JPH11339561A - セラミック素子、セラミック素子の製造方法、表示装置、リレー装置及びコンデンサ - Google Patents

セラミック素子、セラミック素子の製造方法、表示装置、リレー装置及びコンデンサ

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JPH11339561A
JPH11339561A JP14617098A JP14617098A JPH11339561A JP H11339561 A JPH11339561 A JP H11339561A JP 14617098 A JP14617098 A JP 14617098A JP 14617098 A JP14617098 A JP 14617098A JP H11339561 A JPH11339561 A JP H11339561A
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JP
Japan
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ceramic element
film
electrodes
antiferroelectric
displacement
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Withdrawn
Application number
JP14617098A
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English (en)
Inventor
Yukihisa Takeuchi
幸久 武内
Toshikatsu Kashiwaya
俊克 柏屋
Nobuo Takahashi
伸夫 高橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NGK Insulators Ltd
Original Assignee
NGK Insulators Ltd
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Publication date
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01HELECTRIC SWITCHES; RELAYS; SELECTORS; EMERGENCY PROTECTIVE DEVICES
    • H01H57/00Electrostrictive relays; Piezo-electric relays
    • H01H2057/006Micromechanical piezoelectric relay
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01HELECTRIC SWITCHES; RELAYS; SELECTORS; EMERGENCY PROTECTIVE DEVICES
    • H01H57/00Electrostrictive relays; Piezo-electric relays

Abstract

(57)【要約】 【課題】印加電圧に応じて機械的変位量をアナログ的に
変化させ、駆動電圧の印加終了後における電圧無負荷状
態において、駆動電圧印加時と同等の変位量を維持させ
る。 【解決手段】反強誘電体膜22と該反強誘電体膜22の
一主面(表面)に形成された一対の電極24a及び24
bとを有するアクチュエータ部本体26と、該アクチュ
エータ部本体26を支持する振動部18と、該振動部1
8を振動可能に支持する固定部20とを設けて構成し、
更に、分極後の反強誘電体膜22が、一対の電極24a
及び24bに印加される電圧Vに応じて、その平均誘電
率がアナログ的に増加する領域Ztを有するように構成
する。具体的には、反強誘電体膜22の平均膜厚をt、
一対の電極24a及び24b間のピッチをpとしたと
き、p/t≦2.5を満足するように構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アクチュエータ、
各種振動子、ディスプレイ、リレー等に用いられる電気
エネルギーを機械エネルギーに変換する素子ないしは、
フィルタ、共振回路等に用いられるコンデンサ素子であ
って、特に反強誘電相−強誘電相転移を利用したセラミ
ック素子と、該セラミック素子を画素の表示駆動に利用
した表示装置と、前記セラミック素子をリレーのスイッ
チング駆動に利用したリレー装置と、前記セラミック素
子を容量可変に利用したコンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、光学や精密加工等の分野におい
て、サブミクロンのオーダーで光路長や位置を調整する
変位素子が所望されるようになってきている。
【0003】これに応えるものとして、強誘電体等の圧
電材料に電界を加えた時に起きる逆圧電効果に基づくと
ころの変位の発現を利用したアクチュエータの開発が進
められている。
【0004】その中で、本出願人にあっても、先に、特
開平3−128681号公報や特開平5−49270号
公報等において、各種の用途に好適に用いられるセラミ
ックス製の圧電/電歪膜型素子を提案している。
【0005】前記提案例に係る圧電/電歪膜型素子は、
小型で安価な、高信頼性の電気機械変換素子であるとと
もに、低い駆動電圧にて大変位を得られ、また応答速度
が速く、かつ発生力も大きいという優れた特徴を有して
おり、アクチュエータ、ディスプレイ、リレー等の構成
部材等として有用である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記圧電/
電歪膜型素子は、圧電/電歪作動部(アクチュエータ
部)に電圧を印加することによって、その逆圧電効果あ
るいは電歪効果で機械的変位を得るようにしているた
め、印加電圧に対して変位量の大小を精密に制御可能な
利点を有する反面、微細な素子では大きな変位の発生力
を得ることが困難であるという欠点を有する。
【0007】また、圧電/電歪膜型素子は、一方向に変
位した状態を一定時間にわたって維持する必要がある場
合には、圧電/電歪膜作動部に対して電圧を印加し続け
る必要がある。
【0008】このため、例えば本発明者らが特開平7−
287176号公報で開示したような表示装置に適用す
る場合、発光状態を維持する必要のある期間中、前記圧
電/電歪膜作動部に電圧を印加しつづけなければならな
い。
【0009】この場合、多数の発光素子が2次元的に配
列されて構成される表示装置等を作製する際に、駆動用
の電気配線を1素子ずつ独立して配設する必要があり、
設計的、製造的に大きな制約となる。
【0010】本発明は、このような課題を考慮してなさ
れたものであり、印加電圧に対応して変位量の大小を精
密に制御可能であって、かつ、微細な素子においても、
圧電/電歪膜型素子を上回る大きな変位発生力を得るこ
とが可能なセラミック素子を提供することを目的とす
る。
【0011】また、本発明の他の目的は、前記条件に加
えて、駆動電圧の印加終了後における電圧無負荷状態な
いし低負荷状態において、駆動電圧印加時とほぼ同等の
変位量を維持することができるセラミック素子を提供す
ることを目的とする。
【0012】また、本発明の他の目的は、前記条件に加
えて、様々なアプリケーション(表示装置やフィルタ
等)を構成した場合に、駆動用の電気配線を簡素化で
き、製造コストの低廉化を有効に図ることができるセラ
ミック素子を提供することにある。
【0013】また、本発明の他の目的は、低消費電力
で、駆動用の電気配線を簡素化でき、製造コストやラン
ニングコストの低廉化を有効に図ることができる表示装
置を提供することにある。
【0014】また、本発明の他の目的は、低消費電力
で、駆動用の電気配線を簡素化でき、もって製造コスト
やランニングコストの低廉化を有効に図ることができ、
しかもスイッチング操作の多様化を図ることができるリ
レー装置を提供することにある。
【0015】また、本発明の他の目的は、容量がアナロ
グ的に変化する容量可変コンデンサを簡単に、かつ、薄
型に構成することができ、可変コンデンサが組み込まれ
たパラメトリック増幅器や周波数自動制御回路(AF
C)並びに各種通信機器等の小型化を促進させることが
できるコンデンサを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明に係るセラミック
素子は、反強誘電体膜と該反強誘電体膜に形成された少
なくとも一対の電極とを有する作動部と、前記作動部を
支持する振動部と、前記振動部を振動可能に支持する固
定部とを設けて構成する。
【0017】ここで、反強誘電体膜の動作原理について
説明する。反強誘電体膜においては、強誘電相が温度、
応力、電界などの変化によって誘起されたとすると、そ
の歪みxF は、以下の式で与えられる。
【0018】xF =Q(1+Ω)PF 2 但し、PF は強誘電的分極でPF =(Pa+Pb)/2
であり、Pa及びPbは副格子分極を示す。
【0019】ペロブスカイト型結晶では、電歪定数Qh
(=Q11+2Q12)が正値をとるため、通常の強誘電体
の自発体積歪みは常に正であるのに対して、反強誘電体
では、Ωの値によってその自発歪みxA は正にも負にも
なり得る。なお、ジルコン酸鉛(PbZrO3 )ではΩ
=1.8である。
【0020】仮に、反強誘電相−強誘電相転移の前後で
副格子分極の絶対値|Pa|,|Pb|があまり変化し
ないと考えた場合、この転移に伴う歪み変化量Δxは、 Δx=xF −xA =2QΩPF 2 となる。また、反強誘電相−強誘電相転移を利用する方
が、常誘電相−反強誘電相転移を用いるよりも大きな変
位が得られることが知られている。
【0021】例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)
派生系セラミックス(多結晶体)は、高温相の立方晶常
誘電相から温度の降下につれて擬正方晶反強誘電相、斜
方晶強誘電相へと逐次転移を示すことが知られている。
従って、室温での反強誘電相が安定な組成を選ぶと、外
部電界の印加によって容易に強誘電相を誘起することが
可能であり、それに付随して大きな歪みの変化が行われ
ることが予想される。
【0022】そして、強誘電相が誘起されると電界を零
にしても反強誘電相に戻ることはなく、「強誘電相の歪
みの状態を記憶する効果(形状記憶効果)」を示す。元
の反強誘電状態に戻すには、小さな逆バイアス電界を印
加する、あるいは昇温アニールすればよい。
【0023】つまり、反強誘電体は、外部電界の印加に
より電界誘起相転移を生じるため、前記一対の電極に所
定電圧以上の電圧を印加することにより、反強誘電相か
ら強誘電相に相転移して体積変化し、容易に機械的変位
を得ることができる。
【0024】この変位量は、前記相転移に伴うことか
ら、圧電/電歪素子のように、印加電圧値によって変位
量の大小を精度よく制御することはできないが、逆に印
加電圧を下げても、該印加電圧が、強誘電相から元の反
強誘電相に相転移する所定の電圧まで下がらなければ前
記変位を維持しつづけることができるという特性を示
す。
【0025】これを知って、本発明に係るセラミック素
子をみると、該セラミック素子は、固定部にて振動可能
に支持された振動部上に反強誘電体膜を有する作動部が
形成されたかたちとなるため、一対の電極に所定電圧を
印加することにより、作動部における反強誘電体膜は、
前記所定電圧による外部電界によって電界誘起相転移が
生じ、その相転移に伴って機械的変位が発生する。この
変位は振動部によって増幅され、作動部は一方向(例え
ば作動部が自由空間を臨む方向)に変位することにな
る。
【0026】一旦、作動部が一方向に変位した場合、一
対の電極への電圧印加を停止(例えば電界=0)して
も、その変位はそのまま維持される。そのため、作動部
に生じた変位を一定期間にわたって維持する必要がある
場合においても、一対の電極に電圧を印加し続ける必要
がなくなる。なお、作動部に生じた変位を元に戻すに
は、一対の電極に小さな逆バイアス電圧、具体的には、
強誘電相から反強誘電相に相転移する電圧を印加すれば
よい。
【0027】このように、本発明に係るセラミック素子
においては、一対の電極への印加電圧に応じて機械的変
位量がデジタル的に変化し、更に電圧の印加終了後にお
ける電圧無負荷状態において、電圧印加時と同等の変位
量を維持することができる。
【0028】そして、前記構成において、前記一対の電
極として、該一対の電極への印加電圧によって発生する
電界の強さが空間的に異なる形態を有するようにしても
よい。これにより、作動部のうち、一部の領域が例えば
低い電圧印加によって変位し、その他の部分は変位しな
いという現象が生じ、その後、例えば高い電圧を一対の
電極に印加することによって、前記その他の部分も変位
して、作動部全体が変位する。
【0029】即ち、作動部は、印加電圧を昇圧していく
につれて、逐次、比較的高電界のかかる部分から順次デ
ジタル的に変位していくことになる。
【0030】このように、本発明に係るセラミック素子
においては、一対の電極に印加される電圧値により複数
