JPH1186236A - 磁気素子、磁気メモリおよび光磁気素子 - Google Patents

磁気素子、磁気メモリおよび光磁気素子

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JPH1186236A
JPH1186236A JP9241567A JP24156797A JPH1186236A JP H1186236 A JPH1186236 A JP H1186236A JP 9241567 A JP9241567 A JP 9241567A JP 24156797 A JP24156797 A JP 24156797A JP H1186236 A JPH1186236 A JP H1186236A
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Sumio Ikegawa
純夫 池川
Yuichi Motoi
雄一 元井
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Toshiba Corp
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    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 トンネルバリヤ層を良好に形成することがで
きると共に、微細化しても性能劣化しない強磁性トンネ
ル接合を有し、多値記憶が可能な磁気メモリ、高感度な
磁気センサ、非線形光磁気素子などとして使用すること
が可能な磁気素子が求められている。 【解決手段】 R1-x x MO3 (R=Y,希土類元
素、A=Ca,Sr,Ba、M=Mn,Cr,Fe,C
o,Ni、 0≦ x≦ 1)で実質的に表されるペロブスカ
イト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さで形成した複数の
Mペロブスカイト層と、これらMペロブスカイト層間に
配置され、上記したMペロブスカイトと組み合わせて層
状ペロブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック
層とを具備し、これらMペロブスカイト層と絶縁性のブ
ロック層とにより形成された強磁性トンネル接合を有す
る磁気素子である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Mnなどを含む層
状ペロブスカイト酸化物からなる強磁性層を有する磁気
素子と、それを用いた磁気メモリおよび非線形光磁気素
子に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、強磁性層/絶縁層/強磁性層の 3
層積層構造からなる強磁性トンネル接合において巨大磁
気抵抗効果が見出されており、磁気センサ、磁気へッ
ド、磁気メモリなどへの応用が期待されている。
【0003】主に研究されてきた強磁性トンネル接合と
しては、強磁性層としてFe、Co、Niを主成分とす
る金属膜を用い、かつ絶縁層としてAl2 3 などの金
属酸化膜を用いたものが挙げられる。しかしこの場合に
は、厚さ 1〜 2nmと非常に薄いトンネルバリヤ層(Al
2 3 膜など)をピンホールやショートなしに均一にか
つ再現性よく作製することが困難であった。トンネルバ
リヤ層に欠陥があったり、また絶縁層/強磁性層界面に
凹凸があると、上下の強磁性層の磁化が反平行を向くと
きの磁化の方向にばらつきが生じる。その結果、磁気抵
抗値が本来の値よりも小さくなるという問題がある(T,
Miyazaki et al., J.Appl. Phys.81, 3753(1997))。従
って、感度の高い磁気センサや磁気ヘッドを作製するた
めに、ピンホールやショートなどのない非常に薄いトン
ネルバリヤ層を、均一にかつ平坦に再現性よく作製する
技術が求められている。
【0004】ところで、磁気抵抗効果を用いた磁気メモ
リの場合、他の半導体メモリなどに対して競争力を持つ
ためにはサブミクロンの大きさに作製しなけれはならな
い。しかし、例えば金属磁性膜を用いた強磁性層(磁化
固定層)/金属非磁性層/強磁性層(磁化フリー層)の
3層積層構造からなる磁気メモリは、0.75μm 未満に加
工すると以下に示す 2点((1),(2))の問題が発生し、磁
気抵抗が低下すると共にメモリ動作しなくなるという問
題を有している(E.Y.Chen et al., J.Appl.Phys.81, 3
992(1997))。強磁性層(磁化固定層)/絶縁層/強磁
性層(磁化フリー層)の 3層積層構造からなる磁気メモ
リについても、以下に示す 2点の問題が発生している。
【0005】すなわち、 (1)幅が小さくなるほど、金属
膜の端面からの腐食や酸化が特性に顕著な影響を与え
る。一方向磁気異方性を与えるために、FeMnなどの
反強磁性層を積層するが、FeMnは特に腐食や酸化に
弱い。その結果、幅が小さくなるほど磁化固定層のピン
止め磁界が弱くなる。 (2)幅が小さくなるほど反磁界が
増大し、その結果磁化フリー層の磁化反転に要する磁界
が大きくなり、上記のピン止め磁界と同程度の大きさに
なる。磁化フリ一層の厚さを薄くすればこの問題は回避
できるが、Fe、Co、Niを主成分とする金属磁性膜
の場合、トンネル絶縁膜に接して良好な強磁性特性を保
ったまま 3nm以下の厚さにすることは困難である。トン
ネル絶縁膜と金属磁性膜の界面に凹凸や変成層(絶縁膜
が酸化物であるため金属磁性膜が酸化されるなど)が生
じるためである。
【0006】上記したような金属磁性膜を用いた強磁性
トンネル接合からなる磁気メモリにおいては、接合を多
層に積層することによって、多値メモリとなる可能性が
指摘されている。しかし、その具体的な構造や情報の記
録再生方法はまだ明確になっていない。単一接合でさえ
非常に薄いトンネルバリヤ層をピンホールやショートな
しに均一にかつ再現性よく作製することが困難であるた
め、それを多重に積層して作製することは従来の技術で
は極めて困難である。
【0007】ところで、La1-x Srx MnO3 (x=0.3
〜0.5)などのペロブスカイト型のMn酸化物強磁性体は
スピン偏極率が100%に近いことから、これを用いて強磁
性トンネル接合を作製すれば大きな磁気抵抗効果が得ら
れることが期待されている。3〜 6nmの厚さのSrTi
3 層をトンネルバリヤ層として用いた、La0.67Sr
0.33MnO3 (50nm)/SrTiO3 /La0.67Sr0.33
MnO3 (50nm)の 3層構造において、強磁性トンネル効
果に起因する巨大磁気抵抗効果が観測されている(Y.Lu
et al., Phys.Rev. B54, R8357(1996))。しかしなが
ら、巨大磁気抵抗効果が観測されるのは200K以下の低温
域のみである。本来磁気抵抗効果が観測されるべきキュ
リー点(Tc =347K)以下200Kまでの実用領域で観測され
ない理由は以下のように考えられる。
【0008】高温域では以下に述べる 2点により、強磁
性層から強磁性層へのスピンを保存したトンネル過程以
外の過程が主になるため、磁気抵抗効果が小さくなる。
(1)絶縁層/強磁性層界面が不完全なために、高温域で
は界面でスピンフリップ散乱が起きる。 (2)高温域では
バリヤ層内の局在準位を介したトンネルが主となる。従
って、Mnペロブスカイト酸化物を用いる場合にも、ト
ンネルバリヤ層をショートや局在準位の形成なしに平坦
にかつ再現性よく作製する技術が必要とされている。
【0009】さらに、最近、Mnを含んだ層状ペロブス
カイト酸化物・La2-2xSr1+2xMn2 7 (x=0.3)に
おいて、結晶構造中に天然に強磁性トンネル素子ができ
ている現象が報告された(T.Kimura et al., Science 2
74, 1698(1996))。c軸方向の電気抵抗の測定結果とし
て、1kOe 以下の低磁場で大きな磁気抵抗効果が得られ
ている。これは、MnO2 面に挟まれた岩塩型ブロック
層・(La,Sr)2 2 がトンネルバリヤとして働
き、ペロブスカイト 2単位胞分の厚さの(La,Sr)
1 Mn2 5 が強磁性金属層として働いたものである。
この層状酸化物の結晶構造の単位胞中にトンネル接合が
内在されている現象は、銅酸化物超電導体の固有ジョセ
フソン効果と類似している。しかしながら、上記した物
質は同じ強磁性トンネル接合が多重に積層された状態で
あり、このままでは実用的な素子にはならない。
【0010】また、特開平8-259393号公報には、Mnペ
ロブスカイト酸化物・(Lax Sr1-x y+1 Mny
3y+1を用いたメモリスイッチング型磁気抵抗素子が記載
されている。ここに記載されているメモリスイッチング
型磁気抵抗素子は、バルクの単結晶体における大きな磁
気抵抗効果を利用するものである。しかし、これは外部
磁界として1Tオーダーの大きな磁界をかけなければなら
ないという欠点を有している。さらに、外部磁界に対し
て可逆的な磁気抵抗効果しか見出されておらず、不揮発
性メモリ素子としては動作しないという欠点を有してい
る。上記公報に記載されている発明は以下の 4点で本発
明とは異なるものである。
【0011】すなわち、 (1)層状Mnペロブスカイト酸
化物の単位胞に内在された強磁性トンネル現象を利用し
ていない。 (2)不揮発性メモリ素子として動作しない。
(3)物質中に含まれているMnペロブスカイト層部分は
全て同じであり、ブロック層部分も全て同じである。
(4)磁気素子として実用的な基板上に薄膜として形成す
ることや、一方向磁気異方性を与えるための反強磁性物
質との組み合わせなどに関して言及していない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来の強磁性トンネル
接合においては、ピンホール、ショート、局在準位など
のないトンネルバリヤ層を、均一にかつ平坦に再現性よ
く作製することが困難であった。さらに、サブミクロン
の大きさに微細化すると、磁気抵抗が低下すると共に動
作不良になるという問題があった。多値メモリを構成す
るためには強磁性トンネル接合を多重に積層する必要が
あるが、従来の技術および構造では多重トンネル接合を
再現性よく得ることは極めて困難であった。
【0013】本発明は、このような課題に対処するため
になされたものであり、トンネルバリヤ層をピンホー
ル、ショート、局在準位の形成なしに均一にかつ平坦に
再現性よく形成し得る強磁性トンネル接合、またサブミ
クロンの大きさに微細化しても特性の劣化しない強磁性
トンネル接合を提供することを目的としている。さら
に、このような強磁性トンネル接合を利用することによ
って、多値記憶が可能な磁気メモリ、高感度な磁気セン
サ、非線形光磁気素子などとして使用することが可能な
磁気素子、さらにはそのような磁気素子を利用した磁気
メモリおよび光磁気素子を提供することを目的としてい
