JPH11514237A - ヘム損失を減少させるヘモグロビン変異体 - Google Patents

ヘム損失を減少させるヘモグロビン変異体

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JPH11514237A
JPH11514237A JP9516729A JP51672997A JPH11514237A JP H11514237 A JPH11514237 A JP H11514237A JP 9516729 A JP9516729 A JP 9516729A JP 51672997 A JP51672997 A JP 51672997A JP H11514237 A JPH11514237 A JP H11514237A
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エス. オルソン,ジョン
エル. ホワイテイカー,ティモシー
エス. ハーグローブ,マーク
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ライス ユニバーシティ
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    • C07ORGANIC CHEMISTRY
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    • C07K14/795Porphyrin- or corrin-ring-containing peptides
    • C07K14/805Haemoglobins; Myoglobins
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    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
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    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Abstract

(57)【要約】 本発明は、ヘモグロビン、特に組換えヘモグロビンの安定性を生じそして発現収量を改善するためにヘモグロビン中のヘム損失を減少させる方法に関する。このような方法は、ヘム親和性を増加させるためにヘモグロビンのαおよびβサブユニット中に変異を導入することによって達成される。本発明はさらに、このようなヘム損失を減少させる新規の変異に関する。

Description

【発明の詳細な説明】 ヘム損失を減少させるヘモグロビン変異体 発明の分野 本発明は、グロビン部分からのヘムの損失の速度を減少させる変異を含む変異 体組換えヘモグロビンに関する。本発明は、さらに、一定の変異体サブユニット の発現によるヘモグロビンの改善された収量に関する。 発明の背景 現在の血液バンキング系は、本来の危険性および重大な制限を有する。血液型 別の間違い、細菌剤の伝染、ならびに、HIV-IおよびA型、B型、およびAB型 肝炎のようなウイルス感染は、輸血患者への生命を脅かす危険性を提起する。さ らに、ドナーの利用可能性、特定の血液型の要求性、赤血球の短い貯蔵寿命、お よび冷蔵の必要性はすべて、患者への輸血のアクセスのしやすさを制限する。安 定な血液代用物の開発は、現在の血液バンキング系の危険性を除去し得、そして ほとんどの環境における患者への輸血の利用可能性を増加させ得る。 さらに、酸素運搬血液代用物は、血漿容量を増加および/または維持し得、そ して従来の血漿増量剤と同じ様式で血液粘性を減少させ得、そしてまた、肺から 末梢組織への酸素の適切な輸送を援助し得る。さらに、酸素輸送ヘモグロビンベ ースの溶液は、赤血球または血漿増量剤が現在利用されるほとんどの状況で使用 され得る。酸素運搬ヘモグロビンベースの溶液はまた、患者への自己血液の復帰 前の自己血液の予めの寄付の間または後に酸素送達を一時的に増大するために使 用され得る。 しかし、以下を含むいくつかの障害は、最適なヘモグロビンベースの酸素キャ リアの開発において克服されなければならない:(1)テトラマーからダイマーへ の解離の阻害;(2)ヘモグロビン酸素親和性の減少;(3)自動酸化の阻害;(4)ヘ ム損失の阻害;および(5)アポグロビン3次構造の増加した安定性。 これまでは、ほとんどのヘモグロビンベースの血液代用物の設計は、テトラマ ー解離を防止することおよび化学的および遺伝学的技法によって酸素親和性を減 少させることに首尾良く焦点を当ててきた(Winslow,R.M.(1992)Hemoglobin-ba sed Red Cell Substitutes,The Johns Hopkins University Press,Baltimore 242頁)。Gawrylおよび共同研究者らは(Gawryl,M.,Clark,T.,およびRausch ,C.,Red Cell Substitutes: The Proceedings of the Second International Symposium of Red Blood Cell Substitutes(S.Sekiguchi編)28-40頁,Tokyo: Kindai Shupann,1991)、テトラマー解離を防止するためにグルタルアルデヒ ドを使用してウシヘモグロビンを化学的に架橋した。非常に豊富であるほかに、 その酸素親和性が塩素イオンによって調節され、そしてその結果、赤血球の内側 または外側と同じである比較的高いP50値を有するので、ウシヘモグロビンが選 択された。ChatterJeeら(Chatterjee,R.,Welty,E.V.,Walder,R.Y.,Pruit t,S.L.,Rogers,P.H.,Arnone,A.,およびWalder,J.A.(1986)J.Biol.Che m.261,9929-9937)は、改変したタンパク質の酸素親和性の2倍の減少も引き 起こす条件下で(3,5-ジブロモサリシル)フマレートを使用してヒトヘモグロビン を化学的に架橋した。遺伝学的アプローチは、Hoffmanらによって論議され、彼 らは組換えヘモグロビン遺伝子およびE.coli発現系を使用した(Hoffmanら,WO 90/13645)。彼らは、可撓性グリシン残基を使用して一方のαサブユニットの C末端残基を他方のαサブユニットのN末端に遺伝学的に連結して、単一のα1- α2サブユニットを産生した(Looker,D.ら,Methods in Enzymology 231,364- 374,1994)。次いで、タンデムαグロビン遺伝子を、βグロビン遺伝子のコピ ーと合わせ、そして単一のプロモーターの制御下に置いてヘモグロビンオペロン を形成した。酸素親和性を減少させるために、彼らはまた、βサブユニット中に Presbyterian変異を組み込んだ。Presbyterian変異とは、両方のヘモグロビンサ ブユニットで酸素親和性の減少を生じるβ(G10)Asp→Lys置換をいう。最終的な タンパク質をrHb1.1と命名し、そしてこれはインタクトな赤血球に観察されるの と同様のP50値を有する。 テトラマー解離の阻害および酸素親和性の改変は、最適な無細胞ヘモグロビン ベースの血液代用物を生成するための唯一の第1の工程である。次の工程は、自 動酸化、ヘミン損失、およびアポグロビン変性に対する耐性を増加させることに よってヘモグロビンの不安定性から生じ得る効果を最小にすることである。潜在 的な毒性効果は、自動酸化の産物、遊離ヘミン、および不溶性アポグロビンから 生じ得る。これらの問題は、酸化および過酸化組織傷害ならびに遊離ラジカルの 増殖を含み得る(Vandegriff,K.D.(1995)Blood Substitutes: Physiological Basis of Efficacy(Birkhauser,Boston)105-131頁)。さらに、酸化された鉄 を含むグロビンサブユニットまたは損失したヘムを有するグロビンサブユニット は、もはや酸素を輸送し得ない。 ヘモグロビンは、2つのαおよび2つのβサブユニットからなるテトラマータ ンパク質であり、そして赤血球中の酸素結合成分である。それぞれのサブユニッ トは、グロビン(タンパク質部分)およびヘム補欠分子族から構成される。それ ぞれのグロビンは、αサブユニットがβサブユニットDヘリックスに対応する5 つの残基がないこと以外は、A〜Hと標識される8つのαヘリックスにフォール ディングする。唯一の非ヘリックスセグメントは、ヘリックス間のターンである 。アミノ酸の位置は、特定のヘリックス内のそれらの位置またはN末端からのそ れらの距離によって示される。本明細書に記載される方法によって組換え産生さ れるヘモグロビンサブユニットは、通常存在するN末端バリンの変わりにN末端 メチオニンを有する。同一性と関係なく、N末端はアミノ酸番号1として表され る。 