JPH1143090A - 船舶における噴出気泡の解析方法 - Google Patents

船舶における噴出気泡の解析方法

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JPH1143090A
JPH1143090A JP10055453A JP5545398A JPH1143090A JP H1143090 A JPH1143090 A JP H1143090A JP 10055453 A JP10055453 A JP 10055453A JP 5545398 A JP5545398 A JP 5545398A JP H1143090 A JPH1143090 A JP H1143090A
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equation
bubbles
void fraction
flow
analyzing
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JP10055453A
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Yoshiaki Takahashi
義明 高橋
Yuki Yoshida
有希 吉田
Yoji Kato
洋治 加藤
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IHI Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水平チャンネル内気泡流におけるボイド率分
布の近似計算方法を示し、ボイド率分布の支配方程式を
提供し、ボイド率に対する供給空気流量の影響および流
速の影響を明らかにする。 【解決手段】 船舶から噴出された気泡の流れを連続し
た気相の流れに近似し、気泡を該気相の流れにおける拡
散粒子として取り扱うことにより、気泡の分布(ボイド
率分布)を解析する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶における噴出
気泡の解析方法に係わり、特に船舶の摩擦抵抗低減法に
関する研究の一環として微小気泡による摩擦低減法に関
する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】船舶に
おける摩擦抵抗低減法の一つに、微小気泡を用いる方法
がある。この場合、多くの気泡流モデルはボイド率分布
を既知量として与えてから流れの諸量を計算するので、
摩擦低減効果の精度良い推定結果を得るためには、ボイ
ド率分布のメカニズムを解明することが極めて重要と考
えられる。このような微小気泡を用いた摩擦抵抗低減法
を実際の機械に応用することを考えた場合、諸計算の途
中で気泡供給量を与えてボイド率を推定することが必要
となる。したがって、実用的観点からもボイド率分布の
研究は大きな意味を持つ。
【0003】例えば、Guin等は報告A(Reduction
of skin friction by microbubblesand its relation w
ith near-wall bubble concentration in a channel.JM
STVOL.1,NO.5 P.241-254,1996)において、水平チャン
ネル内気泡流における精密な実験を行い、壁面近傍のボ
イド率が摩擦抵抗低減効果に深く関係していることを明
らかにした。その中で、同じ流速で供給空気流量が大き
くなるとボイド率ピークが壁から離れる方向に移動する
ことが確認されている。
【0004】また、本発明で扱う水平チャンネル内気泡
流とは異なるが、垂直上昇流あるいは下降流を扱った研
究がこれまでになされている。佐藤等は、報告B(気ほ
う流の研究,第2報,気ほうの挙動に及ぼす水流速と流
路寸法の影響,機論,43:2288−0296,19
77)において、ピーク値5%以下の低いボイド率にお
いて気泡の挙動を観察し、小さな気泡は液速が大きくな
ると壁から離れる方向に移動する傾向があることを明ら
かにしている。
【0005】しかし、理論解析を試みる場合にSaff