の変位形態及び/又は変位分布を選択することができ、
準アナログ的な機械的変位の実現を図ることができる。
【0031】前記変位形態等の選択性に富んだ素子を得
る場合、具体的には、前記一対の電極における電極間距
離が大きい領域と小さい領域を有するようにすればよ
い。一対の電極パターンによって電極間距離の大きい領
域と小さい領域を形成することにより、一対の電極に一
定電圧を印加した場合において、常に前記大きい領域よ
りも前記小さい領域の方が高い電界が発生するため、印
加電圧が低いときは、ある電圧で、前記反強誘電体膜の
うち、前記小さい領域に対応する部分だけが相転移し
て、変位することになる。次に、より大きな電圧を一対
の電極に印加すると、ある電圧で前記大きい領域が相転
移して変位する。結果として、2つの印加電圧レベルの
うちのいずれかを選択することにより、2つの変位形態
・変位分布を任意に選択できるという効果を得ることが
できる。
【0032】もちろん、一対の電極に印加する電圧レベ
ルと変位形態・変位分布の数は3つ以上でも実現可能で
ある。
【0033】また、前記構成において、分極後の前記反
強誘電体膜に前記電極に印加される電圧に応じて、その
平均誘電率がアナログ的に増加する領域を有するように
してもよい。この場合、電極に電圧を印加することによ
り、作動部における反強誘電体膜は、印加される電圧に
応じた領域にわたって電界誘起相転移が生じることとな
る。印加電圧というときは、正電圧及び負電圧の絶対値
を指す。
【0034】具体的に、本発明に係るセラミック素子の
作用について説明すると、印加電圧が徐々に上昇するこ
とによって、まず、印加電圧が所定電圧に達するまで
は、作動部に発生する電界が弱いため、反強誘電体膜に
は電界誘起相転移(以下、単に相転移と記す)は生じな
い。
【0035】印加電圧が所定電圧を越えた段階から、電
極間の距離が最も短い領域や電極に最も近い領域が相転
移させるのに十分な電界強度を有することとなって、こ
れらの領域において相転移が生じ、その相転移に伴って
機械的変位が発生する。この変位は振動部によって増幅
され、作動部は一方向(例えば作動部が自由空間を臨む
方向)に変位することになる。
【0036】更に、前記印加電圧が上昇するに従って、
相転移させるのに十分な電界強度の領域が徐々に広が
り、電極間の距離が長い領域や電極から遠い領域におい
ても相転移が生じることになる。この場合、相転移領域
の拡大に応じて作動部の機械的変位も大きくなる。
【0037】即ち、本発明に係るセラミック素子におい
ては、作動部に生じた一方向への変位が印加電圧の上昇
に応じてアナログ的に増大することとなる。
【0038】一旦、作動部が一方向に変位した場合、一
対の電極への電圧印加を停止(例えば電界=0)して
も、その変位はそのまま維持される。そのため、作動部
に生じた変位を一定期間にわたって維持する必要がある
場合においても、一対の電極に電圧を印加し続ける必要
がなくなる。なお、作動部に生じた変位を元に戻すに
は、一対の電極に小さな逆バイアス電圧、具体的には、
強誘電相から反強誘電相に相転移する電圧を印加すれば
よい。
【0039】このように、本発明に係るセラミック素子
においては、電極への印加電圧に応じて機械的変位量が
アナログ的に変化し、更に電圧の印加終了後における電
圧無負荷状態において、電圧印加時と同等の変位量を維
持することができる。
【0040】そのため、印加電圧に対応して変位量の大
小を精密に制御可能であって、かつ、微細な素子におい
ても、圧電/電歪膜型素子を上回る大きな変位発生力を
得ることができる。
【0041】また、本発明に係るセラミック素子におい
ては、駆動電圧の印加終了後における電圧無負荷状態な
いし低負荷状態において、駆動電圧印加時とほぼ同等の
変位量を維持することができ、当該セラミック素子を様
々なアプリケーション(表示装置やフィルタ等)に適用
した場合に、駆動用の電気配線を簡素化でき、製造コス
トの低廉化を有効に図ることができる。
【0042】なお、前記構成において、前記印加電圧に
応じて平均誘電率がアナログ的に増加する領域を複数組
み合わせるようにしてもよい。この場合、印加電圧に応
じて変位する割合(変位増大率)の異なる領域が複数存
在することになる。また、印加電圧値によって複数の変
位形態及び/又は変位分布を選択することができ、変位
形態等の選択性に富んだ素子を得ることができる。
【0043】前記変位形態等の選択性に富んだ素子を得
る場合、具体的には、例えば前記一対の電極における電
極間距離が大きい領域と小さい領域を有するようにすれ
ばよい。一対の電極パターンによって電極間距離の大き
い領域と小さい領域を形成することにより、一対の電極
に一定電圧を印加した場合において、常に前記大きい領
域よりも前記小さい領域の方が高い電界が発生するた
め、印加電圧が低いときは、ある電圧で、前記反強誘電
体膜のうち、前記小さい領域に対応する部分だけが相転
移して、変位することになる。次に、より大きな電圧を
一対の電極に印加すると、ある電圧で前記大きい領域が
相転移して変位する。結果として、2つの印加電圧レベ
ルのうちのいずれかを選択することにより、2つの変位
形態・変位分布を任意に選択できるという効果を得るこ
とができる。
【0044】もちろん、一対の電極に印加する電圧レベ
ルと変位形態・変位分布の数は3つ以上でも実現可能で
ある。
【0045】そして、前記構成において、前記振動部及
び固定部を、セラミックグリーンシート又はセラミック
グリーンテープを積層し、一体焼成して構成された基体
に設けるようにしてもよい。
【0046】この場合、少なくとも振動部を、主として
部分安定化ジルコニアにて構成するようにしてもよい。
これにより、高強度かつ高靱性の振動部とすることがで
き、セラミック素子の長寿命化を図ることができる。
【0047】また、前記構成において、前記反強誘電体
膜の組成を、主として下記の組成としてもよい。
【0048】 Pb0.99Nb0.02{[Zrx Sn1-x 1-y Tiy
0.983 但し、0.5 <x< 0.6, 0.05 <y< 0.063, 0.01 <
Nb< 0.03 この場合、反強誘電相−強誘電相転移を利用するため、
常誘電相−反強誘電相転移を用いるよりも大きな変位が
得られる。特に、前記組成は、室温での反強誘電相が安
定であるため、外部電界の印加によって容易に強誘電相
を誘起することが可能であり、それに付随して大きな歪
みの変化を行わせることができる。
【0049】特に、前記反強誘電体膜の材料として、前
記組成にAgを酸化銀換算で1〜10重量%含有するこ
とが、より緻密で大きな変位を得る上で、また、より安
定な形状記憶特性を得る上で好適である。
【0050】なお、前記のAgを含有させる手段として
は、反強誘電体膜を合成する過程において、酸化物の形
態で他の原料粉末と同時に添加してもよいし、予め合成
した反強誘電体材料粉末に、酸化銀として、あるいは硝
酸銀の水溶液として粉砕混合してもよい。また、あるい
は印刷ペーストを調合する際に、酸化銀粉末の形態やA
gの有機金属化合物の形態で混合してもよい。
【0051】そして、基体の構成としては、窓部が設け
られたスペーサプレートと該スペーサプレートの一方の
側に重ね合わされて前記窓部を覆蓋する閉塞プレートと
を積層し、一体焼成して構成するようにしてもよい。こ
の場合、振動部上の微細な領域に作動部を形成すること
が可能となり、作動部の高集積化を実現させることがで
きる。
【0052】また、前記スペーサプレートの他方の側に
重ね合わされて前記窓部を覆蓋し、かつ該窓部に対応す
る位置に1つ以上の貫通孔を有する少なくとも1層のベ
ースプレートを積層し、前記スペーサプレート及び閉塞
プレートと共に一体焼成して基体を構成するようにして
もよい。この場合、スペーサプレート、閉塞プレート及
びベースプレートの積層体が一体焼成されて振動部及び
固定部が形成されることになるが、一般に、窓部の両開
口部を閉塞して一体焼成した場合、窓部での圧力上昇に
よって焼成体自体が破壊されるおそれがある。しかし、
本発明では、ベースプレートに1つ以上の貫通孔を設け
るようにしているため、一体焼成時に発生する窓部の圧
力が貫通孔を通じて外部に逃げ、前記積層体の一体焼成
に伴う破壊は回避される。これは、振動部及び固定部の
信頼性の向上において有利となる。
【0053】少なくとも反強誘電体膜の一部における前
記一対の電極の形成の態様としては、前記一対の電極を
共に、前記反強誘電体膜の一主面に形成するようにして
もよいし、前記一対の電極のうち、一方の電極を前記反
強誘電体膜の一主面に形成し、他方の電極を前記反強誘
電体膜の他主面に形成するようにしてもよい。
【0054】特に、一対の電極を反強誘電体膜の一主面
に形成した場合においては、前記反強誘電体膜の平均膜
厚をt、電極間のピッチをpとしたとき、p/t≦2.
5を満足することが好ましい。また、前記振動部を、主
としてアルミナを0.5モル%以上含有する部分安定化
ジルコニアにて構成することが好ましい。この場合、振
動部上に直接反強誘電体膜が形成される形となるため、
反強誘電体膜と振動部とが強固に結合し、これにより、
高い変位量のセラミック素子を得ることができる。
【0055】また、一方の電極を反強誘電体膜の一主面
に形成し、他方の電極を反強誘電体膜の他主面に形成し
た場合においては、前記一方の電極の面積をA、前記他
方の電極の面積をBとしたとき、A/B≧2又はA/B
≦0.5を満足することが好ましく、あるいは前記電極
間に挟まれた領域の膜厚分布に20%以上のばらつきが
あることが好ましい。
【0056】特に、上述のような電極形態においては、
前記振動部を主として酸化チタンを0.5モル%以上含
有する部分安定化ジルコニアにて構成するようにしても
よい。この場合、他方の電極を介して反強誘電体膜と振
動部とが強固に結合されるため、信頼性が増すと共に、
反強誘電体膜と振動部の相対する面において、電極の存
在しない領域においては、反強誘電体膜と振動部とが固
着しない。そのため、作動部の振動変位に対して拘束さ
れず、高い変位量のセラミック素子を得ることができ
る。
【0057】そして、一対の電極を反強誘電体膜の一主
面に形成した場合においては、前記振動部と反強誘電体
膜との間に中間層を設けるようにしてもよい。この場
合、前記中間層は、Pt又はPdの金属、あるいは両者
の合金であることが好ましい。また、中間層の厚みは1
μm以上、15μm以下であることが適当であり、2μ
m以上、6μm以下であることが好ましい。
【0058】また、前記構成において、前記振動部の厚
みを反強誘電体膜の厚みよりも薄くすることが好まし
い。この場合、振動部の中心を通る最短寸法における前
記固定部の上面と前記振動部の上面との境界部分を境界
点と定義し、該境界点から前記反強誘電体膜の形成端ま
での距離をLn、前記振動部の厚みをtvとしたとき、
Ln<tv×15を満足する場合、前記基体の厚みtb
がtb≦350μmであることが適当であり、好ましく
はtb≦250μm、より好ましくはtb≦130μm
であり、tb≦70μmが最も好ましい。
【0059】また、前記境界点から前記反強誘電体膜の
形成端までの距離LnがLn≧tv×15を満足する場
合においては、前記振動部の厚みtvは1〜50μmが
好ましく、3〜20μmが更に好ましい。一方、反強誘
電体膜22の平均厚さは、1〜100μmが好ましく、
3〜50μmが更に好ましく、5〜40μmが最も好ま
しい。
【0060】また、前記基体上に形成された前記反強誘
電体膜は、荷重が付与されながら焼成処理されているこ
とが望ましい。この場合、前記荷重としては、0.4k
g/cm2 以上であることが好ましい。更に、前記振動
部直下の空間の深さが15μm以下であることが好まし
い。
【0061】次に、本発明は、反強誘電体膜と該反強誘
電体膜に形成された少なくとも一対の電極とを有する作
動部と、前記作動部を支持する振動部と、前記振動部を
振動可能に支持する固定部とを有するセラミック素子の
製造方法において、セラミックグリーンシート又はセラ
ミックグリーンテープを積層し、一体焼成して前記振動
部と固定部を有する基体を作製する工程と、前記基体の
前記振動部上に前記反強誘電体膜を形成する工程と、前
記反強誘電体膜を焼成する工程とを有することを特徴と
する。
【0062】この場合、前記反強誘電体膜に対して荷重
を付与しながら焼成処理することが好ましく、前記荷重
が0.4kg/cm2 以上であることがより望ましい。
【0063】また、前記製造方法において、反強誘電体
セラミック材料の粉末を合成して前記反強誘電体膜を作
製する際に、前記反強誘電体膜における焼成中の振動部
との相互拡散による組成変動を見越して、反強誘電体セ
ラミック材料の粉末組成を最適組成からずらして調製す
ることが好ましい。この場合、ZrO2 をその所定量よ
り少なめに秤量し、TiO2 をその所定量より多めに秤
量して調製する。具体的には、ZrO2 の量は、その所
定量を100%とした場合の95〜98%とし、かつ/
又は、TiO2 の量は、その所定量を100%とした場
合の102〜104%であることが好ましい。
【0064】また、反強誘電体セラミック材料の粉末を
合成して前記反強誘電体膜を作製する際に、予め酸化鉛
