JPH1134728A - 車両後部構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は，小型車両等において，後部車室内に
おける作業スペース，搭載品の設置スペースをより多く
生成するため，後部車室を拡張して広い車室を形成する
車両の開発を課題としてなされたものである。 【解決手段】車体の後面の全面にわたって設けた後部ド
アの上辺を蝶着し，水平状態になるまで回動開口した
時，車室の床面に連続して平直となる延長床面を，車体
外にわたり展開形成する。車室内に設備したベッドは後
方向にスライドする構造とし，ベッドの後脚が，上記車
体外に展開された延長床面上に，載置される構成とす
る。水平状態に回動開口した後部ドアの蝶着部分を除く
全周縁より，延長床面に達する長さのバックドアテント
を垂下する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は，ワンボックス型な
どの車両が走行中は小型車として使用され，停車時にお
いては車室を拡張して移動医療用またはキャンピング用
に利便を供するため，車室床面を車外にまで延長付加
し，併せてスライド式ベッドを装備した車両に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】従来，ベッドを装備した車両において
は，代表的なものとして移動医療用に，またレジャー用
としてキャンピングカーがある。しかし，いずれもベッ
ドは固定された状態のままで使用されるが，車両の小型
性能が要求されることもあって，車室を拡張して広く使
用しようとする工夫がなされず，車両に装備されている
ベッドの使用は不自由な条件下にあることを当然として
使用されていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このように，車両に搭
載装備されているベッドは，限られた車室内で固定され
たまま使用されるため，スペース的に窮屈な状態を強い
られていた。車室内を有効に利用するための当然の結果
であるが，ベッドを使用する目的がかなり制限されるこ
とになる。 特に移動医療を目的とした医療車に利用し
ようとする場合，病院や治療院で使用する程度の医療機
器の設置が必要となるが，スペースに余裕がないため設
置できず，必要最小限の医療作業しかできない狭い状態
であった。しかも，数人の医療従事者が同時に治療を行
わなければならない場合が発生したときなど，ベッド周
辺に必要な作業スペースが確保できないことは致命的で
あり，医療行為に必要なスペースの確保が強く求められ
ていた。

【０００４】しかし，移動式リハビリテーション用車両
の車室内が狭いからといって車両そのものを大型化する
ことは，狭隘な路地にも侵入しなければならない場合も
あるなどの必要性を考える時，機動性を発揮できる小型
車タイプであることが必須条件である。

【０００５】したがって本発明は，小型車としての機能
を持ちながら必要に応じて車室を拡大し，より広い車室
スペースを，簡単な構造の装置で極めて容易に，確保す
ることが可能な車両の提供を目的としたものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】以上のような理由によっ
て本発明は，その課題を解決する手段として後方開口部
と後方下部にキャリアを有する車両において，後方開口
部の開口時にキャリアの底部を構成する折り畳まれた複
数の板部材を展開し，車室床面の延長床面として車室外
に形成するとともに，車室内にスライド可能に装備した
ベッドをスライドさせ，前記拡張床面上にわたって載置
することを特徴とした車両後部構造とする。

【０００７】後方開口部は，上辺を車両に蝶着して上下
回動する後部ドアから成り，後部ドア上辺以外の全周縁
にわたり布等が係止されることが可能となる構造とす
る。

【０００８】延長床面を構成する複数の板部材のうち，
ベッドの荷重が加わる部分の板部材は，かならず車両後
部のバンパーガード上に位置ぎめされた板部材であるこ
ととし，車両後部のバンパーガードがベッドの重量を支
え，ベッドの安定および振動の影響を減少させる構造と
する。

【０００９】ベッドの側方に側方開口部を設け，ベッド
を後方向にスライドさせたとき，側方開口部付近に空間
を生成し，側方開口部が車室内への出入り口となる構造
とする。

【００１０】キャリアを分解して，複数の板部材を展開
し延長床面を構成したとき，キャリアの側部を構成して
いる部材を有効に活用するため，延長床面の足部を兼用
するよう考案し，延長床面の重量を支持する目的に使用
する。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下，図面に基づき発明の１実施
例を詳細に説明する。なお，本発明は以下に説明する実
施例に限定されるものではなく，車室の拡大構成，スラ
イド式ベッドの利用形態が適用であれば，いずれの使用
目的にでも実施できることは言うまでもない。

【００１２】まず，図１は本発明の延長床面利用時の透
視図である。車室１内には前脚部３と後脚部４を有する
スライドベッド２とキャンパーラック５と収納ラック６
とサイドシート７が設備される。キャンパーラック５に
はシンク，水タンク，コンロ，製氷機などが収容され，
収納ラック６には医療機材，酸素ボンベ，補助バッテリ
などが収容されている。また，サイドシート７内にはシ
ートアンダボックスが設けられ，備品類が収容できるよ
うになっている。

