JPS5814863B2 - 低融点磁性合金 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、低融点で鋳造性に優れた歯科用合金に関し、
特に希土類コバルト磁石と組合わせて使用するのに適し
た歯科用磁性合金に関するものである。

歯科領域において永久磁石を使用する発想は古くからあ
り、磁石の吸引反発力を利用して義歯の維持安定化が試
みられたが実用されるまでには至らなかった。

しかし、近年極めて小型で、強力な磁石である希土類コ
バルト磁石が出現したため、初めて実現のものとなって
きた。

最近の義歯の技術動向として、残存歯を極力利用しよう
という動きがある。

永久磁石を利用した補助的義歯維持方法は、この動きに
沿っているために、各大学で研究が盛んに行われつつあ
る。

各大学における現在までの臨床実験では良好な結果が得
られており、今後この技術が歯科の補綴の新しい方法と
して完成し、一般の臨床医に利用されてゆく見込が強く
なってきている。

第１図は、磁石式補綴方式の基本的方法の一つとして知
られる根面板方式を示すものである。

該方式を総義歯へ応用した場合、落歯防止になること、
無口蓋化できるため装着感に優れていること等のほかに
、クラスプおよびホック式等の他のアタッチメントと比
較して、残存歯に無理な力がかからない、咬合圧が軽減
される、清潔にできる、歯槽膿漏の防止になる等の特長
がある。

ところで、例えば上記方式では第１図に示されるように
希土類コバルト磁石５によって磁化され、磁石５との間
に充分な吸引力を有する磁性合金３が使用される。

ここで使用される磁性合金は、磁気特性の他に歯科鋳造
用としての加工性をも有する必要があり、さらには歯科
鋳造用としての必要条件である物理的性質、機械的性質
、化学的性質などにも優れていることが好ましい。

上記要望に応えた歯科用軟磁性合金としては、本件出願
人が先に提案した（特願昭５２−１３５１０６号，特開
昭５４−６７５１６号公報）Ｃｏ，ＮｉおよびＰｄを主
成分とする合金がある。

この合金は、溶融温度が１３５０℃以下で、飽和磁束密
度が２０００Ｇ以上であり、かつ耐食性に優れた歯科用
磁性合金である。

しかしながら、上記Ｃｏ − Ｎ ｉ − Ｐｄ合金は
、歯科鋳造用合金として市販されているＡｕ −Ａｇ−
Ｐｄ合金と比較すれば、鋳造性に劣り、埋没材と鋳造材
がはがれ難く、鋳肌が粗いことまた歯科技工士が実際に
遠心鋳造機で鋳造を行うときに、メルトの表面全体にス
ラグ様の薄膜が生じ鋳造タイミングをとらえにくいとい
う難点がある。

本発明は、上記問題点を解消し、鋳造タイミングの判定
を容易ならしめるとともに、鋳造性に優れた新規な歯科
用磁性合金を提供することを目的とするものである。

上記目的を達成するために本発明は、重量比でＣｏ２Ｃ
）−３５％、Ｎｉ ２０〜４０係、Ｐｄ３０〜７０％、
Ａｕ５〜２０係を主成分とする合金に、０．５％を越え
かつ５係以下のＳｉを添加含有せしめたことを特徴とす
るものである。

本発明において、Ｃｏを２０〜３５係としたのは、溶融
温度を１３５０℃以下とするためであり、またＰｄと合
金を構成することにより耐食性に富む磁性合金を得るこ
とができるためである。

Ｎｉは耐食性、硬度をやや向上せしめ、かつポーセレン
焼付性を改善する等の効果があるが、４０係を越えると
著しく磁束密度を低下せしめるので２０〜４０係とした
。

また、Ａｕを添加するに従って、融点が低下すると同時
に、鋳叫が著しく改良され、鋳造精度を高めることがで
きる。

その効果はとくに５係以上において顕著である。

一方Ａｕ量が２０係を越えると、飽和磁束密度が著しく
低下するのでＡｕ量は２０係以下とする。

Ｓｉは鋳造性を改善し鋳巣を著しく減少する．その効果
はとくに０． ５ ％以上において顕著である。

一方、Ｓｉ量が５係を越えると、材料が著しく脆くなる
ので、Ｓｉの添加量は０．５％を越えかつ５係以下とす
る。

以下、本発明を実施例に基づき詳述する。

実施例 １ 第１表に示す種々の組成の合金をアルゴンアーク溶解炉
で合金化を行なった後、磁気特性、融点、耐食性、鋳造
率および鋳巣の状態を調査した結果を示している。