がその所定配合量よりも少なくされた組成で合成した
後、鉛成分の不足分を酸化鉛の形態で後補正して混合す
ることが好ましい。
【0065】この場合、鉛成分の後補正量が前記所定配
合量の3%以上、20%以下であることがよく、好まし
くは5%以上、15%以下である。
【0066】また、反強誘電体セラミック材料の粉末を
合成して前記反強誘電体膜を作製する際に、原材料とし
て用いる酸化スズの比表面積を8m2 /g以上、20m
2 /g以下にすることが好ましい。
【0067】また、前記製造方法において、基体を作製
する場合、窓部が設けられた第2層と、該第2層の一方
の側に重ね合わされて前記窓部を覆蓋する第3層と、前
記第2層の他方の側に重ね合わされて前記窓部を覆蓋
し、かつ、該窓部に対応する位置に1つ以上の貫通孔を
有する第1層を積層し、一体焼成してセラミック製の前
記基体を作製するようにしてもよい。
【0068】また、他の方法としては、1つ以上の貫通
孔を有する第1層の上面に、セラミック材料のペースト
をパターン形成して、前記貫通孔に対応した部分に窓部
を有する第2層を形成した後、前記窓部を閉塞するよう
に第3層を積層し、一体焼成してセラミック製の前記基
体を作製するようにしてもよい。
【0069】前記基体の作製においては、前記第2層の
厚みを1〜20μmとすることが好ましい。
【0070】次に、本発明は、光が導入される光導波板
と、該光導波板の一方の板面に対向して設けられ、かつ
多数の画素に対応した数のアクチュエータ部が配列され
た駆動部を具備し、入力される画像信号の属性に応じて
前記光導波板に対する前記アクチュエータ部の接触・離
隔方向の変位動作を制御して、前記光導波板の所定部位
の漏れ光を制御することにより、前記光導波板に前記画
像信号に応じた映像を表示させる表示装置において、前
記アクチュエータ部を、反強誘電体膜と該反強誘電体膜
に形成された少なくとも一対の電極とを有するアクチュ
エータ部本体と、前記アクチュエータ部本体を支持する
振動部と、前記振動部を振動可能に支持する固定部とを
具備して構成し、更に、前記一対の電極への電圧印加に
よって生じる前記アクチュエータ部の変位動作を光導波
板に伝達する変位伝達部を設けて構成する。
【0071】これにより、まず、光導波板の例えば端部
から導入される光は、光導波板の屈折率の大きさを調節
することにより、全ての光が光導波板の前面及び背面に
おいて透過することなく内部で全反射する。この状態に
おいて、光導波板の例えば背面に変位伝達部が光の波長
以下の距離で接近あるいは接触すると、それまで全反射
していた光は、光導波板の背面に接触している変位伝達
部の表面まで透過する。一旦、変位伝達部の表面に到達
した光は変位伝達板の表面で反射し、散乱光として一部
は再度光導波板の中で反射するが、散乱光の大部分は光
導波板で反射されることなく、光導波板の前面を透過す
ることになる。
【0072】このように、光導波板の背面にある変位伝
達板の接触の有無により、光導波板の前面における光の
発光(漏れ光)の有無を制御することができる。この場
合、光導波板に対して変位伝達板を接触・離隔方向に変
位動作させる1つの単位を1画素として考えれば、この
画素を多数マトリクス状に配列し、入力される画像信号
の属性に応じて各画素での変位動作を制御することによ
り、陰極線管や液晶表示装置と同様に、光導波板の前面
に画像信号に応じた映像(文字や図形等)を表示させる
ことができる。
【0073】次に、本発明は、対向端子部と、該対向端
子部の一方の側に対向して設けられ、かつ多数のスイッ
チング素子に対応した数のアクチュエータ部が配列され
た駆動部を具備し、入力される駆動信号の属性に応じて
前記対向端子に対する前記アクチュエータ部の接触・離
隔方向の変位動作を制御して、前記スイッチング素子の
ON/OFF動作を切換え制御するリレー装置であっ
て、前記アクチュエータ部を、反強誘電体膜と該反強誘
電体膜に形成された少なくとも一対の電極とを有するア
クチュエータ部本体と、前記アクチュエータ部本体を支
持する振動部と、前記振動部を振動可能に支持する固定
部とを具備して構成し、更に、前記一対の電極への電圧
印加によって生じる前記アクチュエータ部の変位動作を
前記対向端子部に伝達する信号端子部を設けて構成す
る。
【0074】これにより、多数のスイッチング素子のう
ち、一部のスイッチング素子における信号端子部が対向
端子部に接触すると、これら信号端子部と対向端子部と
が電気的に接続され、これら信号端子部と対向端子部間
に信号が流れ、例えばON動作が行われる。
【0075】このように、対向端子部の背面にある信号
端子部の接触の有無により、多数のスイッチング素子の
ON/OFF動作を制御することができる。この場合、
対向端子部に対して信号端子部を接触・離隔方向に変位
動作させる1つの単位を1スイッチング素子として考え
れば、このスイッチング素子を例えば多数マトリクス状
に配列し、入力されるスイッチング信号の属性に応じて
各スイッチング素子での変位動作を制御することによ
り、多数のスイッチング形態の組み合わせを提供するこ
とができ、スイッチング動作の多様化を実現させること
ができる。
【0076】そして、本発明に係るリレー装置は、信号
端子部を選択的に変位させるアクチュエータ部本体の構
成として、反強誘電体膜と、該反強誘電体膜に形成され
た少なくとも一対の電極とを有するようにしている。こ
の場合、一対の電極に所定の電圧が印加されると、アク
チュエータ部本体に印加電圧に応じた電界が生じ、この
発生電界によって反強誘電体膜が例えば一方向に変位す
る。この反強誘電体膜の一方向の変位によって信号端子
部が対向端子部側に変位し、上述したようなスイッチン
グ素子のON動作を誘起する。
【0077】特に、反強誘電体膜は、上述したように、
一旦、変位が行われると、電圧無負荷状態にした場合に
おいても、その変位を維持することから、スイッチング
動作のために、所要スイッチング素子について電圧印加
を行って、該所要スイッチング素子のアクチュエータ部
本体を変位させれば、変位が解除されるまでの期間にわ
たって当該所要スイッチング素子の一対の電極への電圧
印加を停止しても、その変位が維持されて所要スイッチ
ング素子のON動作が持続するため、消費電力が大幅に
低減され、ランニングコストの低廉化を実現させること
ができる。
【0078】また、スイッチング制御を行と列を特定し
て行う場合において、該当行に対応するスイッチング素
子列に対してのみ電圧印加を行えばよく、他のスイッチ
ング素子列に対する電圧印加を考慮する必要がなくなる
ため、駆動用の電気配線を行う場合に、1素子ずつ独立
に配線する必要がなくなり、電気配線の簡素化を実現す
ることができる。これは、駆動電圧供給系の負荷の低減
化につながり、機械的構造及び回路構成の簡略化並びに
製造コストの低廉化を図ることができる。
【0079】次に、本発明に係るコンデンサは、コンデ
ンサ部を支持する振動部と、前記振動部を振動可能に支
持する固定部とを具備して構成し、前記コンデンサ部
を、前記振動部に形成された反強誘電体膜と、該反強誘
電体膜の上面に形成された一対の制御電極と、前記反強
誘電体膜の上面及び下面にそれぞれ形成されたコンデン
サの両端電極とを設けて構成する。
【0080】これにより、一対の制御電極への印加電圧
の上昇に応じて両端電極に現れる容量がアナログ的に変
化する容量可変コンデンサを簡単に構成することができ
る。しかも、薄膜タイプにて構成することができるた
め、可変コンデンサが組み込まれたパラメトリック増幅
器や周波数自動制御回路(AFC)並びに各種通信機器
等の小型化を促進させることができる。
【0081】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るセラミック素
子の3つの実施の形態例を図1〜図53を参照しながら
説明し、更に、応用例に係る表示装置と、応用例に係る
リレー装置と、応用例に係る容量可変コンデンサを図5
4〜図63を参照しながら説明する。
【0082】まず、第1の実施の形態に係るセラミック
素子100Aは、図1に示すように、例えばセラミック
スにて構成された基体10を有し、該基体10の所定箇
所にアクチュエータ部12が配設されている。
【0083】前記基体10は、一主面が連続した面(面
一)とされ、前記アクチュエータ部12に対応した位置
に空所14が設けられている。各空所14は、基体10
の他端面に設けられた径の小さい貫通孔16を通じて外
部と連通されている。
【0084】前記基体10のうち、空所14の形成され
ている部分が薄肉とされ、それ以外の部分が厚肉とされ
ている。薄肉の部分は、外部応力に対して振動を受けや
すい構造となって振動部18として機能し、空所14以
外の部分は厚肉とされて前記振動部18を支持する固定
部20として機能するようになっている。
【0085】つまり、基体10は、最下層であるベース
プレート10Aと中間層であるスペーサプレート10B
と最上層である閉塞プレート10Cの積層体であって、
スペーサプレート10Bのうち、画素に対応する箇所に
空所14が形成された一体構造体として把握することが
できる。ベースプレート10Aは、補強用基板として機
能するほか、配線用の基板としても機能するようになっ
ている。なお、上記基体10は、一体焼成であっても、
別途製作したものを接合してもよい。
【0086】前記アクチュエータ部12は、図1に示す
ように、前記振動部18と固定部20のほか、該振動部
18上に直接形成された反強誘電体膜22と、該反強誘
電体膜22の上面に形成された一対の電極(一方の電極
24a及び他方の電極24b)とを有するアクチュエー
タ部本体26を有して構成されている。
【0087】ここで、各部材の形状について、図2〜図
5Cを参照しながら説明する。まず、図2に示すよう
に、基体10(図1参照)に形成される空所14の周面
形状、即ち振動部18の平面形状は例えば円形とされ
(破線参照)、反強誘電体膜22の平面形状(一点鎖
線)並びに一対の電極24a及び24bにて形づくられ
る外周形状(実線参照)も円形状とされている。この場
合、振動部18の大きさが最も大きく、次いで一対の電
極24a及び24bの外周形状とされ、反強誘電体膜2
2の平面形状が最も小さく設定されている。なお、一対
の電極24a及び24bの外周形状が最も大きくなるよ
うに設定してもよい。
【0088】反強誘電体膜22上に形成される一対の電
極24a及び24bの平面形状は、例えば図3に示すよ
うに、これら一対の電極24a及び24bが互いに平行
し、かつ相互に離間された数ターンの渦巻き状とされて
いる。この渦巻きのターン数は、実際は、5ターン以上
であるが、図3の例では、図面の複雑化を避けるために
3ターンとして記載してある。
【0089】前記一対の電極24a及び24bの平面形
状としては、図3に示す渦巻き形状のほかに、図4に示
すような形状としてもよい。具体的には、一対の電極2
4a及び24bが共に、前記反強誘電体膜22上の中心
に向かって延びる幹部28及び30と該幹部28及び3
0から多数枝分かれしてなる枝部32及び34を有する
形状とし、かつ一対の電極24a及び24bが、相互に
離間されて相補形に配列された形状(以下、便宜的に多
枝形状と記す)にしてもよい。
【0090】前記例では、振動部18の平面形状、反強
誘電体膜22の平面形状並びに一対の電極24a及び2
4bにて形づくられる外周形状を円形状とした場合を示
したが、その他、長円形状や楕円形状としてもよい。ま
た、振動部18の平面形状及び反強誘電体膜22の平面
形状を共に矩形状とし、コーナー部が角のとれた形状に
してもよいし、振動部18の平面形状及び反強誘電体膜
22の平面形状を共に多角形状(例えば八角形状)と
し、各頂角部分が丸みを帯びた形状にしてもよい。
【0091】また、振動部18の形状、反強誘電体膜2
2の平面形状、一対の電極24a及び24bにて形づく
られる外周形状は、円と楕円の組み合わせでもよいし、
矩形状と楕円の組み合わせでもよく、特に限定されるも
のではない。
【0092】前記一対の電極24a及び24bの平面形
状としては、前記渦巻き形状や多枝形状のほか、図5A
に示すように、くし型形状であってもかまわない。この
場合、振動部18の形状を縦横比(アスペクト比)で
0.25以下又は4.0以上とし、多数のくし歯部分の
配列方向が振動部18の長手方向に沿うように一対のく
し型電極24a及び24bを形成することが好ましい。
【0093】そして、この第1の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Aにおいては、反強誘電体膜22の平
均膜厚と一対の電極24a及び24b間のピッチを規定
することによって、一対の電極24a及び24bに印加
される電圧(印加電圧)に応じてアクチュエータ部12
の変位量がアナログ的に変化するアナログ変位タイプ
と、印加電圧がある電圧値となった時点でアクチュエー
タ部12の変位量が急激に変化して、ほとんど瞬時に最
大変位量に達するデジタル変位タイプになることが判明
した。なお、前記印加電圧は、正電圧及び負電圧の絶対
値を示す。
【0094】具体的には、例えば図5A及び図5Bに示
すように、アクチュエータ部12における反強誘電体膜
22の平均膜厚をt(図5B参照)、一対の電極24a