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明においては、トン
ネルバリヤ層をピンホールやショートなしに均一にかつ
平坦に再現性よく形成し得る強磁性トンネル接合を提供
ために、例えばMnを含む層状ペロブスカイト酸化物を
利用すると共に、層状酸化物に内在されたトンネル接合
の機能を制御して利用している。例えば、結晶構造中の
Mnペロブスカイト層の部分が強磁性層として働き、M
nO2 面に挟まれたブロック層の部分がトンネルバリヤ
層として働く。層状酸化物には、導電性部分と絶縁性部
分(ブロック層)とが原子レベルで平坦な界面を自己組
織的に形成する特徴があるため、理想的なトンネルバリ
ヤ層が得られる。そして、厚さが異なる少なくとも 2層
のMnペロブスカイト層などを強磁性層として使用する
ことによって、実用的な磁気素子を構成することが可能
となる。
【0015】本発明では、さらにサブミクロンの大きさ
に微細化しても特性の劣化しない強磁性トンネル接合を
提供するために、例えばMnを含む層状ペロブスカイト
酸化物を利用する。元来が酸化物であるため、サブミク
ロンサイズに加工しても膜端面からの腐食や酸化による
特性劣化の問題が少ない。この物質に含まれる強磁性導
電層はペロブスカイト 2単位胞分と薄くても十分な特性
を発揮する。これは導電性部分と絶縁性部分(ブロック
層)とが、原子レベルで理想的な界面を自己組織的に形
成する層状酸化物の特徴故である。すなわち、サブミク
ロンサイズに加工しても、反磁界が問題にならない程度
に薄い強磁性導電層を形成することができる。
【0016】さらに本発明では、強磁性トンネル接合を
多重に積層して多値メモリや非線型光学素子として働く
磁気素子を提供するために、各々の層状酸化物において
例えばMnペロブスカイト層部分の厚さが異なる物質を
積層して多重トンネル接合を作製する。Mnペロブスカ
イト層部分の厚さが異なることにより反磁界が異なり、
その結果として各Mnペロブスカイト層部分で磁化を反
転させるのに要する外部磁界の大きさを異ならせること
ができる。この原理により例えば多値の情報の記録が可
能となる。また、例えばMnペロブスカイト層部分の厚
さが異なることによって、トンネルバリヤ層の上下の強
磁性金属電極の磁化の向きが反平行の場合と平行の場合
の電気抵抗の差が各トンネル接合で異なる。この原理に
より多値の情報の再生が可能となる。さらには、例えば
Mnペロブスカイト層部分の厚さが異なる層状酸化物を
空間反転対称性を持たないように積層することにより、
伝導電子の運動の非対称性に基づく非線形光学効果が生
まれる。ブロック層部分が異なる物質を積層して多重ト
ンネル接合を作製しても同様な効果が得られる。
【0017】すなわち、本発明における第1の磁気素子
は、請求項1に記載したように、 一般式:R1-x x MO3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくと
も 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれ
る少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示
し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である。以下同じ)で
実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞
以上の厚さで形成した複数のMペロブスカイト層を有
し、かつ厚さが異なる少なくとも 2層の前記Mペロブス
カイト層を有する強磁性層と、少なくとも前記厚さが異
なる 2層のMペロブスカイト層間に配置され、前記Mペ
ロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物
を形成し得る絶縁性のブロック層からなる絶縁層とを具
備し、前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層と前
記絶縁性のブロック層とにより形成された強磁性トンネ
ル接合を有することを特徴としている。
【0018】本発明における第2の磁気素子は、請求項
2に記載したように、 一般式:R1-x x MO3 で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位
胞以上の厚さで形成した 3層以上のMペロブスカイト層
を有する強磁性層と、前記 3層以上のMペロブスカイト
層間にそれぞれ配置され、前記Mペロブスカイトと組み
合わせて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る 2層以
上の絶縁性のブロック層を有する絶縁層とを具備し、前
記 3層以上のMペロブスカイト層とそれらの間に配置さ
れた前記2層以上の絶縁性のブロック層とにより形成さ
れた 2つ以上の強磁性トンネル接合を有することを特徴
としている。
【0019】本発明の他の磁気素子は、請求項3に記載
したように、 一般式:R1-x x MO3 で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位
胞以上の厚さで形成した 2層のMペロブスカイト層を有
する強磁性層と、前記 2層のMペロブスカイト層間に配
置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロ
ブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック層から
なる絶縁層と、前記 2層のMペロブスカイト層の一方と
隣接して配置されると共に、前記Mペロブスカイト層に
一方向磁気異方性を付与するLaMnO3 層からなる反
強磁性層とを具備することを特徴としている。
【0020】本発明の磁気素子において、前記絶縁性の
ブロック層は請求項4に記載したように、例えばAO−
HgO−AOブロック層、AO−TlO−AOブロック
層、(A,R)O−(Pb,Cu)O−(A,R)Oブ
ロック層,R2-x x 2 岩塩型ブロック層、AO−T
lO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−PbO
−Cu−PbO−(A,R)Oブロック層、AO−Bi
O−BiO−AOブロック層、[A1-x x TiO3
m で表される m重のTiペロブスカイトブロック層、お
よび[Ce1-x x 2 m で表される m重の螢石型ブ
ロック層(ただし、RはYおよび希土類元素から選ばれ
る少なくとも 1種の元素を、AはCa、SrおよびBa
から選ばれる少なくとも 1種の元素を示す)から選ばれ
る少なくとも 1種が用いられる。
【0021】さらに、本発明の磁気メモリは、請求項5
に記載したように、上記した本発明の磁気素子を具備す
る磁気メモリであって、前記複数のMペロブスカイト層
間の磁化の向きが反平行の場合と平行の場合との抵抗値
の差により情報を読み取ることを特徴としている。
【0022】本発明の光磁気素子は、請求項6に記載し
たように、 一般式:R1-x x MO3 で実質的に表されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位
胞以上の厚さで形成した 2層以上のMペロブスカイト層
を有する強磁性層と、前記Mペロブスカイトと組み合わ
せて層状ペロブスカイト酸化物を形成し得る 1層以上の
絶縁性のブロック層を有する絶縁層とを、空間的に非対
称となるように積層した積層構造を具備し、前記積層構
造への磁界の印加の有無により偶数次の非線形光学定数
を変化させることを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための形
態について説明する。
【0024】まず、層状酸化物について説明する。本発
明に用いる物質に近い物質として高温超電導体がある。
層状銅酸化物超電導体は、超電導を担う 2次元的なCu
2面と、CuO2 面間に挟まれたブロック層と呼ばれ
る部分からなり、ブロック層の選択と組み合わせ方によ
って物質設計ができる(Y.Tokura and T.Arima, Jpn.J.
Appl. Phys.29, 2388(1990))。この考え方は超電導の
分野で広く受け入れられている。Mnを含んだ層状酸化
物も、伝導を担う 2次元的なMnO2 面と、MnO2
間に挟まれたブロック層と呼ばれる部分からなり、ブロ
ック層の選択と組み合わせ方によって物質設計ができ
る。
【0025】Mnを含む層状酸化物を形成し得るブロッ
ク層の例としては、AO−HgO−AOブロック層、A
O−TlO−AOブロック層、(A,R)O−(Pb,
Cu)O−(A,R)Oブロック層、R2-x x 2
塩型ブロック層、AO−TlO−TlO−AOブロック
層、(A,R)O−PbO−Cu−PbO−(A,R)
Oブロック層、AO−BiO−BiO−AOブロック
層、[A1-x x TiO3 m で表される m重のTiペ
ロブスカイトブロック層(m=1〜7)、[Ce1-x
x 2 m で表される m重の螢石型ブロック層(m=2〜1
0) などが挙げられる。ここで、RはLa、Pr、N
d、Smなどの希土類元素およびYから選ばれる少なく
とも 1種の元素であり、AはCa、SrおよびBaから
選ばれる少なくとも 1種の元素である。
【0026】本発明におけるMnを含む層状酸化物とし
ては、例えば下記の化学式で実質的に組成が表されるも
のか考えられる。なお、下記の式中において、 nはMn
ペロブスカイト層の部分の厚さを表す。本発明における
Mnペロブスカイト層は nが2以上であり、さらに反磁
界の値などを考慮して nが 2〜23の範囲となる厚さを選
択することが好ましい。
【0027】 化学式:Hg(A,R)n+1 Mnn y …(1) {AO−HgO−AOブロック層} :Tl(A,R)n+1 Mnn y …(2) {AO−TlO−AOブロック層} :(Pb,Cu)(A,R)n+1 Mnn y …(3) {(A,R)O−(Pb,Cu)O−(A,R)Oブロック層} :Rn-nxSr1+nxMnn 3n+1 …(4) {R2-x x 2 岩塩型ブロック層} :Tl2 n+1 Mnn y …(5) {AO−TlO−TlO−AOブロック層} :(Pb2 Cu)(A,R)n+1 Mnn y …(6) {(A,R)O−PbO−Cu−PbO(A,R)Oブロック層} :Bi2 n+1 Mnn y …(7) {AO−BiO−BiO−AOブロック層} :Tim (A,R)n+m Mnn y (m=1〜7) …(8) {[A1-x x TiO3 m , m重Tiペロブスカイトブロック層} :(Ce,R)m n-1 Mnn y (m=2〜10) …(9) {[Ce1-x x 2 m , m重螢石型ブロック層} なお、 { }内にはそれぞれの物質に含まれるブロック層
を記した。ここで、ブロック層には、ブロック層とMn