鋳込率および鋳巣を観察するために２０Ｘ２０Ｘ ０．
３ ｍｔおよび４ｍｍ＄ＸＩＱ關のワックス・パター
ンを作製した。

埋没材はセラベストを使用し、脱ワックス後予熱温度８
００℃にして、高周波誘導遠心鋳造機で合金を溶解し、
鋳造した。

鋳込み率は２０Ｘ２０Ｘ０．３−のワックス・パターン
の充足率で示し、鋳造組織は４ｍｍ，（ＸＩＯｍｍの鋳
造体をスプレ一部も含めて、中心部より縦断して、樹脂
に埋込んだ後、鏡面仕上し、光学顕微鏡で観察した。

磁気特性は振動型磁気磁束計で磁化強さ１ ５，０ ０
０ （Ｏｅ）まで印加して飽和磁束密度を測定した。

融点は示差熱分析により行った。また、耐食性は腐食液
にｏ．１％Ｎａ２ｓを用い、ＪＩＳに規定された条件で
行い、著しい変色がない場合を○印で示した。

なお鋳込率および鋳巣については、比較のためＡｕ−Ａ
ｇ−Ｐｄ合金も上記と同様な方法で試料を作製した。

第１表から明らかな如く、本発明の合金においては、飽
和磁束密度が２０００Ｇ以上であり、耐食性も重量減お
よび著しい変色は認められなかった。

また鋳込率はＡｕ −Ａｇ − Ｐ ｄ合金も含めて、
すべての合金について１ｏｏ％であった。

しかし、Ａｕの添加量とともに融点が低下すると同時に
、第１表には示していないが、鋳肌が著しく改良され鋳
造精度を高めることができた。

さらに、第１表により、Ｓｉ添加合金の鋳巣が著しく少
なくなることが明らかである。

また鋳造タイミングについては、Ｓｉを添加した合金は
メルトの表面を被覆しているスラグ膜を破壊する効果が
あり、一メルト面の動きが直接観察できるため容易に判
断できる長所があきらかにできた。

実施例 ２ Ｓｉ １％， ５％Ａｕ ， ２ｏ％Ｎｉ，３５％ｃｏ
，残部Ｐｄの合金を実施例１と同様の方法により作成し
、試験を行なった。

得られた結果は、次の通りであった。

飽和磁化 ６，５００Ｑ 融 点 １，１７０℃ 耐蝕性 良（第１表の○相当） 鋳 巣 少ない 鋳造率 １００係 実施例 ３ Ｓ ｉ ３．５ ％ ， ５％Ａｕ ， ２ ０％Ｎ
＋ ＋ ３ ２．５ ％Ｃｏ ｙ残部Ｐｄの合金を実施
例と同様の方法により作成し、試験を行なった。

得られた結果は次の通りであった。

飽和磁化 ６，ＩＯＯＧ 融 点 １，１６５℃ 耐蝕性 良 鋳 巣 少 鋳造率 １００係 実施例 ４ Ｓｉ ５％，５％Ａｕ ， ２ ０％Ｎｉ ， ３ ２
．５％Ｃｏ，残部Ｐｄの合金を実施例１と同様にして作
成し、試験した。

得られた結果は次の通りであった。

飽和磁化 ６，ＩＯＯＧ 融 点 １，１５５℃ 耐蝕性 良 鋳 巣 少 鋳造率 １００％

【図面の簡単な説明】

第１図は、根面板方式による磁石式補綴方法の例を示す
概略図である。 １・・・・・・歯肉部、２・・・・・・歯根部、３・・
・・・・磁性合金、４・・・・・・義歯、５・・・・・
・希土類コバルト磁石。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 重量比で、ＣＯ２０ 〜３５％、Ｎｉ ２０〜４０
   ％、Ａｕ５〜２０％，Ｐｄ３０〜７０弧およびＳｉＯ．
   ５〜５％（但し、０．５係を含まず）からなることを特
   徴とする低融点磁性合金。