【発明の詳細な説明】
核酸結合パートナーの結合特性の調節
本発明は、核酸または別の非天然性核酸結合パートナーへの結合により核酸ま
たは非天然性核酸結合パートナーの存在を特異的に決定する方法、核酸または非
天然性核酸結合パートナーの検出方法、核酸の識別方法ならびにこれらの方法で
調製され、かつ、これらの方法に有用な組成物に関する。
すべてのDNA診断方法の基礎をなすものは、可逆的変性を被る相補的核酸の
ユニークな能力である。したがって、適当な条件下でDNAプローブを核酸複合
混合物と混合する場合、DNAプローブはその相補的標的配列を捜し出し、それ
にに対してのみ結合する。診断プローブの適性を述べるために用いられる2つの
重要なパラメーターは、親和性と特異性である。親和性は、その標的配列に対す
るプローブの結合力の尺度であり、特異性は、完全に相補的な標的配列とミスマ
ッチした標的配列とを識別する能力の尺度である。実際、高特異的プローブの使
用は、間違った実在を生じるリスクを最小にするが、高親和性プローブの使用は
、プローブ/標的複合体を冗長な手順から生き残らせるので感度を最大にする。
現在まで、核酸類似体または非天然性核酸結合パートナー(NNNBPs)に
対する多くの提案がなされてきた。しかしながら、いわゆるペプチド核酸類(P
NAs、国際公開第92/20703号パンフレット)のみが、治療および診断
の両方に使用するために価値あるものであることが示されている。標準的な核酸
と比べて、PNAは、その標的核酸に対して親和性および特異性の両方が増大し
ている。したがって、PNAは、診断プローブとしてはDNAより優れている。
本発明は、反応混合物にある種の成分を添加することにより、PNAの特異性
をさらに増大させ、したがって、診断アッセイにおけるPNAの有用性をさらに
増大させることができることを記載する。
ユージン ピー.ゴールドバーグ(Eugene P.Goldberg)とアキオ ナカイマ(A
kio Nakaima)により編集されたバイオメディカルポリマー(1980)271〜
297頁において、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がポリヌクレオチドのビ
ニルアナログ内にインターカーレートし、このインターカーレーションが、ビニ
ルアナログに核酸等のポリアニオンへの結合(親和)力をかなり減少させる負の
電荷を与えることを開示している。
本発明の目的は、一般的にはNNNBPsおよび具体的にはPNAsを用いて
核酸アッセイを改良することにある。
本発明の主題は、1または複数の標的と1または複数のプローブとの複合体を
形成するために、該1または複数の標的に結合可能な該1または複数のプローブ
を用いて決定対象外の1または複数の標的の存在下で、該1または複数の標的と
接触させることにより、該1または複数の特定の標的の存在を特異的に決定する
方法であり、その方法において、
a)該結合の特異性を高める化合物の存在下で接触を行ない、または
b)形成した複合体を、該結合の特異性を高める化合物と接触させる。
本発明のさらなる目的は、該結合を行なうための試薬および該結合の特異性を
高める化合物の使用である。
1または複数の標的および1または複数のプローブは、塩基対形成により互い
に結合可能であり、核酸または非天然性核酸結合パートナー(NNNBP)のい
ずれかである。両方とも核酸である1または複数のプローブおよび1または複数
の標的の組み合わせは、排除される。
本発明において、核酸は、糖およびリン酸部分のバックボーンならびに該バッ
クボーンに結合した塩基G、A、T、C、Uおよび任意に修飾された塩基を含む
標識または非標識デオキシリボ核酸もしくはリボ核酸である。核酸は、いかなる
所望の起源であってもよい。核酸は、生物から単離されても生物に存在していて
もよい。生物としては、例えば、ウイルスおよび細菌ばかりでなく、動物、植物
またはヒト細胞が挙げられるが、これらに限定されない。核酸は、例えば、生物
から抽出もしくは濃縮による等の種々の方法により得ることが可能であり、また
は、例えば、増幅もしくはcDNA生成により産生することができる。また、核
酸は、化学合成することも可能である。本発明の方法の初期において、核酸は、
二本鎖または一本鎖核酸として存在することが可能である。一本鎖であることが
好ましく、または加熱もしくは低イオン強度による変性等の公知の方法により一
本鎖にすることが好ましい。
核酸またはNNNBPいずれかに存在するバックボーンは、それぞれ、特異的
ヌクレオ塩基を保持する少なくとも2つの実質的に同一のユニット構造である。
天然に存在するバックボーンは、糖リン酸バックボーンである。このものは、リ
ン酸の位置で(Acc.Chem.Res.1995,28,366-374)または糖の位置で(Acc.Che
m.Res.1995,28,366-374)または繰り返しユニットとしてモルホリン(Acc.Ch
em.Res.1995,28,366-374)、ビニル(Acc.Chem.Res.1995,28,366-374)も
しくは偽ペプチド(Science 1991,254,1497-1500)部分を用いることによるより
劇的な変化で修飾することができる。
決定対象外の標的は、特に、標的とは塩基配列が異なる核酸である。後記のい
くつかの場合において、決定対象の標的および決定対象外の標的は、関連標的ま
たは関連核酸と称される。例えば、病気または病原体を示唆する核酸の決定の場
合、決定対象外の標的は、健常人には存在しない核酸であり、健康状態における
核酸とは塩基配列が異なるものであってもよい。
NNNBPsは、塩基対形成により核酸と結合可能な天然に存在しない分子で
ある。さらに、NNNBPsは、少なくともバックボーン中で核酸とは構造上異
なるものと定義される。バックボーンに、好ましくは非天然性の部分の添加また
は該バックボーン、好ましくは他の部分によるリン酸および/または糖部分の成
分の1以上もしくはすべての置換で、構造上の相違を生じさせることができる。
本発明によれば、NNNBPsは、核酸の塩基とNNNBPの塩基間の水素結合
を介する(好ましくは特異的)塩基対形成により核酸に結合するものと定義され
、従って、複合体を形成する。塩基は、A、C、G、TおよびU等の天然のヌク
レオ塩基または天然の核酸に存在しないが、例えば、S、NHもしくはCH2に
よるOの置換等の原子の置換によるか、例えば、NNNBPの塩基と核酸もしく
はNNNBPの対応する塩基間の水素結合に関するか影響する原子の誘導等の基
の添加により天然物から派生した複素環塩基である。最も好ましい複合体は、N
NNBPの1つの鎖および核酸の1つの鎖またはNNNBPの2つの鎖および核
酸の1つの鎖を含む。第1の(好ましい)場合において、複合体は二重らせんと
呼ばれ、第2の場合において、複合体は三重らせんと呼ばれる。
従って、NNNBPsは、下記一般式を有するものとして定義することができ
る、
BB(−L)n (式0)
式中、BBは核酸とは異なるバックボーンであり、および
Lは、天然のヌクレオ塩基または天然の核酸に存在しない複素環塩基の群から選
ばれる。
nは、2〜100の自然数である。
BBおよびLの両方は、NNNBPのその相補的核酸への結合力を破壊させな
い部分により置換または未置換されてもよいと理解される。特に、NNNBPを
プローブとして用いた場合、それは、標識を保持してもよい。従って、かかるプ
ローブは、下記式の化合物として定義することができる、
(BB(−L)n)(標識)o (式00)
式中、BB、Lおよびnは、前記定義の通りであり、および
標識は直接もしくは間接的な検出基または固定可能な基であり、および
oは、1以上、好ましくは1〜5の自然数である。
NNNBPsは、天然の核酸類似体と比較して、相補的核酸に対してより高親
和性を有することが好ましい。いくつかのNNNBPsについては、Recueil 91
,1069-1080(1971),Methods in Molecular Biology 29,355-389(1993),Tetra
hedron 31,73-75(1975),J.Org.Chem.52,4202-4206(1987),Nucl.Acids R
es.17,6129-6141(1989),Unusual Properties of New Polymers(Springer Ver
lag 1983),1-16,Specialty polymers(Springer Verlag 1981,1-51、国際公開
第92/20823号パンフレット、国際公開第94/06815号パンフレット、国際公開第86
/05518号パンフレットおよび国際公開第86/05519号パンフレットに要約されてい
る。これらは、ペプチドおよび非ペプチド化合物である。NNNBPは、荷電ま
たは非荷電分子であってもよい。NNNBPsは、天然の核酸よりも少ない電荷
を保持していることが好ましく、本質的に非荷電NNNBPsが最も好ましい。
