JPH11342579A - グラビア彫刻機のスタイラス変位調整装置 - Google Patents

グラビア彫刻機のスタイラス変位調整装置

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JPH11342579A
JPH11342579A JP15255998A JP15255998A JPH11342579A JP H11342579 A JPH11342579 A JP H11342579A JP 15255998 A JP15255998 A JP 15255998A JP 15255998 A JP15255998 A JP 15255998A JP H11342579 A JPH11342579 A JP H11342579A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 画像濃度データとスタイラス変位との関係
を示す基準特性を作成する際に、ハイライト側部分の精
度を向上させる。 【解決手段】 この装置は、光学顕微鏡41等を含むセ
ルサイズ計測手段と、ゲイン演算手段と、低画像濃度デ
ータ演算手段と、基準特性作成手段とを備えている。セ
ルサイズ計測手段はシリンダ表面に彫刻されたセルのサ
イズを計測する。ゲイン演算手段は、少なくとも高画像
濃度データを含む画像濃度データに基づいて彫刻された
セルサイズデータに基づき、彫刻信号を構成するゲイン
を最適化する。低画像濃度データ演算手段は、ゲイン演
算手段によって最適化されたゲインの値を利用して、指
定された低画像濃度側セルサイズに対応する低画像濃度
データを求める。基準特性作成手段は、低画像濃度デー
タを含む複数画像濃度データに基づいてグラビアシリン
ダ表面に形成された複数のセルのサイズデータから、ス
タイラス変位調整のための調整用基準特性を作成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラビア彫刻機に
関し、特に、彫刻ヘッドに設けられたスタイラスによっ
てグラビアシリンダの表面に彫刻されるセルの深さを調
整するためのスタイラス変位調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】グラビア彫刻機は、表面に銅メッキが施
された円筒状のグラビアシリンダ(以下、単にシリンダ
と記す)を回転させながら、このシリンダ表面にセルと
呼ばれる四角錐状の微小な穴を形成する装置である。そ
して、セルの深さと幅とによって当該セルに挿入される
インキの量が制御され、画像濃度が表現されるようにな
っている。このような装置において、シリンダ表面にセ
ルを形成するためには彫刻ヘッドが用いられる。彫刻ヘ
ッドには先端にダイヤモンドの針(バイト)を有するス
タイラスが設けられており、このスタライスを数kHz
の周波数で振動させて彫刻を行っている。
【0003】図17は、彫刻ヘッドに印加される彫刻信
号を示したものであり、この彫刻信号の変位はスタライ
スの変位に相当している。彫刻信号は、図17(a)に
示すような高周波のキャリー信号と、図17(b)に示
すような画像データに基づく濃度信号とを重畳して得ら
れるものであり、彫刻信号vは、下式(1)で表され
る。下式(1)において、第1項は前記キャリー信号に
よるキャリー成分であり、第2項は前記濃度信号による
濃度成分であり、第3項はオフセットゲインである。オ
フセットゲインGsは、スタイラスをシリンダ表面から
離れる方向にシフトするための信号成分である。
【0004】 v=Dc・Gc+Dd・Gd+Gs (1) 但し、Dc;キャリー信号 Dd;濃度信号 Gc;キャリーゲイン Gd;濃度ゲイン Gs;オフセットゲイン このような彫刻信号を彫刻ヘッドに印加することによ
り、画像の濃度に対応する深さ及び幅のセルをシリンダ
表面に彫刻することができる。なお、図17(c)にお
ける一点鎖線Sがシリンダ表面に相当しており、図の斜
線領域で示す部分がセルに相当している。
【0005】前述のように、グラビア彫刻機では、セル
深さによって濃度を表現するようにしているので、セル
深さと濃度とは一対一の関係にする必要がある。しか
も、線数(画像の目の細かさに相当)にかかわらず、シ
リンダの軸方向に隣り合うセル間には土手と呼ばれる彫
刻されない部分を設ける必要がある。このため、濃度と
セル深さとの対応関係をセル形状(セルの配列により変
化)やセルの配列線数によって変えなければならない。
また、彫刻ヘッドやシリンダが交換される場合にも変位
調整が必要となる。なお、セル深さはセル幅(副走査方