各グロビンにおいて、リガンドは、ヘム補欠分子族のプロトポルフィリンIX中 の鉄の第6配位部位に結合する。ヘム基は、ヘム鉄の第5配位部位と近位His(F8 )残基との間の共有結合によってグロビンに確保される。第一鉄または還元され た状態(Fe+2)は、酸素および一酸化炭素を結合する。メトヘモグロビンとして 公知の第二鉄形態は、水、アジド、シアニド、または水酸化物アニオンを結合す る。プロトポルフィリンIX中の鉄が還元される場合、補欠分子族はヘムと示され る。一方、鉄がプロトポルフィリンIX中で酸化された状態である場合、その複合 体はヘミンと呼ばれる。 ヘモグロビンは、協同していくつかのリガンドを結合する。協同性は、酸素分 圧が高い肺では有効なO2取り込み、および分圧が非常に低い筋肉毛細血管では O2放出を可能にする。ヘモグロビンへの協同O2結合は、αとβサブユニットと の間のアロステリック相互作用の結果である。 α1β1ダイマーは、2つのサブユニット間の強い疎水性相互作用によって一緒 に優先的に保持される。ヘモグロビンテトラマーの形成により、2つのα1β1ダ イマー間の比較的弱い静電相互作用を生じ、α1β2およびα2β1と呼ばれる2つ の新しいサブユニット界面を有するテトラマーを生じる。 ヘモグロビンテトラマーは、T(低酸素親和性)またはR(高酸素親和性)の いずれかの四次コンフォメーションで存在し得る。酸素の不在下で、ヘモグロビ ンは、α1β2およびα2β1界面で静電相互作用の格子によってT状態に保持され る。TとR状態との間の相互変換は、α2β2ダイマーに対してα1β1ダイマーを 15°回転させることまたはその逆によって完了される。α1β1およびα2β2界面 は、TからRへの相互変換によって影響を受けないが、R状態の形成は、T状態 α1β2およびα2β1界面において著しい数の静電結合の分裂を必要とする。 メトヘモグロビンは、Fe+2からFe+3へのヘム鉄の酸化によって形成される(Wi nterbourn,C.C.およびCarrell,R.W.J Clin.Invest.54,678,1977;Bunn, H.F.およびForget,B.G.,Hemoglobin: Molecular,Genetic,and Clinical Asp ects(W.B.Saunders Co.)Philadelphia,P.A.,1986)。このメトヘモグロビ ンは、酸素を結合しないので、生理学的に不活性である。さらに、ヘミンは、鉄 原子とHis93(F8)との間の結合が鉄の酸化の際にかなり弱められているので、メ トヘモグロビン分子から容易に解離し得る。生理学的pHおよび温度での遊離ヘミ ンおよびアポグロビンの不溶解性のため、ヘミン解離は本質的に不可逆性である 。 グロビンのヘムへの親和性は、グロビンと結合したヘミンとの間の共有、疎水 性、静電、および立体効果の組み合わせによって調節される。His(F8)残基と鉄 の第5配位部位との間の共有結合は、第一鉄グロビンへ鉄を確保する重要な力で ある。しかし、自動酸化後、この結合はかなり弱くなり、第一鉄ヘモグロビンか らよりもメトヘモグロビンからのヘミン解離のより速い速度を生じる。テトラピ ロール環のメチルおよびビニル置換体とグロビンの無極性領域との間の疎水性相 互作用は、ヘムの保持に重要な寄与を生じる。His64(E7)と配位した水との間の 水素結合は、グロビンにおいてヘムを固定することを助ける。グロビン表面の極 性アミノ酸残基とヘム-6-およびヘム-7-プロピオネートとの間の塩橋もまた、ヘ ミン損失を阻害する。ヘム-7-プロピオネートは、αおよびβグロビンにおいてL ys(E10)との水素結合を形成する。ヘム-6-プロピオネートは、αグロビンにおい てHis45(CE3)との塩橋を形成する(Bunn,H.F.およびForget,B.G.(1986)Hemog lobin: Molecular,Genetic and Clinical Aspects,16章,634-662頁,W.B.Sa unders Company,Philadelphia,PA)。βサブユニットにおける等価の残基Ser4 4(CD3)は、ヘム-6-プロピオネートから遠すぎて同様の相互作用を形成せず、そ して安定化のこの欠乏は、ヘモグロビンβサブユニットからのヘミン損失の速い 速度に寄与し得る。 αグロビンにおけるCとEヘリックスとの間のポリペプチド鎖は、βグロビン 中の等価領域よりも短い5残基であり、これはタンパク質のこの領域におけるら せん状二次構造の損失を生じる(Kleinschmidt,T.およびSquoros,J.Hoppe-Se yler's Z.Biol.Chem.368,579-615,1987)。Komiyamaら(Komiyama,N.,Sh ih,D.,Looker,D.,Tame,J.およびNagai,K.(1991)Nature 352,49-51)は 、βグロビンにおけるDヘリックスおよびαグロビンからのその損失の機能的重 要性を検査した。協同性の減少またはO2親和性の顕著な増加は観察されなかっ た。Komiyamaらは、αサブユニットからのDヘリックスの損失がO2結合および 協同テトラマーへの組み立てに関して機能的に中立的な変異であると結論づけた 。しかし、これは、脊椎動物のヘモグロビンのβサブユニット中にDヘリックス を保存するための強い選択的圧力の起源を未解決のままにした。 単離されたヘモグロビンサブユニットは、高度に不安定であり、そしてミオグ ロビンよりも容易にヘミンを損失する。得られるアポヘモグロビンは、生理学的 pHおよび温度で高度に不安定である。ヘモグロビンサブユニットの不安定性のた め、ミオグロビンは、グロビンフォールディングおよび安定性の原理を理解する ためのモデル系として使用されている。アポミオグロビンは、かなり安定であり 、そしてそのアンフォールディングは2工程プロセスである(Hughson,F.M.,W right,P.E.,およびBaldwin,R.L.(1990)Science 249,1544-1548)。ミオグ ロビンがヘミンを損失した後、天然のアポミオグロビンは、B、C、およびEヘ リックスのアンフォールディングから生じるモルテングロビュール中間状態に変 性する。残りのA、G、およびHヘリックスは、中間状態から完全にアンフォー ル ドした状態への移行の間にアンフォールドする(Balastrieri,C.,Colonna,G. ,Giovane,A.,Irace,G.,およびServillo,L.,(1976)Methods Enzymol.76 ,72-77;BarrickおよびBaldwin,1993;Hughson,F.M.,Wright,P.E.,および Baldwin,R.L.(1990)Science 249,1544-1548;Hargrove,M.S.,Krzywda,S. ,Wilkinson,A.J.,Dou,Y.,Ikeda-Saito,M.,およびOlson,J.S.Biochemis try 33,11767-11775,1994)。 ミオグロビンは、ヘモグロビンのαおよびβサブユニットについての有用なモ デル系であるが、ミオグロビンにおける重要な残基の変異誘発の効果は、ヘモグ ロビンサブユニットに導入した場合、必ずしも同じ効果を有するわけではない。 実際、多くの差異があった。この点は、ミオグロビン、αサブユニット、および βサブユニットの遺伝子操作したHis(E7)およびVal(E11)変異体のリガンド結合 研究によって最も良好に例示される(Carver,T.W.,Rohlfs,R.J.,Olson,J.S .,Gibson,Q.H.,Blackmore,R.S.,Springer,B.A.およびSligar,S.G.,J.Bi ol.Chem.,265: 20007-20020;Matthews,A.J.,Rohlfs,R.J.,Olson,J.S., Tame,J.,Renaud,J.,およびNagai,K.J.Biol.Chem.264,16573-16583,1 989;Mathews,A.J.,Olson,J.S.,Renaud,J.-P.,Tame,J.,およびNagai,K .(1991)J.Biol.Chem.266,21631-21639;Springer,B.A.,Sligar,S.G.,Ol son,J.S.,およびPhillips,G.N.,Jr.Chem.Rev.94,699-714,1994)。酸素 および一酸化炭素速度定数において観察された効果の比較から、一般的規制が明 らかになっている。ミオグロビンおよびR状態ヘモグロビンαサブユニットは、 O2のためにCOに対して区別する同様の遠位ポケットの構造的および化学的メカ ニズムを有するようである。一方、R状態βサブユニットは、同じ生理学的機能 を達成する幾分異なる遠位ポケットメカニズムを発展させているようである。さ らに、ヘモグロビンは、RおよびT状態間で相互変換する。αおよびβサブユニ ットは、各コンフォメーションにおいて異なる構造的および化学的メカニズムを 有し得る。