【発明の詳細な説明】
内部開始RNA翻訳の選択的阻止
本発明は、1994年10月11日出願の米国特許出願第08/321,427号明細書
の一部継続出願であり、その開示はそのまま援用される。本発明は、米国国立保
健研究所交付番号AI-18272、AI-27451およびAI-38056からの基金によって得られ
た。米国政府は本発明の当然の権利を有する。技術分野
本発明は、ある種のmRNAの翻訳の選択的阻止に関する。更に詳しくは、本
発明は、小RNAまたはその分子模擬体による、ピコルナウイルスRNAなどの
内部リボソームエントリー部位で開始されるmRNAの選択的阻止に関する。こ
のRNAまたは模擬体は、細胞タンパク質と特異的に相互作用して、内部リボソ
ームエントリー部位に対するそのタンパク質の結合を妨げ、それによってそのエ
ントリー部位での翻訳開始を阻止する。背景技術
ピコルナウイルスには、特に、小児麻痺を引き起こすポリオウイルス、および
風邪を引き起こすライノウイルスがある。ピコルナウイルスと同様の機序によっ
て複製するピコルナに関連したウイルスには、ヒト肝炎の主要な原因であるA型
およびC型肝炎がある。ポリオウイルスワクチンは利用可能であるが、ワクチン
接種が適切に用いられないところでは、いまだにポリオの症例が見られる。他の
ピコルナウイルスに対するワクチンは、例えば、ライノウイルスのウイルスコー
トタンパク質の高い突然変異性率のために不可能であることがある。したがって
、宿主細胞に対する毒性作用を伴うことなくピコルナウイルス複製を特異的に阻
止するための方法および組成物に対する要求が存在する。
ピコルナウイルス科の基本型メンバーであるポリオウイルスは、感染した細胞
の細胞質中で増殖する一本鎖のプラスセンスRNAウイルスである。そのRNA
ゲノムは、約7.500ヌクレオチドを含み且つ250kDaポリタンパク質を
コードする(キタムラ(Kitamura),N.ら Nature(1981)291:547-553およ
びラカニエロ(Racaniello),V.R.ら Proc Natl Acad Sci USA(1981)78
:4887-4891)。ポリオウイルスRNAの異常に長い5′非翻訳部位(5′UTR
)(750ヌクレオチド)は、極めて構造がはっきりしていて(スキナー(Skin
ner),M.A.ら J Mol Biol(1989)207:379-392;アゴール(Agol),V.
、Adv Virus Res(1991)40:103-180)且つ6〜8個上流にAUGを含むが、そ
れらの内で翻訳の開始に用いられると考えられるものはない(ペレティア(Pell
etier),J.ら J Virol(1988a)62:4486-4492)。
大部分の哺乳動物細胞mRNAの翻訳は、5′キャップ構造に対するリボソー
ムの結合に続いて、該リボーソームが適当なAUGに出会うまでmRNAを走査
することによって進行する(コザク(Kozak),M.Microbiol Rev(1983)47:1
-45)。対照的に、天然の無キャップポリオウイルスRNAの翻訳は、イニシエ
ーターAUG付近のリボソームの内部エントリーを必要とする機序によって媒介
されることが分った(ペレティア,J.ら Nature(1988)334:320-325)。最
近の研究は、リボソームの内部エントリーが、ポリオウイルスRNAの5′UT
R中のヌクレオチド320〜631間に位置した要素を必要とすることを実証し
た(ペレティア,J.ら、上記)。この配列要素は、リボソーム結合パッド(la
nding pad)(RLP)、またはより一般的に、内部リボソームエントリー部位
(IRES)と称された。多数の細胞ポリペプチドがIRES依存性翻訳に関係
していたが、翻訳の内部開始の正確な機序はまだ十分に理解されていない。
ポリオウイルスの他にも、多数の他のピコルナウイルスが、翻訳の開始のため
にこの新規の機序を用いることが示された(ジャン(Jang),S.K.ら Gene s Dev
(1990)4:1560-1572、ベルシャム(Belsham),G.J.ら J Virol(19
90)64:5389-5395、ジャクソン(Jackson),R.ら Trends Biochem Sci(199
0)15:477-483、ラズ(Luz),N.ら FEBS Letters(1990)269:311-314、ラ
ズ,N.ら Virology(1991)65:6486-6494、ボンドパッダーエ(Bandopadhyay
),P.K.ら J Virol(1992)66:6249-6256、ボーマン(Borman),A.ら
Virology(1992)188:685-696、ボーマン,A.ら Gen Virol(1993)74:177
5-1788)。2種類のピコルナ関連ウイルス、A型およびC型肝炎のRNAゲノム
は、翻訳開始のために内部リボソームエントリーを用いることが示された(コハ
ラ(Ko
hara),K.T.ら J Virol(1992)66:1476-1483およびグラス(Glass),M
.J.ら Virology(1993)193:842-852)。免疫グロブリン重鎖結合タンパク
質(Bip)をコードしている2種類の細胞mRNA、マウスアンドロゲン受容
体(32)およびショウジョウバエ(Drosophila)の触肢(antennapedia)もま
た、翻訳の内部開始を用いることが示された(メイスジャク(Macejak),D.
G.ら Nature(1991)353:90-94およびオー(Oh),S.K.ら Genes Dev(
1992)6:1643-1653)。
IRES依存性翻訳を用いるピコルナウイルスmRNAは全て、5′UTR中
のIRES配列の3′境界に位置したポリピリミジン区域を含有する。最近の実
証は、ポリオウイルス5′UTRのポリピリミジン区域とヌクレオチド586の
クリプティックAUGとの間の適当な間隔が、ウイルス翻訳にとって重要である
ことを示している(ジャクソンら(1990年、上記)、ジャンら(1990年、上記)
、ピリペンコ(Pilipenko),E.V.ら Cell(1992)68:119-131)。
ウサギ網状赤血球溶解産物中のポリオウイルスmRNAの正確な翻訳には、ヒ
ーラ細胞タンパク質が必要であり、翻訳の内部開始における細胞タンパク質の関
与が示される(ブラウン(Brown),B.A.ら Virology(1979)97:376-405;
ドーナー(Dorner ),H.A.ら J Virol(1984)50:507-514)。50kDa
タンパク質は、ポリオウイルス1型RNA中のヌクレオチド186〜221間に
位置したRNAステム−ループ構造と相互作用することが示された(ナジタ(Na
jita),L. Proc Natl Acad Sci USA(1990)87:5846-5850)。この結合の生
理学的意義はまだ不明である。
ウサギ網状赤血球中よりもヒーラ細胞中で豊富なp52と称されるもう一つの
タンパク質は、ポリオウイルス2型RNAのヌクレオチド559〜624間のス
テム−ループ構造に対して特異的に結合することが分った(ミーロビッチ(Meer
ovitch),K.ら Genes Dev(1989)3:1026-1034)。このp52タンパク質は
、ヒトLa自己抗原と同一であると考えられる(ミーロビッチ,K.ら J Viro l
(1993)67:3798-3807)。この核タンパク質は、自己免疫障害エリテマトーデ
スの患者からの抗体によって認識され、その核からポリオウイルスに感染したヒ
ーラ細胞の細胞質中へ浸出する。La抗体によって免疫衰弱した(immunodeplet
ed)
細胞抽出物は、キャップ非依存性翻訳を促進することができないし、そして精製
Laタンパク質の外部からの添加は、p52をほとんどまたは全く含まない網状
赤血球溶解産物中のポリオウイルスRNAの異常な翻訳を訂正する(ミーロビッ
チら(1993年、上記))。
紫外線架橋実験は、もう一つの細胞タンパク質p57が、脳心筋炎(EMC)
ウイルス、口蹄疫ウイルス、ライノウイルス、ポリオウイルスおよびA型肝炎ウ
イルスのIRES要素と相互作用することを実証した(ジャンら、1990年、上記
;ボロウジャギン(Borovjagin),A.V.ら Nucleic Acids Res(1991)19:
4999-5005;ラズら、1991年、上記;ペストーバ(Pestova),T.V.ら J Vi rol
(1991)65:6194-6204;ボーマンら、1993年、上記、およびチャン(Chang)
,K.H.ら J Virol(1993)67:6716-6725)。最近になって、EMCVのI
RESに対するp57結合は、ポリピリミジン区域結合タンパク質(PTB)の
それと同一であることが実証されたが、おそらくは、それは核スプライシングに
おいてある役割を果たしている(ヘレン(Hellen),C.U.T.ら Pr oc Natl Acad Sci USA
(1993)90:7642-7646)。抗PTB抗体は、EMCVおよ
びポリオウイルスRNAの翻訳を阻止するので、PTBは、IRESに支配され
た翻訳に直接的に関与しているらしい。
更に、分子量が38および48kDaの2種類の他の細胞タンパク質は、ポリ
オウイルスのヌクレオチド286〜456にわたるRNA構造と特異的に相互作
用することが示された。これら2種類のタンパク質は、網状赤血球溶解産物中よ
りも多量にヒーラ細胞中に存在することが報告され、ポリオウイルス翻訳に特異
的に関与していると考えられる(ゲブハード(Gebhard),J.R.ら J Virol
(1992)66:3101-3109)。もう一つの54kDaタンパク質は、ヌクレオチド4
56〜626間の部分に架橋し且つ全mRNAの翻訳に必要とされる(ゲブハー
ドら、1992年、上記)。最近の報告は、ヒトライノウイルスRNAのIRES依
存性翻訳における97kDaタンパク質の役割を示している(ボーマンら、1993
年、上記)。RNA−タンパク質複合体形成は、更に、ポリオウイルスRNAの
ヌクレオチド98〜182および510〜629を包含する部分によって実証さ
れた(デル・アンジェル(del Angel),P.A.G.ら Proc Natl Acad Sci
USA
(1989)86:8299-8303)。
総合すると、上記の結果は、内部開始をもたらす細胞因子とRNA配列および
/または二次構造との直接的相互作用を必要とするピコルナウイルス翻訳の機序
と一致する。この機序における結合タンパク質の作用は知られていないが、トラ
ンス作用タンパク質は、リボソームがmRNAに入るように指示することができ
るしまたはRNA構造を変更してリボソーム結合を促進することができる。
前の研究において、本発明者は、酵母細胞が in vivo でも in vitro でもポ
リオウイルスRNAを翻訳することができないということ、および翻訳のこの欠
如が、ウイルスRNAの5′UTRを必要とする選択的翻訳阻止を表わしている
ということを示した(コワード(Coward),P.ら J Virol(1992)66:286-29
5)。その阻止作用は、ポリオウイルスRNAを翻訳するヒーラ細胞抽出物の能
力をも阻止することができる酵母溶解産物中に存在するトランス作用因子による
ことが分った。このインヒビターの初期の特性決定は、その活性が熱安定性で、
プロテイナーゼK消化、フェノール抽出およびDNアーゼ消化に耐性であるが、
RNアーゼに対しては感受性であることを示した(コワードら、1992年、上記)
。発明の開示
本発明は、内部リボソームエントリー部位で開始され且つその部位に対するタ
ンパク質因子の結合を必要とする、ポリオウイルスRNAなどのmRNAの翻訳
を阻止する方法および組成物に関する。本発明は、内部開始翻訳を阻止するがキ
ャップ依存性翻訳を阻止しない酵母S.セレビシエ(cerevisiae)からの60ヌ
クレオチドのRNAの識別に基く。酵母インヒビターRNA(I−RNA)は、
翻訳の内部開始に関与すると報告されている種々の細胞タンパク質を結合し、こ
のようなタンパク質に対する結合に関してポリオウイルスRNAの5′UTRと
競合し、そして宿主細胞タンパク質合成に影響を与えることなくウイルスmRN
Aの翻訳を選択的に阻止する。宿主細胞中で発現された場合、インヒビターRN
Aは、ポリオウイルスRNAの翻訳を特異的に且つ効率よく阻止し、それによっ
てこれらの細胞をウイルス感染から防護する。翻訳の阻止に対するこのRNAの
構造上の必要条件についての分析は、内部開始RNA翻訳の実質的により小さい
RNAインヒビターの設計、そして最終的には、このようなインヒビターRNA
の非RNA分子模擬体の設計を可能にした。
したがって、一つの態様において、本発明は、mRNAの翻訳を阻止する方法
であって、その翻訳が、mRNAの内部リボソームエントリー部位で開始され且
つその部位に対するタンパク質因子の結合を必要とする上記方法に関する。この
方法は、このmRNAを翻訳することができる系において、必要なタンパク質因
子に対して選択的に結合する阻止有効量の分子を提供し、それによってその因子
が該mRNAの内部リボソームエントリー部位に対して結合するのを妨げる工程
を含む。好ましい実施態様において、インヒビター分子は、35未満のヌクレオ
チドから成るRNAオリゴヌクレオチドまたはこのようなRNAオリゴヌクレオ
チドの構造模擬体である。
他の態様において、本発明は、異型ヌクレオチド配列に対して結合した35未
満のヌクレオチドから成るRNAオリゴヌクレオチドを含むRNA分子をコード
している発現構築物、および本発明の翻訳阻止法において用いるのに適当なイン
ヒビター分子であって、mRNAの内部リボソームエントリー部位によって示さ
れた分子間力の三次元配列を提供するインヒビター分子に関する。
更に詳しくは、本発明は、mRNAの翻訳を阻止する方法であって、その翻訳
が、mRNAの内部リボソームエントリー部位で開始され且つ該部位に対するタ
ンパク質因子の結合を必要とし、その方法が、対象mRNAを翻訳することがで
きる系において、該因子に対して選択的に結合する翻訳阻止有効量の分子を提供
し、それによって該因子が該mRNAの該部位に対して結合するのを妨げる工程
を含み、ここにおいて該分子は、35未満のヌクレオチドから成るRNAオリゴ
ヌクレオチド;および該RNAオリゴヌクレオチドの構造模擬体から成る群より
選択される上記方法に関する。
該方法の好ましい実施態様において、mRNAは、ピコルナウイルス、フラビ
ウイルス、コロナウイルス、B型肝炎ウイルス、ラブドウイルス、アデノウイル
スおよびパラインフルエンザウイルスから成る群より選択されるウイルスのウイ
ルスRNAである。特に、そのウイルスは、ポリオウイルス、ライノウイルス、
A型肝炎ウイルス、コクサッキーウイルス、脳心筋炎ウイルス、口蹄疫ウイルス
、エコーウイルス、C型肝炎ウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、アヒルB型肝
炎
ウイルス、ヒトB型肝炎ウイルス、水泡性口内炎ウイルスおよびセンダイウイル
スから成る群より選択されうる。或いは、阻止されるmRNAは、免疫グロブリ
ン重鎖結合タンパク質(Bip)をコードしている細胞mRNAのような、内部
リボソームエントリー部位を含む細胞mRNAでありうる。
本発明の方法において、インヒビター分子は、mRNAを翻訳することができ
る系に対して本発明のRNAオリゴヌクレオチドを加えることによって提供され
うる。或いは、該分子は、mRNAを翻訳することができる系に対して、異型ヌ
クレオチド配列に対して結合したRNAオリゴヌクレオチドを含むRNA分子を
加えることによって提供される。該RNAオリゴヌクレオチドはまた、対象mR
NAを翻訳することができる系でのRNAオリゴヌクレオチドの in situ 生産
のための発現構築物によって提供されうる。
対象mRNAを翻訳することができる、本発明の方法によって阻止される系は
、細胞を含まない系であってよいし、または対象mRNAを生産するウイルスに
感染している若しくは感染の危険がある宿主細胞であってよい。該宿主細胞は、
細胞培養物中かまたは、対象mRNAの翻訳が阻止される宿主動物中の哺乳動物
細胞であってよい。
もう一つの態様において、本発明は、mRNAの翻訳を阻止する分子であって
、その翻訳が、このmRNAの内部リボソームエントリー部位で開始され且つそ
の部位に対するタンパク質因子の結合を必要とする上記分子に関する。この分子
は、該因子に対して選択的に結合し、それによって該因子が該mRNAのリボソ
ームエントリー部位に対して結合するのを妨げる。本発明の分子は、35未満の
ヌクレオチドから成るRNAオリゴヌクレオチド;およびこのようなRNAオリ
