JPH1144099A - 補修・補強されたコンクリート構造物およびその補修・補強方法 - Google Patents

補修・補強されたコンクリート構造物およびその補修・補強方法

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JPH1144099A
JPH1144099A JP10832597A JP10832597A JPH1144099A JP H1144099 A JPH1144099 A JP H1144099A JP 10832597 A JP10832597 A JP 10832597A JP 10832597 A JP10832597 A JP 10832597A JP H1144099 A JPH1144099 A JP H1144099A
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JP
Japan
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fiber
reinforcing
concrete
matrix resin
fibers
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JP10832597A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Uchino
洋之 内野
Masatoshi Furuyama
昌利 古山
Nobuyuki Tsuji
信之 辻
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Nippon Steel Corp
Nippon Steel Chemical and Materials Co Ltd
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Nippon Steel Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一方向に配列した短繊維によって、十分な補
強効果を確保しながら施工性および被補強構造物の靭性
を増大させうるコンクリート構築物の補修・補強方法お
よびその構造物を提供する。 【解決手段】 コンクリート構造物4の表面に、一方向
に配列した短繊維2を含有するマトリクス樹脂1からな
る補修・補強層3を定着する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、補修・補強された
コンクリート構造物及び、その補修・補強方法に関する
ものであり、特に、一方向に配列した短繊維を含有する
マトリクス樹脂層によるコンクリート構造物の補修・補
強に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、橋梁や高架道路などの橋脚を繊維
強化プラスチックにより補強することが行われている。
特開平3−222734などに記載されるように、補修
現場で施工性良く補修を行うことができ且つ、補修後の
強度も向上した構築物の補修のための強化繊維シートが
提案され、また特開平3−224901などに記載され
るように、繊維強化シートを用いた補修方法も提案され
ており、施工例も数多く報告されている。また、特開平
5−231095、特開平5−332032などに記載
されるように、補修用強化繊維シートの具体的な適用分
野としてトンネルや電柱の補修方法も提案されており、
施工例も報告されている。更に、特開平5−23109
5、特開平5−332032などに記載されるように、
強化繊維とコンクリートの接着強度を向上させるため
に、溝およびピンを用いた方法が提案されている。従来
の施工例に使用された補強繊維としてはガラス繊維、炭
素繊維等があるが、十分な補強強度を得るためにこれら
のシートに用いられている強化繊維は全て連続繊維の形
態で使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】連続繊維を用いた一方
向強化連続繊維シートによってコンクリート構造物を強
化することにより、一般に十分な補強効果を得ることが
できるが、その施工方法において一枚一枚のシートを順
次貼っていかなければならないため、各層の間に剥離な
ど施工に起因する欠陥が生ずる危険性が高い。また、繊
維が連続しているために曲率の大きい柱の隅部分の様な
部位への適用が極めて困難であり、形状によっては不可
能である。更に、これらの強化連続繊維シートは連続繊
維で強化しているため、繊維の破断が支配的な破壊形態