最も好ましいNNNBPsは、糖/リン酸バックボーンを含まないが、例えば、
国際公開第92/20702号パンフレットおよび国際公開第92/20703号パンフレットに
記載のようにペプチドバックボーンを含む。好ましいNNNBPsは、該バック
ボーンに沿ってスペースを空けた位置に多数の塩基を生じるポリアミドバックボ
ーンからなる化合物であり、該バックボーンの窒素原子に結合した各塩基、相補
的塩基配列を有する核酸と結合して、NNNBPと類似の核酸とその相補的核酸
間の複合体よりも、例えば、加熱または低イオン強度による変性に対してより安
定な複合体を形成可能な化合物である。下記一般式を有する化合物が特に好まし
い、
nは、少なくとも2であり、
各L1〜Lnは、独立に、水素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルカノイ
ル基、天然のヌクレオ塩基、非天然のヌクレオ塩基、芳香族部分、DNAイン
ターカーレーター、ヌクレオ塩基結合基、複素環部分、レポーターリガンドおよ
びキレーティング部分からなる群より選ばれる;
各C1〜Cnは、(CR6R7)y(好ましくはCR6R7、CHR6CHR7またはCR6
R7CH2)であり、式中、R6は水素原子であり、R7は、天然のα−アミノ酸の
側鎖からなる群より選ばれたものであり、または、R6およびR7は、独立に、水
素原子、炭素数2〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリー
ル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキル
チオ基、NR3R4およびNR5からなる群より選ばれ、式中、R3およびR4は、
下記に定義された通りであり、そして、R5は、水素原子、炭素数1〜6のアル
キル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基またはアルキルチオ置換炭素数1〜6の
アルキル基であり、または、R6およびR7は、一緒になって脂環系または複素環
系を完成させる;
各D1〜Dnは、(CR6R7)z(好ましくはCR6R7、CHR6CHR7またはCH2
CR6R7)であり、式中、R6およびR7は、前記定義の通りである;
各yおよびzは、0または1〜10の整数であり、y+zの合計は、少なくとも
2、好ましくは2より大きいが10以下である;
各G1〜Gn-1は、別の配向で、−NR3CO−、−NR3C5−、−NR3SO−、
または−NR3SO2−であり、式中、R3は下記に定義された通りである;
各A1〜AnおよびB1〜Bnは、以下にように選ばれる:
(a)Aは、式(IIa)、(IIb)、(IIc)もしくは(IId)の群であり、Bは、Nもしく
はR3N+である;または
(b)Aは式(IId)の群であり、BはCHである;
式中、
Xは、O、S、Se、NR3、CH2または C(CH3)2である;
Yは、単結合、O、SまたはNR4である;
各pおよびqは、0または1〜5の整数であり、p+qの合計は、10以下であ
る;
各rおよびsは、0または1〜5の整数であり、r+sの合計は、10以下であ
る;
各R1およびR2は、独立に、水素原子、ヒドロキシ−もしくはアルコキシ−もし
くはアルキルチオ−置換されてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル
基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基およびハロゲンからなる群より選
ばれる;そして
各R3およびR4は、独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ
−もしくはアルコキシ−もしくはアルキルチオ−置換炭素数1〜4のアルキル基
、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアミノ基からなる群よ
り選ばれる;そして
Qは、−CO2H、−CONR’R”、−SO3Hまたは−SO2−NR’R”
または−CO2Hもしくは−SO3Hの活性化誘導体であり、そして、
Iは、−NR’R”であり、式中、R’およびR”は、独立に、水素原子、アル
キル基、アミノ保護基、レポーターリガンド、インターカーレーター、キレート
化剤、ペプチド、蛋白質、炭水化物、脂肪、ステロイド、ヌクレオシド、ヌクレ
オチド、ヌクレオチド二リン酸、ヌクレオチド三リン酸、オリゴリボヌクレオチ
ドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドの両方を含むオリゴヌクレオチド、オ
リゴヌクレオシドならびに可溶性および不溶性ポリマーからなる群より選ばれる
。
また、他の置換基(例えば、アルコキシ基)中のアルキル基について述べると
、1〜4個の炭素原子を含むことが好ましく、非環式および非分岐状であること
が好ましい。本発明の反応基は、標識を付加するために用いることができる基ま
たは固相にプローブもしくは標的を固定させるために用いることができる基であ
る。かかる反応基の例としては、N−ヒドロキシ−スクシンイミド−エステル等
の活性化エステルが挙げられる。アミノ保護基は、例えば、ペプチド合成におい
てアミノ基を所望しない他の分子との反応から保護するために通常用いられる基
である。これらの保護基は、所望ならば、分子の主要成分へのアミノ基の付加を
破壊しない方法により除去することができる。適する保護基は、N−Bocまた
は類似のものである。
インターカーレーターは、二重らせんDNA中の塩基間にそれ自体を挿入でき
る分子である。かかるインターカーレーターは、通常、エチジウムブロミドまた
はアクリジニウム化合物等のポリ芳香族類である。
キレート化剤は、分子を複合化させることができるか、または、複合体が本発
明の方法の工程の間に必要としない破壊を受けないようなかかる分子複合体をす
でに含む分子である。キレート化剤は、例えば、ルテニウム等の検出可能な金属
イオンまたは他の蛍光部分と複合体を形成させることにより、プローブまたは標
的を標識するために用いることができる。特に好ましいキレート化剤は、ビピリ
ジル部分により複合体を形成したルテニウムを含む。
ペプチドは、レポーターリガンドとして使用したり、プローブに標識を付加す
るために使用することができる。特に好適なペプチドは、プローブに標識したリ
ン酸基を付加するために用いることができるケンプチド部分である。
蛋白質は、例えば、他の部分により認識可能な蛋白質等の特に生物活性蛋白質
からなる。かかる認識可能な蛋白質は、例えば、抗体により認識可能な免疫学的
に活性な蛋白質である。さらなる生物活性蛋白質は、基質を産物に変換するため
に用いることができる酵素である。好適な酵素は、例えば、ペルオキシダーゼま
たはアルカリホスファターゼである。
炭水化物は、プローブを検出可能部分または固相に付加するために用いること
ができる糖分子である。例えば、糖がレクチンで認識されるように、いくつかの
炭水化物は、結合パートナーにより認識される。
ステロイドは、検出可能部分または固相等の他の部分にプローブを付加するた
めに、特に有用である。特に好適なステロイドは、試料中に通常存在しないステ
ロイドである。
ヌクレオシドは、天然の核酸に通常存在する糖部分および塩基部分を含む部分
である。
ヌクレオチドは、天然の核酸に通常存在する少なくとも1つのリン酸、1つの
糖および1つの塩基部分からなる化合物として一般に呼ばれる。
オリゴヌクレオチドは、2〜50ヌクレオチド部分の長さを有する核酸として
一般に呼ばれる。
可溶性ポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールである。
非可溶性ポリマーは、プローブの固定化に用いられる化合物である。それらは
、例えば、樹脂またはポリスチロールからなる。
これらのNNNBPsは、標識、レポーター基またはNNNBPsの固相への
結合のための反応基として作用する基を付加していることが好ましい。該基は、
NNNBPの塩基部分またはバックボーンに付加していてもよい。塩基部分での
修飾は、塩基のどの部位であってもよい。バックボーンの修飾は、どの原子の位
置であってもよいが、該バックボーンの末端の一方または両方であることが好ま
しい。
本発明の決定対象の標的は、試料中の存在または量を検出しようとする分子で
ある。大抵の場合、試料に存在する標的の量は、既知ではない。しかし、いくつ
かの場合では、本発明の方法により標的が存在するか否かだけを決定しなければ
ならないことがあり得る。この場合、存在する標的の量を前もって限定してもよ
い。しかし、大抵の重要な場合では、標的の量は、決定前には不明かつ限定され
ず、細胞等の試料中では核酸または核酸含有剤の量とどうにか相関している。
それに比べて、プローブは、標的を決定するための手段である。したがって、
試料に添加する試薬中のプローブの存在および量は、限定されおよび/または既
知である。大抵の場合、プローブの量は、試料に存在することが期待される量よ
