JPS5936642Y2 - 蒸気タ−ビン - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は蒸気タービンに係り、特に羽根の浮上がりを少
なくするのに好適な蒸気タービンに関する。

一般に蒸気タービンにおける羽根は、ノズルにより導び
かれた高温高圧の蒸気を低温低圧まで膨張させ、蒸気の
有する熱エネルギを有効かつ安全に回転エネルギに変換
するために設けられている。

この羽根は、ロータの円周方向に多数枚配設されている
が、この配設方法としては、通常、いわゆるダブテイル
構造が用いられており、円周方向にフックの一部が削除
された挿入位置から羽根をロータ外周面に当接させて円
周方向にスライドさせることにより順次組込まれている
。

この場合、フックの一部が削除されている挿入位置には
止め部材を配設し、配設された多数枚の羽根間の円周方
向隙間をなくすとともに、隣接する普通羽根との間にキ
ーを挿入し、止め部材の遠心力による抜は出しの防止が
図られている。

この止め部材としでは、従来、普通羽根と同様の羽根部
分を有する止め羽根あるいは羽根部分を有しない止め金
が用いられでいる。

第１図および第２図は同一段落に属する羽根の配列状態
の例をそれぞれ示すもので、以下これらについて説明す
る。

第１図は、止め部材として止め羽根を用いた例を示す図
であり、ロータ１の外周囲に多数枚の普通羽根２を円周
方向に配設し、さらにこれら多数枚の普通羽根２を所定
の枚数（図示した例では５枚）を１組として複数の羽根
群Ｃに構威し、その羽根群Ｃごとに、それぞれ羽根の外
端部をシュラウド５で連結しである。

これらの複数の羽根群Ｃのうちの１つの羽根群Ａの内部
には止め羽根３が配設され、普通羽根２と止め羽根３の
基端部がキー４で連結されている。

また、第２図は止め部材として止め金を用いた例を示す
図であり、この止め金６は、複数の羽根群Ｃのうちの、
普通羽根２のロータ１への挿入位置を間にして配設され
た互いに隣接する２つの羽根群Ｂの間に配設されている
。

そして、この止め金６の両側に隣接する普通羽根２の基
端部との間には、抜は出し防止用のキー４が挿入されて
いる。

第１図と第２図におけるロータ１と普通羽根２とは、第
３図に示すように２段あるいは３段のフックで連結され
、回転による普通羽根２の遠心力を前記フック部で支持
する、いわゆるダブテイル構造となっている。

また、ロータ１の止め羽根３または止め金６が配置され
る部分は、第４図に示すように止め羽根３または止め金
６が入る長さだけ円周方向にフックの一部が削除され、
止め羽根３、止め金６の形状もロータ１の形状に符号す
る形状となっている３そして、止め羽根３、止め金６は
、隣接する普通羽根２との間に挿入されたキー４によっ
て遠心力による抜は出しが防止されている。

以上の構成において、第５図に示すように羽根２．３ま
たは止め金６が材料の経年劣化により、止め羽根３また
は止め金６の回転時の遠心力に抗しきれなくなり、変形
をきたし、その結果として浮上りを生じることが多い。

このような場合には、第６図に示すようにキー４位置の
孔径を拡大し、新たなキー１４を打ち込むようにしてい
る。

しかしながら、止め羽根または止め金が浮上がった場合
には、羽根に円周方向の緩みが生じ、所定の位置からず
れるために、重量的なアンバランスを生じ、振動の原因
となるとともに蒸気通路部が円周方向に不均一になるた
め、性能上にも好ましくない。

さらに、浮上がりが進行すると、止め羽根３または止め
金６が属する一群の羽根の先端が相対する静止部（図示
せず）と接触することにより飛散するおそれがあり、安
全運転の妨げとなることもある。

本考案はかかる従来の難点を解決するために創案された
もので、その目的とするところは、止め羽根または止め
金の浮上がりを考慮し、浮上がりのない羽根構造を有す
る蒸気タービンを提供するにある。

本考案は、従来の難点が同一段落での普通羽根止め羽根
、止め金を同一材料としていたことに起因する点に着目
するとともに、羽根の浮上がり防止策をより経済的に行
なうため、止め羽根または止め金とそれに隣接する普通
羽根の材料を、その段落で用いられている材料よりもさ
らに強度的に優れた材料を用いるようにしたものである
。