になる場合には、繊維の破断と同時に大きなエネルギー
が開放されて突然破壊するという靭性の低い破壊形態を
とるが、この破壊形態は構造体として破壊に至るまでの
エネルギー吸収が少ないため好ましくない破壊形態であ
る。従って、本発明の目的は、一方向に配列した強化繊
維1により橋梁や高速道路などを初めとするコンクリー
ト構築物の補修および補強をするに際し、十分な補強効
果を確保しながら、施工性および被補強構造物の靭性を
増大する補修・補強方法および、その構造物を提供する
ことである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明に係
る一方向に配列された短繊維により補修・補強されたコ
ンクリート構造物、およびその補修・補強方法にて達成
される。すなわち、本発明は、コンクリート構造物の表
面に、一方向に配列した短繊維を含有するマトリクス樹
脂からなる補修・補強層を有する補修・補強されたコン
クリート構造物であり、また、コンクリート構造物の表
面にマトリクス樹脂中の短繊維を一方向に配列させた
後、マトリクス樹脂を硬化するコンクリート構造物の補
修・補強方法である。さらに、一方向に配列した短繊維
が1000MPa以上の引張強度、50GPa以上の引
張弾性率を有し、かつ繊維直径の50倍以上、1000
0倍以下の繊維長である。
【0005】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る補修・補強さ
れたコンクリート構造物の一実施例を示すものであっ
て、一方向に配列した短繊維2を含有する補修・補強層
3を有する補修・補強されたコンクリート構造物4の断
面模式図である。本発明において、強化繊維である短繊
維2は、繊維の弾性率、強度を繊維固有の物性の80%
以上発現させるために、構造物にかかる力の方向に沿っ
て一方向に配向させる必要がある。一般に短繊維の方向
がランダムである場合、弾性率で一方向強化の場合と比
較して約4分の1程度、強度はそれ以下になる。
【0006】本発明に使用される強化繊維は、繊維長が
繊維直径の50倍以上、10000倍以下でかつ、繊維
引張強度が1000MPa以上、繊維引張弾性率が50
GPa以上であれば任意のものを使用し得る。補強繊維
2の繊維長は、補強体となる繊維強化複合材料の中で応
力を伝達するためにある一定の長さが必要となり、一般
に繊維直径の50倍程度あれば十分応力伝達を実現す
る。また、繊維長が長すぎると取り扱い性の点で短繊維
である利点が少なくなり、更に補強した構造物の破壊挙
動も連続繊維補強の場合と同様の脆性的なものとなり、
連続繊維補強と比較した場合の利点が失われる。
【0007】したがって、本発明の効果を十分に発揮さ
せるために繊維長は繊維直径の50倍以上、10000
倍以下である必要がある。強化繊維としては繊維引張強
度が1000MPa以上、繊維引張弾性率が50GPa
以上であるピッチ系炭素繊維、ガラス繊維、PAN系炭
素繊維、アラミド繊維、鋼繊維などの各種の繊維が使用
できるが、補強効率を高める上で、好ましくは引張弾性
率が200GPa以上である繊維を用いることがよい。
繊維引張弾性率が50GPa未満の繊維を使用すると、
補修・補強層3の引張剛性がコンクリート層の剛性に対
して大きくならないために十分な補強効果が得られな
い。繊維引張強度が1000MPa未満の繊維を使用す
ると補強層3の強度不足を招き十分な補強効果を得るこ
とができない。補強に用いる繊維の含有率としては、十
分な補強効果を得るためにマトリクス樹脂1も含めた補
強部分の中で、体積含有率で5%以上で70%未満ある
ことが望ましい。
【0008】繊維体積含有率が5%未満の補強層3は引
張剛性不足により十分な補強効果を得られないし、繊維
体積含有率70%以上の補強層はマトリクス樹脂1中の
繊維の分散状態を考慮すると現実的に作製不可能であ
る。補強層3の厚みとしては、補強効果が良好な範囲と
して、0.5〜10mm、好ましくは1mm〜5mm程
度あればよい。補強層3の厚さがこの範囲よりも薄い
と、コンクリートに対する相対厚さが薄くなり過ぎて補
強効果が小さくなり、また厚すぎると実際の施工上の欠
陥が生じる確率が高まるため現実的でない。
【0009】マトリクス樹脂1は補強繊維との接着性が
良く、かつコンクリート構造物4との接着性が良好であ
ること、常温にて施工できる粘度をもつこと、および加
熱を必要とせず常温で硬化するものであれば何でもよ
い。たとえばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステルなどを
使用することができる。このような補修・補強されたコ
