JP4235283B2 - 小三本鎖形成pnaオリゴ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、決定対象の核酸および2以上のプローブ分子間の三本鎖複合体を形成することによる核酸の決定方法、かかる方法により形成された三本鎖結合複合体ならびにプローブとしての小さい三本鎖形成核酸結合分子に関する。
【0002】
【従来の技術】
核酸分子の検出および定量は、ある種の診断技術において必須の要素を構成する。かかる技術の基本的な特徴は、相補的な核酸配列に特異的にハイブリダイズするプローブ(核酸または核酸アナログ)の能力である。ハイブリダイゼーションを起こすために、幾つかの標準的な条件としては、例えば、塩濃度および温度などに関して合わさなければならないが、主要な決定因子は、2つのハイブリダイズしている鎖のハイブリッドにおける完全にマッチしたヌクレオ塩基の数である。1つの塩基対のミスマッチ(または欠失/挿入)により引き起こされる安定性の相対的な低下がハイブリッドの長さが増加するにつれて、ますます減少するが、相対的に短い長さ、例えば、6〜10塩基対のハイブリッドにおいて、1つの塩基対のミスマッチは、熱安定性の劇的な減少を生じる。
【0003】
診断の目的のために、特定の遺伝子または生物にのみ存在するが、試料中に存在するいかなるバックグラウンドの核酸においても存在しないヌクレオ塩基の配列を同定することが、しばしば望まれる。例えば、ヒトゲノムなどのような典型的な試料に統計学的に独特であるヌクレオ塩基の特定の配列のために、配列の長さは、他方、熱安定性の劇的な損失なしにミスマッチに適応させる能力を増強するであろう、少なくとも18〜20塩基のオーダーでなければならない。
【0004】
核酸の認識は、一般的に二本鎖または三本鎖形成の使用により可能であるが、現在では、ワトソン−クリック型(WC)塩基対合を介して一本鎖分析対象物核酸に結合している初期の二本鎖形成プローブが、診断目的のために使用される。WCおよびフーグスティーン結合(H)の両方が関与する三本鎖構造は、二本鎖に比べて、非常に熱安定であり、2つの相容れない性質は、診断目的のためのそれらの活用への障害が存在するように思われた:プリン塩基の連続した鎖は通常標的配列と三本鎖を形成することを要求するため、特定の配列が特異的であるためにある程度の長さを有さなければならないので、ある核酸配列内に属または種に特異的な標的を見つける機会は極めて小さい。したがって、長い場合でさえ、統計学的に独特のプリン配列が存在し、いかなる相補的な三本鎖を形成するプローブのハイブリダイゼーション特性(塩基対あたり高い結合能)も、6または7塩基長を下回る全部の部分配列に非特異的に結合することを引き起こし、したがってそれらの特異性を失うであろう。
【0005】
国際公開第92/20702号パンフレットにおいては、ある種のペプチド核酸が二本鎖DNA中に鎖侵入し、DNAと高い親和性で結合可能であることを開示する。国際公開第92/20703号パンフレットにおいては、ペプチド核酸(PNA)の調製および診断プローブとしての使用を開示する。国際公開第95/01370号パンフレットにおいては、2つの同一のホモピリミジン配列分子が、2つのPNA分子および1つの一本鎖DNAまたはRNA分子を含む安定な三本鎖構造を形成すること開示する。これらの構造は治療法的および診断的使用の両方の目的について開示されている。
【0006】
国際公開第96/02558号パンフレットにおいては、同一の配列であるが、反平行方向であり架橋部分により連結した2つのセグメントを含む分子を開示する。かかる分子は、各々1つのセグメントの配列を有する独立のPNAから形成された複合体に比べ、小さいが顕著なTm値の増加を呈することを開示する。これは、共有結合的に結合したPNA鎖の高い局所的な集中に帰する。開示されたセグメントは、一般的に6塩基長以上である。この開示された結合ペプチド核酸は十分な配列特異性のために、相補的な、分析対象物核酸中のプリンのストレッチに対応する、相対的に大きいピリミジンのストレッチを必要とするという本質の問題をもっており、それは、非常に高レベルの非特異的結合を導くであろう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、鎖の一方は、短い三本鎖を形成するプローブ分子であり、三本鎖形成により結合した3つの独立した鎖を含む配列特異的な複合体を提供することを目的とある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 核酸A、第1核酸A結合分子B、および該分子Bの配列と異なる塩基配列を有する少なくとも1つのさらなる核酸A結合分子C間の三本鎖結合複合体を形成する工程、ならびに前記核酸の存在または量の尺度としての前記結合複合体の存在または量を決定する工程を含む、核酸Aを決定する方法であって、該三本鎖複合体は、該核酸A、該分子Bおよび1以上の該分子C間の三本鎖複合体が該核酸Aの1分子と、該分子Bの2分子または該分子Cの2つの同一分子とにより形成された三本鎖複合体よりも温度安定な条件下で形成されることを特徴とする決定方法、
〔2〕 該三本鎖複合体が、該核酸A、該分子Bおよび該分子Cのそれぞれが少なくとも1であるが11未満、好ましくは1より大きく8未満の塩基で寄与する三重らせん結合領域を含むことを特徴とする、前記〔1〕記載の決定方法、
〔3〕 該複合体が三本鎖領域に結合している単一の分子Cを含むことを特徴とする、前記〔1〕記載の決定方法、
〔4〕 該分子Bが3塩基を超えるが11塩基未満、好ましくは4塩基を超えるが8塩基未満の、三重らせん結合領域における結合に関与する塩基配列を有することを特徴とする、前記〔3〕記載の決定方法、
〔5〕 該分子Bの三重らせん結合配列が該分子Cにより結合した配列よりも長さが短いことを特徴とする、前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の決定方法、
〔6〕 該分子Cが少なくとも6塩基長を有することを特徴とする、前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載の決定方法、
〔7〕 形成された複合体が三本鎖領域に結合する2つの異なる分子Cを含むことを特徴とする、前記〔1〕記載の決定方法、
〔8〕 該分子Cが該核酸Aに隣接して結合することを特徴とする、前記〔7〕記載の決定方法、
〔9〕 分子Bおよび/またはCが化学的に修飾されて、2つの分子Bまたは2つの同一の分子Cと1つの分子Aとの三重らせん形成を脱安定化させることを特徴とする、前記〔1〕〜〔8〕いずれか記載の決定方法、
〔10〕 分子Bの結合領域が非対称な塩基配列を有することを特徴とする、前記〔1〕〜〔9〕いずれか記載の決定方法、
〔11〕 分子Bの結合領域が対称な塩基配列を有することを特徴とする、前記〔1〕〜〔9〕いずれか記載の決定方法、
〔12〕 分子Bがフーグスティーン型塩基対形成を介して核酸に結合し、分子Cがワトソン−クリック型塩基対形成を介して結合していることを特徴とする、前記〔1〕〜〔11〕いずれか記載の決定方法、
〔13〕 分子Bおよび/またはCが標識され、結合複合体中の前記1つまたは複数の標識の存在を核酸の決定のために使用することを特徴とする、前記〔1〕〜〔12〕いずれか記載の決定方法、
〔14〕 分子BおよびCの1つまたは全部が核酸類似体であることを特徴とする、前記〔1〕〜〔13〕いずれか記載の決定方法、
〔15〕 核酸類似体がPNAであることを特徴とする、前記〔14〕記載の決定方法、
〔16〕 該核酸Aに結合する該分子Bの領域における塩基がピリミジンからなることを特徴とする、前記〔1〕〜〔15〕いずれか記載の決定方法、
〔17〕 該核酸が、該核酸に対する分子Bの結合領域内に位置する塩基配列における相違により決定されないように、他の核酸から区別されることを特徴とする、前記〔1〕〜〔12〕いずれか記載の決定方法、
〔18〕 該核酸が、該核酸に対する分子Cの結合領域内であるが、該核酸に対する分子Bの結合領域内ではない位置に存在する塩基配列における相違により決定されないように、他の核酸から区別されることを特徴とする、前記〔1〕〜〔17〕いずれか記載の決定方法、
〔19〕 分子Cが該核酸に対する分子Bの結合領域に完全に及ぶことを特徴とする、前記〔1〕〜〔18〕いずれか記載の決定方法、
〔20〕 分子Bの結合領域内の該核酸の排他的な部分にそれぞれ結合する、少なくとも2つの分子Cが使用されることを特徴とする、前記〔1〕〜〔19〕いずれか記載の決定方法、
〔21〕 三本鎖結合複合体を形成させるための反応混合物が、該Aへの結合において少なくとも1つの分子Cと競合することができるが、三本鎖複合体において関与することができない競合プローブ分子Dをさらに含むことを特徴とする、前記〔1〕〜〔20〕いずれか記載の決定方法、
〔22〕 核酸A、第1核酸結合分子B、および該分子Bと比べて異なる塩基配列を有する少なくとも1つのさらなる核酸結合分子C間の三本鎖結合複合体であって、該核酸Aの1分子と該分子Bの2分子または該分子Cの2つの同一分子とから形成された三本鎖複合体よりも温度安定であることを特徴とする複合体、
〔23〕 分子Bが1つまたは複数の分子Cの結合領域全体よりも長さが短く、分子Bが3塩基を超えるが11塩基未満の塩基配列を有し、かつ分子Bの配列が非対称であることを特徴とする、前記〔22〕記載の複合体、
〔24〕 分子Bが1つまたは複数の分子Cの結合領域全体よりも長さが短く、分子Bが3塩基を超えるが11塩基未満の塩基配列を有し、かつ分子Bの配列が対称であることを特徴とする、前記〔22〕記載の複合体、
