JPH115188A - 溶接開先溶断機 - Google Patents

溶接開先溶断機

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Publication number
JPH115188A
JPH115188A JP9159017A JP15901797A JPH115188A JP H115188 A JPH115188 A JP H115188A JP 9159017 A JP9159017 A JP 9159017A JP 15901797 A JP15901797 A JP 15901797A JP H115188 A JPH115188 A JP H115188A
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JP
Japan
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cutting torch
welding groove
machine according
plate
fusing machine
Prior art date
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Application number
JP9159017A
Other languages
English (en)
Inventor
Kenji Saito
賢司 斉藤
Yasuo Murai
康生 村井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Publication date
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Publication of JPH115188A publication Critical patent/JPH115188A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 容易に溶接開先部を加工することができ、加
工された部材を使用して継手を組み立てて溶接する場合
において、煩雑な組み立て作業を不要とし、開先部の形
成又は部材の組み立て等に必要なコストを上昇させるこ
となく、溶込み深さ及び継手強度を高めることができる
溶接開先溶断機を提供する。 【解決手段】 揺動装置8の駆動部8aに固定された切
断トーチ6は、この切断トーチ6の先端から発振される
切断ビーム上に存在する所定点を中心として扇状に揺動
するようになっている。駆動装置8を第1方向に向かっ
て水平に進行させると共に、揺動装置8を作動させる
と、切断トーチ6から発振される切断ビームの軌跡に従
って、板状部材12が溶断される。このようにして得ら
れた溶断面は、板状部材の表面側においては、平面視で
凹部12aと凸部12bとを有する波状となり、その裏
面側においては、直線部12dが形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は鋼構造物の突合せ継
手、角継手、T継手等の溶接に適用される溶接開先を形
成するための溶断機に関し、特に、効率的に溶接開先部
を形成することができ、溶接後の継手強度を向上させる
ことができる溶接開先溶断機に関する。
【0002】
【従来の技術】図13は従来のT継手の開先部を示す正
面図である。図13に示すように、鉛直方向に配置され
た鋼板1と水平の鋼板2とは垂直に交差するように正面
視でT字型に組み立てられており、鋼板2の先端面2b
は鋼板1の表面に当接している。
【0003】図13に示すように組み立てられたT継手
においては、いわゆる隅肉溶接により、部分溶込み溶接
を実施するものである。このように、T継手において、
要求される継手強度が比較的低い場合には、一方の部材
(鋼板2)の先端面2bを他方の部材(鋼板1)の表面
に沿うように平坦に切断するのみで、開先を加工するこ
とができる。
【0004】しかしながら、このような開先部を有する
T継手においては、部材(鋼板2)の加工は容易である
が、溶接時において、所望の溶込み深さを確保すること
が困難であるので、高い継手強度を得ることはできな
い。そこで、一般的に、鋼構造物等においては、突合せ
継手、角継手及びT継手等を溶接する場合に、良好な溶
込み深さを確保し、所望の継手強度を得るために、少な
くとも一方の部材に傾斜した切欠きを形成した後、継手
を組み立てて溶接している。
【0005】図14は従来のT継手の他の開先部の形状
を示す正面図である。図14に示すT継手においては、
鋼板4の片端面において、その上面から端面に至る傾斜
した切欠き4aが形成されている。そして、図13に示
す継手と同様に、鉛直方向に配置された鋼板3と水平の
鋼板4とが垂直に交差するように正面視でT字型に組み
立てられていて、その開先端にレ形の開先部5が形成さ
れていると共に、鋼板4の先端面4bが鋼板3の表面に
当接している。
【0006】このように、継手に傾斜した切欠き4aが
形成されていると、溶接時において深い溶込みが得ら
れ、これにより、高い継手強度を得ることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図14
に示すような開先部5を加工する場合、一方の部材(鋼
板4)の端面4bを、他方の部材(鋼板3)に沿うよう
に平坦に切断する工程と、切欠き4aを形成する工程と
の2工程が必要となるという問題点がある。従って、レ
形の開先部5を形成するためには、図13に示すよう
に、単に部材(鋼板2)の先端面2bを他の部材(鋼板
1)に沿うように平坦に切断するのみの場合と比較し
て、2倍又はそれ以上の加工コストが必要となる。
【0008】更に、傾斜した開先部(傾斜開先部)が形
成された部材を溶接する場合、単層で十分な適正量の余
盛りを得るための溶接条件の設定が比較的困難である。
即ち、ルート部(鋼板4の端面4bと鋼板3との接触部
分)において、溶融金属の溶け落ちが発生しない条件で
溶接すると、余盛りが不足することがあり、十分な余盛
りを得るための溶接条件を設定すると、溶融金属の溶け
落ちが発生しやすくなる。
【0009】また、図13に示すように、傾斜した開先
部(傾斜開先部)を形成しない場合、一般的に、溶込み
を深くするためには、部材間にルートギャップを設ける
という方法が適用されている。そこで、均一な適正幅の
ルートギャップを維持するためには、継手の両部材の組
立工程において、ギャップを計測調整しながら仮付け溶
接するか、又は部材間にスペーサを配置する必要があ
る。
【0010】しかしながら、このような方法を使用する