ンクリート構造物4は一方向に配列した短繊維2を含有
するマトリックス樹脂1からなる補修・補強層3をコン
クリート構造物4の表面に定着する方法により達成でき
る。より具体的には次のような方法がある。
【0010】(方法1) 短繊維を未硬化のマトリクス
樹脂中に混ぜ込んだ後、コンクリートの表面に刷毛など
で塗布することにより繊維を一方向に配向させたり、マ
トリクス樹脂をコンクリートの表面に塗布する際に、樹
脂に流れをつくり、その流れにより繊維を一方向に配向
させる。
【0011】(方法2) 短繊維を一方向に配向させた
マット状の中間基材にマトリクス樹脂を含浸させ、コン
クリートの表面に貼付する。この方法において、短繊維
を一方向に配向させたマット状の中問基材とは、例えば
一方向に散布した短繊維をバインダーによって結合させ
たり、短繊維を抄紙方法を用いて一方向に配向させなが
ら抄造するなどの公知の方法によって作成された、いわ
ゆるぺ一パー、マットあるいはウェブと呼ばれる不織布
状物である。それをコンクリート表面に貼り付けた後、
マトリクス樹脂を含浸、硬化させることにより補修・補
強を達成する。
【0012】(方法3) 短繊維を粘度が500cp以
上、50000cp未満のマトリクス樹脂中に混ぜ込
み、コンクリートの表面に吹き付けることにより繊維を
一方向に配向させる。マトリクス樹脂の粘度が500c
pよりも小さいものはコンクリート表面に定着すること
が困難になり不適切である。また、粘度が50000c
pよりも大きい場合は、吹き付け施工する場合にノズル
詰まり等を起こしやすいため、使用できない。吹き付け
の方法としては、塗装に用いる吹き付け装置が使用でき
る。
【0013】以上の3つの方法において、必要に応じて
短繊維はマトリクス樹脂とともに所望の厚さだけコンク
リート表面に貼付する。その後そのまま放置して、或い
は加熱して、マトリクス樹脂を硬化させる。
【0014】本発明を用いることにより、一方向配列短
繊維を用いてコンクリート構築物を簡便に施工性よく補
修あるいは補強することができ、かつ補修した構築物の
許容変形量を確保しつつ、補修および補強強度を高める
ことができる。まず施工性について言えば、たとえば炭
素繊維シートの様な強化連続繊維により構築物を補修あ
るいは補強する場合、繊維が連続しているために、たと
えば柱の隅の部分のような曲率の大きい部位への適用が
極めて困難かあるいは不可能な場合がある。ところが本
発明にかかる短繊維を用いた方法によると、短繊維のそ
れぞれの長さが十分小さいために、繊維とマトリクス樹
脂を併せた補強層が高曲率部へ容易に適用される。さら
に、繊維シートを一枚ずつ貼付する場合のようなシート
とシートの層間に生ずる剥離欠陥を軽減できる。補修お
よび補強効果に関して言えば、連続繊維によって補強さ
れた場合と比較して高い靭性、すなわち破壊に至るまで
の構造体としての吸収エネルギーを高めることができ
る。その詳細な理由は未だ明らかではないが、以下のよ
うに考えられる。
【0015】すなわち、最近の実験的研究によれば、曲
げ荷重等によって構造物の補強部分に引張力が加わった
場合、まずコンクリートに亀裂が発生し、その亀裂に直
接接触している強化繊維に大きな応力集中が生じる。そ
の際、一方向配列強化連続繊維シートの中の炭素繊維の
ような高弾性繊維が亀裂に直接接触していると応力集中
の程度が厳しくなり、期待される荷重よりも低い荷重で
繊維破断を生じ、補強部分の強度低下を招く。繊維破断
の破壊形態をとるとき最終破壊時の変形量は著しく小さ
く、その構造体の破壊時の吸収エネルギーは小さい。
【0016】本発明に係る一方向に配列された繊維長が
繊維直径の50倍以上、10000倍以下でかつ繊維引
張強度が1000MPa以上、繊維引張弾性率が50G
Pa以上である短繊維を強化繊維としてマトリクス樹脂
に含浸し、コンクリートの表面に貼付し硬化させること
で、補修および補強されたコンクリート構造物に曲げ荷
重等によって構造物の補強部分に引張力が加わった場
合、その亀裂に直接接触している応力集中の大きな部分
の強化繊維が破断することなく、強化繊維のマトリクス
からの引き抜けが支配的な破壊形態となる。こういった
破壊形態の場合、一本の繊維引き抜け部分からのエネル
ギーの開放が、繊維破断と比較して小さいために急激な
破壊を招くことなく、順次繊維引き抜けを起こしなが
ら、大きな変位を許容しながら最終破壊に至る。従っ
て、構造物が最終破壊までに吸収するエネルギーが大き
くなり、靭性の高い補強構造物を提供することができ
る。
【0017】
【実施例】
(実施例1)短繊維として繊維引張弾性率200GP
a、繊維引張強度3500MPa、平均繊維長6mm、