〔25〕 前記核酸A、第1核酸結合分子B、および少なくとも1つのさらなる核酸結合分子C間で、前記〔22〕〜〔24〕いずれか記載の三本鎖結合複合体を形成する方法、ならびに
〔26〕 核酸を特異的に決定するためのプローブとして、4〜10塩基、好ましくは5〜8塩基の長さを有する核酸結合分子を使用する方法、
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の主題は、核酸A、第1核酸A結合分子B、および該分子Bの配列と異なる塩基配列を有する少なくとも1つのさらなる核酸A結合分子C間の三本鎖結合複合体を形成する工程、ならびに前記核酸の存在または量の尺度としての前記結合複合体の存在または量を決定する工程を含む、核酸Aを決定する方法であって、該三本鎖複合体は、該核酸A、該分子Bおよび1以上の該分子C間の三本鎖複合体が該核酸Aの1分子と、該分子Bの2分子または該分子Cの2つの同一分子とにより形成された三本鎖複合体よりも温度安定な条件下で形成されることを特徴とする決定方法である。
【0010】
本発明のさらなる主題は、より長いワトソン−クリック型(WC)結合オリゴマーにより、短いフーグスティーン(H)結合オリゴマーを安定化させることによって、該目的を達成する知見である。これは、特異的な標的配列に長いホモプリン域を要求することをバイパスすると同時に、特異性を失うことなく、短いフーグスティーン結合プローブの高い識別力を開発することを可能にする。
【0011】
本発明のさらなる主題は、核酸A、第1核酸結合分子B、および該分子Bと比べて異なる塩基配列を有する少なくとも1つのさらなる核酸結合分子C間の三本鎖結合複合体であって、該核酸Aの1分子と該分子Bの2分子または該分子Cの2つの同一分子とから形成された三本鎖複合体よりも温度安定であることを特徴とする複合体である。
【0012】
本発明のさらなる主題は、核酸を特異的に決定するためのプローブとして、4〜10塩基、好ましくは5〜8塩基の長さを有する核酸結合分子を使用する方法である。
【0013】
本発明のさらなる主題は、それ自身で核酸(A)との安定なハイブリッドを形成しないであろう条件下での、1種以上の二本鎖形成、混合配列オリゴマー(C)の制御された結合を通した、短い三本鎖形成オリゴマー(B)の制御された結合である。
【0014】
本発明のさらなる主題は、従属請求項に開示される。
【0015】
決定対象の核酸Aは、本発明において、分析対象物核酸またはそれから派生した核酸であると理解される。分析対象物核酸としては、例えば、植物、動物、ヒト、ウイルス、細菌、または非天然由来の起源などのいかなる起源の核酸をも含む。これらは、溶液、懸濁液の状態で存在してもよく、固体状担体に固定、または細胞を含む培地、細胞塗沫標本、固定した細胞、組織、または固定した生物体に含んでいてもよい。それらから得られた核酸は分析対象物核酸から調製された核酸またはその一部であり、例えば、前記記載の核酸のコピーまたはその一部である。これらのコピーとしては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応などのいかなる複製および/または転写/逆転写反応をも含む増幅により元の分析対象物核酸から生じた核酸を含む。
【0016】
分析対象物をハイブリダイゼーションしやすくさせるために、しばしば決定対象の核酸を含む試料を前処理する。かかる前処理は、細胞溶解、pHをアルカリ性域に変えることによる二本鎖核酸の変性、極端な温度変化の繰り返し(凍結/融解)、生理学的生育条件の変化(浸透圧)、界面活性剤、カオトロピック塩もしくは酵素(例えば、プロテアーゼ、リパーゼなど)の使用を含む。利用しやすい形の核酸を放出するために単独でまたは組み合わせてのいずれで、これらの工程を使用してもよい。ある例では、蛋白質、細胞、細胞断片だけでなく、さらに検出対象でない核酸などの試料の他の構成物から分析対象物核酸を分離することが有利であろう。さらに分析対象物核酸を一本鎖にし、二次構造を解離させるために該分析対象物核酸を変性させることが有利である。
【0017】
本発明の核酸結合分子は、AおよびTまたはUの塩基間ならびにCおよびGの塩基間などの二本鎖核酸におけるヌクレオ塩基の天然の認識から一般的に公知の水素結合を介して、核酸Aのヌクレオ塩基の配列を認識する分子である。該認識は、例えば、天然のヌクレオ塩基の間だけでなく、さらに天然の塩基と非天然の塩基との間、および非天然の塩基と非天然の塩基との間に起こりうる。非天然塩基は、例えば、国際公開第96/02558号パンフレットに概説された塩基、特にイソピリミジンヘテロ環塩基である。これらの水素結合部分は連続様式で、結合が生じうるように骨格に付着される。好適な骨格は、天然の糖リン酸骨格(DNAおよびRNAの核酸など)およびあらゆる非天然の骨格(ペプチド核酸(PNA))である。
【0018】
好ましくは、核酸結合分子は天然の糖リン酸骨格と異なる多量体化した骨格を有する。かかるプローブ分子の例示は、現在、当該分野において良く知られている。これらのプローブは、繰り返し様式で結合するモノマーのサブユニットに基づく。プローブ分子は、ペプチド結合により他のモノマーのサブユニットに結合するモノマーのサブユニットであることが好ましい。該ペプチド結合は、1級または2級アミンとカルボン酸残基とを連結する結合であると解される。モノマーまたは骨格中の連結している1種以上のモノマー内の結合の他の型が可能であり、例えば、エーテル結合またはアミノ結合などである。かかるプローブ分子の例示は、アザ−窒素原子に結合したリガンドを有するプローブ分子を含む国際公開第92/20702号パンフレット、国際公開第94/25477号パンフレットおよび国際公開第96/20212号パンフレットに記載されている。モノマーの間に混合した異なる結合を有するプローブ分子が欧州特許出願公開0 672 677号明細書に記載されている。「プローブ分子」という用語は、さらに前記非天然の骨格のストレッチおよび天然の糖リン酸骨格の付加的なストレッチを有する分子を含む。かかるキメラは、相補的な核酸に対していくらかの低い親和性を有するが、それでもなお本発明においては有用である。
【0019】
本発明において「骨格」という用語は、ヘテロ環塩基部分が異なる付着点で連続様式で結合される多量体部分を意味し、ここで、骨格上の塩基部分の付着に使用される原子間の距離が4〜8原子のストレッチ、好ましくは6原子、最も好ましくはペプチド基(CONH)を含むことにより互いに離れる。
【0020】
好ましいプローブ分子は、一般式(I)の化合物である:
【0021】
【化1】
【0022】
〔式中、nは、少なくとも3以上の整数であり、
xは、2〜n−1の整数であり、
L1 〜Ln は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルカノイル基、天然のヌクレオ塩基、非天然のヌクレオ塩基、芳香環基、DNAインターカーレーター、ヌクレオ塩基結合基、複素環基、レポーターリガンドおよびキレート基からなる群より選択されたリガンドであり、ここで、少なくとも1つのL1 〜Ln 、好ましくは少なくとも1つのL2 〜Ln-1 は、非ヌクレオ塩基電子受容体または供与体基であり、少なくとも2つのL1 〜Ln は、ヌクレオ塩基結合基または天然もしくは非天然のヌクレオ塩基であり、
C1 〜Cn は、それぞれ、(CR6 R7 )y (CR6 R7 、CHR6 CHR7 またはCR6 R7 CH2 が好ましい)であり、ここで、R6 は水素、R7 は天然のαアミノ酸の側鎖からなる群より選択されるか、R6 とR7 は、独立に、水素、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基、NR3 R4 およびSR5 からなる群より選択され、ここで、R3 とR4 は以下のように定義され、R5 は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、または炭素数1〜6のアルキルチオ置換された炭素数1〜6のアルキル基であるか、R6 とR7 は、一緒になって脂環系もしくは複素環系を形成し;またはC1 〜Cn は、CO、CS、CNR3 である;
D1 〜Dn は、それぞれ、(CR6 R7 )z (CR6 R7 、CHR6 CHR7 またはCH2 CR6 R7 が好ましい)であり、ここで、R6 とR7 は、前記定義するとおりであり、
yおよびzは、それぞれ、0または1〜10の整数であり、y+zの合計は少なくとも2であり、好ましくは、2を越えるが10以下であり、
G1 〜Gn-1 は、それぞれ、−NR3 CO−、−NR3 CS−、−NR3 SO−または−NR3 SO2-のいずれの向きでもよく、ここで、R3 は、以下に定義するとおりであり;
A1 〜An とB1 〜Bn は、それぞれ、下記:
(a)A1 〜An は、式(II/A)、(II/B)、(II/C)もしくは(II/D)の基で、B1 〜Bn は、NもしくはR3 N+である、または
(b)A1 〜An は、式(II/D)の基で、B1 〜Bn は、CHである;
ように選択され、
【0023】
【化2】
【0024】
(式中、
Xは、O、S、Se、NR3 、CH2 またはC(CH3 )2 であり;
Yは、単結合、O、SまたはNR4 であり、
pおよびqは、それぞれ、0または1〜5の整数であり(p+qの合計は、5以下であることが好ましい)、
rおよびsは、それぞれ、0または1〜5の整数であり(r+sの合計は、5以下であることが好ましい)、