manによる報告C(The lift ona small sphere in a
slow shear flow.JFM22:385-400,1965)に代表される
揚力だけでは、上記の傾向を説明することが困難であ
る。また、液相に対する気泡の影響をどのように考慮す
るかについても課題が多い。
【0006】推定式を構成した研究は、片岡等の報告D
(Modeling and prediction of tu-rbulence in bubbly
twophase flow.2nd International Conference on Mul
tip-hase Flow '95,Japan,pp MO2-11-16,1995)の中に
見られる。そこでは、流れの諸量を計算する際、ボイド
率分布としては実験結果をベースとした推定式を用いて
いる。しかし、ボイド率に関する理論的メカニズムの解
明は依然課題として残されている。
【0007】著者らは報告E(Simple Lagrangian form
ulation of bubbly flow in a tur-bulent boundary la
yer (bubbly boundary layer flow) JMST VOL.2,NO.1,1
-11,1997)にて、実用的な観点から簡単なラグランジュ
的定式化を行った。その中で、境界層内の平均ボイド率
を与えて液相の乱れに対する気泡の影響をマクロ的に表
し、摩擦抵抗低減現象を説明する一つのモデルを示し
た。
【0008】本発明は、上述する問題点に鑑みてなされ
たもので、以下の点を目的としている。 (1)水平チャンネル内気泡流におけるボイド率分布の
近似計算方法を示すことが可能な船舶における噴出気泡
の解析方法を提供する。 (2)ボイド率分布の支配方程式を提供することが可能
な船舶における噴出気泡の解析方法を提供する。 (3)ボイド率に対する供給空気流量の影響および流速
の影響を明らかにすることが可能な船舶における噴出気
泡の解析方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明では以下の手段が採用される。すなわち、 a.船舶から噴出された気泡の流れを連続した気相の流
れに近似し、気泡を該気相の流れにおける拡散粒子とし
て取り扱うことにより、気泡の分布(ボイド率分布)を
解析する。 b.上記手段aにおいて、気泡の影響を気相の流れの乱
れ(乱流)に対する影響として定式化し、気泡の分布
(ボイド率分布)を解析する。 c.上記手段bにおいて、定常状態の乱流における垂直
(y軸)方向の乱れによる流束(jt)と重力(浮力)
による流束(jg)の下記つり合い式(1)に基づいて
ボイド率分布を解析する。
【数1】 d.上記手段cにおいて、気泡の拡散の方向性がy軸方
向の位置に依存しないと仮定し、前記乱れによる流束
(jt)を下記表1において定義される記号からなる下
記式(2)によって与えるとともに前記重力による流束
(jg)を下記式(3)によって与え、かつ気相の混合
長(lb)が下記式(7)によって与えられるとして得
られた下記式(8)を局所ボイド率(α)の支配方程式
としてボイド率分布を解析する。
【表1】
【数2】
【数3】
【数7】
【数8】 e.上記手段dにおいて、気相における混合長(lm
について下記式(9)が成立し、液相における混合長変
化(lmb)が下記式(9),(10)に基づいて式(1
1)のように与えられ、かつ対数則が成立する領域にお
いて式(12),(13)が成立し、局所ボイド率
(α)がy軸方向の位置に依存しないとして前記式
(8)を解いて得られた下記式(17)に基づいて局所
ボイド率(α)を算出する。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数17】 f.上記手段eにおいて、摩擦速度Uγ の支配方程式
を下記式(18)とし、該式(18)に基づいて摩擦抵
抗比Cf/Cf0を下記式(19)によって算出する。
【数18】
【数19】 g.上記手段eまたはfにおいて、気泡の抵抗係数に S
tokes の式を適用することにより、気泡の上昇速度(q