場合、溶接線が直線でない継手においては、均一にギャ
ップを形成することが困難である。また、部分溶込み状
態となったときに、鋼板2の未溶接の先端面2bと鋼板
1との接触部分が存在しないか、又は接触部分が少なく
なるので、溶接によって収縮変形が発生し、寸法精度が
低下してしまう。更に、継手の組立工程が煩雑になり、
スペーサ等を使用する場合には、このような継手部材以
外の部材が必要となるため、コストアップとなってしま
う。また、継手形状によっては、適切なルートギャップ
を維持することは極めて困難となる。
【0011】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、高精度で容易に溶接開先部を加工すること
ができ、加工された溶接母材を使用して継手を組み立て
て溶接する場合において、煩雑な組み立て作業を不要と
し、開先部の形成又は部材の組み立て等に必要なコスト
を上昇させることなく、良好な溶込み深さを得ることが
でき、これにより、継手強度を高めることができる溶接
開先溶断機を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係る溶接開先溶
断機は、部材を溶断することにより溶接開先を形成する
溶接開先溶断機において、ビームを発振することにより
前記部材を溶断する切断トーチと、前記切断トーチを第
1方向に移動させる移動手段と、前記第1方向に交差す
る揺動面内でビーム延長上の所定点を中心として前記切
断トーチを扇状に揺動させる揺動手段と、を有すること
を特徴とする。
【0013】前記部材は板状部材であり、この板状部材
の裏面又は裏面よりも下方に前記所定点が位置すること
が好ましい。
【0014】本発明においては、切断トーチは所定点を
中心として、第1方向に交差する揺動面内で扇状に揺動
しながら第1方向に進行して、部材を溶断する。このと
き、前記部材が板状部材であって、前記所定点が板状部
材の裏面よりも下方に位置していると、この板状部材の
表面側が深い波状であり、裏面側が浅い波状である凹凸
形状を有する開先面を1工程で容易に加工することがで
きる。また、前記所定点が板状部材の裏面に位置してい
ると、この板状部材の表面側が波状であり、裏面側が直
線状である凹凸形状を有する開先面を1工程で部材に容
易に加工することができる。そして、このようにして溶
断された部材の溶断面を開先端として継手を組み立て
て、溶断面に沿って溶接すると、凹凸形状の凹部が局部
的なルートギャップとなり、仮溶接又はスペーサ等によ
りルートギャップを維持する必要がないものとなる。従
って、溶接のための部材の組立が容易になって組立作業
時間が減少すると共に、組立部材の増加を防止すること
ができ、更に、凹凸形状を有する開先面の形成と部材の
切断とを同時に実施することができるので、溶接のため
のコストの上昇を防止することができる。
【0015】また、溶断面に形成された凹凸形状の凸部
は熱容量が小さく、溶接熱により比較的容易に溶融する
ので、凹部が有するルートギャップとしての作用によ
り、溶込み深さを深くすることができる。更に、凸部は
溶融金属の溶け落ちを防止する効果を有すると共に、適
正余盛を形成するための必要溶着金属量を少なくする効
果を有するので、アークタイムが短縮されることによっ
て溶接コストを低減することができると共に、継手強度
を向上させることができる。更に、部分溶込み溶接を実
施する場合、未溶接部分が継手の他方の部材に当接して
いるので、溶接収縮を少なくすることができ、これによ
り、溶接後の寸法精度を高めることができる。
【0016】前記切断トーチの揺動面が前記第1方向に
対し傾斜する角度を傾斜角度βとしたとき、前記傾斜角
度βは−60乃至60°であることが好ましい。切断ト
ーチの傾斜角度をこのように規定すると、開先面におけ
る凸部の稜線を第1方向に対して適切な角度で傾斜させ
ることができ、これにより、溶け落ちを防止する効果を
向上させることができる。なお、ここで凸部の稜線と
は、1本の凸部の頂点を結ぶ線、即ち、溶断された部材
の溶断面の凸部と、これに当接される部材との接線のこ
とである。
【0017】また、切断トーチの揺動範囲は、前記所定
点を含み前記第1方向に平行の鉛直面と前記揺動面とが
交差する位置から、前記揺動面内で5乃至40°傾斜し
た位置までであることが好ましい。また、切断トーチの
揺動範囲は、前記所定点を含み前記第1方向に平行の鉛
直面と前記揺動面とが交差する位置を中心として、前記
揺動面内で前記中心位置の両側に夫々5乃至40°傾斜
した位置間であってもよい。
【0018】更にまた、揺動手段は振幅の頂点で切断ト
ーチの揺動を停止させないものであっても、振幅の頂点
で切断トーチの揺動を停止させるものであってもよい。
揺動手段が切断トーチの揺動を停止させない場合は、前
記揺動手段による前記切断トーチの揺動振動数は、0.
1乃至20(回/秒)であることが好ましく、前記移動
手段による前記切断トーチの第1方向への移動速度をV
1(mm/秒)、揺動振動数をHz1(回/秒)としたと
き、1振動あたりの第1方向への移動距離(V1/H
1)は2乃至20(mm/回)であることが望まし
い。
【0019】前記揺動手段が振幅の頂点で切断トーチの
揺動を停止させるものである場合は、前記移動手段によ
る前記切断トーチの第1方向への移動距離は200mm
以下であることが好ましい。なお、揺動手段が振幅の頂
点で切断トーチの揺動を停止させる場合において、1振
動あたりの第1方向への移動距離及び揺動振動数は、揺
動停止期間を除く第1方向への切断トーチの移動距離及
び揺動振動数とすることができる。従って、切断トーチ
の揺動が停止される場合であっても、移動距離及び揺動
振動数の好ましい範囲は、前記揺動手段が揺動を停止さ
せない場合と同様である。
【0020】このように切断トーチの揺動範囲を規定す
ると、溶断された部材の開先面において、凸部の稜線と
凹部の底面を連結する面とがなす角度を調整することが
できる。また、切断トーチの揺動振動数、1振動あたり
の移動距離、揺動を停止させる場合は揺動停止期間にお
ける切断トーチの移動距離等を規定すると、溶断される
部材の開先面に形成される凸部間の間隔等を適切に調整
することができる。従って、この開先面を利用して継手
を組立てて溶接する場合に、十分な溶込み深さを得るこ
とができると共に、溶融金属の溶け落ちの発生を抑制す
ることができる。
【0021】更にまた、前記切断トーチの熱源として
は、レーザ、プラズマ又はガスを使用することができ、
熱源がレーザ又はプラズマである場合は、前記第1方向
への切断トーチの移動速度は20乃至250(cm/