繊維径10mmのピッチ系炭素繊維を、マトリクス樹脂
として常温硬化型エポキシ樹脂を用いてコンクリート曲
げ試験片を補修・補強した。ここで、繊維長は繊維径の
600倍である。図2に示すように、試験片5は、幅W
が40mm、厚さTが20mm、長さLが195mmの
コンクリート板で、補強・補修するコンクリート面はサ
ンドペーパーがけを行い、その後、プライマーを塗布し
て下地処理を行った。下地処理したコンクリート面に、
短繊維をマトリクス樹脂中に混ぜ込んだものをヘラによ
って試験片長手方向に塗ることで、樹脂に流れを作り、
繊維を試験片長手方向に配向させた。そして、25℃で
60時間放置し、補強層のマトリクス樹脂を完全に硬化
させた。補強層の平均厚さは約1.1mmであり、繊維
は長手方向に配列された。補強層の繊維体積含有率は約
6%であった。
【0018】(実施例2)実施例1と同様に、短繊維と
して繊維引張弾性率200GPa、繊維引張強度350
0MPa、平均繊維長6mm、繊維径10mmのピッチ
系炭素繊維を、マトリクス樹脂として常温硬化型エポキ
シ樹脂を用いてコンクリート曲げ試験片を補修・補強し
た。ここで、繊維長は繊維径の600倍である。実施例
1と同様に、下地処理したコンクリート面に、予め短繊
維を一方向に配向させつつ散布しウレタン系の接着剤で
繊維を結合することにより作成したマットを、短繊維の
配向が試験片長手方向と一致するように置き、マトリク
ス樹脂を含浸させた。そして、25℃で60時間放置
し、補強層のマトリクス樹脂を完全に硬化させた。補強
層の平均厚さは約2mmであり、補強層の繊維体積含有
率は約15%であった。
【0019】(実施例3)実施例1と同じく、短繊維と
して繊維引張弾性率200GPa、繊維引張強度350
0MPa、平均繊維長6mm、繊維径10mmのピッチ
系炭素繊維を、マトリクス樹脂として常温硬化型エポキ
シ樹脂を用いてコンクリート曲げ試験片を補修・補強し
た。ここで、繊維長は繊維径の600倍である。実施例
1と同様に、下地処理したコンクリート面に、短繊維を
常温(23℃)における粘度600cpのマトリクス樹
脂中に混ぜ込んだものをスフレーにて吹き付けることに
より、試験片長手方向に配向させた。そして、25℃で
60時間放置し、補強層のマトリクス樹脂を完全に硬化
させた。補強層の平均厚さは約1.5mmであり、繊維
は長手方向に配列された。補強層の繊維体積含有率は約
10%であった。
【0020】(比較例1)図2に示す幅W40mm、厚
さT20mm、長さL195mmの無補強のコンクリー
ト板を用いた。
【0021】(比較例2)図2に示す幅W40mm、厚
さT20mm、長さL195mmのコンクリート板の補
修・補強面はサンドペーパーがけを行い、その後、プラ
イマーを塗布して下地処理を行った後、実施例1〜3に
用いたエポキシ樹脂のみを塗布し、25℃で60時間放
置して硬化させた。補強層の平均厚さは約0.3mmで
あった。
【0022】(比較例3)繊維引張弾性率200GP
a、繊維引張強度3500MPa、繊維径10mmのピ
ッチ系炭素繊維からなる繊維目付け量が100g/m2
の一方向強化連続繊維シートを用い、マトリクス樹脂と
して常温硬化型エポキシ樹脂を用いてコンクリート曲げ
試験片を補修・補強した。ここで、補強シート中の繊維
は短繊維ではなく連続繊維である。実施例1と同様に、
下地処理したコンクリート面に、マトリクス樹脂として
のエポキシ樹脂を含浸した一方向強化連続繊維シートを
貼り付けた。そして、25℃で60時間放置して補強層
のマトリクス樹脂を完全に硬化させた。補強層の平均厚
さは約0.5mmであり、繊維は長手方向に配列され
た。補強層の繊維体積含有率は約30%であった。
【0023】図3に示すように、実施例1〜実施例3お
よび、比較例1〜比較例3の方法により作製した曲げ試
験片6を、互いに間隙L1 が150mm離れた支点Fに
て支持し、試験片6上の長手方向中央にある作用点Gに
て押圧荷重Pを付与し、三点曲げ試験を行った。図4に
実施例1〜実施例3および、比較例1〜比較例3の荷重
−変位線図を示す。すなわち、図4には、実施例1の荷
重−変位関係7、実施例2の荷重−変位関係8、実施例
3の荷重−変位関係9、比較例1の荷重−変位関係1
0、比較例2の荷重−変位関係11、比較例3の荷重−
変位関係12がそれぞれグラフで示されている。
【0024】実施例1による補修・補強方法によれば、
抑圧荷重Pが65Kgf 、荷重点直下の変形量0.15m
mにて引張側コンクリートに亀裂が生じ、荷重の増加と
ともに亀裂の数を増しながら変形が進み、最大押圧荷重
86kgf に達した後、変形量を増しながら徐々に荷重が