及び24b間のピッチをpとしたとき(図5A参照)、
p/t≦2.5を満足させればアナログ変位タイプとな
り、p/t>2.5を満足させればデジタル変位タイプ
となることが判明した。これらの関係式から、一対の電
極24a及び24b間のピッチpが一定という条件を与
えたとき、平均膜厚tを厚くすればアナログ変位タイプ
となり、反対に平均膜厚tを薄くすればデジタル変位タ
イプとなることがわかる。
【0095】前記アナログ変位タイプとデジタル変位タ
イプの各動作原理について図6A〜図8Dを参照しなが
ら説明する。
【0096】図6A〜図6D及び図8A〜図8Dにおい
ては、説明を簡単化するために、一対の電極24a及び
24bをそれぞれ1本ずつ形成した例を示す。また、図
6A〜図6D及び図8A〜図8Dの例は、反強誘電体膜
22に予め所定の電界を印加して反強誘電体膜22を分
極処理した後の動作を示すものである。なお、図6A〜
図6D及び図8A〜図8Dにおける相転移領域(斜線で
示す領域)Ztは厳密な分布ではなく、あくまでも概念
的なイメージを示す。
【0097】まず、アナログ変位タイプについての動作
原理について図6A〜図6Dの動作概念図を参照しなが
ら説明する。
【0098】最初に、図6Aに示すように、一方の電極
24a及び他方の電極24bをそれぞれ例えば接地電位
として、一対の電極24a及び24b間の印加電圧Vを
0とした場合は、アクチュエータ部12に電界は生じな
いため、初期状態、即ち、一方向(反強誘電体膜22上
に形成された一対の電極24a及び24bが自由空間を
臨む方向)への屈曲変位は生じない。
【0099】次に、前記一対の電極24a及び24bに
印加される電圧VをV1、V2及びV3というように徐
々に電圧値(レベル)を上げていった場合についてみる
と、まず、図6Bに示すように、印加電圧V=V1(>
0V)のとき、即ち、印加電圧Vが反強誘電体膜22に
相転移が生じるのに必要な所定電圧Vd(以下、単に所
定電圧Vdと記す)よりも小さい電圧V1のときは、ア
クチュエータ部12に発生する電界が弱いため、反強誘
電体膜22には相転移は生じず、このため、アクチュエ
ータ部12の一方向への屈曲変位は生じない(図7の電
圧V1時における屈曲変位量参照)。
【0100】図6Cに示すように、印加電圧Vが前記所
定電圧Vdを越えた段階から、一対の電極24a及び2
4b間の距離が最も短い領域や一対の電極24a及び2
4bに最も近い領域が相転移させるのに十分な電界強度
を有することとなって、これらの領域において相転移が
生じ(相転移領域Ztの発生)、その相転移に伴って機
械的変位が発生する。この変位は振動部18によって増
幅され、アクチュエータ部12は一方向に変位すること
になる(図7の電圧V2時における屈曲変位量参照)。
【0101】図6Dに示すように、印加電圧Vが更に上
昇することに伴って、相転移させるのに十分な電界強度
の領域が徐々に広がり、一対の電極24a及び24b間
の距離が長い領域や一対の電極24a及び24bから遠
い領域においても相転移が生じることになる(相転移領
域Ztの拡大)。この場合、相転移領域Ztの拡大に応
じてアクチュエータ部12の機械的変位も大きくなる
(図7の電圧V3時における屈曲変位量参照)。
【0102】このように、アナログ変位タイプにおいて
は、印加電圧Vの上昇に応じてアクチュエータ部12の
屈曲変位量がアナログ的に変化することとなる。図7に
アナログ変位タイプの屈曲変位特性の一例を示す。この
図7の屈曲変位特性を示すセラミック素子は、60V〜
180Vの印加電圧Vに対してアナログ的に変位する素
子であり、反強誘電体膜22の平均膜厚tは30μm、
一対の電極24a及び24b間のピッチpは15μmで
あり、振動部18の寸法は、平面形状が直径1mmの円
形であって、厚みが0.01mmである。
【0103】次に、デジタル変位タイプについての動作
原理について図8A〜図8Dの動作概念図を参照しなが
ら説明する。
【0104】最初に、図8Aに示すように、一方の電極
24a及び他方の電極24bをそれぞれ例えば接地電位
として、一対の電極24a及び24b間の印加電圧を0
とした場合は、アクチュエータ部12に電界は生じない
ため、初期状態、即ち、一方向への屈曲変位は生じな
い。
【0105】次に、前記一対の電極24a及び24bに
印加される電圧VをV1、V2及びV3というように徐
々に電圧値(レベル)を上げていった場合についてみる
と、まず、図8Bに示すように、印加電圧V=V1(>
0V)のとき、即ち、印加電圧Vが所定電圧Vdよりも
小さい電圧V1のときは、アクチュエータ部12に発生
する電界が弱いため、反強誘電体膜22には相転移は生
じず、このため、アクチュエータ部12の一方向への屈
曲変位は生じない。
【0106】図8Cに示すように、印加電圧Vが前記所
定電圧Vdを越えた段階、例えば印加電圧V=V2の段
階において、アクチュエータ部12は急激に一方向に変
位する。これは、反強誘電体膜22の平均膜厚tと一対
の電極24a及び24b間のピッチpがp/t>2.5
の関係にあり、前記印加電圧V(=V2)によって発生
する電界分布が均一であるため、わずかな電圧上昇で大
半の領域が相転移して相転移領域Ztとなるからであ
る。従って、アクチュエータ部12は、印加電圧Vが所
定電圧Vdを越えた時点で、屈曲変位特性上、わずかな
電圧変化にて急激に一方向に変位することになり、電圧
V2よりもわずかに高い電圧を与えるだけで、アクチュ
エータ部12は最大変位量まで一方向に変位することに
なる。
【0107】図8Dに示すように、印加電圧Vが前記電
圧V2よりも上昇して例えば電圧V3となった時点にお
いては、アクチュエータ部12に発生する電界が強いこ
とから、反強誘電体膜22のうち、一対の電極24a及
び24bに挟まれた領域全体が相転移領域Ztとされて
おり、しかも、電圧V2をわずかに越えた電圧にて最大
変位量まで変位しているため、この段階では、アクチュ
エータ部12のそれ以上の屈曲変位増加は起こらない。
【0108】このように、デジタル変位タイプにおいて
は、印加電圧Vの上昇に応じてアクチュエータ部12の
屈曲変位量が徐々に増加するという特性ではなく、印加
電圧Vが反強誘電体膜22に相転移が生じるのに必要な
所定電圧Vdを越えた時点で、アクチュエータ部12は
急激に一方向に変位し、前記所定電圧Vdからわずかな
電圧上昇にて最大変位量まで変位することとなる。
【0109】次に、前記アナログ変位タイプにおけるア
クチュエータ部12の一方向変位に伴う作用について図
9A〜図9C及び図10A〜図10Cを参照しながら比
較例と共に説明する。これら図9A〜図9C及び図10
A〜図10Cで示す例は、図5Aに示すアクチュエータ
部のB−B線上の断面に沿った一方向変位の経過を示す
ものである。
【0110】また、比較例は、図7Aに示すように、本
実施の形態の反強誘電体膜22に代えて圧電/電歪膜3
6としたものであり、これはデジタル変位タイプと類似
した屈曲変位特性を示す。
【0111】まず、図9Aに示すように、初期状態にお
いては、一対の電極24a及び24b間に電圧(電位
差)は生じていないため、反強誘電体膜22に伸びは生
じず、アクチュエータ部12の変位は0を保ったままで
ある。これは、比較例においても同様である(図10A
参照)。
【0112】次に、アクチュエータ部12の一対の電極
24a及び24bに電圧Vが印加されて、該印加電圧V
が前記所定電圧Vdを越えた時点でアクチュエータ部1
2が一方向に変位し始め、前記印加電圧Vの上昇に従っ
て、その変位量は大きくなる。図9Bは一対の電極24
a及び24bへの印加電圧Vを電圧V3とした場合の屈
曲変位状態を示す。
【0113】一方、比較例においては、図10Bに示す
ように、一対の電極24a及び24bへの印加電圧Vが
所定電圧Vdとなった時点でアクチュエータ部12が急
激に最大変位量までデジタル的に変化する。
【0114】次に、一対の電極24a及び24bへの電
圧印加を停止して、一対の電極24a及び24b間の電
圧を0Vとした場合、図9Cに示すように、反強誘電体
膜22の「強誘電相の歪みの状態を記憶する効果(形状
記憶効果)」により、一旦生じた変位はそのまま維持さ
れる。一方、比較例においては、図10Cに示すよう
に、一対の電極24a及び24b間の電圧が0Vとなっ
て電圧無負荷状態となった場合、電圧印加にて生じてい
た変位は、その後の電圧印加の停止と共に零の状態(即
ち、初期状態)に戻る。
【0115】つまり、前記第1の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Aにおいては、固定部20にて振動可
能に支持された振動部18上に反強誘電体膜22を有す
るアクチュエータ部本体26が形成されたかたちとなる
ため、一対の電極24a及び24bに電圧Vを印加する
ことにより、アクチュエータ部本体26における反強誘
電体膜22は、前記印加電圧Vによる外部電界によって
相転移が生じ、その相転移に伴って機械的変位が発生す
る。この変位は振動部18によって増幅され、アクチュ
エータ部12は一方向に変位することになる。
【0116】一旦、アクチュエータ部12が一方向に変
位した場合、一対の電極24a及び24bへの電圧印加
を停止(例えば電界=0)しても、その変位はそのまま
維持される。そのため、アクチュエータ部12に生じた
変位を一定期間にわたって維持する必要がある場合にお
いても、一対の電極24a及び24bに電圧を印加し続
ける必要がなくなる。なお、アクチュエータ部12に生
じた変位を元に戻すには、一対の電極24a及び24b
に小さな逆バイアス電圧、具体的には、強誘電相から反
強誘電相に相転移する電圧を印加すればよい。
【0117】このように、第1の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Aにおいては、一対の電極24a及び
24bへの印加電圧Vに応じて機械的変位量がアナログ
的あるいはデジタル的に変化し、更に印加電圧Vの印加
終了後における電圧無負荷状態において、電圧印加時と
同等の変位量を維持することができる。
【0118】また、第1の実施の形態に係るセラミック
素子100Aにおいては、図11Aに示すように、一対
の電極24a及び24bの平面形状が例えば渦巻き形状
である場合を例にとると、一対の電極24a及び24b
に所定電圧Vd以上の電圧Vが印加された場合、図11
Bに示すように、反強誘電体膜22の表面中、一対の電
極24a及び24b間の部分が面方向に膨張するため、
アクチュエータ部12(図1参照)は、一方向に安定に
かつ大きく屈曲変位することになる。
【0119】一方、比較例においては、一対の電極24
a及び24bに所定電圧Vd以上の電圧Vが印加された
場合、図11Cに示すように、圧電/電歪膜36の表面
中、一対の電極24a及び24b間の部分が異方的に膨
張する(一対の電極24a及び24b間の方向は伸びる
が、その垂直方向は収縮する)ため、アクチュエータ部
12の屈曲変位量は小さくなり、屈曲する方向性も不安
定となる。
【0120】このように、前記第1の実施の形態に係る
セラミック素子100Aにおいては、一対の電極24a
及び24bへの印加電圧Vに応じて機械的変位量がアナ
ログ的あるいはデジタル的に変化し、更に印加電圧Vの
印加終了後における電圧無負荷状態ないし低負荷状態に
おいて、電圧印加時と同等の変位量を維持することがで
きる。
【0121】そのため、印加電圧Vに対応して変位量の
大小を精密に制御可能であって、かつ、微細な素子にお
いても、圧電/電歪膜型素子を上回る大きな変位発生力
を得ることができる。
【0122】また、第1の実施の形態に係るセラミック
素子100Aにおいては、上述のように、印加電圧Vの
印加終了後における電圧無負荷状態ないし低負荷状態に
おいて、電圧印加時とほぼ同等の変位量を維持すること
ができることから、当該セラミック素子を様々なアプリ
ケーション(表示装置やフィルタ等)に適用した場合
に、駆動用の電気配線を簡素化でき、製造コストの低廉
化を有効に図ることができる。
【0123】この第1の実施の形態に係るセラミック素
子100Aにおいては、図12A〜図13に示すよう
に、前記振動部18の中心を通る最短寸法mにおける断
面形状が、以下の条件を満足することが好ましい。な
お、図12A〜図13では、図面の複雑化を避けるため
に一対の電極24a及び24bの記載を省略してある。
【0124】即ち、図12Bに示すように、前記固定部
20に近接する一方の最外極小点P1と他方の最外極小
点P2とを結ぶことによって構成される基準線Lより、
前記反強誘電体膜22の中央部付近における上面の少な
くとも一部分が、電圧無負荷状態(電界E=0の状態)
で前記振動部18と反対方向に突出していることであ
る。
【0125】ここで、反強誘電体膜22の中央部付近と
は、図12Aに示すように、前記最短寸法mにおいて、
固定部20の上面と振動部18の上面との境界部分をそ
れぞれ一方の境界点K1及び他方の境界点K2と定義
し、前記最短寸法mを100としたとき、前記一方の境
界点K1から最短寸法mの中心に向かって30%の範囲
a1と、前記他方の境界点K2から最短寸法mの中心に
向かって30%の範囲a2を除く、中央の40%の範囲
a3を指す。