分)であることが好ましい。切断トーチの熱源がガスで
ある場合には、移動速度は20乃至120(cm/分)
であることが望ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例について添
付の図面を参照して具体的に説明する。
【0023】図1は本発明の第1の実施例に係る溶接開
先溶断機を示す斜視図である。また、図2は溶断時の切
断トーチの動きを示す正面図である。切断トーチ6は、
その側部6aが支持軸7を介して、揺動装置8(揺動手
段)の側方に突出するように設けられた駆動部8aに固
定されている。この揺動装置8は、例えば、停止するこ
となく連続して規則的に駆動部8aを揺動させるものと
する。即ち、図2に示すように、駆動部8aに固定され
た切断トーチ6は、この切断トーチ6の先端から発振さ
れる切断ビーム29上に存在する所定点29aを中心と
して扇状に揺動する。なお、本実施例においては、切断
トーチ6は、鉛直下向方向から所定の角度に傾斜するま
での範囲で揺動するが、揺動装置8はこの切断トーチ6
の揺動範囲及び振動数等を所望の値に設定することがで
きる。
【0024】また、駆動装置8の上面には、駆動装置8
の上方に延びる形状の連結軸9が形成されており、この
連結軸9は駆動装置8を第1方向に移動させる移動用台
車(図示せず)のアーム10に固定されている。
【0025】このように構成された溶断機11を使用し
て板状部材12を溶断する場合、切断トーチ6を板状部
材12に対して垂直の方向に向けてその上方に配置し、
移動用台車によって駆動装置8を第1方向に向かって水
平に進行させる。このとき、揺動装置8を作動させる
と、図2に示すように、駆動部8aに固定された切断ト
ーチ6が前記第1方向に対して直交する面内で、上に開
いた扇状を描くように揺動する。そして、切断トーチ6
から発振される切断ビームの軌跡に従って、板状部材1
2が溶断される。
【0026】このとき、扇状に揺動する中心点(所定点
29a)、即ち、揺動する切断トーチから発振される切
断ビーム29の交点の軌跡は進行方向に平行な方向の直
線状となる。また、この中心点よりも上方の位置におい
ては、切断トーチ6の先端から発振される切断ビーム2
9の軌跡は波形状となり、中心点から離間するにつれて
その振幅は大きいものとなる。
【0027】このように構成された溶断機により板状部
材12を溶断すると、凹部12a及び凸部12bが板状
部材12の板厚方向に延びる凹凸形状を有する開先面を
容易に加工することができる。また、本実施例において
は、扇状に揺動する中心点(所定点29a)が板状部材
12の裏面に位置するように、切断トーチ6の位置を設
定している。従って、本実施例に係る溶断機により切断
された板状部材12の溶断面12cは、その表面側にお
いては、平面視で凹部12aと凸部12bとを有する波
状となり、その裏面側においては、直線部12dが形成
される。
【0028】なお、扇状に揺動する中心点の軌跡が板状
部材12の裏面よりも下方に位置するように、切断トー
チ6の位置を設定した場合、板状部材12の溶断面12
cの表面側及び裏面側に波状の溶断線が形成されるが、
その振幅は溶断面12cの表面側において大きく、溶断
面12cの裏面側において小さくなる。本実施例におい
て、板状部材12の表面側とは揺動装置8が配置されて
いる側の面をいい、裏面側とはその反対側の面をいう。
【0029】次に、この波状の溶断面12cを有する板
状部材12を使用した継手の溶接方法について説明す
る。
【0030】図3(a)は板状部材12の溶接方法を説
明するための継手を示す斜視図であり、(b)はその平
面図、(c)はその正面図である。
【0031】図3に示すように、溶接時においては、波
状の溶断面12cを有する板状部材12と、通常使用さ
れている形状の板状部材13とを準備し、鉛直に配置し
た板状部材13の表面に水平に配置した板状部材12の
溶断面12cを当てて、例えば、板状部材13と板状部
材12とが垂直に交差するようにT継手14を組み立て
た後、板状部材12の溶断面12cに沿って溶接する。
【0032】そうすると、板状部材12の凸部12bは
熱容量が小さいので、溶接熱により比較的容易に溶融す
る。また、凸部12bが板状部材13の表面に接触する
か又は近接し、凹部12aが局部的に板状部材12と1
3とのルートギャップとしての役割を果たすので、深い
溶込みを得ることができる。一方、凸部12bは溶融金
属の溶け落ちを防止する効果を有している。更に、本実
施例において、溶断面12cは、板状部材12の裏面側
に近づくほど平面視での波形状の振幅が小さくなるテー
パー状になっており、その裏面側に直線部12dが形成
されているので、より一層溶融金属の溶け落ちを防止す
る効果を高めることができる。
【0033】即ち、溶接時においては、凹部12aと凸
部12bとの相互効果及び溶断面12cがテーパー状に
なっていることにより、所望の溶込み深さ及び所望の余
盛りを得ることができる。従って、高い継手強度が得ら
れると共に、部材を所望の継手形状に組み立てることが
容易になり、スペーサ等が不要となるので、そのための
コストアップを防止することができる。
【0034】更に、ルート部(板状部材12の凸部12
b及び直線部12dと板状部材13との接触部分)にお
いて、未溶接部分を極めて小さくし、完全溶込み溶接に
近い溶接部を得ようとする場合においても、前述の如
く、凸部12b及び直線部12dが存在することによ
り、溶融金属の溶け落ちの発生を防止することができ
る。一方、部分溶込み溶接をする場合、凸部12b及び
直線部12dにおける未溶接部分が板状部材13に当接
しているので、溶接による収縮変形が小さくなり、溶接
後の寸法精度が向上する。
【0035】このように、本実施例に係る溶断機11を
使用すると、ルートギャップとしての作用を有する凹部
12aと、溶け落ちを防止する作用を有する凸部12b
及び直線部12dとを同時に容易に形成することがで
き、溶断機11によって形成された波形状でテーパー状
の溶断面12cにより、優れた性能の溶接継手を低溶接
コストで得ることができる。また、溶断機11を使用す
ることにより、板状部材12を所望のサイズに溶断する
ための工程と、凹凸を有する波形状でテーパー状の溶断
面を形成する工程とを同時に実施することができるの
で、1工程のみで所望の開先を得ることができ、開先の
加工コストも低減することができる。
【0036】更に、部材に凹凸を有する切断面を形成す
る他の方法として、例えば、機械加工等があるが、機械
加工により部材に凹凸を加工する方法は、加工コストを
低減することができないことがある。従って、本実施例