向の幅)に一対一に対応するので、以後セル幅を調整す
ることによりセル深さを調整するものとする。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前記のようなグラビア
彫刻機におけるスタイラスの変位を自動的に調整するス
タイラス変位調整装置として、特開平6−191001
号公報に示された装置がある。この装置は、前記各条件
が変更される毎に試し彫りを行い、試し彫りによって彫
刻されたセルのセル幅(以下、セル幅の寸法を単にセル
サイズと記す)を画像情報として計測し、この計測結果
に基づいて前記3つのゲインを求めて彫刻信号を決定し
ている。そして、この決定された彫刻信号によりたとえ
ば濃度10%毎の複数のセルを彫刻してそのセルサイズ
を計測し、画像濃度とセル幅(スタイラス変位)との関
係を示す調整用の基準特性を得ている。以後、この基準
特性を利用して実際の画像情報に応じた彫刻処理が実行
される。
【0007】ここで、スタイラスは捩じりシャフトの先
端に固定されており、この捩じりシャフトが彫刻信号に
よって軸回りに微少に回転させられてスタイラス先端の
バイトがシリンダを彫刻するように構成されている。し
たがって、ハイライト側である低濃度側ではスタイラス
は比較的容易に駆動可能であるが、シャドー側である高
濃度側では捩じりシャフトがよりねじれにくくなってハ
イライト側よりは駆動しにくくなる。すなわち、捩じり
シャフト及びスタイラスを含む彫刻ヘッドの、画像濃度
とセル深さ(スタイラス変位)との関係を示す特性は、
図18に示すように上方に凸状の特性となる。
【0008】このような状況において、試し彫りによっ
て画像濃度とスタイラス変位との特性を得る場合、特性
の特に低濃度側部分のデータを精度良く得ることは困難
である。以下に、その理由を説明する。なお、ここで最
小セルとは、それ以上小さいセルを形成しても、実質的
に印刷ができない大きさのセルであり、印刷に使用する
インキの種類等によりそのサイズが決められる。
【0009】試し彫りによって彫刻信号のゲインを最適
化する場合、副走査方向において隣接するセル同士がつ
ながらないように、通常は、最もセル幅の大きい濃度1
00%のセルサイズを計測して決定する。したがって、
基準特性における高濃度側の画像濃度データとスタイラ
ス変位の関係については比較的精度がよい。しかし、前
記のように彫刻ヘッドの特性が上方に凸状であるため、
たとえば試し彫りによって彫刻された低濃度側のセルが
最小セルよりも大きかった場合、補間手法を用いても、
最小セルの位置では、図18に示すように誤差Δeを生
じる可能性が高い。
【0010】なお、図18において、「○」で示す位置
が試し彫りを行った点である。特に、試し彫りを行うに
際しては、その作業時間を短縮するために点数は少ない
方が有利であるが、点数を少なくすると前記誤差Δeが
大きくなる可能性が高く、基準特性を利用して実行デー
タを作成する際に正確なデータを作成することができな
くなってしまう。
【0011】本発明の課題は、画像濃度データとスタイ
ラス変位との関係を示す基準特性を作成する際に、特に
ハイライト側部分の特性を彫刻ヘッドの特性により近づ
け、低濃度側において精度の良いスタイラスの変位調整
を行うことができるようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1に係るスタイラ
ス変位調整装置は、スタイラスを駆動する彫刻信号を調
整することによってグラビアシリンダの表面に彫刻され
るセルの深さを調整するための装置であり、セルサイズ
計測手段と、ゲイン演算手段と、低画像濃度データ演算
手段と、基準特性作成手段とを備えている。
【0013】セルサイズ計測手段はグラビアシリンダ表
面に彫刻されたセルのサイズを計測する。ゲイン演算手
段は、少なくとも高画像濃度データを含む画像濃度デー
タに基づいて彫刻されたセルサイズデータに基づき、彫
刻信号を構成するゲインを最適化する。低画像濃度デー
タ演算手段は、ゲイン演算手段によって最適化されたゲ
インの値を利用して、指定された低画像濃度側セルサイ
ズに対応する低画像濃度データを求める。基準特性作成
手段は、低画像濃度データを含む複数画像濃度データに
基づいてグラビアシリンダ表面に形成された複数のセル
のサイズデータから、スタイラス変位調整のための調整
用基準特性を作成する。
【0014】この装置では、まず少なくとも高画像濃度
データを含む画像濃度データに基づいてシリンダ表面に
セルを形成する。これにより、たとえばセルサイズの最
も大きい画像濃度100%のセルを形成した場合でも、