ペロブスカイト層部分の境界にある、Mnペロブスカイ
トの頂点酸素を含んだ(A,R)O面を含めた。従っ
て、Mnペロブスカイト層部分は(R,A)n-1 Mnn
3n-1と記述する。
【0028】(1)〜(9) 式に例示した本発明の出発点と
なる層状酸化物においては、ブロック層がトンネノレバリ
ヤとなるとき障壁の高さが低いものから順に高いものへ
と並べてある。これらの物質の選択により、多重トンネ
ル接合の障壁高さを自由に設計できる。電子のトンネル
確率は、障壁高さのみならずバリヤの厚さにも依存す
る。また、ブロック層を挟むことによって、水平方向の
原子位置が (a/2,b/2)だけずれる場合がある。ここで、
aおよび bは0.38nmの方向にとったa軸長とb軸長であ
る。この原子位置がずれるかずれないかに依存して、ト
ンネル確率が変化する。
【0029】ところで、Mnペロブスカイト酸化物の場
合は、その組成、キャリア濃度、温度、磁気構造に依存
して3d電子の軌道分極・整列の現象が起きる。強磁性金
属伝導状態においては軌道整列が起きなくとも、軌道の
自由度が量子液体状態にある。これら3d軌道の状態はト
ンネル確率に大きな影響を与える。従って、Mnペロブ
スカイト層部分の組成、キヤリア濃度、温度、磁気構
造、軌道状態も考慮してトンネルバリヤ層を選択する必
要がある。
【0030】上記の種々の要因を考慮して、 (1)〜 (9)
式に例示した種々のブロック層から絶縁層を選択すると
共に、強磁性層としてのMnペロブスカイト層の厚さを
変えることにより、例えば多重強磁性トンネル接合を精
密に設計することができる。あるいは、 (1)〜 (9)式に
例示した種々のブロック層から組み合わせを選択するこ
とによっても、多重強磁性トンネル接合を精密に設計す
ることができる。
【0031】以下では結晶構造のc軸方向への原子面の
繰り返しの最小単位を“擬単位胞”と呼び,擬単位胞を
基準に考える。 (1)式、 (2)式、 (3)式、 (6)式、 (8)
式の各物質の場合と (9)式で mが奇数の場合は、結晶構
造の単位胞が“擬単位胞”と一致している。 (4)式、
(5)式、 (7)式の各物質と (9)式で mが偶数の場合は、
ブロック層を挟むことにより水平方向の原子位置が (a/
2,b/2)だけずれるため、結晶構造の単位胞は“擬単位
胞”の 2倍となる.これらの物質の結晶構造の例を図
1、図2および図3に示す。図中の八面体がペロブスカ
イト構造内のMnO6 八面体を表している。Bがトンネ
ルバリヤとして働くブロック層の部分、Mが強磁性金属
伝導層として働く部分である。破線は擬単位胞を表して
おり、図1では擬単位胞として、Mnペロブスカイト層
部分の中央からMnペロブスカイト層部分の中央までを
とっている。その結果、擬単位胞の中央にブロック層が
位置している。図1は (4)式の n=2の物質の例、例えば
La2-2xSr1+2xMn2 7 である。図2は (7)式の n
=2の物質の例、例えばBi2 Sr3 Mn2 9+δであ
る。図3は (8)式の n=2の物質の例、例えばTi3 4
1 Mn2 15である。
【0032】Mnペロブスカイト層部分の磁性と伝導は
キャリア濃度に強く依存する。本発明において、Mnペ
ロブスカイト層は強磁性金属伝導層として使用する。M
nの平均価数が+3.2以上+3.5以下となるようにすれば、
二重交換相互作用が働いて強磁性金属伝導層となる。M
nの平均価数が+3.5を超えると電荷整列の現象が起きる
など、強磁性金属伝導層ではなくなる。さらには、Mn
の平均価数が+3.3以上+3.4以下であるとキュリー温度が
高いことから望ましい。そのためには各物質において、
AとRとCeの組成比と酸素含有量を調整する必要があ
る。Lan-nxSr1+nxMnn 3n+1の場合、Mnの平均
価数を+3.3以上+3.4以下とするにはx=0.3〜 0.4とすれ
ばよい。この xのことをホール濃度と呼ぶ。
【0033】ここまでは、ペロブスカイト層部分のBサ
イトがMnである物質について説明したが、本発明では
各層に必要な磁気秩序状態を実現できるならば、ペロブ
スカイト層部分のBサイトはMn以外の元素、例えばC
r、Fe、Co、Niなどであってもよい。Bサイトに
Cr、Fe、Co、Niを含んだ反強磁性体としてはL
aCrO3 、LaFeO3 など多数知られており、これ
らは一方向磁気異方性を付与するための反強磁性層とし
て使用することができる。
【0034】一方、強磁性金属伝導層として使用し得る
候補としては、La2-x Srx CoO4 (x〜0.8)、Bi
2-x Pbx Sr3-δCo2 9 (x=0.2〜0.8)、(La,
Sr)3 Co2 7 などが挙げられる。BサイトにMn
を用いた場合には、図4(a)に模式的に示した二重交
換相互作用によって、強磁性でかつ金属伝導の性質を持
たせることができる。二重交換相互作用とは、Mnのe
g 軌道に導入されたホールの運動エネルギーの利得を図
るために、ホールが各Mnサイトのt2g局在スピンを揃
えて強磁性状態になると共に、ホールが動き回ることに
より金属伝導を示すものである。
【0035】BサイトにCoを用いても二重交換相互作
用と類似の効果を生むことができ、その結果強磁性金属
伝導層として好適な性質を持たせることができる。Co
2+とCo3+との混合状態の場合には、Co2+がhigh-spi
n state(HS) 、Co3+がintermediate-spin state(IS)
となるよう組成や結晶構造を調節すれば、図4(b)に
示すように、eg ホールが動き回ると共にt2g局在スピ
ンが揃う。この状態は、例えばLa2-x Srx CoO4
(x〜0.8)で実現できる。他方、Co3+とCo4+との混合
状態の場合に、Co3+がintermediate-spin state(IS)
、Co4+がlow-spin state(LS)となるよう組成や結晶
構造を調節すれば、図4(c)に示すように、eg ホー
ルが動き回ると共にt2g局在スピンが揃う。この状態は
Bi2- x Pbx Sr3-δCo2 9 で実現できる。
【0036】また、BサイトにCr、Fe、Niを用い
た場合についても、同様な組成制御や結晶構造の調節を
行うことによって、強磁性金属伝導層として使用するこ
とができる。
【0037】上述したようなMnを含む層状酸化物を用
いた本発明の磁気素子の一実施形態の構成を図5に示
す。図5は本発明の磁気素子の一実施形態の構成の断面
を模式的に示す図であり、 (4)式で表される物質群を使
った例である。図中の菱形はペロブスカイト構造のMn
6 八面体の断面を表し、中央の黒丸はMnイオンを表
している。これは(La,Sr)3 Mn2 7 の 1擬単
位胞、(La,Sr)4Mn3 10の 1擬単位胞、(L
a,Sr)5 Mn4 13の 1擬単位胞、(La,Sr)
6 Mn5 16の 1擬単位胞を積層した構造である。ただ
し、図5では擬単位胞として、岩塩型ブロック層の中央
から岩塩型ブロック層の中央までをとっている。Mで示
したMnペロブスカイト層部分が強磁性金属伝導層とし
て働き、Bで示した岩塩型ブロック層がトンネルバリヤ
層として働く。これらによって、 3重の強磁性トンネル
接合が積層された構造になっている。
【0038】Mの厚さが数原子層と薄いために反磁界が
小さいという利点がある。ただし、反磁界を小さくする
ためには、磁化容易軸が面内に向いている必要がある。
層状酸化物を用いることにより、Mの厚さが数原子層と
薄くても強磁性金属伝導層として十分な機能を発揮す
る。これは従来のFe、Co、Niを主成分とした金属
磁性膜では実現できなかった利点である。それぞれのM
層の厚さが異なることから、各層の磁化反転に要する磁
界強度が異なる、各トンネル接合で磁気抵抗効果の大き
さが異なるなどの効果が生まれ、多値メモリとしての動
作が可能になる。本発明の磁気メモリは、少なくとも 1
つの強磁性トンネル接合を有する本発明の磁気素子を利
用したものであればよいが、特に 2つ以上の強磁性トン
ネル接合を有する磁気素子を利用することで多値メモリ
としての動作が可能になる。具体的には、 2つ以上の強
磁性トンネル接合を有する磁気素子を具備する磁気メモ
リであって、複数のMnペロブスカイト層(Mペロブス
カイト層)の各々のスピン偏極率が異なることに起因し
て、複数の強磁性トンネル接合において絶縁層の上下の
強磁性金属電極の磁化の向きが反平行の場合と平行の場
合の抵抗値の差が異なることを利用するものである。
【0039】次に、強磁性トンネル接合における磁気抵
抗効果の原理について述べる。図6はこの原理を説明す
るための模式図である。磁性層Aにおいてフェルミ面で
の状態密度のうち多数スピンの占める割合をaとし、磁
性層Bにおいてフェルミ面での状態密度のうち多数スピ
ンの占める割合をbとする。aおよびbは 1以下であ
る。各層のスピン偏極率Pは、PA = 2a-1、PB = 2
b-1と表される。AとBの磁化が平行な場合を図6
(a)に示してあるが、この場合のトンネルコンダクタ
ンスは、
【数1】 で表される。ただし、 x=a+b− 2ab …(11) と置いた。G0 はAとBのスピン偏極率がゼロの場合の
トンネルコンダクタンスである。AとBの磁化が反平行
な場合を図3(b)に示してあるが、この場合のトンネ
ルコンダクタンスは、
【数2】 で表される。(10)〜(12)式を用いて、磁化が反平行の場
合と平行の場合の電気抵抗の差△Rを求めると、
【数3】 となる。ここで、R0 はAとBのスピン偏極率がゼロの
場合のトンネル抵抗である。以上より、aおよびbが大
きいほどxが小さく、その結果(13)式で表される磁気抵
抗効果が大となることが分かる。Mnペロブスカイト酸
化物はaやbが1に近く、スピン偏極率が従来よく用い
られてきたFe、Co、Niなどに比べて非常に大き
い。従って、大きな磁気抵抗効果が発現し、感度の高い
磁場センサや読み取り誤差の少ない磁気メモリが得られ
る。
【0040】一方、(13)式から分かることは、多重強磁
性トンネル接合において各磁性層のスピン偏極率を少し
づつ変えれば、各トンネル接合における磁化が反平行の
場合と平行の場合の電気抵抗の差、すなわち
【数4】 を変えることができることである。その結果、多重トン
ネル接合全体の抵抗を測定することによって、内部のど
のトンネル接合で磁化が反平行になっているかが分か
り、多値の情報を読み取ることができる。各磁性層のス
ピン偏極率を変える方法には 2つある。第1の方法はM
nペロブスカイト層部分の厚さn を変えることである。
nが変化するとキュリー温度Tc が変化する。薄いほど
低次元の揺らぎのために強磁性転移しにくくなり、Tc
が下がる。従って、ある一定温度で見た場合、 nが小さ
いほど実質的なスピン偏極率は小さい。 n=1 の場合は
低温まで強磁性にならないため、本発明の強磁性層には
使用することはできない。
【0041】Lan-nxSr1+nxMnn 3n+1(x=0.3〜0.