R1 およびR2 は、それぞれ独立して、水素、ヒドロキシ−もしくは炭素数1〜4のアルコキシ−もしくは炭素数1〜4のアルキルチオ−置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、アミノ基およびハロゲンからなる群より選択され、
R3 およびR4 は、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシ−もしくはアルコキシ−もしくはアルキルチオ−置換された炭素数1〜4のアルキル基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルチオ基およびアミノ基からなる群より選択され、
QおよびIは、独立して、−CO2 H、−CONR’R”、−SO3 Hもしくは−SO2 NR’R”または−CO2 H、−SO3 Hおよび−NR’R''' の活性化誘導体から選択され、
ここで、R’、R”およびR''' は、独立して、水素、アルキル、アミノ保護基、レポーターリガンド、インターカーレーター、キレート化剤、ペプチド、蛋白質、炭水化物、脂質、ステロイド、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオチドジホスフェート、ヌクレオチドトリホスフェート、オリゴリボヌクレオチドとオリゴデオキシリボヌクレオチドの両方を含むオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシドおよび可溶性および非可溶性ポリマーならびに核酸結合基からなる群より選択され、そして
x1およびy1は、それぞれ、0〜10の整数である)〕
【0025】
好ましいプローブは少なくとも1種の一般式(III):
【0026】
【化3】
【0027】
(式中、A、B、C、D、GおよびLは、それぞれ前記AX 、BX 、CX 、DX 、GX およびLX を適用する)の単量体サブユニットを含む。
【0028】
アルコキシ基およびアルキルチオ基は好ましくは1〜4個の炭素原子を含む。
【0029】
融合した芳香環部分としては、例えば、ナフトールなどがある。ヘテロ環部分としては、例えば、ピリジンなどがある。レポーター基は、例えば、フルオレセインなどの蛍光化合物などの検出しうる部分、またはハプテンなどの、このハプテンに対する抗体により認識されうる、他の分子本体により認識されうる部分である。
【0030】
前記構造においてQまたはIは、オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオシドであり、かかる構造がPNA化合物とオリゴヌクレオチドとまたはオリゴヌクレオシドとの間のキメラ構造であると考えられうる。
【0031】
結合受容体部分のリンカーA1 〜An は、一般的に1〜10原子間の長さであることが好ましく、2〜6原子であることが最も好ましく、供与体部分のリンカーA1 〜An は1〜10原子の長さであり、2〜8原子であることが最も好ましい。
【0032】
一般式(I)に基づくサブグループ(Ia)〜(Ib)の化合物であり、
(Ia):Bl 〜Bn はNであり、Al 〜An は−CO−(CH2 )6 −であり、
(Ib):Bl 〜Bn はNであり、Al 〜An は−CO−NR3 (CH2 )2 −であり、
(Ic):Bl 〜Bn はCHであり、Al 〜An は−NR3 −CO−(CH2 )2 −である、
化合物がより好ましい。
【0033】
好ましいRNA、ssDNAおよびdsDNAへの結合に影響することおよび三本鎖になる構造を形成することに有用なPNA含有化合物は、一般式(IVa):
【0034】
【化4】
【0035】
一般式(IVb):
【0036】
【化5】
【0037】
および一般式(IVc):
【0038】
【化6】
【0039】
(式中、各々Lは、一般式(I)のLl 〜Ln の定義から独立して選ばれ、各々R7 は、水素および天然αアミノ酸の側鎖からなる群より独立して選ばれ、nは1より大きい整数であり、各々k、lおよびmは、独立して0または1〜5の整数であり、各々pは0または1であり、Rh およびRi は、R' 、R''およびR''' として定義される)で表される化合物である。
【0040】
標識は、それ自身、固定化可能な又は検出可能であるか、あるいは付加部分により共役することによって固定化/検出することができる部分として、一般的に知られている。標識としては、例えば、蛍光部分(例えば、フルオレセインまたはローダミンなど)、酵素(例えば、ペルオキシダーゼまたはホスファターゼなど)、ハプテンなどの免疫学的に活性な物質(例えば、ジゴキシゲニンなど)あるいは蛋白質結合タグ(例えば、ビオチンなど)などがある。
【0041】
最も好ましい核酸結合化合物は、一般式(V):
【0042】
【化7】
【0043】
(式中、Lは、L1 〜Ln に対して前記定義されたリガンドであり、
k、lおよびmは、独立に0または1〜5までの整数であり、
pは、0または1であり、ならびに
R7 は、水素および天然のαアミノ酸の側鎖からなる群より選択される)
で表されるモノマーサブユニットの少なくとも1つを含むものである。
【0044】
これらの化合物は、国際公開第92/20702号パンフレット、国際公開第94/25477号パンフレット、国際公開第96/20212号パンフレット、EP−0 672 677号明細書およびEP−0 700 928号明細書に記載の合成に類似の方法で調製することができる。一般式Iの化合物を製造するための好ましい方法は、国際公開第92/20702号パンフレットによるステップワイズ化学合成であり、一般式(VIa )〜(VIc)の化合物をモノマーとして取り込む:
【0045】
【化8】
【0046】
(式中、A、B、CおよびDは、それぞれ、その中のいかなるアミノ基もアミノ保護基により保護されてもよい条件で、式(I)のA1 〜An 、B1 〜Bn 、C1 〜Cn およびD1 〜Dn の定義から選択され;
Eは、COOH、CSOH、SOOH、SO2 OHまたはそれらの活性化誘導体であり;
Fは、NHR3 またはNPgaR3 であり、ここで、R3 は前記定義された通りであり、Pgaはアミノ保護基であり、Lは、前記定義された通りであるか、その保護誘導体である)
【0047】
好ましいモノマーは、一般式(VII):
【0048】
【化9】
【0049】
(式中、Xは、カルボン酸保護基または水素であり、R7 は、独立に水素および天然のαアミノ酸の側鎖またはアミノ保護および/またはそれらの酸末端活性化誘導体からなる群より選択される)を有するアミノ酸である。
【0050】
該核酸分子BおよびCの配列は、好ましくは、それらの少なくとも1種が、分析対象物核酸に対して選択的であるように選ばれる。好ましくは、分子Bは非選択的であり、分子Cは選択的であり、分子Bにより結合した配列は、分子Cにより結合した配列よりも短いことが推論される。
【0051】
さらに、相補体が試料中に存在する場合、複合体ABCは、核酸Aとその相補体A’との二重らせん(例えば、天然のdsDNAにおける)よりも安定であることが好ましい。
【0052】
核酸結合分子BおよびCの分子構造(配列要求性から離れて)は、一般的に同一でも異なってもよい。しかしながら、分子BおよびCの少なくとも1種が、非天然骨格を含有する核酸結合化合物であることが大変好ましい。最も好ましくは、分子BおよびCの両方が非天然骨格を有する核酸結合化合物である。以下、分子BおよびCをプローブと称する。本発明の複合体の形成の一般的な要求は、分子A、BおよびCが、以下、三本鎖化領域という領域内で三重らせん構造を形成することができることである。したがって、本発明においては、この領域内に結合するプローブは、いかなる糖リン酸骨格をも含まないことが好ましい。
【0053】
本発明の核心は、少なくとも核酸鎖A、1つの結合分子BおよびBの配列と異なる塩基配列を有する少なくとも1種のさらなる核酸結合分子Cを含む複合体を形成することである。
【0054】
これらの少なくとも3分子は、これらの全ての分子を含む三本鎖化複合体を形成する条件下にインキュベートされる。核酸Aおよび分子Bを含む他のいかなる複合体もが検出できるまたは妨害する程度に形成されないであろう。これは、いくつかの方法で達成可能であり、そのうちのいくつかは、分子Cの構築に関する。
【0055】
第1の態様においては、三本鎖複合体は三本鎖領域に核酸Aと1つの分子Bと1つの分子Cを含む。好ましい態様においては、ABCの三本鎖領域は3塩基を超えて11塩基未満、好ましくは4塩基を超えて9塩基未満の長さを有する。したがって、分子Bはこの領域をカバーする長さを有するはずであるが、分子Bは三本鎖構造に関与する能力を阻害しない他の部分が付着しうる。そのような部分としては、たとえば2次プローブ結合のための特異的認識可能配列として使用されるものなど、標識、または三本鎖構造に関与しない核酸結合分子のような、標識、またはさらに別の認識部分などが挙げられる。三重らせん形成に関与するBの部分はピリミジン以外の塩基を含まないことが好ましい。
【0056】
実際には、分子Cは、WCモードで核酸Aに結合することによって三本鎖形成に関与する領域Cyを含んでいる。また、分子Cは、好ましくは核酸Aとの二重らせん形成によって、セグメントCyの一端または両端に1つ以上のさらに別のセグメント結合核酸Aを有する。これらのセグメントは1〜20塩基、より好ましくは2〜8塩基、最も好ましくは2〜4塩基の長さを有することが好ましい。以下、これらのセグメントをCxおよびCzと呼ぶ。CがセグメントCxとセグメントCzを有する場合、これらのセグメントは同じ長さのものであってもよいし、異なる長さのものであってもよい。したがって、本態様における分子Cの結合領域は、三重らせん形成領域と1または2つの二重らせん形成領域を含む。分子Cの長さは、当該分野に熟練せる者にとって公知の方法によって選択すべきものである。このことは、分子Cの長さは選択的なものであるべきことを意味する。このことは、言うまでもなく、試料に核酸が含まれていて、核酸Aと類似の配列を有することが前提となる。特殊な場合では、Cの長さは6〜9塩基を超える必要はないが、一般に、類似配列を十分に識別するためには、Cの結合配列は10〜40塩基対合単位の範囲に入るべきである。本発明の好ましい態様における分子Cは、核酸Aと決定対象でない核酸を識別する塩基情報を含ませるために使用されるため、分子Cの核酸A結合全長としては少なくとも12塩基以上が好ましい。
