触
が起きるということは、言を待つまでもなく摺動部の摩
耗が促進され、さらに摩擦発熱による高温化のための最
悪の場合には焼付事故が発生するということである。そ
こて上記斜板６の材料として鉄系金属が使用されていた
従来においては、鉄系金属に対して摺動性の良好な、つ
まり耐摩耗性および耐焼付性に優れた、たとえば銅一鉛
合金層をシュー９の斜板６との摺接面に形成することに
よつて、実際の使用において一応満足し得る程度にまで
上記欠陥を解消することができた。ところが、シリンダ
ブロック２，２、ハウジング４１，４２、ピストン７等
の材料をアルミニウム合金化して、軽量化を実現してき
たこの種圧縮機において、さらに軽量化することが強く
要望された結果、遂に斜板６の材料をもアルミニウム合
金化することが提案されるに至つた。

そこで、機械的強度と前記条件の耐摩耗性を満足し得る
ものとして、高ケイ素アルミニウム合金（１３〜３０％
のＳｉを含有）が好適であることが判明したが、従来の
圧縮機において、そのまま単に斜板６の材料を前記高ケ
イ素アルミニウム合金に変更しただけでは、つぎのごと
き新たな欠点が生起することが分つた。つまり、高ケイ
素アルミニウム合金には初晶および共晶ケイ素が散在し
ており、そのケイ素は非常に硬いものであり初晶ケイ素
ではその硬度が１３００〜１５００Ｈｖとなるものも有
るため、摺動に際してはこの硬いケイ素粒が相手材の表
面を削り面アラサを悪くする。

その相手材の荒れた表面や摩耗粉が高ケイ素アルミニウ
ム合金の軟質部を削り取り、遂にはケイ素粒が脱落して
これが研摩材となつて両材料の摩耗を促進する結果とな
つたり、面アレのために摩擦係数が増し、発熱量が多く
て焼付に至ることである。本発明は上記欠点を解消し、
軽量で耐久性の高い斜板式圧縮機を提供することを目的
になされた。

斜板６の材料として前記高ケイ素アルミニウム合金を使
用する場合に、上記欠点を解消するために相手材として
のシュー９の材料の性質としては下記のごときものが要
求される。

（１）ケイ素粒による研削を避けるため、硬度は高ケイ
素アルミニウム合金中のケイ素の硬度とほぼ同程度かそ
れ以上であること。

（２）摺動面がアルミニウムに対して耐焼付性にすぐれ
、摩擦係数が低いこと。

（３）平衡状態図におけるＮ−Ｓｉの共晶線約５７０℃
までの温度に対して硬度、強度および化学的に安定して
いること。

（４）上記の性質を具備した緻密な仕上面が得られるこ
と。

（５）さらに、製作が容易なこと。

（硬度を上げた後、複雑な加工がない）そして、上記要
求を満足するものとして、鋼材を母材としたものにボロ
ンを浸透拡散させる浸ボロン処理を施したものが最適で
あることが究明された。

冷鍛鋼材でブレス加工等によつて成形し研摩を行つて得
られた第２図に示したごときシュー母材を、侵ボロン処
理するには、ホウ砂（Ｎａ２Ｂ４Ｏ７）に炭化ケイ素ま
たは炭化ホウ素などを１０〜４０％加え、８００〜１１
００゜Ｃの温度とした溶融塩浴に数時間ノ浸漬する液体
法か、ホウ砂またはホウ砂と炭化ケイ素、ホウ砂と塩化
ナトリウムなどを混合し、８００〜１１００℃の温度と
した溶融塩浴中で前記シュー母材を陰極として数時間電
解を行う電解法等によればよい。

このように浸ボロン処理して得られた硬化層は０．０２
〜０．１５ｗｎの厚さとなり、その硬さはヴイツカース
硬さで１３００〜２０００ＨＶとなり非常に硬いもので
ある。なお上記硬化層は処理条件によつてＦｅ２Ｂの単
層となつたり、ＦｅＢ＜５Ｆｅ２Ｂの２層が共存する場
合もある。上述のごとく浸ボロン処理されたシュー９は
、処理時の表面のわずかな荒れを調整する意味で簡単な
ホーニング処理を行うだけで、別に他の後処理を必要と
せずに要求水準を満足する摺動面が得られるため、その
まま圧縮機に組込んで使用に供される。このときシュー
９の表面は緻密てあり、かつ、相手材である斜板６中に
含まれる初晶および共晶ケイ素の硬さと同等かもしくは
それ以上の硬さとなつているため、摺動性にすぐれ、極
めて良好な耐摩耗性、耐焼付性を発揮する。またシュー
９の硬化層中に含まれるボロンは、アルミニウムに対す
るいわゆる親和性が極めて悪いという性質を具備してい
るため、このことも耐摩耗性および耐焼付性のために大
きく貢献している。なお、シュー９は上記浸ボロン処理
時における熱影響によつてもほとんど歪は生じないが、
厳密に言えば最大て数μの単位で歪が発生することもあ
るが、その歪はシュー９の特徴的な形状の故に、斜板６
との摺動面側が凸となる傾向のものであるため、これは
斜板６との間の油膜の形成に役立ち、かえつて好適な方
向に作用し、望ましいものてある。