4)の場合のTc の n依存性を図7に示す。ここで、△印
で示した点は面内でショートレンジの強磁性オーダーを
する温度Tc SRである。第1の方法だけではスピン偏極
率が所望の値に調節できない場合は、第2の方法として
Mnイオンの一部をFeイオン、Coイオン、Niイオ
ンなどで置換することによりスピン偏極率を低下させ
る。Mnペロブスカイト酸化物を用いると、元来スピン
偏極率が高いために、元素置換で若干スピン偏極率を低
下させても十分に実用し得るという利点がある。
【0042】他に、トンネルバリヤ層を変えることによ
っても、各トンネル接合における△Rを変えることがで
きる。強磁性トンネル接合の磁気抵抗比は、より厳密に
考慮すると以下の式で表される(T.Miyazaki et al.,
J.Appl. Phys.81, 3753(1997))。
【0043】
【数5】 ここで、kA ↑は磁性層Aの中の↑スピンのフェルミ波
数を、κは障壁中の波数を表す。Uは障壁でのポテンシ
ャルエネルギー、EF は強磁性体のフェルミエネルギー
である。(14)〜(17)式より、スピン偏極率以外にバリヤ
層の障壁の高さを変えることにより△Rを変えることが
でき、多重トンネル接合における多値の情報の読み取り
を容易にする。
【0044】次に、反磁界に関して説明する。本発明で
はペロブスカイト n単位胞(n>2,さらには n=2〜23)の
厚さの磁性層を用いる。実際のMnペロブスカイト層部
分の厚さtは、頂点酸素から頂点酸素までを測ると nの
関数として以下の式で表される。
【0045】t=0.39n(nm) …(18) 本発明の磁気素子は、磁性膜を幅w、長さLに加工す
る。この際、L> 5wとすることが好ましく、さらに望
ましくはLが10w程度の細長い形状に加工し、長手方向
に磁化する。その場合の反磁界Hd は近似的に、
【数6】 で表される。Mnペロブスカイトの場合、Ms = 622em
u/cm3 である。この反磁界のエネルギーを考慮して、磁
化反転に必要な外部磁場Ha (以下ではスイッチングフ
ィールドと呼ぶ)は、
【数7】 で表される(E.Y.Chen et al., J.Appl. Phys.81, 3992
(1997))。厚いほど反磁界が大きく、大きな外部磁場を
かけないと磁化反転が起きない。(18)式〜(20)式より、
nの異なる強磁性層が積層されていることによって、 n
に比例してスイッチングフィールドが変わり、多値の情
報の記録が可能となる。w= 0.5μm に加工することを
考えると、 n=2の場合はHa =8.6Oe 、n=23の場合はH
a =99.1Oe であり、この範囲内であれば実用上差し支
えない。 nが24以上ではHa が100Oe を超えるため、
実用上は好ましくない。さらには、Ha が50Oe 程度以
下になり、厚さも 5nm以下になる、n=12以下が外部磁界
に関する感度が高く望ましい。
【0046】強磁性トンネル接合を磁気メモリとして使
用する場合、接合特性に望ましい範囲がある。接合抵抗
Rは、あまり高すぎると寄生容量CとRの積で表される
時定数が長くなり、読み出し速度が遅くなってしまう。
従って、接合抵抗Rは1MΩ以下が望ましい。読み出しに
必要な電圧を考えると、 1つのトンネル接合に 0.05V以
上の電圧をかけることが望ましい。トンネルバリヤ層が
あまり薄すぎるとバリヤ層での電界が大きくなりすぎ、
絶縁破壊を起こしてしまう。そこで、トンネルバリヤ層
での電界は106 V/cm以下が望ましい。従って、トンネル
バリヤ層の厚さは 0.5nm以上であることが望ましい。
【0047】接合面積が0.25μm × 2.5μm のトンネル
接合を作製して、その特性を測定した。La2-x Srx
2 岩塩型ブロック層をトンネルバリヤとした場合は、
接合抵抗が 5〜30Ω、バリヤ層の厚さがMnO2 面から
MnO2 面までの距離にして0.62nmであった。SrO−
BiO−BiO−SrOブロック層をトンネルバリヤと
した場合は、接合抵抗が 1.6〜4.2kΩ、バリヤ層の厚さ
がMnO2 面からMnO2 面までの距離にして 1.2nmで
あった。どちらのバリヤ層も磁気メモリとして使用し得
る範囲に入っているが、後者のSrO−BiO−BiO
−SrOブロック層の方がより適している。
【0048】本発明の磁気素子を作製するためには、分
子線エピタキシー法、スパッタリング法、レーザーアブ
レーション法、CVD法、多元蒸着法などの薄膜形成手
段を用いる。特に、逐次堆積法を用いることが好まし
い。逐次堆積法とは、層状酸化物を合成する際に、結晶
構造に応じて各元素を供給する方法である。逐次蒸着法
とも呼ばれる。これは、層状化合物であることに着目し
て、構成化合物毎あるいは構成元素毎に積層して所望の
結晶構造を得ようという方法である。酸化物を作製する
際、酸素原子も断続的に供給してもよいが、通常は酸素
原子は連続的に供給する。金属元素は 1元素ずつ供給し
てもよいが、同じ原子面に属する原子や隣の面に属する
原子を同時に供給してもよい。また場合によっては結晶
構造中の特定の面に関して隣の面と順序を逆にして供給
してもよい。その方が不純物の生成を抑制して所望の結
晶構造を作りやすい場合があるからである。すなわち、
全体として原子供給シークエンスが結晶構造の原子面の
並びに準じていればよい。
【0049】結晶性がよく表面・界面が平坦な酸化物薄
膜を作製するには、上記した原子供給シークエンスに加
えて、基板温度や酸化条件等の薄膜作製条件が重要であ
る。従来例のようなLa0.67Sr0.33MnO3 /SrT
iO3 /La0.67Sr0.33MnO3 の 3層積層構造を単
に同時蒸着でヘテロ積層した場合は、界面の凹凸や界面
での変成層の発生を抑制できない。本発明では、 (1)〜
(9)式で表される層状物質の単一相薄膜が層状に成長す
る薄膜作製条件を予め見出し、その条件を用いて磁気素
子を作製する。そうすると、層状化合物が本来持ってい
る層状成長しやすい性質を最大限利用することができ
る。この時、結晶成長の外見が層状になるだけでなく、
物質内部の原子の並び方も層状化合物を形成するべく並
ぶ。従って、層状酸化物には導電性部分と絶縁性部分
(ブロック層)とが、原子レベルで理想的な界面を自己
組織的に形成する特徴がある。そのため、理想的なトン
ネルバリヤ層が得られる。導電性部分と絶縁性部分との
界面が原子レベルで平坦になるのは、そのような原子配
列で層状化合物を形成した方が自由エネルギーが低くな
るためである。つまり、所望の層状化合物が安定に形成
される成膜条件を予め見出すことが重要である。
【0050】本発明の磁気素子は、単結晶基板の上に全
ての膜をエピタキシャルに成長することにより、その特
性を最大限に発揮する。実用的な磁気素子を形成するに
は、少なくとも 1つの磁性層の磁化方向を固定するため
に、一方向磁気異方性を付与するための反強磁性層があ
ることが望ましい。本発明の磁気素子においては、反強
磁性層としてLaMnO3 が適している。
【0051】LaMnO3 はTN =150K以下でAタイプ
と呼ばれる層状反強磁性秩序状態になる。これは、磁化
容易軸がb軸方向で、ab面内で強磁性であり、面間方
向(c軸方向)には反強磁性となっている。ab面が基
板面に平行になるように、かつ表面が原子レベルで平坦
になるようエピタキシャル成長させれば、この層の最表
面のスピンは全て同一方向(基板面内方向)を向くこと
になる。これに接した強磁性層に一方向磁気異方性を与
えるのに理想的なスピン構造である。同時に、Mnを含
んだ層状酸化物と格子整合がよいため、基板と層状酸化
物の間のバッファ層としても働く。
【0052】次に、基板材質について述べる。La2-2x
Sr1+2xMn2 7 (x=0.3〜0.4)を直接基板上に成長さ
せる場合、この物質のa軸長が 0.386〜 0.388nmである
ことから、LaSrGaO4 (a=0.3843nm)、SrT
iO3 (a=0.3905nm)、LaGaO3 (a=0.5482n
m,b=0.5526nm)、NdGaO3 (a=0.5428nm,b
=0.5499nm)が格子マッチングに優れた基板であり、そ
の使用が望ましい。しかし、基板上に反強磁性層として
LaMnO3 を堆積する場合は、別の基板を選択した方
がよい。一方向磁気異方性をより完全にするためには、
基板面内でLaMnO3 のb軸(磁化容易軸)がなるべ
く一方向に揃っている方がよい。LaMnO3 の格子定
数はa=0.5541nm、b=0.5751nmであり、これと格子整
合のよい基板の例を表1に掲げる。REScO3 (RE
=Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy)を代表例とし
て、表1に◎をつけた基板材料がLaMnO3 のa軸お
よびb軸と格子マッチングがよく、磁化容易軸を基板面
内で一方向に揃えることができる。
【0053】
【表1】 本発明の磁気素子は室温においても使えないことはない
が、室温以下で使うことでより大きな効果を発揮する。
図7に示したように、 n=2の強磁性層を使う場合は、T
c SR=270K未満で使う必要がある。低温で使うことと、
本発明の磁気素子はペロブスカイト酸化物単結晶基板上
にエピタキシャル成長させることを考えると、高温超電
導体と組み合わせることが容易である。本発明の多値の
不揮発メモリは、高温超電導体を用いた高速デバイスと
組み合わせて同一基板上に作製することによって、さら
に大きな効果を発揮する。メモリセル周辺の配線やトラ
ンジスタなどを超電導体で形成することにより、低消費
電力が達成できる。
【0054】本発明の磁気素子を室温において使用する
ためには、強磁性金属伝導層のキュリー温度が室温より
も十分高いことが望ましい。そのためには、Mnペロブ
スカイト層部分のAサイトのイオン半径をなるべく大き
くし、ペロブスカイトのprimitive unit cell の体積が
大きい方がよい。そのためにはAサイトイオンとしてL
aとBa、またはLaとSrが望ましい。またLaの代
わりにアクチノイド元素、Baの代わりにRaがイオン
半径が大きく使い得る。さらに、Mnペロブスカイト層
の厚さn があまり薄くなるとキュリー温度が下がってし
まうため、nは 4以上が望ましい。
【0055】
【実施例】次に,本発明の具体的な実施例について説明
する.ここで、本発明の磁気素子の実施例について述べ
る前に、以下の実施例で使用した成膜装置について図8
を参照して説明する。
【0056】図8に示すMBE装置の成長室11には、
5本のクヌーセン・セル12が装着され、各々にMnを
含んだ層状酸化物を作製するための元素(例えばMn、
Sr、Ca、Bi、La)が入っている。各クヌーセン
・セル12の前方には、それぞれシャッタ13が配置さ
れている。
【0057】酸素の供給源としては、ECRプラズマに
よる活性酸素源(ECRガン)14を用いており、成長