【００１３】スライドベッド２の前脚部３は，下端がス
ライドレール２４上に摺動可能に取り付けられ，車両の
前後方向にスライドが可能である。図１の場合スライド
ベッド２は後方へスライドされた状態を示しており，ス
ライドベッド２の前端部分が占めていた車室１内の部分
は空間スペースとなり，側方開口部１７を出入り口とし
てこの空間スペースに入ることを考慮したものである。
このため，例えばリハビリテーション作業中に急きょス
ライドベッド２の前端部分に到達する必要が生じた場合
においても，後方開口部８から入って，狭隘な車室内を
通過してスライドベッド２の前端部分に到達するのに比
べ，極めて容易に到達することができることとなる。ま
た，この側方開口部１７はキャンパーラック５に収容さ
れている備品類を容易に取り扱える場所への出入り口と
もなる。

【００１４】車体の後面全面に設けられた後方開口部８
が開口状態のとき，車両後部のキャリア底部２８を開く
ことによって，キャリア底部２８を構成している板部材
１０，１１，１２は，車室床面１４に連続して平らで段
差のない（平直な）延長床面を形成することができる。
板部材１０ははめ込み式になっており，車室床面１４と
板部材１１の間にはめ込まれる。板部材１１．１２は蝶
番等によって係止され，その係止部を谷折りに畳み込む
ことができる。板部材１２には展開時下面になる側に，
キャリア側部１３を回動可能に取り付け，展開時に板部
材１２の後端から地面に向かって垂直に延びるように回
動して固定し，延長床面の足部を形成する。また，スラ
イドベッド２の後脚部４を載置する板部材１１は，車両
後部の下部に取り付けられているバンパーガード９の上
に固定具２１（図示せず）を介して直接固定される。こ
のため，医療従事者が車室床面１４及び延長床面上を移
動しても，床面の振動は最小限に抑えられ，スライドベ
ッド２への振動は殆どなく，安定した状態を保持する。

【００１５】後方開口部８は，上辺を車体に蝶着して上
下に回動可能に取り付けた後部ドア１５から成り，開口
時には上方に回動して水平状態を確保し，上辺以外の全
周縁には延長床面に達する長さのバックドアテント１６
を取り付ける。このバックドアテント１６は車室１内と
延長床面とを外部１９から遮断する目的のためのもので
あり，これによって拡張車室は形成される。

【００１６】図２は本発明の車両移動時の図である。図
２（ａ）は平面透視図で，図２（ｂ）は側面透視図であ
る。図１の状態となっていた板部材１０を取り外し，ま
た板部材１１，１２を折り畳んでキャリア底部２８を形
成し，バックドアテント１６を取り外し収納ボックス２
０に納めたものと併せてキャリア２７を成している。キ
ャンパーラック５と収納ラック６の間は，運転席からの
出入りのためスペースを設け通路とする。スライドベッ
ド２は前方にスライドされた状態にある。スライドベッ
ド２の前脚部３の下端にはローラー２３が取り付けら
れ，スライドレール２４上を移動可能としてある。ま
た，スライドレール２４上にはチェッカー２５を設け，
このチェッカー２５をローラー２３が乗り越えることに
よって，スライドベッド２の移動は停止固定されるよう
構成されている。（公知技術）

【００１７】図３は板部材１０，１１，１２を展開し，
車室拡張部を利用可能としている図である。図３（ａ）
は平面透視図であり，図３（ｂ）は側面透視図である。
板部材１１，１２およびキャリア側部１３は矢印Ａ，Ｂ
の方向に回動展開される。スライドベッド２は後方へス
ライドされ，スライドベッド２の前脚部３が後部のチェ
ッカー２５を乗り越え固定された状態である。なお，ス
ライドベッド２の後脚部４は車室１外の車室拡張部１８
内の延長床面上にあるので，医療従事者は後方開口部１
７の突起部２６が邪魔になることはない。

【００１８】

【発明の効果】本発明は，小型車としての車体でありな
がら，車両停車時には車室内を拡張して中型車に匹敵す
るほどのスペースを確保し，狭隘な車室内のために十分
に活用できなかった，それぞれの機能を生かすことがで
きる。例えば，リハビリテーション車として車室内に病
院または治療院で使用する程度に新機能を備えた機器を
備え付けることができ，内容の充実した規模の大きいリ
ハビリテーションの実施も可能となる。この車両の開発
を機に移動式のリハビリテーション施設が拡充していく
ならば，介護も不十分なまま通院もできず自宅療養を余
儀なくされている方々に対して，質の高い在宅医療が幅
広く実施可能となる。