副走査方向に隣接するセル同士がつながらないようにゲ
インが最適化された彫刻信号が得られる。次にこの最適
化されたゲインの値を利用して、指定された低画像濃度
側のセルサイズ(たとえば最小セルサイズ)が得られる
ような画像濃度データを演算により求める。次に、この
演算により求められた低画像濃度データを含む複数画像
濃度データによりシリンダ表面に複数のセルを彫刻す
る。そして、この彫刻された複数のセルサイズを計測
し、画像濃度とスタイラス変位の関係を示す基準特性を
作成する。
【0015】ここでは、指定されたサイズの低画像濃度
側のセルを得るために、当該セルサイズに対応する低画
像濃度データを演算により求め、このデータを用いてセ
ルを彫刻する。したがって、基準特性を作成する際に、
低画像濃度側の実際のセルのサイズを用いて基準特性を
作成でき、スタイラスを含む彫刻ヘッドの特性により近
い基準特性が得られる。
【0016】請求項2に係るスタイラス変位調整装置
は、請求項1の装置において、低画像濃度データ演算手
段は、実質的に印刷が可能な最小セルのサイズに対応す
る低画像濃度データを求める。最小セルは、印刷に使用
するインキの種類等によりサイズが決められるが、この
最小セルを指定することによって最小セルに対応する低
画像濃度データ、すなわち最小セルを彫刻できる低画像
濃度データを得ることができる。したがって、最小セル
そのものを実際にシリンダに彫刻でき、基準特性の最小
セルに対応する点を正確に求めることができる。
【0017】請求項3に係るスタイラス変位調整装置
は、請求項1の装置において、低画像濃度データ演算手
段は、実質的に印刷が可能な最小セルよりも小さいセル
のサイズに対応する低画像濃度データを求める。ここで
は、最小セルよりも小さいサイズのセルが得られるよう
な低画像濃度データを求め、このデータによって最小セ
ルよりも小さいセルを彫刻する。そして、このセルを含
む複数のセルサイズを計測して基準特性を作成する。
【0018】この場合は、最小セルを得るための低画像
濃度データを内挿補間によって求めることができ、最小
セルに対応する低画像濃度データが比較的精度良く得ら
れる。請求項4に係るスタイラス変位調整装置は、請求
項1の装置において、低画像濃度データ演算手段は、実
質的に印刷が可能な最小セル及び最小セルよりも小さい
セルのサイズに対応する低画像濃度データを求める。
【0019】この場合は、最小セル及びそれより小さい
セルのサイズを計測して基準特性を作成でき、前記同様
に最小セルに対応する低画像濃度データを正確に得るこ
とができる。また、ここでは、最小セル及びそれより小
さいセルを形成するので、最小セルよりも大きいセルの
彫刻点数を減らしても、最小セル付近の低画像濃度側の
セルに対応する画像濃度データを補間により精度良く求
めることができる。
【0020】請求項5に係るスタイラス変位調整装置
は、請求項1から4のいずれかの装置において、低画像
濃度データ演算手段は、スタイラスの振幅中心がスタイ
ラス静止時のスタイラス先端位置になるようにして彫刻
したときのセルサイズと、スタイラスがグラビアシリン
ダ表面と接触する状態の画像濃度データの目標値で彫刻
したときのセルサイズとに基づく比例計算により指定さ
れたサイズのセルに対応する低画像濃度データを求め
る。
【0021】ここでは、指定されたサイズのセルに対応
する低画像濃度データを簡単な演算で求めることができ
る。請求項6に係るスタイラス変位調整装置は、請求項
1から5のいずれかの装置において、セル計測手段は、
セルのサイズデータとしてセルの副走査方向の幅を計測
する。
【0022】セルの幅をセルサイズとして計測すること
により、カメラ等によって容易に画像情報として得るこ
とができる。
【0023】
【発明の実施の形態】[全体構成]図1及び図2に本発
明のグラビア彫刻機の一実施形態を示す。このグラビア
彫刻機は、ベッド1と、ベッド1の上面に固定された主
軸台2と、主軸台2と対向して配置された芯押し台3
と、第1テーブル4及び第2テーブル5とを備えてい
る。芯押し台3は、ベッド1の上面に配置された1対の
ガイドレール6に沿って装置の左右方向(副走査方向)
に移動自在である。そして、ベッド側部に設けられたモ
ータ及びベルト等からなる駆動機構9によって、芯押し
台3は主軸台2に対して接近または離反可能である。な
お、芯押し台3のセンタ12は、シリンダ13によって
出没自在である。第1テーブル4及び第2テーブル5
は、ベッド1の上面に配置された1対のガイドレール7
に沿って左右方向に移動自在である。各テーブル4,5
は、1対のレール7間に配置されたボールねじ15及び
