JPH1189930A - バルーン・カテーテル - Google Patents

バルーン・カテーテル

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JPH1189930A
JPH1189930A JP9253897A JP25389797A JPH1189930A JP H1189930 A JPH1189930 A JP H1189930A JP 9253897 A JP9253897 A JP 9253897A JP 25389797 A JP25389797 A JP 25389797A JP H1189930 A JPH1189930 A JP H1189930A
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JP9253897A
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Yoshito Ikada
義人 筏
Hiroo Iwata
博夫 岩田
Ritsuchii Toreishii
リッチー トレイシー
Kazuo Taki
和郎 滝
Hisanori Owaki
久敬 大▲脇▼
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Mitsubishi Chemical Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薬物担持量が多く、また負に荷電した多糖や
遺伝子もしくは粒径の大きな分子集合体をも担持でき、
さらに短時間に高濃度で局所的に薬物を投与できるバル
ーン・カテーテルを提供する 【解決手段】 バルーンの表面に、塩基性基または酸性
基を有する長鎖ポリマーが共有結合により固定化された
バルーンを備えたバルーン・カテーテルとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バルーン・カテー
テルに関し、更に詳しくは、種々の薬物の送達に使用す
るバルーン・カテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】虚血心疾患に対する治療法として現在広
く用いられている方法に経皮的冠動脈形成術(PTC
A、percutaneous transluminal coronary angioplast
y)がある。しかし、PTCAにより狭窄部位の血管を
拡張後には約30〜50%の症例で再狭窄が発症し、大
きな問題になっている。最近の研究によれば、再狭窄は
傷害された動脈壁の正常な治癒反応であることが明らか
になった。この反応の中には血管内皮細胞、平滑筋細
胞、単核球の増殖や細胞外マトリックスの過産生が含ま
れる。
【0003】再狭窄を防止するためには、初期の血栓形
成の防止をする抗凝固薬や抗血小板薬、細胞周期をコン
トロールする薬物が有望であると報告されている。当
然、再狭窄防止の治療薬の中には遺伝子等も含まれる。
しかし、このような薬物による治療は、副作用として全
身毒性、すなわち生体の正常反応に影響を与える薬物を
投与するため冠動脈形成術を行った部位以外の身体の他
の細胞に影響を与え、望ましくない合併症を引き起こ
す。
【0004】さらに、身体から取り出した細胞を用いた
評価実験では良好な結果を与える薬物も、その臨床応用
では再狭窄を予防する効果が見られなかったとする報告
が多い。これは、合併症を併発しない薬物濃度ではPT
CA施行部での薬物濃度が低すぎて、薬効が十分に発揮
されないためである。再狭窄の発症はPTCA施行部に
起こる局所的な反応であり、この局所に薬物を高濃度に
投与することが望まれる。
【0005】このような局所投与を可能にするために、
種々のカテーテルが開発されてきた。これらのカテーテ
ルはその薬物の伝送機構から大きく2つに分類される。
1つは加圧により薬物を注入するカテーテルで、バルー
ン壁に孔を有するカテーテルを用い、PTCAと同じま
たはPTCA施行部に新たなカテーテルを導いて、孔を
有するバルーンを拡張し、この孔から薬物を加圧下に注
入する(例えば、Endosonics社製、TransportTM)。こ
のカテーテルを用いた薬物投与方法の欠点としては、加
圧下に薬物溶液を血管壁に注入するため、血管壁を新た
に障害すること、さらに、バルーンから流出した薬物溶
液が下流の血管に達し、ここで薬効を発揮することで合
併症を引き起こす可能性があること、などがある。
【0006】もう1つは、拡散により薬物を注入するカ
テーテルで、例えば2つのバルーンを有し、2つのバル
ーンにより血行を遮断し、このバルーンの間に高濃度の
薬物溶液を保持して、拡散により血管壁へ薬物を供給す