室11に酸素ガスを 0.7〜 3.3sccmで流す。プラズマへ
の入射電力は 100〜200Wである。成長室11は排気速度
2000L/sの図示しないクライオポンプで排気可能とされ
ている。成長室11の圧力は、イオンゲージ(VG)1
5で測定しており、以下の実施例の成膜では 1〜 6×10
-3Paであった。活性酸素源としてはECRガンの他に、
3 を 70%以上の高濃度に含み、残りがO2 であるガス
も用いた。その場合の成長室11の圧力は 8×10-5〜 5
×10-4Paであった。
【0058】このMBE装置には、ガスソース16が装
着されている。このガスソース16は、蒸気庄が高すぎ
るか、あるいは蒸気圧が低くクヌーセン・セルでは蒸発
させにくい金属元素、例えはTi、La、Pr、Y、C
eなどを有機金属やハロゲン化物の形で基板に供給する
ために用いる。有機金属原料には、例えばそれぞれの金
属元素のβ−ジケトン錯体を用いる。これらβ−ジケト
ン錯体は 373〜573Kの間で十分な蒸気圧をもち、かつ酸
素ガスが存在する中で573K以上で分解して金属元素が堆
積することから、ガスソースMBE法の原料に適してい
る。原料の輸送経路のパイプは原料ガスの凝集を避ける
ために加熱してある。
【0059】これらの原料供給装置を用いて、作りたい
結晶構造に応じで各元素を逐次蒸着した。成長速度は 1
原子層当たり約30秒とした。
【0060】また、このMBE装置は差動排気した電子
銃17と蛍光スクリーン18を持ち、成長過程を反射型
高速電子線回折(RHEED)で観察することが可能と
されている。以下の実施例では、電子加速電圧は25〜30
kVとした。基板19にはSrTiO3 単結晶の (100)面
やGdScO3 単結晶のab面を用い、 923〜 1123Kに
加熱した。図示を省略したが、基板19の直下には水晶
振動子式膜厚計がセット可能であり、クヌーセン・セル
12やガスソース・ノズル20からの分子線強度をモニ
ターできるようになっている。作製した薄膜試料は、C
u−Kα線を用いたX線回折を行い、組成はICP発光
分光法で測定した。
【0061】実施例1 層状酸化物としてLan-nxSr1+nxMnn 3n+1(x=0.3
〜0.4,n=2,3,4,5)の薄膜を作製した。 n=2の場合は図1
に示した結晶構造に応じて逐次蒸着を行った。種々に成
膜条件を変化させて詳細な実験を繰り返した結果、この
物質群は基板温度 923〜 1073KにてSrTiO3 基板上
にエピタキシャル成長させることができた。成長させな
がらRHEED観察した結果、擬単位胞を成長単位とし
て層状成長することが確認された。またX線回折の結
果、c軸長が2.02nm(n=2の場合)、2.78nm(n=3の場
合)、3.54nm(n=4の場合)、4.31nm(n=5の場合)のc軸
配向膜であることが確認された。すなわち、所望の結晶
構造が得られた。
【0062】実施例2 図9に断面構造を示す磁気素子、すなわち多値の記憶が
できるメモリセルを作製した。GdScO3 単結晶基板
11上にLaMnO3 反強磁性絶縁体AF1を堆積し、
その上に強磁性層であるM6層としてLa1-x Srx
nO3 を堆積すると、M6層は磁化固定層として働く。
同様に強磁性層としてのM2層、M3層、M4層および
M5層はフリー磁性層であり、図5に示した磁気素子と
同様に、上からLa2-2xSr1+2xMn2 7 の 1擬単位
胞、La3-3xSr1+3xMn3 10の 1擬単位胞、La
4-4xSr1+4xMn4 13の 1擬単位胞、La5-5xSr
1+5xMn5 16の 1擬単位胞を積層した構造である。た
だし、必要に応じてMnの一部(15%未満)をCoで置換
した。
【0063】B1層、B2層、B3層、B4層およびB
5層は、La2-x Srx 2 岩塩型ブロック層となるよ
うにシャッターコントロールで逐次蒸着した。これらの
層はトンネルバリヤ層(絶縁層)として働く。各B層を
介してトンネル接合1〜5が形成されている。M2層〜
M5層とB1層〜B5層の部分の堆積に際しては、実施
例1で見出した各層状化合物が層状成長する成膜条件を
用いた。
【0064】M1層〜M6層は少なくとも短距離的な、
望ましくは長距離的な強磁性秩序状態である必要があ
る。小さな外部磁界でフリー磁性層の磁化を反転させる
ためには、全ての強磁性層で磁化容易軸が面内方向であ
ることが望ましい。そのような状態を実現するためには
組成x と動作温度を選択する。例えば、 x=0.4の場合に
c =126K以下で実現できる。また、 x=0.3の場合に90
〜270Kの温度範囲で実現できる。
【0065】M1層はLa1-x Srx MnO3 であり、
その上に堆積したLaMnO3 反強磁性絶縁体AF2の
ために磁化固定層として働く。成膜後の着磁によって固
定層の磁化は左向きとした。その上に絶縁膜12を介し
てAu等の金属からなる書き込みライン13が設置され
ている。書き込みライン13に紙面に垂直に電流を流す
ことによって、M2層〜M5層の磁化反転のための外部
磁場を発生させる。w= 0.5μm に加工した後、スイッ
チングフィールドを測定した結果、M2層ではHc2=1
1.6Oe 、M3層ではHc3=15.9Oe 、M4層ではHc4
=20.2Oe 、M5層ではHc5=24.6Oe であった。これ
らは、反磁界を考慮した(20)式の値に、材料本来の保磁
力が加わった値となっていた。M1層と電気的に接触し
てAu等の金属からなる読み出しライン14が設置され
ている。読み出しライン14から直列多重トンネル接合
を通ってアースライン15ヘ電流を流し、M1層とM6
層間の電気抵抗Rtotal を測定することにより情報を読
み出す。
【0066】次に、磁化反転による電気抵抗の変化を計
算で求めた。磁性層M1におけるフェルミ面での状態密
度のうち多数スピンの占める割合をa1 と書くと、a1
=0.95に調節した。同様にして、a2 =0.8 、a3 =0.
85、a4 =0.9 、a5 =0.95、a6 =0.95に調節した。
これらの値を(13)式に代入すると、トンネル接合1での
磁化が反平行の場合と平行の場合の電気抵抗の差・△R
1 は、△R1 =1.52R0 と計算された。同様にして、△
R2 =1.02R0 、△R3 =1.63R0 、△R4 =2.99
0 、△R5 =4.71R0 と計算された。ここで、R0
1つのトンネル接合において、上下の導電性層のスピン
偏極率がゼロの場合のトンネル抵抗である。この実施例
ではB1層〜B5層が同じバリヤ層であるため、トンネ
ル接合1〜5においてR0 は同じ値である。a1 〜a6
を0.95〜 0.8に調節することによって、各接合での磁気
抵抗の出力信号が十分識別できる程度に異なることが分
かった。
【0067】次に、特定のフリー磁性層の磁化が反転し
たときのM1層およびM6層間の電気抵抗Rtotal の変
化を計算した。図9に示した全ての磁化が左を向いてい
る状態から、Hc2<Hex<Hc3の外部磁界Hexをかけて
M2層だけ右向きに反転したとする。△R1 +△R2 =
2.54R0 だけRtotal が増大するはずである。さらに、
c3<Hex<Hc4の外部磁界HexをかけてM3層が右向
きに反転したとする。このとき、M2層とM3層は平行
になるために△R2 だけ抵抗減少し、M3層とM4層は
反平行になるために△R3 だけ抵抗が増大する。差し引
き△R3 −△R2 =0.61R0 だけRtotal が増大するは
ずである。さらに、M4層を右向きに反転したとする
と、△R4 +△R3 =1.36R0 だけRtotal が増大する
はずである。このようにして、どの強磁性層の磁化が反
転しているかは電気抵抗の測定により十分識別できるこ
とが分かった。
【0068】この磁気素子のRtotal のHex依存性を測
定した結果を図10に示す。±30Oe の磁界をかけてヒ
ステリシス曲線を描いた。円内に示した 4つの矢印は、
M2層、M3層、M4層、M5層のフリー磁性層の磁化
の向きを表す。それぞれの磁化の配置にしたがって、R
total が変化している様子がよく分かる。途中の磁界強
度Hexで止めて磁界を取り去ればHexでの磁化配置が保
存され、不揮発メモリとなる。
【0069】このメモリセルでは 4つのフリー磁性層に
対応しで4bit(=16状態)のメモリとなる。しかし図9に
は 8状態しか示されていない。他の磁化配置の状態は、
もっと小さなヒステリシスループを描くことによって実
現できる。例えば図11に示したヒステリシスループを
描くと、最後のE点のゼロ磁場状態ではM3層の磁化だ
け右向きになった状態が実現できる。
【0070】実施例3 実施例2と同様のメモリセルで、バリヤ層の異なるメモ
リセルを作製した。GdScO3 単結晶基板上にLaM
nO3 反強磁性絶縁体を堆積し、その上にM6層の一部
としてLa1-x Srx MnO3 を堆積した。次いで、M
6層の一部からB5層とM5層の下部を形成する物質と
して、Ti3 (La,Sr)9 Mn6y を 1擬単位胞
堆積した。この実施例では擬単位胞として、Mnペロフ
スカイ卜層部分の中央からMnペロブスカイト層部分の
中央までをとる。
【0071】次に、M5層の上部、B4層、M4層、B
3層およびM3層の下部を形成する物質として、Bi2
(La,Sr)5 Mn4 y を 2擬単位胞堆積した。次
いで、M3層の上部、B2層、M2層、B1層およびM
1層の下部を形成する物質として、La2-2xSr1+2x
2 7 を 2擬単位胞堆積した。さらに、M1層の上部
としてLa1-x Srx MnO3 、その上にLaMnO3
反強磁性絶縁体を堆積した。
【0072】結果として、図9と同じ構造のメモリセル
で,B5層が[(La,Sr)TiO3 3 で表される
3重のTiペロブスカイトブロック層、B4層とB3層
がSrO−BiO−BiO−SrOブロック層、B2層
とB1層がLa2-x Srx2 岩塩型ブロック層となっ
た。また、M5層は n=5のMnペロブスカイト層、M4
は n=4、M3層は n=3、M2層は n=2の各Mnペロブス
カイト層となった。B3層〜B5層のトンネルバリヤ層
は、B2層〜B1層よりも厚く障壁が高いため、トンネ
ル接合3、4、5ではトンネル接合1、2よりもトンネ
ル確率が低く、かつ△R=R↑↓−R↑↑が大きくなっ
た。それ以外は実施例2と同様の多値メモリ動作が確認
された。
【0073】実施例4 実施例2のメモリセルまたは実施例3のメモリセルを多
数並べて、メモリアレイを作製した。
【0074】図12にその書き込み線の例を示す。各ワ
ード線A、B、Cには、Hc2の磁界を発生する電流より
小さな電流を流す。例えば 6Oe の磁場を発生する程度
の電流を流す。ワード線AとBに電流を流すと、中央の
メモリセルでのみHc2を超える磁界を発生し、M2層の
磁化を反転できる。ワード線AとBとCに電流を流す
と、中央のメモリセルでのみHc3を超える磁界を発生