【0126】また、図12Bに示すように、前記一方の
最外極小点P1とは、前記最短寸法mにおいて、振動部
18の上面(場合によっては反強誘電体膜22の一主
面)の前記最短寸法面に対する投影線に形成される複数
の極小点のうち、前記一方の境界点K1に最も近接する
極小点をいい、他方の最外極小点P2とは前記複数の極
小点のうち、前記他方の境界点K2に最も近接する極小
点をいう。
【0127】この場合、前記最短寸法mを100とした
とき、前記一方の境界点K1から最短寸法mの中心に向
かって40%の範囲(一方の極小点存在領域b1)内に
存在するもので、かつ一方の境界点K1に最も近接する
極小点が一方の最外極小点P1として認定され、前記他
方の境界点K2から最短寸法mの中心に向かって40%
の範囲(他方の極小点存在領域b2)内に存在するもの
で、かつ他方の境界点K2に最も近接する極小点が他方
の最外極小点P2として認定される。
【0128】前記最外極小点P1及びP2は、図12B
に示すように、固定部20の上面よりも下方に存在する
場合や、図12Cに示すように、固定部20の上面より
も上方に存在する場合がある。
【0129】なお、図13に示すように、例えば他方の
極小点存在領域a2内に他方の最外極小点P2が存在し
ない場合は、前記他方の境界点K2が他方の最外極小点
P2として認定される。これは、一方の最外極小点P1
でも同じである。
【0130】そして、前記条件、つまり、「基準線Lよ
り反強誘電体膜22の中央部付近における上面の少なく
とも一部分が、電圧無負荷状態で振動部18と反対方向
に突出すること。」という条件において、前記最短寸法
長をmとしたとき、その突出量tがm/1000≦t≦
m/10を満たすことがより好ましい。
【0131】前記条件を満たすことにより、作製された
アクチュエータ部12に対して必ず一方向に大きな変位
を行わせることができるようになるため、各種電子機器
等に使用した場合の歩留まりの向上を達成させることが
できる。
【0132】しかも、図12B、図12C及び図13の
形状を有するアクチュエータ部12は、振動部18の上
面のうち、最外極小点P1及びP2の部分で屈曲された
形となっているため、図12Aの形状を有するアクチュ
エータ部12と比較して、振動部18のたわみ剛性が大
きくなる。その結果、同一の変位量を発生させた際に、
振動部18に生じる応力が小さくて済み、振動部18の
強度、信頼性のマージンが増すという利点を有する。前
記形状は、大きな変位を得ることができる前記第1の実
施の形態に係るセラミック素子100Aの特性に対して
特に有効である。
【0133】次に、前記第1の実施の形態に係るセラミ
ック素子100Aの変形例(100Aa)について図1
4A〜図15Bを参照しながら説明する。なお、図5A
及び図5Bと対応するものについては同符号を付してそ
の重複説明を省略する。
【0134】この変形例に係るセラミック素子100A
aは、図14A及び図14Bに示すように、前記第1の
実施の形態に係るセラミック素子100Aとほぼ同様の
構成を有するが、一対の電極24a及び24bにおける
くし歯の配列ピッチが密である領域(a)と粗である領
域(b)を有する点で異なる。配列ピッチが密である領
域(a)は、一対の電極24a及び24b間の距離が小
さいため、一対の電極24a及び24bに一定電圧を印
加した場合、常に、配列ピッチが粗である領域(b)
(一対の電極24a及び24b間の距離が大きい)より
も高い電界が発生する。
【0135】そのため、一対の電極24a及び24bに
印加される電圧Vが低いときは、図15Aに示すよう
に、ある電圧範囲(電圧レベルV1〜V2)で、前記反
強誘電体膜22のうち、配列ピッチが密である領域
(a)に対応する部分だけが印加電圧Vの上昇に応じて
相転移領域が広がり、印加電圧Vのレベルに応じた変位
量ほど一方向に屈曲変位することになる。
【0136】次に、印加電圧Vが、前記電圧範囲よりも
大きな電圧範囲(電圧レベルV2〜V3)である場合
は、図15Bに示すように、配列ピッチが粗である領域
(b)に対応する部分も印加電圧Vの上昇に応じて相転
移領域が広がることから、該部分も前記配列ピッチが密
である領域(a)に対応する部分と共に、印加電圧Vの
レベルに応じた変位量ほど一方向に屈曲変位することに
なる。
【0137】結果として、この変形例に係るセラミック
素子100Aaにおいては、空間的に分離した複数の領
域において、それぞれ変位形態が異なるアクチュエータ
部12を得ることができる。
【0138】次に、第2の実施の形態に係るセラミック
素子100Bについて図16〜図21を参照しながら説
明する。なお、図1と対応するものについては同符号を
付してその重複説明を省略する。
【0139】この第2の実施の形態に係るセラミック素
子100Bは、図16に示すように、前記第1の実施の
形態に係るセラミック素子100Aとほぼ同様の構成を
有するが、アクチュエータ部本体26が、反強誘電体膜
22と該反強誘電体膜22の上面及び下面にそれぞれ形
成された上部電極40aと下部電極40bとを具備して
いる点で異なる。
【0140】そして、この第2の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Bにおいては、上部電極40a及び下
部電極40bの各面積、あるいは上部電極40a及び下
部電極40bに挟まれた反強誘電体膜22の膜厚分布を
規定することによって、上部電極40aと下部電極40
b間に印加される電圧(印加電圧V)に応じてアクチュ
エータ部12の変位量がアナログ的に変化するアナログ
変位タイプと、印加電圧Vがある電圧値となった時点で
アクチュエータ部12の変位量が急激に変化して、ほと
んど瞬時に最大変位量に達するデジタル変位タイプにな
ることが判明した。なお、印加電圧Vは、正電圧及び負
電圧の絶対値を示す。
【0141】具体的には、アクチュエータ部12におけ
る上部電極40aの面積をA、下部電極40bの面積を
Bとしたとき、(A/B)≧2又は(A/B)≦0.5
の関係を満足するか、あるいは反強誘電体膜22の膜厚
分布に20%以上のばらつきがあればアナログ変位タイ
プとなり、0.5<(A/B)<2の関係を満足する
か、あるいは反強誘電体膜22の膜厚分布のばらつきが
20%未満であればデジタル変位タイプとなることが判
明した。
【0142】即ち、例えば反強誘電体膜22の膜厚分布
のばらつきが20%未満である場合は、(A/B)≧2
又は(A/B)≦0.5の関係を満足することによって
アナログ変位タイプとなり(図17A参照)、0.5<
(A/B)<2の関係を満足することによってデジタル
変位タイプとなる(図20A参照)。また、上部電極4
0aの面積Aと下部電極40bの面積Bが0.5<(A
/B)<2の関係を有する場合は、反強誘電体膜22の
膜厚分布のばらつきが20%以上であればアナログ変位
タイプとなり(図19A参照)、反強誘電体膜22の膜
厚分布のばらつきが20%未満であればデジタル変位タ
イプとなる(図20A参照)。
【0143】そして、この第2の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Bの第1のアナログ変位タイプは、図
17Aに示すように、反強誘電体膜22の膜厚分布のば
らつきが20%未満であって、かつ(A/B)≦0.5
の関係を満足するように構成されている。この場合、上
部電極40aの平面形状としては、例えば図18Aに示
すように、1本の連続した渦巻き形状や、図18Bに示
すように、1本の連続したジグザグ形状がある。
【0144】ここで、この第2の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Bの第1のアナログ変位タイプの動作
原理について図17A〜図17Dを参照しながら説明す
る。
【0145】最初に、上部電極40a及び下部電極40
bをそれぞれ例えば接地電位として、上部電極40a及
び下部電極40b間の印加電圧Vを0とした場合は、ア
クチュエータ部12に電界は生じないため、初期状態、
即ち、一方向(反強誘電体膜22上に形成された上部電
極40aが自由空間を臨む方向)への屈曲変位は生じな
い。
【0146】次に、前記上部電極40a及び下部電極4
0b間に印加される電圧VをV1、V2及びV3という
ように徐々に電圧値(レベル)を上げていった場合につ
いてみると、まず、印加電圧V=V1(>0V)のと
き、即ち、印加電圧Vが所定電圧Vdよりも小さい電圧
V1のときは、アクチュエータ部12に発生する電界が
弱いため、反強誘電体膜22には相転移は生じず、この
ため、アクチュエータ部12の一方向への屈曲変位は生
じない。
【0147】図17Cに示すように、印加電圧Vが前記
所定電圧Vdを越えた段階から、反強誘電体膜22に発
生する電界分布のうち、強電界部分(例えば上部電極4
0aに最も近い領域)が相転移し(相転移領域Ztの発
生)、該強電界部分の相転移に伴って反強誘電体膜22
に機械的変位が発生する。この変位は振動部18によっ
て増幅され、アクチュエータ部12は一方向に変位する
ことになる。
【0148】図17Dに示すように、印加電圧Vが上昇
するに従って、相転移させるのに十分な電界強度の領域
が徐々に広がり、上部電極40aから遠い領域において
も相転移が生じることになる(相転移領域Ztの拡
大)。この場合、相転移領域Ztの拡大に応じてアクチ
ュエータ部12の機械的変位も大きくなる。
【0149】このように、第2の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Bの第1のアナログ変位タイプにおい
ても、前記第1の実施の形態に係るセラミック素子10
0A(アナログ変位タイプ)と同様に、印加電圧Vの上
昇に応じてアクチュエータ部12の屈曲変位量がアナロ
グ的に変化することとなる。
【0150】次に、第2の実施の形態に係るセラミック
素子100Bの第2のアナログ変位タイプは、図19A
に示すように、上部電極40aの面積Aと下部電極40
bの面積Bが0.5<(A/B)<2の関係を有するも
のであって、かつ、反強誘電体膜22の膜厚分布のばら
つきが20%以上となるように構成されている。
【0151】ここで、この第2のアナログ変位タイプの
動作原理について図19A〜図19Dを参照しながら説
明する。
【0152】最初に、上部電極40a及び下部電極40
bをそれぞれ例えば接地電位として、上部電極40a及
び下部電極40b間の印加電圧Vを0とした場合は、ア
クチュエータ部12に電界は生じないため、初期状態、
即ち、一方向への屈曲変位は生じない。
【0153】次に、前記上部電極40a及び下部電極4
0b間に印加される電圧VをV1、V2及びV3という
ように徐々に電圧値(レベル)を上げていった場合につ
いてみると、まず、印加電圧V=V1(>0V)のと
き、即ち、印加電圧Vが前記所定電圧Vdよりも小さい
電圧V1のときは、アクチュエータ部12に発生する電
界が弱いため、反強誘電体膜22には相転移は生じず、
このため、アクチュエータ部12の一方向への屈曲変位
は生じない。
【0154】図19Cに示すように、印加電圧Vが前記
所定電圧Vdを越えた段階から、反強誘電体膜22に発
生する電界分布のうち、強電界部分(例えば上部電極4
0aと下部電極40bとの間隔が狭い領域)が相転移し
(相転移領域Ztの発生)、該強電界部分の相転移に伴
って反強誘電体膜22に機械的変位が発生する。この変
位は振動部18によって増幅され、アクチュエータ部1
2は一方向に変位することになる。
【0155】図19Dに示すように、印加電圧Vが更に
上昇するに従って、相転移させるのに十分な電界強度の
領域が徐々に広がり、上部電極40aと下部電極40b
との間隔が広い領域においても相転移が生じることにな
る(相転移領域Ztの拡大)。この場合、相転移領域Z
tの拡大に応じてアクチュエータ部12の機械的変位も
大きくなる。
【0156】このように、第2の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Bの第2のアナログ変位タイプにおい
ても、前記第1のアナログ変位タイプと同様に、印加電
圧Vの上昇に応じてアクチュエータ部12の屈曲変位量
がアナログ的に変化することとなる。 次に、デジタル
変位タイプについての動作原理について図20A〜図2
0Dの動作概念図及び図21の屈曲変位特性を参照しな
がら説明する。
【0157】最初に、図20Aに示すように、上部電極
40a及び下部電極40bをそれぞれ例えば接地電位と
して、上部電極40a及び下部電極40b間の印加電圧
Vを0とした場合は、アクチュエータ部12に電界は生
じないため、初期状態、即ち、一方向への屈曲変位は生
じない。
【0158】次に、上部電極40a及び下部電極40b
間に印加される電圧VをV1、V2及びV3というよう
に徐々に電圧値(レベル)を上げていった場合について
みると、まず、図20Bに示すように、印加電圧V=V
1(>0V)のとき、即ち、印加電圧Vが所定電圧Vd
(例えば110V)よりも小さい電圧V1のときは、ア
クチュエータ部12に発生する電界が弱いため、反強誘
電体膜22には相転移は生じず、このため、アクチュエ
ータ部12の一方向への屈曲変位は生じない(図21の