り過剰である。したがって、対応する標的へのプローブの結合量は、試料中の標
的の存在の判断を与える。インキュベーション後標的に結合しなかったプローブ
量を、標的およびプローブ間で形成した複合体から除去することがさらに好まし
い。
複数の標的および1または複数のプローブ間の複合体形成は、二本鎖核酸ハイ
ブリッドを形成するために核酸のハイブリダイゼーションに通常適用される条件
下で起こるが、低塩濃度条件下でも起こる。かかる条件は、国際公開第92/2
0703号パンフレットに記載されている。しかし、本発明においては、通常よ
り低塩濃度を用いることが好ましい。好ましい低塩濃度としては、5〜50mM
である。塩は、ハイブリダイゼーション反応に通常適用されるものである。それ
らは、例えば、カチオンとしてはナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはマ
ンガン等、アニオンとしてはリン酸、硫酸または塩化物等が挙げられる。リン酸
ナトリウム等の緩衝性を有する塩が最も好ましい。低塩濃度は、NNNBPのそ
の相補的核酸またはNNNBPへの結合と競合する可能性のある核酸/核酸相互
作用を不安定化させるので好ましい。また、多くの免疫学的および酵素学的反応
は低塩濃度に適合し、よって、反応混合物を変化させることなく生じた複合体を
検出ならしめる。最も効果的な方法で本発明を使用するためには、1または複数
の標的および1または複数のプローブおよび化合物を、インキュベーションの間
、溶液の状態に溶解させる。しかし、該インキュベーションの後、形成した複合
体を固相に固定することが可能である。
本発明の中核は、NNNBPおよび核酸および/またはNNNBPs間の結合
特異性を高める化合物の使用である。現在まで、核酸相互または核酸のNNNB
Psへの結合特異性を調節ならしめる化合物は見出されていない。本発明の方法
に使用されるいくつかの化合物は、以前から公知であったけれども、核酸および
その結合パートナー間の結合特異性を効果的に高めるものとして認識されていな
かった。本発明によれば、効果的な化合物の1つは、親和性を有する表面への核
酸の結合を阻害するために通常用いられるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で
ある。さらに、当該技術分野で行なった実験は、当該技術分野で用いたNNNB
Psのポリアニオン(核酸もまたポリアニオンである)への親和性が減少したこ
とを示したので、SDSは、NNNBPsとともに使用した場合不利でさえある
と従来技術で結論された。その結合がNNNBPおよびポリアニオン間の反発を
生じるNNNBPに結合するように思われるので、明らかに、当該技術分野は、
結合アッセイでのSDSの使用を思いとどまらせた。しかし、本発明により、例
えば、SDSはNNNBPsの核酸または/およびNNNBPsへの結合特異性
を高める予期せぬ性質を有するということがわかった。
さらに、SDS以外の他の多くの化合物が同様の特性を有することがわかった
。好ましい化合物は、少なくとも1つの疎水性部分および少なくとも1つのイオ
ン性または親水性部分を有し、界面活性剤または洗剤の群から選ばれる。界面活
性剤を、水溶液の表面張力を低減させる化合物として定義する。洗剤は、イオン
性または親水性部分および親油性部分からなる化合物である。界面活性剤および
洗剤は、水溶液中でミセルを形成する傾向を有する化合物である。前記化合物は
水溶液に可溶性であることが好ましい、なぜなら、核酸およびNNNBPsも水
溶液に可溶性であるからである。本発明によれば、全体で電荷を有する化合物が
好ましいことが認識された。これらの中で、1以上の負の電荷を有する化合物が
、正の電荷を有するよりも好ましい。荷電分子を、水に溶解させたときに対イン
から実質的に解離する分子として定義し、両性イオン化合物はより好ましくない
。非荷電化合物が最も好ましくない。本発明によれば、好ましい化合物は、ドデ
シル硫酸ナトリウム(SDS)またはドデシル硫酸リチウム(LiDS)および
DTAB(ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド)である。
特異性を高めるために必要な化合物の濃度は、用いる化合物によりある範囲ま
で変えることが可能である。
例えば、SDSは、1.73mM〜17.34mMのモル濃度に等しい0.0
5〜0.5%w/vの範囲の濃度で使用することが好ましく、特に好ましい濃度
は、好ましくは3.47mM〜6.94mMのモル濃度に等しい0.1〜0.2
%である。一般的な規則として、混合物の塩濃度が低い場合は、化合物の濃度は
範囲の上限領域にあり、混合物の塩濃度が高い場合または通常のハイブリダイゼ
ーションアッセイでは、化合物の濃度は、範囲の下限領域にある。さらに、プロ
ーブ/標的二重らせんの初期TMが低ければ低い程、効果を得るために必要なS
DSはより少なくなる。この知見と一致して、各PNA/DNA二重らせんの初
期TMの、本発明の効果を得るために必要なSDSの濃度に対するプロットに、
直線を合わせることができる。さらに、前記ミセル形成に必要な濃度以上の濃度
を用いることが好ましい。さらに、PNAs間の結合の場合、これらの二重らせ
んの初期TMから予想されるよりもやや高めのSDS濃度が必要であるかもしれ
ない。
NNNBPの結合特異性を高める化合物を用いて、核酸またはNNNBPsま
たは、NNNBPへの結合を所望しない核酸もしくは非天然性核酸の存在下での
核酸もしくは非天然性核酸群さえも特異的に決定することができる。本発明の定
義における特異性とは、異なる塩基配列を有する核酸または非天然性核酸を識別
する能力として定義される。区別対象の核酸は、NNNBPにとって塩基ミスマ
チを意味する一定の位置(他の核酸)で少なくとも1つの異なる塩基を含む。こ
の位置は、塩基対形成により核酸またはNNNBPと結合したNNNBPの塩基
の位置内に局在している。もちろん、NNNBPは、核酸への結合には関与しな
い他の部分を含んでもよい。
本発明の方法は、標的およびプローブの種類に応じていくつかの経路により行
なうことができる。第1の態様において、標的が核酸で、プローブがNNNBP
であることが好ましい。このことは、特殊な感染または後天性もしくは先天性遺
伝病と相関している核酸を決定するために特に好適な態様であるかもしれない。
この場合、標的核酸を含む試料溶液を提供した後、プローブNNNBPを試料溶
液に添加する。核酸およびNNNBP間の複合体形成は、試料中の標的核酸の存
在または量の指標として解釈される。この場合、大抵の決定において、決定前に
は標的核酸の量は不明である。したがって、複合体形成により得られたシグナル
と、この標的核酸およびプローブNNNBPの既知の量を含む試料の複合体を測
定することにより得られたシグナルとを相関させることが有利である。次いで、
このNNNBPを検出可能なように標識するか、または、固相に固定ならしめる
経路で標識する(この場合さらに検出可能な標識プローブが必要であるかもしれ
ない)ことが好ましい。
別の場合、標的およびプローブは両方ともNNNBPsである。これは、分析
対象物、特に核酸の存在、不在または量を、標的NNNBPの存在、不在または
量により間接的に決定する場合であるかもしれない。今度は、標的NNNBPの
存在または量は、試料中の分析対象物の存在または不在の指標である。第2のN
NNBP(プローブ)を用いて、第1のNNNBPの存在、不在または量を決定
し、したがって、第2のNNNBPは、試料中の分析対象物の存在、不在または
量の指標である。この場合、標的NNNBPの量を、試料中の分析対象物の量に
より定義する。かかる態様の例は、標的NNNBPを分析対象物である核酸また
はその断片と結合させることによる核酸の決定である。本発明によれば、この場
合、原試料中に含まれる核酸または標的NNNBPのいずれかを、他の核酸また
はNNNBPから識別することができる。プローブNNNBPも、試料溶液中の
標的NNNBPと、例えば、決定対象外の核酸であるが類似の塩基配列を有する
他の配列とを区別することができる。この場合、プローブNNNBPは、標的N
NNBPまたはその一部に対して塩基配列が相補的である。
第3の態様において、標的はNNNBPであり、プローブは核酸である。この
場合は、第2の態様と同様であるが、プローブが核酸でありその標的への結合を
、決定対象の分析物への標的NNNBPの結合の指標として用いるという点で第
2の態様とは異なっている。
したがって、本発明の態様において直接および間接の両方の決定が可能である
。
本発明の目的は、決定対象外の標的と比べて、該標的の塩基配列に対する1ま
たは複数のプローブの相補性の違いを用いることである。少なくとも1つの塩基
の位置での核酸の相違の例としては、例えば、β−グロビン遺伝子の野生型およ
び鎌型細胞アレル等のアレルが挙げられる。該相違は、突然変異、挿入および欠