に示すように、切断トーチ6が揺動装置8に固定されて
いる溶断機11を使用して部材を溶断すると、所望の形
状の規則的な凹凸を有する溶断面を高精度で容易に形成
することができる。
【0037】本実施例においては、切断トーチ6が扇状
に揺動する中心点(所定点29a)の軌跡が板状部材1
2の裏面に位置するように、切断トーチ6の位置を設定
したので、板状部材12の裏面側における溶断面12c
には直線部12dが形成されたが、本発明においては、
切断トーチ6の設定位置を変更することができる。
【0038】図4は本発明の第2の実施例に係る溶断機
を使用して切断された板状部材の形状を示す斜視図であ
る。本実施例においては、切断トーチ6が扇状に揺動す
る中心点が板状部材の裏面よりも下方に位置するよう
に、切断トーチ6の位置が設定されている。その他の構
成は第1の実施例に係る溶断機と同様である。
【0039】従って、第2の実施例に係る溶断機により
切断された板状部材26の溶断面26cは、第1の実施
例と同様に、板状部材26の表面側から裏面側に至る凹
部26aとこの凹部26a間の凸部26bとにより構成
されている。但し、この板状部材26の平面視における
波状の溶断線の振幅は、板状部材26の表面側において
大きく、その裏面側に近づくにつれて小さくなってい
る。
【0040】本実施例においても、切断トーチの揺動範
囲、切断トーチの設定位置、切断トーチの振動数及び第
1方向への移動速度等を規定することにより、得られる
板状部材26の溶断面26cにおいて、凹部26aの底
面を連結する面と凸部26bの稜線とがなす角度、板状
部材26の裏面側における溶断線の波形状及び隣接する
凸部26b間の間隔を適切に調整することができ、優れ
た性能の溶接継手を得ることができる。
【0041】また、第1及び第2の実施例に係る溶断機
は、停止することなく連続して規則的に切断トーチ6を
揺動させる揺動装置8をを有するものであるので、得ら
れた板状部材12及び26の溶断面12c及び26cは
規則的な波状の凹凸面となったが、本発明に係る溶断機
は、一定時間毎に切断トーチの揺動を停止させる揺動装
置を有するものであってもよい。
【0042】図5は本発明の第3の実施例に係る溶断機
を使用して切断された板状部材の形状を示す斜視図であ
る。本実施例に係る溶断機においても、第1方向に対し
て直交する揺動面内において切断トーチを扇状に揺動さ
せるものであるが、切断トーチを1往復揺動させた後
に、最も傾斜した位置で切断トーチを一定期間停止させ
るようになっている。その他の構成は第1の実施例と同
様である。従って、この溶断機により溶断された板状部
材15の溶断面15cは、第1方向に延びた幅広のテー
パー状の凹部15aと、板状部材15の表面から裏面に
至る凸部15bとにより構成されており、凹部15aの
底面は所定の幅で平坦となっている。
【0043】本実施例においても、切断トーチの揺動範
囲及び揺動を停止している期間における切断トーチの第
1方向への移動距離等を規定することにより、凹部15
aの底面を連結する面と凸部15bの稜線とがなす角度
及び隣接する凸部15b間の間隔を適切に調整すること
ができ、優れた性能の溶接継手を得ることができる。
【0044】なお、第1乃至第3の実施例に係る溶断機
は、第1方向に対して直交する揺動面内において切断ト
ーチを扇状に揺動させるものであったが、この切断トー
チの揺動面は、必ずしも第1方向に対して直交する面内
である必要はない。
【0045】図6は本発明の第4の実施例に係る溶断機
において、切断トーチの揺動面を示す模式図であり、図
7は本発明の第4の実施例に係る溶断機を使用して切断
された板状部材の形状を示す斜視図である。図6に示す
ように、本実施例においては、切断トーチ6は第1方向
に対して傾斜角度β°で傾斜した揺動面31b内におい
て揺動するように、揺動装置(図示せず)に取り付けら
れていて、傾斜した状態で板状部材30を溶断する。
【0046】このように、切断トーチ6を第1方向に対
して傾斜角度β°で傾斜させると、図7に示すように、
得られた板状部材30の溶断面30cにおいて、凸部3
0bの稜線30eも板状部材30に直交する線30fに
対してβ°傾斜したものとなる。このように、第4の実
施例においては、溶断面30cにおける凸部30bの稜
線30eが第1方向に傾斜しているので、第1の実施例
と比較して、継手の溶接時に溶込み深さを深くすること
ができると共に、溶接電流を高くしても、溶融金属の溶
け落ちを発生しにくくすることができる。
【0047】なお、第1乃至第4の実施例に係る溶断機
は、1本の切断トーチに1台の揺動装置が接続されたも
のであったが、工業的には同形状の切断部材を複数枚溶
断する必要がある場合が多い。この場合には、1台の揺
動装置で複数本の切断トーチを揺動させるように接続す
ることもでき、切断トーチに接続された揺動装置を複数
台有する溶断機を使用することもできる。このような溶
断機を使用すると、1本の切断トーチに1台の揺動装置
が接続された溶断機が1枚の継手部材を得るために必要
な時間で、複数枚の継手部材を作製することができる。
従って、継手部材の作製時間を大幅に短縮することがで
き、継手の製造コストを低減することができる。
【0048】更に、本発明においては、溶断熱源として
ガス、プラズマ又はレーザを使用した切断トーチを使用
することができ、本発明の溶断機により溶断された部材
は、T継手、突合せ継手及び角継手等の溶接に適用する
ことができる。
【0049】以下、本発明に係る溶接開先溶断機が有す
る揺動手段について、更に説明する。
【0050】切断トーチの第1方向への移動距離:2乃
至20(mm/回) 図8(a)は本発明の第1の実施例に係る溶断機を使用
して形成された継手部材の形状を示す平面図であり、
(b)はその正面図である。図8に示す板状部材と図3
に示す板状部材は、いずれも第1の実施例に係る溶断機
によって形成されたものであるので、図8において図3
と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略
する。本発明においては、揺動手段によって切断トーチ
が1振動する間における切断トーチの第1方向への移動
距離を規定することにより、例えば、図8(a)に示す
形状の溶断部材12の場合には、その溶断面(開先面)
12cに形成される隣接する凸部12b間の間隔Pを調
整することができる。
【0051】この間隔Pが2mm未満であると、溶込み
深さを十分に得ることができないので、実用的ではな
い。一方、間隔Pが20mmを超えると、溶込み深さが
不足するか、又は溶融金属の溶け落ちが発生する。従っ
て、溶断機により溶断された溶断面における凸部間の間