ゴヌクレオチドの構造模擬体から成る群より選択される。好ましい実施態様にお
いて、この分子は、図1Aで示された配列;図1Aで示された配列に相補的な配
列;ポリオウイルスのヌクレオチド186〜220の配列(ステム−ループD)
;ポリオウイルスのヌクレオチド578〜618の配列(ステム−ループG);
ポリオウイルスのヌクレオチド260〜415の配列(ステム−ループE);ポ
リオウイルスのヌクレオチド448〜556の配列(ステム−ループF);およ
び該mRNAの該内部リボソームエントリー部位に対して該タンパク質因子を結
合する
免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(Bip)mRNAの配列から成る配列の群
より選択される少なくとも一部分を含む配列を有するRNAオリゴヌクレオチド
である。更に好ましい実施態様において、そのRNAオリゴヌクレオチドのヌク
レオチド配列は、リボヌクレオチド配列5′GCGCGGGCAGCGCA3′
である。他の態様において、本発明は、異型ヌクレオチド配列に対して結合した
請求項10のRNAオリゴヌクレオチドを含むRNA分子、およびRNA分子が
、異型ヌクレオチド配列に対して結合した本発明のRNAオリゴヌクレオチドを
含む該RNA分子をコードしている発現構築物に関する。
本発明は、更に、mRNAの翻訳を阻止する分子を識別するためのスクリーニ
ング検定であって、その翻訳が、このmRNAの内部リボソームエントリー部位
で開始され且つその部位に対するタンパク質因子の結合を必要とする上記検定を
提供する。このインヒビター分子は、翻訳開始因子に対して選択的に結合し、そ
れによって該因子が該mRNAのリボソームエントリー部位に対して結合するの
を妨げる。本発明の開始因子結合分子を識別する検定としては、固定化リガンド
結合検定、溶液結合検定、シンチレーション近接検定、二遺伝子雑種スクリーニ
ング検定等がある。
本発明の方法および分子の好ましい実施態様において、タンパク質因子は52
kDa La自己抗原である。更に、見掛けの分子質量が80、70および37
kDaの3種類の他のヒト細胞ポリペプチドを用いて、本発明のI−RNAの翻
訳阻止活性を示す分子を検出することができる。図面の簡単な説明
図1は、典型的な酵母翻訳インヒビターRNA(I−RNA)のヌクレオチド
配列、クローニング、発現および活性を示す。パネルA:60ヌクレオチド精製
酵母インヒビターRNAの配列[配列番号:1]は、材料および方法のところで
記載のように決定された。RNAの5′および3′末端を示す。パネルB:pS
DIRプラスミド発現I−RNAの略図。HindIIIおよびEcoRI制限
エンドヌクレアーゼ部位の位置を示す。T7およびSP6は、それぞれのプロモ
ーターの位置を示し、そして矢印は転写方向を示す。パネルC:I−RNA(セ
ンス転写物)は、HindIII制限酵素によって直鎖状にされたプラスミドp
SDIRから in vitro でT7 RNAポリメラーゼを用いて転写された。次に
、合成されたRNA 4マイクログラムを変性用ゲル添加染料(USバイオケミ
カルズ(Biochemicals))と混合し、55℃で10分間加熱した後、1.2%ア
ガロース上においてDNA試料の分析用条件下で1kbラダーDNA(BRL)
マーカー(M列)と一緒に分析した。ゲル上のI−RNAバンドの位置が示され
る。パネルD:ヒーラ細胞不含翻訳溶解産物中のpG3CATおよびp2CAT
RNAの in vitro 翻訳は、インヒビターRNAの不存在下または存在下で行
われた。ヒーラ細胞溶解産物80μgを含有する反応につき、pG3CATまた
はp2CAT RNA 2μgを加えた。部分精製された酵母インヒビターRN
A約4μgおよび合成インヒビターRNA1μgを、図で示されたそれぞれの反
応において用いた。CAT遺伝子産物の位置をくさび形によって示す。
図2は、酵母インヒビターRNAによる翻訳の阻止に対するポリオウイルス5
′UTR配列の必要条件を図示する。パネルA、BおよびC:ヒーラ細胞不含翻
訳溶解産物を用いて、各パネルの列の上に記載のRNAを翻訳した。in vitro
翻訳は、それぞれの欠失突然変異構築物について示されたようなキャップ付きか
または無キャップRNA約2μgを用いて、精製I−RNA 1μgの不存在下
または存在下で行われた。各反応は、ヒーラ細胞溶解産物タンパク質80μgを
含んだ。CATタンパク質の位置をパネルAの左側に示す。パネルD:略図は、
上の実験に用いられたポリオウイルス5′−UTR欠失突然変異構築物を示す。
垂直に線を引いた箱形は、SP6 RNAポリメラーゼプロモーターを表す。黒
一色の箱形は、ポリオウイルス5′−UTRからの配列を表し、そして斜線を引
いた箱形は、CAT遺伝子コーディング配列を示す。プラスミドの下の数は、欠
失の先端のヌクレオチドを表す。
図3は、I−RNAと細胞タンパク質との複合体の形成を図示するが、それは
、ゲル電気泳動中にI−RNAを遅延させ且つポリオウイルスRNAの5′−U
TRによって競合的に阻止される。32P標識I−RNAプローブを、以下の実施
例で記載の結合反応においてヒーラS−10抽出物と一緒にまたは用いることな
くインキュベートした。RNA−タンパク質複合体を、非変性用4%ポリアクリ
ルアミドゲル上で分析した。パネルAは、S−10抽出物不存在下の遊離プロー
ブ
(FP)(列2)からS−10存在下の複合体形成された形(C)までの移動度
変位を示す。バネルBは、未標識コンペティター(competitor)RNAとの競合
実験の結果を示す。結合反応において、10倍、50倍および100倍モル過剰
の未標識I−RNA(列3〜5)または未標識5′−UTR(列7〜9)を用い
た。列10の反応は、100倍モル過剰の未標識非特異的RNA(NSP)を含
んだ。
図4は、I−RNAが、ポリオウイルス5′−UTRと相互作用するタンパク
質を結合することを示す。ヒーラ細胞タンパク質による32P標識I−RNAの紫
外線架橋は、以下の実施例で記載のように行われた。パネルA:左側の数は、I
−RNAと相互作用するタンパク質のおよその分子質量を表す。競合実験に対し
ては、それぞれの結合反応において100倍モル過剰のそれぞれの未標識コンペ
ティター(competitor)RNAを加えた。用いられたコンペティターRNAは、
I−RNA(列3)、5′−UTR(列4)および非特異的(Nsp)RNA(
列5)であった。パネルB:左側の数は、タンパク質マーカー(BRL)(列M
)の分子質量を表す。右側の数は、標識I−RNAプローブに対して架橋する各
タンパク質の分子質量を表す。結合反応において、I−RNA(列3)、UTR
559−624RNA(列4)および非特異的(Nsp)RNA(列5)などの
100倍モル過剰の未標識コンペティターRNAを用いた。
図5は、異なった構造のドメインによる細胞タンパク質との可能な相互作用部
位を示すポリオウイルスRNAの5′UTRの予測される二次構造を図示する。
それらの可能な相互作用部位(括弧内のヌクレオチドによって示される)を有す
る細胞タンパク質の分子質量を示す。図は、ピリペンコら(1992年、上記)、ジ
ャクソンら(1990年、上記)およびディルジン(Dildine),S.L.ら J Vir ology
(1992)66:4364-4376によって公開された二次構造予測の修飾された変形
である。
図6は、32P標識I−RNA、5′UTR RNA、ステム−ループSL−G
およびSL−D RNAプローブに対するヒーラ細胞タンパク質の紫外線架橋を
図示する。パネルA:左側の数は、タンパク質マーカー(列M)の分子質量を表
す。I−RNA(列1、2)、5′UTR RNA(列3、4)、ステム−ルー
プG RNA(列5、6)およびステム−ループD RNA(列7、8)などの
個々の32P標識RNAプローブを、結合反応においてヒーラS−10抽出物と一
緒に(列2、4、6、8)かまたは用いることなく(列1、3、5、7)インキ
ュベートした後、紫外線架橋およびゲル分析を行った。パネルAの右側の数は、
架橋したタンパク質のおよその分子質量を表す。パネルB:列1および2それぞ
れの32P標識ステム−ループSL−G(UTR559−624)およびSL−D
(UTR178−224)RNAを、ヒーラS−10抽出物と一緒にインキュベ
ートし、架橋し、そして平行して分析して、架橋したタンパク質の移動度を比較
した。右側の数は、くさび形によって示されたタンパク質の推定の分子質量を表
す。
図7は、I−RNAが、タンパク質結合に関してステム−ループSL−Gおよ
びSL−D両方と競合することを示す。紫外線架橋実験で用いられた32P標識R
NAプローブを各パネルの上部に記載する。パネルAの左側の数は、列Mのタン
パク質マーカーの分子質量を示す。パネルA:列1、抽出物なし;列2、未標識
コンペティターRNA不含抽出物;列3、未標識5′UTRコンペティター;列
4、未標識I−RNAコンベティター;列5,未標識ステム−ループSL−G(
すなわち、UTR559−624);列6,未標識SL−D(すなわち、UTR
178−224);列7、未標識非特異的RNA;列8、未標識SL−B RN
A(すなわち、UTR51−78);列9、未標識SL−C RNA(すなわち
、UTR124−162)。パネルB:列1、抽出物なし;列2、未標識RNA
不含抽出物;列3、未標識5′SL−G RNAコンペティター;列4、未標識
I−RNAコンペティター;列5,未標識5′SL−D RNAコンペティター
;列6,未標識非特異的RNAコンペティター;列7、未標識SL−B RNA
;列8、未標識SL−C RNA。パネルC:列1、抽出物なし;列2、未標識
コンペティター不含抽出物;列3、未標識SL−Dコンペティター;列4、未標
識I−RNAコンペティター;列5、非特異的RNA;列6、未標識SL−Gコ
ンペティター;列7、未標識SL−B RNA;列8、未標識SL−C RNA
。くさび形は、下部から上部までそれぞれ52,54および57kDaの分子質
量のタンパク質とのタンパク質−ヌクレオチジル複合体を示す。
図8は、I−RNAが、in vitro での翻訳の内部開始を阻止することを実証
する。パネルA:リポーター遺伝子に対して結合したBip mRNAの5′U
TRを含有する構築物pBIP−LUC(ルシフェラーゼ)を、酵母インヒビタ
ーの不存在下(列1)または存在下(列2)において、ヒーラ細胞溶解産物中に
in vitro で翻訳した。対照として、構築物pG3CATもまた、酵母インヒビ
ターの不存在下(列3)または存在下(列42)で翻訳した。生産物をSDS−
14%ポリアクリルアミドゲル上で分析した。左側のくさび形は、ルシフェラー
ゼ遺伝子産物(LUC)の位置を示し、そして右側のくさび形は、CAT遺伝子
産物(CAT)を示す。パネルB:TMEV 5′UTRに隣接したCAT遺伝
子およびルシフェラーゼ遺伝子を含有するビシストロン構築物pPB310を、
I−RNAの不存在下(列1)または存在下(列2)において、ヒーラ細胞溶解
産物中にin vitro で翻訳した。生産物をSDS−14%ポリアクリルアミドゲ
ル上で分析した。左側のくさび形は、CAT遺伝子の産物(CAT)およびルシ
フェラーゼ遺伝子産物(LUC)の位置をを示す。
図9は、I−RNAが、in vivo でポリオウイルスRNAの翻訳を阻止するこ
とを示す。ヒーラ細胞の単層を、ウイルスRNA単独によって、I−RNA単独
によって、またはウイルスRNAおよびI−RNA両方によってトランスフェク
ションした。トランスフェクション後、細胞を35S−メチオニンによって標識し
、そして in vivo で標識されたタンパク質を、以下の実施例で記載のように、
直接的に(パネルA)かまたは抗キャプシド抗体による免疫沈降後に(パネルB
)SDS−14%ポリアクリルアミドゲル上で分析した。パネルA:それぞれの
トランスフェクション反応に対して加えられたRNAは、図で示された通りであ
る。パネルB:パネルは、パネルA、列1〜5で示されたトランスフェクション
反応からの免疫沈降した in vivo 標識タンパク質を示す。ポリオウイルスキャ
プシドタンパク質の位置をパネルBの左側に示す。
図10は、コンピューターで予測された酵母インヒビターRNAの二次構造を
図示する。パネルAおよびBは、RNAの二つの可能な二次構造を示す。数は、
RNAの5′末端からのヌクレオチドの位置を表す。それぞれの予測された構造
について計算された自由エネルギーをそれぞれの構造の下に与える。
図11は、酵母I−RNAが、in vitro において内部リボソームエントリー
部位(IRES)に媒介される翻訳を特異的に阻止することを示す。(A)ヒー
ラ細胞抽出物におけるビシストロン構築物からのIRESに媒介される翻訳のI
−RNAによる阻止。ルシフェラーゼ(Luc)の合成は、ウイルスIRES要
素から内部開始され、そしてCATのそれは、Cap依存性方式で開始される(
5′Cap−CAT−IRES−LUC3′)。列1、4、5および7は、I−
RNAを含まなかった。列2、3、6および8は、I−RNA 1μgを含んで
いた。(B)免疫グロブリン重鎖結合タンパク質(Bip、列1、2)、CAT
(列3、4、9、10)、P2 CAT(PV 5′UTR含有、列7、8)、
pGemLUC(列5、6)、pCITE(EMCV IRES含有、列11、
12)および酵母α36 mRNA(列13、14)の種々のモノシストロンR
NAによって媒介される in vitro 翻訳に対するI−RNAの作用。列1、3、
5、7、9、11、13は、インヒビターを含まなかった。列2、4、6、8、
10、12、14は、I−RNA 1μgを含んでいた。
図12は、ヒーラ52kDa I−RNA結合タンパク質がLa自己抗原と同
一であることを示す。二つの検定、すなわち、ゲル遅延に続くLa抗体による超
移動(左)および紫外線架橋に続くLa抗体による免疫沈降(右)を行って、ヒ
ーラ細胞タンパク質を結合した52kDa I−RNAをLa抗原として同定し
た。
図13は、アンチセンスI−RNAもまた、UTR(559−624)と相互
作用するヒーラ52kDaタンパク質を結合することを示す。32P標識I−RN
A(列1および2)またはアンチセンスI−RNA(列3および4)とヒーラ細
胞不含抽出物(S10)A 52kDaタンパク質との紫外線架橋は、I−RN
Aおよび、コールド(cold)UTR559−624(列2)によって競合されう
る抗I−RNA(くさび形で示された)の両方に対して複合体形成する。列Mは
、上部からそれぞれ43および29kDaの大きさの14C標識タンパク質分子
質量マーカーを含んだ。(A)ゲル遅延:32P標識I−RNAプローブを、ヒー
ラS10抽出物50μgと一緒に(列2および3)またはクローンから発現され
た精製Laタンパク質0.3μgと一緒に(列4および5)、Laタンパク質の
抗
体の存在下(列3および5)または不存在下(列2および4)でインキュベート
した。ヒーラS10または精製Laタンパク質と一緒に形成されたI−RNA−
タンパク質複合体(Cで表される)は両方とも、抗La抗体と一緒に超移動した
(SSによって示される)。前免疫IgGは、複合体(C)の泳動を変化させな
かった。(B)32P−I−RNA(列1、2および3)または32P UTR 5
59−624 RNA(列4、5および6)を、ヒーラS10タンパク質に対し
て(列2および5)または精製Laタンパク質に対して(列3および6)紫外線
架橋させた。RNアーゼ消化後、タンパク質−ヌクレオチジル複合体を、抗La
抗体を用いて免疫沈降させた。前免疫IgGは、52kDa(La)−I−RN
A複合体を認識しなかったが、疑問符によって示された約110kDaのところ
に泳動した非特異的タンパク質を認識した(データは示されなかった)。
図14は、キャップ依存性翻訳(CAT)ではなく内部開始による翻訳(P2
CAT)を特異的に阻止する場合のI−RNA配列を含有する14ヌクレオチ
ド長さRNA(BI−RNA)の阻止活住を示す。図は、I−RNA(列2)か
またはBI−RNA 1μg(列3および6)および2μg(列4)の存在下、
または不存在下(列1および5)でのP2 CAT(列1〜4)またはpCAT
(列2および6)構築物からのCAT遺伝子(くさび形によって示された)の翻
訳を示す。
図15は、図10で示されたような、コンピューターで予測された酵母インヒ
ビターRNAの二次構造の前後関係のI−RNA配列を含有する活性14ヌクレ
オチドBI−RNAの配列を図示する。パネルB中の実線は、図14で記載の内
部開始を用いる翻訳を阻止することが示されたBI−RNAの14ヌクレオチド
を包含する。BI−RNA中において、天然のI−RNA構造のヌクレオチド1
3は、慣用的なホスホジエステル結合によってヌクレオチド30に対して直接結