これを駆動するための駆動モータ16によってレール7
に沿って移動可能である。主軸台2の主軸10は、駆動
モータ及びベルト等からなる駆動機構11によって回転
させられるようになっている。このような構成におい
て、クラビアシリンダ(以下、単にシリンダと記す)C
は、図1の二点鎖線で示すように、主軸10とセンタ1
2との間に支持される。
【0024】第1及び第2テーブル4,5には、彫刻ヘ
ッド21が、装置の前後方向に移動自在に設けられてい
る。そして各テーブル4,5上面には、ガイドレール2
0が設けられ、ボールねじ22及び駆動モータ23から
なる駆動機構によって彫刻ヘッド21が移動させられる
ようになっている。 [スタイラス及びその駆動機構]図3に、彫刻ヘッド2
1に設けられたスタイラス及びその駆動機構を示す。
【0025】スタイラス30は捩じりシャフト31の先
端に固定されており、その一端にはダイヤモンドバイト
32が装着されている。捩じりシャフト31の他端部は
固定部33に固定されている。また捩じりシャフト31
の中間部には、平面視菱形のロータ34が固定されてい
る。ロータ34の周囲にはロータ34を挟み込むように
積層磁性体(ステータ)35が配置されており、このス
テータ35の側部にはステータ35に磁力を与えるため
の永久磁石36が配置されている。また、ロータ34の
周囲でロータ34とステータ35との間には、コイル3
7が配置されている。このような構成では、コイル37
に彫刻信号を印加することにより、スタイラス30は図
の矢印方向に彫刻信号の周波数に応じて振動する。
【0026】また、図4に模式的に示すように、彫刻ヘ
ッド21には、先端がシリンダCの表面に当接するシュ
ー39が設けられている。そして、シュー39がグラビ
アシリンダCの表面に押し当てられたとき、スタイラス
30のバイト32の先端とグラビアシリンダCの表面と
の間には、所定のギャップ量sが確保されるようになっ
ている。なお、この図4は各部を模式的に示したもので
あり、実際の寸法関係とは異なっている。通常、ギャッ
プ量sは、前述のように、数μm程度に設定される。
【0027】[制御ブロック]本装置の制御ブロックを
図5に示す。この装置はCPU、RAM及びROM等か
らなるマイクロコンピュータを含むコントローラ40を
有している。また、主軸台2と芯押し台3との間に配置
されたシリンダCの側端部に近い表面に対向して、シリ
ンダ表面に形成されたセルの形状を観測するための光学
顕微鏡41が配置されている。図5では便宜上別々に示
しているが、光学顕微鏡41は、彫刻ヘッド21に装着
されており、彫刻ヘッド21とともにグラビアシリンダ
Cに対して接近または離反自在となっている。また、装
置の左右方向に移動自在である。光学顕微鏡41にはフ
ァイバーケーブル42を介してストロボ光源43が接続
されている。またストロボ光源43にはストロボ電源4
4が接続されている。このストロボ光源43によって所
定の周波数でストロボを発光させることにより、グラビ
アシリンダを回転させながらシリンダ表面の1か所を静
止画として観測することが可能となる。光学顕微鏡41
にはCCD45が設けられている。CCD45で得られ
た画像情報はカメラコントローラ46に入力されるよう
になっている。カメラコントローラ46は画像処理装置
47に接続されている。
【0028】画像処理装置47にはCRTモニタ48が
接続されている。画像処理装置47にはカメラコントロ
ーラ46からビデオ信号が入力され、画像処理装置47
からCRTモニタ48に対してはモニタ信号が送出され
る。画像処理装置47はカメラコントローラ46からの
ビデオ信号をもとにセルサイズデータを演算するための
装置である。この画像処理装置47とコントローラ40
とはRS232Cを介して互いに接続されている。
【0029】コントローラ40は、CPU、RAM、R
OM等を有するマイクロコンピュータを含んでおり、画
像処理装置47からのデータをもとに彫刻信号を調整す
るための機能を有している。コントローラ40から出力
された彫刻信号は、駆動アンプ49を介して彫刻ヘッド
21に与えられる。彫刻ヘッド21内では、駆動アンプ
49からの彫刻信号がコイル37に供給される。また、
シリンダCの回転位置はエンコーダ50によって検出さ
れるようになっており、このエンコーダ50の出力信号
がコントローラ40に入力されるようになっている。ま
た、コントローラ40はカメラコントローラ46に対し
てタイミングパルスを送出し、カメラコントローラ46
はストロボ電源44に対してストロボを発光させるため
のストロボタイミング信号を送出する。なお、コントロ