し、M3層の磁化を反転できる。このように、 3層の平
行なワード線群を作製すれば、 2枚のフリー磁性層まで
は書き込みができる。さらに多数枚のフリー磁性層の書
き込みを制御するには、さらにワード線群を多層化すれ
はよい。しかしそれには限度がある。
【0075】そこで、図13に示すように書き込み線に
トランジスタを設けてスイッチングすればよい。図13
の水平方向に走っている電流線には比較的大きな電流が
流れるので、この線の作る磁界がメモリセルの磁化容易
軸方向に向かないよう配慮する必要がある。トランジス
タとして例えばMOS−FETを用い、図13の信号線
Wからの信号でFETがONとなり、特定の 1つのメモ
リセルにのみ記録用の磁界がかかる。Hc2からHc5まで
任意の磁界をかけることができる。情報の読み出しに際
しては、電流線に読み出し用微少電流を流し、図13の
信号線Rからの信号でFETがONとなり、特定の 1つ
のメモリセルの電気抵抗が測定される。図13におい
て、それぞれの配線は金属膜、FETはSiのMOS−
FETとすればよい。しかし、120K以下の低温で使う場
合は、配線を高温超電導体薄膜、FETを高温超電導体
の電界効果素子で構成することで、より低消費電力のメ
モリが実現できる。Mnを含む層状ペロブスカイト酸化
物と高温超電導体とは、同じ単結晶基板上にエピタキシ
ャル成長させることができる上に、成膜技術と加工プロ
セス技術が類似するため、両者を組み合わさせることは
製造上のメリットもある。
【0076】図14に、本発明の不揮発性磁気メモリと
高温超電導体の高速論理回路とを組み合わせたシステム
の概念図を示す。従来、高温超電導体だけで大容量メモ
リや不揮発メモリを構成することは困難であった。本発
明のMnを含む層状酸化物を用いた磁気メモリを同一基
板上に形成することにより、その欠点を克服することが
できる。図14においては、ペロブスカイト単結晶基板
21上にMnを含む層状酸化物を利用した本発明の不揮
発性多値メモリアレイ(超電導配線と超電導電界効果ト
ランジスタを含む)22と高温超電導体高速論理回路
(単一磁束量子論理回路など)23とが形成されてお
り、これらは例えばGM型冷凍機24で20〜80Kの低温
に保持されている。
【0077】実施例5 実施例2と似た構造で、しかし磁化容易軸の方向が異な
るメモリセルを作製した。図15に断面構造を示す。S
rTiO3 単結晶基板11上にPr0.5 Sr0.5 MnO
3 反強磁性絶縁体AFを堆積し、その上にM6層として
La1-x Srx MnO3 を堆積すると、M6層は磁化固
定層として働く。M2層、M3層、M4層およびM5層
はフリー磁性層であり、図2と同様だがペロブスカイト
部分の層数を変えて、La2-2xSr1+2xMnO7 の 1擬
単位胞、La4-4xSr1+4xMn4 13の 1擬単位胞、L
8-8xSr1+8xMn8 33の 1擬単位胞、La16-16x
1+16x Mn1649の 1擬単位胞を積層した構造であ
る。
【0078】ここでは、磁化容易軸が基板面に垂直方向
である磁気素子を作製した。そのような状態を実現する
ためには組成x と動作温度を選択する。例えば、 x=0.3
の場合に 0〜 90Kの温度範囲で実現できる。この組成、
温度範囲、磁化配置を選ぶことの利点は、大きな磁気抵
抗比が容易に再現性よく得られる点である。例えば、温
度 60Kでc軸方向に 100Oe の外部磁界をかけた場合
に、MR比=(R↑↓−R↑↑)/R↑↑= 22%が得ら
れた。その理由は、この組成、温度範囲、磁化配置で伝
導を担う3d電子の軌道状態が強磁性トンネル接合に好適
な状態であるためと考えられる。
【0079】磁化容易軸が基板面に垂直方向であること
の利点は、情報の読み出し方法として電気抵抗測定以外
に、光学的にファラデー効果あるいは極カー効果で行え
る点である。膜面に垂直に直線偏光を入射すると、透過
光あるいは反射光の偏光面が磁性層の磁化状態に応じて
回転するため、その回転角を測定して情報を読み出すこ
とができる。M2層、M3層、M4層およびM5層の厚
さがn2=2、n3=4、n4=8、n5=16 と異なるため、各層での
回転角が異なり、どの層の磁化が反転しているかが識別
できる。Mnペロブスカイト酸化物のファラデー回転角
は、波長 830nmで 10000度/cm 、波長 400nmで 60000度
/cm と大きい。前者の波長領域では3d状態間の遷移に起
因し、後者の波長領域ではO2p軌道からMn3d軌道への
電荷移動励起に起因する。ファラデー回転角は光のエネ
ルギーが電荷移動エネルギー(4.5eV)に近付くほど増大
するので、光源としては波長 400nmから 300nmの短波長
レーザを用いることが望ましい。このような短波長レー
ザーは、ZnO(バンドギャップ 3.37eV)やGaN(バ
ンドギャップ 3.4eV)を用いて実現できる。
【0080】このメモリセルへの情報の書き込みは、書
き込みライン13に電流を流して膜面に垂直方向に磁場
をかけて行う。磁性層が厚いほど反磁界が小さいため
に、多値の情報の記録が可能である。この実施例の組
成、温度範囲、磁化配置においては、B1層、B2層、
B3層、B4層およびB5層のLa2-x Srx 2 岩塩
型ブロック層を介して磁性層間に弱い反強磁性相互作用
が働くことが、記録磁界の低減に役立つ。
【0081】Mnペロブスカイト酸化物を磁性層とした
メモリにおいて、情報を光で記録することも可能であ
る。図16に示すように、磁化固定層(Hard)の上にバリ
ヤ層BとしてPr1-x Cax MnO3 (x=0.3〜0.5)また
はNd0.5 Sr0.5 MnO3 を堆積する。これらの物質
はおおよそ200K以下の低温域で電荷整列した反強磁性絶
縁体である。図16で斜線部は絶縁体を表している。こ
の上に磁性層Mを堆積する。M層の磁化は予め磁化固定
層と反平行の向きに磁化しておく。このノモリに光を照
射すると、下記のプロセスによって、被照射部分のみ磁
性層Mの磁化が反転して情報が書き込まれる。光の波長
は2000〜 300nmの範囲でよい。
【0082】上記した電荷整列反強磁性絶縁体に光を照
射すると、光誘起キャリアが発生して強磁性金属伝導状
態になる(K.Miyano et al., Phys. Rev. Lett.78 4257
(1997))。その結果、磁化固定層(Hard)と磁性層Mの間
に強磁性的交換相互作用(主に二重交換相互作用によ
る)が生じ、磁性層Mの磁化が磁化固定層と平行にな
る。電荷整列反強磁性絶縁体から光誘起キャリアによる
強磁性金属伝導状態への相転移は 1次相転移である。従
って、光照射により発生した強磁性金属状態のembryoは
ある臨界核の大きさ以上にならないと相転移にならな
い。
【0083】図16(a)は弱い光を照射した場合を示
しており、発生した強磁性金属状態のembryoは臨界核よ
り小さいために光照射を止めると消失してしまう。光が
照射されている間に filamentaryな強磁性金属伝導状態
が磁化固定層から磁性層Mにつながり、M層の磁化を反
転して情報が記録される。光照射を止めるとバリヤ層B
の全体が元の絶縁体に戻る。このように記録された情報
は、M層の保磁力以上の磁界を下向きにかけることによ
り消去される。
【0084】一方、図16(b)に示すように、強い光
を照射した場合には、強磁性金属状態のembryoは臨界核
より大きくなり、被照射部全体が強磁性金属状態に相転
移する。光照射を止めた後もこの強磁性金属状態は残
る。こうしてM層に記録された情報は、磁化固定層の保
磁力以上の非常に大きな磁界をかけない限り消去できな
い。情報を消去するには、B層の温度を電荷整列が融解
し常磁性になる温度以上まで上昇させ、再び動作温度ま
で冷却してB層全体を絶縁体にする必要がある。このよ
うに、記録時の光の強度を変えることによって、消去可
能な情報と消去不可能な情報を区別して記録することが
できる。すなわち、 1つのメモリセルに1bitのROMの
機能と多bit のRAMの機能の両方を持たせることがで
きる。ここで、記録動作すなわちB層での光誘起キャリ
アによる強磁性金属伝導状態への相転移が容易に起きる
ようにするには、同時にB層に電圧または磁場をかける
ことが有効である。
【0085】以上の光照射による情報書き込み方法と、
ファラデー効果やカー効果による情報再生方法とを組み
合わせると、Mnペロブスカイト酸化物を利用した光磁
気記録媒体が構成できる。
【0086】実施例6 この実施例では高感度な磁場センサーを作製した。図1
7にその構造を示す。図中の菱形はペロブスカイト構造
のMnO6 八面体の断面を表し、中央の丸はMnイオン
を表している。CaZrO3 単結晶基板(斜方晶ペロブ
スカイト単結晶基板)11上にLaMnO3 反強磁性絶
縁体AF2を堆積し、その上にM3層の下部としてLa
0.67Sr0.33MnO3 を堆積した。
【0087】次に、M3層の上部、B2層、M2層、B
1層およびM1層の下部を形成する物質として、(Pb
2 Cu)Sr3 LaMn3 12+δを 2擬単位胞堆積し
た。この実施例では擬単位胞として、Mnペロブスカイ
ト層部分の中央からMnペロブスカイト層部分の中央ま
でをとる。さらに、M1層の上部としてLa0.67Sr
0.33MnO3 を、その上にLaMnO3 反強磁性絶縁体
AF1を堆積した。B2層とB3層はSrO−PbO−
Cu−PbO−SrOブロック層からなり、トンネルバ
リヤ層として働く。M1層とM3層は磁化固定層であ
る。M2はペロブスカイト 3単位胞分の厚さを持つMn
ペロブスカイト層からなり、フリー磁性層である。
【0088】Mnを含む層状酸化物を利用することによ
り、これほど薄くとも強磁性金属伝導層として働く。ト
ンネル絶縁膜の間にこれほど薄い強磁性金属伝導層を作
製することは、Fe、Co、Niを主成分とした従来の
金属磁性膜では成し得なかったことである。フリー磁性
層が薄いことから反磁界の影響が小さく、小さな外部磁
界でもその方向にフリー磁性層の磁化が向く。すなわ
ち、敏感なセンサーとなる。M1層からM3層までの 2
重トンネル接合の抵抗を測定することにより、外部磁界
の磁化容易軸方向の成分が分かる。一般に、従来の金属
人工格子からなるGMR素子や金属積層膜からなるスピ
ンバルブよりも、強磁性トンネル接合の方が磁気抵抗効
果は大きい。この実施例の磁気素子は、その強磁性トン
ネル接合を2重に含むことにより、さらに磁気抵抗効果
が大きく、従来にない高感度な磁気センサーとなる。
【0089】この実施例の磁気素子は、高感度な磁気セ
ンサーとして、例えば磁気ディスク装置の読み出しヘッ
ドとして使用することができる。他に、磁気メモリとし
ても使用し得るものである。
【0090】実施例7 この実施例では、他の構成による高感度な磁場センサー
を作製した。図18にその構造を示す。NdScO3
結晶基板(斜方晶ペロブスカイト単結晶基板)11上に
LaMnO3 反強磁性絶縁体AFを堆積し、その上にM