隔Pは2乃至20mmであることが好ましい。このよう
な溶断面を得るためには、溶断機の切断トーチが1振動
する間に、この切断トーチが第1方向に移動する距離を
2乃至20(mm/回)とすればよい。
【0052】なお、切断トーチが1回振動する間におけ
る切断トーチの第1方向への移動距離は、切断トーチの
第1方向への移動速度をV(mm/秒)、振動数をHz
(回/秒)としたとき、数式(V/Hz)により算出す
ることができる。また、このときの振動数Hzは、振幅
の頂点において切断トーチを停止させる場合において
は、この停止期間を除く1秒間当たりの切断トーチの振
動数のことである。
【0053】揺動角度θ:5乃至40° 本発明においては、揺動する切断トーチの揺動範囲を規
定することにより、例えば、図8(b)に示す形状の溶
断部材12の場合には、凸部12bの稜線12eと凹部
12aの底面を連結する面12gとがなす角度αを調整
することができる。この角度αが5°未満であると、溶
断面12cにおける凹部12aの深さが小さくなるの
で、この凹部12aが有するルートギャップとしての作
用が低下し、溶込み深さが不十分となる。一方、角度α
が40°を超えると、溶融金属の溶け落ちが発生する。
従って、溶断機により溶断された溶断面12cにおい
て、凸部の稜線12eと凹部の底面を連結する面12g
とがなす角度αは5乃至40°とすることが好ましい。
このような溶断面を得るためには、前記切断トーチの揺
動範囲は、前記所定点を含み前記第1方向に平行の鉛直
面と切断トーチの揺動面とが交差する位置から切断トー
チが最も傾斜した位置までの角度を揺動角度θとしたと
き、この揺動角度θを5乃至40°とすればよい。
【0054】なお、切断トーチの揺動振幅の頂点が前記
所定点を含み前記第1方向に平行の鉛直面と切断トーチ
の揺動面とが交差する位置である場合は、揺動角度θ
と、図8(b)に示す角度αとは同一の値となる。しか
し、切断トーチがこのように揺動する場合には、例え
ば、1枚の板材を2枚に切断したときに、両方の溶断部
材を継手部材として使用することができない。そこで、
切断により得られる2枚の溶断部材を継手部材として使
用する場合には、切断トーチを、前記所定点を含み前記
第1方向に平行の鉛直面と切断トーチの揺動面とが交差
する位置を中心として、揺動面内で中心位置の両側に夫
々揺動角度θの範囲内で揺動させればよい。これによ
り、所望の溶断面を有する2枚の溶断部材を形成するこ
とができる。
【0055】但し、このようにして溶断された溶断部材
を使用して、他の部材にこの溶断部材の溶断面を当接さ
せることによりT継手を組み立てようとしても、凸部の
稜線が他の部材に当接せず、凸部の先端部(頂点)のみ
が他の部材に接することになり、溶接時に溶け落ちが発
生するので、溶接することが困難である。従って、この
ように切断された2枚の溶断部材を使用する場合には、
本発明における切断トーチの下流側に、この溶断部材に
対して直交する方向に溶断面を溶断して、凸部の先端面
が他の部材に当接させるための切断トーチを配置すれば
よい。
【0056】揺動停止期間における切断トーチの第1方
向への移動距離:200mm以下 揺動を停止させることなく切断トーチを揺動させながら
部材を溶断する場合、この溶断面は凹部と凸部とが交互
に等間隔で規則的に形成された凹凸を有するものとな
る。しかしながら、前述の如く、部材の溶断面に形成さ
れる凹凸は等間隔で規則的に形成されたものである必要
はなく、例えば、局部的な凸部と幅広の凹部とからなる
凹凸が形成されていてもよい。このような形状の凹凸
は、揺動手段が振幅の一方の頂点で切断トーチの揺動を
停止させることにより形成することができる。振幅の一
方の頂点において切断トーチの揺動を停止させる場合、
揺動停止期間における第1方向への切断トーチの移動距
離が200mmを超えると、継手を組み立てたときにル
ートギャップとして作用する部分の幅を均一に維持する
ことが困難になる。また、曲線を有する溶接線を溶接す
る場合、継手の組立精度が低下しやすくなる。従って、
揺動手段が振幅の一方の頂点で切断トーチを停止させる
場合には、揺動停止期間における第1方向への切断トー
チの移動距離は200mm以下とすることが好ましい。
【0057】切断トーチの揺動面の第1方向に対する傾
斜角度β:−60乃至60° 前述の如く、溶断面に形成された凸部の稜線が、板状部
材の厚さ方向に対して傾斜していると、溶込み深さを深
くすることができると共に、溶融金属の溶け落ちの発生
を抑制することができる。この凸部の稜線の板状部材の
厚さ方向に対する傾斜角度が絶対値で60°を超える
と、凹凸を有する溶断面を加工することが困難になると
共に、溶融金属の溶け落ちを防止する効果が向上しなく
なるので、好ましくない。従って、凸部の稜線を板状部
材の厚さ方向に対して傾斜させる場合は、その角度は−
60乃至60°とすることが好ましい。このような溶断
面を得るためには、切断トーチの揺動面を第1方向に対
して傾斜させる角度(傾斜角度β)を−60乃至60°
とすればよい。
【0058】切断トーチの第1方向への移動速度:20
乃至250(cm/分) 本発明に係る溶接開先溶断機の切断トーチの熱源として
は、レーザ、プラズマ及びガスを使用することができ
る。例えば、切断トーチの熱源がレーザである場合は、
第1方向への切断トーチの移動速度が250(cm/
分)を超えると、実用に耐える切断面が得られなくな
る。一方、移動速度が20(cm/分)未満であると、
切断面に対する入熱が過大となり、優れた凹凸面(溶断
面)が得られなくなると共に、溶断能率が低下して溶接
コストを低減することができなくなる。従って、熱源が
レーザである場合には、切断トーチの第1方向への移動
速度は20乃至250(cm/分)とすることが好まし
い。
【0059】なお、切断トーチの熱源がプラズマである
場合においても、切断トーチの第1方向への移動速度は
20乃至250(cm/分)であることが好ましく、切
断トーチの熱源がガスである場合には、移動速度は20
乃至120(cm/分)であることが好ましい。
【0060】揺動する溶接トーチの揺動振動数:0.1
乃至20(回/秒) 前述の如く、切断トーチの第1方向への移動速度は、例
えば、20乃至250(cm/分)とすることが好まし
く、切断トーチが1回振動する間における切断トーチの
第1方向への移動距離は2乃至20mmであることが好
ましい。従って、切断トーチの第1方向への移動速度が
20乃至250(cm/分)である場合に、1振動あた
りの切断トーチの第1方向への移動距離を2乃至20m
mとするためには、切断トーチを振幅の頂点で停止させ