失により生じることが可能である。本発明により識別できるさらなる標的の例と
しては、p53遺伝子の異なる配列が挙げられる。
また、本発明の方法を用いて、標的群を決定することができる。標的群が配列
において同一である少なくとも1つのセグメントからなるなら、たとえ該標的が
実質的に異なる他の配列からなる場合でも、このセグメントを用いて該群すべて
の標的を一緒に決定することができる。例えば、細菌群(サルモネラ属のメンバ
ー等)は、それらの核酸において同一であるがクラミジア等の他の属の配列とは
異なる進化上保存された塩基の範囲を有する。
本発明の方法を用いて、配列において密接に関連する標的間を区別することが
可能であるということを理解することは重要である。他方、例えば、進化上保存
された配列モチーフ等の共通の標的ドメインを共有するなら、異なる配列を有す
る標的群を決定することが可能である。密接に関連する標的間を区別するために
、決定対象外の密接に関連した配列とは配列が異なる該標的のセグメントを選択
する。検出対象の標的を他の標的と区別するために、該標的のこのセグメントと
相補的となるように、しかし、決定対象外の1または複数の標的の対応する配列
とのミスマッチを有するようにプローブの配列を選択しなければならない。
さらに、プローブは、1または複数の標的セグメントと相補的なセグメントに
加え、1または複数の標的の対応するセグメントに相補的でない1以上のセグメ
ントからなり得る。これらのセグメントは、例えば、他の核酸またはNNNBP
sの認識に好適な塩基配列であってもよい。ミスマッチの位置は、標的に結合す
るプローブのセグメントがこのミスマッチ部位を包含するように選ばれる。もち
ろん、配列において1以上の違いを含む標的を決定対象外の標的から区別するこ
ともできる。
本発明の方法によれば、1または複数のプローブの塩基配列を、決定されるべ
きでない他の標的配列と配列が異なる決定対象の標的セグメントと完全に相補的
となるように選ぶ。標的の長さおよびこの結果として、プローブの長さは、結合
の親和性および特異性に影響するさらなる手段である。プローブの結合セグメン
ト配列が短くなればなるほど、本質的な特異性が高くなるが、親和性は低くなる
。国際公開第92/20703号パンフレットに記載のペプチド核酸の場合、結
合セグメントの長さは、優れた親和性および特異性を有するために10〜20塩
基であるべきである。12〜17塩基の長さが最も好ましい。
本発明の1つの中核は、化合物を用いて、プローブおよび相補的標的の複合体
ならびに少なくとも1つのミスマッチ塩基対を含むプローブおよび1または複数
の標的の複合体の融解温度の差(ΔTm)を増加させることが可能であるという
発見である。このことは、関連した核酸間の区別が化合物なしの状態よりもずっ
と容易であるという結果となる。
しかし、化合物により課されたより高い結合特異性は、結合反応の間の反応混
合物の温度を、特異性を失うことなく、化合物なしの反応混合物よりも低くする
ことができるという結果となる。これは、化合物の不在下よりも化合物の存在下
の方が、アッセイをずっと速く完了させることができる(NNNBPsが相補的
核酸に結合する速度は、温度が下がるにつれて上昇し、複合体が融解する温度よ
りも15〜25℃以下で最高の速度が観察される)という非常に重要な結果とな
る。低温度で高度に特異的なアッセイを行なう能力は、高温度では都合の悪い日
常的および自動的診断への応用に対してさらに重要である。
本発明によれば、少なくとも3つの経路で方法を行なうことが可能である。第
1の態様において、プローブおよび標的間の複合体を形成させる前に、化合物を
決定対象の標的を含む試料と接触させる。このことは、最初に化合物を試料に添
加し、次にプローブを試料に添加することにより行なうことができる。該説明に
故意に結合させることなく、プローブとより良くマッチした複合体が迅速に形成
され、その形成後はプローブおよび決定対象外の標的間で形成可能でたぶん形成
されたであろう複合体よりもより安定であると仮定する。
本発明の第2の態様において、プローブおよび決定対象の標的およびおそらく
決定対象外の(関連)標的(1または複数)間の複合体の形成後に、化合物を反
応混合物に添加する。また、この理論に故意に結合させることなく、化合物は、
配列により多くのミスマッチを有する複合体を選択的に不安定化させ、よって、
所望の複合体はインタクトな状態のままで所望しない複合体の数を減少させるよ
うに作用すると仮定する。
第1および第2の態様の間のすべての場面で化合物を添加することが可能なこ
とは勿論である。次いで、中間の態様が考案されるが、同様の進歩的効果を有す
る。
複合体の形成後、決定対象の標的の存在を、該複合体の存在により分析するこ
とができる。核酸または核酸およびNNNBPsを含む複合体のいずれかに対し
て従来技術で公知の二重らせんまたは三重らせん構造の存在を決定する非常に多
くの種類の可能性がある。これらの方法すべては、本発明の方法に類似して適用
できる。
プローブおよび標的間の複合体の存在を決定する1つの単純な手段は、混合物
の温度を上げたり下げたりする工程の間、反応混合物の吸光度の変化を光度計で
観察することである。このことは、融解曲線の検出として公知である。混合物の
吸光度は、決定対象の複合体の融解温度(Tm)で有意に変化する。したがって
、複合体の存在は、予想される融解温度で吸光度が変化するかどうかをチェック
することにより決定できる。
より現代的なアッセイでは、プローブまたは決定対象の標的のいずれかを標識
を含むように修飾する。プローブまたは標的を標識する手段は、当業者に一般に
知られている。プローブまたは標的を、合成の間標識してもよいし、合成後の工
程で標識してもよい。プローブまたは標的を合成の間標識する場合、すでに標識
されているか、または標識の付加に用いられる反応基を含むモノマーユニットを
用いることは公知である。合成は、厳密に化学的な経路または酵素学的工程によ
り行なうことができる。核酸の合成のために最も便利な合成は、ホスホトリエス
テル法におけるような活性化モノリボヌクレオシド モノホスフェートの使用を
含むことが通常知られている。例えば、欧州特許出願公告第0 135 587
号明細書に記載のいかなる標識も、合成の間に導入することができる。プローブ
を酵素学的に標識した場合、可能な合成手段としては、ニックトランスレーショ
ンまたは欧州特許出願公告第0 063 879号明細書に記載の方法が挙げら
れる。また、合成後にプローブを標識した場合、既報の方法がいくつかある。独
国特許出願公開第2915082号明細書によれば、塩基部分の反応基は、標識
部分と反応することができる。合成後の標識のさらなる方法は、欧州特許出願公
告第0 173 251号明細書に記載されている。また、決定対象の標的は、
例えば、前記化学標識、ニックトランスレーション、ターミナルトランスフェラ
ーゼおよび標識モノヌクレオチドを用いる伸長等の標識部分を用いる伸長または
DNAもしくはRNAポリメラーゼによる標識モノヌクレオチド等の標識モノマ
ーの酵素学的取り込み等の酵素学的反応における標識部分の取り込み等のいくつ
かの手段で標識することも可能である。
本発明に記載の標識は、直接または間接的に検出可能な基である。直接検出可
能な基としては、放射活性基(32Pの取り込みによる等)、色素基、蛍光基また
は金属原子等の基である。間接的に検出可能な基としては、例えば、抗体、抗原
、ハプテンまたは酵素等の免疫学的または酵素学的に活性な化合物が挙げられる
。これらは、例えば、抗原もしくは該抗原に対する抗体もしくはハプテン等の標
識された免疫学的結合パートナーまたは適当な酵素基質等を用いて、次の反応ま
たは一連の反応で検出される。臭素等のハプテン、ジゴキシゲニン、ジゴキシン
またはフルオレセインが特に好ましい。さらに好ましい間接的に検出可能な基は
、ビオチンである。
レポーター基は、間接的に検出可能な基である。本発明によれば、反応基は、
標識を作製したり、固相にプローブもしくは標的を固定するために用いることが
可能な基である。かかる反応基としては、N−ヒドロキシ−スクシンイミド−エ
ステル等の活性エステルが挙げられる。
標識は、プローブの標識への結合を妨げないような、プローブまたは標識のい
ずれの位置に付加してもよい。好ましい位置は、塩基のアミノ基等のヘテロ原子
をもつ位置およびバックボーン、特にバックボーンのいずれかの末端の反応基の
位置である。標識へのカップリングに好適なバックボーンの基は、2つのモノマ
ーユニットをともにカップリングさせるために用いられるモノマーユニット中の
基であってもよい。好適な基としては、カルボン酸または1級もしくは2級アミ
ノ基が含まれる。特定の位置への標識のカップリング反応は、カップリングに用
いる特定の基に依存し、ヌクレオチド化学またはペプチド化学のいずれかの技術
分野に属する者にとって一般に公知である。
かかる標識を含む複合体は、複合体の固相への結合および過剰の標識プローブ