電圧V1時における屈曲変位量参照)。
【0159】図20Cに示すように、印加電圧Vが前記
所定電圧Vdを越えた段階、例えば印加電圧V=V2の
段階において、アクチュエータ部12は急激に一方向に
変位する(図21の電圧V2時における屈曲変位量参
照)。これは、上部電極40aの面積Aと下部電極40
bの面積Bが0.5<(A/B)<2の関係を有し、か
つ、反強誘電体膜22の膜厚分布のばらつきが20%未
満の関係にあり、前記印加電圧Vによって発生する電界
分布が均一であるため、わずかな電圧上昇で大半の領域
が相転移領域Ztとなるからである。従って、アクチュ
エータ部12は、印加電圧Vが所定電圧Vdを越えた時
点で最大変位量まで急激に変化することとなる。
【0160】図20Dに示すように、印加電圧Vが前記
電圧V2よりも上昇して例えば電圧V3となった時点に
おいては、アクチュエータ部12に発生する電界が強い
ことから、反強誘電体膜22のうち、上部電極40a及
び下部電極40b間に挟まれた領域全体が相転移領域Z
tとなって、アクチュエータ部12の一方向への変位量
は、印加電圧Vが所定電圧Vdを越えた段階で最大変位
量まで変化しているため、電界が強いにも拘わらずその
変位量は変わらない(図21の電圧V3時における屈曲
変位量参照)。
【0161】このように、前記デジタル変位タイプにお
いては、印加電圧Vの上昇に応じてアクチュエータ部1
2の屈曲変位量が徐々に増加するという特性ではなく、
印加電圧Vが所定電圧Vdを越えた時点で、アクチュエ
ータ部12が急激に最大変化量までデジタル的に変化す
ることとなる。
【0162】図21にデジタル変位タイプの屈曲変位特
性の一例を示す。この図21の屈曲変位特性を示すセラ
ミック素子は、印加電圧Vが約110Vとなった時点で
最大変位量までデジタル的に変位する素子であり、反強
誘電体膜22の平均膜厚tは15μm、振動部18の寸
法は、平面形状が直径1mmの円形であって、厚みが
0.01mmである。
【0163】この第2の実施の形態に係るセラミック素
子100B(第1及び第2のアナログ変位タイプ並びに
デジタル変位タイプ)においても、巨視的には前記第1
の実施の形態に係るセラミック素子100Aと同様の作
用・効果(図6A〜図6C参照)を奏し、上部電極40
a及び下部電極40bへの印加電圧Vに応じて機械的変
位量がアナログ的あるいはデジタル的に変化し、更に印
加電圧Vの印加終了後における電圧無負荷状態におい
て、電圧印加時と同等の変位量を維持することができ
る。
【0164】次に、第2の実施の形態に係るセラミック
素子100Bの変形例(100Ba)について図22〜
図23Bを参照しながら説明する。
【0165】この変形例に係るセラミック素子100B
aは、図22に示すように、前記第2の実施の形態に係
るセラミック素子100Bとほぼ同様の構成を有する
が、上部電極40aと下部電極40bとの間隔が広い領
域(c)と狭い領域(d)を有する点で異なる。これ
は、反強誘電体膜22の膜厚分布を選択的に形成するこ
とで達成できる。
【0166】上部電極40aと下部電極40bとの間隔
が狭い領域(d)は、上部電極40a及び下部電極40
b間の距離が小さいため、上部電極40a及び下部電極
40b間に一定電圧を印加した場合、常に、上部電極4
0aと下部電極40bとの間隔が広い領域(c)(電極
40a及び40b間の距離が大きい)よりも高い電界が
発生する。
【0167】そのため、上部電極40a及び下部電極4
0b間に印加される電圧が低いときは、図23Aに示す
ように、ある電圧範囲(電圧レベルV1〜V2)で、前
記反強誘電体膜22のうち、上部電極40aと下部電極
40bとの間隔が狭い領域(d)に対応する部分だけが
印加電圧の上昇に応じて相転移領域が広がり、前記印加
電圧Vのレベルに応じた変位量ほど一方向に屈曲変位す
ることになる。
【0168】次に、印加電圧Vが、前記電圧範囲よりも
大きな電圧範囲(電圧レベルV2〜V3)である場合
は、図23Bに示すように、上部電極40aと下部電極
40bとの間隔が広い領域に対応する部分も印加電圧V
の上昇に応じて相転移領域が広がることから、該部分も
前記上部電極40a及び下部電極40bとの間隔が狭い
領域(d)と共に、印加電圧Vのレベルに応じた変位量
ほど一方向に屈曲変位することになる。
【0169】結果として、この第2の実施の形態に係る
セラミック素子の変形例100Baにおいても、前記第
1の実施の形態に係るセラミック素子の変形例100A
aと同様に、空間的に分離した複数の領域において、そ
れぞれ変位形態が異なるアクチュエータ部12を得るこ
とができる。
【0170】前記第1の実施の形態に係るセラミック素
子100A(変形例100Aaも含む)においては、ア
クチュエータ部12に形成される電極パターンとして、
反強誘電体膜22の表面に一対の電極24a及び24b
を形成するようにし、第2の実施の形態に係るセラミッ
ク素子100B(変形例100Baも含む)において
は、アクチュエータ部12に形成される電極パターンと
して、反強誘電体膜22の上面及び下面にそれぞれ上部
電極40a及び下部電極40bを形成するようにした
が、その他、1つのセラミック素子内において、あるい
は1つの連続した反強誘電体膜22内において、電極パ
ターンが、第1の実施の形態に係るセラミック素子10
0Aと同様の電極パターンの領域と第2の実施の形態に
係るセラミック素子100Bと同様の電極パターンの領
域とが共存するようにしてもよい。
【0171】また、1つのセラミック素子内において、
あるいは1つの連続した反強誘電体膜22内において、
アナログ変位タイプとデジタル変位タイプとが共存する
ような構成を採用することも可能である。
【0172】次に、第1及び第2の実施の形態に係るセ
ラミック素子100A及び100Bにおける前記アクチ
ュエータ部12の各構成部材、特に各構成部材の材料等
の選定について説明する。
【0173】まず、振動部18を構成するセラミックス
としては例えば酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、
酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、
窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物
等を用いることができる。
【0174】安定化された酸化ジルコニウムは振動部1
8の厚さが薄くても、機械的強度が高いこと、靱性が高
いことなどから特に好ましい。安定化された酸化ジルコ
ニウムとは、安定化酸化ジルコニウム及び部分安定化酸
化ジルコニウムを包含する。
【0175】安定化酸化ジルコニウムを得るための安定
化剤としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸
化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウ
ム、酸化セリウム又はその他の希土類金属の酸化物等を
1〜30モル%含有する。特に、振動部18の機械的強
度を高めるために、酸化イットリウムを1.5〜6モル
%含有することが望ましく、更に好ましくは2〜5モル
%含有することが好ましい。
【0176】また、部分安定化ジルコニウムを主成分と
する振動部18を用いる場合、更に0.1〜5モル%の
酸化アルミニウム、あるいは0.1〜10モル%の酸化
チタン、又は酸化チタンと酸化アルミニウムの混合物を
含有させることも、相対的変位量の増大、あるいは振動
部18と反強誘電体膜22との反応性、密着性を制御す
る上で適宜添加することが望ましい。
【0177】即ち、例えば反強誘電体膜22として下記
組成を用い、振動部18と反強誘電体膜22との密着性
を向上したい場合には、酸化アルミニウムを0.1モル
%添加することが好ましい。
【0178】Pb0.99Nb0.02{[Zrx Sn1-x
1-y Tiy 0.983 但し、0.5 <x< 0.6, 0.05 <y< 0.063, 0.01 <
Nb< 0.03 これは、特に、第1の実施の形態に係るセラミック素子
100Aのように、反強誘電体膜22の他主面が振動部
18と密着し、相対する一主面上に一対の電極24a及
び24bが形成された構成のセラミック素子の場合に好
ましい。
【0179】逆に、振動部18と反強誘電体膜22との
密着を阻害したい場合には、酸化チタンを0.1〜10
モル%添加することが好ましい。これは、特に、第2の
実施の形態に係るセラミック素子100Bのように、振
動部18上に下部電極40bを形成し、その上に反強誘
電体膜22を形成し、更にその上に上部電極40aを形
成する構成のセラミック素子の場合に特に好ましい。そ
の理由は、例えば図22に示すように、下部電極40b
上から外方へ延びた(あるいは張り出した)反強誘電体
膜22の外縁部22aが振動部18と密着結合した場合
に生ずる結合部(反強誘電体膜22と振動部18との結
合部)の拘束により変位量が低下することを防止できる
からである。
【0180】なお、酸化アルミニウムを含有させた振動
部18において、振動部18と反強誘電体膜22との密
着を阻害したい場合には、酸化アルミニウム量を2モル
%以下とし、かつ厚膜形成方法により反強誘電体膜22
を形成するに際して、焼成後に反強誘電体膜22となる
ペーストを厚膜形成方法により塗布した後、焼成前に酸
化雰囲気下で加熱して脱バインダー処理を施し、その
後、所定の雰囲気で反強誘電体膜22を焼成することも
好ましい。
【0181】ここで述べた酸化アルミニウムや酸化チタ
ンは、安定化酸化ジルコニウム原料に混合添加してもよ
いが、安定化酸化ジルコニウム原料を合成する過程で共
沈法等により混合添加することにより、より均一な原料
粉末が得られ、ひいては均一な組織で機械的強度、耐久
性等により優れた振動部18を得ることができる。
【0182】振動部18は多数のセラミックス結晶から
なるが、振動部18の機械的強度を高めるため、結晶粒
の平均粒径は0.05〜2μmであることが望ましい。
【0183】スペーサプレート10B及び閉塞プレート
10Cは、グリーンシートの積層及び焼成一体化により
振動部18及び固定部20として結合一体化されるた
め、同じ種類のセラミックスであることが望ましい。
【0184】但し、アルミナ等の添加量については、積
層、焼成一体化後の基体10のうねり等の歪みを緩和す
るため、必要に応じて、振動部18と異なる添加量に調
整することが望ましい。
【0185】なお、セラミックスの焼結助剤として一般
には粘土等を加えることもあるが、反強誘電体膜22と
の反応性を高めすぎて反強誘電体膜22の組成や特性が
変化しないように助剤成分を調整する必要がある。即
ち、基体10中の酸化珪素等は、重量比で3%以下、更
に好ましくは1%以下となるように制限することが望ま
しい。
【0186】反強誘電体膜22の材料としては、ジルコ
ン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛と
からなる成分を主成分とするもの、更にはジルコン酸鉛
に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸
鉛とからなる成分に対してチタン酸鉛やニオブ酸鉛を添
加したものが望ましい。
【0187】特に下記の組成のようにジルコン酸鉛とス
ズ酸鉛からなる成分を含む反強誘電体膜22を第1及び
第2の実施の形態に係るセラミック素子100A及び1
00Bのような膜型素子として適用する場合、比較的低
電圧で駆動することができるため、特に好ましい。
【0188】Pb0.99Nb0.02{[Zrx Sn1-x
1-y Tiy 0.983 但し、0.5 <x< 0.6, 0.05 <y< 0.063, 0.01 <
Nb< 0.03 また、この反強誘電体膜22は、多孔質であってもよ
く、多孔質の場合には気孔率30%以下であることが望
ましい。
【0189】なお、反強誘電体膜22の原料として用い
る反強誘電体粉末は、印刷用ペーストの調合前に、乾式
振動ミル、乾式アトライタ等により乾式粉砕すること
が、より緻密で屈曲変位特性の高い反強誘電体膜22を
得る上で好適である。
【0190】この場合、特に、前記反強誘電体膜22の
材料として、上述した組成にAgを酸化銀換算で1〜1
0重量%含有することが、より緻密で大きな変位を得る
上で、また、より安定な形状記憶特性を得る上で好適で
ある。
【0191】Agを含有させる手段としては、反強誘電
体膜22を合成する過程において、酸化物の形態で他の
原料粉末と同時に添加してもよいし、予め合成した反強
誘電体材料粉末に、酸化銀として、あるいは硝酸銀の水
溶液として粉砕混合してもよい。また、あるいは印刷ペ
ーストを調合する際に、酸化銀粉末の形態やAgの有機
金属化合物の形態で混合してもよい。
【0192】そして、反強誘電体膜22の厚さと振動部
18の厚さとは、同次元の厚さであることが望ましい。
なぜなら、振動部18の厚さが極端に(1桁以上)、反
強誘電体膜22よりも厚くなると、反強誘電体膜22の
焼成工程における収縮に対して振動部18がその収縮を
妨げるように拘束するため、反強誘電体膜22が振動部
18から剥離しやすくなったり、反強誘電体膜22の緻
密化を阻害したり、更には焼成後の反強誘電体膜22の
