【発明の詳細な説明】
特に自動車用の変速装置にエンジンを回転結合するための
ダブルダンプフライホイール
本発明は、エンジンシャフトおよび変速装置の入力部材に、それぞれ固定され
た2つの同軸状フライホイール部品と、弾性反作用トルクに抗して回転角方向の
変位を可能にしながら、平行な摩擦ダンピング手段により、摩擦2つのフライホ
イール部品を共に弾性的に結合する結合手段と、結合手段とオフセットフライホ
イール部品と称される第1フライホイール部品との間に挟持されたトルク制限部
材とを備え、このトルク制限部材が、まずオフセットフライホイール部品の溝に
係合し、この溝がフライホイールの軸線に直角な2つの平坦なフランクと、これ
ら2つのフランクが合流するベース部分とを有し、第1フランクおよびベース部
分が、オフセットフライホイール部品内に形成され、このオフセットフライホイ
ール部品が、この目的のために端部の外周部に設けられた、軸方向に配置された
フランジを有し、他方、第2フランクが前記フランジに係合する環状フランジ内
に係合し、トルク制限部材が第2に面と面が対向した状態の、2対のクラウン部
品を含み、これらクラウン部品がこれら部品を回転角方向にオフセットさせるト
ルクを決定するようスプリング手段により、互いに接近するよう押圧されており
、フランクが2対の面と面が対向した第1のクラウン部品を構成し、トルク制限
部材により支持されたパッドにより、第1クラウン部材と面と面が対向した状態
の第2クラウン部品が構成され、オフセットフライホイール部品の外周端部の近
くに配置され、他方、スプリング手段がフライホイールの軸線に平行な方向に面
と面が対向したクラウン部品を押圧するように配置されており、回転角方向に繰
り返された間隔でトルク制限部材のほぼ中心円に隔置された、特に自動車用の変
速装置にエンジンを回転結合するためのダブルダンプフライホイールに関する。
ピストンエンジン、例えば自動車に装備されるようなピストンエンジンは、振
動、従って回転振動を発生し、この振動の周波数は、シリンダ数およびエンジン
サイクル中のストローク数に従い、エンジンの回転速度と関連することは周知で
ある。これら振動は、許容できないノイズ源となり、変速装置の種々の部品を早
期に摩耗させるよう働く。
これら振動は、変速装置内で共振を生じさせる程度まで、より顕著となること
もある。このような共振は、回転部品の慣性と、トランスミッションの部品のね
じり剛性と、適応可能な場合には、摩擦または粘性ダンピング効果との組み合わ
せの結果生じるものである。
これら欠点を克服するために、これまで変速装置のうちの部品に、機械的ダン
パーを設けることにより、回転振動(振れ)を吸収する手段が設けられてきた。
これらダンパーは、駆動部材と被動部材との間に結合手段を含み、この結合手段
は円周方向に配置され、平均伝達トルクに対応する平衡位置を中心として、弾性
反作用トルクに抗して前記部材の間で回転角方向に変位できるようになっている
。この結合手段は、平行に配置された摩擦ダンピング手段を含む。
このように、ギアボックスを含むような変速装置では、このギアボックス内の
ギアのクラッシングが発生できないレベルまで振動の振幅を下げることができる
。
これまで長い間、ダンパーは専らクラッチの摩擦ホイール内に取り付けられて
いた。特に燃費を更に低減するという観点から、エンジンおよび変速装置を技術
開発に関連し、既に限界点に達している。これに関連し、このように燃費を低減
するには、特にエンジンの低速走行モードを下げ、この低速走行モードにおける
エンジントルクを大きくし、ケーシングの重量を減らし、ギアボックスに第5ギ
ア比を設け、変速装置で流動性のより大きいオイルを使用すればよい。
このようなすべての対策により、エンジンから変速装置までの振動する機械系
の共振周波数は、エンジンの低速走行レンジ外となる。
このような理由から、慣性率を変えるような新しい対策が必要となった。この
ような対策は、エンジンのフライホイールを2つの部品に分割し、これら2つの
部品の間に摩擦ダンピング手段を備えた補強材を挿入することである。
従って、これまでにダブルダンプフライホイールと称されるフライホイールが
提案されている。このフライホイールでは、2つの同軸状フライホイール部品の
間に結合手段と摩擦ダンピング手段とが挟持され、同軸状フライホイール部品の