g)が下記式(21)によって与えられるものとする。
【数21】 h.上記手段e〜gいずれかにおいて、定数ηmは下式
(27)によって与えられるものとし、与えられる境界
層厚さδに応じて定数ηmを比例的に変化させることに
より、異なる流場の局所ボイド率(α)を算出すること
を特徴とする船舶における噴出気泡の解析方法。
【数27】 i.上記手段hにおいて、ある流場について定数ηm
実験的に求め、異なる流場の局所ボイド率(α)を算出
する際には、前記ある流場の境界層厚さδと異なる流場
の境界層厚さδの比に基づいて定数ηmを比例的に変化
させて局所ボイド率(α)を算出することを特徴とする
船舶における噴出気泡の解析方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明に
係わる船舶における噴出気泡の解析方法の一実施形態に
ついて説明する。なお、以下に説明する各記号の定義に
ついては、以下に示す表1に示す通りである。また、こ
れら各記号において添字Gは気体を、Lは液体を、Oは
気泡なしをそれぞれ示している。
【0011】
【表1】
【0012】〔理 論〕まず、本実施形態の理論構成に
ついて説明する。なお、以下に説明する本実施形態にお
ける流束のつり合い式は、前報による気泡の影響が考慮
された混合長モデルと連立させたものである。したがっ
て、ボイド率を求める際には液相に対する気泡の影響が
考慮される。その連立を媒介する変数は気泡の影響によ
る混合長変化lmbおよび摩擦抵抗比Cf/Cf0である。
これらの変数は、流場への供給空気流量を基にした境界
層内の平均ボイド率αmを用いて計算される。 (1)座標系 図1に、本実施形態が適用される検討対象の座標系を示
す。この図において、y軸は鉛直下向き(重力方向)、
2Rはチャンネルの高さ、Umは気泡流の平均速度を示
している。このように、本実施形態では、2次元の十分
に発達した水平チャンネル内気泡流を検討対象としてい
る。
【0013】(2)支配方程式 次に、上記検討対象における局所ボイド率αの支配方程
式について説明する。ここでは、気泡の流れを連続な気
相の流れと近似し、気泡を拡散粒子として取り扱う。気
泡の拡散を支配する因子は、乱れ(混合長および乱れ速
度)、重力(浮力)、圧力勾配および揚力などがある。
気泡を拡散粒子として取り扱う場合に流速分布が因子と
して陽に含まれる必要はない。すなわち、気泡の影響は
乱れに対する影響として表現されてさえおれば定式化が
可能となり、その結果、ボイド率分布を推定することが
できる。
【0014】圧力勾配および揚力が他に比較して無視で
きる程度に小さい場合には、容易に解析解を求めること
ができる。ここでは定式化の第一段階として、乱れおよ
び浮力を考慮して定式化を行い各々の影響を考えること
とする。
【0015】乱流が発達して定常状態に至った流れにお
いては、y軸方向の流束の総和はゼロであるから、以下
のような流束のつり合い式(1)が成立する。
【0016】
【数1】
【0017】ここで、図2に示すように、上記y軸に垂
直な制御面(Control Surface)を考える。定常状態に
おいて、気泡(Bubble)は、その制御面を通して一定の
混合長lbに相当する平均自由行程で振動する。したが
って、拡散の方向性がyに依存しないと仮定すると、そ
の制御面を通過する乱れによる気相の流束jtは、式
(2)によって表される。ここで、a1は乱れの方向性
を示す定数であり、もし流場が等方的であれば、a1
1とする。
【0018】
【数2】
【0019】一方、上記浮力による流束jgは、上昇速
度をqgとすると式(3)によって表される。
【0020】
【数3】
【0021】したがって、上記式(2),(3)を式
(1)に代入すると、局所ボイド率αの支配方程式は、
式(4)のように表される。
【0022】
【数4】
【0023】ここで、気相の混合長lbについては、上
記報告Eにおける液相の混合長変化lmbを用いて以下の
ように表される。すなわち、気泡が混入することによる
液相のせん断応力減少量は、式(5)によって与えられ
る。
【0024】
【数5】
【0025】この液相のせん断応力減少量は、気相と液