るカテーテル(例えば、Cordis社製、double balloom
カテーテル)、またはハイドロゲル層を有するバルーン
・カテーテルのゲル層に薬物を溶解させ、同じく拡散に
より血管壁に薬物を供給するカテーテル(例えば、Mans
field Boston Scientific社製、SliderTM withHydrogel
PlusTM)がある。しかし、このカテーテルを用いた薬
物投与方法では、血管壁の薬物の供給が拡散で行われる
ため、かなりの時間冠動脈を閉塞する必要があり、新た
な虚血性障害をもたらす可能性がある。また、ハイドロ
ゲル層を有するバルーン・カテーテルでは、薄いハイド
ロゲル層へ薬物を溶解保持させるため、バルーンに保持
させ得る薬物量が少ない欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】加圧による薬液注入方
法は、血管壁に障害を与えるばかりでなく、薬液注入時
に多量の薬液が血流に入り、その副作用を防止するのは
困難である。一方、ハイドロゲル層を有するバルーン・
カテーテルを用いる方法は、このような副作用が生じに
くく、薬物を局所投与するには優れている。しかし、ハ
イドロゲル層を有するバルーン・カテーテルを用いる方
法では、ハイドロゲル層へ薬物を溶解保持させるため、
その薬物保持量が限られており、治療に必要な薬物量を
投与するのは困難である。また、生物学的に重要な物質
には負に荷電しているもの(例えばヘパリンに代表され
る多糖や、遺伝子など)があり、これらをポリアニオン
であるポリアクリル酸ゲルでハイドロゲル層が形成され
ているバルーン・カテーテルへ担持させることは電荷間
の反発で困難である。また、ハイドロゲル層が高分子の
架橋体で形成されているため、高分子量の薬物、例えば
遺伝子、大きな分子集合体であるリポソーム、遺伝子治
療に用いるウイルスベクターの担持は困難である。
【0008】従って、本発明の課題は、上記従来技術の
問題点を解消し、薬物担持量が多く、また負に荷電した
多糖や遺伝子もしくは粒径の大きな分子集合体をも担持
でき、さらに短時間に高濃度で局所的に薬物を投与でき
るバルーン・カテーテルを提供することにある。加え
て、PTCA施行部に好適に使用できるバルーン・カテ
ーテルを提供することにある。
【0009】これらは「薬物投与の最適化」という近年
の基本理念と一致する。即ち、近年の薬物療法の急速な
進歩と共に薬理活性が非常に強い薬物をはじめ、投与に
際して十分な注意が必要な薬物が数多く開発されてき
た。こうした薬物の適用方法を決定する際の基本理念と
して、「薬物投与の最適化」ということが意識されるよ
うになってきた。具体的には、薬物をできるだけ選択的
かつ望ましい濃度・時間パターンのもとに、作用発現部
位に送り込むことである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは鋭意研究したところ、バルーンの表面
に塩基性基または酸性基を有する長鎖ポリマーを固定す
ることにより、薬物担持量が多く、また負に荷電した多
糖や遺伝子もしくは粒径の大きな分子集合体をも担持で
き、さらに短時間に高濃度で局所的に薬物を投与できる
バルーン・カテーテルとすることができることを見出
し、本発明を完成させた。
【0011】すなわち、本発明は、バルーンの表面に、
塩基性基または酸性基を有する長鎖ポリマーが共有結合
により固定化されたバルーンを備えたバルーン・カテー
テルである。
【0012】また、本発明は、前記塩基性基または酸性
基が、水素原子が置換されていてもよいアミノ基または
カルボキシル基である前記バルーン・カテーテルであ
る。
【0013】また、本発明は、前記長鎖ポリマーが有す
る塩基性基または酸性基とのイオン結合を介して、バル
ーン表面に薬物が担持された前記バルーン・カテーテル
である。
【0014】また、本発明は、前記薬物が、抗血栓剤で
ある前記バルーン・カテーテルである。また、本発明
は、前記薬物が、アルガトロバン、ヘパリン、ウロキナ
ーゼ及びサルポグレラートからなる群から選ばれた前記
バルーン・カテーテルである。
【0015】また、本発明は、前記薬物が、リポソー
ム、核酸、タンパク質及び多糖類からなる群から選ばれ
た前記バルーン・カテーテルである。
【0016】
【発明の実施の形態】
<本発明のバルーン・カテーテル>本発明のバルーン・
カテーテルは、バルーンの表面に下記に説明する所定の
長鎖ポリマーが固定化されたバルーンを備える以外は、
通常のバルーン・カテーテルと同様の構成をとることが
できる。
【0017】本発明のバルーン・カテーテルとしては、
例えば、図1に示されるものが例示できる。図1に例示
したバルーン・カテーテル1は、チューブ2とバルーン