一方は第1フライホイール部品であり、エンジンシャフトと共に回転できるよう
、このエンジンシャフトに固定されており、他方の、第2フライホイール部品は
、変速装置の入力部品、すなわち一般にクラッチに固定されている。この第2フ
ラ
イホイール部品は、反作用プレートを構成する。
第1フライホイール部品および第2フライホイール部品の固有の慣性により、
振動フィルタのカットオフ周波数を低速走行モードおよび通常走行モードにおけ
るエンジンによって決まる振動の基本(共振)周波数よりも低くできる。
更に、ダブルフライホイールの必要な大きさにより、大きく回転角方向に変位
でき、伝達トルクに大きく比例しながら剛性が増加する結合手段をフライホイー
ル部品の間に形成されたキャビティ内に比較的容易に嵌合できる。
しかし、伝達トルクが小さい時にカットオフ周波数が低いこと、および回転角
方向の変位量を大きくすることができる結果、エンジン始動時に、結合手段が破
損することがある。
この理由は次のとおりである。
スタータピニオンが、第1フライホイール部品の周辺に取り付けられているス
タータクラウンに係合する際、結合手段はスタータによって加えられるトルクに
より回転角方向に最大変位するように押圧されるが、一方、第2フライホイール
部品は静止したままであり、エンジンの回転速度の増加および振動の基本周波数
によってエンジンは、ダンパーのカットオフ周波数すなわち共振周波数を通過し
、この時に共振によって大きな振幅の振動が生じるからである。
例えば、米国特許第4,274,524号明細書に記載されているように、このような
問題を克服するために、これまでに結合手段とオフセットフライホイール部品と
称されるフライホイール部品の一方との間に、作動的にトルク制限部材が挟持さ
れたダブルダンプフライホイールを装備することが提案されている。
このようなトルク制限部材は、互いに面と面が対抗した状態になっている少な
くとも一対のクラウン部品を含むことができ、これらクラウン部品は、それぞれ
結合手段およびオフセットフライホイール部品に固定され、これら面と面が対向
したクラウン部品を円周方向に変位させる時のトルクを決定するよう、スプリン
グ手段によって互いに接近するように押圧されている。
このように結合手段に過度の力が加えられることが防止され、この結果、結合
手段は早期に劣化することがなくなる。スプリング手段として一般に、ベベルリ
ングが使用されているが、このベベルリングは大きな径に取り付けられ、厚さが
薄いという理由から、ベベルリングによって生じる力をどのように制御するかと
いう問題がある。
このような理由から、これまで国際特許公開第WO92/09825号公報および英国特
許第2,235,963号明細書において、フライホイール部品の外周部に形成されたオ
フセットフライホイール部品の溝に、トルク制限部材が係合された装置を設ける
ことが提案されている。
この溝は、フライホイールの軸線に対し直角な2つの平らなフランクと、これ
ら2つのフランクが合流するベース部分を有し、第1フランクおよびベース部分
は、第1フライホイール部品の横方向部分および第1フライホイール部品の軸方
向に配置された環状フランジに形成され、前記フランジに係合する環状フランジ
内に第2フランクが形成され、双方のフランクは、2つの対のうちの第1の、面
と面が対向するクラウン部品を構成し、一方、環状部材のそれぞれの面に挿入さ
れたパッドによって第1クラウン部品と面と面が対向した第2のクラウン部品が
構成される。
ダブルフライホイーオルの軸線に平行な方向に、面と面が対向したクラウン部
品を押圧するようにスプリング手段が配置されており、これらスプリング手段は
、間隔が回転方向に繰り返されるようトルク制限部材のほぼ中央の円に沿って隔
置されている。
実際に、パッドの数は少なくなっており、係合手段は、前記部材と第2フライ
ホイール部品に固定された対向するディスクとの間に、円周方向に配置された円
周方向に作用するスプリングとなっている。
英国特許第2,245,963号明細書の図4および図5に示された実施例では、パッ
ドは円周方向にスプリングと交互になるように配置されている。
このような構造は満足できるものであるが、第1フライホイール部品に対し、
トルク制限部材を変位(すなわちスライド)させる時のトルクを更に良好に制御