相間の作用反作用を考えると気相のせん断応力増加量す
なわち乱流応力に等しくなり、式(6)のように表され
る。
【0026】
【数6】
【0027】さらに、気相における平均流速と液相にお
ける平均流速がほぼ等しいと仮定すると、次の関係式
(7)が得られる。
【0028】
【数7】
【0029】この式(7)を式(4)に代入すると、式
(8)が得られる。
【0030】
【数8】
【0031】この式(8)において、左辺第1項は乱れ
の勾配による影響、第2項はボイド率の勾配による影
響、第3項は浮力の影響を表しており、式全体としては
それらが釣合っている状態を表している。
【0032】(3)解 次に、上式(8)の解について説明する。まず、混合長
について考える。上記図1において、近似的に流場は中
心線について上下対称として上半分だけを考える。ま
た、チャンネルの中心線上の乱流せん断応力がゼロにな
るように、また速度分布に関して対数則が成り立つとし
て、液相の混合長lmを次式(9)のように仮定する。
【0033】
【数9】
【0034】また、液相における混合長変化lmbを求め
る場合、壁法則の定数κに相当する定数κ2は、上記報
告Eの式(29)すなわち、κ1=κ−ηmαm 2/3より下
式(10)のように表される。
【0035】
【数10】
【0036】ここに、αmは境界層内の平均ボイド率で
あり、定数ηmはλm/dbであり、η m∝δ/dbと近似
することができる。なお、この近似の導出については、
「付録」として以下に説明する。
【0037】検討対象とする流場の境界層厚さが、定数
ηmを決定した水槽に比較して小さい場合には境界層厚
さに比例させて値を小さくする修正を行い、逆の場合は
同様の方法で値を大きくして用いる。
【0038】したがって、液相における混合長変化lmb
は、以下の式(11)によって求められる。
【0039】
【数11】
【0040】ここで、対数則が成立する領域を考える場
合、次式(12),(13)が成立する。
【0041】
【数12】
【0042】
【数13】
【0043】これら式(11),(12),(13)を
上記式(4)に代入して整理すると、次式(14)のよ
うになる。
【0044】
【数14】
【0045】この式(14)において、K0は以下の式
(15)のように表されるものである。
【0046】
【数15】
【0047】ここで、偏微分記号∂を常微分記号dに書
き換える、すなわち局所ボイド率αを上記図1における
上壁からの距離yのみの関数であると仮定すると、式
(14)は式(16)のように書き改められる。
【0048】
【数16】
【0049】この式(16)は、変数分離型の微分方程
式であり、局所ボイド率αについて、その解を容易に求
めることができる。すなわち、この解は、下式(17)
となる。
【0050】
【数17】
【0051】ここに、K1は積分定数であり、上式(1
7)をy軸方向に積分することによって得られる平均ボ
イド率が供給空気流量ベースの平均ボイド率αmに等し
くなるようにして調整される。
【0052】〔計 算〕次に、上述したように求めた式
(17)を用いて、局所ボイド率αを実際に計算した結
果について詳しく説明する。
【0053】(1)条件 計算対象は、上述した報告Aで用いられた流路すなわ
ち、2R=10(mm)とし、その内部流をシミュレート
する。また、シミュレートするケースは、気泡径が計測
されている5ケースとする。
【0054】図1の中心線から下の領域では、乱れ勾配
および浮力の影響はいずれも上向きの誘導速度として作
用するので、近似的に気泡は中心線から上の領域(境界
層内:0<y<0.005m)に集中すると考えて良
い。
【0055】流速の条件は、Um=4.5,6.3,
8.1(m/s)であり、供給空気流量の条件は、QG=2
3,40,50(l/min)である。上記報告Aにより、
m=4.5(m/s)の場合の気泡径は、代表値としてd
b=700(μm)、Um=6.3,8.1(m/s)の場
合はdb=500(μm)とする。また、摩擦速度Uτ
の支配方程式については、上記報告Eに従うと次式(1
8)のように表される。
【0056】
【数18】