3とからなり、チューブ2の一方の末端部近くにバルー
ン3が設けられている。また、他方の末端部にはカテー
テルの把持部、三方コックなどを必要に応じて接続する
ことができる。設けるバルーンの数は複数にしてもよ
い。
【0018】バルーン3を形成する材料としては、例え
ばポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマ
ー、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、シリ
コーンなどの各種樹脂材料が挙げられる。また、これら
の材料を2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0019】バルーン3の表面には長鎖ポリマー4が共
有結合により固定されて設けられる。長鎖ポリマー4
は、長鎖ポリマー4から枝分かれした側鎖を有していて
もよいが、直鎖状であることが好ましい。また、長鎖ポ
リマー4は、長鎖ポリマー4の少なくともいずれかの部
位がバルーン表面上に共有結合により固定されていれば
よいが、好ましい結合状態としては、長鎖ポリマー4は
その長手方向にバルーン3の表面上に固定化されるので
はなく、バルーン3が備えられるチューブ2の軸芯に交
差する方向に鎖が伸びるように固定された結合状態が好
ましい。すなわち、バルーン3が備えられるチューブ2
の軸芯に交差する方向に鎖が伸びるように固定されるの
であれば、例えば、長鎖ポリマーが複数箇所で固定化さ
れた構造であっても、また長鎖ポリマー4の両端がバル
ーン表面に固定化された構造であってもよいが、好まし
くは長鎖ポリマー4は、一方の末端または末端付近がバ
ルーン表面に固定され、他方の末端はバルーン表面に固
定されない状態が好適である。言い換えれば、バルーン
表面を形成する上記樹脂のポリマー鎖を主鎖とみたと
き、長鎖ポリマー4がバルーン表面を構成するポリマー
鎖から枝分かれした側鎖に当たる状態が好ましい。
【0020】また、バルーン表面には多数の長鎖ポリマ
ー4が固定化され、固定化された長鎖ポリマー4どうし
は、未架橋であることが好ましい。なお、図2において
は、直鎖状の長鎖ポリマーの一端がバルーン表面に固定
されたものを例示している。
【0021】長鎖ポリマー4は、バルーン表面の一部分
にのみ設けられていてもよいが、好ましくはバルーン全
面に設けられる。また、長鎖ポリマー4の長さは、バル
ーン表面に担持しようとする薬物の種類等によって適宜
調整することができるが、好ましくは炭素数100〜1
00000、特に好ましくは炭素数200〜10000
であることが好適である。
【0022】また、バルーン表面の長鎖ポリマーの密度
も、担持すべき薬物の種類により適宜調整することがで
きる。長鎖ポリマーを形成する素材、長鎖ポリマーの長
さ等にもよるが、具体例としては、ポリアクリル酸で形
成された長鎖ポリマーであればバルーン表面上の密度
は、好ましくは0.1〜1000μg/cm2、特に好
ましくは1〜200μg/cm2であることが好適であ
り、ポリメチルアミノエチルメタクリレートで形成され
た長鎖ポリマーであればバルーン表面上の密度は、好ま
しくは0.1〜1000μg/cm2、特に好ましくは
1〜200μg/cm2であることが好適である。
【0023】バルーン3の表面に共有結合により固定化
された長鎖ポリマー4は塩基性基または酸性基を有す
る。すなわち、長鎖ポリマー4が塩基性基または酸性基
を有することにより、長鎖ポリマー4が正または負のい
ずれかに荷電し得るものとすればよい。塩基性基として
好ましくは、水素原子が置換されていてもよいアミノ
基、水素原子が置換されていてもよいアンモニウム基等
が挙げられ、特に好ましくは、水素原子が置換されてい
てもよいアミノ基等が挙げられる。
【0024】また、酸性基として好ましくは、カルボキ
シル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステ
ル基等が挙げられ、特に好ましくは、カルボキシル基、
スルホン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる、長鎖
ポリマー4は、上記の塩基性基または酸性基を有してい
れば、単独重合体であっても、共重合体であってもよ
い。なお、長鎖ポリマー4を構成するモノマーの具体例
については下記の製造方法のところで詳説する。
【0025】図2に例示されるように、バルーン3の表
面には、長鎖ポリマー4が有する塩基性基または酸性基
とのイオン結合を介して、薬物5が担持される。本発明
のバルーン・カテーテルは、長鎖ポリマー4が有する基
を塩基性基か酸性基のいずれかが主体となるように選択