するには、パッドの数を増すことが好ましい。
パッドの数を増すと、スプリングの円周方向の長さが短くなり、よって良好な
振動ダンピング効果が低下するので、トルクを良好に制御することは不可能であ
る。
本発明の課題は振動を良好にダンピングしながら、パッドの数を増すことにあ
る。
本発明によれば、上記タイプのダブルダンプフライホイールは、トルク制限部
材がフライホイールの軸線に直角な2つの平らな面を有するリム部分を備えたリ
ング状をしており、各リングがパッドの挿入されるリセスを含み、パッドから取
り付けピンの間に挟持された等距離の対としてオフセットフライホイール部品内
の溝の当該フランクに円周方向に当接し、前記取り付けピンが、第2フライホイ
ール部品に固定された取り付けピンの内側リングと同心状の外側リング内に配置
されており、結合手段が2つのリングの取り付けピンの間に作動的に挟持され、
径方向に作用することを特徴とする。
本発明により、トルク制限部材は乾式作動し、これにより表面部品に加わる圧
力により、局部的表面部品から発生する基本的トルクと、対向するクラウン部品
の間の摩擦係数およびフライホイールの軸線からの表面部品の径方向の距離によ
って決まる最大摩擦トルクを良好に制御できるようにする。
対向するクラウン部品の表面状態を適当に選択することにより、乾燥時の摩擦
係数を定数とすることができれば、精度、圧力ならびに径方向距離の制御性によ
って最大トルクの精度を決定できる。径方向の距離の精度は、フライホイール内
で利用できる最大直径に対向するクラウン部品が実際に配置されるという事実か
ら得られるものであり、これにより絶対的エラーを実際に一定としながら相対的
エラーを最小にできる。
スプリング手段によって生じる力を加える点が、トルク制限部材の中心円上に
ほぼ放射状に位置し、これによって圧力の径方向の分布がバランスするというこ
と、およびパッドが取り付けピンと交互に円周方向に配置され、これにより取り
付けピンを接近させ、等しい力を等しい周辺の円弧に加えることができるので、
周辺部まわりで円周方向にこれら多数の点が繰り返して分布することの結果とし
て圧力の精度および制御可能性が得られる。
リム部分を有するトルク制限部材は、英国特許第2,235,963号のトルク制限部
材よりも形状が簡単であり、リム部分が連続しているために頑丈となっているこ
とが理解できよう。
係合手段の径方向の作用により、第1フライホイール部品と第2フライホイー
ル部品との間で大きな回転角方向の変位を得ることができる。
オフセットフライホイール部品は、第1フライホイール部品と称される部品で
あり、エンジンシャフトと共に回転できるよう、このエンジンシャフトに固定さ
れる。トルク制限部材の固有の質量にリンクされた慣性は、対向するクラウン部
品の下流側に配置され、エンジン始動時に慣性トルクを発生し、この慣性トルク
は、第2フライホイール部品および結合手段の慣性トルクに加えられ、対向する
クラウン部品を変位させるよう押圧し、よってエンジンの始動によって生じる係
合手段の反作用トルクを制限する。
更に好ましくは、スプリング手段は円錐部が交互方向に配置されたベルビーユ
リングの軸方向スタックから成る。このような構造により、リングは実質的に側
方には変形できないので、遠心力に対する影響を小さくしながら、スタックの厚
みをかなり精密に較正できる。
本発明の好ましい実施例では、トルク制限部材は係合手段が取り付けられるリ
ム部分を含み、このリム部分は、フライホイールの軸線に対して直角な2つの平
らな面を有し、フライホイールの軸線に直角な2つの平らなフランクと、2つの
フランクが合流するベース部分を有する溝内に係合し、第1フランクおよびベー
ス部分は、オフセットフライホイール部品のフランジ内に形成されており、第2
フランクは、前記フランジに係合する環状フランジ部材に形成されており、フラ
ンクは2つの対の第1の対向するクラウン部品を構成する。
一方、第1クラウン部品に対向する第2クラウン部品は、リム部分のそれぞれ
の面内に挿入されたパッドから成り、スプリング手段が、ハウジング内に定着さ
れ、ハウジングはフライホイールの軸線に平行なリム部分に形成され、対応する
パッドの径方向内側にて前記リム部分の面にて開く。
従って、スプリング手段はリム部分およびスプリングに係合し、これにより故