等の未結合標識化合物の除去後、検出されることが好ましい。この結合は、プロ
ーブよりも決定対象の標的の異なるセグメントにハイブリダイズするいわゆる捕
捉プローブを用いることにより容易になされる。かかる構成は、例えば、欧州特
許出願公開第0 079 139号明細書に記載されている。もちろん、この構
成は、プローブを検出可能に標識されるよりも固相に結合されるように修飾し、
形成した複合体が形成後に固相に結合することが可能である。その後、検出可能
に標識したプローブを標的の別のセグメントにハイブリダイズさせ、固定した標
識を測定することにより、固定した複合体を検出する。
しかし、Method in Enzymunology 100,266-285(1983)に記載のサザンブロッ
ト、ドットブロットまたは逆ドットブロット(欧州特許出願公告第0 237
362に記載されている)等の単純な手法も、適用することができる。後者の場
合、決定対象の標的は、原核酸を鋳型として用いた増幅反応から生じ、増幅の間
標識部分が取り込まれた核酸である。NNNBPを固相に結合する。固定したN
NNBPおよび検出可能に標識された標的核酸間の複合体形成後、固相に付着し
た標識の量を決定かつ使用して、試料に初めから存在する標的核酸の量を計算す
る。本発明は、異なる配列を有する多数のNNNBPsのスポットへの核酸の並
行ハイブリダイゼーションに特に有利である。かかる態様は、オリゴヌクレオチ
ドの代わりにNNNBPsを用いて、国際公開第89/10977号パンフレッ
ト、国際公開第90/15070号パンフレットおよび米国特許第5,202,
231号明細書に記載の態様に類似していることが認識される。
本発明を用いて、欧州特許出願公開第0 201 184号明細書に記載の伸
長産物(増幅物)等の増幅手法の結果である核酸を非常に容易に検出することが
できる。
本発明は、診断アッセイの感度を高め、プローブと完全にマッチせず決定対象
外の標的を含む複合体を脱ハイブリダイズさせるためにストリンジェントな洗浄
を避けるために用いることが可能であるという有利な点を有する。
本発明のさらなる目的は、非天然性核酸結合パートナーへの核酸または非天然
性核酸の結合を行なうための試薬であり、該試薬は、非天然性核酸結合パートナ
ーおよび該結合特異性を高め、かつ、ドデシル硫酸ナトリウムではない化合物を
含む。この試薬は、例えば、塩、緩衝物質および他のアジュバントをさらに含ん
でもよい。
本発明のさらなる目的は、非天然性核酸結合パートナーへの核酸または非天然
性核酸の結合を行なうための試薬キットであり、該試薬キットは、非天然性核酸
結合パートナーおよび該結合特異性を高め、かつ、ドデシル硫酸ナトリウムでは
ない化合物を別々の容器に含む。また、これらの容器はいずれも、例えば、塩、
緩衝物質および他のアジュバントをさらに含んでもよい。
図1は、SDSの濃度に依存したPNA/DNA複合体の温度安定性(Tm)
を示す。DNA/DNAハイブリッドの温度安定性はSDSの濃度に依存しない
が、PNAとDNAの相補性の程度に依存し、温度安定性がかなり異なることが
明らかである。さらに、各場合の判別に対するSDSの最適濃度が明らかになる
。特定のSDS濃度での完全に相補的なPNA/DNA二重らせんと1塩基ミス
マッチしたPNA/DNA二重らせん間のTm値の間隔が大きければ大きいほど
、識別化(結合選択性)が良くなる。
図2は、マッチしたPNA/DNA複合体対ミスマッチしたPNA/DNA複
合体の温度安定性を示す。一定のSDS濃度では、複合体形成の程度およびSD
S添加は、温度安定性に関してほとんど影響を及ぼさないことが明らかになる。
図3は、PNA/DNA複合体対DNA/DNAハイブリッドの温度安定性に
おけるミスマッチの影響を示す。すべてのSDS濃度において、PNA−DNA
複合体に対する特異性(完全に相補的なPNA/DNA二重らせんと1塩基ミス
マッチしたPNA/DNA二重らせん間のTm値の差)がより高いが、ある濃度
を越えるSDSを選択することにより、この高特異性をさらに増加させることが
可能であることが明らかになる。この実施例では、0.95%から増加して0.
95%SDS〜0.13%SDSの濃度で、特異性が最高である。0.13%S
DSを越えても、0.95%未満のSDSよりも特異性が高い。濃度範囲は、配
列および長さの違いに対して異なるが、一般的な傾向が見られる。
図4は、SDSの不在下および完全に相補的なPNA/DNA二重らせんには
影響しない最高濃度のSDSの存在下で、種々のミスマッチを有するPNA/D
NA複合体の温度安定性を示す。
図5は、種々のSDS濃度および種々の塩濃度でのPNA/DNA複合体の温
度安定性を示す。上方の4つの曲線は、マッチしたPNA/DNA二重らせんで
あり、下方の4つの曲線は、1塩基のミスマッチしたPNA/DNA二重らせん
である。
図6は、別の洗剤(DTAB)の種々の濃度でのPNA/DNA二重らせん対
DNA/DNA二重らせんの温度安定性を示す。
図7は、LiDSがPNA/DNA二重らせんにおいてSDSと同様の効果を
奏することを示す。
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。一般的な注意
実施例でNNNBPsとして用いるPNA分子は、国際公開第92/2070
2号パンフレットに記載の教示に従って調製することができるし、PerSeptive B
iosystems 社 Cambridge,MA 02139,USAからモノマーまたはオリゴマーの型で購
入することができる。
下記反応の各場合において、特に述べない限り、結合反応は、核酸としてDN
A−オリゴデオキシリボヌクレオチド5’−TAGTTGTGACGTACA−
3’(配列番号:6)を用いて行なった。反応は、異なるNNNBPs(ミスマ
ッチなしまたは1以上のミスマッチを含む)の使用によって異なる。実施例1 SDSを使用してPNAのその相補的DNAへの親和性を調節できる
25mM Na2HPO4、pH7.0、4.5mMのPNA、4.5mMの相
補的DNAオリゴヌクレオチドおよび0〜0.5%のSDSを含む一連の1ml
のハイブリダイゼーション反応を始めた。溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置
いてハイブリッドを形成させた。次の日、追加の適当な緩衝液(25ml Na2
HPO4、pH7.0および0〜0.5%のSDS)2mlをハイブリダイゼー
ション溶液に添加し、Perkin-Elmer λ2分光光度計を用いて、融解温度Tmと
して測定した各二重らせんの温度安定性を分光光度法的に決定した。3つの異な
る15マーPNA、1つの18マーPNAおよび1つの対照15マーDNA全て
を分析した。図に示すように、DNA/DNA二重らせんは、試験した全濃度範
囲のSDSにより影響されることなく残存する。対照的に、SDS濃度がある閾
値を越えたときにすべてのPNA/DNA二重らせんで、Tmのかなりシャープ
な減少が観察される。この結果により、SDSを使用してPNAのその相補的D
NAへの親和性を調節できることが示される。図1の説明
ハイブリダイゼーション溶液中のSDSの関数としての相補的PNA/DNA
二重らせんの温度安定性の図面。白抜き四角:DNA(5’−ATTTCTAC
ACCTCCGTGT−3’、配列番号:2)にハイブリダイズするPNA(H
−Ado3−ACACGGAGGTGTAGAAAT−NH2;「Ado」は、8
−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸リンカーを示す、配列番号:1)、黒四
角:DNA(5’−TCACGAACAACGCGA−3’、配列番号:4)に
ハイブリダイズするPNA(H−Aha−TCGCGTTGTTCGTGA−
NH2;「Aha」は、アミノヘキサン酸リンカーを示す、配列番号:3)、白
抜き丸:DNA(5’−TAGTTGTGACGTACA−3’、配列番号:6
)にハイブリダイズするPNA(Ado3−TGTACGTCACAACTA−
Gly−NH2、配列番号:5)、黒丸:DNA(5’−TAGTTGTGAT
GTACA−3’、配列番号:10)にハイブリダイズするPNA(Ado3−
TGTACATCACAACTA−Gly−NH2、配列番号:9)、黒三角:
DNA(5’−TAGTTGTGACGTACA−3’、配列番号:6)にハイ
ブリダイズするDNA(5’−TGTACGTCACAACTA−3’、配列番
号:7)。実施例2 PNA/DNA二重らせんにおけるSDSの効果は可逆的である
観察されたSDSの効果が可逆的であるかどうかを決定するために、以下の3
つの状態を比較した。
A.SDSの非存在下でPNA/DNA二重らせんを形成させ、分析直前にSD
Sを添加する。
B.SDSの存在下でPNA/DNA二重らせんを形成させる。
C.SDSの存在下でPNA/DNA二重らせんを形成させ、分析直前にSDS
を低濃度まで希釈する。
ハイブリダイゼーション反応を、以下のように行なった。状態A
.