中に残留応力が存在して特性を低下させる要因となる。
【0193】反対に、厚さの次元が同程度であれば、反
強誘電体膜22の焼成工程における収縮に振動部18が
追従して変形しやすくなり、緻密で高変位な特性を有す
る反強誘電体膜22を得ることができる。
【0194】具体的には、振動部18の厚さは1〜50
μmが好ましく、3〜20μmが更に好ましい。一方、
反強誘電体膜22の平均厚さは、1〜100μmが好ま
しく、3〜50μmが更に好ましく、5〜40μmが最
も好ましい。
【0195】電極24a及び24b(40a及び40
b)は、振動部18や反強誘電体膜22に対して薄い方
が、アクチュエータ部12の変位動作に対する拘束力が
弱まるため好ましく、具体的には、厚さ0.01μm〜
10μmであることがより好ましく、0.01〜5μm
が更に好ましい。
【0196】前記電極24a及び24b(40a及び4
0b)の材質は、室温で固体であって導電性の物質で構
成されていることが好ましい。例えば、アルミニウム、
チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、
ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、銀、ス
ズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、
鉛、ベリリウム等を含有する金属単体又は合金が挙げら
れる。これらの元素が任意の組み合わせで含有されてい
てもよいことはいうまでもない。
【0197】第2の実施の形態に係るセラミック素子1
00Bのように、下部電極40bが振動部18と反強誘
電体膜22との間に介在する構成のセラミック素子の場
合には、反強誘電体膜22の焼成温度に耐える耐熱性を
有することが望ましく、必要に応じて耐蝕性に優れた材
質を選んでもよい。
【0198】次に、第1及び第2の実施の形態に係るセ
ラミック素子100A及び100Bの製造方法を説明す
る。
【0199】振動部18及び固定部20を含む基体10
は、グリーンシート又はグリーンテープである成形層を
熱圧着等で積層し、次いで焼成することで一体化するこ
とができる。例えば、図1に示す基体10では、3層の
グリーンシート又はグリーンテープを積層するが、その
第2層に空所14となる所定形状の窓部を積層前に予め
設けておけばよい。また、成形型を用いる加圧成形、鋳
込み成形、射出成形等によって、成形層を作製し、切
削、研削加工、レーザ加工、プレス加工による打ち抜き
等の機械加工により、空所(窓部)14等を設けてもよ
い。図1では、3層構造となっているが、4層構造、5
層構造として、基体10の剛性を向上させたり、裏面配
線板として使用する層を同時に積層して形成してもよ
い。
【0200】次に、前記基体10の振動部18上にアク
チュエータ部本体26を形成する。この場合、金型を用
いたプレス成形法又はスラリー原料を用いたテープ成形
法等によって反強誘電体膜22を成形し、この焼成前の
反強誘電体膜22を焼成前の基体10における振動部1
8上に熱圧着で積層し、同時に焼成して、基体10の振
動部18上に反強誘電体膜22を形成する方法と、以下
に示す膜形成法とがある。
【0201】膜形成法は、振動部18上に反強誘電体膜
22と一対の電極24a及び24bをこの順序で積層す
る方法であるが、例えば、スクリーン印刷のような厚膜
法、ディッピング等の塗布法、イオンビーム、スパッタ
リング、真空蒸着、イオンプレーティング、化学蒸着法
(CVD)、メッキ等の薄膜法等が適宜用いられる。一
対の電極24a及び24bにつながる配線や端子パッド
の形成も前記厚膜法や薄膜法が用いられる。
【0202】第1の実施の形態に係るセラミック素子1
00Aは、その一例として、例えば以下のような製法が
採用される。まず、基体10の振動部18上にスクリー
ン印刷法によって反強誘電体膜22を形成する。その
後、焼成を行って、基体10の振動部18上に反強誘電
体膜22を接合する。この場合、基体10と反強誘電体
膜22との接合性を向上させて、これら基体10と反強
誘電体膜22との一体化を有利にするには、反強誘電体
膜22に対する焼成を反強誘電体材料の雰囲気下におい
て密閉容器内で実施することが好ましい。更に好ましく
は、雰囲気濃度は高くすることが望ましい。
【0203】雰囲気焼成は次の方法等により行われる。
【0204】(1)反強誘電体材料と同成分系の粉末を
蒸発源として一緒に密閉容器内に置く。
【0205】(2)反強誘電体材料の組成として、鉛成
分を予め過剰とする。
【0206】(3)反強誘電体材料の板をセッターとし
て使用する。
【0207】また、焼成温度は、900〜1400℃が
好ましく、更に好ましくは1100〜1400℃が望ま
しい。
【0208】前記基体10と反強誘電体膜22との接合
が終了した後、一対の電極24a及び24bを含む配線
層をスクリーン印刷にて積層する。この配線層のパター
ンは、例えば図55に示すように、垂直選択線58のパ
ターン、信号線60のパターン及び電極パターンであっ
て、電極パターンは、この段階(スクリーン印刷段階)
では図3に示すような渦巻き形状や図4に示すような多
枝形状ではなく、単に円形状とされた状態である。
【0209】その後、例えばエキシマレーザによって円
形状の電極パターンの所要箇所を蒸発させることによ
り、図3に示すような渦巻き形状や図4に示すような多
枝形状にパターニングして一対の電極24a及び24b
とする。
【0210】前記エキシマレーザによるパターニングが
終了した後、熱処理することにより、基体10上へのア
クチュエータ部本体26の形成が終了する。なお、薄膜
法により、一対の電極24a及び24bを形成する場合
においては、必ずしも前記熱処理は必要としない。
【0211】次に、前記第2の実施の形態に係るセラミ
ック素子100Bを製造する場合について説明すると、
この場合、膜形成法として振動部18上に下部電極40
b、反強誘電体膜22、上部電極40aをこの順序で積
層する方法が採用されるわけだが、具体的には、例え
ば、その一例として以下のような製法が採用される。
【0212】まず、基体10の振動部18に、予め酸化
アルミニウムを1モル%添加して形成し、該振動部18
上に白金粉末と有機バインダーを主成分とするペースト
をスクリーン印刷法によって印刷塗布し、乾燥工程を経
た後に焼成することによって、下部電極40bを形成す
る。
【0213】その後、反強誘電体粉末と有機バインダー
を主成分とするペーストを同じくスクリーン印刷法によ
って印刷塗布し、乾燥後、酸化雰囲気中で500〜60
0℃1時間の脱脂処理を行う。
【0214】次いで、第1の実施の形態の場合と同様
に、雰囲気焼成を行い、反強誘電体膜22を形成する。
その後、金を含有する有機金属化合物と溶剤とを主体と
するペーストをスクリーン印刷法によって印刷塗布し、
乾燥後、焼成して上部電極40aを形成する。
【0215】次に、第3の実施の形態に係るセラミック
素子100Cについて図24〜図53を参照しながら説
明する。
【0216】この第3の実施の形態に係るセラミック素
子100Cは、上述した第1及び第2の実施の形態に係
るセラミック素子100A及び100Bのように、振動
部18上に反強誘電体膜22を形成してなるセラミック
素子において、その形状記憶効果をより高めたセラミッ
ク素子を提供するものである。
【0217】この第3の実施の形態に係るセラミック素
子100Cを作製するにあたって、本発明者らは、図2
5に示すように、反強誘電体膜22の両面に電極102
a及び102bを形成したいわゆるバルク型素子104
と、例えば図1に示すように、振動部18上に形成され
た反強誘電体膜22上に一対の電極24a及び24bを
形成してなる第1の実施の形態に係るセラミック素子1
00Aと、例えば図14に示すように、振動部18上に
下部電極40b、反強誘電体膜22及び上部電極40a
を順次積層してなる第2の実施の形態に係るセラミック
素子100Bについて、その形状記憶効果を確かめた。
【0218】その結果、図25に示すバルク型素子10
4は、相転移電界を超える電圧を印加した後、印加電圧
を下げて数秒間以上保持しても、屈曲変位が維持される
が、前記セラミック素子100A及び100Bにおいて
は、相転移電界を超える電圧を印加した後、印加電圧を
下げると、数ミリ秒又は数10ミリ秒間の保持のあいだ
で屈曲変位が減少し、短時間の形状記憶効果しか得られ
ないことがわかった。特に、第1の実施の形態に係るセ
ラミック素子100Aは、第2の実施の形態に係るセラ
ミック素子100Bよりも屈曲変位の減少率がわずかに
大きいことが判明した。
【0219】これは、反強誘電体膜22の焼成過程から
冷却過程において、振動部18の応力的な拘束により、
反強誘電体膜22に残留応力が発生し、有害な結晶歪み
を誘起していることが要因と推定される。従って、後述
する表示装置200に応用した場合に、輝度が低下す
る、あるいは隣接画素に対する駆動時の電圧変動によっ
て輝度の変動が生じるおそれがある。
【0220】そこで、本発明者らは、第1の実施の形態
に係るセラミック素子100Aにおける前記不都合を解
決するために、以下の5つの条件について検討を行っ
た。
【0221】 (1)中間層106(図24参照)の形成 (2)基体10及び振動部18の薄膜化 (3)荷重焼成(ホットプレス法:図29参照) (4)組成の見越し補正及び鉛成分の後補正並びに酸化
スズ粉末の微粉化 (5)反強誘電体膜22の焼結後における振動部18の
沈み込み量の抑制 第3の実施の形態に係るセラミック素子100Cは、前
記5つの条件をすべて満足するものであり(図24参
照)、これら5つの条件による効果並びに有効範囲につ
いて詳細に説明する。
【0222】まず、変位保持率について定義付けをして
おく。変位保持率とは、反強誘電体膜22に対してある
ピーク電圧(例えば130V)を印加して屈曲変位を行
わせた後に、印加電圧を下げて所定電圧(例えば50
V)における変位を測定し、ピーク電圧における変位量
を100%としたときの、電圧降下時の前記所定電圧印
加時における変位の百分率を指す。
【0223】印加電圧に対する前記変位動作は、例えば
図52に示すように、例えば初期値(0V)から正のピ
ーク電圧(130V)にかけて示す曲線に沿って変位
し、正のピーク電圧から初期値にかけてで示す曲線に
沿って変位し、初期値から負のピーク電圧(−130
V)にかけてで示す曲線に沿って変位し、負のピーク
電圧から初期値にかけてで示す曲線に沿って変位す
る。
【0224】1.振動部18と反強誘電体膜22の間へ
の中間層106の形成 中間層106の形成とは、例えば図24に示すように、
反強誘電体膜22の上面に一対の電極24a及び24b
が形成されたセラミック素子100Cにおいて、振動部
18と反強誘電体膜22との間に金属膜層(即ち、中間
層106)を形成することである。この中間層106の
形成によって、変位保持率を70%程度に高めることが
できた。
【0225】これは、振動部18と反強誘電体膜22と
の間に、高温で軟らかい金属膜層(中間層106)を介
在させることで、反強誘電体膜22の焼成過程から冷却
過程において、振動部18の応力的な拘束によって反強
誘電体膜22に発生する応力が緩和されていることによ
るものと推定される。
【0226】そして、前記中間層106の材質として好
ましいのは、Pt又はPd、あるいは両者の合金であ
る。中間層106の厚みとしては、1μm以上、10μ
m以下が適当である。好ましくは2μm以上、6μm以
下である。
【0227】なぜならば、1μm未満では上述した応力
緩和の効果が現れず、10μmを超えると中間層106
の焼成時における焼成収縮により、中間層106が振動
部18から剥離してしまうからである。
【0228】ここで、1つの実験例(便宜的に第1の実
験例と記す)について説明する。この第1の実験例は、
中間層106の厚みによって変位保持率がどのように変
わるかを実施例1〜実施例3並びに比較例1〜比較例3
に基づいて確かめたものである。
【0229】実施例1はPtの中間層106を4μm形
成したものであり、実施例2はPdの中間層106を2
μm形成したものであり、実施例3はPdの中間層10
6を8μm形成したものである。一方、比較例1はPt
の中間層106を15μm形成したものであり、比較例
2はPtの中間層106を0.5μm形成したものであ
り、比較例3は中間層106を形成しなかったものであ
る。
【0230】その実験結果を図26に示す。中間層10
6が15μmである比較例1の場合、中間層の剥離によ
り測定できず、中間層106が0.5μmである比較例
2の場合、変位保持率が58%程度と低下し、中間層1
06のない比較例3にいたっては、変位保持率が54%
と非常に低くなっている。
【0231】従って、この結果から中間層106の厚み
としては、1μm以上、10μm以下が適当であり、好
ましくは2μm以上、6μm以下である。
【0232】2.基体及び振動部の薄膜化 振動部18の厚みを反強誘電体膜22の厚みよりも薄く
し、併せて基体10の全体の厚みを薄膜化する。これに
よって、反強誘電体膜22に対する基体10の応力的な
拘束が減るため、反強誘電体膜22の焼結性の増加と、