ない場合の切断トーチの揺動振動数Hz1は0.1乃至
20(回/秒)とすることが好ましい。また、揺動手段
が振幅の頂点で切断トーチの揺動を停止させる場合にお
いても、揺動停止時間を除く切断トーチの揺動振動数H
2は0.1乃至20(回/秒)であることが好まし
い。
【0061】なお、本発明に係る溶接開先溶断機を使用
すると、凹部の空間体積が凸部の体積よりも大きい凹凸
形状を有する開先面を容易に加工することができる。こ
のような状態で開先面が形成されていると、溶込み深さ
の増大を確保することができると共に、位置によって溶
込み深さが変動する現象を抑制することができ、余盛量
が過大になることに起因するオーバーラップを防止する
ことが容易になる。
【0062】
【実施例】以下、本発明に係る溶断機を使用した実施例
についてその比較例と比較して具体的に説明する。
【0063】先ず、実施例として、本発明の第1の実施
例に係る溶断機を使用して板状部材に波形でテーパー状
の凹凸を有する溶断面を形成し、この溶断面を他の部材
に当接させてT継手を組み立てると共に、比較例として
従来の方法でT継手を組み立てた後、これらを溶接して
溶込み深さ比較試験を実施した。
【0064】図9は溶込み深さ比較試験に使用したT継
手の形状及びサイズを示す正面図である。また、図10
(a)は本発明の第1の実施例に係る溶断機を使用して
溶断した板状部材の形状及びサイズを示す平面図であ
り、(b)はその正面図である。
【0065】比較例としては、図9に示すように、板厚
が16mmの板状部材16と、板厚が14mmであり、
その端面を従来の溶断機により平坦に切断した板状部材
17とを準備し、鉛直方向に配置された板状部材16と
水平の板状部材17とが垂直に交差するように、板状部
材16の表面に板状部材17の平坦な端面17aを当て
て組み立てたT継手を使用した。このとき、板状部材1
7は、その上面が板状部材16の端面16aから12m
mの位置に配置されるように板状部材16に当接させ、
板状部材16と17との間には、ルートギャップを設け
ないものとした。
【0066】また、実施例としては、図10に示すよう
に、板状部材17の代わりに、テーパー状で波形の溶断
面18cが形成された板状部材18を使用した。なお、
本実施例において使用した溶断機は、1台の揺動装置に
1本の切断トーチを取り付けたものであり、ガス切断に
より部材を溶断した。板状部材18を切断する際の切断
条件を下記表1に示す。即ち、板状部材18の板厚は1
4mmであり、移動手段によって切断トーチを第1方向
に移動させるときの移動速度を30(cm/分)とし、
切断トーチの揺動角度θを20°とした。また、切断ト
ーチの振動数は0.5(回/秒)とし、振幅の頂点で切
断トーチの振動を停止させることなく揺動させた。更
に、切断トーチが揺動する扇状に揺動する中心点が板状
部材18の裏面に位置するように、切断トーチの位置を
設定した。
【0067】得られた板状部材18は、溶断面18cに
おいて、板状部材18の表面から裏面に延びる複数本の
溝状の凹部18a及び筋状の凸部18bが交互に等間隔
に形成されるように溶断されており、凸部18bの稜線
は板状部材18の厚さ方向にほぼ平行に延びている。ま
た、板状部材18の表面側においては、平面視で凹部1
8aと凸部18bとを有する波状であり、その裏面側に
近づくにつれて波の振幅が小さくなって、板状部材18
の裏面側においては、直線部18dが形成されている。
本実施例においては、板状部材18の溶断面18cにお
ける凸部18b間の間隔を10mmとし、板状部材18
の表面における溶断面18cの凹部18aの深さを4m
mとした。
【0068】そして、このような2種類のT継手に対し
て同一の溶接条件によって溶接し、溶接後に、溶接部か
ら断面マクロを採取し、未溶接部分のルート厚さを測定
することにより、溶込み深さを評価した。但し、溶接に
は直径が1.4mmのワイヤを使用し、自動CO2 溶接
とした。溶接条件及び評価結果を、夫々、下記表2及び
3に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】上記表1乃至3に示すように、本実施例に
係る溶接開先溶断機により部材を溶断し、この部材を使
用して形成したT継手を溶接すると、いずれの溶接条件
においても、比較例と比較して、未溶接部分のルート厚
さが減少した。即ち、溶込み深さが増大し、高強度の溶
接継手を得ることができた。
【0073】次に、本発明の第1乃至第3の実施例に係
る溶接開先溶断機を使用して、板厚が12mmである軟
鋼板を種々の切断条件でガス切断し、切断の可否を調査
すると共に、切断面の状況を評価した。切断面の評価
は、板材の表面側から裏面側に至るまで規則的な凹凸形
状た得られたものを○、板材の表面側又は裏面側で凹凸
形状が乱れたものを△、切断できなかったものを×とし
た。
【0074】更に、良好な切断面が得られたものについ
ては、この切断面を縦板に当接させてT継手を組み立
て、下記表4に示す溶接条件によって自動MAG溶接を
実施し、溶接性を溶込み深さ及び溶け落ちの有無により
評価した。但し、シールドガスはAr+30%CO2
使用した。この溶接性の評価は、通常の自然開先におけ
る溶込み深さと比較して、板厚の10%以上溶込み深さ
が増加したものを○、局部的に溶け込み深さの増加比が
不足したものを△、溶込み深さの増加比が10%未満の
ものを×とし、溶融金属の溶け落ちが発生したものを×
×とした。これらの切断条件及び評価結果を下記表5乃
至8に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】上記表4乃至8に示すように、実施例N
o.11乃至25は揺動角度θ、第1方向への移動速
度、揺動停止中における第1方向への移動距離、振動数
Hzが本発明の範囲内であるので、切断面が良好である
と共に、溶接性についても優れたものとなった。
【0081】一方、比較例No.26及び27は揺動角
度θが本発明範囲の下限未満であるので、溶込み深さの
増加比が10%未満となった。比較例No.28は振動
数Hzが本発明範囲の下限未満であるので、凸部間の間
隔が大きくなり、切断面は良好であったが、局部的に溶
込み深さの増加比が低下した。比較例No.29及び3
0は揺動角度θが本発明範囲の上限を超えているので、
溶接時に溶融金属の溶け落ちが発生した。
【0082】比較例No.31及び32は揺動停止期間
における第1方向への移動距離が本発明範囲の上限を超
えているので、溶接時に溶融金属の溶け落ちが発生し
た。比較例No.33は第1方向への移動速度が本発明
範囲の下限未満であるので、良好な凹凸形状を有する溶