完全にマッチしたPNA/DNA(反応1):4.5mMの15マーPNA、
4.5mMの相補的DNAオリゴヌクレオチドおよび
25mM Na2HPO4、pH7.0
を含むハイブリダイゼーション反応(1ml)。
ミスマッチPNA/DNA(反応2):4.5mMの15マーPNA、4.5
mMの1塩基ミスマッチDNAオリゴヌクレオチドおよび25mM Na2HP
O4、pH7.0を含むハイブリダイゼーション反応(1ml)。
溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置いてハイブリッドを形成させた。次の日
、2mlの25mM Na2HPO4、pH7.0、1.5%SDSをハイブリダ
イゼーション反応1に添加し(最終濃度、25mM Na2HPO4、pH7.0
、1.0%SDS)、2mlの25mM Na2HPO4、pH7.0、0.15
%SDSをハイブリダイゼーション反応2に添加した(最終濃度、25mM N
a2HPO4、pH7.0、0.1%SDS)。緩衝液を添加後直ちに、Perkin-E
lmer、λ2分光光度計を用いて、PNA/DNA二重らせんの温度安定性を分光
光度法的に決定した。状態B
.
完全にマッチしたPNA/DNA(反応3):4.5mMの15マーPNA、
4.5mMの相補的DNAオリゴヌクレオチドおよび
25mM Na2HPO4、pH7.0、1.0%SDS
を含むハイブリダイゼーション反応(300m)。
完全にマッチしたPNA/DNA(反応4):4.5mMの15マーPNA、
4.5mMの相補的DNAオリゴヌクレオチドおよび
25mM Na2HPO4、pH7.0、0.1%SDS
を含むハイブリダイゼーション反応(1ml)。
ミスマッチPNA/DNA(反応5):4.5mMの15マーPNA、4.5
mMの1塩基ミスマッチDNAオリゴヌクレオチドおよび25mM Na2HP
O4、pH7.0、0.1%SDSを含むハイブリダイゼーション反応(1ml
)。
溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置いてハイブリッドを形成させた。次の日
、2.7mlの25mM Na2HPO4、pH7.0、1.0%SDSを反応3
に添加し(最終濃度、25mM Na2HPO4、pH7.0、1.0%SDS)
、2.0mlの25mM Na2HPO4、pH7.0、0.1%SDSを
反応4および5に添加した(最終濃度、25mM Na2HPO4、pH7.0、
0.1%SDS)。緩衝液を添加後直ちに、Perkin-Elmer、λ2分光光度計を用
いて、PNA/DNA二重らせんの温度安定性を分光光度法的に決定した。状態C
.
完全にマッチしたPNA/DNA(反応6):4.5mMの15マーPNA、
4.5mMの相補的DNAオリゴヌクレオチドおよび
25mM Na2HPO4、pH7.0、1.0%SDS
を含むハイブリダイゼーション反応(300ml)。
ミスマッチPNA/DNA(反応7):4.5mMの15マーPNA、4.5
mMの1塩基ミスマッチDNAオリゴヌクレオチドおよび25mM Na2HP
O4、pH7.0、1.0%SDSを含むハイブリダイゼーション反応(300
ml)。
溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置いてハイブリッドを形成させた。次の日
、2.7mlの25mM Na2HPO4、pH7.0をハイブリダイゼーション
反応6および7の両方に添加した(最終濃度、25mM Na2HPO4、pH7
.、0.1%SDS)。緩衝液を添加後直ちに、Perkin-Elmer、λ2分光光度計
を用いて、PNA/DNA二重らせんの温度安定性を分光光度法的に決定した。
分析物の結果を、表1A(マッチPNA/DNA二重らせん)および表1B(
ミスマッチPNA/DNA二重らせん)に示す。表に示すように、PNA/DN
A二重らせんのTmは、最終SDS濃度にのみ依存し、SDSの効果が可逆的であ
ることを示す。図2の説明
。A:SDSの添加および希釈の程度を関数とする相補的PNA/D
NA二重らせん(PNA:Ado3−TGTACGTCACAACTA−Gly
−NH2、配列番号:5およびDNA:5’−TAGTTGTGACGTACA
−3’、配列番号:6)の温度安定性。B:SDSの添加および希釈の程度を関
数とする1塩基ミスマッチPNA/DNA二重らせん(PNA:Ado3−TG
TACGTCACAACTA−Gly−NH2、配列番号:5およびDNA:5
’−TAGTTGTCACGTACA−3’、配列番号:11)の温度安定性。実施例3 SDSを使用してPNAのその相補的DNAへの特異性を調節できる
25mM Na2HPO4、pH7.0、4.5mMの15マーPNA、4.5
mMの相補的もしくは1塩基ミスマッチDNAオリゴヌクレオチド相補的DNA
オリゴヌクレオチドおよび0〜0.5%のSDSを含む一連の1mlのハイブリ
ダイゼーション反応を始めた。溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置いてPNA
/DNAハイブリッドを形成させた。次の日、追加の適当な緩衝液(25ml
Na2HPO4、pH7.0および0〜0.5%のSDS)2mlをハイブリダイ
ゼーション溶液に添加し、Perkin-Elmer λ2分光光度計を用いて、融解温度Tm
として測定した温度安定性を分光光度法的に決定した。対照として、相補的D
NAオリゴヌクレオチドまたはミスマッチを含むDNAオリゴヌクレオチドのい
ずれかとハイブリダイズしたDNAを分析した。図3に示すように、完全に相補
的なDNA/DNA二重らせんのTm値または1塩基ミスマッチDNA/DNA
二重らせんのTmのいずれも、試験した範囲の濃度のSDS(0〜0.5%)の
存在により影響されない。対照的に、完全に相補的なPNA/DNA二重らせん
および1塩基ミスマッチPNA/DNA二重らせんの両Tmは、SDSにより影
響される。しかし、2つの異なるPNA/DNA二重らせんのTmに影響を及ぼ
すのに必要なSDSの濃度は、全く異なる。したがって、ミスマッチを含むPN
A/DNA二重らせんは、0.095%を越えるSDS濃度により影響されるが
、完全にマッチしたPNA/DNA二重らせんは、SDS濃度が0.13%を越
える濃度までは影響されない。この結果により、SDSを使用してPNAのその
相補的DNAへの特異性を増加できることが示される。PNAおよびDNA
オリゴヌクレオチド間の1塩基ミスマッチの12個の可能な種類を含む分析に拡
大させた。図4は、SDSの非存在下および完全に相補的なPNA/DNA二重
らせんには影響しない最高濃度のSDS(0.13%)の存在下で得られたTm
値の比較図を示す。このSDS濃度でのすべてのミスマッチPNA/DNA二重
らせんの温度安定性は、SDS非存在下での7〜17℃と比較して、15〜32
℃間のTmを有し、かなり影響される。ゆえに、PNAのその完全にマッチした
DNA標的に対する特異性を高めるSDSの能力は、一般的な現象である。図3の説明
:ハイブリダイゼーション溶液中のSDSの関数としての相補的およ
び1塩基ミスマッチPNA/DNAならびにDNA/DNA二重らせんの温度安
定性の図面。白抜き四角:DNA(5’−TAGTTGTGACGTACA−3
’、配列番号:6)にハイブリダイズするPNA(Ado3−TGTACGTC
ACAACTA−Gly−NH2、配列番号:5)、黒四角:DNA(5’−T
AGTTGCGACGTACA−3’、配列番号:8)にハイブリダイズするP
NA(Ado3−TGTACGTCACAACTA−Gly−NH2、配列番号:
5)、白抜き丸:DNA(5’−TAGTTGTGACGTACA−3’、配列
番号:6)にハイブリダイズするDNA(5’−TGTACGTCACAACT
A−3’、配列番号:7)、黒丸:DNA(5’−TAGTTGCGACGTA
CA−3’、配列番号:8)にハイブリダイズするDNA(5’−TGTACG
TCACAACTA−3’、配列番号:7)。図4の説明
:SDS非存在下および完全に相補的なPNA/DNA二重らせんに
は影響しない最高濃度でのSDS存在下で、1個の相補的および12個の1塩基
ミスマッチPNA/DNA二重らせんの温度安定性の図面。灰色の棒線:SDS
非存在下のPNA/DNA二重らせんの温度安定性。黒の棒線:0.13%SD
S存在下のPNA/DNA二重らせんの温度安定性。実施例4 PNA/DNA二重らせんにおけるSDSの効果はハイブリダイゼーション溶液 のイオン強度により調節できる