【００１９】車室内に設備したベッドを後方にスライド
させ，延長床面を構成することにより，ベッド周りに多
くの空間を作り出すことができ，ベッドを利用する人の
利便の増大，また解放感を与えるメリットをも併せて得
られる。さらにベッド周りの空間の増加は，ベッド周り
にいる人の不自由な動きの緩和をもたらし，ベッド利用
者に対する対応の多様化が図られる。前記のリハビリテ
ーション実施を例にとれば，ベッドに乗せられた患者に
対して，複数の医者あるいは医療従事者が同時に医療ま
たは介護作業を能率的に実施することが可能となる。

【００２０】本発明の車両は，小型車として狭い道路で
あっても通行進入し，人家の密集地域，狭隘な小路の奥
にでも機動性を発揮することができる特徴を確保しつ
つ，目的地についてから車室を拡張し，中型車並みのベ
ッドルーム，あるいは介護室としての機能を駆使できる
特徴は本発明独特のものである。したがって，前記実施
例のリハビリテーション対応のみならず，震災地，火災
現場，その他応急復旧時等の医療施設として，大型車両
では不可能な条件下においても極めて有効に活躍でき
る。

【００２１】車室の拡張に際しては，キャリアに収納さ
れている延長床面の展開，バックドアテントを後部ドア
全周縁から吊り下げる等の作業は，キャリアが車体後部
に位置するため，容易に，迅速に実施することができ
る。このため，降雨のなかであっても支障なく短時間に
車室を拡張することが可能である。

【００２２】車室後部に拡張する延長床面は，ベッドの
後脚部を載せて荷重が加わる部分の板部材を，車体後部
の頑強なバンパーガード上に載置するので，延長床面お
よびベッドは，車室内の従事者等の移動または物品等の
移動等に伴う振動による影響は減少される。

【００２３】車体の側方，ベッドの前端部付近に側方開
口部を設け，ベッドを後方にスライドした場合に車室内
への出入り口として機能し，ベッド周りに支障少なく到
達することを目的としたものである。また，狭隘な車室
内の移動にも，外部からの出入り口を複数として能率
化，合理化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る車両後部構造の透視図。

【図２】車両移動時の透視図。

【図３】車室拡張時の透視図。

【符号の説明】 １ 車室 ２ スライドベッド ３ 前脚部 ４ 後脚部 ５ キャンパーラック ６ 収納ラック ７ サイドシート ８ 後方開口部 ９ バンパーガード １０ 板部材（延長床面） １１ 板部材（延長床面） １２ 板部材（延長床面） １３ キャリア側部（足部） １４ 車室床面 １５ 後部ドア １６ バックドアテント １７ 側方開口部 １８ 車室拡張部 １９ 外部 ２０ 収納ボックス ２１ 固定具 ２２ フレーム ２３ ローラー ２４ スライドレール ２５ チェッカー ２６ 突起部 ２７ キャリア ２８ キャリア底部

フロントページの続き (72)発明者 林 裕人 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 (72)発明者 中神 幸治 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式会 社豊田自動織機製作所内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】後方開口部と後方下部にキャリアを有する
   車両において，後方開口部の開口時にキャリアの底部を
   構成する折り畳まれた複数の板部材を展開し，車室床面
   の延張床面として車室外に形成するとともに，車室内に
   スライド可能に装備したベッドをスライドさせ，前記拡
   張床面上にわたって載置することを特徴とした車両後部
   構造。
2. 【請求項２】後方開口部は，上辺を車両に蝶着して上下
   回動する後部ドアが形成し，後部ドア上辺以外の全周縁
   にわたり布等が係止される構造であることを特徴とする
   請求項１の車両後部構造。
3. 【請求項３】延長床面を構成する複数の板部材のうち，
   ベッドの荷重が加わる部分の板部材は，車両後部のバン
   パーガード上に位置ぎめされた板部材であることを特徴
   とする請求項１の車両後部構造。
4. 【請求項４】前記車室において，ベッドの側方に側方開
   口部を設け，ベッドをスライドさせることにより側方開
   口部付近に空間を生成させ，側方開口部が車室内への出
   入り口になることを特徴とする請求項１の車両後部構
   造。
5. 【請求項５】複数の板部材を展開して延長床面を構成し
   たとき，キャリアの側部を構成する部材が，延張床面の
   足部を兼用することを特徴とする請求項１の車両後部構
   造。