これらの観察は、ミオグロビン安定性において好ましい効果を有する 変異がヘモグロビンサブユニットにおいて同様の効果を有するかどうかについて の疑問を生じる。 発明の要旨 本発明は、ヘモグロビン中のヘム損失を減少させる方法に関する。この方法は 、ヘモグロビンサブユニットのアミノ酸配列を改変することによって達成される 。例えば、変異は、以下のいずれかから選択され得る: (a)このヘモグロビンのαサブユニットへDヘリックス領域を付加すること; (b)このヘモグロビンのβサブユニットにおいて以下のアミノ酸残基を改変す ること:Leu28(B10)、Met32(B13)、Thr38(C4)、Phe41(C7)、Phe42(CD1)、Ser44( CD3)、Phe45(CD4)、Dヘリックス全体、His63(E7)、Gly64(E8)、Lys66(E10)、Va l67(E11)、Ala70(E14)、Leu88(F4)、Leu91(F7)、His92(F8)、Leu96(FG3)、Val98 (FG5)、Asn102(G4)、Phe103(G5)、Leu106(G8)、Leu110(G12)、Gly136(H14)、Val 137(H15)、またはLeu141(H19)、ここで、このβサブユニットアミノ酸残基は、 ヒトヘモグロビンの天然のβグロビンアミノ酸配列によって同定される;または (c)ヘモグロビンのαサブユニットにおいて以下のアミノ酸残基を改変するこ と:Leu29(B10)、Leu31(B13)、Thr39(C4)、Tyr42(C7)、Phe43(CD1)、His45(CD3) 、Phe46(CD4)、His58(E7)、Gly59(E8)、Lys61(E10)、Val62(E11)、Ala65(E14)、 Leu83(F4)、Leu86(F7)、His87(F8)、Leu91(FG3)、Val93(FG5)、Asn97(G4)、Phe9 8(G5)、Leu101(G8)、Leu105(G12)、Ser131(H14)、Val132(H15)、またはLeu136(H 19)、ここで、このαサブユニットアミノ酸残基は、ヒトヘモグロビンの天然の αグロビンアミノ酸配列によって同定される。 1つの実施態様では、Dヘリックス領域は、βサブユニットからのDヘリック スの除去とともにまたは除去なしにαサブユニットに挿入され得る。他の変異は 、αまたはβサブユニットのいずれかにおける以下の置換を含む:E11→Trp、E1 1→Leu、B10→Phe、B10→Trp、G8→Phe、G8→Trp、CD3→His、E11→Phe、F4→Ph e、H14→Leu、B10→Val、またはB10→Ile。 本発明はさらに、ヘムに対するより高い親和性を有し、そのためヘム損失を減 少させる新規変異体ヘモグロビンに関する。このような変異体ヘモグロビンは、 Thr38(C4)、Phe4(C7)、Dヘリックス、GIy64(E8)、またはGly136(H14)でのβグ ロビン変異および/またはThr39(C4)、Gly59(E8)、またはSer131(H14)でのαグ ロビン変異を有する。 発明の詳細な説明 本発明は、天然に存在するヒトヘモグロビンに関するヘムの損失に対して著し く大きな耐性を与え、それによってヘモグロビンの安定性を増加させる組換えヘ モグロビンにおける変異に関する。ヘムは、ヘモグロビン、ミオグロビン、カタ ラーゼ、ペルオキシダーゼ、およびシトクロムbの補欠分子族である。ヘムは、 EとFヘリックスとの間の裂け目に挿入される。ヘム鉄は、「近位」F8ヒスチジ ンのイミダゾール窒素に共有結合する。遠位E7ヒスチジンおよびE11バリンは、 ヘムポケットへの酸素の接近を保護するようである。ヘムポケットの残基には、 ヘム部分の6オングストローム以内、より好ましくは最も近いヘム原子の4オン グストローム以内の、最も近い原子−最も近い原子ベースにある残基を含む(Fe rmiら,(1984)J.Mol.Blol.175: 159-174)。本発明はまた、所定のサブユニ ットからまたは多数のサブユニットへの完全なDヘリックスの付加または除去、 所定のサブユニットへまたは多数のサブユニットへのDヘリックスの一部の付加 または除去、あるいは天然に存在するまたは挿入されたDヘリックスを含む残基 のいずれかにおける変異のいずれかによる、Dヘリックスに変異を含む変異体ヘ モグロビンに関する。さらに、本発明はさらに、上記の残基のいずれかにおける 任意の変異、ならびに、二重、三重、およびより高度な変異に関する。 グロビン部分からのヘム損失の速度がヘムポケットおよびDヘリックスでの残 基の改変によって調節され得るメカニズムは、同定されている。驚くべきことに 、いくつかの変異は、ヘム損失の速度のみを減少させるが、得られる変異体タン パク質の酸素結合および輸送特性を変化させるようではないことが、発見されて いる。ミオグロビンおよびヘモグロビンへのリガンド結合におけるいくつかの遠 位ポケット変異の他の効果の簡単な総説は、Perutz(Perutz,M.F.(1989)Trend s Biochem.Sci.14: 42-44);Springerら(Springer,B.A.ら,(1994)Chem.R ev.94: 699-714)、およびMathewsら(Mathews,A.J.ら,(1989)J.Biol.Chem .264: 16573-16583)によって示されており、そしてミオグロビンとヘモグロビ ンとの間の差は、これらおよび他の刊行物に示されている。 野生型ヒトヘモグロビン配列のアミノ酸置換を安定化することが、結合したヘ ムの6Å以内、好ましくは4Å以内、およびヘモグロビンにおけるヘム損失に影 響を与える他の二次的位置であることを、本発明で意図される。これらの残基は 以下を含む:βサブユニット中のLeu28(B10)、Met32(B13)、Thr38(C4)、Phe41(C 7)、Phe42(CD1)、Ser44(CD3)、Phe45(CD4)、Dヘリックス全体、His63(E7)、Gly 64(E8)、Lys66(E10)、Val67(E11)、Ala70(E14)、Leu88(F4)、Leu91(F7)、His92( F8)、Leu96(FG3)、Val98(FG5)、Asn102(G4)、Phe103(G5)、Leu106(G8)、Leu110( G12)、Gly136(H14)、Val137(H15)、およびLeu141(H19)、ならびにαサブユニッ ト中のLeu29(B10)、Leu31(B13)、Thr39(C4)、Tyr42(C7)、Phe43(CD1)、His45(CD 3)、Phe46(CD4)、His58(E7)、Gly59(E8)、Lys61(E10)、Val62(E11)、Ala65(E14) 、Leu83(F4)、Leu86(F7)、His87(F8)、Leu91(FG3)、Val93(FG5)、Asn97(G4)、Ph e98(G5)、Leu101(G8)、Leu105(Gl2)、Ser131(H14)、Val132(H15)、およびLeu136 (H19)。目的のいくつかの変異は、例えば、α、β、または両方のサブユニット のいずれかでのCD3→His、E11→Phe、F4→Phe、H14→Leu,B10→Val、およびB10 →Ile変異、ならびにいずれかまたは両方のサブユニットへのDヘリックスの付 加または除去である。他の哺乳動物または非哺乳動物ヘモグロビンにおける等価 位置での変異はまた、本発明に包含されることに留意のこと。 ミオグロビン、およびヘモグロビンを含むいくつかの関連タンパク質へのヘム 結合を統制する因子は、系統的に試験されている(Hargroveら,Biochemistry, 35:11293-11299(1996);Hargroveら,Biochemistry,35:11300-11309(1996); およびHrgroveおよびOlson,Biochemistry,35:11310-11318(1996)、これらはす べて参考として本明細書に援用される)。これらの研究の結果は、ヘム会合がす べてのタンパク質について約100μM-1s-1のほぼ同じ速度で生じ、そしてヘム親 和性がホロタンパク質からの解離速度によってのみ統制されることを示す。この 結果は、ヘミンに対する組換えヘモグロビンの親和性を迅速に決定するような、 以下の実施例4に記載のアッセイの使用を確証する。これらの研究はまた、イン タクトなヘモグロビンおよびミオグロビンの安定性が、ヘミンに対するタンパク 質の親和性によって排他的に統制され、そしてアポタンパク質の安定性によって ではないことを示す。また、この結果は、ヘミン親和性が、安定なヘモグロビン ベースの血液代用物を作成するためおよびE.coliでの高発現収量を得るために 最適にされるべきであるという前提を支持する。最後に、結合したヘミンを取り まくタンパク質ポケットは、ミオグロビン中で保持しているヘムにおける個々の アミノ酸残基の重要性を決定するために系統的に変異された。ヘモグロビン中の 対応する残基を上記の段落に列挙する。 