障の恐れが少なくなる。
1つの特定の実施例では、結合手段は円筒形螺旋スプリングを含み、フライホ
イールの軸線を中心とする2つの同軸状環状リング内に配置された2つの取り付
けピンの間に引っ張り状態で取り付けられており、外側の環状リングは、トルク
制限手段のリム部分によって支持されており、内側環状リングは、第2フライホ
イール部品の一部であり、よって伝達トルクがない場合に、スプリングの軸線は
径方向に延びる。
このような構造の結果、リングの間で作動する係合手段の剛性は、ゼロトルク
時にゼロとなり、伝達トルクと共にシャープに増加する。このように、高トルク
の伝達を可能にしながら低伝達トルク時の振動吸収効率を増加できる。
第1フライホイール部品およびフランジは、英国特許第2,235,963号のような
シールされたチャンバを構成せず、よって構造が安価となることが理解できよう
。更に、パッドの数を何倍にもできるので、例えば各面に12個のパッドを設け
ることも可能である。
添付図面を参照し、次の説明を読めば、本発明の特徴および利点がより詳細に
理解できよう。
図1は、第2フライホイール部品が除かれた、本発明に係わるダブルダンプフ
ライホイールの部分正面図である。
図2は、フライホイールの軸線を通った、図1のダブルフライホイールの横方
向断面図である。
図3は、第1フライホイール部品に対筒トルク制限部材の取り付けを示す詳細
図である。
図4は、カップリング手段の別の実施例を示す。
添付図面は、自動車用のダブルダンプフライホイールを示す。このフライホイ
ールは、自動車のエンジンシャフトに固定される第1フライホイール部品1と、
自動車の変速装置の入力部材に固定される第2フライホイール部品2とを含み、
これらフライホイール部品は、同軸状に取り付けられ、径方向に作用する結合手
段3と平行にこれら結合手段3を介して軸方向に作用する摩擦ダンピング手段4
と弾性的に結合されている。
更に、結合手段3とフライホイール部品の一方、本例では第2フライホイール
部品2との間に挟持されたトルク制限部材5が設けられている。
以下、本明細書では、第1フライホイール部品1および第2フライホイール部
品2をそれぞれ第1フライホイール1および第2フライホイール2と称し、トル
ク制限部材5をトルク制限器5と称する。
本例では、第1フライホイール2は挟持されたベアリング手段21を介して第
2フライホイール1上に同軸状かつ回転自在に取り付けられており、ベアリング
手段21は、本例ではボールベアリングから成り、第2フライホイール2の内周
部と第1フライホイール1の中心ハブ10の外周部との間に挟持されている。
ダンピング手段4はフランス特許公開第2,733,810号公報に記載されているよ
うに、第2フライホイール2によって支持されたカセットと、第1フライホイー
ル1のハブ10によって支持された駆動リングから成る。より詳細については、
上記フランス特許出願を詳細に参照できる。
前記ダンピング手段4は、乾式作動するので、2つのヨークが共に締結された
カセットと、これらヨークの間に設けられた摩擦ディスクのスタックとを含み、
摩擦ディスクは回転時に(カセットのヨークの一方の軸方向ラグにより)、カセ
ットと更に駆動リングと交互に結合する。摩擦ディスクのスタックには、カセッ
トに当接する(すなわちカセットの最も外側のヨークに当接する)ベルビーユリ
ングによって圧力がかけられている。
従って、摩擦手段4はベアリング手段21に対し第1フライホイール1のキャ
ビティの外側に配置される。
より詳細には、ほぼ横方向に配置された第1フライホイール1は、その外周端
部に軸方向に配置された環状フランジ12を含み、この環状フランジ12は、結
合手段3が収容される前記キャビティを軸方向に配置された中心ハブ10と共に
構成する。
前記ハブ10を貫通するねじ切りされたスタッド10bにより、自動車のエン
ジンのクランクシャフトの出力フランジにハブ10が取り付けられるようになっ
ており、ハブの内側ボア10aは、前記クランクシャフトによってセンタリング
される。
自動車のスタータによって駆動されるようになっているスタータクラウン11
は、フランジ12の径方向の位置でフランジ12の近くにて第1フライホイール
1の外周部に固定されている。第2フライホイール2は、ほぼ横方向に配置され