合している。
図16は、翻訳阻止活性について試験されたI−RNA欠失突然変異構築物を
図示する。突然変異部位のヌクレオチド位置を、それぞれの突然変異体について
示す。それぞれの突然変異体の名称を左端に挙げる。発明の実施態様
一般的な説明および定義
本発明の実施は、特に断らない限り、当該技術の範囲内の従来の生化学、免疫
学、分子生物学および組換えDNA技術を用いるであろう。このような技術は、
文献中で充分に説明されている。例えば、マニアティス(Maniatis)ら、Molecu lar Clonin:A Laboratory Manual
(1982);DNA Cloning :A Practical Approa
ch,IおよびII巻(D.グロバー(Grover)監修);Oligonucleotide Synthesi
s(N.ゲイト(Gait)監修、1984年);Nucleic Acid Hybridization(B.ヘ
イムズ(Hames)およびS.ヒギンス(Higgins)監修、1985年);Transcriptio
n and Translation(B.ヘイムズおよびS.ヒギンス監修、1984年);Animal
Cell Culture(R.フレッシュニー(Freshney)監修、1986年);パーバル(Pe
rbal)、A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)を参照されたい。
以下の用語は、本発明を記載する場合の以下に示された定義にしたがって用い
られるであろう。
DNA「対照配列」とは、集合的に、プロモーター配列、リボソーム結合部位
、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、上流調節ドメイン、エンハンサー等
を意味し、それは、集合的に、宿主細胞中のコーディング配列の転写および翻訳
に対して与えられる。
コーディング配列は、該コーディング配列の発現系が適当な宿主細胞中に包含
されている場合にその発現が起こる場合に、「機能的に結合」して配列を制御す
る。
「宿主細胞」は、外因性DNAまたはRNA配列を含むように修飾された、ま
たは含むように修飾可能である細胞である。これには、例えば、ウイルスに感染
した細胞または組換えDNA分子によって形質転換された細胞がある。
DNAまたはRNA構築物の「異型」部分は、天然の他の分子との関係が分ら
ない別の核酸分子中のまたはそれに対して結合したDNAまたはRNAの識別可
能なセグメントである。
翻訳インヒビター分子の識別
本発明は、mRNAの翻訳を阻止する方法であって、その翻訳が、そのmRN
Aの内部リボソームエントリー部位で開始され且つ該部位に対するタンパク質因
子の結合を必要とする上記方法に関する。該方法は、該mRNAを翻訳すること
ができる系において、該因子に対して選択的に結合する翻訳阻止有効量の分子を
提供し、それによってその因子が該mRNAの該リボソームエントリー部位に対
して結合するのを妨げる工程を含む。本発明の翻訳インヒビター分子は、35未
満のヌクレオチドから成るRNAオリゴヌクレオチドおよび該RNAオリゴヌク
レオチドの構造模擬体から成る群より選択される。
本発明による翻訳インヒビター分子の識別は、第一に、酵母S.セレビシエか
らの天然に存在するインヒビターRNAの60ヌクレオチド配列の単離および決
定によって例証される。このRNAは、例えば、ピコルナウイルスmRNAの内
部開始翻訳を阻止するがキャップ依存性翻訳を阻止しない。この小インヒビター
RNA(I−RNA)の単離および配列順序決定は、実施例1で記載される。イ
ンヒビターRNAの配列をコードしている合成DNAクローンの製造、およびT
7 RNAポリメラーゼを用いる転写による該合成クローンからのRNAの製造
は、実施例2で例証される。これらの方法は、当該技術分野において周知である
常套法を用いて、本発明の他のRNAオリゴヌクレオチドの製造に適応しうる。
本発明による、キャップ依存性翻訳にほとんど影響を与えることなく内部リボ
ソームエントリーによって開始される翻訳の選択的阻止は、IRES−および5
′キャップに媒介される翻訳開始部位両方を含む組換えRNA構築物を用いる i
n vitro の方法によって都合よく実証されうる。例えば、実施例3を参照された
い。或いは、または更に、内部開始翻訳の選択的阻止は、実施例7で記載された
ような別のウイルスmRNAの、または実施例8で例証される免疫グロブリン重
鎖結合タンパク質をコードしているmRNAなどの内部開始細胞mRNAの組換
えビシストロンmRNA構築物を用いて in vitro で実証されうる。
本発明の翻訳インヒビター分子は、内部リボソームエントリー部位での翻訳の
開始に必要とされるタンパク質因子に対して結合し、それによってその因子がm
RNAの該リボソームエントリー部位に対して結合するのを妨げることによって
、内部リボソームエントリー部位からの翻訳を選択的に阻止する。インヒビター
分子のこのような結合は、本発明の典型的な酵母I−RNAによるポリオウイル
スRNA配列およびヒーラ宿主細胞タンパク質因子間の複合体の破壊について実
施
例4で記載されたように、競合的結合法を用いて、必要なタンパク質因子および
選択されたmRNA間の複合体を破壊させることができる。更に、翻訳の内部開
始に必要なタンパク質因子に対する本発明のインヒビター分子の直接結合は、例
えば、実施例5において酵母I−RNA分子について記載された紫外線架橋法を
用いて都合よく実証されうる。
ウイルスmRNAの翻訳を in vivo で阻止する本発明のインヒビター分子の
能力は、実施例9で例証される、ウイルス複製および病原性作用を阻止する、酵
母I−RNAによるトランスフェクションされた細胞中でのポリオウイルスRN
A翻訳の阻止について示されたように、細胞培養物中で都合よく実証されうる。
したがって、本明細書中の一般的な指針および実施例に基き、ある与えられた
分子が、本発明の翻訳インヒビターの活性、すなわち、mRNAの翻訳の阻止で
あって、その翻訳が内部リボソームエントリー部位で開始され且つその部位に対
するタンパク質因子の結合を必要とする該翻訳の、該因子に対して選択的に結合
することによって該因子が対象mRNAの該リボソームエントリー部位に対して
結合するのを妨げることによる阻止を示すかどうかを常套法を用いて確認するこ
とができる。
酵母I−RNAに基く活性RNAオリゴヌクレオチドの識別
一つの好ましい実施態様において、本発明の翻訳インヒビター分子は、60未
満のヌクレオチドから成る、好ましくは35未満のヌクレオチド、更に好ましく
は25未満のヌクレオチド、そしてなお更に好ましくは15未満のヌクレオチド
から成る、典型的な酵母I−RNAの配列に基くRNAオリゴヌクレオチドであ
る。当該技術分野で知られているように、60ヌクレオチドより短い機能性I−
RNAは、慣用的な化学合成による製造に関しておよび拡散による自然のままの
細胞中へのそれらの侵入に関してより大きい効率を与えるので、タンパク質因子
結合による翻訳阻止に必要なI−RNAの最小配列を決定することは好都合であ
る。
酵母I−RNAの1個または複数のフラグメントが、本発明による翻訳阻止活
性を示すことを確認するために、慣用的な遺伝子工学技術を用いて、I−RNA
の5′および3′両末端から欠失突然変異体を製追する。10、20または30
ヌクレオチドを、I−RNAの5′かまたは3′末端から一度に欠失させる。T
7 RNAポリメラーゼを用いる転写によってこれらのクローンから製造された
RNAを、本明細書中の実施例で記載のように、キャップ依存性翻訳ではなくI
RESに媒介される翻訳を阻止する能力について試験する。慣用法を用いても、
I−RNA分子中の8〜10ヌクレオチド配列の一組の欠失を生じる。
これらの体系的欠失法は、ウイルス翻訳および宿主タンパク質因子に対する結
合の阻止に必要な配列を識別するであろう。したがって、IRESに媒介される
翻訳を阻止するこのような突然変異体は、酵母I−RNAに対して結合すること
が分ったp52因子などのタンパク質因子、またはI−RNAに媒介されるウイ
ルス翻訳の阻止に関与している本明細書中で前述の他の因子(例えば、p57)
に対する結合活性の減損について試験されるであろう。
図12で図示されたように、酵母I−RNAに対して結合するp52因子は、
免疫学的検定によって示されたように、ヒトLa自己抗原と同一である。この同
一性は、更に、免疫沈降に続くI−RNAに対する組換えLaタンパク質の紫外
線架橋および抗La抗体とのLa−I−RNA複合体を超移動させる能力両方に
よって確証される(図12)。I−RNAに対するLaの結合が翻訳阻止に関係
しているということは、精製組換えLaタンパク質が、PV IRESに媒介さ
れる翻訳をインヒビターRNAの存在下において回復させることができるという
事実によって示される。完全長さまたは欠失したI−RNAに対して結合するお
よび本発明の他のインヒビター分子を識別するのに用いることができる更に別の
タンパク質因子を以下に記載する。
より選択的な突然変異分析を更に用いて、典型的な酵母I−RNAのような活
性I−RNAの一層大きい配列に基く本発明の活性オリゴヌクレオチドを識別す
ることができる。特に、酵母I−RNAの配列に対して正確に相補的な配列を有
するアンチセンスRNAは、p52を結合する場合にセンスI−RNA分子と同
程度に有効である。図13を参照されたい。酵母I−RNAの配列相同性は明ら
かでなく、ポリオウイルスRNA配列が、翻訳の開始に必要な宿主細胞タンパク
質因子を結合するということを総合したこの結果は、I−RNAの二次構造が、
翻訳の内部開始の阻止において決定的な役割を果たしうることを示唆する。した
がって、任意のRNAに相補的な配列の二次構造の多数の態様は、概して、同一
の鎖内塩基対合が元の配列中と同様に相補鎖で形成しうると考えられるので、配
列それ自体の二次構造と類似していると考えられる。
実際に、コンピューターで予測された2種類のI−RNAの二次構造が得られ
、それらは熱力学的に比較的安定であり、−27および−21Kcal/モルの
ΔGを有する(図10)。(これらの構造は、商業的に入手可能なDNASyS
と称されるソフトウェアを用いて予測されたが、他の同様のソフトウェアが広く
知られており且つ入手可能である。例えば、ピリペンコら(1992年、上記)、ジ
ャクソンら(1990年、上記)およびディルジン,S.L.ら(1992年、上記)を
参照されたい。これらの二次構造は、部分的にはポリオウイルスmRNA上のp
52結合部位に似ている。
更に、60ヌクレオチド長さの天然のI−RNAの二次構造(図10)は、典
型的なクローニング手順の際に生じた余分な11ヌクレオチドの追加によってほ
とんど変化しない。したがって、二次構造の適当な分析により、異型配列に対す
る本発明の活性RNAオリゴヌクレオチドの結合が、該オリゴヌクレオチドの二
次構造を脱安定化し、それによってその翻訳阻止活性を破壊するかどうかを予測
することができる。更に、必要な活性の保持は、本明細書中に記載の常套法を用
いて、任意の望ましいRNAオリゴヌクレオチドについて容易に確認することが
できる。
酵母I−RNAの予測された二次構造中の種々のループに対応するRNAオリ
ゴヌクレオチドを試験することにより、I−RNAの14ヌクレオチド長さフラ
グメントは、ポリオウイルスIRESに媒介される翻訳を特異的に阻止すること
が分った。図14を参照されたい。コンピューターで予測された二次構造中のル
ープを含むRNAオリゴヌクレオチドを試験することは、酵母I−RNAのヌク
レオチド30〜36に対して(慣用的な5′−3′ホスホジエステル結合によっ
て)共有結合したヌクレオチド7〜13から成る典型的な14ヌクレオチドフラ
グメントのような、より大きいI−RNA配列の非隣接部分を含有する活性RN
Aオリゴヌクレオチドの識別を可能にするということに注目すべきである。
酵母I−RNAの体系的欠失分析の実験結果を実施例10で例証する。この分
析は、PV IRESに媒介される翻訳を阻止するのに必要な最小I−RNA配
列が、ヌクレオチド30〜45間にあるらしいことを示している。この結論は、
二つの知見によって支持される。第一に、ヌクレオチド31〜45を除くI−R
NA配列全体を含む欠失突然変異体(I−3RNA)は、ウイルスIRESに媒
介される翻訳を阻止する場合に完全に不活性である。第二に、切断されたI−R
NA(nt30〜45、I−9RNA)は、相当な翻訳阻止活性を保持している
。しかしながら、I−9RNA配列を含有する25nt長さの切断されたRNA
(I−7RNA)は、特に、in vivo において更に活性であるらしい。更に短い
I−9RNAは、in vivo においてI−RNAと同程度の僅か50%活性であっ
た。I−7およびI−9RNAは両方とも、ステム・ループ配列を有する二次構
造を仮定することができる。明らかに、より小さい寸法のために、I−9RNA
は、細胞内のI−9RNAの安定性に影響を与えることがあるI−RNAよりも
はるかに安定性が少ない。既知のチオ誘導体または他の耐ヌクレアーゼ性ヌクレ
オチド類似体は、I−9RNAまたは細胞に対して外因的に与えられる本発明の
他のインヒビターRNAの安定性、したがって活性を増加させるのに用いること
ができる。I−RNAまたはその切断された誘導体の1種類または複数の構造は
、IRESに媒介される翻訳阻止において重要でありうる。I−7RNA(nt
26〜50)の3′末端に対する余分の10ヌクレオチドの追加が、その(I−
6RNA、nt26〜60)翻訳阻止活性を減少させるということは、本発明の
インヒビターRNAの3′末端を設計する場合に避けるべきであるこのRNAの
構造の変更を示すものでありうる。同様に、I−6RNAの5′末端に対する別
の5ヌクレオチドの追加は、翻訳を阻止するその(I−5、nt26〜50)能
力を劇的に減少させ、インヒビターRNA設計におけるこのような5′末端作用
を考える必要性が示される。
翻訳阻止の原因となる配列および二次構造を識別するための、例えば、p52
結合によるもう一つの代替法は、p52に対して結合したI−RNAのドメイン
がRNアーゼ消化に耐えるかどうかを、当該技術分野において知られている常套
法によって確認することである。この方法においては、32P−ボディー標識I−
RNAを、結合条件下において精製pR2と一緒にインキュベートする。得られ
た複合体を、ミクロコッカスヌクレアーゼまたはRNアーゼT1、T2およびA
の混合物によって消化する。次に、その混合物を、フェノール抽出およびエタノ
ール沈降後に、1個またはそれ以上の保護されたフラグメントについて分析する
。I−RNAの保護されたフラグメントを、例えば、商業的に入手可能な配列決
定用キットを用いて直接的に配列順序決定する。代わりの配列決定法は、保護さ
れたフラグメントを、I−RNAをコードしているcDNAとハイブリッド形成
させた後、そのハイブリッドの一本鎖部分を消化し、そしてRNA配列決定より
も比較的容易である保護されたDNAフラグメントの配列決定を行うことである
。次に、保護されたフラグメントを、本明細書中に記載のように、翻訳阻止およ
びタンパク質因子に対する結合に関する非特異的RNAとではなく未標識I−R
NAとの特異的競合について試験する。
p52 La自己抗原タンパク質の他にも、他のタンパク質因子が識別された
が、それは、I−RNAまたはその欠失突然変異体に対して結合し、したがって
本発明のI−RNAの翻訳阻止活性を有する他の分子を識別するのに(例えば、
結合検定において)用いることができる。種々の標識RNAを用いる紫外線架橋
実験および競合実験は、I−7およびI−4突然変異体I−RNA両方が、2種
類の共通のポリペプチド、すなわち、52および37kDaを結合したことを実
証した(実施例11を参照されたい)。しかしながら、これら二つのRNAは、
I−7RNAは80kDaポリペプチドを結合したが、I−4RNAは70kD
aポリペプチドと相互作用したという点で互いに異なった。したがって、52お
よび37kDaポリペプチドに加えて、ウイルス5′−UTRに対する80kD
aタンパク質の結合は、内部開始を引き起こすのに重要でありうるし、そしてI
−7RNAは、これらのポリペプチドを結合する場合に5′−UTRと直接的に
競合しうる。紫外線架橋実験を用いたマイヤー(Meyer)らによる最近の報告は
、口蹄疫ウイルス(FMDV)のIRESに媒介される翻訳における80kDa
タンパク質の重要性を示している(マイヤー,K.、A.ピーターセン(Peters
en)、M.ニープマン(Niepmann)およびE.ベック(Beck)(1995)J.Virol.