2層の下部としてLa0.67Ba0.33MnO3 を堆積し
た。
【0091】次に、M2層の上部、B層およびM1層の
下部を形成する物質として、Bi2Sr3 Mn2 9+δ
(δ〜0.3)を 1擬単位胞堆積した。この実施例では擬単
位胞として、Mnペロブスカイト層部分の中央からMn
ペロブスカイト層部分の中央までをとる。さらに、M1
層の上部としてLa0.67Ba0.33MnO3 を 8単位胞分
の厚さ堆積した。B層はSrO−BiO−BiO−Sr
Oブロック層からなり、トンネルバリヤ層として働く。
M2層は磁化固定層である。M1層はペロブスカイト 9
単位胞分の厚さを持つMnペロブスカイト層からなり、
フリー磁性層である。フリー磁性層のキュリー温度は室
温より高かった。室温において、小さな外部磁界でもそ
の方向にフリー磁性層の磁化が向く。このトンネル接合
の抵抗を測定することにより、外部磁界の磁化容易軸方
向の成分が分かる。
【0092】作製した素子の薄膜の方位関係をX線回折
で調べたところ、NdScO3 a軸(a=0.5574nm)/
/LaMnO3 a軸(a=0.5541nm)、NdScO3
軸(b=0.5771nm)//LaMnO3 b軸(b=0.5551
nm)であり、格子が整合するようにLaMnO3 のb軸
が一方向に揃ってエピタキシャル成長していた。この素
子は、成膜後室温にてLaMnO3 のb軸方向に1Tの磁
場をかけて、磁化固定層M2の磁化方向を一方向に揃え
て固定した。磁化固定層の磁化を一方向に揃える他の方
法として、成膜しながら磁場をかけてもよい。
【0093】この素子はフォトリソグラフィーにより、
LaMnO3 のa軸方向に 1μm 、LaMnO3 のb軸
方向に10μm の大きさに加工し、その後に磁気特性を測
定した。フリー磁性層のキュリー温度は350Kであった。
また、293Kでの磁気抵抗比(=(R↑↓−R↑↑)/R
↑↑)は 30%であった。図19に293Kでの抵抗の磁場依
存性を示す。室温において高い感度を示す磁気センサー
が得られていることが分かる。一方、±1kOe の磁場を
かけても磁場固定層M2の磁化方向に変化はなかった。
一軸磁気異方性を付与するための反強磁性層としてLa
MnO3 を用いることによって、特性の優れた磁化固定
層が得られた。
【0094】実施例8 層状Mnペロブスカイト酸化物を利用した非線形光磁気
素子の実施例を図20に示す。これは、(La,Sr)
3 Mn2 7 の 1擬単位胞と(La,Sr)4Mn3
10の 1擬単位胞を積層して作製したものであり、金属層
(M1)/絶縁層(B)/金属層(M2)の構造を有す
る。
【0095】この実施例において、金属層M1はぺロフ
スカイト 2単位胞分の厚さを持つMnペロブスカイト層
・(La1-x Srx )Mn2 5 (x=0.3) であり、金属
層M2はぺロフスカイト 3単位胞分の厚さを持つMnぺ
ロフスカイト層・(La1-x Srx 2 Mn3 8 (x=
0.3) である。絶縁層BはLa2-x Srx 2 岩塩型ブ
ロック層であり、トンネルバリヤ層として機能する。従
って、この非線形光磁気素子全体を(La1-x Srx
7 Mn5 17の組成の酸化物が 1単位胞分の厚さで形成
された薄膜であると見なすことができる。この非線形光
磁気素子において、金属層M1、M2の厚さが互いに異
なり、しかも絶縁層Bの厚さが金属層の伝導電子がトン
ネルできるような厚さであることが特徴である。
【0096】図21に示すように、まず金属層M1と金
属層M2の磁化が反平行な状態の超薄膜を 20Kまで冷却
し、偏光方向が金属層と絶縁層の面に垂直な方向に一致
するような 1〜 30THzの周波数(f1 )である遠赤外光
を入射したが、 2〜 60THz付近の周波数(f2 = 2
1 )の倍高調波の赤外光の発生は観測することができ
なかった。
【0097】次に、この実施例の超薄膜に金属層と絶縁
層の面に垂直な方向に 40kA/m(約500Oe)の磁場をかけ
て 20Kに冷却し、金属層M1と金属層M2の磁化を平行
にした状態の下で、偏光方向が金属層と絶縁層の面に垂
直な方向に一致するような1〜 30THzの周波数(f1
である遠赤外光および赤外光を入射したところ、金属層
M1と金属層M2の間に、その倍高調波である 2〜 60T
Hz付近の周波数(f2 = 2f1 )の遠赤外光や赤外光を
発生させることができた。このとき、 2次非線形光学定
数χ(2) (2f1 )の大きさは、f2 = 2f1 =30.2THz
のときに最も大きな値を得ることができた。すなわち磁
場を加えることにより、 2次非線形光学定数χ(2) (2f
1 )を 0でない値に変えることができた。また、磁場の
変化に対して 2次非線形光学定数χ(2) (2f1 )の周波
数依存性は可逆的に変化した。以上述べたように、金属
層(M1)/絶縁層(B)/金属層(M2)の構造の素
子において、磁場を加えることにより 2次の非線形光学
効果を発揮する。以下に、その原理の概略を説明する。
【0098】Mnペロブスカイト酸化物La1-x Srx
MnO3 におけるMnの d軌道の電子状態は、dε軌道
に局在スピンを担う電子が 3個占有し、dγ軌道に局在
スピンと同じ向きのスピンを持つ伝導電子が 1-x個占有
している状態となっている(図4(a)参照)。
【0099】x=0.3の場合、 90K以下の低温で磁化容易
軸は層に垂直な方向と考えられる。この実施例の組成、
温度範囲、磁化配置においては、B層のLa2-x Srx
2岩塩型ブロック層を介して磁性層M1、M2間に弱
い反強磁性相互作用が働く。磁場のない状態では、金属
層M1と金属層M2の磁化は平行に揃う。そうすると、
絶縁層Bを挟んだ最近接Mnサイト間のトランスファー
積分t1 がおよそ 20meVとなる。
【0100】図22(a)に示すように、金属層M1と
金属層M2の磁化が反平行になっている場合、金属層M
1の局在スピンと同じ向きの伝導電子は、金属層M2の
領域では大きなポテンシャルを感じるため、伝導電子は
金属層M1の領域に閉じ込められ、単一量子井戸を形成
する。一方、金属層M1と金属層M2の磁化を平行にし
た場合、金属層M1の局在スピンと同じ向きの伝導電子
は、金属層M2の領域にも存在することができる。その
結果、図22(b)に示すように、非対称な2重量子井
戸を形成する。
【0101】このように、空間的に非対称なポテンシャ
ル井戸が形成されていると、その井戸中を運動する電子
によって、偶数次特に 2次の非線形光学効果を発生させ
ることができる。例えば、半導体超格子により作製した
非対称量子井戸(asymmetricquantum wells)での 2次非
線形光学効果の例がPhysical Review Letters 72, 2183
(1994)、Physical Review B 44, 11315(1991) に示され
ている。IEEE Jour-nal of Quantum Electronics, Vo
l.QE-19, No.5, p.p.791-794 の (1)式に示されている
ように、一般にこのような非対称量子井戸において、ど
の周波数において最も大きな非線形効果が現れるかは、
伝導電子のエネルギー準位の差に依存している。基底状
態(エネルギーE0 )と、次にエネルギーの低い励起状
態(エネルギーE1 )とのエネルギー準位差(E1 −E
0 )をプランク定数hで除した周波数が、入射光の周波
数のf1 の 2倍に等しいとき、言い換えると 2f1 =(E1 −E0 )/h, …(21) が成り立つとき、大きな非線形光学効果が現れる。
【0102】この実施例の素子においては、金属層M1
と金属層M2の磁化が平行になっている場合のエネルギ
ー準位は、次のようなtight binding 近似のハミルトニ
アンによって見積もることができる。
【0103】
【数8】 ただし、
【数9】 ここで、金属層M1および金属層M2それぞれの面内に
おける金属層に垂直方向に隣接するMn原子間の実効的
なトランスファー積分t0 は約300meVである。また、絶
縁層Bを挟んで隣接する金属層M1と金属層M2のMn
原子間の実効的なトランスファー積分t1 は約 20meVで
ある。(23)式の行列の固有値を求めると、エネルギーの
大きい順に、E4 =424.7meV、E3 =300.0meV、E2
0meV、E1 =-300meV 、E0 =-424.7meV となる。
【0104】基底状態(エネルギーE0 )と、次にエネ
ルギーの低い励起状態(エネルギーE1 )とのエネルギ
ー準位差(E1 −E0 )は、124.7meVであることが分か
る。このことから、をプランク定数hで除した周波数
が、入射光の周波数のf1 の 2倍に等しいとき、 2f1
=(E1 −E0 )/hの関係により、 2f1 =30.1THzのと
きに 2次非線形光学定数χ(2) (2f1 )が大きな値をと
ることが理解される。
【0105】また、この実施例に記載した素子におい
て、 2次非線形効果が生じる効果を、f1 とf2 の周波
数の入射光からf3 =f2 −f1 の周波数の差周波数の
光を出力光として得るパラメトリック増幅に適用可能で
あることは、容易に類推できる。40kA/m(約 500Oe)以
上の磁場を加えた場合、f3 が30.1THz のときにf3
周波数の出力光は最大の振幅を得た。
【0106】この実施例で示した(La1-x Srx 7
Mn5 17 1単位胞分の厚さの超薄膜では、入射光と非
線形素子とが相互作用する領域が小さいため、相互作用
する体積を大きくするために、上記した金属層/絶縁層
/金属層の構造を周期的に積層することが望ましい。こ
のとき、周期構造の単位胞において、空間反転対称性を
失うように積層することが必要である。言い換えると、
空間的に非対称となるように積層することが必要であ
る。具体的には、金属層M1/絶縁層B/金属層M2/
絶縁層B/の構造を周期的に積層した、(La,Sr)
3 Mn2 7 /(La,Sr)4 Mn3 10の場合に
は、空間反転中心が存在するので、偶数次の非線形光学
効果は存在しない。このような構造ではなく、例えば図
23に示すように、金属層M1/絶縁層B/金属層M2
/絶縁層B′のように、絶縁層Bと絶縁層B′の厚さが
異なるように結晶構造を構成して、繰り返し積層した素
子を作製すると、偶数次の非線形光学効果が生じる。
【0107】また、超周期構造の単位胞中に金属層が 3
層以上存在する場合にも、金属層や絶縁層の厚さを変え
て積層することにより、空間対称性を失わせることがで
きる。図24は金属層M1、M2、M3の厚さを互いに
異なるように積層して反転対称性を失わせた、例えば
(La,Sr)3 Mn2 7 /(La,Sr)4 Mn3
10/(La,Sr)5 Mn4 13を単位胞とする超周
期構造の例である。図25はトンネルバリヤ層B、
B′、B″の厚さを互いに異なるように積層して反転対