4.5mMの15マーPNA、4.5mMの相補的もしくは1塩基ミスマッチ
DNAオリゴヌクレオチドのいずれかならびに様々な濃度のNa2HPO4、pH
7.0およびSDSを含む一連の1mlのハイブリダイゼーション反応を始めた
。溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置いてハイブリッドを形成させた。次の日
、Na2HPO4、pH7.0およびSDSの濃度を変えることなく、試料を3m
lに希釈した。次いで、Perkin-Elmer λ2分光光度計を用いて、融解温度Tm
として測定した各二重らせんの温度安定性を分光光度法的に決定した。図5に示
すように、相補的および1塩基ミスマッチPNA/DNA二重らせんの両Tmに
おける効果を産するのに必要なSDSのレベルは、溶液のイオン強度とともに変
化する。ゆえに、イオン強度が低くなるにつれて、Tm効果を産するためにより
高濃度のSDSが必要とされる。このことにより、
A:SDSは、SDS分子それ自体としてその効果を及ぼさないが、むしろ、溶
液のイオン強度に依存して形成されるより高次のSDS構造(すなわち、ミセル
SDS)を介してその効果を及ぼし、
B:SDSとイオン強度とを組み合わせて用いて、完全マッチ対1塩基ミスマッ
チDNA標的間を識別するPNAの能力を調節することができることが示される
。図5の説明
:ハイブリダイゼーション溶液中のSDSおよびイオン強度の関数と
しての相補的および1塩基ミスマッチPNA/DNA二重らせんの温度安定性の
図面。PNA(Ado3−TGTACGTCACAACTA−Gly−NH2、配
列番号:5)をDNA(5’−TAGTTGTGACGTACA−3’、配列番
号:6)にハイブリダイズさせることにより、完全に相補的なPNA/DNA二
重らせんを作製した。PNA(Ado3−TGTACGTCACAACTA−G
ly−NH2、配列番号:5)をDNA(5’−TAGTTGCGACGTAC
A−3’、配列番号:8)にハイブリダイズさせることにより、1塩基ミスマ
ッチPNA/DNA二重らせんを作製した。黒四角:SDS非存在下で完全にマ
ッチした二重らせん。白抜き四角:0.10%SDS存在下で完全にマッチした
二重らせん。黒丸:0.15%SDS存在下で完全にマッチした二重らせん。白
抜き丸:0.20%SDS存在下で完全にマッチした二重らせん。黒三角:SD
S非存在下で1塩基ミスマッチ二重らせん。白抜き三角:0.10%SDS存在
下で1塩基ミスマッチ二重らせん。黒菱形:0.15%SDS存在下で1塩基ミ
スマッチ二重らせん。白抜き菱形:0.20%SDS存在下で1塩基ミスマッチ
二重らせん。実施例5 SDSに加え、洗剤DTABを用いてPNAのその相補的DNAに対する親和性 および特異性を調節できる
25mM Na2HPO4、pH7.0、4.5mMの15マーPNA、4.5
mMの相補的もしくは1塩基ミスマッチDNAオリゴヌクレオチドのいずれかお
よび0〜0.16%のDTABを含む一連の1mlのハイブリダイゼーション反
応を始めた。溶液を95℃に加熱し、室温で一晩置いてPNA/DNAハイブリ
ッドを形成させた。次の日、追加の適当な緩衝液(25ml Na2HPO4、p
H7.0および0〜0.16%のDTAB)2mlをハイブリダイゼーション溶
液に添加し、Perkin-Elmer λ2分光光度計を用いて、融解温度Tmとして測定
した各二重らせんの温度安定性を分光光度法的に決定した。図6に示すように、
完全に相補的なPNA/DNA二重らせんおよび1塩基ミスマッチPNA/DN
A二重らせんの両Tmは、DTABにより影響される。しかし、2つの異なるP
NA/DNA二重らせんのTmに影響を及ぼすのに必要なDTABの濃度が異な
る。したがって、ミスマッチを含んだPNA/DNA二重らせんは、0.11%
を越えるDTABの濃度により影響されるが、完全にマッチしたPNA/DNA
二重らせんは、0.125%を越えるDTABの濃度まで影響されない。この結
果により、SDSと類似のDTABを使用してPNAのその相補的DNAへ
の親和性および特異性を調節できることが示される。図6の説明
:ハイブリダイゼーション溶液中のDTABの関数としての相補的お
よび1塩基ミスマッチPNA/DNAならびにDNA/DNA二重らせんの温度
安定性の図面。白抜き四角:DNA(5’−TAGTTGTGACGTACA−
3’、配列番号:6)にハイブリダイズするPNA(Ado3−TGTACGT
CACAACTA−Gly−NH2、配列番号:5);黒四角:DNA(5’−
TAGTTGCGACGTACA−3’、配列番号:8)にハイブリダイズする
PNA(Ado3−TGTACGTCACAACTA−Gly−NH2、配列番号
:5)。実施例6 洗剤ドデシル硫酸リチウム(LiDS)を用いてPNAのその相補的DNAに対 する親和性および特異性を調節できる
25mM Na2HPO4、pH7.0、4.5μMの15マーPNA、4.5
μMの相補的もしくは1塩基ミスマッチDNAオリゴヌクレオチドのいずれかお
よび0〜0.3%のLiDSを含む一連の1mlのハイブリダイゼーション反応
を始めた。溶液を95℃で5分加熱し、室温で一晩置いてハイブリッドを形成さ
せた。次の日、追加の適当な緩衝液(25mM Na2HPO4、pH7.0およ
び0〜0.3%のLiDS)2mlをハイブリダイゼーション溶液に添加し、Pe
rkin-Elmer λ2分光光度計を用いて、(融解温度Tmとして測定した)各二重
らせんの温度安定性を分光光度法的に決定した。図5に示すように、PNA/D
NA二重らせんのTmは両方とも、LiDSの添加により影響され、実施例3に
おけるSDSの効果と類似し、この効果は、相補的PNA/DNA二重らせんに
対するよりも1塩基ミスマッチPNA/DNA二重らせんに対して、より低濃度
のLiDSで起こる。しかし、SDSと比較して、LiDSの効果はより低濃度
で起こる。図7の説明
:ハイブリダイゼーション溶液中のLiDSの濃度の関数としての相
補的および1塩基ミスマッチPNA/DNAならびにDNA/DNA複合体の温
度安定性の図面。四角:完全に相補的なPNA/DNA二重らせん(DNA:5
’−TAGTTGTGACGTACA−3’(配列番号:6)にハイブリダイズ
するPNA:Ado3−TGTACGTCACAACTA−Gly−NH2(配列
番号:5));丸:1塩基ミスマッチPNA/DNA二重らせん(DNA:5’
−TAGTTGCGACGTACA−3’(配列番号:8)にハイブリダイズす
るPNA:Ado3−TGTACGTCACAACTA−Gly−NH2(配列番
号:5)ミスマッチの位置に下線)。実施例7 PNAオリゴマーの合成
Boc法を伴う通常の固相法ペプチド合成により、PNA合成を行なう。PN
Aオリゴマーは、手動で合成することができるが、自動合成がより適する。本発
明者らは、現在、ABI433Aペプチド合成機で、オリゴマーを合成しており
、以下の明細書は、この合成機および標準の5μMのスケールに基づいている。
用いたPNAモノマーは:BocA(Z)−OH、Boc−C(Z)−OH、B
oc−G(Z)−OHおよびBoc−T−OH(Boc=バックボーンアミノ基
ならびに8−アミノ−3,6−ジオキサ−オクタン酸(独国特許出願公開第39
43522号明細書)、グリシンおよび6−アミノ−ヘキサン酸のアミノ基に対
してのtert.ブチル オキシカルボニル;Z=環外アミノ基の塩基に対して
のベンジルオキシカルボニル)である。樹脂
50mgのMBHA樹脂(約0.100mmol/gの負荷)を各合成に用い
た。アミノ酸等の第1のモノマーを用いて、適当な配列で樹脂をダウンロードす
る(負荷は定量Kaiser試験によりチェックする)。Boc−Gly−樹脂(またはBoc−モノマー−樹脂)の調製
Boc−Gly−樹脂に対する実験を説明するが、Boc−モノマー−樹脂も
同様に調製する。3gのMBHA樹脂(4−メチル−ベンズヒドリルアミン 1
00〜200メッシュ、Nova Biochem)(約0.45mmol/g
、1.35mmolアミン)を、DCM(ジクロロメタン、Labscan)で
膨潤させ、次いで、DCM(2x)、DCM中の5%DIEA(N,N−ジイソ
プロピルエチルアミン、Aldrich)(3分)、DCM(2x)で洗浄した
。
Boc−Gly−OH(210mg(1.20mmol)、MW:175.4
g/mol)を、DMF/ピリジン/DIEA(15/15/1)に溶解し、H
BTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テト
ラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート、Nova Biochem
)(450mg、1.19mmole)も同様にDMF/ピリジン/DIEAに
溶解する。該アミノ酸にHBTUを添加し、1分間前活性化させる。次いで、こ
の混合物を樹脂に添加する。樹脂を覆うのに必要なだけの正確な量の溶媒を用い
る。
このものを一晩反応させる。次いで、樹脂上の未反応のアミノ基を無水酢酸/
ピリジン/NMP(N−メチル−ピロリドン)(1/2/2)を用いて2〜3時
間キャップする。なお、Kaiser試験は、陰性でなければならない。
PNAモノマーの負荷に対して、同量、同溶媒および同時間を用いる。Kaiser試験
試薬A:40gのフェノールと10mlのエタノールを混合する。溶解するま
で温める。100mlの水に65mgのシアン化カリウムを溶解する。2mlの
KCN溶液を100mlのピリジンに希釈する。フェノールとKCN/ピリジン
溶液を混合する。
試薬B:2.5gのニンヒドリンを50mlのエタノールに溶解する。Kaiser試験(定性)
約2〜5mgの吸引乾燥樹脂を取り出し、1滴のAおよび2滴のBを添加する
。100℃で2分間加熱する(青(または黒):陽性;淡黄色:陰性)。Kaiser試験(定量)
約50mgのダウンロード(+キャップ)した樹脂を計量し、TFA(トリフ
ルオロ酢酸)/m−クレーゾールを用いて2回3分間脱保護する。樹脂(+DI
EA処理)を洗浄する。吸引により乾燥しているDCMで樹脂を少なくとも洗浄
する。5〜10mgの試料を取り出し、タールを塗ったチューブに入れる。
これらのものを、ヒートブロックで10分間加熱する。樹脂の「乾燥」質量(
Wmg)を決定する。各チューブに100μlの試薬Aおよび25μlの試薬Bを
添加する。100℃で5分間加熱する。1mlの60%アルコールを添加し、樹
脂を濾過する。DCM中0.5M Et4NClを0.2ml用いて樹脂を2回
洗浄する。475mlの60%エタノール(=Vml)を加えることにより全体の
容量を2mlに調整する。対照として60%エタノールを用いて570nmでの
吸光度を測定する。吸光度が2.5よりも高い場合、60%エタノールで希釈す
る(NB:Vmlを変える)。以下の式により試験の平均値を計算する:
0.050〜0.100付近の値が理想的である。
値が低いほど産物が減少し、値が高いほどオリゴマー化の間凝集の問題が生じる
(Anal.Biochem.117,147-157(1981)を参照)。Boc脱保護化
1mlのTFA/m−クレゾール(95/5)を、1分1回および3.5分1
回添加することにより、boc保護基を除去する。カップリング
100μl(026M)の各モノマーを、別々のカートリッジに置く。各カッ
プリングでは、合成機はこの量のモノマーを使用する。各カップリングの前に、
最初に125μlのHBTU(0.201M)および次に125μlのDIEA
(0.41M)を、カートリッジ内のモノマー溶液に添加する。これらの溶液中
の溶媒は、NMPである。合計350μlを反応容器に添加する。33分間カッ
プリングを行なう。キャッピング
カップリング後、最後の追加モノマーをキャップする。反応容器に1mlのA
c2O/NMP/ピリジン(1/2/2)を1分間で添加することにより、これ
を行なう。樹脂からの切断
最後のモノマーをカップリング後、TFMSA(トリフルオロメタンスルホン
酸)処理により樹脂からオリゴマーを除去する。この方法により、アミドとして
修飾したカルボキシ末端を有する(−NH2末端と指定、一方、アミノ末端は−
Hと指定)オリゴマーを得る。
すべての溶液は、毎回新しく調製しなければならない。
1.2種類の溶液を調製する:
I:TFA/ジメチルスルフィド/m−クレゾール(1:3:1)
II:TFA/TFMSA(トリフルオロメチルスルホン酸、9:1)
樹脂を100%TFAを用いて1分間洗浄する。1molの溶液I、その後1m
lの溶液IIを反応容器(スクリューキャップとフリット(fritte)を有するガラス
容器)に加え、1時間攪拌させる。100%TFAを用いて1分間洗浄する。T
FMSA/TFA/m−クレゾール(2:8:1)の溶液を調製し、この2ml
を反応容器に添加する。樹脂の色が黒に変わる!1.5時間攪拌させる。黒色溶
液をエーテル(25〜50ml)で「破裂」させ、オリゴマーを沈殿させる。1
〜2mlのTFAを用いて2回黒色樹脂を洗浄し、また、これにエーテルを加え
る。0.44μのteflonフィルターを用いて沈殿物を濾過し、エーテルで
数回洗浄する。5%酢酸水溶液に溶解し、フィルターから吸引することにより、
フィルターからオリゴを除去する。数回洗浄する。オリゴマーの水溶液を凍結し
、凍結乾燥により溶媒を除去する。QC−チェック
HPLCに基づき、粗製物は通常80〜90%の純度で得られる(15マー)
。逆相HPLCにより、これを精製する。Delta Pak(C18)、100
Å、5μm、3.9x150(Waters)(流速1ml/分)カラムを、分
析用分析のために使用し、Vydac(C18)、300Å、5μm、10x25
0(流速3mml/分)を分取用目的のために用いる。
両方の場合で用いるグラジエントは、0〜2分 100%A;2〜30分 1
00〜60%A;30〜35分 60%A;35〜40分 60〜0%A;40
〜45分 0%A;45〜50分 0〜100%A;50〜55分 100%A
である。
(A:0.1%TFA水溶液、B:0.1%TFAアセトニトリル溶液)。
MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより純物質をキャラクタライズ
し、相補的DNS標的に対するPNAオリゴマーの温度安定性を評価する。
試料中のPNAの正確な量は、溶液の光学密度により測定する。以下の値を用
いる:
ε0:T=8.8、C=7.3、G=11.7、A=15.4
OD=ε0xμgxMw1。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1997年2月28日
【補正内容】樹脂からの切断
最後のモノマーをカップリング後、TFMSA(トリフルオロメタンスルホン
酸)処理により樹脂からオリゴマーを除去する。この方法により、アミドとして
修飾したカルボキシ末端を有する(−NH2末端と指定、一方、アミノ末端は−
Hと指定)オリゴマーを得る。
すべての溶液は、毎回新しく調製しなければならない。
1.2種類の溶液を調製する:
I:TFA/ジメチルスルフィド/m−クレゾール(1:3:1)
II:TFA/TFMSA(トリフルオロメチルスルホン酸、9:1)
樹脂を100%TFAを用いて1分間洗浄する。1molの溶液I、その後1m
lの溶液IIを反応容器(スクリューキャップとフリット(fritte)を有するガラス
容器)に加え、1時間攪拌させる。100%TFAを用いて1分間洗浄する。T
FMSA/TFA/m−クレゾール(2:8:1)の溶液を調製し、この2ml
を反応容器に添加する。樹脂の色が黒に変わる!1.5時間攪拌させる。黒色溶
液をエーテル(25〜50ml)で「破裂」させ、オリゴマーを沈殿させる。1
〜2mlのTFAを用いて2回黒色樹脂を洗浄し、また、これにエーテルを加え
る。0.44μのTeflonTMフィルターを用いて沈殿物を濾過し、エーテル
で数回洗浄する。5%酢酸水溶液に溶解し、フィルターから吸引することにより
、フィルターからオリゴを除去する。数回洗浄する。オリゴマーの水溶液を凍結
し、凍結乾燥により溶媒を除去する。QC−チェック
HPLCに基づき、粗製物は通常80〜90%の純度で得られる(15マー)
。逆相HPLCにより、これを精製する。Delta pak(C18)、100
Å、5μm、3.9x150(Waters)(流速1ml/分)カラムを、分
析用分析のために使用し、Vydac(C18)、300Å、5μm、10x25
0(流速3mml/分)を分取用目的のために用いる。
両方の場合で用いるグラジエントは、0〜2分 100%A;2〜30分 1
00〜60%A;30〜35分 60%A;35〜40分 60〜0%A;40
〜45分 0%A;45〜50分 0〜100%A;50〜55分 100%A
である。
(A:0.1%TFA水溶液、B:0.1%TFAアセトニトリル溶液)。
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DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),JP,US