【0057】さらに、周知のように摩擦速度は、Uτ=
(τω/ρ)1/2と定義され、摩擦抵抗は、Cf=τω/
(1/2・ρ・U0 2)と定義される。これに、壁法則の
定数B,κについては、B=4.9,κ=0.41とす
ると、摩擦抵抗比Cf/Cf0は、次式(19)によって
与えられる。なお、τωは壁面摩擦応力、ρは密度、U
0は主流速である。
【0058】
【数19】
【0059】乱れの方向性を示す比例定数a1について
は、よく知られた Klebanoff(1955)の乱流特性値(図
書:粘性流体の力学,生井武文,井上雅弘 著,理工学
社)に基づくと、主流方向に直角方向(y方向)の乱れ
は主流方向の0.5〜1倍である。よって、ここでは、
代表値としてa1=0.75とした。
【0060】定数ηmについては、報告Eにおいて石川
島播磨重工業(株)のキャビテーション水槽(断面寸
法:600×600mm)の実験によりηm=0.85
を取得した。そのときの十分に発達した境界層厚さは5
0(mm)のオーダーであり、今回のチャンネルの場合は
その約1/10である。流速が同じオーダーであったの
で気泡径もほぼ同じオーダーであったと仮定し、ηm
0.085とした。
【0061】気泡の上昇速度qgについては、気泡の抵
抗係数に Stokes のものを用いると、浮力と抵抗の釣合
式は次式(20)で表される。
【0062】
【数20】
【0063】この式(20)に基づいて、気泡の上昇速
度qgは式(21)によって与えられるものとした。
【0064】
【数21】
【0065】(2)計算結果 このような条件に基づいて、上式(17)について局所
ボイド率αの分布(ボイド率分布)を数値計算した結果
について説明する。まず、図3に摩擦抵抗比Cf/Cf0
の計算結果(Calculation)を示す。なお、この図に
は、比較のために上記報告A(Guin,1996)による実験
結果をも併記した。
【0066】オーダーについて、計算値は計測値に良く
合っている。計測値の傾向としては、空気流量をある程
度まで増加させると摩擦抵抗比Cf/Cf0は飽和状態と
なり、さらに増加させると摩擦抵抗比Cf/Cf0は逆に
大きくなり抵抗低減効果が下降する様子が見られるが、
計算値にはこの傾向は現れなかった。
【0067】この傾向が現れなかった原因として二つの
ことが考えられる。一つは、計算がyについての局所的
な状態を表現していないためである。もう一つは、実際
の流動状態がボイド率が大きくなることにより局所的に
気泡流でなくなっている可能性があり、理論がその影響
を加味していないためと考えられる。
【0068】続いて、図4に、平均ボイド率αmによっ
て正規化された局所ボイド率αのボイド率分布の計算結
果を示す。上述した計算条件を設定した結果、ボイド率
分布は、中心線から上の領域(境界層内:0<y<0.
005m)のみに現れた。
【0069】計算では、流速を8.1(m/s)から遅く
していくと平均ボイド率増大の効果が大きく現れ、ボイ
ド率ピークは壁から離れる方向に移動する様子が見られ
る。流速が4.5(m/s)になると気泡径が大きくなる
ため、浮力増大の効果が大きく現れてボイド率ピークは
壁に近づく傾向を示した。流速4.5(m/s)において
空気流量が増加すると平均ボイド率が増大し、ボイド率
ピークは壁から離れる方向に移動する。
【0070】図5に報告Aによる実験結果を示すが、本
実施形態の計算結果と報告Aの実験結果とは、定性的に
良好な一致を示している。
【0071】〔議 論〕 (1)ボイド率分布 上式(17)における距離yのべき数(−K0+1)の
正負により、ボイド率の分布形状は大きく2通りに分か
れる。すなわち、K 01の場合は、チャネル内の平均
流速Umが大きいかあるいは平均ボイド率αmが小さいと
きであり、上記支配方程式(4)の浮力影響と乱れ勾配
影響はいかなる距離yでもバランスせず、気泡が壁に集
中する。一方、K0<1の場合には、上記の場合とは逆
の状態であり、支配方程式(4)の浮力影響と乱れ勾配
影響はある位置でバランスし、ボイド率ピークが壁から
離れたところに現れる。
【0072】図5に示した実験結果と比較すると、式
(17)はボイド分布形状が大きく2つに分かれる傾向