して作製することにより、正に荷電している薬物を担持
できるバルーン・カテーテルだけではなく、負に荷電し
ている薬物を担持できるバルーン・カテーテルとするこ
ともできる。また、長鎖ポリマーの長さ、密度等を調整
すれば、従来困難であった粒径の大きな分子集合体の薬
物でも担持可能である。
【0026】バルーン表面には、表面が正または負に荷
電している薬物であれば担持することができるが、本発
明のバルーン・カテーテルに担持する薬物として例えば
抗血栓剤、具体的には抗トロンビン剤である(2R,4R)-4-
メチル-1-[N2-((RS)-3-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-8
-キノリニルスルホニル)-L-アルギニル]-2-ピペリジン
カルボン酸(以下「アルガトロバン」と称する)、ヘパ
リン、ウロキナーゼ、抗血小板剤であるサルポグレラー
ト、細胞増殖を抑制する抗癌剤であるアドリアマイシ
ン、また、これらの薬剤を封入したリポソーム、核酸
(特定の遺伝子の発現を抑制するアンチセンスDNAも
しくはRNA、特定の遺伝子を細胞に導入するのに用い
るプラスミドやウイルスベクター等を含む)、タンパク
質、多糖類、脂質類等が例示される。
【0027】薬物を担持させるには、薬物を、薬物の表
面とは逆に荷電した長鎖ポリマーに接触させ、薬物と長
鎖ポリマーとの間でイオンコンプレックスを形成させれ
ばよい。なお、分散液中または溶液中で薬物を担持させ
る場合、長鎖ポリマーの素材の種類、薬物の種類などに
より、溶液等のpHを調整して薬物の担持量を最大とす
ることができる。例えば、長鎖ポリマーがポリアクリル
酸からなり、アルガトロバンを溶液中で長鎖ポリマーに
吸着させる場合には、溶液のpHは好ましくは4〜1
0、特に好ましくは5〜8とする。また、長鎖ポリマー
がポリジメチルアミノエチルメタクリレートからなり、
アルガトロバンを溶液中で長鎖ポリマーに吸着させる場
合には、溶液中のpHは好ましくは5〜12、特に好ま
しくは7〜11とする。
【0028】また、バルーン3には複数の種類の薬物を
担持させてもよい。さらにバルーン3の表面の一部には
負に荷電する長鎖ポリマーを、その他の部分には正に荷
電する長鎖ポリマーを設け、正に荷電した薬物と、負に
荷電した薬物とを1つのバルーンに担持させることもで
きる。
【0029】本発明のバルーン・カテーテルは、上記の
ように薬物を担持させて、拡散により薬物を投与するタ
イプのバルーン・カテーテルと同様の方法で使用するこ
とができる。本発明のバルーン・カテーテルによれば、
薬物担持量が多く、また長鎖ポリマーが有する基として
酸性基または塩基性基を適宜選択することで、多糖類や
遺伝子もしくは粒径の大きな分子集合体を荷電の正負に
関わらず担持でき、さらに、短時間に高濃度で局所的に
薬物を投与することができる。
【0030】<本発明のバルーン・カテーテルの製造方
法>本発明のバルーン・カテーテルは、通常のバルーン
・カテーテルのバルーン表面に、塩基性基または酸性基
を有する長鎖ポリマーを共有結合により固定化すること
により製造できる。バルーン表面に長鎖ポリマーを設け
ていないバルーン・カテーテルのバルーン表面に長鎖ポ
リマーを施す加工をしてもよいし、また予め表面に長鎖
ポリマーを設けたバルーンを作製し、これをカテーテル
に備え付けてもよい。
【0031】バルーン表面に長鎖ポリマーを共有結合に
より固定化して設けるには、バルーン表面上に過酸化基
を導入する等して、これを起点にモノマーを次々に重合
させてもよいし、予め長鎖ポリマーとなるべきポリマー
を作製してからその一端をバルーン表面に結合させる等
の方法が挙げられる。
【0032】長鎖ポリマーを形成するモノマーとして好
ましくは、例えば、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレ
ート、N,N-ジメチルアミノメタクリレート、2-ジメチル
アミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノアク
リルアミド、N,N-ジメチルアミノメチルメタクリルアミ
ド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリル
酸、メタクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、
2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパンスルホン酸
(AMPS)、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸
ソーダ、2-アクリロイルアミノ-2-メチルプロパンスル