69:2819-2824)。この80kDaタンパク質は、開始因子eIF−4Bとして識
別された。マイヤーらによって与えられた結果は、更に別のタンパク質因子が、
eIF
−4BとFMDV IRESとのこの相互作用の一因となっていることを示唆す
る。したがって、ウイルスIRESに対するeIF−4Bの結合は、Laおよび
37kDaポリペプチド、およびまたは他のポリペプチドを必要としうる。I−
7RNAは、これらのポリプチドを結合することにより、IRESに媒介される
翻訳を妨げることができる。したがって、80kDaタンパク質の結合を最終的
に妨げる能力は、本発明のI−RNAの翻訳阻止活性を有するインヒビターの指
標であると考えられる。
52および37kDaポリペプチドとのそれらの相互作用にもかかわらず、I
−4およびI−8RNAは、それらが80kDaポリペプチドと相互作用できな
いために、翻訳を効率よく阻止しないことがある。I−4およびI−8RNAに
対する70kDaタンパク質の結合は、おそらくは、これらのRNAが80kD
aタンパク質と相互作用するのを妨げることにより、IRESに媒介される翻訳
を妨げるそれらの能力を阻止することができる。したがって、70kDaタンパ
ク質に対する結合の欠損もまた、本発明のI−RNAの翻訳阻止活性を有するイ
ンヒビターの指標であると考えられる。
阻止RNAオリゴヌクレオチドの他のRNA配列の識別
種々の別のRNA配列は、典型的な酵母I−RNAの配列の他に、本発明によ
る更に別の翻訳阻止RNAオリゴヌクレオチドを誘導するのに用いることができ
ることは上記から明らかなはずである。例えば、更に別の活性オリゴヌクレオチ
ドは、この相補的配列もまたI−RNA配列それ自体の翻訳阻止活性を示すので
、酵母I−RNAの配列の補体(「アンチセンス」)から誘導することができる
。図13を参照されたい。I−RNA配列について記載された同様の突然変異法
および他の分析法を、適当な常套修飾と共に適用する。
更に、典型的な酵母I−RNAとの配列相同性がほとんどまたは全くない天然
に存在するRNA配列は、本明細書中に記載のように修飾されて、本発明の活性
RNAオリゴヌクレオチドを生じることができることは明らかである。したがっ
て、上の背景のところで論及されたように、例えば、種々のピコルナウイルスR
NAの5′UTRの若干のループは、例えば、IRESに媒介される翻訳開始に
必要であるタンパク質因子に対するそれらのmRNAの結合の原因であることが
知られている。実際に、本開示は、欠失分析により、酵母I−RNAが、ポリオ
ウイルスRNAの翻訳を in vitro で阻止するためにmRNAが内部リボソーム
エントリー部位(IRES)配列を有することを必要とすることを示している。
これらの配列を含有するオリゴヌクレオチドもまた、本発明による翻訳阻止活性
を有するあろう。
しかしながら、先行技術は、本発明による翻訳阻止のために、このような因子
結合ループの結合配列から成るRNAオリゴヌクレオチドを用いる可能性を認め
たとは考えられないし、そして35未満のヌクレオチドを有するこのようなRN
Aオリゴヌクレオチドの製造ですら、いずれの目的に対しても知らされていない
と考えられる。
同様に、この開示で例証されたp52タンパク質の他に、他のタンパク質因子
に対して結合することが分ったRNAループはまた、本発明のRNAオリゴヌク
レオチドに適当な天然の配列源である。更に、3種類のデータベース、すなわち
、ウイルス、構造RNAおよび酵母を含めた植物のGCG形式 Genbank の Biov
ax コピーでFASTA(ピアソン(Pearson)ら、1988年)を用いるI−RNA
配列と類似している配列についての研究(1993年9月見解)は、部分的に関係し
た配列を識別した。したがって、日本脳炎ウイルスゲノムの部分と(19nt重
複によって)89.5%相同が見られた。同様に、単純ヘルペスウイルス、シン
ドビス(sindbis)ウイルス、エプスタイン・バールウイルス、デング熱ウイル
スおよびインフルエンザウイルスのゲノムの種々の部分と70〜80%相同が見
られた。構造RNAデータベースに対して比較した場合、最も顕著な相同(70
〜100%、11〜19nt重複)は、種々の生物からの16S rRNAにつ
いてであった。I−RNAはまた、トリパノソームの5S rRNAと広範な相
同性(93.8%、16nt重複)を有する。酵母を含む植物データベースに対
する比較は、ヒストンH4.1およびH3の酵母遺伝子と93.3%相同(15
nt重複)を示した。I−RNAとの相同性を有することが分った唯一のmRN
Aは、トウモロコシスーパーオキシドジスムターゼ3イソ酵素であった(100
%相同、13nt重複)。重複した配列の短い長さを考えると、これらの知見の
意味は現在のところ明らかではないが;しかしながら、これらは、本明細書中に
記載の本
発明の阻止活性について試験するのに好ましい候補、特に、適当な予測された二
次構造を示すものを配列順序決定する。
活性RNAオリゴヌクレオチドの構造模擬体の識別
I−RNA分子中の二次構造がその翻訳阻止活性に重要であることを確認する
ために、1個または2個のヌクレオチドを一度に変更してI−RNA二次構造を
脱安定化させることによって部位特異的突然変異誘発を行う。2種類のコンピュ
ーターで予測されたI−RNAの二次構造を描くことができ、それらは比較的熱
力学的に安定である。これらのコンピューターで予測されたI−RNAの二次構
造は、硫酸ジメチル(DMS)による修飾に対するその(それらの)利用しやす
さ並びに一本鎖および二本鎖特異的ヌクレアーゼに対する感受性を確認すること
によって確証される。これらの方法は、コンピューターで予測されたPV 5′
UTRの二次構造を支持するのに用いられた。簡単にいうと、I−RNAを、D
MS、S1、コブラ毒(CV)、更には、記載されたような他のヌクレアーゼに
よって処理する(11)。修飾および切断が起こった部位の識別のためには、プ
ライマー伸長技術が用いられるであろう(11)。DNA鎖の伸長は、修飾され
た塩基の一つ前のヌクレオチドおよび切断されたヌクレオチド間結合の直前で停
止するはずである。始めの方で記載された初期欠失実験および実験によって実証
されたI−RNAの二次構造は、どのヌクレオチドがI−RNA中で突然変異す
るかを決定可能にする。I−RNAの二次構造を脱安定化させ、更にその生物学
的活性を(in vitro でも in vivo でも)破壊する突然変異を見つけることで、
更に別の補償用突然変異を導入して二次構造を安定化させることができ、それは
、その生物学的活性を回復させるはずであり、それによって本発明のRNAオリ
ゴヌクレオチドの構造模擬体が生成される。
更に、耐ヌクレアーゼ性または膜透過性が増大した構造模擬体は、当該技術分
野において知られている慣用的なヌクレオチド類似体を用い且つ本明細書中に記
載の活性について試験して合成することができる。
更に、被検体に対して結合する分子の類似体を得る一般的な方法は、米国特許
第5,133,866号明細書で記載されている。これは、第一部分に対する特異的親和
性を有する被検体に関して、該第一部分の環境中に存在する更に別の部分と比較
し
て、アフィニティークロマトグラフィーの実施に有用なパラログ(paralog)を
識別する方法であって、該第一部分を選択的に結合する能力について、個々の候
補パラログのパネルをスクリーニングすることを含み、ここにおいて、該候補パ
ラログは少なくとも二つの異なったパラメーターの体系的に異なった値を有し、
それらのパラメーターはそれぞれ他の物質を結合する該パラログの能力を決定す
る上記方法を記載し且つ請求の範囲に記載している。該方法は、核酸である候補
パラログを包含する。該方法は、任意の選択された部分に対して特異的に結合し
うる物質の体系的且つ容易な選択を可能にする。選択された部分が受容体または
他の生物学的標的である場合、そのパラログは、種々の薬理学的および治療的用
途において有用であろう。
本発明のインヒビターのスクリーニング検定
内部リボソームエントリー部位に対して結合し、そして本発明の酵母I−RN
Aに対して結合することによって阻止されるタンパク質翻訳開始因子の活性を調
節する抗体または他の化合物のような、本発明の酵母I−RNAと同様の機序に
よってタンパク質翻訳を阻止する分子を識別するための in vitro 検定もまた、
本発明によって提供される。このような検定は、固定されたリガンドを必要する
ことがあり、例えば、IRES依存性タンパク質翻訳開始に必要な適当な開始因
子若しくはこのような因子の分子模擬体、または言い換えると、このような開始
因子が結合する天然リガンド(例えば、I−RNA)を固定化し、非固定化結合
パートナーを検出可能に標識し、結合パートナーを一緒にインキュベートし、そ
して結合した標識の量に対する試験化合物の作用を決定し、ここにおいて、試験
化合物の不存在下で結合した標識の量に対して比較された試験化合物の存在下で
結合した標識の減少は、試験物質が開始因子結合のインヒビターであることを示
す。
翻訳開始因子とリガンドとの間の相互作用を調節する化合物を識別するための
別の種類の検定は、該因子またはその模擬体若しくはフラグメントを、蛍光物質
で被覆された(または含浸した)固体支持体上で固定化し、該蛍光物質を励起さ
せることができる化合物によって該リガンドを標識し、該固定された開始因子と
該標識リガンドとを推定上の調節化合物の存在下および不存在下で接触させ、該
蛍光物質による発光を検出し、そして調節用化合物を、調節用化合物の不存在下
の蛍光物質による発光との比較において蛍光物質による発光に影響を与える化合
物として識別することを必要とするシンチレーション近接検定である。或いは、
その検定において、開始因子リガンドを固定化してよいし且つ開始因子を標識し
てよい。
IRES依存性タンパク質開始因子とリガンドとの間の相互作用を調節する化
合物を識別するための本発明によって考えられた更にもう一つの方法は、二遺伝
子雑種スクリーニング検定である。この検定は、DNA結合ドメインおよび活性
化ドメインを有する転写因子によって調節されたプロモーターの制御下において
、リポーター遺伝子を含むDNA構築物によって適当な宿主細胞を形質転換する
またはトランスフェクションし、該宿主細胞中において、IRES依存性翻訳開
始因子と該転写因子のDNA結合ドメインかまたは活性化ドメインとの一部分ま
たは全部の第一融合をコードしている第一ハイブリッドDNA配列を発現させ、
該宿主細胞中において、該リガンドと、該第一融合中に包含されない該転写因子
のDNA結合ドメインまたは活性化ドメインとの一部分または全部をコードして
いる第二ハイブリッドDNA配列を発現させ、推定上のモジュレーターの存在下
または不存在下において特定の宿主細胞中でのリポーター遺伝子産物の生産を測
定することによって該宿主細胞中での開始因子に対するリガンドの結合を検出す
ることにより、開始因子と該リガンドとの間の相互作用に対する推定上の調節化
合物の作用を評価し、そして調節化合物を、調節用化合物の不存在下のリポータ
ー遺伝子産物の生産との比較において、リポーター遺伝子産物の生産を変化させ
る化合物として識別することを必要とする。検定において用いるのに現在のとこ
ろ好ましいのは、lexAプロモーター、lexA DNA結合ドメイン、GA
L4トランス活性化ドメイン、lacZリポーター遺伝子および酵母宿主細胞で
ある。二遺伝子雑種検定の変法には、翻訳装置の他の成分と相互作用するLaま
たはp80タンパク質の相互作用が含まれうる。
前述の検定の変法は、DNA結合ドメインおよび活性化ドメインを有する転写
因子によって調節されたプロモーターの制御下において、リポーター遺伝子を含
むDNA構築物によって適当な宿主細胞を形質転換するまたはトランスフェクシ
ョンし、該宿主細胞中において、該開始因子と該転写因子のDNA結合ドメイン
かまたは活性化ドメインとの一部分または全部の第一融合をコードしている第一
ハイブリッドDNA配列を発現させ、該宿主細胞中において、推定上の開始因子
結合タンパク質またはRNAと、該第一融合中に包含されない該転写因子のDN
A結合ドメインまたは活性化ドメインとの一部分または全部の第二融合をコード
している第二ハイブリッドDNA配列のライブラリーを発現させ、特定の宿主細
胞中でのリポーター遺伝子産物の生産を検出することによって該宿主細胞中での
開始因子に対する開始因子結合タンパク質またはRNAの結合を検出することに
より、翻訳開始因子に対して結合するタンパク質をコードしているポリヌクレオ
チドを単離する場合に用いることができる。
本発明のI−RNAの活性を有する翻訳インヒビターについての更に別の検定
は、La依存性 in vitro 翻訳検定である。この方法は、実施例で記載のように
、IRESに媒介される in vitro 翻訳の阻止についての直接的知見に基く。或
いは、化合物を、トランスフェクションされた細胞中でのIRES依存性翻訳の
阻止について、例えば、ビシストロンRNA分子を用いてスクリーニングするこ
とができ、例えば、実施例10で記載のように、一つのタンパク質産物はCAP
依存性様式で翻訳され且つ第二タンパク質産物はIRESによって翻訳される。
このようなスクリーニングは、細胞培養物からのリポーター分子のIRES依存
性翻訳の阻止に基くことができる。更に、インヒビターのスクリーニングはまた
、ウイルス生産の阻止の検出を用いることができる(実施例10で記載のキャプ
シドタンパク質かまたはプラーク検定によって)。最終的に、動物モデル系にお
いてピコナウイルスに媒介される作用の生産を阻止する化合物についての動物基
剤クリーニングを用いて、I−RNA模擬体の有効性を評価する。
本発明のインヒビター分子の使用および関連態様
本発明の方法およびインヒビター分子は、細胞または動物若しくはヒト対象に
おけるウイルス感染の治療または予防に用いることができる。それは、更に、特
定のRNAが、概して、ウイルスmRNAを示すIRESに媒介される翻訳を示
すかどうかを確認する診断用手段として用いることができる。
本発明に適したウイルスの範囲に関して、酵母からの阻止RNAは、ポリオウ
イルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、コクサッキーウイルスおよびピコ
ルナウイルス科群の他のメンバーのそれらを含めた種々のピコルナウイルスRN
Aによって、IRESに媒介される翻訳を特異的に阻止する。キャップ付き細胞
mRNAの翻訳は、in vitro または in vivo においてこの酵母インヒビターR
NAによって影響されるとは考えられないが、ピコルナウイルス複製は、ウイル
スRNA翻訳の阻止のために、in vivo において酵母インヒビターRNAによっ
て阻止される。インヒビターRNAは、ウイルス5′UTR中のRNA構造要素
と相互作用するタンパク質を特異的に結合する。
ピコルナウイルス群に属さない多数の他のウイルスもまた、翻訳のために内部
リボソームエントリー部位を用いる。主な例は、フラビウイルス、C型肝炎であ
る(1,2)。酵母インヒビターはまた、C型肝炎ウイルス翻訳を阻止する。最
近、コロナウイルスである伝染性気管支炎ウイルスのmRNAもまた内部リボソ
ームエントリー機序を利用していることが報告された(3,4)。更に、アヒル
およびヒトB型肝炎ウイルスの逆転写酵素、水泡性口内炎ウイルスNSタンパク
質、アデノウイルスDNAポリメラーゼおよびセンダイウイルスP/Cタンパク
質をコードしているmRNAは、リボソームエントリーの内部開始を用いること
が示された(5−9)。更にまた、内部リボソームエントリーは、レトロウイル
ス科(例えば、ネズミ白血病ウイルス;参考文献29)、ペスチウイルス科(3
0)および植物ポティ(poty)ウイルス(31)における翻訳について示された
。したがって、翻訳の内部開始を用いる多数の異なったウイルス群のメンバーに
対する抗ウイルス薬は、本発明にしたがって製造することができる。
本発明の阻止RNAおよび構造模擬体はまた、ウイルスmRNAなどの内部開
始mRNAの翻訳を、細胞培養物中またはこのようなmRNAを含有している宿
主生物中において制御するのに用いることができる。阻止RNAまたは模擬体は
、Remington's Pharmaceutical Sciences,マック・パブリッシング・カンパニ
ー(Mack Publishing Company),イーストン,PA,最新版で記載されたよう
な標準的な投与法を用いて与えられる。好ましくは、対象の in vivo 処置に対
して、RNAまたは模擬体を注射によって与え、そしてリンガー液、ハンクス液
等のようなそのための慣用的な賦形剤を用いて製剤化する。適当な製剤を用いる
経口投
与もまた行うことができる。大部分の投与は全身的であるが、ライノウイルスに
よる鼻腔感染のような局在した症状の場合、投与は局所的または他の方法で局部
的であってよい。薬物供給のための徐放機序も用いることができる。
或いは、阻止RNA配列は、「逆方向」発現系において該RNAをコードして
いるDNAまたはその阻止有効性フラグメントを含む発現系を提供することによ
って現場で生じることができる。該発現系はいずれも、逆方向の配列が、例えば
、SV−40プロモーター、アデノウイルスプロモーター、ワクシニアウイルス
プロモーター等の制御下にある哺乳動物対象などの宿主対象において操作可能で
あるように設計されうるので、RNAは現場で転写される。宿主細胞の培養物中
で用いられた場合、その発現系は、宿主細胞に適合したレプリコンに対して与え
られるであろう。
更に詳しくは、本発明の酵母I−RNは、ヒトピコルナウイルス(ポリオウイ
ルス、ライノウイルス、A型肝炎およびコクサッキーウイルスB3)および動物
ピコルナウイルス(口蹄疫ウイルス;FMDV)を含めたピコルナウイルスの5
′UTRからの翻訳並びにフラビウイルス(C型肝炎)mRNAの内部翻訳のI
RES依存性開始を阻止することが示された。更に、養鶏産業において重大な損
失を引き起こすコロナウイルスである伝染性気管支炎ウイルスのmRNA3もま
た、内部リボソームエントリー機序を利用している(3,4)。更に、アヒル、
更にはヒトのB型肝炎ウイルスの逆転写酵素、水泡性口内炎ウイルスNSタンパ
ク質、アデノウイルスDNAポリメラーゼおよびセンダイウイルスP/Cタンパ
ク質をコードしているmRNAは、リボソームエントリーの内部開始を用いるこ
とが示された(5−9)。更にまた、内部リボソームエントリーは、レトロウイ
ルス科(例えば、ネズミ白血病ウイルス;参考文献29)、ペスチウイルス科(
30)および植物ポティウイルス(31)における翻訳について示された。した
がって、本発明は、更に、利用可能な遺伝子工学技術を用いて、本発明のI−R
NA分子または関連した翻訳開始インヒビターを発現し、そしてそれによって、
該I−RNAがIRES依存性翻訳を阻止するウイルスの病原性作用に対して耐
性であるトランスジェニック動物およびトランスジェニック植物の生産を可能に
する。本発明者は、翻訳の内部開始にその複製が依存しているウイルスまたは他
の病原体に対して耐性であるトランスジェニック植物および動物の慣用的な技法
による生産を考えている。
本発明のもう一つの態様は、細胞中、特に、酵母細胞中における、このような
細胞またはその抽出物中の望ましいmRNAのIRES依存性翻訳開始を妨げる
本発明のI−RNAを発現するI−RNA遺伝子の単離および修飾に関する。こ
れらの遺伝子修飾は、I−RNAの発現または活性を阻止し、それによって所望
のIRES依存性翻訳開始を可能にする。第一に、本明細書中に記載のような、
酵母から単離されたI−RNA分子の配列の識別は、慣用的な遺伝子工学方法に
よって用いられてI−RNA遺伝子(例えば、サザンブロッティングによって)
およびその初期転写産物(例えば、ノーザンブロッティングによって)を検出す
ることができる標識プローブの製造を可能にする。更に、このようなプローブを
、好ましくは緊縮ハイブリダイゼーション条件下で用いると、酵母I−RAN遺
伝子若しくは他の種からの相同遺伝子またはこのような遺伝子の転写物を、当該
技術分野において周知の標準的な遺伝子クローニング法によって単離することが
できる。例えば、望ましい種のランダムゲノムライブラリーは、本発明によって
与えられたI−RNAプローブを用いるハイブリダイゼーションによってスクリ
ーニングされうる。酵母I−RAN遺伝子および他の種からの相同遺伝子の構造
およびゲノム体制についての考察は、このような遺伝子の正常な機能についてよ
りよく理解させるであろう。
更に、本開示は、I−RNAの発現または活性を阻止するための宿主細胞の修
飾を可能にする。第一に、このような修飾の導入は、このようなI−RNAを発
現する宿主細胞の生存にとってI−RNA活性が不可欠であるかどうかを決定す
るであろう。一つの方法において、I−RNAに相補的な配列を有するRNA(
すなわち、「アンチセンスI−RNA」)を、I−RNA分子を発現する宿主細
胞(例えば、酵母)中で発現させる。そのアンチセンスI−RNAの発現用ベク
ターは、選択可能なマーカー遺伝子(例えば、URA3)を含んで、形質転換さ
れた細胞だけが回収されることを確実にする。アンチセンスI−RNAを発現す
る形質転換細胞が回収されない場合、誘導発現構築物を検査して、アンチセンス
RNAベクターが、アンチセンスI−RNA発現の不存在下において細胞中に
形質転換されうるかどうか、および引き続きの発現が、任意の1種類または複数
の細胞機能を阻止するかどうかを確認することができる。或いは、I−RNA遺
伝子を、当該技術分野において知られている遺伝子「ノックアウト」法を用いて
排除することができる。例えば、酵母細胞中において、細胞中に効率よく且つ安
定して導入された外因性DNAは、相同的組換えによって染色体DNA中に組込
まれ、非機能性コピーによる野生型遺伝子の有効な置換を可能にする。典型的に
、非機能性コピーは、野生型クローニング配列を選択可能なマーカー遺伝子(例
えば、LEUまたはURA)によって置換することにより生じる。二倍体細胞の
形質転換は、細胞生存力のためにある種のI−RNA活性が必要とされる場合に
、潜在的な致死作用を回避させることができる。本発明によるアンチセンスかま
たは遺伝子ノックアウト修飾の結果として減少したI−RNA活性を有する酵母
若しくは他のI−RNA発現性宿主細胞またはそれらの抽出物は、IRES依存
性翻訳開始を必要とするmRNAの発現に有用である。更に考えられるのは、翻
訳の内部開始にその合成が依存しているタンパク質の発現に寛容である宿主系統
を生産するために、Laをコードしている遺伝子またはその相同染色体を除去す
るように、当該技術分野において知られている遺伝子ノックアウト法によって修
飾されうる酵母または他のI−RNA宿主細胞である。
以下の実施例は、本発明を例証するためのものであるが、制限するものではな
い。
実施例1
酵母阻害剤RNAの精製および配列決定
使用されたサッカロミセス セレビジエ(Saccharomyces ce revisiae
)株はABYSI(D.Meyer,UCLAから提供された
)であった。ポリオウイルスRNAからのIRES依存性翻訳を特異的に阻害で
きる酵母細胞からの阻害剤は最初、DEAE−Sephacelカラムを通過さ
せることにより精製した(Cowardら、1992、上記文献)。阻害剤はカ
ラムに強く結合し、カラムを1M酢酸カリウムで洗浄することにより溶出された
。DNaseおよびプロテイナーゼKで切断し、続いてのフェノール−クロロホ
ルム抽出によりDEAE−Sephacel精製阻害剤をさらに精製した。最後
に、水相からのアルコール沈澱により得られたRNAはγ32P−ATPでその5
’末端を末端標識し、20%PAGE/8M尿素電気泳動により単一のバンドを
分離した。各々のRNAバンドはゲルスライスから溶出し、キャップ依存性様式
で翻訳を開始することが知られている対照CAT構築物からではなくポリオウイ
ルス5’UTR−CAT構築物からの翻訳の内部開始を阻害する能力でアッセイ
した(Pelletierら、1989)。60ヌクレオチドのRNAとして移
動した単一バンドに阻害活性が付随していた。
特に、酵母細胞溶解物は、それらが球菌ヌクレアーゼ処理されていない点を除
いて以前に記載されているように(Rothblattら、1986)調製した
。溶解物は0.1M酢酸カリウムでDEAE−Sephace(Pharmac
ia)カラムに加え、0.3、0.6および1M酢酸カリウムを含む緩衝液で段
階的に溶出させた。分画は0.1M塩に対して透析し、翻訳阻害活性をアッセイ
した。阻害活性を示した1M分画をDNase処理し、続いてプロテイナーゼK
で切断してフェノール−クロロホルム抽出した。この分画からのRNAは次にア
ルコール沈澱により単離した。1M分画と共精製された酵母RNAは次に脱リン
酸し、キナーゼ反応により5’末端を修飾した。標識RNA種は20%アクリル
アミド−8M尿素シークエンシングゲルで分離した。標識および非標識RNAバ
ンドは平行したレーンで分離し、ゲルから以下のように溶出した。個々のゲルス
ライスを37℃で4時間、500μlの溶出緩衝液(2M酢酸アンモニウムおよ
び
1%SDS)に浸した。室温で軽く遠心分離した後、上清液を集め、フェノール
−クロロホルム(1:1)で抽出し、20μgのグリコーゲン(Boering
er−Mannheim Biochemicals)存在下でアルコール沈澱
させた。
沈澱したRNAペレットはヌクレアーゼを含まない水に再懸濁し、無ヒーラー
細胞系の翻訳系でp2CAT RNAの翻訳を阻害する能力を試験した(Cow
ardら、1992、上記文献)。ヒーラー細胞は1g/Lのグルコースおよび
6%ウシ新生児血清を補給した最少必須培地(GIBCO laborator
ies)中での撹拌培養で増殖させた。ヒーラー細胞抽出物は前に記載されてい
るように(Roseら、1992;Cowardら、1992、上記文献)調製
した。無ヒーラー細胞抽出物系でのインビトロ翻訳は本質的には以前に記載され
ているように(Roseら、1978)実施した。25μCiの35S−メチオニ
ン(800Ci/ミリモル;Amersham)および40単位のRNasin
(Promega)が存在する25μlの反応液中、2マイクログラムの各々の
mRNAを80μgのヒーラー細胞抽出物とともに使用した。
ウサギ網状赤血球溶解物(Promega)での翻訳は、25μCiの35S−
メチオニン(比活性>1000Ci/ミリモル)とともに、12.5μlの溶解
物および2μgのmRNAを含む15μlの反応液容量で30℃にて1時間実施
した。翻訳生成物の3マイクロリットルをドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−
14%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。
精製されたRNAは市販品として入手可能なシークエンシングキット(US
Biochemicals Corporation)を用いて配列決定した。
末端標識されたRNAは塩基特異的リボヌクレアーゼ緩衝液の組み合わせと混合
し(USB−プロトコールに従って)、50℃でインキュベートした後、20%
アクリルアミド−SM尿素シークエンシングゲルに加えた。図1Aは60ヌクレ
オチドRNAの配列[配列ID番号:1]を示している。
実施例2
酵母阻害剤RNAのクローニングおよび転写
決定されたRNA配列に基づいて、センスおよびアンチセンス鎖特異的デオキ
シオリゴヌクレオチドが合成され、アニール化、およびpGEM 3Z発現ベク
ターのポリリンカー領域のHindIIIおよびEcoRI部位間にクローン化し
て、組換え体プラスミドpSDIR(図1B)を形成させた。
クローンpSDIRはHindIII制限酵素で線状化し、次にT7 RNAポ
リメラーゼで転写して、阻害剤RNA(センス転写体)を発生させた。線状化プ
ラスミドからのT7 RNAポリメラーゼによる転写により阻害剤RNAが合成
された。ゲル電気泳動により分析した場合、酵母阻害剤RNAおよび5’ポリリ
ンカー領域のEcoRI部位からの余分の10ヌクレオチド、およびHindII
I部位の3’末端の1ヌクレオチドからなる71ヌクレオチドの単一バンドが観