ーラ40には他の入出力部が接続されている。
【0030】[制御処理]次に、図6〜図8に示すフロ
ーチャートにしたがって本装置の制御動作を説明する。 <全体制御>装置の起動スイッチがオンされると、まず
ステップS1において初期設定がなされる。この初期設
定では、各部を初期位置に移動させる等の処理を行う。
次にステップS2では、セルモニタモードが選択された
か否かを判断する。このセルモニタモードは、シリンダ
に対して試験的に彫刻を行い、スタイラスの変位調整す
なわちセル深さの調整を行うためのモードである。また
ステップS3では彫刻開始指令がなされたか否か、ステ
ップS4ではその他の処理が選択されたか否かを判断す
る。
【0031】セルモニタモードが選択された場合には、
プログラムはステップS2からステップS5に移行し、
後述するスタイラス変位調整処理を実行する。またスタ
イラスの変位調整が終了して彫刻の開始が選択された場
合にはステップS3からステップS6に移行する。ステ
ップS6では、グラビアシリンダの表面に画像情報に応
じた彫刻処理が実行される。またその他の処理が選択さ
れた場合には、ステップS4からステップS7に移行
し、選択された処理を実行してステップS2に戻る。
【0032】<調整処理>次に、スタイラス変位調整処
理について説明する。ここで、セル配列線数の変化に伴
い変化する各種のセル形状における、画像濃度とセル深
さとの関係を図9に示す。セル配列線数の変化に伴うセ
ル形状の種類としては、コンプレストセル、エロンゲー
トセル、ファイン等があり、このセル形状の種類の違い
によって画像濃度とセル深さとの関係が図に示すように
異なる。ここで、コンプレストセル(175L/i)を
例にとって説明すると、スタイラス変位は図の実線aに
示されるような特性に調整されなければならない。これ
は、画像濃度100%ではセル深さを42μmとし、画
像濃度5%ではセル深さを8μmとし、また画像濃度0
%ではスタイラスが変位してもシリンダ表面が彫刻され
ないようにスタイラスとシリンダ表面との間に所定のギ
ャップ(5μm程度)が生じるようにするためである。
このとき、試し彫りによって得られるデータから調整用
基準特性(図9の破線bで示す特性)を求め、この特性
を実線aのデータに補正して彫刻信号を作成する。
【0033】コントローラ40で作成される彫刻信号v
は前述の式(1)で表される。式(1)における定数G
c,Gd,Gsがセル形状やセル配列線数あるいはシリ
ンダ径などの彫刻パラメータの変更に応じて調整される
べきゲインである。なお、キャリーゲインGcは出力波
形の振幅に対応し、濃度ゲインGdは図9における破線
の特性bの傾きを示し、オフセットゲインGsはキャリ
ー信号中心部のシリンダ表面からのシフト量を示してい
る。
【0034】前記各ゲインは図7及び図8に示すフロー
チャートにしたがって求められる。まずステップS10
では、セル形状やセル配列線数、シリンダ径やスタイラ
スの刃先の角度等の彫刻パラメータがオペレーターによ
って入力されるのを待つ。また、このステップS10に
おいて、低濃度側のセルのサイズデータとして、最小セ
ルサイズデータを入力する。彫刻パラメータが入力され
ると、ステップS11において各パラメータ及び画像濃
度100%における目標セルサイズデータ、すなわち目
標となる画像濃度100%のセルのセルサイズデータを
コントローラ40に設定する。次にステップS12で
は、濃度ステップパターンを彫刻する。ここでは、前回
既に各ゲインが本処理によって求められている場合に
は、前回のゲインを用いて10%濃度毎にセルが形成さ
れるような彫刻信号を出力する。これにより、シリンダ
Cには、10%濃度ごとのセルが彫刻される。また、各
ゲインの値が求められていない場合には、それぞれのゲ
インを予め設定された初期値(Gc=Gc0 ,Gd=G
d0 ,Gs=Gs0 )として10%濃度毎のセルを彫刻
する。
【0035】次にステップS13では、光学顕微鏡41
によりセルを観測し、得られた画像情報からセルサイズ
を得る、具体的には、セルを観測してカメラコントロー
ラ46に対して制御信号を送出し、光学顕微鏡41の焦
点をシリンダ表面に合わせる。また、シリンダの回転数
と前述したセル配列線数とに応じてタイミングパルスを
カメラコントローラ46に送出し、そのタイミングでス
トロボを発光させる。これにより、光学顕微鏡41によ
りシリンダCに彫刻された所定位置のセル形状を観測す
ることが可能となる。
【0036】ここで、光学顕微鏡41の焦点をシリンダ
表面に合わせる場合には、CCD45で取り込んだセル