断面を得ることができなかった。比較例No.34は第
1方向への移動速度が本発明範囲の上限を超えているの
で、部材を切断することができなかった。
【0083】次いで、本発明の第4の実施例に係る溶断
機を使用して板状部材を切断し、この溶断面を他の部材
に当接させてT継手を組み立てると共に、比較例として
従来の方法でT継手を組み立てて、これらを溶接した
後、曲げ疲労試験片を採取して、曲げ疲労試験を実施し
た。
【0084】図11は本発明の第4の実施例に係る溶断
機を使用して溶断した板状部材31の形状及びサイズを
示す斜視図である。本実施例においては、下記表9に示
す切断条件で板厚が12mmである板状部材31を切断
した。即ち、切断トーチの第1方向への傾斜角度βを3
0°とし、揺動角度θを15°、切断トーチの第1方向
への移動速度を35(cm/分)、切断トーチの振動数
を0.5(回/秒)とした。また、揺動振幅の頂点にお
いて切断トーチを停止させず、ガス切断により板状部材
31を切断した。
【0085】従って、図11に示すように、板状部材3
1の溶断面31cにおける凸部31bの稜線は第1方向
に対して30°傾斜した状態となっている。そして、こ
の板状部材31の溶断面31cを、板厚が14mmであ
る板状部材の表面に当接させることによりT継手を組み
立てた。
【0086】また、比較例としては、板厚が14mmの
板状部材と、板厚が12mmであり、その端面を従来の
溶断機により平坦に切断した板状部材とを準備し、これ
らが垂直に交差するように、一方の板状部材の表面に平
坦な端面を有する板状部材の端面を当ててT継手を組み
立てた。
【0087】そして、このようにして組み立てられたT
継手に対して、下記表10に示す溶接条件で溶接した
後、形成された継手部から曲げ疲労試験片を採取して、
曲げ疲労試験を実施した。図12(a)は曲げ疲労試験
用の試験片の形状及びサイズを示す側面図であり、
(b)はその正面図である。図12においては、鉛直方
向に配置された板状部材を部材Dとし、これに当接させ
る実施例及び比較例の板状部材を部材Eとして説明す
る。
【0088】前述の如く、部材Dと部材Eとは垂直に交
差するようにT字型に組み立てられて溶接されており、
開先部には溶接金属20が形成されている。部材D及び
Eは、その長手方向の長さを120mm、幅を50mm
とした。また、部材Dには、4カ所に、これを貫通する
固定孔19が設けられており、これらの固定孔19に固
定ジグ(図示せず)を挿入し、この固定ジグを固定器
(図示せず)に締着することにより部材Dが固定される
ようになっている。更に、部材Eには、部材D側の端面
から20mm離れた位置において、板幅中央の表面及び
裏面に、歪みゲージ23が貼付されている。
【0089】このように作製された試験片において、部
材Dを固定した後、部材Eの溶接されていない端部25
に対して、部材Dに平行方向に繰り返し応力を印加し
て、歪みゲージ23にかかる歪から繰り返し曲げ応力を
設定し、応力振幅16kgf/mm2 における破断繰り
返し数を比較した。この曲げ疲労試験の評価結果を下記
表11に示す。
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
【表11】
【0093】上記表9乃至11に示すように、実施例N
o.41は比較例No.42と比較して、破断繰り返し
数が増加した。
【0094】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
切断トーチは扇状に揺動しながら第1方向に交差する揺
動面内において第1方向に進行して、部材を溶断するの
で、表面側が深い波状であり、裏面側が浅い波状である
か又は裏面側が直線状である凹凸形状を有する開先面を
1工程で部材に容易に加工することができる。そして、
このようにして溶断された部材は、その溶断面を開先端
として継手を組み立てて、溶断面に沿って溶接した場合
に、深い溶込みで継手強度が高い溶接継手を得ることが
できると共に、溶融金属の溶け落ちを防止することがで
き、これにより、溶接のための加工及び組立を容易に低
コストで実施することができる。更に、部分溶込み溶接
を実施する場合、未溶接部分が他方の部材に当接してい
るので、溶接収縮を少なくすることができ、これによ
り、溶接後の寸法精度を高めることができる。
【0095】本発明において、切断トーチの揺動範囲、
傾斜角度β、振動数、1振動あたりの第1方向への移動
距離(V1/Hz1)、第1方向への移動速度及び開先面
の凹凸形状及び切断トーチの揺動を停止させる場合は、
揺動停止期間における前記第1方向への移動距離等を適
切に規制すると、より一層十分な溶込み深さを得ること
ができると共に、溶融金属の溶け落ちの発生を抑制する
ことができる継手部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る溶接開先溶断機を
示す斜視図である。
【図2】溶断時の切断トーチの動きを示す正面図であ
る。
【図3】(a)は板状部材12の溶接方法を説明するた
めの継手を示す斜視図であり、(b)はその平面図、
(c)はその正面図である。
【図4】本発明の第2の実施例に係る溶断機を使用して
切断された板状部材の形状を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施例に係る溶断機を使用して
切断された板状部材の形状を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施例に係る溶断機において、
切断トーチの揺動面を示す模式図である。
【図7】本発明の第4の実施例に係る溶断機を使用して
切断された板状部材の形状を示す斜視図である。
【図8】(a)は本発明の第1の実施例に係る溶断機を
使用して形成された継手部材の形状を示す平面図であ
り、(b)はその正面図である。
【図9】溶込み深さ比較試験に使用したT継手の形状及
びサイズを示す正面図である。
【図10】(a)は本発明の第1の実施例に係る溶断機
を使用して溶断した板状部材の形状及びサイズを示す平
面図であり、(b)はその正面図である。
【図11】本発明の第4の実施例に係る溶断機を使用し
て溶断した板状部材31の形状及びサイズを示す斜視図
である。
【図12】(a)は曲げ疲労試験用の試験片の形状及び
サイズを示す側面図であり、(b)はその正面図であ
る。
【図13】従来のT継手の開先部を示す正面図である。
【図14】従来のT継手の他の開先部の形状を示す正面
図である。
【符号の説明】
1、2、3、4;鋼板 4a;切欠き 5;開先部 6;切断トーチ 7;支持軸 8;揺動装置 8a;駆動部 9;連結軸 10;アーム 11;溶断機 12、13、15、16、17、18、26、30、3