上記のように、天然に存在するヒトヘモグロビンのタンパク質およびDNA配列 は公知である。ヘモグロビン配列のアミノ酸の本明細書で記載された変異のいず れかは、当該技術分野で公知である多くの方法によって達成され得る。変異は、 アミノ酸の化学的改変によるアミノ酸レベルで、または所定のアミノ酸をコード するヌクレオチド配列の改変によるコドンレベルでのいずれかで生じ得る。タン パク質における任意の所定の位置でのアミノ酸の置換は、そのアミノ酸をコード するコドンを改変することによって達成され得る。これは、例えば、以下を使用 する部位特異的変異誘発によって達成され得る:(1)Taylorら,Nucl.Acids Res .(1985)13: 8749-8764;Tatlorら,(1985)Nucl.Acids Res.13: 8764-8785;N akamayeおよびEckstein,(1986)Nucl.Acids Res.14: 9679-9698;ならびにDen teら,DNA Cloning,Glover編,IRL Press(1985)791-802頁の方法に基づくAme rsham技法(Amersham変異誘発キット、Amersham,Inc.,Cleveland,Ohio)、(2 )Promegaキット(Promega Inc.,Madison,Wisconsin)、またはKunkel,(1985) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82: 488;Kunkelら,(1987)Meth.Enzymol.154: 367;Kunkel,米国特許第4,873,192号の方法に基づくBioradキット(Biorad Inc .,Richmond,California)。(変異誘発を達成するために変異体オリゴヌクレ オチドを使用して)部位特異的変異誘発の技法を組み込む他の市販のまたは市販 されていない手段によっても達成され得る。 部位特異的変異誘発はまた、Zhengbinら,205-207頁,PCR Methods and Appli cations ,Cold Spring Harbor Laboratory Press ,New York(1992);Jonesおよ びHoward,(1990)BioTechniques 8(2): 178;JonesおよびHoward,(1991)BioTec hniques 10: 62-66に記載されるようなPCRに基づく変異誘発を使用して達成され 得る。部位特異的変異誘発はまた、当業者に公知である技法を用いるカセット変 異誘発を使用して完了され得る。 ヘモグロビンの変異体は公知であり、PCT公開番号WO88/09179(参考として本 明細書に援用される)に開示される。αおよびβグロビンサブユニットの両方は 配列決定されており(HoffmanおよびNagai、米国特許第5,028,588号、本明細書 に参考として援用される)、そして変異組換えヘモグロビンの変異、発現、およ び精製のための技法が記載されている(Looker,D.ら(1994)Expression of Re combinant Hemoglobin in Eschrichia coli: Methods in Enzymology 231: 364- 374,S.O.Colowick編; Academic Press,Inc.;Hoffmanら,WO 93/13645;Miln eら,WO 95/14038)。 本明細書に記載される変異はまた、組換え系におけるヘモグロビンの発現収量 を改善するために有用である。ヘミン親和性を増加させることは、増加したタン パク質発現収量に寄与し得る。理論によって結びつけられなければ、ホロタンパ ク質の安定化は、発現後の細胞にタンパク質をより長く存在させ得る。さらに、 本明細書に記載されるいくつかの変異は、安定化されたアポグロビン(ヘムを有 さないグロビン)を生じ得る。理論に結びつけられなければ、変異体アポグロビ ンがそれぞれの野生型アポグロビンよりも安定である場合、それは発現後の細胞 により長く存在し得る。したがって、ヘムと結合するために細胞でより長い時間 を有し、そして最終的に、ヘモグロビンテトラマーを形成するために他のサブユ ニットと組み合わせる。 したがって、本発明はまた、変異体ヘモグロビンの改善された発現による組換 え系からのヘモグロビンの増強された産生の方法を提供する。このような方法は 、本発明の変異体αサブユニット、変異体βサブユニット、またはαおよびβグ ロビンの両方の変異体をコードする核酸配列を得ることによって達成される。次 いで、このような核酸配列は、任意の適切な手段によって任意の適切な発現系に 導入され得る。異種タンパク質は、昆虫細胞、植物細胞、トランスジェニック細 胞、酵母系、および細菌系のような多くの生物学的発現系で発現されている。し たがって、任意の適切な生物学的タンパク質発現系は、大量の組換えヘモグロビ ンを産生するために利用され得る。実際、ヘモグロビンは、多くの生物学的発現 系(細菌(Hoffmanら,WO 90/13645)、酵母(De Angeloら,WO 93/08831および WO 91/16349;Hoffmanら,WO 90/13645)、およびトランスジェニック哺乳動物 (Loganら,WO 92/22646;Townes,T.M.およびMcCune,S.L.,WO 92/11283を含 む))で発現されている。 赤血球の平均寿命は、約160日である(Vandegriff,K.D.(1992)Biotechnolog y and Genetic Engineering Reviews 10,403-453)。メトヘモグロビンは、酵 素的還元系の存在のためRBC中に低レベルで維持される。しかし、赤血球中に融 離されていないヘモグロビンは、約2〜3日以内に酸化される。インビボでは、 メトヘモグロビン産生は、酸化剤の存在下でより迅速に起こり得る。ヘミン損失 のより低い速度は、補欠分子族の迅速な放出および血清アルブミン/アポヘモペ キシン除去系(scavenging system)の可能な飽和を防止し得る。さらに、より低 いヘム損失は、酸化されたヘムの再還元の機会を与え得、従って、系中の機能的 ヘモグロビンの量を増加させる。インビボで遊離のヘムは、最終的に赤血球溶解 および血管組織への傷害を引き起こす酸化および過酸化膜ならびにタンパク質傷 害を促進する(Vincent,S.H.Semin Hematol.26,105-113,1989;Vandegriff ,K.D.(1992)Biotechnology and Genetic Engineering Reviews 10,403-453 、およびVandegriff,K.D.(1995)Blood Substitutes: Physiological Basis of Efficacy(Birkhauser,Boston)105-131頁)。赤血球溶解後、アポヘモペキシ ンおよび血清アルブミンは遊離ヘミンを結合し、トランスフェリンは遊離鉄を結 合し、そしてハプトグロブリンは変性したアポグロビンを結合する。次いで、こ れらの複合体は、変性または再吸収のために肝臓、脾臓、および骨髄に輸送され る。これらの系は、外因性無細胞のヘモグロビンの破壊が迅速に起こる場合、す ばやく飽和になり得る。したがって、ヘミン損失の減少した速度を有するヘモグ ロビンの変異体は、ヘモグロビンベースの酸素運搬からヘム曝露を減少させるこ とに有用であり得る。最後に、外因性還元系の存在下で、増加したヘミン親和性 は、グロビン中のヘムの滞留時間を増加させることによる酸化後のヘムの再還元 の機会を増加させることによって、ヘモグロビン貯蔵寿命および血流中の保持時 間を増加させ得る。 本発明のヘム損失耐性変異体ヘモグロビンは、薬学的または非薬学的組成物の 処方に使用され得る。本発明の変異体組換えヘモグロビンに適切な薬学的組成物 は、Milneら,WO 95/14038およびGerberら,PCT/US95/10232の同時係属中の出願 に記載される。本発明の薬学的組成物は、例えば、皮下、静脈内、筋肉内注射、 局所または経口投与、血液代用物として有用な大容量非経口溶液などに有用であ り得る。本発明の薬学的組成物は、経口またはエアロゾル投与によって、経皮ま たは粘膜吸収によって、または注射によるような任意の従来の手段によって投与 され得る。本発明の非薬学的組成物は、例えば、このような参照標準、試薬溶液 、細胞培養の気体含量の制御(例えば、細胞培養物への酸素のインビトロ送達) および溶液からの酸素の除去を必要とする分析器具用の参照標準として使用され 得る。 1つの実施態様では、組成物は、治療適用での使用のために処方され得る。例 えば、本発明の処方物は、赤血球が使用される任意の適用で、赤血球の代用物と して有用な組成物中で使用され得る。赤血球代用物として処方される本発明のこ のような組成物は、血液量が損失しそして体液量および酸素運搬能力の両方が置 き換えられなければならない出血、外傷、および外科手術の処置に使用され得る 。