画像の濃度ヒストグラムを作成し、最大コントラストが
得られるまで光学顕微鏡41を前進あるいは後退させ
る。このようにして最大コントラストが得られた光学顕
微鏡位置がフォーカス位置である。このような制御は画
像処理装置47によって行われる。あるいは、別途オー
トフォーカス用の距離センサからの信号により光学顕微
鏡を位置決めしてもよい。
【0037】このようにして得られたセル形状の画像デ
ータは、ビデオ信号としてカメラコントローラ46から
画像処理装置47に送られる。そして、セルサイズが計
測されてコントローラ40に取り込まれる。ステップS
14では、取り込まれたセルサイズデータをもとに、セ
ルサイズが許容値内であるか否かを判断する。ここで、
10%濃度毎にセルが彫刻されているが、許容値内にあ
るか否かの判断は前記目標セルサイズを設定した画像濃
度、すなわち画像濃度100%のセルによって行う。な
お、ステップS11で目標セルサイズを他の画像濃度で
設定した場合はその画像濃度で前記の判断を行う。この
時点で計測されたセルサイズが許容値内にある場合に
は、ステップS25のデータ補正処理に移行する。たと
えばシリンダのみを交換し、他の条件が変更されていな
い場合には、前回得られた各ゲインの値を使える場合が
多い。この場合にはステップS14でYESと判断され
る場合が多く、各ゲインを決定する処理を行わず、ステ
ップS25のデータ補正処理のみを行うことにより時間
短縮を図ることができる。
【0038】ステップS14でセルサイズが許容値にな
いと判断された場合は、ステップS15に移行する。ス
テップS15では、各ゲインGc,Gd,Gsを初期値
とし、画像濃度100%として式(1)にしたがって彫
刻信号を作成して彫刻を行う。次にステップS16で
は、前記同様にして彫刻されたセルを観測してセルサイ
ズを計測し、セルサイズが許容値内になるまでキャリー
ゲインGc及び濃度ゲインGdを変更しながら彫刻及び
セルサイズ計測の各処理を繰り返す。そして、画像濃度
100%のセルサイズが許容値内に入った場合はステッ
プS17に移行し、最終的に得られたキャリーゲインG
cを決定する。
【0039】次にステップS18において画像濃度0%
で彫刻されるような彫刻信号によってセルを形成する。
このとき、オフセットゲインGsは予め設定された初期
値Gs0を用い、キャリーゲインGcはステップS17
で決定されたGcを用い、式(1)にしたがった画像濃
度0%の彫刻信号を作成する。ステップS19では、セ
ルを観測することによりセルサイズを計測し、シリンダ
表面が彫刻されているか否かを判断する。そして、彫刻
されている場合には、オフセットゲインを増やしながら
彫刻及びセルサイズ計測を繰り返し、彫刻されなくなっ
た時点で次のステップに移行する。逆に彫刻されなかっ
た場合には、オフセットゲインを減らしながら彫刻及び
セルサイズ計測を繰り返し、彫刻された時点で次のステ
ップに移行する。このようにしてステップS20に移行
してオフセットゲインGsを決定する。
【0040】次にステップS21に移行し、濃度ゲイン
Gdを演算により求める。ここでは、 Gd=Gd0+(Gs−Gs0)/228 に基づいて計算する。ここで、上式における「228」
は画像濃度100%のステップ数に相当するものであ
る。
【0041】次にステップS22では、以上の処理によ
り求められた各ゲインの値を利用して、ステップS11
で指定された最小セルのセルサイズデータ(幅データ)
に対応する画像濃度データを求める。この最小セルのサ
イズデータからそれに対応する画像濃度データを求める
演算処理については後述する。ステップS23では、図
10に示すように、最小セル対応の画像濃度xとシャド
ー側の画像濃度100%との間を均等割りして、最小セ
ル対応の画像濃度を含む複数の画像濃度の濃度ステップ
パターンを彫刻する。そしてステップS24において
は、前記同様にシリンダ表面に形成された複数のセルを
観測してセルサイズを計測する。そして、これらの計測
結果に基づき、ステップS25において図9の破線bで
示す調整用基準特性を作成する。
【0042】次にステップS26では、濃度に対応する
実際のセル深さが、当該調整用基準特性に基づいて実線
aで示す特性となるように濃度データを書き換える。す
なわち、図11に示すように、調整用基準特性bが得ら
れると、元の画像データである特性aの濃度データを、
対応する調整用基準特性b上における画像データに書き
換えてデータ補正を行う。特性bはある関数で表され、
また特性aも関数で表される。従って、例えば濃度e1
及びe2を、2つの関数式を用いて濃度データe3及び