称性を失わせた、例えば(La,Sr)3 Mn2 7
Bi2 Sr3 Mn2 9 /Ti3 4 1 Mn2 15
単位胞とする超周期構造の例である。
【0108】上述したように、本発明の磁気素子を用い
ると共に、Mnペロブスカイト層からなる金属層と絶縁
性のブロック層からなる絶縁層とを、空間反転対称性を
失うように、言い換えると空間的に非対称となるように
積層することによって、偶数次の非線形光学効果を発現
する光磁気素子を構成することができる。
【0109】なお、上記した各実施例においては、Mn
を含む層状酸化物を適用した場合について説明したが、
Mnに限らずCr、Fe、Co、Niなどを含む層状酸
化物を用いた場合においても同様な磁気素子を構成する
ことができる。
【0110】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ト
ンネルバリヤ層をピンホール、ショート、局在準位の形
成なしに均一にかつ平坦に再現性よく形成することがで
き、またサブミクロンの大きさに微細化しても特性劣化
しない強磁性トンネル接合、さらには従来の金属磁性膜
を用いたものよりも大きな磁気抵抗効果を発現する強磁
性トンネル接合を得ることができる。従って、このよう
な強磁性トンネル接合を用いた本発明の磁気素子によれ
ば、例えば高感度な磁気センサ、多値記憶のできる磁気
メモリ、非線形光磁気素子などを提供することが可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる層状酸化物の結晶構造の一例
を摸式的に示す図である。
【図2】 本発明に用いる層状酸化物の結晶構造の他の
例を摸式的に示す図である。
【図3】 本発明に用いる層状酸化物の結晶構造のさら
に他の例を摸式的に示す図である。
【図4】 MnペロブスカイトやCoペロブスカイトに
おいて強磁性金属伝導状態になる原理を説明するための
図である。
【図5】 本発明の磁気素子の基本構造を模式的に示す
図である。
【図6】 本発明の磁気素子が磁気抵抗効果を発現する
ことを説明するための図である。
【図7】 Mnペロブスカイトのnとキュリー温度との
関係の一例を示す図である。
【図8】 本発明の実施例で用いた成膜装置の概略構成
を示す図である。
【図9】 本発明による磁気メモリの一実施例の構造を
模式的に示す断面図である。
【図10】 本発明の実施例2による磁気素子の特性を
示す図である。
【図11】 本発明の実施例2において任意の磁化配置
を取れることを説明するための図である。
【図12】 本発明の磁気メモリをメモリアレイに適用
した一構造例を摸式的に示す図である。
【図13】 本発明の磁気メモリをメモリアレイに適用
した他の構造例を摸式的に示す図である。
【図14】 本発明の磁気メモリを高温超電導体高速論
理回路を組み合わせて使用する場合の一構造例を模式的
に示す図である。
【図15】 本発明の磁気メモリの他の実施例の構造を
摸式的に示す断面図である。
【図16】 本発明の磁気メモリに光で記録する原理を
示す図である。
【図17】 本発明の磁気素子を磁気センサに適用した
一実施例の構造を模式的に示す断面図である。
【図18】 本発明の磁気素子を磁気センサに適用した
他の実施例の構造を模式的に示す断面図である。
【図19】 本発明の実施例7による磁気センサの特性
を示す図である。
【図20】 本発明の磁気素子を非線形光磁気素子に適
用した一実施例の構造を模式的に示す断面図である。
【図21】 非線形光学効果を持つ本発明の磁気素子か
らの透過光に入射光の倍高調波が含まれることを説明す
るための図である。
【図22】 非線形光学効果を持つ本発明の磁気素子の
ポテンシャル分布を説明するための図である。
【図23】 本発明の磁気素子における反転対称性を持
たない超周期構造の例を示す図である。
【図24】 本発明の磁気素子における反転対称性を持
たない超周期構造の他の例を示す図である。
【図25】 本発明の磁気素子における反転対称性を持
たない超周期構造のさらに他の例を示す図である。
【符号の説明】
M………強磁性金属伝導層 B………絶縁層 AF……反強磁性体 1、2、3、4、5……トンネル接合

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式:R1-x x MO3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくと
    も 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれ
    る少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示
    し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表
    されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さ
    で形成した複数のMペロブスカイト層を有し、かつ厚さ
    が異なる少なくとも 2層の前記Mペロブスカイト層を有
    する強磁性層と、 少なくとも前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層
    間に配置され、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層
    状ペロブスカイト酸化物を形成し得る絶縁性のブロック
    層からなる絶縁層とを具備し、 前記厚さが異なる 2層のMペロブスカイト層と前記絶縁
    性のブロック層とにより形成された強磁性トンネル接合
    を有することを特徴とする磁気素子。
  2. 【請求項2】 一般式:R1-x x MO3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくと
    も 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれ
    る少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示
    し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表
    されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さ
    で形成した 3層以上のMペロブスカイト層を有する強磁
    性層と、 前記 3層以上のMペロブスカイト層間にそれぞれ配置さ
    れ、前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブス
    カイト酸化物を形成し得る 2層以上の絶縁性のブロック
    層を有する絶縁層とを具備し、 前記 3層以上のMペロブスカイト層とそれらの間に配置
    された前記 2層以上の絶縁性のブロック層とにより形成
    された 2つ以上の強磁性トンネル接合を有することを特
    徴とする磁気素子。
  3. 【請求項3】 一般式:R1-x x MO3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくと
    も 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれ
    る少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示
    し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表
    されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さ
    で形成した 2層のMペロブスカイト層を有する強磁性層
    と、 前記 2層のMペロブスカイト層間に配置され、前記Mペ
    ロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイト酸化物
    を形成し得る絶縁性のブロック層からなる絶縁層と、 前記 2層のMペロブスカイト層の一方と隣接して配置さ
    れると共に、前記Mペロブスカイト層に一方向磁気異方
    性を付与するLaMnO3 層からなる反強磁性層とを具
    備することを特徴とする磁気素子。
  4. 【請求項4】 請求項1、請求項2または請求項3記載
    の磁気素子において、前記絶縁性のブロック層は、AO
    −HgO−AOブロック層、AO−TlO−AOブロッ
    ク層、(A,R)O−(Pb,Cu)O−(A,R)O
    ブロック層、R2-x x 2 岩塩型ブロック層、AO−
    TlO−TlO−AOブロック層、(A,R)O−Pb
    O−Cu−PbO−(A,R)Oブロック層、AO−B
    iO−BiO−AOブロック層、[A1-x x Ti
    3 m で表される m重のTiペロブスカイトブロック
    層、および[Ce1-x x 2 m で表される m重の螢
    石型ブロック層(ただし、RはYおよび希土類元素から
    選ばれる少なくとも 1種の元素を、AはCa、Srおよ
    びBaから選ばれる少なくとも 1種の元素を示す)から
    選ばれる少なくとも 1種からなることを特徴とする磁気
    素子。
  5. 【請求項5】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項
    記載の磁気素子を具備する磁気メモリであって、 前記複数のMペロブスカイト層間の磁化の向きが反平行
    の場合と平行の場合との抵抗値の差により情報を読み取
    ることを特徴とする磁気メモリ。
  6. 【請求項6】 一般式:R1-x x MO3 (式中、RはYおよび希土類元素から選ばれる少なくと
    も 1種の元素を、AはCa、SrおよびBaから選ばれ
    る少なくとも 1種の元素を、MはMn、Cr、Fe、C
    oおよびNiから選ばれる少なくとも 1種の元素を示
    し、 xは 0≦ x≦1を満足する数である)で実質的に表
    されるペロブスカイト型の酸化物を 2単位胞以上の厚さ
    で形成した 2層以上のMペロブスカイト層を有する強磁
    性層と、 前記Mペロブスカイトと組み合わせて層状ペロブスカイ
    ト酸化物を形成し得る1層以上の絶縁性のブロック層を
    有する絶縁層とを、空間的に非対称となるように積層し
    た積層構造を具備し、前記積層構造への磁界の印加の有
    無により偶数次の非線形光学定数を変化させることを特
    徴とする光磁気素子。
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