さらに、本発明の組成物は、薬学的に受容可能に作製され得るので、本発明の 処方物は、酸素を送達する血液代用物としてだけでなく、大きなヘモグロビンタ ンパク質分子の存在のためコロイド浸透圧を提供する簡便な容量増量剤としても 使用され得る。 血液代用物としての代表的なヘモグロビン用量は、患者の体重の1kg当たり10 mg〜5グラム以上の細胞外ヘモグロビンである。したがって、ヒト患者への代表 的な用量は、2、3グラムから350グラム以上であり得る。各投与形態の個々の 用量に含まれる有効成分の単位含量は、必要な有効量が注射などのような複数の 投与の投与によって到達され得るので、それ自体が有効量を構成する必要がない 。投与量の選択は、利用される投与形態、処置される状態、および当業者の決定 によって達成されるべき特定の目的に依存する。 細胞外ヘモグロビンの投与は、ヘモグロビンの用途の目的に依存して秒から時 間の期間に起こり得る。例えば、血液送達ビヒクルとして、投与の通常の時間経 過は、できる限り迅速である。血液置換物としてのヘモグロビン溶液についての 代表的注入速度は、約100〜3000ml/時間であり得る。 さらなる実施態様では、本発明の組成物は、貧血にかかっている患者にさらな る酸素運搬能力を提供することによって、および造血を刺激することによっての 両方で、貧血を処置するために使用され得る。造血を刺激するために使用される 場合、ヘモグロビンの投与量が出血を処置するために必要とされ得る投与量より も少ないので、投与速度はゆっくりであり得る。 さらに、血管系におけるヘモグロビンの分布は赤血球のサイズによって限定さ れないので、本発明のヘモグロビンは、赤血球が浸透し得ない領域に酸素を送達 するために使用され得る。これらの領域は、赤血球流への妨害物の下流に位置す る任意の組織領域(例えば血栓、鎌状赤血球閉塞、動脈閉塞、血管形成術バルー ン、外科的器具などの下流の領域)を含み得る。体内でのこの広い分布のため、 本発明のヘモグロビンはまた、薬物を送達するためにおよびインビボイメージン グのために使用され得る。 本発明の組成物はまた、患者の血液が取り出されそして外科的手術の最後でま たは回復中の再注入に用いられる外科的手順の間に取り出される血液の置換物( 急性の正常血液量の血液希釈物または血液増量物)として使用され得る。 本発明のヘモグロビンは、酸化窒素および他の非酸素リガンドならびに酸素を 結合し得るので、本発明の処方物はまた、酸化窒素または非酸素リガンドの結合 または送達に有用である。これらの非酸素リガンドは、インビボまたはインビト ロの両方で結合または送達され得る。例えば、本発明のヘモグロビン変異体は、 生活系(living system)から過剰の酸化窒素を除去するために使用され得る。過 剰の酸化窒素は、低血圧症から敗血症性ショックまでの範囲の状態に関連してい る。同様に、酸化窒素または他の非酸素リガンドは、病状を緩和するための系に 送達され得る。例えば、酸化窒素は、高血圧症を処置するために血管系に送達さ れ得る。 同様に、高ヘム親和性変異体は、インビボおよびインビトロの両方の系から過 剰のヘムを除去するために使用され得る。過剰のヘムは、目的の系からの還元し た過剰のヘムにこのような高ヘム親和性変異体の有効量を投与することによって 除去され得る。アポタンパク質(補欠ヘム分子族を有さないヘモグロビンタンパ ク質)、アポグロビン(補欠ヘム分子族を有さない個々のサブユニット)、ホロ タンパク質(補欠分子族を有するヘモグロビンタンパク質)、またはホログロビ ン(ヘム基を有する個々のサブユニット)が投与され得る。インビボで過剰のヘ ムは、例えば、任意の起源の溶血性貧血、ポルフィリン症、およびヘモクロマト ーシスのような病理状態と関連している。このような病状は、本明細書に記載の ような1つ以上の高ヘム親和性ヘモグロビン変異体の有効量の投与によって処置 され得る。 本発明の組成物はまた、多くのインビトロ適用に使用され得る。例えば、本発 明の組成物による酸素の送達は、インビトロで酸素レベルを維持することによる 細胞培養物中での細胞増殖の増強に使用され得る。さらに、本発明のヘモグロビ ンは、酸素の除去を必要とする溶液から酸素を除去するために、ヘムの除去を必 要とする溶液からのヘムの除去に、および分析アッセイおよび器具のための参照 標準として使用され得る。 実施例 以下の実施例は、いかなる方法においても本発明の範囲を限定することを意図 することなく、本発明の特定の実施態様を記載するために提供される。 実施例1 組換えヘモグロビンの調製 組換えヒトヘモグロビン遺伝予pSGE0.0E4を、Hoffmanらの方法に従って作製し た(Hoffman,S.J.,Looker,D.L.,Roehrich,J.M.,Cozar,P.E.,Durfee,S. L.,Tedesco,S.L.,およびStetler,J.L.Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.87, 8251-8525,1990)。これは、pTacプロモーターの制御下で単一のオペロンから 発現される1つのαグロビンおよび1つのβグロビンシストロンからなる。各遺 伝子を、E.coliに偏ったコドン、有効なリボソーム結合部位、および最適な翻 訳開始および停止コドンを組み込むことによって、タンパク質収量を最大にする ように操作した。各シストロンもまた、Metをコードする細菌の翻訳開始配列を 欠失および置換したN末端Valコーディング配列を有した。ヘモグロビン遺伝子 を、pKK223-3発現ベクター(Pharmacia,Piscataway,NJ)中に置き、そしてpSG E0.0E4を標識した。しかし、pKK223-3ベクターは、オリゴヌクレオチド部位特異 的変異誘発のための一本鎖DNAを作製するためのF1複製起点を含まない。この理 由のために、pBluescriptII KS+プラスミド(Pharmacia,Piscataway,NJ)を変 異誘発ベクターとして使用した。αおよびβ遺伝子を別々のベクターに個々にサ ブクローニングし、変異誘発し、そしてpSGE0.0E4発現ベクターに逆サブクロー ニングした。ヘモグロビンB10およびCD3変異体を、Taylorら(Taylor,J.W.,Ot t,J.,およびEckstein,F.,(1985)Nucl.Acids Res.13,8764-8785)に従っ てAmersham Sculptor(Cleveland,OH)変異誘発キットを使用して構築した。ヘ モグロビンα(0.0)β(-D)およびα(+D)β(0.0)変異体を、カセット変異誘発を使 用して作製した(Komiyama,N.,Shih,D.,Looker,D.,Tame,J.,およびNaga i,K.Nature 352,49-51,1991)。ヒトβグロビンからのDヘリックスを、残 基Thr50-Pro-Asp-Ala-Val54を欠失することによって除去した。この同じセット の残基を、49位で開始するαグロビンに挿入した。対応する変異体を、それぞれ β(-D)およびα(+D)と命名し、そして2つのヘモグロビンハイブリッド、α(野 生型)β(-D)およびα(+D)β(野生型)、を作成した。野生型は、E.coliでの発現 を容易にするためにVIM置換以外は天然のタンパク質と同一であるサブユニット をいう。 組換えヘモグロビンを発現し、そして以下の方法によって精製した。14リット ルの培養器を使用して、テリフィックブロス(terrific broth)(Sambrook,J., Fritsch,E.F.,およびManiatis,T.(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)および0.0 17M KH2PO4/0.072M K2KPO4緩衝液(pH 7.0)を30℃で使用して、野生型または変 異体ヘモグロビンベクターを含むJM109 E.coli細胞を2.0〜3.0のOD600まで増殖 させた。このとき、ヘモグロビン発現を、イソプロピル-β-チオガラクトピラノ シド(IPTG)(300mM)で誘導した。0.1M NaOHに予め溶解した外因性ヘムをまた添 加して最終濃度30mg/mlにした。細胞をさらに4時間増殖し、遠心分離によって 採取し、秤量し、次いで-70℃で凍結した。凍結は細胞溶解を助けるようである 。翌日、氷の結晶がなお存在するまで、細胞を室温で溶解した。次いで、細胞を 、溶解緩衝液(40mMトリス塩基/1mMベンザミジン pH 8.0;3ml/1g細胞ペー スト)中で2分間ブレンドすることによって再懸濁した。溶解緩衝液で予め溶解 したリゾチームを、1mg/1g細胞ペーストに添加して、10℃で20分間イン キュベートした。簡単にブレンドした後、DNase20μg/ml溶菌液の添加前に、Mg/ Mnを添加して0.01M/0.001Mの最終濃度にした。次いで、溶菌液を10℃で20分間さ らにインキュベートした。