e4に補正する。このようにして、たとえば濃度e1の
セルを形成する場合は、調整用基準特性b上では濃度e
3に相当するので、e1をe3に補正して彫刻信号を作
成する。これにより、形成されたセルによる濃度はe1
となる。
【0043】<最小セル対応の画像濃度データについて
>次に、前述のステップS22における、指定されたサ
イズの最小セルを彫刻するための画像濃度データを求め
る処理について説明する。ここでは、スタイラスのシフ
ト量(シフトゲインGs)と画像濃度データによる変位
量(画像濃度データと濃度ゲインGdとの積)とが同等
となるような画像濃度データdを考えると、スタイラス
の変位は図12に示すようになる。この場合、スタイラ
ス静止時のスタイラス先端の位置がスタイラスの振幅中
心となっており、振幅中心は、シリンダ表面からスタイ
ラスのギャップsをセル幅換算した値Sだけ離れた位置
になる。この図12を参考にして、画像濃度データdの
時のセル幅はW0、画像濃度データx0の時のセル幅は
「0」として比例計算を行うと、彫刻したいセル幅を
y、これに対応する画像濃度データをxとして、 (d−x0):(x−x0)=W0:y であり、これから、 x=(d−x0)・y・W0+x0 (2) となる。ここで、濃度データdは、前述の条件、すなわ
ち「スタイラスのシフト量(シフトゲインGs)と画像
濃度データによる変位量(画像濃度データと濃度ゲイン
Gdとの積)とが同等となるような画像濃度データd」
という条件から、各ゲインとの関係が、 d・Gd=Gs である。したがって、 d=Gs/Gd となり、前述のゲイン調整処理によって得られた各ゲイ
ンの値を利用して求められる。また、x0は、スタイラ
スがシリンダ表面と接触する画像濃度データの目標値で
あり、この値は既定値(通常「28」)である。さら
に、画像濃度データdの場合のセル幅W0は、図12か
ら明らかなように、 W0+S=A/2 但し、 S:スタイラスとシリンダとのギャップで、セル幅に換
算した値 A:彫刻信号のキャリー成分によるスタイラスの振幅
で、セル幅換算値 であるから、 W0=A/2−S として求められる。
【0044】ここで、スタイラスの振幅Aは、前述のゲ
イン決定処理が終了した時点でのセルサイズ計測によっ
て得られたセル幅W1及びチャネル幅W2から求めるこ
とができる。なお、チャネル幅とは、主走査方向に隣り
合うセルの間に形成されたチャネル(セルの形成されて
いない部分)の幅である。図13を参照して、セル幅W
1はスタイラス変位の最大値に相当し、チャネル幅W2
は最小値に相当する。これらから、スタイラスの振幅A
は、 A=W1−W2 となる。
【0045】また、ギャップ(セル幅換算値)Sは、実
際のスタイラスとシリンダとの間のギャップ量をsとし
た場合、 S=a・s となる。但し、aは変位量をセル幅に変換する変換係数
である。ここで、図14に示すように、スタイラスの刃
先角度をφ(度)、セル幅をW、セルの深さ(変位)を
Dとすると、 D=W・tan{π(180−φ)/360}/2 である。したがって、前述の変換係数aは、 a=2/tan{π(180−φ)/360} である。
【0046】以上から、最小セル幅y(スタイラス変
位)を得たい場合の画像濃度データxは、各値を式
(2)に代入して得ることができる。このようにして、
最小セル幅を有するセルを含む複数のセルを形成して特
性を作成するので、従来の特性に比較して、特に低濃度
側の特性を実際のヘッドの特性に近づけることができ、
精度の良いスタイラスの変位調整を行うことができる。
【0047】[他の実施形態] (a)ステップS23において試し彫りを行うセルの画
像濃度は、図10に示すようなものに限定されない。図
15に示すように、最小セルよりも若干小さいサイズの
セルに対応する低濃度側の画像濃度を求め、この画像濃
度と画像濃度100%との間を均等割りして、試し彫り
を行うようにしてもよい。
【0048】さらに、図16に示すように、前記図10
及び図15に示す実施形態に比較して、最小セルに対応
する画像濃度と画像濃度100%との間の試し彫り点数
を1個減らして均等割りするとともに、最小セルよりも
小さいセルに対応する画像濃度x'の試し彫り点を加え
てもよい。なお、最小セル対応の画像濃度xとそれより
小さいセルに対応する画像濃度x'との間隔は、他の複
数の画像濃度の間隔nの1/4程度が好ましい。
【0049】この場合は、先の実施形態と試し彫り点数
の個数は同じで、しかも最小セル対応の画像濃度近傍の
補間が内挿補間により精度良く行える。
【0050】
【発明の効果】本発明は、セルサイズを計測して得られ