察された。
合成クローンから合成されたRNAが活性であるかどうかを決定するため、C
AT遺伝子の5’末端ポリオウイルス5’UTRを含むCAT構築物(P2−C
AT)からの翻訳に対するその効果を決定した。酵母からの部分精製阻害剤およ
びpSDIRから転写された精製阻害剤の両方とも、無ヒーラー細胞抽出物系に
おいてインビトロでP2CAT RNAからの翻訳を阻害した(図1D、レーン
4、5、6)。しかしながら、CAT RNAからの翻訳(キャップ依存性翻訳
)は両方の阻害剤により有意には阻害されなかった(図1D、レーン1、2、3
)。従って、合成クローンから合成された阻害剤RNAは、酵母細胞からの部分
精製阻害剤で以前観察されたように(Cowardら、1992、上記文献)、
ポリオウイルスIRES依存性翻訳を特異的に阻害することにおいて活性であっ
た。
実施例3
酵母RNA阻害剤による阻害に必要とされる
ポリオウイルス5’UTR配列の同定
ポリオウイルスRNAの5’非翻訳領域(UTR)内のどの特定の配列がIR
ES依存性翻訳を阻害するための酵母阻害剤RNAに必要とされるかを決定する
ため、N.Sonenberg博士(McGill大学)の研究室から多数の欠
失5’UTR−CAT構築物を入手した。図2Dを参照されたい。
異なった線状プラスミドからのT7かまたはSP6プロモーターを用い、T7
またはSP6RNAポリメラーゼによりインビトロでmRNAが転写された。プ
ラスミドpG3CATおよびP2CAT(Cowardら、1992、上記文献
)の両方がBamHIで線状化され、SP6 RNAポリメラーゼを用いて転写
体の混合物を発生させた。プラスミドpBIP−LCU構築物(Macejak
ら、1991)はP.Sarnowから入手され、HpaI酵素で線状化してT
7 RNAポリメラーゼで転写された。TMEV−IRES含有構築物pPB3
10はHoward L.Liptonから入手し(Bandopadhyay
ら、1992)、HpaI酵素で線状化してT7 RNAポリメラーゼで転写し
た。
T7 RNAポリメラーゼによる転写のためのオリゴデオキシリボヌクレオチ
ド鋳型はApplied Biosynthesis DNA合成機で合成され
、その後精製された。当モルの18mer T7プライマーオリゴヌクレオチド
および鋳型オリゴヌクレオチドを0.1M NaCl中で混合し、100℃で5
分間加熱することによりアニール化した後、室温まで徐々に冷却した。上記の方
法に従ってインビトロでSL−B、SL−C、SL−DおよびSL−G RNA
が合成された。
阻害剤はpG3 CAT(またはpCAT)構築物からの翻訳は阻害しないが
pP2 CATからの翻訳を効果的に阻害する(図1D)。Δ5’−33CAT
構築物が阻害剤RNA存在下で翻訳される場合、ほとんど完全な阻害が観察され
た(データは示されていない)。UTRの5’末端からの320ヌクレオチドの
欠失はΔ5’−320/CAT構築物からの翻訳を阻害する阻害剤の能力に対し
て有意な効果を示さなかった(図2A、レーン1および2)。翻訳のほとんど8
0%の阻害が阻害剤存在下で観察された(レーン1および2)。阻害剤で観察さ
れた阻害のいくつかは、鋳型RNAが翻訳に先だってキャップ化された場合は逆
転できた(図2A、レーン3および4)。
同様な結果がΔ3’−631/CAT構築物で得られた;阻害剤存在下この構
築物からの翻訳のほとんど完全な阻害が観察され、キャップ化されたRNAの添
加は翻訳の阻害をある程度逆転させたがΔ5’−320/CAT構築物ほどでは
なかった(図2B、レーン5−8)。対照的に、Δ5’−632/CAT構築物
からの翻訳は阻害剤存在下でもほとんど影響を受けなかった(図2B、レーン1
および2)。
従って、ウイルスRNAの全IRES領域のほとんどがほとんど全部のポリオ
ウイルスIRES依存性翻訳を効果的に阻害するための阻害剤に対して必要であ
る。しかしながら、有意な阻害はウイルスUTRのヌクレオチド320−461
のみを含む構築物で観察された。従って、UTRのヌクレオチド320−461
のみを含む構築物Δ5’−320/Δ3’−461/CATからの翻訳は阻害剤
RNAにより有意に阻害された(図2C、レーン1および2)。この阻害は翻訳
に先立ってRNAをキャップ化することにより有意な程度克服でき(図2C、レ
ーン3および4)、キャップ依存性翻訳は実質的に阻害剤により影響されないこ
とを示している。
実施例4
ゲル電気泳動間のRNA遅延を用いる酵母I−RNAによる
蛋白質因子およびmRNA 5’UTRの複合体の破壊の実証
理論的に、阻害剤RNAは二つの可能な機構によりIRES依存性翻訳を阻害
できる:アンチセンスRNAとしてUTR配列に結合またはリボソームの内部的
参加に必要とされる蛋白質因子への結合。これら二つの機構を区別するため、均
一に32P標識された阻害剤RNAプローブが調製されてヒーラーS10抽出物と
混合され、得られたRNA蛋白質複合体は未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳
動により分析された。
ヒーラーS10細胞質抽出物は無ヒーラー細胞系翻訳抽出物を4℃にて30分
,10,000gで遠心分離した上清液を集めることにより調製された。S10
抽出物の試料50μgを、5mM HEPES pH7.5、25mM KCl
、2mM MgCl2、0.1mM EDTA、3.8%グリセロールおよび2
mM DTTを含む15μlの反応液中、4μgのポリ[d(I−C)](Ph
armacia)と30℃で10分間前もってインキュベートした。競合実験に
おいては10−100倍過剰の非標識競合剤RNAを反応液に加え、30℃で1
0分間インキュベートした。最後に5−10フェムトモルの標識RNAプローブ
を各々の反応混合物に加え、さらに30℃で30分間インキュベートした。競合
アッ
セイに使用された非特異的RNAはpGem3zベクターのポリリンカー領域(
EcoRIからHindIII)の配列(Promega)であった。10%グリ
セロールおよび0.2%ずつのブロモフェノールブルーおよびキシレンシアノー
ルの最終濃度になるように反応混合物に3マイクロリットルのゲル負荷色素を添
加した。RNA−蛋白質複合体は次に0.5X TBE中4%ポリアクリルアミ
ドゲル(39:1−アクリルアミド:ビス)で分析した。
図3Aに示したように、単一の複合体(Cで示されている)がはっきりと観察
された。非標識I−RNAの濃度の増加は標識化複合体の生成と競合した(図3
B、レーン2−5)。競合のために非標識ポリオウイルス5’UTR RNAが
使用された場合、同様の結果が得られた。明らかに、試験された最も高い濃度で
は、UTR配列はヒーラーS10蛋白質への結合においてI−RNAと競合した
(図3B、レーン6−9)。しかしながら、非相関RNAは標識I−RNAと競
合できなかった(図3B、レーン10)。従って、本阻害剤RNAは、ウイルス
5’UTR配列と特異的に競合できる、ヒーラーS10蛋白質(類)とのゲル遅
延複合体を形成できる。
実施例5
阻害剤RNAがポリオウイルス5’UTRと相互作用する
蛋白質を結合することの実証
ウイルス5’UTRと相互作用する特異的ポリペプチドが酵母阻害剤RNAと
も相互作用するかどうかを決定するために、一連のUV架橋実験が実施された。
これらの実験において、均一に標識された阻害剤RNAは最初にヒーラーS10
抽出物とインキュベートし、次にUV光を用いて架橋させた。リボヌクレアーゼ
処理後、蛋白質−ヌクレオチド複合体をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動
により分析した。
40から50フェムトモルの32P標識RNAプローブ(8x104cpm)を
上記のように50−100μgのヒーラー細胞のS−10抽出物とインキュベー
トした。結合反応が完了した後、試料にUVランプ(マルチバンドUV−254
/366NMモデルU GL−25;UVP,Inc)からのUV光を3−4c
m
の距離から10分間照射した。結合されていないRNAは20μgのRNase
Aおよび10UのRNase T1の混合物を用いて37℃で30分間切断し、
SDS−14%ポリアクリルアミドゲルで分析した。
ヒーラー抽出物中の蛋白質を架橋するために32P標識阻害剤RNAが使用され
た場合、おおよそ100、70、52および37kDaの分子量を持つポリペプ
チドが検出された(図4A、および4Bレーン2)。これらのポリペプチドの内
、いくつかの実験で52kDa蛋白質が最も強く標識された(図4B,レーン2
)。非標識阻害剤RNAの添加は52kDa蛋白質と首尾よく競合した(図4A
、レーン3)。非標識ポリオウイルス5’UTRを競合剤として用いた場合、5
2kDa並びに100、70および37kDaバンドが競合により完全に消失し
た(図4A、レーン4)。対照的に、非標識、非相関RNAは阻害剤RNAへ架
橋したポリペプチドと競合することはできなかった。
52kDa蛋白質は以前にウイルス5’UTRの特異的領域(ヌクレオチド5
59−624)と相互作用することが示されているので、標識I−RNAへ架橋
された52kDaバンドと競合するこの配列(”UTR559−624”)を含
むRNAの能力が決定された。図4B(レーン4)に示したように、非標識UT
R559−624はI−RNA−52kDa複合体の形成を完全に阻害した。全
5’UTR配列と異なり、UTR559−624は52kDa蛋白質のみと競合
した(図4Aおよび4Bのレーン4を比較されたい)。これらの結果は酵母阻害
剤RNAはポリオウイルス5’UTR配列559−624が結合するのと類似の
または同一の様式で52kDa蛋白質と結合することを示している。
実施例6
蛋白質結合において酵母阻害剤RNAが
ステムループDおよびGの両方と競合することの実証
ポリオウイルス5’UTRは、ウイルスRNA複製および翻訳に重要な役割を
果たすと信じられているいくつかの熱力学的に安定なステムループ構造を含んで
いる(図5)。これらの内ステムループA、BおよびCは多分RNA複製に関与
しているであろう。一方、ステムループD−GはウイルスmRNA翻訳に関与し
ていると信じられている(Dildineら、1992)。ヌクレオチド186
−221から成るステムループD(SL−D)は50kDa蛋白質(p50)へ
結合することが示されており(Najitaら、(1990、上記文献))、一
方、559−624からのポリオウイルス5’UTR配列を示すステムループG
(SL−G)は、最近ヒトLa蛋白質と同定された52kDa蛋白質(p52)
(Meerovitchら、(1993、上記文献))へ結合する。
前の実施例で示された結果は、阻害剤RNAが通常ウイルス5’UTR内のス
テムループGへ結合するp52と相互作用することを示している。阻害剤RNA
がp50へも結合でき、ステムループDとも競合できるかどうかを決定するため
、5’UTRのヌクレオチド178−224に対応するRNAが調製された。最
初の実験において、個々に32P標識されたI−RNA、全5’UTR、ステムル
ープG(UTR559−624)およびステムループD(UTR178−224
)は別々にヒーラーS−10抽出物とインキュベートされ、得られた蛋白質−ヌ
クレオチド複合体は図6Aに示したようにUV架橋により分析された。約52k
Daの主蛋白質−ヌクレオチド複合体が4つすべての反応において検出された(
レーン2、4、6および8)。
ステムループGが標識プローブとして使用された場合、54kDaに追加のバ
ンドが検出された(図6A、レーン6)。37から48kDaの範囲の他の架橋
蛋白質もまた4つすべての標識プローブで検出された。標識ステムループGによ
る蛋白質結合を示しているレーン(図6A、レーン6)は相対的に過剰暴露であ
ったため、SL−GおよびSL−Dの結合を比較する別の実験が行われた(図6
B、レーン1および2)。この実験はステムループDおよびGの両方ともSDS
ゲル上で等しく移動する蛋白質(52kDaバンド)を結合することを明らかに
示している。
類似の蛋白質がI−RNAおよびステムループDおよびGと相互作用するであ
ろうという結果を確認するため、以下の競合実験が実施された。32P標識5’U
TRまたはSL−D(UTR178−224)またはSL−G(UTR559−
624)RNAを単独でまたは非標識競合RNA(例えば、5’UTR、SL−
D,I−RNA、SL−B、SL−C、非特異的RNA)の存在下でヒーラーS
10抽出物とインキュベートした。生じた複合体は次にUV架橋実験により分析
された。ステムループBおよびC(SL−BおよびSL−C)を示すRNA配列
は陰性対照として使用された。
ポリオウイルス5’UTRが標識プローブとして使用された場合、非標識UT
R、I−RNAおよびステムループGで52kDa蛋白質−ヌクレオチド複合体
形成のほとんど完全な阻害が観察された(図7A、レーン2−5)。ステムルー
プDはp52結合に対して標識5’UTRと一部競合した(図7A、レーン6)
。非標識SL−B、SL−Cおよび非特異的RNAはp52結合に対し5’UT
Rとの競合は相対的に無効であった(図7A、レーン7−9)。非標識UTR
RNAのみがすべての標識バンドの形成で競合し、一方、I−RNAおよびステ
ムループGおよびDはp52バンドの形成を特異的に阻害した。
ステムループGが標識プローブとして使用された場合、期待されたように52
および54kDaで移動するタブレットが検出された(図7B、レーン2)。非
標識SL−Gによる相同的阻害ではこれらの複合体の形成が完全に阻害された(
図7B、レーン3)。非標識I−RNAおよびSL−D RNA存在下では、こ
れらのUV架橋複合体形成の約80%の阻害が観察された(レーン4、5)。し
かしながら、競合剤として非相関RNAおよびSL−BまたはSL−C RNA
が使用された場合は何の阻害も観察されなかった(レーン6−8)。UV架橋ア
ッセイにおいてプローブとして放射性標識SL−D RNAが使用された場合、
類似の結果が得られた。蛋白質−ヌクレオチド複合体形成のほとんど完全な阻害
が非標識I−RNA、SL−G RNAおよび相同的SL−D RNAの存在下