DNAを沈殿させるために、10%ポリエチレンイミンを ゆっくり添加して0.05%の最終濃度にし、そしてBeckman J20ローターで14,000 ×gにて20分間遠心分離する前に、溶菌液を15分間撹拌した。次いで、上清を、M INITAN高分解能接線流濾過系(Millipore,Inc.,Bedford,Massachusetts)を 使用して濃縮し、そしてその伝導性を、蒸留水を添加することによって最初のカ ラムの伝導性まで減少した。pHを0.1M HClでpH 7.4にした。 組換えヘモグロビンの精製を、3つのクロマトグラフィーカラムを使用して達 成した。第1のカラムは、20.0mMトリス-Cl/0.1mMトリエチルアミンテトラ酢酸 (ph 7.4)で平衡化した、陰イオン交換体、fast flow Q SEPHAROSE(Sigma Che mical Company,St.Louis,Missouri)を含んだ。第1のカラムを、ヘモグロビ ンが通過し、そして7.4よりも低い等電点を有するすべてのタンパク質を結合す るように設計した。第2のカラムは、fast flow Q SEPHAROSEをパックし、そし て20.0mMトリス-Cl(pH 8.5)で平衡化した。ヘモグロビンは、このpHで陰イオ ン性であり、そしてカラムに結合するが、8.5よりも大きな等電点を有するすべ てのタンパク質はカラムを通過する。ヘモグロビンタンパク質を、200mlの20.0m Mトリス-Cl(pH 8.5)から20.0mMトリス-Cl(pH 7.0)のpHグラジエントで溶出 した。最後のカラムは、陽イオン交換体、20.0mM Na2HPO4(pH 6.8)で平衡化し た、fast flow S SEPHAROSE(Sigma Chemical Company,St.Louis,Missouri) を含んだ。ヘモグロビンは、このpHで正の電荷を有し、そしてカラムに堅く結合 する。ヘモグロビンを、200mlの20.0mM Na2HPO4(pH 7.0)から20.0mM Na2HPO4 (pH 8.0)のpHグラジエントを使用して溶出した。最終溶出物を1〜2mMヘムに 濃縮し、そして液体窒素中に貯蔵した。 実施例22およびCO結合に対する速度および平衡定数の測定 すべての速度定数を、リガンド濃度がヘム濃度よりも大きい擬一次条件下で測 定した。すべてのヘモグロビン反応を、0.1M ビス-トリス/0.1M KCl/1.0mM EDTA (pH 7.0)中20℃にて行った。ヘモグロビン会合および解離時間経過は、二相で あり、速相はβサブユニットに、そして遅相はαサブユニットに帰属する(Matt hews,A.J.,Rohlfs,R.J.,Olson,J.S.,Tame,J.,Renaud,J.,およびNagai ,K.(1989)J.Biol.Chem.264,16573-16583)。従って、ヘモグロビン時間経 過は、等振幅(equal amplitude)での2指数関数式に適合した。 R状態ヘモグロビンについてのO2およびCO解離速度定数であるkO2およびkC O を、Matthewsら(Matthews,A.J.,Rohlfs,R.J.,Olson,J.S.,Tame,J.,Re naud,J.,およびNagai,K.(1989)J.Biol.Chem.264,16573-16583)に記載 されるような置換反応によって決定した。kO2を、[O2]/[CO]の比の関数として 、COによるO2置換についての速度定数を測定することによって決定した: ここでrobsは観察された置換速度であり、kO2'およびkCO'は酸素および一酸 化炭素会合速度定数であり、そしてkO2は真の酸素解離速度定数である。kCOを 、結合したCOをN0と置換することによって決定した。kNO'>>>kCO'なので、 観察された速度定数はrobs=kCOまで減少する。 R状態ヘモグロビンについてのリガンド会合速度定数を、Matthewsら(Matthe ws,A.J.,Rohlfs,R.J.,Olson,J.S.,Tame,J.,Renaud,J.,およびNagai, K.(1989)J.Biol.Chem.264,16573-16583)に記載されるように決定した。R 状態ヘモグロビン一酸化炭素会合速度定数であるkCO'を2つの写真ストロボ(S unpack Auto 554,Sunpack Corporation,Woodside,NY)を用いるミリセカンド 装置を使用するフラッシュ光分解によって決定した。この装置を、3820 OLIS DA TA収集システム(On-Line-System,Inc.,Bogart,Georgia)に接続させた。R 状態ヘモグロビン酸素会合速度定数であるkO2'を、Tektronicsデジタルオシロ スコープモデル2430(Tektronics,Inc.,Beaverton,Oregon)に接続した300ns レーザー光分解システム(Phase R 2100B,Phase-R Corporation,New Durham, NH;Candela Corporationから入手可能のものと等価)を使用することによって 決定した。R状態ヘモグロビンコンフォメーションを、リガンド結合における最 後の工程(Hb4X3+X→HB4X4)を測定することのみによって保持した。これは、 十分に脱酸素化したヘモグロビンへの結合が予測される全体の吸収変化の1/10へ の吸収変化を減少させるために、中性密度フィルターを使用して10%光分解での リガンド結合の速度を測定することによって達成した。簡単な二分予反応(すな わち、グロビン+リガンド)について、リガンド濃度において観察される速度の 実施例3 自動酸化速度の測定 ヘモグロビン酸化速度を、Zhangら(Zhang,L.,Levy,A.,およびRifkind,J .M.(1991)J.Biol.Chem.266,24698-24701)によって記載されるように決定 した。pH 7.0でのヘモグロビン酸化は比較的遅い(2〜3日)ので、ほとんどの 反応を、反応を速めそしてより正確な速度定数を得るために、pH 6.0での0.1mM KPO4、1mM EDTA中で行った。この反応を、約6.0mMヘムタンパク質、3mmol/mol カタラーゼのヘム、および3mmol/molヘムスーパーオキシドを含む1mlキュベッ ト中で行った。ヘモグロビン自動酸化時間経過は、pH 6および7.4の両方で37℃ にて一次指数関数式に適合した。 実施例4 ヘミン解離定数の測定 ヘミンの解離の時間経過を、Hargroveら(Hargrove,M.S.,Singleton,E.W. ,Quillin,M.L.,Mathews,A.J.,Ortiz,L.A.,Phillips,G.N.,Jr.,およびO lson,J.S.(1994)J.Biol.Chem.269,4207-4214)によって開発されたH64Y/V 68Fアポミオグロビン試薬を使用して測定した。反応を、pH 5.0(酢酸ナトリウ ム)またはpH 7(リン酸カリウム)のいずれかで0.15M KPO4/0.45Mスクロース中 で37℃にて測定した。反応は、過剰のH64Y/V68Fアポミオグロビン(一般的に12. 0〜24.0μM)の存在下で約6.0μM(他に特定されなければ)メトモグロビンを含 んだ。H64Y/V68Fミオグロビンヘム損失試薬は、緑色を生じる普通でない吸収ス ペクトルを有する。反応は、以下によって記載され得る: ここで、Pは目的のグロビンを含むヘムを示し、Hはヘムに等しく、そしてYは H64Y/V68F変異体アポミオグロビンである。[P]および/または[Y]が>>[H]、d[ H]/dt〜0である場合、ヘミン解離の速度であるkHは以下によって与えられる: これは[Y]>>[P]の場合、robs=k-Hに減少させる(Hargrove,M.S.,Singlet on,E.W.,Quillin,M.L.,Mathews,A.J.,Ortiz,L.A.,Phillips,G.N.,Jr. ,およびOlson,J.S.(1994a)J.Biol.Chem.269,4207-4214)。 合計の反応用量は800μLであり、そして1cm経路長の1.0mlキュベットで測定 した。CPS-260温度コントローラーに接続した6セルShimadzu 2101 UV-Vis分光 光度計(Shimadzu Scientific Instruments,Columbia,Maryland)を使用して 、特定の時間間隔で吸収変化を収集した。まず、目的のヘモグロビンをフェリシ アニドで酸化した。1グレインのフェリシアニドを、約50μLの1mMオキシ-また は一酸化炭素ヘモグロビンに添加した。次いで、タンパク質溶液を、室温にて10 .0mMリン酸カリウム(pH 7)で平衡化したG25 SEPHADEX(Sigma Chemical Compa ny,St.Louis,Missouri)カラムに流した。緩衝液およびH64Y/V68Fアポミオグ ロビン試薬を、目的の第2鉄タンパク質の添加前に、分光光度計中で特定の温度 で平衡化した。