つぎに本発明の作用効果をよソー層明確にするために行
つた実験例について説明する。

本発明のものとしては、浸ボロン処理層を有する炭素鋼
（Ｓ４５Ｃ）て形成したシュー（表面硬さ１４００〜１
８００Ｈ■）と相手材として２喧量％のケイ素を含んだ
高ケイ素アルミニウム合金との組合せとし、従来のもの
としては、銅をベースとして２４重量％の鉛と３．５重
量％の錫を含んだ銅合金より形成したシューと相手材と
して球状黒鉛鋳鉄との組合せとした。一実験１− 本発明と従来とにおける摩擦係数とその時の発熱温度を
測定する実験を行つた。

測定方法としては、シューの相手材としての円板を回転
させ、これにシューを押圧し、その押圧荷重を漸増させ
ながら、その時の摩擦係数およびシューの発熱温度を測
定した。

条件（本発明、従来ともに共通） （１）すベリ速度１５７ＴＬＩＳｅＣ（一定）（２）荷
重 ４０ｋ９１ｃＩｔより４０ｋ９ノｄずつ漸増、
各 荷重段階は２吟（３）潤滑オイル 低粘
度オイルＳＳＵ７Ｏ（４）潤滑方法 フェルト塗布
約０．８ｃｃ／分（５）試験片 円板：面あらさ（
最大）０．４〜０．６一Ｓシユーニ面あらさ（最大）
０．４〜０．６−Ｓ 得られた結果を第５図、第６図に示す。

第５図より明らかなように、本発明のものは従来のもの
に比較して、すべての領域で摩擦係数が低く、かつ荷重
を増加させても安定している。また第６図からシューの
発熱温度をみると、本発明のものは従来のものに比較し
てすべての領域で低くなつている。これらのことから、
本発明のものは摺動性に優れ、耐焼付性が顕著に良好で
あることが分り、また特に注目すべきはオイル潤滑が充
分でない条件でありながら、本発明のものはその効果が
良好であることであり、そのことがとくに既述のごとき
特徴的な圧縮機にとつて意義があるのである。一実験２
一 つぎに潤滑油の供給において最も厳しい条件下での実機
試験を行なつた。

条件（本発明、従来ともに共通） （１）圧縮機 斜板式圧縮機（総排気量１５０ｃ
ｃ）（２）回転数 ４０００ｒ″Ｐｍ （３）吐出側ガス圧Ｐｄ＝４〜５ｋ９ｋＩｔ（４）吸入
側ガス圧Ｐｓ＝約−５０ｗｎＨｇ（５）作動時間 ２
０Ｈｒｓ（６）潤滑オイル 冷凍機オイル１５０ｃｃ
（７）ガス量 １００ｙ（正規の約１０％）結果本
発明のものは異常が無く、従来のものでは焼付が発生し
た。

とくにこの実験は通常運転状況で起る中で最も潤滑の厳
しい条件であることから、このような条″件下でも満足
出来たことは、まさしく本発明の優秀さを証明するもの
である。

また該実験２において使用した斜板式圧縮機においては
、本発明のものは従来のものと比較して約３００ｙの軽
量化が実現され、それは斜板だけについては約６３％、
圧縮機全体としては約６．５％の軽量化が行なわれたこ
とになる。

なお、本発明において、斜板とシューの摺動部のなじみ
性を向上させるために、斜板を構成する高ケイ素アルミ
ニウム合金中に鉛か錫もしくはその両方を添加すること
も可能である。

上述のごとく本発明によれば、斜板を高ケイ素アルミニ
ウム合金で構成することができるため、圧縮機の軽量化
に大きく貢献できるとともに、シューを冷間鍛造によつ
て容易に形成することができかつ浸ボロン処理を行うだ
けの簡単な操作で摺動性のすぐれた表面を得ることがで
きるため、安価で軽量にして耐久性の高い圧縮機を得る
ことができるという効果を有している。

【図面の簡単な説明】

第１図は斜板式圧縮機の構成を示す断面正面図、第２図
はシューを拡大して示す断面正面図、第３図および第４
図はシューの変形例を示す正面図、第５図および第６図
は実験１において得られた摩擦係数および発熱温度結果
をそれぞれ示すグラフである。 ２・・・・・ウリンダプロツク、６・・・・・・斜板、
７・・・・ピストン、９・・・・・・シュー。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 駆動軸に傾斜して固定された斜板に対してシューお
   よびボールを介して係留したピストンが、前記斜板の回
   転力によつてシリンダボア内を往復動する形式の圧縮機
   であつて、高ケイ素アルミニウム合金で形成した前記斜
   板と、少くとも斜板との摺接面に浸ボロン処理層を有す
   る炭素鋼で形成した前記シューとの組合せを特徴とする
   斜板式圧縮機。