1;板状部材 12a、15a、18a、26a;凹部 12b、15b、18b、26b、30b、31b;凸
部 12c、26c、15c、18c、30c、31c;溶
断面 12d、18d;直線部 12e、30e;稜線 19;固定孔 20;溶接金属 23;歪みゲージ 31b;揺動面
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B23K 26/08 B23K 26/08 B

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 部材を溶断することにより溶接開先を形
    成する溶接開先溶断機において、ビームを発振すること
    により前記部材を溶断する切断トーチと、前記切断トー
    チを第1方向に移動させる移動手段と、前記第1方向に
    交差する揺動面内でビーム延長上の所定点を中心として
    前記切断トーチを扇状に揺動させる揺動手段と、を有す
    ることを特徴とする溶接開先溶断機。
  2. 【請求項2】 前記部材は板状部材であり、この板状部
    材の裏面よりも下方に前記所定点が位置することを特徴
    とする請求項1に記載の溶接開先溶断機。
  3. 【請求項3】 前記部材は板状部材であり、この板状部
    材の裏面に前記所定点が位置することを特徴とする請求
    項1に記載の溶接開先溶断機。
  4. 【請求項4】 前記切断トーチの揺動面が前記第1方向
    に対し傾斜する角度を傾斜角度βとしたとき、前記傾斜
    角度βは−60乃至60°であることを特徴とする請求
    項1乃至3のいずれか1項に記載の溶接開先溶断機。
  5. 【請求項5】 前記切断トーチの揺動範囲は、前記所定
    点を含み前記第1方向に平行の鉛直面と前記揺動面とが
    交差する位置から、前記揺動面内で5乃至40°傾斜し
    た位置までであることを特徴とする請求項1乃至4のい
    ずれか1項に記載の溶接開先溶断機。
  6. 【請求項6】 前記切断トーチの揺動範囲は、前記所定
    点を含み前記第1方向に平行の鉛直面と前記揺動面とが
    交差する位置を中心として、前記揺動面内で前記中心位
    置の両側に夫々5乃至40°傾斜した位置間であること
    を特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の溶
    接開先溶断機。
  7. 【請求項7】 前記揺動手段は振幅の頂点で前記切断ト
    ーチの揺動を停止させないものであることを特徴とする
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接開先溶断
    機。
  8. 【請求項8】 前記揺動手段による前記切断トーチの揺
    動振動数は、0.1乃至20(回/秒)であることを特
    徴とする請求項7に記載の溶接開先溶断機。
  9. 【請求項9】 前記移動手段による前記切断トーチの前
    記第1方向への移動速度をV1(mm/秒)、揺動振動
    数をHz1(回/秒)としたとき、1振動あたりの第1
    方向への移動距離(V1/Hz1)は2乃至20(mm/
    回)であることを特徴とする請求項7又は8に記載の溶
    接開先溶断機。
  10. 【請求項10】 前記揺動手段は振幅の頂点で前記切断
    トーチの揺動を停止させるものであることを特徴とする
    請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接開先溶断
    機。
  11. 【請求項11】 前記揺動手段による前記切断トーチの
    揺動停止期間を除く揺動振動数は0.1乃至20(回/
    秒)であることを特徴とする請求項10に記載の溶接開
    先溶断機。
  12. 【請求項12】 前記移動手段による前記切断トーチの
    前記第1方向への移動速度をV2(mm/秒)、揺動停
    止期間を除く揺動振動数をHz2(回/秒)としたと
    き、揺動停止期間を除く1振動あたりの第1方向への移
    動距離(V2/Hz2)は2乃至20(mm/回)である
    ことを特徴とする請求項10又は11に記載の溶接開先
    溶断機。
  13. 【請求項13】 前記移動手段による前記切断トーチの
    前記第1方向への揺動停止期間における移動距離は20
    0mm以下であることを特徴とする請求項10乃至12
    のいずれか1項に記載の溶接開先溶断機。
  14. 【請求項14】 前記切断トーチの熱源はレーザであっ
    て、前記移動手段による前記切断トーチの前記第1方向
    への移動速度は20乃至250(cm/分)であること
    を特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の
    溶接開先溶断機。
  15. 【請求項15】 前記切断トーチの熱源はプラズマであ
    って、前記移動手段による前記切断トーチの前記第1方
    向への移動速度は20乃至250(cm/分)であるこ
    とを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載
    の溶接開先溶断機。
  16. 【請求項16】 前記切断トーチの熱源はガスであっ
    て、前記移動手段による前記切断トーチの前記第1方向
    への移動速度は20乃至120(cm/分)であること
    を特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の
    溶接開先溶断機。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012096244A (ja) * 2010-10-29 2012-05-24 Tadano Ltd 筒状物溶接時のルートギャップ形成方法
US10625358B2 (en) 2012-11-07 2020-04-21 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Arc welder and method for controlling arc welding
CN112974930A (zh) * 2021-02-23 2021-06-18 宋志龙 扇环形pcb电路板的毛坯板的切割系统与工作方法

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