時間経過は、IGOR Pro分析プログラム(Wavemetrics,Inc.,Lak e Oswego,Oregon)を使用して、一次または二次指数関数式に適合した。ヘモグ ロビン時間経過は、等しい吸収変化を示すαおよびβサブユニットからのヘミン 損失での二相であった。ヘミン損失の速相(fast phase)は、βサブユニットから のヘミン損失、そして遅相(slow phase)はαサブユニットからのヘミン損失によ るものであった。ヘモグロビン時間経過は、等振幅の2指数関数式に適合した。 時 折、時間経過は、タンパク質変性によって引き起こされる遅い吸収ドリフトを示 す第3相での3指数関数式に適合した。 実施例5 ヘモグロビンDヘリックス変異体のヘミン損失速度 ヘモグロビンDヘリックス変異体を発現し、そして実施例1に記載のように精 製した。リガンド結合を、実施例2に記載のように測定した。表1に示すように 、βサブユニットからのDヘリックスの除去またはαサブユニットへの5残基配 列の付加は、R状態ヘモグロビンにおいてO2およびCO結合における中等度の効 果のみを有した。最大の変化を、二重変異体、α(+D)β(-D)について観察し、こ れについてαおよびβのKO2およびKCO値は、野生型ヘモグロビンについての対 応する定数よりも、それぞれ2および4倍少なかった。 ヘミン解離を、実施例4に記載のように測定した。βサブユニットからのDヘ リックスの除去は、ヘミン解離の速度における顕著な効果を有する。α(野生型) β(-D)ハイブリッドにおいて、βサブユニットからのヘミン損失の速度は3倍よ りも大きく増加し、そしてαサブユニットからの速度は8倍増加した(表2)。 α(野生型)β(-D)アポグロビンはまた、非常に不安定であり、そしてヘミン損失 アッセイの間に沈殿する傾向があり、これは遅相の正確な測定を困難にした。理 論によって結びつけなければ、これらの結果は、Dヘリックスの除去がヘミン損 失の速度を増加させ、そしてβサブユニットのアンフォールディングを引き起こ すことを示唆する。この部分的に変性した半グロビンにおける残りのホロαサブ ユニットを、天然のβグロビンパートナーとの相互作用の損失のために不安化し 、そして迅速にヘミンを損失した。単離したαサブユニットは、ヘモグロビン中 のβサブユニットに連結される場合よりも非常に迅速にヘミンを損失した(pH 7 、37℃にて、それぞれ、約15〜20時間-1対0.3〜0.5時間-1)。さらに、α(野生 型)β(-D)ヘモグロビンの発現収量は、野生型および任意の他のDヘリックスヘ モグロビン変異体の収量よりも非常に少なく、これは不安定なアポグロビンおよ び少ないヘム結合を示した。 αグロビンへのDヘリックスの挿入は、野生型βサブユニットがヘモグロビン ハイブリッド中に存在する場合、ヘミン損失の速度に効果がなかった。しかし、 α(+D)β(-D)二重変異体は、α(野生型)β(-D)よりもヘミン損失および沈殿に著 しく耐性であった(表2)。さらに、α(+D)β(野生型)ヘモグロビンの発現収量 は、α(野生型)β(野生型)よりも約3倍多く、その両方が不安定なα(野生型)β (-D)変異体の収量よりも非常に多かった。したがって、αDヘリックスの付加は ヘモグロビンからのヘミン損失の速度を減少させなかったが、αアポグロビン構 造を安定化した。理論によって結びつけられなければ、安定化したαアポグロビ ンは、α(野生型)β(-D)変異体と比較して、α(+D)β(野生型)ハイブリッドの増 大した発現収量およびα(+D)β(-D)ハイブリッドからのヘミン損失の低い速度を 説明し得る。 組換えヘモグロビンの自動酸化の全体の速度をまた表2に列挙する。これらの データは、βサブユニットからのDヘリックスを除去することもまた低pHでヘモ グロビン自動酸化を約5倍増大させることを示す。 表1の結果は、ヘモグロビンβサブユニット中のDヘリックスが、酸素結合を 調節することにほとんど役割を果たしていなくても、ヘミン損失および自動酸化 の阻害に必要とされることを示す。αサブユニットへのDヘリックスの付加は、 野生型βサブユニットを有するヘモグロビンからのヘミンの損失の速度に変化を 引き起こさなかった。一方、αサブユニットからのヘミンの損失の速度は、β(- D)サブユニットと対にした場合、ほぼ10倍増加し、そしてαDヘリックスの存在 は、α(+D)β(-D)ハイブリッドからのヘミンの損失の速度に顕著な減少を生じた 。αサブユニットがβサブユニットから完全に分離された場合、ヘミン解離の速 度は、ダイマーまたはテトラマーのいずれかにおいてαサブユニットについて観 察される速度を比較して、約100倍増加した。 実施例6 α(CE3)およびβ(CD3)変異体ヘモグロビン αCE3およびβCD3変異体を、実施例1に記載のように構築し、発現し、そして 精製した。リガンド結合、自動酸化速度、およびヘミン解離速度を、それぞれ実 施例2、3、および4に記載のように測定した。組換えR状態ヘモグロビンへの O2およびCO結合の速度および平衡化パラメータを、表3に示す。αHis45(CE3) →Arg、ならびにβSer44(CD3)→His、Arg、およびLys置換は、それぞれKO2およ びKCOでほとんど変化を引き起こさない。最も顕著な効果は、α(Arg44CE3)β( 野生型)のαおよびβサブユニットについてのKCOの小さな(約2倍)増加であ った。これらのヘモグロビン変異体についての自動酸化速度定数を、pH 6で決定 した(表4)。時間経過は、2つのタイプのサブユニットの存在にもかかわらず 、このpHで単相であった。αHis45(CE3)→Arg、ならびにβSer44(CD3)→Arg、Ly s、およびHis置換は、自動酸化における適度の効果のみを有した。αArg45(CE 3)およびβArg44(CD3)変異体は、野生型オキシヘモグロビンの効果と比較して、 最大の効果であるkOXの約3倍の増加を示した。ミオグロビンで観察されるもの とは逆に、α45(CE3)およびβ44(CD3)の塩基性度を増加させることは、自動酸化 の速度を増加させた。 ヒトヘモグロビンの野生型およびCD3またはCE3変異体からのヘミン解離につい ての時間経過に適合させた値(k-H)を表4に示す。αHis45(CE3)→Arg変異は 、いずれのサブユニットからのヘミン解離の効果を有さなかった。同様に、βSe r44(CD3)→ArgおよびLys置換は、ヘミン損失に関して保存的であるようである。 一方、表4は、βSer44(CD3)→His変異が、βサブユニットからのヘミン損失の 速度の顕著なおよび特定の3〜5倍の減少を引き起こすことを示す。 メトモグロビンからのヘミン解離の相対速度は、テトラマー<ダイマー<<モ ノマーである。α1β1ダイマーへの凝集は、αサブユニットについてのk-Hの顕 著な減少を引き起こしたが、ヘミンを迅速に損失するβサブユニットには小さい 効果のみを有した(約15時間-1)。テトラマー中のα1β2界面の形成は、βサブ ユニットについてのk-Hの10倍減少を引き起こした。α(野生型)β(His44CD3)の βサブユニットは、非常に低いおよび非常に高いヘム濃度の両方で、野生型ヘモ グロビンのβサブユニットよりも3〜5倍遅くヘミンを損失した(表5)。k-H タ゛イマー およびk-H テトラマーの適合させた値は、それぞれ、βHis44(CD3)サブユニット について10および0.4時間-1であり、そして野生型サブユニットについては30お よび2時間-1であった。αサブユニットは、βサブユニットにおける変異の不在 の存在に関係なく、ダイマーおよびテトラマーの両方について約0.5時間-1のk- 11 値を示した。約6μMヘムでの変異体ヘモグロビンについてのダイマーへのテ トラマー解離の平衡定数の適合させた値は、0.45Mスクロース/0.15Mリン酸カリ ウム、pH 7中で37℃での、約8mMヘムでの野生型ヘモグロビンへの適合について 得られた値とほぼ同一であった。 実施例7 αLeu29(B10)およびβLeu28(B10)変異体ヘモグロビン αLeu29(B10)→Ala,Val、およびIle、ならびにβLeu28(B10)→Ala、Val、Ile 、およびTrp置換を、実施例1に記載のように構築し、発現し、そして精製した 。リガンド結合、自動酸化速度、およびヘミン解離速度を、それぞれ実施例2、 3、および4に記載のように測定した。Leu(B10)→Phe変異を、1995年1月30日に 出願された同時係属出願第08/381,175号(参考として本明細書に援用される)に 記載の方法に従って、構築し、発現し、そして精製した。 表6は、R状態ヘモグロビン内のαおよびβサブユニットへのO2およびCO結 合についての測定した速度および平衡化定数を列挙する。Leu(B10)→Val変異は 、3つのグロビンすべてについてのKO2への効果をほとんど有さなかった。Leu2 9(B10)→Val変異は、k'COでの大きな9倍の減少およびkCOでの3倍の増加のた め、αグロビンについてのKCOでの劇的な25倍の減少を引き起こした。