に関して概ね一致した。しかし、空気流量が大きく、ボ
イド率ピークが流路の中心線近くに現れる場合に、ボイ
ド勾配の影響が中心線の下の領域まで反映されないた
め、実験値との差異が大きくなっている。
【0073】(2)摩擦抵抗および尺度影響 液相に気泡の影響を考慮してボイド率を計算するので、
摩擦抵抗は途中計算結果として必然的に得られる。その
とき、報告Eにおける大きな水槽の定数ηmを境界層厚
さを考えて1/10にスケールダウンすることにより、
本実施形態における小さな水槽のηmを得た。
【0074】尺度影響を論じる際には、境界層厚さなど
の流場の代表長さがパラメータであれば見通しが良くな
る。このような意味から、本実施形態は、極めて実用的
と考えられる。また、図3における実験結果と本実施形
態の計算結果とはある程度一致しており、本実施形態に
は大きな矛盾はないと考えられる。したがって、尺度影
響の大きな因子は、定数ηmに比例する量すなわち気泡
径に対する境界層厚さと考えることにも大きな矛盾はな
い。
【0075】(3)船舶の模型試験を行う場合について 次に、模型表面に気泡を吹き出した場合の抵抗試験につ
いて説明する。模型試験で実際の船舶(実船)と同じ摩
擦抵抗比Cf/Cf0を得ようとする場合、マクロ的には
壁法則の定数κ2、すなわち境界層厚さ/気泡径×平均
ボイド率の2/3乗、さらにレイノルズ数を実船に合わ
せる必要がある。
【0076】ここで、レイノルズ数を合わせることは非
現実的であり、また定数κ2についても無理がある。上
記報告Aにおける気泡径計測データを見ると、発達した
流れにおける気泡径は速力の影響を大きく受けていると
考えることができる。したがって、実船に比較して速力
が小さい模型試験では気泡径が大きくなる。
【0077】一方、模型の境界層は全長が実船に比べて
短いために薄くなる。したがって、定数ηmは実船に比
較すると小さくなるので、平均ボイド率αmを合わせる
ことができたとしても抵抗低減効果は低く現れる。ま
た、平均ボイド率αmを上げるために空気流量を増やす
ことが考えられるが、気泡流の流動状態を維持する観点
から限界があると考えられる。
【0078】以上の考察から、摩擦抵抗比Cf/Cf0
ついては、実船と同じものを模型試験で得ることは困難
と考えられる。しかし、模型船においては模型船なりの
解析を行い、それが模型船における実験結果に合うこと
を確認すれば、同様の理論を実船にも適用することがで
きる。この点については、今後の課題である。
【0079】(4)垂直上昇管の場合について 続いて、垂直上昇管について、実際のボイド率分布がど
のように説明されるかを検討する。この場合、浮力はy
軸方向には働かず下流方向に働き、気泡は液相より早く
上昇すると考えられる。特に流速が遅くなると壁近傍に
ボイド率ピークが現れることが知られている。
【0080】すなわち、浮力により気泡には比較的大き
な対水速度が発生し、このときせん断流である境界層に
気泡が入ると揚力が発生する。この揚力の方向は壁に近
付く方向であり、その力によってある断面を通過する気
泡の頻度は中心線部よりも壁近くが高くなると考えられ
る。本実施形態では、解の見通しを良くするために圧力
勾配および揚力の項を無視できると仮定したが、低速の
垂直上昇管についてはこれら圧力勾配力および揚力の項
を支配方程式において考慮することが考えられる。しか
し、このことが適当か否かについての検証は今後の課題
であり、ボイド率が本実施形態と同等の場合についての
実験が必要と考えられる。
【0081】〔結 言〕 (1)上記本実施形態によれば、水平チャンネルを流れ
る気泡流について、低空気流量ではボイド率ピークは上
壁近傍に現れ、空気流量が大きくなるとピークが壁から
離れる現象を乱れ影響と浮力影響のバランスによって表
現することを試みた。その結果、実用的観点から簡便な
ボイド率分布の支配方程式が導かれた。 (2)実験結果とボイド率分布支配方程式の解析解は定
性的には良好に一致した。しかし、特に境界層外端付近
の推定精度は良いとはいいがたく、境界条件等に課題が
残された。 (3)報告Eにおける摩擦抵抗比Cf/Cf0の計算方