以下本考案の一実施例を図面を参照して説明する。

本考案に係る蒸気タービンの羽根は、第１図および第２
図に示す例と同様、ロータ１の円周方向に複数枚配され
ており、その構造も同一である。

すなわち、羽根は第１図に示すように普通羽根２と止め
羽根３、あるいは第２図に示すように普通羽根２と羽根
に蒸気通路部を有しない止め金６とから構成され、普通
羽根２と止め羽根３、止め金６との基端部はキー４で連
結され、また羽根の外端部は数本を一組としてシュラウ
ド５で連結されている。

第７図は止め羽根３の場合にロータフック部に作用する
遠心応力の分布例で、止め羽根３にはフックがないため
、止も羽根３に隣接する普通羽根２に止め羽根３の遠心
力がキー４を介して作用し、他の普通羽根部よりも高い
応力レベルにある事を示している。

したがって、第１図に示す構造の羽根にお・いては、止
め羽根３とこれを含む一群の範囲Ａの普通羽根２に、ま
た第２図に示す構造の羽根においては、止め金６とこれ
に隣接する両側の各一群の範囲Ｂの普通羽根２に、同一
段落の他の羽根の材料よりも強度的にさらに優れた材料
を用いる事により他の群と同じあるいはそれ以上の強度
レベルにすることができる。

材料強度の例として、第８図に降伏応力、第９図にクリ
ープ速度を示す。

第８図および第９図から使用される条件が同じであるな
らば、１２Ｃｒ鋼に対し、１２ＣｒＭｏＷＶ鋼は降伏応
力が高く、クリープ速度が小さい。

また１２ＣｒＭｏＷＶ鋼に対し、１１Ｃ−ｒＮｉＭｏＶ
ＮｂＮ鋼はさらに降伏応力が高くクリープ速度が小さく
なっている。

降伏応力が高くかつクリープ速度が小さい事は強度的に
優れた材料であり、クリープ変形も発生し難くなる事を
示している。

たとえば、同一段落の羽根材料に１２Ｃｒ鋼を用いてい
る場合にはそれに対してはさらに優れた１２ＣｒＭｏ
ＷＶ鋼を、また高温部で１２ＣｒＭｏＷＶ鋼を用いてい
る段落についてはさらに強度の優れた１１ＣｒＮｉＭｏ
ＶＮｂＮ鋼をそれぞれ用いることによって目的を遠戚す
ることができる。

なお、ここで止め羽根３または止め金６とこれに隣接す
る単一の普通羽根２のみの材料を変えることは、シュラ
ウド５で連結された同一群中での線膨張係数の違いによ
り、羽根群としての振動特性が変わる等の理由から好ま
しくない。

したがって第１図に示す構造の羽根においては、止め羽
根３とこれを含む一群を、また第２図に示す構造の羽根
においては止め金６とこれに隣接する両側の各一群を交
換する必要がある。

以上説明したように本実施例によれば、同一段落の全羽
根の材料のグレードを上げることなく羽根の浮上がりを
有効に防止できるので、経済的であるとともに安全運転
を確保することができ、保守費用の軽減を図ることがで
きる。

以上本考案を好適な実施例によって説明したが、本考案
によれば、同一段落に属する高応力が作用する群の羽根
の他の群の羽根に相対的な浮上がりを皆無あるいは最少
に抑えることが可能であり、安全運転に寄与すること極
めて大である。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は相互に異なる羽根構造をそれぞれ
示す概略図、第３図は普通羽根とロータとの取合部を示
す断面図、第４図は止め羽根または止め金とロータとの
取合部を示す断面図、第５図は止め羽根または止め金の
浮上がり状態を示す概略図、第６図は浮上がった止め羽
根または止め金に大径のキーを挿入した状態を示す概略
図、第７図はロータフック部の遠心応力分布を示す図、
第８図は各種材料の温度と降伏応力を示す図、第９図は
各種材料の応力とクリープ速度を示す図である。 １・・・・・・ロータ、２・・・・・・普通羽根、３・
・・・・・止め羽根、４・・・・・・キー ５・・・・
・・シュラウド、６・・・・・・止め金。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ロータ周囲に係合された複数枚の普通羽根の組合せから
   なる複数の羽根群と、前記複数の羽根群のうちの１つの
   羽根群の内部または前記複数の羽根群のうちの互いに隣
   接する２つの羽根群の間に配設された止め部材と、止め
   部材と普通羽根とを連結するキーと、前記羽根群を構成
   する複数枚の普通羽根の外端部を連結するシュラウドと
   を具備する蒸気タービンにおいて、前記止め部材と、こ
   の止め部材を含む１つの羽根群を構成する複数枚の羽根
   またはこの止め部材の両側に隣接する２つの羽根群を構
   成する複数枚の羽根とは、それぞれ同一段落の他の羽根
   の材料より強度的にさらに優れた材料で形成されている
   ことを特徴とする蒸気タービン。