ており、それ自体公知の態様でクラッチ摩擦ホイール(図示せず)を有するクラ
ッチの反作用プレートを構成する。反作用プレートは、下流側にギアボックスと
ライブアクスル(活軸)を駆動する差動装置を含む自動車の変速装置の入力部材
となっている。このようにするため、クラッチ摩擦ホイールは、それ自体公知の
態様でハブを含み、このハブは、本例ではハブと共に回転できるよう、ギアボッ
クスの入力シャフトに結合するように内側にスプラインが設けられており、よっ
て第2フライホイール2は前記入力部材に回転自在に、かつ解放自在に結合され
る。
この目的のため、第2フライホイール2は、第1フライホイール1と反対側に
平らな面20を含み、この面は第1フライホイール1および第2フライホイール
2のフライホイール軸線と称される共通対称軸線に対し直角になっている。この
面20は、クラッチ摩擦ホイールと係合するための摩擦面となっており、クラッ
チ摩擦ホイールは、反作用プレートとクラッチの圧力プレートとの間に解放自在
にグリップされるようになっており、一般に圧力プレートにはこのためにダイヤ
フラムが設けられる。
結合手段3(本例では、そのうちの12個が示されている)が弾性反作用トル
クを発生するように配置されており、この反作用トルクの平均値は、エンジンに
より変速装置の入力側に伝達されるトルクに等しくなっている。
前記結合手段3は引っ張り時に作動し、第1ベース部分31および第2ベース
部分32を備えた円筒形ハウジング32内に円筒形螺旋スプリング34を含み、
これら螺旋スプリング34はハウジング33内に取り付けられ、第1ベース部分
31とピストン30aとの間に圧縮された状態に保持され、ピストン30aは第
1ベース部分31を貫通する軸方向ピストンロッド30に固定されている。
ピストンロッド30は、その自由端が対応する数の取り付けピン22に連接さ
れ、取り付けピン22は内側の環状リング内に配置され、中心ハブ10のできる
だけ近くにて第2フライホイール2に固定される。第2ベース部分32は、ラグ
を含み、これらラグは外側環状リング内に配置され、外側環状リングはピン22
によって構成されたリングと同軸状であり、第1フライホイール1の外周部に接
近している。
ピン15のこのような環状リングは、常時挟持されたトルク制限器5により第
1フライホイール1によって駆動される。この実施例では、ピン15、22は内
側にショルダーが設けられた連接ブッシュによって囲まれており、前記ピン15
、22は前記ブッシュをフライホイール2および制限器5にそれぞれ固定するリ
ベットから成り、これらブッシュにラグおよびピストンロッドが連接されている
。
トルク制限器5は、連続したリム部分50を備えたリング状の組立体から成り
、このリム部分50は、フライホイールの軸線に対して直角に延びる2つの平ら
な面51および52を有する。リム部分50は、U字形横断面を有する溝内に係
合されており、この溝は第1フライホイール1の外周部においてこのフライホイ
ール1内に形成されており、ベース部分12bにて共に合流する2つのフランク
12aおよび13aを有する。第1フライホイール1の端の外周部を構成するフ
ランジ12には、第1フランク12aおよびベース部分12bが形成されている
。
フランジ12の自由端に係合する環状フランジ部材13には、第2フランク1
3aが形成されている。
フランク12aおよび面51は、第1の対のクラウン部品を面と面が対向した
状態に構成する。伝達トルクが最大値に達すると、これらクラウン部品の間にス
ライド効果が発生する。このようなスライド作用により、トルク制限器5のリム
部分50と第1フライホイール1との間に回転角方向のずれが発生する。これに
関連し、このフライホイールをオフセットフライホイール部品を称す。フランク
13aおよび面52は、当然ながら面と面が対向した状態の第2の対のクラウン
部品と構成する。
フランク12aおよび13aは、それぞれフランジ12およびフランジ13の
金属を機械加工して設けられる。面51および52の各々は12個のパッド53
および54をそれぞれ含み、これらパッドはリム部分50の面内に形成されたリ
セスに挿入される。フランク12a、13aと協働するのはパッド53、54で
ある。
リム部分50内にて、回転角方向に所定の間隔で(図1参照)フライホイール