た彫刻信号の最適ゲイン値等を利用して、指定された低
濃度側のセルサイズに対応する画像濃度データを求め、
これにより試し彫りを行って画像濃度とスタイラス変位
との関係を示す基準特性を得るので、特に低濃度側にお
いてスタイラス変位と画像濃度とを精度良く対応させる
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例が採用されたグラビア彫刻機
の正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】彫刻ヘッドに設けられたスタイラス及びその駆
動機構を示す斜視図。
【図4】スタイラスのギャップを示す模式図。
【図5】本装置の制御ブロック図。
【図6】本装置の制御フローチャート。
【図7】スタイラス変位調整処理を行う制御フローチャ
ート。
【図8】スタイラス変位調整処理を行う制御フローチャ
ート。
【図9】各種の線数における画像濃度とセル深さとの関
係を示す図。
【図10】基準特性を作成するための試し彫りの点を示
す図。
【図11】図9の一部拡大図。
【図12】比例計算により所望のセル幅の画像濃度を得
る場合の説明図。
【図13】スタイラスの振幅とセル幅及びチャネル幅と
を関係を示す図。
【図14】スタイラスの刃先角度、幅及び深さの関係を
示す図。
【図15】他の実施形態の図10に相当する図。
【図16】さらに他の実施形態の図10に相当する図。
【図17】彫刻信号の波形図。
【図18】従来の問題点を説明するための特性図。
【符号の説明】
C グラビアシリンダ 21 彫刻ヘッド 30 スタイラス 40 コントローラ 41 光学顕微鏡 45 CCD 46 カメラコントローラ 47 画像処理装置

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スタイラスを駆動する彫刻信号を調整する
    ことによってグラビアシリンダの表面に彫刻されるセル
    の深さを調整するためのグラビア彫刻機のスタイラス変
    位調整装置であって、 前記グラビアシリンダ表面に彫刻されたセルのサイズを
    計測するセルサイズ計測手段と、 少なくとも高画像濃
    度データを含む画像濃度データに基づいて彫刻されたセ
    ルサイズデータに基づき、前記彫刻信号を構成するゲイ
    ンを最適化するゲイン演算手段と、 前記ゲイン演算手段によって最適化されたゲインの値を
    利用して、指定された低画像濃度側セルサイズに対応す
    る低画像濃度データを求める低画像濃度データ演算手段
    と、 前記低画像濃度データを含む複数画像濃度データに基づ
    いて前記グラビアシリンダ表面に形成された複数のセル
    のサイズデータから、スタイラス変位調整のための調整
    用基準特性を作成する基準特性作成手段と、を備えたグ
    ラビア彫刻機のスタイラス変位調整装置。
  2. 【請求項2】前記低画像濃度データ演算手段は、実質的
    に印刷が可能な最小セルのサイズに対応する低画像濃度
    データを求める、請求項1に記載のグラビア彫刻機のス
    タイラス変位調整装置。
  3. 【請求項3】前記低画像濃度データ演算手段は、実質的
    に印刷が可能な最小セルよりも小さいセルのサイズに対
    応する低画像濃度データを求める、請求項1に記載のグ
    ラビア彫刻機のスタイラス変位調整装置。
  4. 【請求項4】前記低画像濃度データ演算手段は、実質的
    に印刷が可能な最小セル及び前記最小セルよりも小さい
    セルのサイズに対応する低画像濃度データを求める、請
    求項1に記載のグラビア彫刻機のスタイラス変位調整装
    置。
  5. 【請求項5】前記低画像濃度データ演算手段は、前記ス
    タイラスの振幅中心が前記スタイラス静止時のスタイラ
    ス先端位置になるようにして彫刻したときのセルサイズ
    と、前記スタイラスが前記グラビアシリンダ表面と接触
    する状態の画像濃度データの目標値で彫刻したときのセ
    ルサイズとに基づく比例計算により前記指定されたサイ
    ズのセルに対応する低画像濃度データを求める、請求項
    1から4のいずれかに記載のグラビア彫刻機のスタイラ
    ス変位調整装置。
  6. 【請求項6】前記セル計測手段は、セルのサイズデータ
    としてセルの副走査方向の幅を計測する、請求項1から
    5のいずれかに記載のグラビア彫刻機のスタイラス変位
    調整装置。
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