逆に、こ の変異は、βグロビンでのKCOにおける効果をほとんど有さなかった。Leu(B10) →Ile置換は、αグロビンでkO2'およびkO2の両方を減少させたが、酸素親和性 にはほとんど変化がなかった。驚くべきことに、βグロビン中のIle28(B10)は、 酸素解離においてに非常に大きな効果を有し、kO2およびKO2をそれぞれ約7倍 および約3倍減少させた。また、最も劇的な効果を、KCOについて観察した。 Leu(B10)→Pheのサイズを増加させることによって、R状態αおよびβサブユ ニットについてそれぞれk'O2を30倍および10倍減少させた(表6)。Phe(B10) 変異はまた、顕著に異なる程度であるが各グロビンにおいてkO2を遅くした。Le u(B10)→Phe置換は、野生型の値と比較して、R状態αサブユニットおよびR状 態βサブユニットについてそれぞれkO2を40および3倍減少させた。結果として 、KO2はR状態αサブユニットについては約3倍増加したが、KO2はR状態βサ ブユニットについては約2倍減少する。Leu(B10)→Phe置換はまた、各グロビン において異なってkCO影響した。CO親和性は、R状態αサブユニットについては 劇的に60倍減少し、R状態βサブユニットについては13倍減少した。 βLeuB10→Trp変異は、kO2'で5000倍の減少およびkO2で60倍減少のため、KO2 で75倍減少を生じた。この変異はまた、kCO'で700倍の減少およびkCOで65倍 の減少を生じ、KCOで40倍の減少を引き起こした。 aこれらの測定を、pH 7.4および25℃で行った。 ヘモグロビンB10変異体からの自動酸化およびヘミン解離についてのデータを 表7に示す。Leu29(B10)→Ala、Val、およびIle置換は、αサブユニットからの ヘミン解離の速度をそれぞれ2、6、および4倍増加させた。逆に、βグロビン におけるLeu28(B10)→ValおよびIle置換は、k-Hを3〜4倍減少させた。αおよ びβVal(B10)置換は、pH 6でヘモグロビン自動酸化の速度を約2倍増加させた。 興味深いことに、αIle28(B10)変異体はkOxを4倍増加させたが、βIle29(B10) は対応する野生型サブユニットと比較してほとんど効果を有さなかった。 αおよびβサブユニットにおけるLeu(B10)→AlaおよびVal変異体は、野生型ヘ モグロビンと比較してタンパク質発現量で顕著な減少を引き起こした。安定性に おけるこの減少は、Ala置換についてより大きかった。それにもかかわらず、Ala およびVal(B10)置換は、自動酸化およびヘミン解離に小さな効果のみを有し、そ してβVal28(B10)変異体は、βサブユニットについてヘミン保持を実際に増加さ せた。 an.d.=データを収集していない 実施例8 一定の変異体のヘミン解離速度を、以下の表8に示す。すべての決定を、10μ Mアポミオグロビンを使用した5μMトータルヘミンで行った。反応を、他に指示 がなければ、0.45Mスクロース/0.15Mリン酸ナトリウム、pH 7.0、37℃、および n=1で行った。観察された速度を、等振幅2指数関数モデル、非制約2指数関 数モデル、または一次指数関数のいずれかを使用する分析によって評価した。 各々の場合において、より速い速度をサブユニットに割り当てた。しかし、観 察された速度がコントロール分子に比較して顕著に低いので、この割り当ては不 正確であり得る。特定のサブユニット型への厳密な割り当てに関わらず、実験的 観察が残される:これらの変異は、ヘのグロビン由来のヘミン解離の観察された 速度を減少し、これは、変異がグロビン−ヘミン複合体の安定性を減少させるこ とを示している。 SGE3001の反応速度が非常に遅いので、1つの半減期の一部のみを収集した。 したがって、示された速度は、真の速度の評価よりも高い。現在のデータセット については、使用した2つのモデルのそれぞれは、比較できる質および同様の速 度の適合を得た。 本発明の上の記載は、例示および説明の目的の例である。変更および改変が本 発明の精神および範囲を逸脱することなく可能であることは、当業者に明らかで ある。以下の請求の範囲がこのような変更および改変のすべてを包含すると解釈 されることが意図される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN, CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G E,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR ,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV, MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,P L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK ,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ, VN (72)発明者 ハーグローブ,マーク エス. アメリカ合衆国 テキサス 77025,ヒュ ーストン,エルムリッジ ドライブ 3311

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.ヘム損失を減少させる変異を有するヘモグロビンのサブユニットのアミノ 酸配列を改変する工程を包含する、ヘモグロビン中のヘム損失を減少させる方法 であって、該変異が、以下からなる群より選択される、方法: (a)該ヘモグロビンのαサブユニットへのDヘリックス領域の付加; (b)該ヘモグロビンのβサブユニットにおける以下のアミノ酸残基の改変:Leu 28(B10)、Met32(B13)、Thr38(C4)、Phe41(C7)、Phe42(CD1)、Ser44(CD3)、Phe45 (CD4)、Dヘリックス全体、His63(E7)、Gly64(E8)、Lys66(E10)、Val67(E11)、A la70(E14)、Leu88(F4)、Leu91(F7)、His92(F8)、Leu96(FG3)、Val98(FG5)、Asn1 02(G4)、Phe103(G5)、Leu106(G8)、Leu110(G12)、Gly136(H14)、Val137(H15)、 またはLeu141(H19)、ここで、該βサブユニットアミノ酸残基は、ヒトヘモグロ ビンの天然のβグロビンアミノ酸配列によって同定される;および (c)該ヘモグロビンのαサブユニットにおける以下のアミノ酸残基の改変:Leu 29(B10)、Leu31(B13)、Thr39(C4)、Tyr42(C7)、Phe43(CD1)、His45(CD3)、Phe46 (CD4)、His58(E7)、Gly59(E8)、Lys61(E10)、Val62(E11)、Ala65(E14)、Leu83(F 4)、Leu86(F7)、His87(F8)、Leu91(FG3)、Val93(FG5)、Asn97(G4)、Phe98(G5)、 Leu101(G8)、Leu105(G12)、Ser131(H14)、Val132(H15)、またはLeu136(H19)、こ こで、該αサブユニットアミノ酸残基は、ヒトヘモグロビンの天然のαグロビン アミノ酸配列によって同定される。 2.前記変異が、前記αサブユニットへのDヘリックス領域の付加である、請 求項1に記載の方法。 3.前記変異が、前記βサブユニットからの前記Dヘリックス領域の除去をさ らに包含する、請求項2に記載の方法。 4.前記変異が、以下のようなαまたはβサブユニット中のアミノ酸残基の置 換である、請求項1に記載の方法:E11→Trp、E11→Leu、B10→Phe、B10→Trp、 G8→Phe、G8→Trp、CD3→His、E11→Phe、F4→Phe、H14→Leu、B10→Val、また はB10→Ile。 5.前記置換が前記βサブユニット中のCD3→Hisである、請求項4に記載の方 法。 6.βサブユニットの変異を含む変異体ヘモグロビンであって、該変異が、Th r38(C4)、Phe(C7)、Dヘリックス、Gly64(E8)、またはGly136(H14)においてであ る、変異体ヘモグロビン。 7.αサブユニットの変異を含む変異体ヘモグロビンであって、該変異が、Th r39(C4)、Gly59(E8)、またはSer131(H14)においてである、変異体ヘモグロビン 。 8.以下のようなヘモグロビンのβまたはαサブユニット中のアミノ酸残基を 置換することによって産生される変異体ヘモグロビン:CD3→His、F4→Phe、H14 →Leu、またはB10→Val。 9.前記置換が、前記βサブユニット中のCD3→Hisである、請求項8に記載の 変異体ヘモグロビン。
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