【0057】
本発明の本態様を図1に例示する。ハイブリダイゼーションの条件により、短いPNAオリゴ(B)は別のオリゴによる安定化を受けた場合に限り、フーグスティーン塩基対合を介して分析対象(A)に結合し、より長いPNAオリゴ(C)は、ワトソン−クリック型塩基対合によって分析対象(A)に結合する(1aを参照のこと)。同様のハイブリダイゼーション条件下では、2つの短いPNAオリゴ(B)が分析対象(A)とともに安定な三重らせん構造を形成することができず(1b参照)、B1個だけでAとともに安定な二重らせんを形成することもない。
【0058】
Aに対するCの選択性はいかなるCのセグメント内にも存在しうる。ところが、本発明によれば、またプリンのストレッチに基づいて識別できる核酸は非常に少数しかないという事実に鑑みると、セグメントCxおよびCzのうちの少なくとも1つにおいて決定対象の核酸配列に対して特異的であるように分子C を設計してもよい。選択性を達成するために、これらのセグメントは、セグメントCxまたはCzが核酸Aと決定対象でない核酸の間の配列差を含むような分子Bとの結合のためのプリンのストレッチから、伸長している(すなわち決定対象でない核酸とのミスマッチを作り出している)。
【0059】
本態様を図2に例示した。分析対象(A)と短いフーグスティーン結合PNAオリゴ(B)とワトソン−クリック型結合PNAオリゴの間で形成された三重らせん構造(2aを参照のこと)は、ミスマッチが導入されると、やはり(B)によって区画される三重らせん領域の外側で脱安定化され、三重らせん構造(2b参照)は形成されない。
【0060】
第2の態様においては、分子Cと決定対象でない核酸の間のミスマッチは、セグメントCyを含む他のセグメント内に存在していてもよい。これも、Cと決定対象でない核酸および分子Bとの三本鎖複合体の形成が脱安定化される。
【0061】
本発明の第2の主な態様においては、三本鎖領域は、三本鎖複合体が分析対象核酸Aと分子Bと2個の独立した分子C(以下C1およびC2という)を含むような別の分子Cをさらに含んでいる。これらの分子Cはそれぞれが5〜40塩基の長さを有してもよい。この複合体を構築するためには、分子Cのそれぞれが分析対象核酸(A)の結合領域と1個の分子Bとともに三本鎖構造を形成しうるセグメントCy(それぞれCy1およびCy2)から成る。各セグメント(Cy)の配列は、分析対象核酸への排除的結合が行われるように選択される。ここで「排除的」とは、A上のセグメントCy1およびCy2の結合領域が重複しないことをいう。これらの結合領域は、結合したときにC1とC2がセグメントCy1およびCy2の末端の間に非常に小さなギャップ、好ましくは2〜1ヌクレオチドの長さのギャップ、最も好ましくはニック(ヌクレオチドなし)を形成するように、互いに隣接していることが好ましい。C1とC2は独立的に、分析対象核酸に対するプローブC1およびC2の二本鎖結合のために設計されたセグメントCxまたはCzを含むことができる。これらのセグメントCxおよびCzは、互いに逆方向を向くこれらのセグメントの末端部でセグメントCy1およびCy2と結合することが好ましい。C1とC2は互いに対向するCy1およびCy2の末端部にセグメントを含まないことが好ましい。
【0062】
本態様を示した図面を図3に示した。ハイブリダイゼーションの条件により、短いPNAオリゴ(B)は、ワトソン−クリック型塩基対合によって分析対象(A)に結合した2個の隣接結合PNAオリゴ(C1およびC2)によって安定化されたときに、フーグスティーン塩基対合を介して分析対象(A)に結合しうる(3aを参照のこと)。またBによって区画される三重らせん領域の外側でC1またはC2にミスマッチが導入されると、三重らせん構造全体(3bを参照のこと)が脱安定化され、もはや形成されなくなる。2つの分子C1とC2を用いる態様においては、方法の特異性が実質的に強化される。完全な三本鎖複合体の形成が分析対象核酸と対象でない核酸の識別因子であるという事実ゆえに、本発明は、欠失または挿入によって測定することができない核酸とは異なる分析対象核酸の測定に非常に適している。そのような例を図4に示した。ワトソン−クリック型塩基対合によってハイブリダイズしている2個のPNAオリゴ(C1およびC2)が分析対象(A)上で互いに隣接して結合すると、フーグスティーン塩基対合によって(A)にハイブリダイズする短いPNAオリゴ(B)の結合を促進する共同作用を示し、三重らせん構造ができる(4aを参照のこと)。1個以上の塩基が2個のワトソン−クリック型結合PNAオリゴのターゲット部位の間で(A)に導入されると、短いPNAオリゴ(B)を安定化させることができなくなり、したがってオリゴ(B)は分析対象(A)に結合しなくなる。
【0063】
2つの独立したプローブC1およびC2を用いる態様においては、Bの三本鎖結合領域が分子Cより小さいものでなければならないという厳密な要件は存在しない。その代わり、Bの三本鎖結合領域は分子C1およびC2の結合領域の合計長さより小さいものである必要がある。分子C1およびC2のそれぞれの三本鎖結合領域は、一般にBの三本鎖結合領域より小さい。
【0064】
たとえば対立遺伝子間や細菌の種や亜種間、さらには特定の株間などで非常によく似た塩基配列の核酸同士を識別するのに非常に有用なさらに別の態様においては、プローブBおよびCに加えて、さらにプローブDも使用する。プローブDは、2つのプローブCの一方の代わりに核酸Aに結合しうるものであって、該プローブCとは長さおよび/ または結合位置および/ または配列およびまたは/ ヌクレオ塩基の修飾が異なる競合プローブである。
【0065】
図10に図示した好ましい態様においては、標的核酸A、プローブ分子B、2個のプローブ分子C1およびC2、ならびに競合プローブ分子Dを含む反応混合物を用意する。この場合、競合プローブは識別可能なプローブ(すなわちプローブDの結合領域内に、測定対象の核酸の配列と測定対象でない核酸の配列の違いが存在する)であることが好ましい。競合プローブは標的Aの一部に対して完全に相補的である配列を有するが、1つ以上の遠位ヌクレオチドを欠いていて、DとC1の間にギャップを生じている。プローブC2が測定対象の核酸(A)に対して完全に相補的である配列を有している場合、競合プローブ(D)ではなくC2がAにハイブリダイズし、三重らせん形成が可能になる。プローブC2が標的Aに関してミスマッチを有している場合、競合プローブ(適当な組成と濃度がある場合)はC2の代わりにAとハイブリダイズし、三重らせん形成を不可能にするギャップができる。
【0066】
Mycobacterium interjectum 由来の配列に対応する標的Aを特異的に測定する場合、この標的配列の一部に対して相補的である競合分子Dを、プローブB、C1、およびC2とともに試料に添加する。M. interjectumに対して完全に相補的であってDよりも高い親和性を有する分子C2を用いる場合、この分子(C1とともに)はBを含む三重らせん形成を可能にする。完全にはマッチしていない他のC2分子を用いると、これらの分子は競合プローブDとの競合に敗れ、ギャップができて三重らせん形成が不可能になる。このようにして、ミスマッチC2プローブの交差ハイブリダイゼーションの結果として起きる「にせの」三重らせん形成が防止された。すなわち、上記競合プローブを使用すると、近縁核酸の識別の可能性がはるかに高くなる。
【0067】
上記核酸または核酸結合分子のいずれにおいても三本鎖結合領域は、該核酸または分子の領域が核酸または分子の他の2つの鎖と塩基対合したもの、またはそれ自体が核酸または分子の2つの鎖と塩基対合している塩基と塩基対合したものであると定義する。二重らせん形成領域は、別の核酸または分子の1本のらせんの塩基と塩基対合している分子の領域または配列であるものと定義する(たとえば分析対象核酸A上の三本鎖領域に隣接して結合しているセグメントCxおよびCz)。この場合にはワトソン−クリック型塩基対合が起き、三本鎖結合においてはワトソン−クリック型塩基対合とフーグスティーン塩基対合の両方が起きていることが好ましい。この二重らせん形成領域は1塩基対という小ささである場合もあれば、100塩基対という長さになることもある。
【0068】
本発明の核心は、分子BおよびCが互いに連結しないことである。このことは、両分子の一方が相手の分子の濃度を人工的に局所的に上昇させることによって、相手を三重らせん複合体に組み込ませないという点で重要である。本発明の背景として、1個または2個の分子Cが結合しただけで三重らせんモードにおける分子Bの結合が可能になるということがある。しかし、AとBとCの間の三本鎖複合体の形成は、2個の分子Bまたは2個の同一の分子Cが1個の分子Aとともに形成した三本鎖複合体よりも熱安定性が高い場合に限って起きるものである。
【0069】