法は、代表長さが異なる今回のチャンネル内気泡流にも
適用することができた。すなわち、スケールが異なる2
つの流場を同じ計算方法で系統的に説明することができ
る。気泡径に対する境界層厚さが尺度影響の大きな因子
である可能性がある。
【0082】〔付 録〕最後に、上記ηm∝δ/dbの導
出について補足説明する。まず、液相の混合長変化lmb
については次式(22)のように表される。
【0083】
【数22】
【0084】また、式(23),(24),(25)が
それぞれ成立する。
【0085】
【数23】
【0086】
【数24】
【0087】
【数25】
【0088】ここで、y/y+は任意であるが、ここで
は乱流領域外端の値を用いて、y+=1200、かつ、
y/δ=0.35とし、これらの数値を式(25)に代
入する。そして、(y2/y+2)以下の項を無視する
と、式(26)が成立する。
【0089】
【数26】
【0090】さらに、この式(26)を上記式(23)
に代入すると、定数ηmについて式(27)が得られ
る。
【0091】
【数27】
【0092】〔追加事項〕以上に示したように、定数η
mを境界層厚さδに比例する量とし、該境界層厚さδが
検討対象とする流場の境界層厚さが定数ηmを決定した
水槽に比較して小さい場合には比例させて小さくする修
正を行い、また逆の場合は比例的に大きくして用いるこ
とによって、スケールが異なる2つの流場に対して本解
析方法が有効に適用できることが確認された。例えば、
上記計算では、キャビテーション水槽における実験値
(=0.85)を今回のチャンネルの境界層厚さに応じ
て1/10倍し、ηm=0.085とした。
【0093】すなわち、水槽や船体等、流場の大きさに
応じて境界層厚さδが異なる。上記局所ボイド率αの算
出式(17)と摩擦抵抗比Cf/Cf0の算出式(19)
を用いてX軸方向各部の摩擦抵抗比Cf/Cf0を算出す
る場合に、境界層厚さδによって規定されると共に上記
局所ボイド率αを規定している当該定数ηm(∝δ/
b)を調節することによって、異なる大きさの流場に
おける摩擦抵抗比Cf/Cf0を算出することができる。
【0094】なお、上記計算では、定数ηmの基準値と
してキャビテーション水槽の実験によって得られた実験
値すなわち0.85を用いているが、このような実験値
に基づく必要はなく、理論的に境界層厚さδとマイクロ
バブル径dbを算出し、その算出値に基づいて定数ηm
基準値を決定することも考えられる。
【0095】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わる船
舶における噴出気泡の解析方法によれば、以下のような
効果を奏する。 (1)水平チャンネルを流れる気泡流について、これま
での実験結果と定性的には一致した解析結果を得ること
ができる。 (2)実用的な観点から簡便なボイド率分布の支配方程
式を導くことができる。 (3)摩擦抵抗比Cf/Cf0について、同じ解析方法
でスケールが異なる2つの流場を系統的に説明すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる船舶における噴出気泡の解析方
法の一実施形態において、検討対象の座標系を示す平面
図である。
【図2】本発明に係わる船舶における噴出気泡の解析方
法の一実施形態において、制御面(Control surface)
における気泡(Bubble)のモデル図である。
【図3】本発明に係わる船舶における噴出気泡の解析方
法の一実施形態において、摩擦抵抗比Cf/Cf0の計算
結果を示すグラフである。
【図4】本発明に係わる船舶における噴出気泡の解析方
法の一実施形態において、平均ボイド率によって正規化
された局所ボイド率の分布の計算結果を示すグラフであ
る。
【図5】従来の報告Aにおけるボイド率分布の実験結果
を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 加藤 洋治 千葉県松戸市小金原5−31−9

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 船舶から噴出された気泡の流れを連続し