低下し、最大変形量1.75mmにて最終破壊に至っ
た。実施例2による補修・補強方法によれば、押圧荷重
Pが80kgf 、荷重点直下の変形量0.16mmにて引
張側コンクリートに亀裂が生じ、荷重の増加とともに亀
裂の数を増しながら変形が進み、最大押圧荷重120kg
f に達した後、変形量を増しながら徐々に荷重が低下
し、最大変形量1.85mmにて最終破壊に至った。実
施例3による補修・補強方法によれば、押圧荷重Pが7
2Kgf 、荷重点直下の変形量0.15mmにて引張側コ
ンクリートに亀裂が生じ、荷重の増加とともに亀裂の数
を増しながら変形が進み、最大押圧荷重105kgf に達
した後、変形量を増しながら徐々に荷重が低下し、最大
変形量1.80mmにて最終破壊に至った。
【0025】一方、比較例1の無補強のコンクリートは
押圧荷重Pが53kgf 、変形量0.14mmにて引張側
コンクリートに亀裂が生ずると同時に大きな荷重低下を
招き、その後の変形を許容することなく、脆性的に最終
破壊に至った。また、比較例2のコンクリートにエポキ
シ樹脂のみを塗ったものは押圧荷重Pが53kgf 、変形
量0.14mmにて引張側コンクリートに亀裂が生じた
後、荷重低下を伴いつつ徐々に変形が拡大していき荷重
点変形量0.6mmにて最終破壊に至った。
【0026】すなわち、本発明による補修・補強方法に
よれば、連続繊維の場合と比較して簡便に施工でき、無
補強の場合と比較して許容変形量は10倍以上にも達
し、補修・補強強度は約2倍強に増加した。比較例3の
一方向強化連続繊維シートによる補修・補強方法によれ
ば、押圧荷重Pが74kgf 、荷重点直下の変形量0.1
5mmにて引張側コンクリートに亀裂が生じ、荷重の増
加とともに亀裂の数を増しながら徐々に変形が進み、最
大押圧荷重109kgf に達した後、繊維の破断とともに
急激に荷重が低下し、最大変形量0.90mmにて最終
破壊に至った。
【0027】すなわち、実施例1〜実施例3に示された
本発明による補修・補強方法によれば、連続繊維の場合
と比較して簡便に施工でき、無補強の場合と比較して許
容変形量は10倍以上にも達し、補修・補強強度は約2
倍に増加した。補強効果に関して、連続繊維補強の場合
と比較してもほぼ同等の補修・補強強度および約1.6
倍以上の許容変形量を得た。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の補修・補
強されたコンクリート構造物、および本発明の方法によ
り補修・補強されたコンクリート構造物は従来の連続繊
維を用いて補修・補強されたコンクリート構造物と比較
して短時間かつ容易に施工でき、許容変形量に関しても
優れた特性をもち、高い補修効果も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A),(B)は本発明の一実施例に係る補修
・補強されたコンクリート構造物の長手方向及び長手方
向と直角方向の断面模式図である。
【図2】本発明の一実施例として使用した試験片の構成
を示す斜視図である。
【図3】試験片による補強試験方法を示す説明図であ
る。
【図4】本発明の実施例1〜3および比較例1〜3とし
て行った補強試験の荷重−変形量をグラフで示す図であ
る。
【符号説明】
1 補修・補強層の中のマトリクス樹脂 2 補修・補強層の中の補強短繊維 3 補修・補強層 4 補修・補強されるコンクリート構造物 5 コンクリート試験片 6 三点曲げ試験に供する試験片 7 実施例1の荷重−変位関係 8 実施例2の荷重−変位関係 9 実施例3の荷重−変位関係 10 比較例1の荷重−変位関係 11 比較例2の荷重−変位関係 12 比較例3の荷重−変位関係
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年9月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】
【実施例】 (実施例1)短繊維として繊維引張弾性率200GP
a、繊維引張強度3500MPa、平均繊維長6mm、
繊維径10μmのピッチ系炭素繊維を、マトリクス樹脂
として常温硬化型エポキシ樹脂を用いてコンクリート曲
げ試験片を補修・補強した。ここで、繊維長は繊維径の
600倍である。図2に示すように、試験片5は、幅W
が40mm、厚さTが20mm、長さLが195mmの
コンクリート板で、補強・補修するコンクリート面はサ
ンドペーパーがけを行い、その後、プライマーを塗布し
て下地処理を行った。下地処理したコンクリート面に、
短繊維をマトリクス樹脂中に混ぜ込んだものをヘラによ
って試験片長手方向に塗ることで、樹脂に流れを作り、