ホン酸ソーダ、メタクリロイルオキシエチレンホスフェ
ート等が挙げられ、特に好ましくはアクリル酸、2-ジメ
チルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0033】バルーン表面に長鎖ポリマーを共有結合に
より固定化する方法として具体的には、以下の方法が例
示される。バルーン・カテーテルのバルーン部位をモノ
マー溶液に浸漬し、γ線、電子線、紫外線を照射してグ
ラフト重合を行うことによりバルーン表面に共有結合に
より固定化された長鎖ポリマーを設けることができる。
【0034】また、バルーン部位をγ線、電子線、紫外
線、低温プラズマ、またはコロナ放電にて前処理するこ
とでバルーンを構成している基材の表面に過酸化基を生
じさせ、これを重合開始基として熱重合を行い、バルー
ン表面に共有結合により固定化された長鎖ポリマーを設
けることができる。
【0035】または、バルーン表面をトリレンジジイソ
シアネート、メチレンビスフェニレンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネート等の2官能性イソシア
ネートで処理した後、無水マレイン酸共重合体等とのカ
ップリング反応を行うことによりバルーン表面に共有結
合により固定化された長鎖ポリマーを設けることができ
る。
【0036】なお、長鎖ポリマーの長さの調整は、γ線
などの照射時間や、モノマー溶液のモノマーや連鎖移動
剤の濃度などを調整し、通常の方法により行うことがで
きる。
【0037】
【実施例】
<実施例1>以下のようにして、市販のバルーン・カテ
ーテル(カネカ製、商品名:フレクター、バルーンの素
材:ポリエチレン製、バルーン長3cm、バルーン拡張
時のバルーン直径3mm)のバルーン表面に長鎖ポリマ
ーを固定させて、本発明のバルーン・カテーテルを作製
した。
【0038】前記カネカ製バルーン・カテーテルのバル
ーン部のみを直径20mmの試験管中のアクリル酸10
重量%および過ヨウ素酸5×10-4M、ベンゾイルアル
コール0.5%を含む溶液に浸漬した。リコー社製Riko
rotary RH-400-10W型装置を用いて1000W高圧水銀
灯を用いて紫外線を試験管を回転させながら、バルーン
表面に均一に2時間照射して、グラフト重合によりバル
ーン表面に長鎖ポリマーを固定化した。反応後、バルー
ン・カテーテルを500mlの蒸留水中に保持し、撹拌
下にて、表面上のホモポリマーの除去を行った。
【0039】バルーン表面のポリアクリル酸グラフト密
度を次のようにして求めた。1%トルイジンブルーの溶
液にバルーン部位を浸漬し、30℃に24時間保持し
て、ポリアクリル酸グラフト鎖にトルイジンブルーを吸
着させた。その後、蒸留水で洗浄後、50%の酢酸溶液
にバルーン部位を浸漬して吸着トルイジンブルーを脱離
させ、トルイジンブルーが溶け込んだ酢酸水溶液の63
3nmにおける吸光度を測定した。また所定量のポリア
クリル酸ゲルへのトルイジンブルーの吸着と脱離を行
い、単位重量ポリアクリル酸へのトルイジンブルーの吸
着量を求めた。両者の値の比較から、バルーン表面のポ
リアクリル酸のグラフト密度を求めた。バルーン上のポ
リアクリル酸密度は46.7μg/cm2であった。
【0040】アルガトロバン(三菱化学(株)製)を種
々のpHのリン酸緩衝液中へ10mg/mlになるよう
にけん濁させた。ポリアクリル酸グラフトバルーンをこ
の溶液に室温下で60分間浸漬することで、アルガトロ
バン微粒子をバルーン表面に吸着させた。その後バルー
ン表面へ蒸留水を3ml吹き付け、アルガトロバンけん
濁液を除去した。バルーン表面上走査型電子顕微鏡で観
察したところ、吸着時に用いた溶液のpHによりバルー
ン表面上のアルガトロバン微粒子の量は異なり、pH6
において最も微粒子量が多かった。pH6にてアルガト
ロバン微粒子を吸着させた表面のアルガトロバン量を定
量を行った。アルガトロバン微粒子吸着バルーン・カテ
ーテルをメタノールに浸漬し、吸着微粒子を溶解させ
た。メタノール溶液を340nmで励起光し、405n
mの発光強度を測定してバルーン上の吸着アルガトロバ
ン量を算出した。吸着アルガトロバン量は56.8μg
/cm2であった。
【0041】<比較例1>Mansfield Bonston Scientif
ic社製のハイドロゲルバルーン・カテーテル(商品名:
SliderTM with Hydrogel PlusTM)を実施例2と同様
に、pH6リン酸緩衝液中10mg/mlのアルガトロ
バンけん濁液に室温下60分浸漬した。その後3ml蒸
留水洗浄後、吸着アルガトロバン量の測定を実施例1と
同様の方法で行った。ハイドロゲルバルーンへのアルガ
トロバンの吸着量は2.5μg/cm2であった。