正しい三本鎖複合体(AとBとCから形成されたもの、以下ABCという)の熱安定性を向上させる手段としては少なくとも3つある。第2の分子Bに有利なかたちでの分子Cの三本鎖領域への組み込みは、分子Cの核酸A結合領域がBの核酸A結合領域よりも長いために、容易にこれを達成することができる。したがって、Cの長さ(および場合によってはBの長さも)を変えて、最適なABC三重らせん形成を行うことができる。
【0070】
別の態様においては、分子Bおよび/ またはCが少なくとも1つの位置において化学的に修飾されていて、2個の分子Bと1個の分子Aによる三重らせん形成(図9参照)および2個の同じ分子Cと1個の分子Aによる三重らせん形成が脱安定化されている。上記修飾はたとえばカルボキシル基やアミノ基のような荷電基や、アシル基やベンゾイル基のような有機化学基などの化学基が、分子Bおよび/ またはCの原子と結合したものである。これらの基の配置としては、分析対象の核酸に結合したときに、2個の同一分子(BまたはC)の化学基が近接状態となって三重らせん複合体全体の脱安定化を引き起こすように、プローブの配列が選ばれる場合が好ましい。上記化学基のサイズと性質を利用すれば、結合特性を細かく調節することができるが、正しい三本鎖複合体(AとBとCを含む)の形成に影響が及ばないようなやり方で選ぶべきである。本発明の第3の態様においては、好ましい結合モードでAB2 およびAC2 における三本鎖結合領域が非常に小さくなるような非対称の塩基配列を、三本鎖結合領域が有する。もちろん、三本鎖複合体における好ましい結合モードは、選ばれた分子の化学構造によって決まる。たとえば、ペプチド核酸の場合、好ましい三本鎖結合モードは互いに逆平行的、すなわち、該2個の分子のアミノ末端の一方は分析対象核酸の3’末端側に向き、他方は分析対象核酸の5’末端側に向いて、互いに逆方向を向いている場合である。したがって、分析対象核酸Aの非対称結合領域(非対称塩基配列)を選ぶとともに、互いに逆平行モードで結合するような逆方向になるようにCとBを合成することが好ましい。
【0071】
ペプチド核酸オリゴに関しては、核酸による三重らせん形成は、2個の分子が同じ方向を向いている場合も可能である。これらの複合体は2個のPNA分子が逆方向に結合している場合よりも安定性が低いが、2個の分子Bまたは2個の同一の分子Cが分析対象核酸Aとともに三本鎖を形成して、正しい複合体ABCの形成を阻害する可能性がある。AB2 とAC2 の両者の脱安定化については上記のとおりである。また、AC2 の形成は、たとえば分子Cではなく分子B中にシュードイソシトシンのような修飾塩基を含ませて、アルカリ性条件下で結合反応を行うことによって、これを防止することができる。アルカリ性条件下ではシトシンはプロトン化されないため、フーグスティーン結合には関与できないのに対して、シュードイソシトシンは反応溶液のpHに依存しない。シュードイソシトシンおよびその他の修飾塩基が国際公開第96/ 02558号パンフレットに開示されている。
【0072】
測定対象の核酸(A)を含む試料を、プローブ分子BおよびCと混合して、これらのプローブ分子と測定対象の核酸の間に複合体ABCを形成させる。この複合体は塩基介在水素結合によってできる。核酸へのプローブ分子の結合は、当該分野に熟練せる者にとって公知の三重らせん形成条件に従って起きる。ペプチド核酸の場合の該条件は、たとえば国際公開第95/ 01370号パンフレットやウィットゥングら(Wittung, P. et al.)〔Biochemistry 36(26):7973-7979 (1997)〕に詳細に記載されているが、これらの文献の開示内容は引例により本願に含まれるものとする。多くの場合、試料中の核酸の量は未知または不明であるため、試料中の核酸Aの最大予想量を超えるように各プローブ分子の量を選択することが好ましいが、低レベルのバックグランドシグナルを維持するためには、予想される核酸の量と同程度になるようにプローブ分子の量を選ぶのがよい。
【0073】
国際公開第95/ 15971号パンフレットに開示されているように、核酸の存在を判定する方法にはいくつかの種類がある。本発明においては、少なくとも1個のプローブ分子が標識されることが好ましい。分子Bは標識を付着されたものであることが最も好ましい。核酸Aまたは単数または複数の分子Cのいずれかが固定可能な標識を有するか、すでに固定されていることがさらに好ましい。決定対象の核酸とプローブ分子を含む複合体内では、少なくとも1つのリポーター部分および/ または少なくとも1つの固定可能部分が存在するということが基本原理である。
【0074】
本発明の方法の具体的態様の実施例を図5に示した。分析対象の核酸(長鎖)を、一方がたとえば5’- リン酸末端にビオチン部分を有することによって固定的に標識されている1対のプライマーと接触させる。PCRによる増殖の後、ビオチン化プライマーを含む鎖が固定的に標識されている。本発明の方法に従う検出においては、これらの鎖を分析対象核酸Aとして使用する。次いで、試料を、ワトソン−クリック型塩基対合によって互いに隣接して標識鎖に結合しうるように設計した2個のプローブ分子Cと混合する。さらに、試料を、分子Cの全体結合配列より短く、フーグスティーン塩基対合により上記概要を示したように三本鎖領域を形成しうるプローブ分子Bと混合する。この分子Bは検出可能な標識を含んでいる。図5の左側の矢印は、PCRで生じた単位複製配列(amplicon)が実際に決定対象の核酸である場合を示している。そこで、プローブ分子BおよびCは正しい三本鎖複合体を形成することができる。この複合体は、ストレプトアビジン被覆固相支持体上で固定化させ、過剰なプローブ分子と標識を洗浄により除去し、該固相支持体上の検出可能標識の存在または量を検出した後で、これを決定することができる。もちろん、検出方法は使用する標識によって決まり、たとえば電気化学蛍光法により標識したプローブの場合には、電気化学蛍光を発生させて、これを検出する。図5の右矢印の下に示したように、検出対象外の核酸単位複製配列(分子Cへの隣接的結合のための正しい二本鎖結合領域を含まない)は検出されない。このことは、両方のプローブ分子C1およびC2が偶然に核酸Aに結合できる確率が低い場合でも、正確に相互隣接的に結合しない限り検出されないことを示している。この場合、プローブ分子Bは熱安定複合体ABC1C2には関与できないため、分析対象Aは検出可能的には標識されず、固相に固定化されたとしても、測定されることはない。
【0075】
本発明者らは、ワトソン−クリック型結合分子(C)の長さを増大させることによって、所望の三本鎖構造であるABCの全体的安定性を増大させることができることを示した。プローブBとCはどちらも、三本鎖形成のための標的として機能する、短い三本鎖領域に対して相補的な塩基の配列(たとえばホモプリン域(tract ))を有する。このため、プローブBの2個の分子またはCの2個の同一分子は理論上は標的配列内で競合的三本鎖構造を形成する可能性があるが、修飾塩基および/ または骨格を使用するとともに、ハイブリダイゼーション条件をコントロールすることによって、正しい三本鎖構造ABCを確実に形成させることができる。
【0076】
本発明者らはまた、それぞれが三本鎖領域の一部をカバーする2個の隣接結合しているワトソン−クリック型対合オリゴ(C)が、小型オリゴBを含む三本鎖形成が起きるのに十分な程度にフーグスティーン結合を安定化しうることも明らかにした。このオリゴは一度結合すると、三本鎖をさらに安定化させるが、特定のフーグスティーンオリゴが結合したままでいるかどうかは、主に単数または複数のワトソン−クリック型オリゴのオフ率(off-rate)によって決まる。したがって、本発明者らの研究の結果から、三本鎖形成は限定的ステップであるところのワトソン−クリック型結合によって開始されること、および融解はいうまでもなくフーグスティーン結合の瞬間的解離につながるワトソン−クリック型塩基対合の解離によって開始されることがわかる。
【0077】
これらの知見は、いくつかの意味合いを持つ。まず、実際に三本鎖構造の結合と安定化に関与する認識部位の塩基数は、三本鎖領域そのものの中にある塩基数には限定されないため、隣接位置におけるミスマッチ区別も可能になる。次に、様々な測定条件下で熱安定性をコントロールするために適用できるパラメーター群とともに三本鎖構造の熱安定性を調節することができる範囲が広がる。第3に、2個のワトソン−クリック型対合プローブCの2個のハーフ標的部位への協同的結合を利用して、三本鎖構造のミスマッチ識別能力をさらに強化することができる。第4に、所望の三本鎖構造の形成を、2個のワトソン−クリック型対合プローブCが実際に標的核酸らせん上で互いに直接隣接するように結合していることを確認する目安とすることができる。最後に、短い標識フーグスティーン結合プローブが関与する三本鎖形成は、正しい標的配列が同定されたことを二重に確認する目安とすることができる。これは、三本鎖形成の第2のステップ(フーグスティーン結合)は第1のステップ(ワトソン−クリック型結合)に決定的に依存しているためである。上記スキームにおいては、標識プローブは、単数または複数の第1のプローブ(C)がその標的配列に対して正しくハイブリダイズされている場合を除き、どの核酸にも結合しない。
【0078】
三重らせんはワトソン−クリック型鎖のみの長さを増大させることによって安定化できるという知見は新規かつ予想外のものである。ハイブリダイゼーション条件をモニターし、短いプローブが長いワトソン−クリック型結合プローブによって安定化される場合のみ、フーグスティーン結合によって結合可能となるようにすることができる。
【0079】
三本鎖構造形成のための完全な標的部位における、三本鎖モチーフに隣接する混合配列を含ませるというオプションを選べば、フーグスティーン鎖によって区画される実際の三重らせん領域の外側の塩基配列に三重らせん形成を依存させることによって、全体安定性を調節するさらに別の手段が提供される。