繊維を試験片長手方向に配向させた。そして、25℃で
60時間放置し、補強層のマトリクス樹脂を完全に硬化
させた。補強層の平均厚さは約1.1mmであり、繊維
は長手方向に配列された。補強層の繊維体積含有率は約
6%であった。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】(実施例2)実施例1と同様に、短繊維と
して繊維引張弾性率200GPa、繊維引張強度350
0MPa、平均繊維長6mm、繊維径10μmのピッチ
系炭素繊維を、マトリクス樹脂として常温硬化型エポキ
シ樹脂を用いてコンクリート曲げ試験片を補修・補強し
た。ここで、繊維長は繊維径の600倍である。実施例
1と同様に、下地処理したコンクリート面に、予め短繊
維を一方向に配向させつつ散布しウレタン系の接着剤で
繊維を結合することにより作成したマットを、短繊維の
配向が試験片長手方向と一致するように置き、マトリク
ス樹脂を含浸させた。そして、25℃で60時間放置
し、補強層のマトリクス樹脂を完全に硬化させた。補強
層の平均厚さは約2mmであり、補強層の繊維体積含有
率は約15%であった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正内容】
【0019】(実施例3)実施例1と同じく、短繊維と
して繊維引張弾性率200GPa、繊維引張強度350
0MPa、平均繊維長6mm、繊維径10μmのピッチ
系炭素繊維を、マトリクス樹脂として常温硬化型エポキ
シ樹脂を用いてコンクリート曲げ試験片を補修・補強し
た。ここで、繊維長は繊維径の600倍である。実施例
1と同様に、下地処理したコンクリート面に、短繊維を
常温(23℃)における粘度600cpのマトリクス樹
脂中に混ぜ込んだものをスフレーにて吹き付けることに
より、試験片長手方向に配向させた。そして、25℃で
60時間放置し、補強層のマトリクス樹脂を完全に硬化
させた。補強層の平均厚さは約1.5mmであり、繊維
は長手方向に配列された。補強層の繊維体積含有率は約
10%であった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正内容】
【0022】(比較例3)繊維引張弾性率200GP
a、繊維引張強度3500MPa、繊維径10μmのピ
ッチ系炭素繊維からなる繊維目付け量が100g/m
の一方向強化連続繊維シートを用い、マトリクス樹脂と
して常温硬化型エポキシ樹脂を用いてコンクリート曲げ
試験片を補修・補強した。ここで、補強シート中の繊維
は短繊維ではなく連続繊維である。実施例1と同様に、
下地処理したコンクリート面に、マトリクス樹脂として
のエポキシ樹脂を含浸した一方向強化連続繊維シートを
貼り付けた。そして、25℃で60時間放置して補強層
のマトリクス樹脂を完全に硬化させた。補強層の平均厚
さは約0.5mmであり、繊維は長手方向に配列され
た。補強層の繊維体積含有率は約30%であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻 信之 神奈川県川崎市中原区井田3丁目35番1号 新日本製鐵株式会社技術開発本部内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート構造物の表面に、一方向に
    配列した短繊維を含有するマトリクス樹脂からなる補修
    ・補強層を有することを特徴とする補修・補強されたコ
    ンクリート構造物。
  2. 【請求項2】 一方向に配列した短繊維が、1000M
    Pa以上の引張強度、50GPa以上の引張弾性率を有
    し、かつ繊維直径の50倍以上、10000倍以下の繊
    維長であることを特徴とする請求項1記載のコンクリー
    ト構造物。
  3. 【請求項3】 一方向に配列した短繊維を含有するマト
    リクス樹脂からなる補修・補強層をコンクリート構造物
    の表面に定着することを特長とするコンクリート構造物
    の補修・補強方法。
  4. 【請求項4】 短繊維が、1000MPa以上の引張強
    度、50GPa以上の引張弾性率を有し、かつ繊維直径
    の50倍以上、10000倍以下の繊維長であることを
    特徴とする請求項3記載のコンクリート構造物の補修・
    補強方法。
JP10832597A 1997-04-11 1997-04-11 補修・補強されたコンクリート構造物およびその補修・補強方法 Withdrawn JPH1144099A (ja)

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