【0042】<実施例2>アクリル酸の代わりに2−ジ
メチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA、三
菱ガス化学(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様
にしてポリエチレン製のバルーン表面へグラフト重合し
た。グラフト密度の算出は、染料としてアシッドオレン
ジを用いて実施例1と同様の方法で行った。グラフト密
度は6.3μg/cm2であった。この表面に実施例1と
同様な条件下でアルガトロバンを吸着させた。
【0043】バルーン表面上走査型電子顕微鏡で観察し
たところ、吸着時に用いた溶液のpHによりバルーン表
面上のアルガトロバン微粒子の量は異なり、pH10に
おいて最も微粒子量が多かった。吸着アルガトロバン量
は18.9μg/cm2であった。
【0044】<実施例3>日本在来白色種家兎の総頚動
脈を実施例2で作製したアルガトロバン粉末を吸着させ
たバルーン・カテーテルを用いて拡張し、血管壁上のア
ルガトロバン残留量の測定を行った。
【0045】カテーテルを外頚動脈より、総頚動脈に逆
行挿入し、6気圧、60秒間血管拡張させ、血管壁に障
害を加えると共に薬液を血管壁に局所投与した。バルー
ン接触部位の血管を摘出し、血管壁アルガトロバン含量
を蛍光法を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)により測定した。アルガトロバンの血管壁での滞留
量は直後で340±126nmole/g組織、、5分
後で40nmole/g組織、15分後で25nmol
e/g組織であった。バルーンから血管へのアルガトロ
バン移行率は平均5.5%であった。
【0046】<比較例2>比較例1で作製したアルガト
ロバン固定化Mansfield Boston Scientific社製のハイ
ドロゲルバルーン・カテーテルを用いて、実施例3と同
様の実験を行った。アルガトロバンの血管壁での滞留量
は、直後で14.8nmole/g組織、5分後で4.2
nmole/g組織、15分後で3.9nmole/g
組織であった。バルーンから血管へのアルガトロバン移
行率は平均1.5%であった。実施例3及び比較例2に
示されるように、アルガトロバンの血管壁での経時的な
滞留量、またアルガトロバンの移行率を比較すると、本
発明のバルーン・カテーテルのほうが短時間に、また多
量に薬物投与できることがわかる。
【0047】
【発明の効果】本発明によれば、薬物の担持量が多く、
大きな分子集合体であっても担持でき、しかも短時間
に、高濃度で、局所的に薬物を投与し得るバルーン・カ
テーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のバルーン・カテーテルの平面図であ
る。
【図2】 本発明のバルーン・カテーテルのバルーン表
面において薬物を担持した状態を模式的に示した図であ
る。「+」「−」の表示はそれぞれ「+」「−」に荷電
している状態を示す。
【符号の説明】
1 バルーン・カテーテル 2 チューブ 3 バルーン 4 長鎖ポリマー 5 薬物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 滝 和郎 大阪府大阪市旭区新森3−6−6 (72)発明者 大▲脇▼ 久敬 京都府京都市北区大将軍坂田町20−20

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バルーンの表面に、塩基性基または酸性
    基を有する長鎖ポリマーが共有結合により固定化された
    バルーンを備えたバルーン・カテーテル。
  2. 【請求項2】 前記塩基性基または酸性基が、水素原子
    が置換されていてもよいアミノ基またはカルボキシル基
    である請求項1に記載のバルーン・カテーテル。
  3. 【請求項3】 前記長鎖ポリマーが有する塩基性基また
    は酸性基とのイオン結合を介して、バルーン表面に薬物
    が担持された請求項1または2に記載のバルーン・カテ
    ーテル。
  4. 【請求項4】 前記薬物が、抗血栓剤である請求項3に
    記載のバルーン・カテーテル。
  5. 【請求項5】 前記薬物が、アルガトロバン、ヘパリ
    ン、ウロキナーゼ及びサルポグレラートからなる群から
    選ばれた請求項3に記載のバルーン・カテーテル。
  6. 【請求項6】 前記薬物が、リポソーム、核酸、タンパ
    ク質及び多糖類からなる群から選ばれた請求項3に記載
    のバルーン・カテーテル。
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