【0080】
協同的に結合したワトソン−クリック型プローブ(分離プローブ)を用いてフーグスティーン鎖を安定化させることによって、三重らせん領域そのものからさらに遠い位置にあるヌクレオ塩基が三重らせん構造全体の安定性に影響を及ぼすことができる。また、協同的に結合したワトソン−クリック型オリゴの使用により、複合体全体の特異性も強化される。これは、たとえば分離プローブはハイブリダイゼーションのための標的領域においてより低縮重に耐えるので、単一塩基の突然変異に対する2個の独立したワトソン−クリック型プローブは同様の長さの単一プローブよりも識別力が高いためである。
【0081】
PNAを形成する短い三重らせんはワトソン−クリック型結合PNAによる安定化を必要とするということを利用すれば、2個の独立プローブ(split probes)の間にギャップがすでに存在している場合やギャップを導入した場合、それらのプローブは三重らせんを十分には安定化させないことから、それらのプローブが実際に標的分子上で相互隣接的にハイブリダイズされることを確認することができる。
【0082】
本発明はユニバーサルプローブBを利用する可能性を提供する。Bは比較的短いため、選択的なCは、異なる分析対象の測定に使用可能なように連続的にこれを選択することができるため、異なる測定においてプローブ合成の必要性が低くなる。また、同じ標識オリゴを用いて、異なる標的核酸を同時に検出することができる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
【0084】
PNAオリゴおよび単量体を、国際公開第96/02558号パンフレットにしたがって合成し、ABI433シンセサイザーで自動化合成(コッホ,T.ら、(1997)、J.Peptide Res.49:80−88)に記載されたように合成した。全DNAオリゴヌクレオチドは、一本鎖および直鎖状である。
【0085】
NH2 はPNAのCONH2 末端(化学合成の間、固相に付着した末端)を示し、HはPNAのアミノ末端を意味する。
【0086】
実施例1 決定対象の核酸ならびに分子BおよびC由来の複合体の形成
ハイブリダイゼーションの適切な条件を与えたとき、他のより長いPNAオリゴのワトソン−クリック型塩基対合による分析対象物への結合により安定化した場合のみ、短いPNAオリゴ(B)はフーグスティーン塩基対合を介して、分析対象物(A)に結合する(図1aに描く)。同様のハイブリダイゼーション条件下、短いPNAオリゴ(B)単独では、分析対象物(A)と安定な三本鎖構造を形成することができない(図1bに描く)。これを実験的に示し、結果を図6に示した。
【0087】
使用した分子は下記のものである:
A: DNA 12マー 5’−TCCAGAAGATAC−3’(配列番号:1)
B: PNA 6マー H−TCTTCT−NH2
C: PNA 12マー H−GTATCTTCTGGA−NH2
【0088】
三本鎖形成の条件は下記のとおりである:1pmol放射性標識DNAオリゴ(A)をPNAオリゴ(下記の表に記載の量)と全容量8μlの緩衝液(組成:100mM NaCl;0.1mM EDTA;10mM NaH2 PO4 ,pH5 )中で混合した。反応は、2分間、95℃で、熱変性し、2時間インキュベートした。産物を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ついでオートラジオグラフィーにより解析した。
【0089】
数字1)〜9)は、図6に示したオートラジオグラムのレーンをいう。
図6a)レーン:
1)A(1pmol)
2)A(1pmol)+B(1pmol)
3)A(1pmol)+B(2pmol)
4)A(1pmol)+B(4pmol)
5)A(1pmol)+B(10pmol)
6)A(1pmol)+B(2pmol)+C(1pmol)
7)A(1pmol)+B(2pmol)+C(2pmol)
8)A(1pmol)+B(2pmol)+C(4pmol)
9)A(1pmol)+B(2pmol)+C(10pmol)
【0090】
図6b)レーン:
1)A(1pmol)
2)A(1pmol)+C(1pmol)
3)A(1pmol)+C(2pmol)
4)A(1pmol)+C(4pmol)
5)A(1pmol)+C(10pmol)
6)A(1pmol)+C(2pmol)+B(1pmol)
7)A(1pmol)+C(2pmol)+B(2pmol)
8)A(1pmol)+C(2pmol)+B(4pmol)
9)A(1pmol)+C(2pmol)+B(10pmol)
【0091】
ゲルは、1pmolのAを伴って、Bの量を増加するインキュベーションがいかなる検出可能なハイブリッドをも生じず、DNAオリゴ(A)のみがゲル中に見られることを示す(図6a,レーン1〜5)。AおよびBの量を一定に保ち、Cの量を増加させて混合した場合、A、BおよびCの間に三本鎖産物を形成し(図6a、レーン6および7)、過剰量のCの添加後、Aおよび2つの分子Cの間に付加的な三本鎖産物を形成する(図6a、レーン8および9)。よりかすかなバンドが、レーン6〜9に見られ、それはAおよびCの間の少量の二本鎖の形成を示す。図6bにおいて、DNAオリゴ単独がゲルの下部に見られたが、Cの量を増加させて添加した後、二本鎖および好ましい産物である三本鎖形成が見られる(レーン2〜5)。AおよびCの量を一定に保ち、Bを増加させて添加すると、Aおよび2つの分子Cの間の三本鎖は全く競合外であるが、A、BおよびCが関与する三本鎖の形成を生じる。これらの結果は、これらのハイブリダイゼーションの条件下では、短いPNAオリゴ(B)がAとの安定な産物を形成できないが、AおよびCの両方と共に存在する場合には、ABC三本鎖の形成に関係し、AC2 三本鎖の形成も競合外であることを示す。
【0092】
実施例2 2つの分子C1およびC2ならびにプローブBを用いる三重らせん複合体の形成による、1つの塩基の相違を有する核酸間の区別化
本実験は、2つの分断プローブを用いた本発明の好ましいモードを規定する。結果を図7におけるオートラジオグラムとして示す。下記の化合物を実験に用いた(三重らせん形成に関与する配列は下線を付した対称性の場合):
A1: DNA 16マー:5’−CGTCCAGAAGATACCG−3’
(決定対象の核酸)(配列番号:2)
A2: DNA 16マー:5’−CGTGCAGAAGATACCG−3’
(決定対象でない核酸)(配列番号:3)
B : PNA 6マー:H−TCTTCT−NH2
C1: PNA 8マー:H−CGGTATCT−NH2
C2: PNA 8マー:H−TCTGGACG−NH2
【0093】
実験条件は下記のとおりである:1pmolの放射性標識したDNAオリゴ(A1またはA2)をPNAオリゴ(下記表に記載の量)と全容量8μlの緩衝液(組成:100mM NaCl;0.1mM EDTA;10mM NaH2 PO4 ,pH5 )中で混合した。反応は、2分間、95℃で、熱変性し、2時間インキュベートした。産物を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ついでオートラジオグラフィーにより解析した。
【0094】
数字1)〜10)は、図7に示したオートラジオグラムのレーンをいう。
【0095】
図7a)レーン:
1)A1(1pmol)
2)A1(1pmol)+B(2pmol)
3)A1(1pmol)+C1(2pmol)
4)A1(1pmol)+C2(2pmol)
5)A1(1pmol)+B(2pmol)+C1(2pmol)
6)A1(1pmol)+B(2pmol)+C2(2pmol)
7)A1(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(1/1pmol)
8)A1(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(2/2pmol)
9)A1(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(4/4pmol)
10)A1(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(10/10pmol)
【0096】
図7b)レーン:
1)A2(1pmol)
2)A2(1pmol)+B(2pmol)
3)A2(1pmol)+C1(2pmol)
4)A2(1pmol)+C2(2pmol)
5)A2(1pmol)+B(2pmol)+C1(2pmol)
6)A2(1pmol)+B(2pmol)+C2(2pmol)
7)A2(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(1/1pmol)
8)A2(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(2/2pmol)
9)A2(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(4/4pmol)
10)A2(1pmol)+B(2pmol)+C1/C2(10/10pmol)
【0097】
図7aに見ることができるように、B、C1またはC2のいずれもが、分析対象物A1単独との安定なハイブリッドを形成できず(レーン2〜6)、A、B、C1およびC2の全ての構成成分が存在した場合、安定な三本鎖構造が形成されるであろう(レーン7〜10)。ミスマッチが分析対象物(A2)と1つのWC結合プローブ(C2)間に導入される場合、三本鎖形成は強く阻害される(図7b、レーン7〜10)。