    た気相の流れに近似し、気泡を該気相の流れにおける拡
    散粒子として取り扱うことにより、気泡の分布(ボイド
    率分布)を解析することを特徴とする船舶における噴出
    気泡の解析方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の船舶における噴出気泡の
    解析方法において、気泡の影響を気相の流れの乱れ(乱
    流)に対する影響として定式化し、気泡の分布(ボイド
    率分布)を解析することを特徴とする船舶における噴出
    気泡の解析方法。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の船舶における噴出気泡の
    解析方法において、定常状態の乱流における垂直(y
    軸)方向の乱れによる流束(jt)と重力(浮力)によ
    る流束(jg)の下記つり合い式(1)に基づいてボイ
    ド率分布を解析することを特徴とする船舶における噴出
    気泡の解析方法。 【数1】
  4. 【請求項4】 請求項3記載の船舶における噴出気泡の
    解析方法において、気泡の拡散の方向性がy軸方向の位
    置に依存しないと仮定し、前記乱れによる流束(jt
    を下記表1において定義される記号からなる下記式
    (2)によって与えるとともに前記重力による流束(j
    g)を下記式(3)によって与え、かつ気相の混合長
    (lb)が下記式(7)によって与えられるとして得ら
    れた下記式(8)を局所ボイド率(α)の支配方程式と
    してボイド率分布を解析する、 ことを特徴とする船舶における噴出気泡の解析方法。 【表1】 【数2】 【数3】 【数7】 【数8】
  5. 【請求項5】 請求項4記載の船舶における噴出気泡の
    解析方法において、気相における混合長(lm)につい
    て下記式(9)が成立し、液相における混合長変化(l
    mb)が下記式(9),(10)に基づいて式(11)の
    ように与えられ、かつ対数則が成立する領域において式
    (12),(13)が成立し、局所ボイド率(α)がy
    軸方向の位置に依存しないとして前記式(8)を解いて
    得られた下記式(17)に基づいて局所ボイド率(α)
    を算出する、 ことを特徴とする船舶における噴出気泡の解析方法。 【数9】 【数10】 【数11】 【数12】 【数13】 【数17】
  6. 【請求項6】 請求項5記載の船舶における噴出気泡の
    解析方法において、摩擦速度Uγ の支配方程式を下記
    式(18)とし、該式(18)に基づいて摩擦抵抗比C
    f/Cf0を下記式(19)によって算出することを特
    徴とする船舶における噴出気泡の解析方法。 【数18】 【数19】
  7. 【請求項7】 請求項5または6記載の船舶における噴
    出気泡の解析方法において、気泡の抵抗係数に Stokes
    の式を適用することにより、気泡の上昇速度(qg)が
    下式(21)によって与えられるものとすることを特徴
    とする船舶における噴出気泡の解析方法。 【数21】
  8. 【請求項8】 請求項5〜7いずれかに記載の船舶にお
    ける噴出気泡の解析方法において、定数ηmは下式(2
    7)によって与えられるものとし、与えられる境界層厚
    さδに応じて定数ηmを比例的に変化させることによ
    り、異なる流場の局所ボイド率(α)を算出することを
    特徴とする船舶における噴出気泡の解析方法。 【数27】
  9. 【請求項9】 請求項8記載の船舶における噴出気泡の
    解析方法において、ある流場について定数ηmを実験的
    に求め、異なる流場の局所ボイド率(α)を算出する際
    には、前記ある流場の境界層厚さδと異なる流場の境界
    層厚さδの比に基づいて定数ηmを比例的に変化させて
    局所ボイド率(α)を算出することを特徴とする船舶に
    おける噴出気泡の解析方法。
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