の軸線と平行な軸線を有する円筒形ハウジング57が形成され、これらハウジン
グは、パッド54下の面52で開いた状態となっている。これらハウジングは、
円錐部が交互方向に向き合った状態に配置されたベルビーユリングのスタック
57aを含み、よって大きなベースまたは小さなベースを介して連続するリング
が互いに係合し、大きな変位を可能にする大剛性のスプリングを構成している。
スプリングを構成するこれらスタック57aは、リム部分50から離間するよう
にパッド54を押圧するので、噛み付きの恐れなく良好に制御され、実際に等し
い力により、溝のフランク12aおよび13aにそれぞれパッド53および54
が押圧されるようになっている。
面と面が対向したクラウン部品の間で所定の摩擦係数を得るために、パッド5
3および54の外側表面に接着により、摩擦ライナー材料のリング55および5
6が固定され、フランク12a、13aと協働するようになっている。ライナー
55、56の表面積はパッド53、54の表面積よりも狭くなっている。
ハウジング57は、パッド54のほぼ中心円である円に沿って放射状に配置さ
れており、パッドはバランスのとれた状態で更に1つの特徴によりトルク制限器
5の取り付けピン15の間に介在された円周方向に等しい距離の対としてフラン
ク13aに当接している。
この結果、パッド54およびパッド53は、このような周辺部の発生にも拘わ
らず反作用により、前周にわたる一定圧力で溝フランク13aおよび12aに係
合するように押圧される。「回転角方向に繰り返された間隔」なる用語で表現さ
れるこのようなバランスのとれた円周方向の分布となっている。トルク制限器が
最大に利用可能な直径にトルク制限器5を配置し、面と面が互いに対向した状態
のクラウン部品の間に圧力を良好に制御しながら分布させるために、オフセット
フライホイール部品(本例では第1フライホイール1となっている)に対して、
トルク制限器をオフセット(すなわちスライド)させる摩擦トルクを正確に制御
する上で好ましいことを先に説明した。
パッド54、53は背側リングを有し、これらリングはそれぞれ円筒形ハウジ
ング57および別の円筒形ハウジング157内にそれぞれ係合し、リム部分50
と共に回転するようにパッドを結合している。本例では、各パッド53、54に
対し2つのハウジングが設けられている。
エンジンが既に始動した状態の通常の作動時には、伝達トルクはエンジンが供
給できる最大トルクを超えることはなく、従ってトルク制限器5はオフセットフ
ライホイール部品1に対してオフセットできないことが理解できよう。更にエン
ジンが、スタータによって始動されている際に、伝達トルクがトルク制限器5の
リム部分50をオフセットフライホイール部分1に対して、オフセットさせる制
限トルクに達する場合、ダブルフライホイールに加えられる過度のトルクは、リ
ム部分50が第1フライホイール1に対して、回転角方向にオフセット変位する
間のトルク制限器5の摩擦によって吸収される。
このような制限トルクは、スタータによって生じる力により、またはダブルダ
ンプフライホイールおよび変速機の下流側部品によって構成されるダンパーのカ
ットオフ周波数に近い誘導共振により、このような制限トルクに達し得る。
これより後述するように、振動を極めて良好に吸収するように、本例では径方
向に働く結合手段3に戻るため、ピストン30aと第1ベース部分31との間の
スプリング34によって生じる力によりピストンロッド30に対する引っ張り力
が生じる。
取り付けピン50および22に加わる力は引っ張り力の方向が、フライホイー
ルの軸線を通るよう、これらピンを径方向に整合させ、これによりトルクのレバ
ーアームを相殺する。第1フライホイールと第2フライホイールとの間の極めて
小さい回転角方向のオフセットはトルクのレバーアームおよび結合手段3の長さ
の極めて小さい変化しか生じさせない。
従って、伝達されるトルクの変化は極めて小さく、ゼロ剛性を決定する二次的
な要素となっている。
フライホイール1と2との間の回転角方向のオフセットが大きくなると、オフ
セットの微小の変動がトルクおよび結合手段3の長さを同時に微小増加させ、こ
れが反作用トルクの増加する剛性を決定する。従って、伝達トルクが小さいとき
、反作用トルクの剛性は小さく、下流回転方向への慣性が小さくても振動ダンパ