【0098】
実施例3 1つの塩基の挿入により異なる核酸の間の区別化
この決定において、実施例2のように2つの分断プローブが用いられた。決定対象の核酸は、後者への1つの塩基の挿入による、決定対象でない核酸とは異なる。プローブC1およびC2を、決定対象でない核酸に、それらの間の1塩基のギャップで結合するが、決定対象の核酸に結合した場合、複合体中にニックのみで結合するように選択する(三重ヘリックス形成に関与する配列はアンダーラインを付し、非対称の場合である)。
【0099】
使用した分子は下記のものである:
A1: DNA 40マー(決定対象の核酸):
5’−GCTTGTAGTCCTGCTTGAGAGAACGTGCGGGCGATTTGCC−3’(配列番号:4)
A2: DNA 40マー(決定対象でない核酸):
5’−GCTTGTAGTCCTGCTTGAGATGAACGTGCGGGCGATTTGC−3’(配列番号:5)
B : PNA 6マー: H−TCTCTT−NH2
C1: PNA 15マー: H−ATCGCCCGCACGTTC−NH2
C2: PNA 15マー: H−TCTCAAGCAGGACTA−NH2
【0100】
実験条件は下記のとおりである:1pmolの放射性標識したDNAオリゴ(A1またはA2)をPNAオリゴ(下記表に記載の量)と全容量8μlの緩衝液:100mM NaCl;0.1mM EDTA;10mM NaH2 PO4 ,pH5 中で混合した。反応は、2分間、95℃で、熱変性し、2時間インキュベートした。産物を10%ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ついでオートラジオグラフィーにより解析した。
【0101】
数字1)〜12)は、図8に示したオートラジオグラムのレーンをいう。
【0102】
図8)レーン:
1)A1(1pmol)
2)A1(1pmol)+C1(10pmol)
3)A1(1pmol)+C2(10pmol)
4)A1(1pmol)+C1/C2(10/10pmol)
5)A1(1pmol)+B(10pmol)+C1/C2(10/10pmol)
6)A1(1pmol)+B(10pmol)
7)A2(1pmol)
8)A2(1pmol)+C1(10pmol)
9)A2(1pmol)+C2(10pmol)
10)A2(1pmol)+C1/C2(10/10pmol)
11)A2(1pmol)+B(10pmol)+C1/C2(10/10pmol)
12)A2(1pmol)+B(10pmol)
【0103】
各々のPNAプローブC1およびC2は分析対象物(A1またはA2)単独(レーン2〜3、8〜9)または共に(レーン4および10)と二本鎖を形成することができる。2つの二本鎖形成PNAオリゴC1およびC2がお互いに隣接して結合した場合、短い三本鎖形成PNAオリゴBが、フーグスティーン塩基形成を介して三本鎖構造を形成する(レーン5)。C1およびC2がわずか1塩基離れる場合、三本鎖形成オリゴBは結合せず(レーン11)、分析対象物およびC1/C2の間の複合体のみが見られる。
【0104】
実施例4 競合プローブDを用いた区別化
本実験は、C1およびC2の2分子、フーグスティーン結合により三本鎖の形成が可能な標識分子B、ならびに標的Aにハイブリダイズ可能な分子Dを用いた検出の改良された特異性の実施例である(図10に描く)。実験の結果を図11に示す。下記化合物を用いた:
A : DNA 22マー: 5’−CTTGTGGTGGAAAGCTTTTGCG−3’(配列番号:6)
A1: DNA 22マー: 5’−CCTGTGGTGGAAAGCTTTTGCG−3’(配列番号:7)
A2: DNA 22マー: 5’−TGTGTGGTGGAAAGCTTTTGCG−3’(配列番号:8)
A3: DNA 22マー: 5’−CTTTTGGTGGAAAGCTTTTGCG−3’(配列番号:9)
B : PNA 6マー: ケンプチド(Kemptide)−JJTTTJ−gly−NH2 (Jはシュードイソシトシンを示す)
C1: PNA 11マー: H−CGCAAAAGCTT−NH2
C2−1: PNA 11マー: H−TCCACCACAGG−NH2
C2−2: PNA 11マー: H−TCCACCACACA−NH2
C2−3: PNA 11マー: H−TCCACCAAAAG−NH2
D : PNA 10マー: H−CCACCACAAG−NH2
【0105】
PNA Bをケンプチド−モチーフ(コッホ,Tら.,Tetrahedron Lett.(1995)36:6993−36)を介して放射標識し、1pmolを1pmolの標的(A、A1、A2またはA3)および種々の量のPNAプローブCおよびDを、全量10μlの緩衝液(組成:100mM NaCl;0.1mM EDTA;10mM NaH2 PO4 ,pH5.0)中で混合した。10分、室温でハイブリダイズする前、混合液を95℃で2分間熱変性した。2μlのローディング緩衝液を添加し、反応物の半分(レーン1および2)または反応物の1/3(レーン3〜8)を5%アクリルアミドゲル電気泳動で泳動し、オートラジオグラフィーで可視化した。
【0106】
3つの異なる組み合わせのPNA検出プローブ(図11a、bおよびc)を、それらの対応する標的DNAオリゴ(それぞれ、A1、A2およびA3)に結合する能力ならびに標的DNAオリゴに関して異なる1塩基置換を含む関連する対照DNAオリゴへのクロスハイブリダイゼーションを試験した。ハイブリダイゼーションを対照オリゴAに相補的であるが、検出プローブ(C2−1、C2−2およびC2−3)よりも1ヌクレオ塩基短い競合PNA(D)の量を増加なしにまたは増加させてアッセイした。DNA標的領域の他の半分を網羅するプローブC1は、全ての標的に対して共通であり、したがって全てのアッセイに使用した。
【0107】
図11aのレーン1〜8に対応する反応は下記のとおりである:
1) A(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol) B(1pmol)
2) A1(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol)B(1pmol)
3) A(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol) B(1pmol) D(10pmol)
4) A1(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol)B(1pmol) D(10pmol)
5) A(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol) B(1pmol) D(15pmol)
6) A1(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol)B(1pmol) D(15pmol)
7) A(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol) B(1pmol) D(20pmol)
8) A1(1pmol) C1(10pmol) C2−1(10pmol)B(1pmol) D(20pmol)
【0108】
図11bのレーン1〜8に対応する反応は下記のとおりである:
1) A(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol) B(1pmol)
2) A2(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol)B(1pmol)
3) A(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol) B(1pmol) D(10pmol)
4) A2(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol)B(1pmol) D(10pmol)
5) A(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol) B(1pmol) D(15pmol)
6) A2(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol)B(1pmol) D(15pmol)
7) A(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol) B(1pmol) D(20pmol)
8) A2(1pmol) C1(10pmol) C2−2(10pmol)B(1pmol) D(20pmol)
【0109】
図11cのレーン1〜8に対応する反応は下記のとおりである:
1) A(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol) B(1pmol)
2) A3(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol)B(1pmol)
3) A(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol) B(1pmol) D(10pmol)
4) A3(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol)B(1pmol) D(10pmol)
5) A(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol) B(1pmol) D(15pmol)