で観察された(図7C、レーン2−4および6)。予想されるように、SL−B
およびSL−C RNAは標識SL−Dプローブと競合できなかった。
これらの結果を総合すると、52kDaの大体の分子量を持つ類似のまたは同
一の蛋白質は3つすべてのRNA(ステムループDおよびG、およびI−RNA
)と相互作用することが示される。
実施例7 酵母阻害剤RNAはインビトロで翻訳の内部開始を優先的に阻害することの実証
クローン化および精製I−RNAが5’キャップから開始されるRNAからの
翻訳の内部開始を優先的に阻害するかどうかを試験するため、ビシストロンメッ
センジャーからの翻訳におけるその効果を決定した。この目的のため、チーラー
マウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)5’UTRが隣接するCATおよびルシフ
ェラーゼ(LUC)を含むビシストロン構築物を入手した。TMEV 5’UT
RはIRES配列を含んでいることが知られており、内部翻訳を開始することが
示されている(Bandopadhyayら、1992)。TMEV 5’UT
Rから内部的に起こる翻訳の開始はルシフェラーゼの合成を生じるであろうし、
一方、キャップ依存性翻訳では普通はCAT蛋白質を産生するであろう。
網状赤血球溶解物中で翻訳された場合、ビシストロンメッセンジャーからの翻
訳はCATおよびルシフェラーゼ蛋白質の両方を産生した(図8B、レーン1)
。精製酵母阻害剤RNA存在下では著しいCAT合成は観察されたが、ルシフェ
ラーゼの合成はほとんど完全に阻害された。標識CATおよびルシフェラーゼバ
ンドの定量は、ルシフェラーゼ合成は対照と比較して90%を超えて阻害された
が、一方、CAT合成は20%のみの阻害しか観察されなかったことを示した。
翻訳反応のバックグランド取り込みもまた、阻害剤を含む反応で著しく少なかっ
たが、その理由は完全には解っていない。
ビシストロンRNA構築物を用いて、ポリオウイルス、ライノウイルス、肝炎
Aウイルス、TMEVウイルスなどのRNAを含む種々のピコルナウイルスRN
Aによる内部リボソーム侵入部位(IRES)媒介翻訳を優先的に阻害すること
が示されている。例えば、図11を参照されたい。
これらの結果は酵母阻害剤RNAは第二のウイルス調節領域(TMEV 5’
UTR)での翻訳の内部開始を優先的に阻害することを示している。
実施例8
酵母阻害剤RNAが細胞mRNAの内部開始を阻害することの実証
最近の研究結果はいくつかの細胞mRNAが内部から翻訳を開始することを示
している(Macejakら、1991;Ohら、1992)。例えば、イムノ
グロブリン重鎖結合蛋白質(Bip)は内部開始により合成できる。Bip合成
が阻害剤RNAにより特異的に阻害できるかどうかを決定するため、レポーター
遺伝子(ルシフェラーゼ)に連結されたBip mRNAの5’UTRを含む構
築物をP.Sarnow(Colorado大学)から入手した。ヒーラー抽出
物中でのこのmRNAの翻訳はルシフェラーゼ蛋白質を発生させた(図8A、レ
ーン1)。酵母阻害剤RNAの添加はこのRNA構築物からのルシフェラーゼ合
成を完全に阻害した(レーン2)。予想されるように、CAT構築物からのキャ
ップ依存性翻訳は同一の条件下少しも阻害されなかった(レーン3および4)。
実際、CAT翻訳は以前に観察されているように(Cowardら、1992、
上記)対照よりも著しく刺激された。これらの結果は、酵母阻害剤RNAは細胞
mRNAならびにウイルスmRNAからの内部開始を阻害することができること
を示している。
実施例9
インビボでのポリオウイルスRNA翻訳阻害の実証
クローン化阻害剤RNAがインビボでポリオウイルスRNAの翻訳を阻害する
かどうかを決定するため、ポリオウイルスRNAを単独でまたは精製酵母RNA
と一緒にヒーラー細胞内へトランスフェクトした。ヒーラー細胞単層は組織培養
フラスコを用い、5%ウシ胎児血清を補給した最少必須培地(GIBCO)中で
増殖させた。ポリオウイルスRNA(タイプ1 マホネイ(Mahoney))
は以前に記載されているように(Dasgupta、1983)感染ヒーラー細
胞から単離された。合成I−RNAまたはポリオRNAをキャリアー酵母tRN
Aと混合してトランスフェクション反応当たり総量で20μgのRNAを得た。
RNA試料は次に30μgのリポフェクチン(GIBCO−REL)および20
単位のRNasin(Promega)と混合し、室温で30分インキュベート
した。最後に、試料を4mlの2.5%のウシ胎児血清を含む最少必須培地(G
IBCO)と混合し、70−80%コンフルエントのヒーラー単層細胞を含むペ
トリ皿へ加えた。細胞はCO2インキュベーター中、37℃で24時間インキュ
ベートした。
蛋白質は35S−メチオニンを加えることにより標識し、ウイルス蛋白質の合成
は無細胞系抽出物の直接分析により(図9、パネルA)、または抗キャプシド抗
血清によるウイルスキャプシド蛋白質の免疫沈降により(図9、パネルB)モニ
ターした。特に、トランスフェクション後の蛋白質のインビボ標識のためには、
細胞はメチオニンを含まない培地(MEM,GIBCO)中、37℃で40分間
インキュベートした。次に、100μCiのトランス標識メチオニン(比活性、
>1000Ci/ミリモル)を細胞に加え、さらに1時間インキュベーションを
続けた。35S−メチオニン標識ヒーラー細胞抽出物は以前に記載されているよう
に(Ransonら、1987)調製された。
トランスフェクトされた細胞のインビボ標識ウイルス蛋白質はポリオウイルス
抗キャプシド抗体(American Type Culture Colle
ctionから購入された)による免疫沈降により検出された。免疫沈降は1x
RIPA緩衝液(5mMトリス pH7.9、150mM NaCl、1%トリ
トンX−100、0.1%SDS、1%デオキシコール酸ナトリウム)を含む5
00μlの反応液容量中、5μlの抗キャプシド抗体と4℃で一夜実施された。
免疫複合体はプロテインA セファロース(75μl、0.2%BSAを加えた
RIPA緩衝液中20%溶液として)で沈澱させ、前記のように(Coward
等、1992、前記)SDS−14%ポリアクリルアミドゲルで分析した。
ウイルスRNAおよび阻害剤RNAを加えないと、細胞蛋白質の合成は明らか
であった(パネルA、レーン1)。ウイルスRNA(1μg)が細胞内へトラン
スフェクトされた場合、別個のウイルス蛋白質の合成が観察された(レーン2)
。さらに、ポリオウイルスによる宿主細胞蛋白質合成の遮断のため宿主細胞蛋白
質のバックグラウンドがかなり減少した(レーン2)。
阻害剤RNAをウイルスRNA(1μg)とヒーラー細胞内へ同時にトランス
フェクトした場合、ウイルス蛋白質の合成は検出できず、宿主細胞蛋白質合成が
回復した(レーン3)。阻害剤RNA単独の発現は細胞蛋白質の合成を妨害しな
かった(レーン4)。レーン5(パネルA)はトランスフェクション実験で使用
されたキャリアーtRNAは細胞蛋白質合成に何の影響も与えなかったことを示
している。
ポリオウイルスRNAの量を増加させての(2μg)細胞のトランスフェクシ
ョンは、ウイルス蛋白質の合成および細胞蛋白質合成のより顕著な遮断を生じた
(レーン6)。しかしながら、阻害剤RNA存在下ではウイルス蛋白質合成は阻
害され、宿主細胞蛋白質合成は対照反応で観察されたレベルまで回復した(レー
ン7)。パネルBに示された結果から阻害剤RNAを含んでいる細胞においては
ウイルス蛋白質合成が阻害されたという事実が確認された。ウイルスキャプシド
蛋白質の合成は、ウイルスRNAおよび阻害剤RNAで同時にトランスフェクト
された細胞においては阻害された(レーン3、パネルB)。
従って、インビボにおいて酵母阻害剤RNAはポリオウイルスの翻訳を効果的
に阻害した。さらに、酵母阻害剤RNAの存在下でのポリオウイルス感染の細胞
毒性効果からの単層細胞の保護はレーン3および7(図9A)にみられるように
宿主細胞蛋白質合成の回復と平行していた。
実施例10
酵母1−RNAの欠失突然変異体の分析
ポリオウイルスIRES媒介翻訳の阻害に必要とされるI−RNA配列を決定
するため、酵母I−RNAの15nt長欠失の組を発生させた(I−1、I−2
、I−3およびI−4と称される:図16)。I−RNA欠失突然変異体はオリ
ゴヌクレオチド鋳型からのT7 RNAポリメラーゼによるインビトロ転写によ
り発生させた。各々T7プロモーターアダプター配列で始まりT−RNA配列の
異なった領域からの種々の長さが続く、異なった長さのオリゴヌクレオチドが合
成された(Biosynthsis Inc.)。オリゴデオキシリボヌクレオ
チド鋳型は0.1M NaCl中で当モル量の17mer T7プライマーオリ
ゴヌクレオチドと混合し、100℃で5分間加熱した後に室温まで徐々に冷却し
てアニール化した。異なったI−RNA欠失突然変異体のヌクレオチド位置は図
16に示されている。
ポリオウイルス5UTRを含むP2 CAT RNAによりプログラムされて
いるインビトロ翻訳に対する端を切り取ったI−RNAの影響が決定された。I
−1およびI−2RNAの両方とも無傷のI−RNAのようには活性でないけれ
ども、翻訳−阻害では依然として活性であった。しかしながら、I−RNAから
のヌクレオチド31−45または46−60の欠失は、ポリオウイルスRNAの
5’UTRによりプログラムされているヒーラー溶解物でのインビトロ翻訳の阻
害により示されるように、IRES媒介翻訳を阻害する能力をほとんど全部破壊
していた。特に、ヒーラー溶解物中でのpG3CATおよびP2CAT RNA
のインビトロ翻訳に対する異なったI−RNA欠失突然変異体の影響が決定され
た。インビトロ翻訳は2pgの欠失I−RNAの存在下または不在下、約2pg
のキャップされていないp2CAT RNAかまたはpG3CAT RNAで実
施された。
これらの試験の結果は、I−RNAの3’末端半分がウイルスIRES媒介翻
訳の阻害に必要とされる主配列を含んでいることを示している。しかしながら、
最初の15ヌクレオチド(即ち、I−1で欠失している)または次の15ヌクレ
オチド(I−2)内に存在する配列を欠く突然変異体は無傷のI−RNAほど活
性でないので、これらの配列もまた阻害に一つの役割を果たしている。さらなる
欠失分析でI−RNAの25nt長断片(I−7RNA、nt 26−50)は
ウイルス翻訳−阻害においてI−RNAのように活性であることが示された。そ
の3’末端に余分の10ヌクレオチドを含む類似の欠失突然変異体(I−6RN
A、nt26−60)もまた活性であったがI−7RNAほど活性ではなかった
。しかしながら、nt1−25を含むI−RNAの断片(I−8RNA)は翻訳
−阻害においてまったく不活性であった。I−7のさらなる欠失はより小さな断
片を生じさせ(I−9、nt30−45)、それはIRES媒介翻訳を阻害する
ことができた。翻訳を阻害するこの断片(I−9)の能力は、I−3RNAに翻
訳を阻止する能力がないことを前に指摘したこととまったく一致している(なぜ
なら、I−3RNAではnt31−45が欠失している、図3)。
試験された突然変異体I−RNAのどれもpCAT RNAのキャップ依存性
翻訳を阻害することはできなかった。
端が切断されたI−RNAが翻訳の内部開始を阻害できるかどうかを決定する
ため、ビシストロン構築物からの翻訳に対するそれらの効果が決定された。ポリ
オウイルス5’UTRが隣接するCATおよびルシフェラーゼ(LUC)遺伝子
を含むビシストロン楕築物がこの実験で使用された。ポリオウイルス5’UTR
から内部的に起こるキャップ非依存性翻訳の開始はルシフェラーゼの合成を生じ
るであろうし、一方、キャップ依存性翻訳では普通はCAT蛋白質を産生するで
あろう。非感染セーラー細胞抽出物において、キャップ化ビシストロンメッセー
ジからの翻訳は異なった細胞抽出物を用いた別々の実験においてCATおよびル
シフェラーゼ蛋白質の両方を産生した。完全長I−RNAの添加はルシフェラー
ゼの合成を優先的に阻害したが、CATの合成は阻害しなかった。25nt長I
−7RNAはルシフェラーゼの産生をほとんど完全に阻害した。しかしながら、
CAT合成はI−7を含む反応において有意に刺激された。
突然変異体I−4RNAではルシフェラーゼ合成の阻害は明らかではなかった
。CAT蛋白質の合成はI−4によっても刺激された。類似の結果がI−9およ
びI−8RNAで得られた。16nt長I−9RNAはルシフェラーゼ合成を対
照と比較すると有意にルシフェラーゼ合成を阻害した。I−9存在下、CAT産
生の20%の阻害が観察されたが、ルシフェラーゼ合成は対照のほぼ85%以上
が阻害された。対照的に、I−8RNAはルシフェラーゼまたはCAT両方の合
成を有意に阻害しなかった。これらの結果はI−7およびI−9RNAはポリオ
ウイルス5’UTRによりプログラムされている翻訳の内部開始を優先的に阻害
するが、I−4およびI−8RNAは阻害しないことを示唆している。
突然変異体I−RNAがインビボでポリオウイルスRNAの翻訳を阻害するか
どうかを決定するため、ヒーラー細胞内へポリオウイルスRNAが単独でまたは
精製I−7、I−9、I−4、I−8およびI−RNAと一緒にトランスフェク
トされた(リポソームを用いて)。蛋白質は35S−メチオニンで標識され、ウイ
ルス蛋白質の合成は抗キャプシド抗血清を用いて細胞抽出物からのウイルスキャ
プシド蛋白質の免疫沈降によりモニターした。偽トランスフェクト細胞からはキ
ャプシド蛋白質は沈澱できなかった。ポリオウイルスRNA単独での細胞のトラ
ンスフェクションでは、キャプシド蛋白質の合成が明瞭に検出された。I−7R
NAまたはT−RNAとポリオウイルスRNAの同時トランスフェクションはキ
ャプシド蛋白質合成の90%を超える阻害が得られた。I−9RNAの活性はI
−7またはI−RNAで観察された活性の約50%であった。しかしながら、I
−9RNAのより高い濃度では、I−7RNAで観察された程度までウイルス蛋
白質合成を阻害した。予想されるように、I−8RNAおよびI−4RNAはウ
イルス蛋白質の翻訳を阻害できなかった。ポリオウイルスRNA単独でトランス