ーの低いカットオフ周波数を決定する。伝達トルクが大きい場合、反作用トルク
の剛性は大きいが、下流方向の慣性自体も大きいので、フィルタのカットオフ周
波数は実質的には高くならず、更に振動の基本周波数は高いが、その振幅は適当
であり、ダンピングによって問題が生じることはない。
図1および図2における結合手段3は、スプリング34のための潤滑剤を含む
ようになっており、ピストン30aは潤滑剤がハウジング33におけるピストン
30aの変位を妨げないようにレリーフポート30bのような通路を含む。
図4における結合手段3は、乾式作動するようになっている。更に、ハウジン
グ33には低摩擦係数のポリマーから成る内部ライニング33aが設けられてお
り、更に、ピストン30aおよびハウジングのベース部分31および32にはレ
リーフポート30b、31aおよび32aが形成されている。本例では、これま
での説明から明らかなように、各ハウジング33は2部品式となっている。
より詳細には、ベース部分31、32の自由端が共に当接され、溶接されてい
る。
実際には図1〜図3において、各ハウジング33の内周部と内側スプリング3
4との間に金属ベストが挟持される。従って、ハウジング33は、溶接作業を実
行できるように金属製とし、このベストがスプリング34をガイドし、耐摩耗性
となることが可能である。これにより、ハウジング内におけるスプリング34の
くい込みが防止される。当然ながら、図4においてかかるベストを設けることが
可能である。このベース部分31は、ピストンロッド30のためのガイドスリー
ブ(参照符号なし)を取り付けるための中心孔を有する。
ハウジング33の場合、フライホイール1と2との間で利用可能な空間を最大
限活用でき、ピン22がロールベアリング21と軸方向の当接部に対して働く第
2フライホイール2の内側横方向壁に固定されているので、これらフライホイー
ルはピン15、22の位置を考慮すると長さが最大となることが理解できよう。
更に、ハウジング33が径方向に設けられている結果、フライホイール1の外
周部にその質量を加えることが可能である。この理由は、図1に最も良く示され
ているように、2つの連続するハウジングの間で径方向内側に向いたポイント状
の突出した部品が制限器5(すなわちリム部分40)に形成されているからであ
る。
このように制限器5が設けられた第1フライホイール1は慣性が大きくなって
いる。当然ながら、ピストンロッド30をトルク制限器50の高さで連接するよ
うに構造を反転することも可能である。しかし、図1〜図4に示された構造は可
能な最大質量のハウジング33をダンプフライホイールの外周部に配置可能にす
るものであり、これにより、ダンプフライホイールの慣性を大きくすることが可
能であるので、大きな利点を有する。このように振動が最適に吸収される。
結合手段3が径方向に作用するという事実により多数のピン15とパッド53
、54が円周方向に交互に配置されているという構造が理解できよう。
ピン15、従ってハウジング33およびパッド53、54の数が多いことによ
り、振動を良好に吸収することが可能となり、圧力の分布を良好にし、従ってト
ルク制限器5の作動を開始させるトルクに関する精度を高くできる。
当然ながら本発明は、上記実施例のみに限定されるものでなく、請求の範囲内
にすべての実施例を含むものであり、特にロールベアリング21の径方向外側に
スタッド10bを取り付けることができ、第2フライホイールにねじ切りされた
スタッドのヘッドへのアクセスを行う孔が設けてもよい。これにより、ハウジン
グの長さを更に長くし、かつロールベアリング21の大きさを縮小することが可
能となる。
このことにより、ピン22の間で円周方向にスタッドを配置できるので、ハウ
ジングが存在することにより可能となる。2つのフライホイール1と2との間に
摩擦ダンピング手段4を配置し、ピン22によって駆動される摩擦リングを含む
ことができ、よってピン22は延長され、摩擦リングは第1フライホイール1に
摩擦係合する。
ハウジング33はダンパーとなるように改造できる。この場合、レリーフポー
ト30bは較正された通路に置換され、ハウジング33の一部はオイルで満たさ
れることとなる。
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【要約の続き】
うになっている。