6) A3(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol)B(1pmol) D(15pmol)
7) A(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol) B(1pmol) D(20pmol)
8) A3(1pmol) C1(10pmol) C2−3(10pmol)B(1pmol) D(20pmol)
【0110】
PNA競合分子Dの非存在下、PNAプローブ分子C1、C2およびBの組み合わせは結合すること、ならびに1つのミスマッチを有する対照標的(レーン1)および完全に相補的な標的(レーン2)と三本鎖構造を形成することができる。10pmolの競合剤(レーン3)の含有は、さらに1セットの検出プローブとのいくつかのクロスハイブリダイゼーションをおこすが(図11c)、対照標的への全てのクロスハイブリダイゼーションを、反応物へのより高い量のPNA競合剤Dを添加することにより妨げることができる(レーン5、7および8)。相補的な標的との三本鎖形成は、競合剤の存在下でさえも見られた(レーン4、6および8)。
【0111】
【発明の効果】
本発明により、特定の遺伝子または生物にのみ存在するが、試料中に存在するいかなるバックグラウンドの核酸においても存在しないヌクレオ塩基の配列を同定することができるという優れた効果を奏する。
【0112】
【配列表】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、理論的に可能な、分析対象物核酸A、より短いプローブBおよびより長いプローブCを含む混合物中で形成した三本鎖複合体を示す。ハイブリダイゼーションの適切な条件で、複合体1aの形成は、特異的な分析対象物核酸Aのための複合体1bの形成よりも優先させる。
【図2】図2は、三重らせん結合領域の外側にミスマッチを有するプローブCを含む複合体2bは、完全にマッチしたプローブCを含む複合体2aに比べて複合体の形成を好まないことを示す。
【図3】図3は、図2と同じ配置を示すが、1つのより長いプローブCのかわりに2つのより小さいプローブC1およびC2を使用することを特徴とする。
【図4】図4は、図3の配置において、2つのプローブC1およびC2が安定な三本鎖形成を生じるために三重らせん結合領域内に隣接し結合しなけらばならないことを示す。系を改良するために、このセットアップにおいて区別可能なプローブである、すなわち、ミスマッチがこのプローブにより覆われる領域に見いだされる、C2の競合剤として作用する追加のPNA化合物(D)が含まれる。該競合剤は、Aに完全に相補的な配列を有するが、C1およびC2間のギャップに生じる遠位のヌクレオチドを欠く。プローブC2が標的Aに関わるミスマッチを有する場合、競合剤(適切な長さと濃度を与えられた)がかわりにAにハイブリダイズし、ギャップを形成するであろう。かかるギャップは、顕著に三本鎖形成を減少される(図4)。これらの2つの特徴(図3および4)の組み合わせにより、系の特異性を増強される。
【図5】図5は、核酸が増幅の間に標識され、正しいアンプリコン(amplicon)が、異なる標識がされたプローブBの使用により決定される、本発明の好ましい態様を示す。
【図6】図6は、実施例1で行なった実験結果のオートラジオグラムを示す電気泳動の写真である。
【図7】図7は、実施例2で行なった実験結果のオートラジオグラムを示す電気泳動写真である。
【図8】図8は、実施例3で行なった実験結果のオートラジオグラムを示す電気泳動の写真である。
【図9】図9は、AB2 を脱安定化した第1の様式を示す。
【図10】図10は、実施例4の概略を示し、aは、決定対象の核酸(A)が完全にプローブC2およびプローブDの両方にマッチしているが、プローブC2が決定対象の核酸により高い親和性をもつ場合を示す。この場合において、結合後のC1とC2はニックにより分離しているのみなので、三重らせん構造が形成されうる。またbは、標的核酸(A)がC2に関してミスマッチを有するが、競合プローブDとはミスマッチを持たない場合を示す。この状況は、三重らせんの形成をさまたげるDとC1との間のギャップを生じる該標的へのDの結合を好む。したがって、決定対象でない核酸は、決定対象の核酸から識別することができる。
【図11】図11は、実施例4で行なった実験結果のオートラジオグラムを示す電気泳動の写真である。
Claims (23)
- 核酸A、第1核酸A結合PNA分子B、および該分子Bの配列と異なる塩基配列を有する少なくとも1つのさらなる核酸A結合PNA分子C間の三本鎖結合複合体を形成する工程、ならびに前記核酸の存在または量の尺度としての前記結合複合体の存在または量を決定する工程を含み、ここで、該分子Bは、該分子Cの全結合領域より長さが短く、該分子Bは、3塩基を超えるが11塩基未満の、三重らせん結合領域における結合に関与する塩基配列を有し、該分子Cは、5〜40塩基の長さを有する、核酸Aを決定する方法であって、該三本鎖複合体は、該核酸A、該分子Bおよび1以上の該分子C間の三本鎖複合体が該核酸Aの1分子と、該分子Bの2分子または該分子Cの2つの同一分子とにより形成された三本鎖複合体よりも温度安定である条件下で形成されることを特徴とする決定方法。
- 該三本鎖複合体が、該核酸A、該分子Bおよび該分子Cのそれぞれが少なくとも1であるが11未満の塩基で寄与する三重らせん結合領域を含むことを特徴とする、請求項1記載の決定方法。
- 該三本鎖複合体が、該核酸A、該分子Bおよび該分子Cのそれぞれが1より大きく8未満の塩基で寄与する三重らせん結合領域を含むことを特徴とする、請求項1記載の決定方法。
- 該複合体が三本鎖領域に結合しているPNA分子Cを1つ含むことを特徴とする、請求項1記載の決定方法。
- 該分子Bが4塩基を超えるが8塩基未満の、三重らせん結合領域における結合に関与する塩基配列を有することを特徴とする、請求項1記載の決定方法。
- 該分子Cが少なくとも6塩基長を有することを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載の決定方法。
- 形成された複合体が三本鎖領域に結合する2つの異なるPNA分子Cを含むことを特徴とする、請求項1記載の決定方法。
- 該分子Cが該核酸Aに隣接して結合することを特徴とする、請求項7記載の決定方法。
- 該分子Bおよび/またはCが化学的に修飾されて、2つのPNA分子Bまたは2つの同一のPNA分子Cと1つの核酸Aとの三重らせん形成を脱安定化させることを特徴とする、請求項1〜8いずれか記載の決定方法。
- 該分子Bの結合領域が非対称な塩基配列を有することを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の決定方法。
- 該分子Bの結合領域が対称な塩基配列を有することを特徴とする、請求項1〜9いずれか記載の決定方法。
- 該分子Bがフーグスティーン型塩基対形成を介して核酸に結合し、該分子Cがワトソン−クリック型塩基対形成を介して結合していることを特徴とする、請求項1〜11いずれか記載の決定方法。
- 該分子Bおよび/またはCが標識され、結合複合体中の前記1つまたは複数の標識の存在を核酸の決定のために使用することを特徴とする、請求項1〜12いずれか記載の決定方法。
- 該核酸Aに結合する該分子Bの領域における塩基がピリミジンからなることを特徴とする、請求項1〜13いずれか記載の決定方法。
- 該核酸が、該核酸に対する該分子Bの結合領域内に位置する塩基配列における相違により決定されないように、他の核酸から区別されることを特徴とする、請求項1〜14いずれか記載の決定方法。
- 該核酸が、該核酸に対する該分子Cの結合領域内であるが、該核酸に対する該分子Bの結合領域内ではない位置に存在する塩基配列における相違により決定されないように、他の核酸から区別されることを特徴とする、請求項1〜15いずれか記載の決定方法。
- 該分子Cが該核酸に対する該分子Bの結合領域に完全に及ぶことを特徴とする、請求項1〜16いずれか記載の決定方法。
- 該核酸の該分子Bの結合領域内における部分にそれぞれ結合する、少なくとも2つのPNA分子Cが使用されることを特徴とする、請求項1〜17いずれか記載の決定方法。
- 三本鎖結合複合体を形成させるための反応混合物が、該Aへの結合において少なくとも1つのPNA分子Cと競合することができるが、三本鎖複合体において関与することができない競合プローブ分子Dをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜18いずれか記載の決定方法。
- 核酸A、第1核酸結合PNA分子B、および該分子Bと比べて異なる塩基配列を有する少なくとも1つのさらなる核酸結合PNA分子C間の三本鎖結合複合体であって、該核酸Aの1分子と該分子Bの2分子または該分子Cの2つの同一分子とから形成された三本鎖複合体よりも温度安定であり、該分子Bは、該分子Cの全結合領域より長さが短く、該分子Bは、3塩基を超えるが11塩基未満の塩基配列を有し、該分子Cは、5〜40塩基の長さを有することを特徴とする複合体。
- 該分子Bの配列が非対称である、請求項20記載の複合体。
- 該分子Bの配列が対称である、請求項20記載の複合体。
- 前記核酸A、第1核酸結合PNA分子B、および少なくとも1つのさらなる核酸結合PNA分子Cを混合する工程を含む、請求項20〜22いずれか記載の三本鎖結合複合体を形成する方法。
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