フェクトされた細胞およびPV RNAおよびI−7またはI−9RNAの混合
物でトランスフェクト細胞両方で類似の量の細胞内ポリオウイルスRNAが検出
されたことに注目すべきであり、I−RNAまたはその誘導体を含む細胞におい
てもPV RNAの安定度は有意に変化しないことを示唆している。
実施例11
完全長および欠失I−RNAと相互作用する細胞性蛋白質の同定
上記52kDa I−RNA結合蛋白質はヒトLa自己抗原と同一であるべき
ことが示され、および種々の他の細胞性蛋白質因子が完全長または欠失I−RN
Aへ結合することが示された。
移動度シフト実験のため、50マイクログラムのヒーラーS10抽出物または
10pgのヒーラーリボソーム塩洗浄物(RSW)を5mM HEPES(pH
7.6)、25mM KCl、2mM MgCl2、2mM DTT、0.1m
M EDTA、1.5mM ATP、2mM GTPおよび3.8%グリセロー
ルを含む15μlの反応混合物中、4pgのポリ(dI−dC)(Pharma
cia)と30℃にて10分間、前もってインキュベートした。競合実験のため
には、100倍モル過剰の非標識競合剤RNAを反応液に加え、30℃にて10
分間インキュベートした。最後に、5から10フェムトモルの標識RNAプロー
ブを各々の反応混合物を加えさらに30℃にて20分間インキュベートした。5
%グリセロールおよび0.02%ずつのブロモフェノールブルーおよびキシレン
シアノールの最終濃度になるように反応混合物に3マイクロリットルのゲル負荷
色素を添加した。スーパーシフトアッセイのため、S10抽出物は2.5μlの
非免疫ヒト血清かまたは2.5μlのLa蛋白質に対する免疫ヒト血清と氷上で
10分、前もってインキュベートし、各々の32P−標識RNAプローブを反応混
合物に加えた後、氷上でさらに20分インキュベーションを続けた。RNA−蛋
白質複合体は0.5X TBE中に5%グリセロールを含む4%ポリアクリルア
ミドゲル(アクリルアミド:ビスの比39:1)で分析した。
UV−誘導架橋形成および免疫沈降分析のためには、上記のように発生させた32
P−標識RNA−蛋白質複合体をマイクロタイタープレート中、2から3cm
の距離からUVランプ(マルチバンドUV、254/366nm、モデルUGL
;25 UVP Inc.)で15分間照射した。非結合RNAは20μgのR
Nase Aおよび20単位のRNase T1の混合物を用い、37℃で15
分間切断した。標識複合体の免疫沈降のためには、2−5μlの非免疫ヒト血清
かまたは狼瘡症患者からの免疫ヒト血清(標品La抗体)を加え、200μlの
1xRIPA緩衝液[5mMトリス(pH7.9)、150mM NaCl、1
%トリトンX−100、0.1%SDSおよび1%デオキシコール酸ナトリウム
]存在下、氷上に2時間維持した。各々の反応チューブに5mgのプロテインA
セファロースを加え、低温室で1時間ゆっくりと振動させ、その後4℃で5分間
、12,000rpmにて遠心分離した。ビーズは1xRTPAで3回洗浄して
非特異的結合を減少させた。最後に、1xSDSゲル負荷色素(50mMトリス
[pH6.8]、100mM DTT、2%SDS、0.1%BPB、10%グ
リセロール)に再懸濁したビーズを100℃で5分間加熱し、SDS14%ポリ
アクリルアミドゲルで分析した。
図12に示したように、標識I−RNAおよびヒーラー細胞蛋白質を含んでい
るゲル遅延複合体(Cで示されている)はヒトLa蛋白質への抗体によりスーパ
ーシフトされた(SCで示されている)(図12、左のゲル、レーン3および4
)。標識I−RNAおよび精製組換え体La蛋白質と形成された類似の複合体(
レーン5、複合体C)もまたヒーラー細胞抽出物で観察されたように同一の相対
的位置へ抗La抗体でスーパーシフトできた。第二のより遅く移動する複合体も
また精製La蛋白質(レーン5)で観察され、その大部分は抗La抗体でスーパ
ーシフトできなかった(レーン6)。これらの結果は、標識I−RNAおよびヒ
ーラー細胞抽出物をインキュベートすることにより形成された複合体CはLa自
己抗原を含んでいることを示唆している。複合体Cが本当にLa蛋白質を含んで
いることを確認するため、ヒーラー細胞抽出物または精製La蛋白質を用いて32
P−標識I−RNAまたは5’UTR(559−624nt)プローブでのUV
架橋形成研究が実施された。UV架橋複合体は次に抗Laまたは非免疫血清で免
疫沈
降され、SDS−PAGEにより分析された。標識I−RNAかまたはUTRプ
ローブを用いてヒーラー細胞抽出物で複合体が形成された場合、52kDaUV
架橋蛋白質は抗La抗体により特異的に免疫沈降された(図12、右のゲル、レ
ーン2および5)。この52kDaバンドは精製La蛋白質と32P I−RNA
(レーン3)または32P 5’UTR(レーン6)をインキュベートすることに
より形成されたUV架橋、抗La免疫沈降複合体と共移動した。レーン2および
5に観察される顕著な〜120kDa複合体はLa抗体に対して特異的ではなく
、非免疫血清を含むレーンにおいても検出されている。これらの結果は、I−R
NAがヒトLa自己抗原と相互作用することを示している。
I−RNAにより結合されたp52蛋白質の同一性はIRES媒介翻訳の阻害
がLa抗原の添加により逆転されることを実証することによりさらに確認された
。ポリオウイルスはキャップ結合蛋白質複合体のp220成分を蛋白分解的に切
断することにより宿主細胞mRNAのキャップ依存性翻訳を阻害することが知ら
れている。従って、ウイルス感染細胞から誘導された抽出物はキャップ非依存性
IRES媒介翻訳にのみ活性であり、キャップ依存性翻訳には活性を示さない。
IRES媒介翻訳のI−RNA誘導阻害が外因性精製La蛋白質の添加により
特異的になくなるかどうかを決定するため、ウイルス感染細胞抽出物におけるp
2CAT RNA(5−UTR−CAT)の翻訳が実施された。PV感染セーラ
ー細胞抽出物においてのp2 CAT RNAの翻訳はI−RNAにより有意に
阻害された。感染細胞抽出物へ精製La蛋白質が添加された場合、ウイルス5’
UTR媒介翻訳の有意な刺激が観察された。このことは多分、ウイルス感染細胞
におけるLa蛋白質が極限量であるためであろう。I−RNAにより媒介された
翻訳の阻害は精製La蛋白質の添加により、ほとんどLa蛋白質のみを含む抽出
物で観察された程度まで逆転できる。対照的に、等量のBASの添加はIRES
媒介翻訳を回復できなかった。ウイルス感染細胞抽出物の代わりに偽感染抽出物
が使用された場合、類似の結果が観察された。
I−RNA突然変異体への種々の蛋白質因子の結合も試験された。上に示した
結果はIRES媒介翻訳の阻害における種々のI−RNA突然変異体の特異な活
性を示した。I−7およびI−9RNAはポリオウイルスIRES媒介翻訳を阻
害できたのに対し、I−4およびI−8RNAは翻訳阻害剤としてはほとんど全
く不活性であった。類似のまたは異なった蛋白質がこれらのRNAにより結合さ
れるかどうかを決定するため、種々の標識RNAプローブがヒーラー蛋白質とイ
ンキュベートされ、蛋白質−RNA複合体はUV架橋形成、続いてのリボヌクレ
アーゼ消化により試験された。
これらの実験のためヒーラー蛋白質の2つの供給源が使用された、S10およ
びリボソーム塩洗浄(RSW)。無ヒーラー細胞系抽出物(S10)およびRS
W調製物。ヒーラーS10細胞抽出物は前に記載したように調製された。ヒーラ
ー細胞からのリボソーム塩洗浄物はBrownおよびEhrenfeld(33
)により記載されている方法をいくつか変更して調製された。ヒーラー細胞培養
物(4x105細胞/ml)を遠心分離して集め、冷等張緩衝液(35mM H
EPES、pH7.5、146mM NaCl 11mMグルコース)で3回洗
浄し、充填細胞容量の2倍の溶解緩衝液(10mM KCl、1.5mM酢酸マ
グネシウム、20mM HEPES、pH7.4、および1mM DTT)に再
懸濁し、続いて膨潤させるために氷上で10分間インキュベーションを行った。
細胞は0℃にてタイプBダウンスホモジナイザー中、50ストロークで破壊した
。破壊後、抽出物はSorvall SS34ローター中、4℃で15分間10
,000rpmにて遠心分離して核およびミトコンドリア分画を除去した。上清
液(S10)はBeckman Ti60ローター中4℃で2時間50,000
rpmにて遠心分離した。リボソームペレットは氷浴上穏やかに振とうさせなが
ら溶解緩衝液に約250A260/mlの濃度で再懸濁した。次に、KCl濃度
を500mMに調節し、溶液を氷浴上で30分間撹拌した。得られた溶液は4℃
で2時間50,000rpmにて遠心分離した。上清液(塩洗浄)には次に0−
70%硫酸アンモニウム沈澱を実施した。開始因子を含むペレットは少量の透析
緩衝液(グリセロールなし)に溶解し、5mMのトリス、100mM KCl、
0.05mM EDTA、1mM DTTおよび5%グリセロールを含む透析緩
衝液(pH7.5)に対して4℃で一夜透析した。透析物は4℃で10分間10
,000rpmにて遠心分離し、上清を少量ずついくつかの前もって冷却した試
験管に入れ、−70℃で保存した。
完全長標識I−RNAがヒーラーS10抽出物とインキュベートされた場合、
100、70、48および46kDaの副バンドに加えて、約52kDaおよび
110kDaの分子量を持つ2つの主バンドが検出された。リボソーム塩洗浄蛋
白質が使用された場合、蛋白質−ヌクレオチド複合体のプロフィールはS10の
ものと著しく異なっていた。第一に、110kDaバンドはRSWを含む反応で
は非常に少量しか存在しない。第二に、52kDa蛋白質は54−52kDaの
タブレットとして存在し、S10のものと比較して相対的に量が少なかった。第
三に、RSW含有反応においては約80および37kDaの新しいバンドが明か
であった。完全長I−RNAと対照的に、UV架橋形成実験において端が切断さ
れた標識I−RNAが使用された場合、各々のRNAの蛋白質−ヌクレオチドプ
ロフィールはS10およびRSWの間で著しく類似していた。I−4およびI−
8RNAは主として70、52、48、46および37kDaポリペプチドに結
合するのに対し、I−7およびI−9RNAは80kDaの新規バンドと相互作
用した。80kDaバンドはI−7RNAでより著しかった。さらに、I−4お
よびI−8RNAにより結合された70kDaポリペプチドはI−7およびI−
9RNAでは検出できなかった。別の非常に大きい分子量のポリペプチド(22
0kDaマーカーより速く移動する)はI−4およびI−8RNAを含む反応に
おいてのみ存在した。同様に、RSWを利用する実験において、100kDaポ
リペプチドはI−7およびI−9RNAにより優先的に結合された。競合実験に
おいて、非標識I−7およびI−4RNAは標識I−7およびI−4RNAプロ
ーブにより結合されたすべての主蛋白質バンドで競合した。例えば、I−7RN
Aに複合した3つすべてのポリペプチド(80kDa、52kDaおよび37k
Da)は非標識I−7RNAおよびI−4RNAにより競合されて解離されるが
、非特異的RNAではそういうことはなかった。標識I−4RNAでも同様に、
70、52および37kDaバンドは非標識I−7およびI−4RNAと競合す
るが、非特異的競合剤は競合しなかった。より大きな分子量のポリペプチドは非
特異的にI−4へ結合するが、非特異的競合剤により完全に競合されて解離され
る。これらの結果は、活性なI−7および不活性なI−4RNAは同一の2つの
ポリペプチド(52および37kDa)を結合するが、これらの端を切り取った
2つ
のI−RNAは少なくとも1つのポリペプチドへの結合においてお互いに異なっ
ていることを示している:I−7RNAは80kDaポリペプチドを結合するが
、I−4RNAは70kDaポリペプチドを結合する。引用文献
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これまで説明および例示してきた原理を応用して、当業者は、一つまたはそれ
以上の蛋白質の結合により翻訳が内部リボソーム結合部位で開始される任意の所
望の標的RNAに対し、効果的な阻害剤RNAまたはその構造模倣物を設計し、
および本発明に従った翻訳阻害の最適条件を決定できることは明白である。
本明細書に引用した各々の報文の全記述は、本明細書において援用される。
【手続補正書】
【提出日】1997年4月16日
【補正内容】
1.明細書の記載を以下の通り補正する。
頁 行 補正前 補正後
8 22 図1 図1A〜1D
8 23 パネルA 図1A
8 25 パネルB 図1B
8 28 パネルC 図1C
9 6 パネルD 図1D
9 12 図2 図2A〜2D
9 13 パネルA、BおよびC 図2A〜2C
9 19 パネルA 図2A
9 19 パネルD 図2D
10 7 図4 図4A〜4B
10 9 パネルA 図4A
10 14 パネルB 図4B
10 26 図6 図6A〜6B
10 28 パネルA 図6A
11 4 パネルA 図6A
11 5 パネルB 図6B
11 11 図7 図7A〜7C
11 13 各パネル 各図
11 13 パネルA 図7A
11 14 パネルA 図7A
11 20 パネルB 図7B
11 24 パネルC 図7C
12 1 図8 図8A〜8B
12 2 パネルA 図8A
12 9 パネルB 図8B
12 26 図10 図10A〜10B
12 27 パネルAおよびB 図10Aおよび10B
13 1 図11 図11A〜11B
13 15 図12 図12A〜12B
13 17 左 図12A
13 17 右 図12B
14 19 図15 図15A〜15B
14 19 図10 図10A〜10B
14 21 パネルB 図15B
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 ダスグプタ,アシム
アメリカ合衆国カリフォルニア州90034,
ロサンジェルス,マルコルム・アベニュー
3314
(72)発明者 コワード,ピーター
アメリカ合衆国カリフォルニア州94141−
9100,サンフランシスコ,ピーオーボック
ス 419100,グラッドストン・インスティ
チュート(番地なし)