応力緩和の効果が得られる。
【0233】ここで、1つの実験例(便宜的に第2の実
験例と記す)について説明する。この第2の実験例は、
基体10の厚みを変えた場合の変位保持率の変化を実施
例4〜実施例7に基づいて確かめたものである。その結
果を図27に示す。この図27の表中、基体10の厚み
の( )内の数値は順に、振動部18、スペーサプレー
ト10B、ベースプレート10A(図24参照)の厚み
である。実施例4〜実施例7はいずれも中間層106が
なく、荷重焼成並びに粉末の見越し補正及び鉛成分の後
補正を行わず、SnO2 の比表面積を13m2 /gとし
たものである。
【0234】この実験結果から、振動部18の厚みを反
強誘電体膜22の厚みよりも薄くし、併せて基体10の
全体の厚みを薄膜化することが変位保持率を高める上で
好ましいことがわかる。
【0235】前記例は、図28に示すように、振動部1
8の中心を通る最短寸法mにおいて、固定部20の上面
と振動部18の上面との境界部分を境界点kと定義し、
該境界点kから反強誘電体膜22の形成端までの距離を
Ln(μm)、振動部18の厚みをtv(μm)とした
とき、Ln<tv×15を満足する場合に成立し、この
場合、基体10の厚みtbは、tb≦350μmが適当
であり、好ましくはtb≦250μm、より好ましくは
tb≦130μmであり、最も好ましくはtb≦70μ
mである。一方、Ln≧tv×15を満足する場合は、
振動部18の厚みtvは1〜50μmが好ましく、3〜
20μmが更に好ましい。一方、反強誘電体膜22の平
均厚さは、1〜100μmが好ましく、3〜50μmが
更に好ましく、5〜40μmが最も好ましい。
【0236】3.荷重焼成(ホットプレス法) 図29に示すように、基体10上に形成された反強誘電
体膜22に荷重(ホットプレス荷重)Pをかけながら反
強誘電体膜22を焼成処理する方法である。基体10上
に反強誘電体膜22を印刷により形成した段階のもの
を、以下、サンプル108と記す。
【0237】具体的な方法としては、例えば図30Aに
示すように、ヒータ110への通電によって焼成を行う
電気炉112の内部に台114を設置し、該台114の
上に、基体10の底面が台114の上面に接するように
してサンプル108を載置し、該サンプル108の上部
におもし116を載せた状態で焼成する方法や、図30
Bに示すように、前記電気炉112内に設置された台1
14の上に、反強誘電体膜22の上面が台114の上面
に接するようにしてサンプル108を載置し、基体10
の底面におもし116を載せた状態で焼成する方法等が
ある。
【0238】この荷重焼成によって、反強誘電体膜22
の焼結性が増し、より緻密な膜を得ることができる。
【0239】ホットプレス荷重Pとしては0.4kg/
cm2 以上がよい。但し、振動部18の厚みに応じて振
動部18が破壊しない程度の荷重とする。荷重が大きい
と、スペーサプレート10Bと振動部18の端部s(図
29参照)において、振動部18が割れるおそれがある
からである。
【0240】ここで、1つの実験例(便宜的に第3の実
験例と記す)について説明する。この第3の実験例は、
ホットプレス荷重Pを変えた場合の反強誘電体膜22の
緻密度の変化を実施例8及び比較例4〜比較例6に基づ
いて確かめたものである。膜の緻密度とは、緻密度=1
00%−表面の気孔率である。
【0241】その実験結果を図31に示す。この結果か
らホットプレス荷重Pとしては0.4kg/cm2 以上
で、その上限は振動部18の厚みによって異なり、好ま
しくは振動部18が破壊しない程度の荷重であることが
望ましい。
【0242】4.組成の見越し補正及び鉛成分の後補正
並びに酸化スズ粉末の微粉化 a.組成の見越し補正 反強誘電体膜22を形成するにあたり、反強誘電体セラ
ミック材料の粉末を合成するが、その際に、反強誘電体
膜22における焼成中の振動部18との相互拡散による
組成変動を見越して、反強誘電体セラミック材料の粉末
組成を最適組成からずらして調製する。
【0243】具体的には、反強誘電体膜22の焼成時に
おいて振動部18からジルコニウムが拡散流入し、反強
誘電体膜22からチタニウムが振動部18へ拡散流出し
ていくため、予めジルコニウムの量を減らし、チタニウ
ムの量を増やしておく。
【0244】なお、各成分の調整量は、焼成条件及び振
動部18の組成、並びに反強誘電体膜22の厚み等とも
関連するため、個々に最適調整量を決定することが重要
である。
【0245】次に、見越し補正をしない通常の合成方法
と見越し補正を行う前記合成方法との違いについて、図
32及び図33の工程ブロック図を参照しながら説明す
る。
【0246】通常の合成方法は、図32に示すように、
反強誘電体セラミック材料の粉末を最適組成に合わせて
秤量し、その後、粉末をボールミルで混合する(50時
間)。その後、混合された粉末に対して1000℃、5
時間の仮焼を施し、次いで、ボールミルで粉砕する(1
0時間)。
【0247】見越し補正を行う合成方法は、図33に示
すように、秤量する粉末の組成が若干異なるものの、全
体として見た場合、その工程は通常の合成方法とほぼ同
じである。この場合、ZrO2 は最適な焼結体組成より
少なめに秤量され、TiO2は最適な焼結体組成より多
めに秤量される。
【0248】ここで、1つの実験例(便宜的に第4の実
験例と記す)について説明する。この第4の実験例は、
見越し補正量によって変位保持率がどのように変わるか
を実施例9−1、実施例9−2、実施例10−1及び実
施例10−2並びに比較例7に基づいて確かめたもので
ある。ここでの見越し補正量とは、加えるZrO2 及び
TiO2 の各量について、それぞれの所定量を100%
とした場合の百分率を示す。
【0249】その実験結果を図34に示す。この結果か
ら、ZrO2 の量は最適な焼結体組成を100%とした
場合の95〜98%であり、かつ/又は、TiO2 の量
は最適な焼結体組成を100%とした場合の102〜1
04%が適当である。
【0250】b.鉛成分の後補正 反強誘電体膜22は、振動部18上にスクリーン印刷法
によって形成されるが、その印刷材料をつくる際、特
に、反強誘電体セラミック材料粉末の合成の際に、予め
酸化鉛を10%少ない組成で合成した後、不足分の10
%を酸化鉛の形態で混合し、その混合材料を反強誘電体
膜形成用の印刷材料として用いる。この場合、酸化鉛の
粉末が混在することで、反強誘電体膜22の焼結性が向
上する。
【0251】この鉛成分の後補正は、図35に示すよう
に、反強誘電体セラミック材料の粉末のうち、酸化鉛を
除いたものを最適組成に合わせて秤量し、酸化鉛のみは
所定配合量の90%とする。その後、これら粉末をボー
ルミルで混合し(50時間)、次いで、混合された粉末
に対して1000℃、5時間の仮焼を施す。その後、酸
化鉛を所定配合量の10%を混合し、ボールミルで混
合、粉砕する(10時間)。
【0252】ここで、1つの実験例(便宜的に第5の実
験例と記す)について説明する。この第5の実験例は、
鉛成分の後補正量によって膜の緻密度がどのように変わ
るかを実施例11〜実施例13並びに比較例10及び比
較例11に基づいて確かめたものである。ここでの鉛成
分の後補正量とは、鉛成分100%中の後補正量(wt
%)を示す。
【0253】その実験結果を図36に示す。この結果か
ら、鉛成分の後補正量は、3%以上、20%以下が適当
であり、好ましくは5%以上、15%以下である。
【0254】c.組成の見越し補正+鉛成分の後補正 反強誘電体セラミック材料の粉末を合成する際に、上述
した組成の見越し補正と鉛成分の後補正を組み合わせる
ことにより、変位保持率が増加し、かつ、反強誘電体膜
22の緻密度を上げることができる。
【0255】この組み合わせに係る合成方法は、図37
に示すように、秤量の段階で、酸化鉛を所定配合量の9
0%とし、ZrO2 を所定量より少なめに秤量し、Ti
2を所定量より多めに秤量する。その後、これら粉末
をボールミルで混合し(50時間)、次いで、混合され
た粉末に対して1000℃、5時間の仮焼を施す。その
後、酸化鉛を所定配合量の10%を混合し、ボールミル
で混合、粉砕する(10時間)。
【0256】d.酸化スズ粉末の微粉化 振動部18上での反強誘電体膜22の均質性と変位特性
を向上させるために、反強誘電体セラミック材料の粉末
の合成の際に、原材料として用いる酸化スズ(Sn
2 )の比表面積を10m2 /g以上にする。この酸化
スズの微粉化は、SnO2 粉末のみを予め粉砕しておい
て秤量に取りかかることで達成できる。
【0257】ここで、1つの実験例(便宜的に第6の実
験例と記す)について説明する。この第6の実験例は、
SnO2 の比表面積の違いによってヒステリシス特性
(電圧−歪み特性)の測定結果がどのように変化するか
を実施例14並びに比較例12及び比較例13に基づい
て確かめたものである。
【0258】その実験結果を図38に示す。比表面積が
5m2 /gの比較例12においては、SnO2 粒子の残
存があるため、組成のばらつきが大きく変位せず、比表
面積が22m2 /gの比較例13においては、SnO2
粒子同士の凝集があるため、組成のばらつきが大きく変
位しなかった。一方、比表面積が13m2 /gの実施例
14においては、図53に示す特性と同様に、良好なヒ
ステリシスを得ることができた。
【0259】従って、SnO2 の比表面積は8m2 /g
以上、20m2 /g以下とすることが適当である。
【0260】5.反強誘電体膜の焼結後における振動部
の沈み込み量の抑制 前記(2)の条件で示したように、反強誘電体膜22の
厚みを振動部18の厚みよりも厚くしていくと、反強誘
電体膜22の焼成時における焼成収縮力が増加し、図3
9Aに示すように、振動部18の下方へのたわみ変形が
促進され、振動部18の沈み込み量が大きくなる。
【0261】例えば、スペーサプレート10Bの厚みが
150μmの場合、振動部18の沈み込み量が最大15
0μmまで発生する可能性がある。振動部18の沈み込
み量が大きいと、反強誘電体膜22の中央部付近の表面
が基体10の表面よりも沈み込んでしまい、アクチュエ
ータ部12としたときの屈曲変位が小さくなるおそれが
ある。
【0262】そこで、図39Bに示すように、振動部1
8直下の空間、即ち、空所14の深さを15μm以下に
する。これにより、振動部18の沈み込み量を15μm
以下に抑制でき、反強誘電体膜22の中央付近の表面が
基体10の表面よりも沈み込むことがなくなる。これ
は、図12A〜図13で示す条件を簡単に実現できる手
法でもあり、アクチュエータ部12の一方向変位を確実
に達成させることができる。
【0263】次に、空所14の深さが15μm以下であ
るセラミック素子の2種類の製造方法について説明す
る。
【0264】まず、第1の方法は、基体10は、グリー
ンシート又はグリーンテープである成形層を熱圧着等で
積層し、次いで焼成することで一体化することができ
る。例えば、図40に示すように、3層のグリーンシー
ト又はグリーンテープ(ベースプレート10Aとなる層
120A、スペーサプレート10Bとなる層120B及
び閉塞プレート10Cとなる層120C)を積層する
が、そのうちの第2層(スペーサプレート10Bとなる
層120B)に、後に空所14となる所定形状の窓部1
22を積層前に予め設けておけばよい。
【0265】また、成形型を用いる加圧成形、鋳込み成
形、射出成形等によって成形層を作製し、切削、研削加
工、レーザ加工、プレス加工による打ち抜き等の機械加
工により、空所14(窓部122)等を設けてもよい。
このときに、第2層120Bの厚みを1〜20μmにす
ることが好ましい。
【0266】第2の方法は、まず、例えば図41Aに示
すように、ベースプレート10Aとなるグリーンシート
又はグリーンテープ120A上に、該グリーンシート又
はグリーンテープ120Aと同素材のペースト124を
印刷法により塗布して第2層(スペーサプレート10B
となる層120B)とする。このときの印刷パターンは
窓部126を設けた形状とする。その後、図41Bに示
すように、前記第2層120Bを含む全面に第3層(閉
塞プレート10Cとなる層120C)を積層し、次い
で、焼成することで、図41Cに示すように、基体10
として一体化することができる。このとき、前記窓部1
26の部分に空所14が形成され、振動部18が形成さ
れることになる。この場合も、第2層120B(この例
では、ペースト124)の印刷パターンの厚みを1〜2
0μmにすることが好ましい。
【0267】ここで、1つの実験例(便宜的に第7の実
験例と記す)について説明する。この第7の実験例は、
第2層(スペーサプレート10Bとなる層120B)と
反強誘電体膜22の厚みによって、反強誘電体膜22の
焼成後における振動部18の沈み込み量δとピーク電圧
通常印加時の変位がどのように変わるかを実施例15及
び実施例16並びに比較例14及び比較例15に基づい
て確かめたものである。
【0268】振動部18の沈み込み量δとは、図42に
示すように、反強誘電体膜22の焼成後において、振動
部18の上面中、空所14の中央部分に対応する部分
が、基体10の上面よりも下方に沈み込んだ量を示す。
【0269】第7の実験結果を図43に示す。この第7
の実験例においては、図44に示すように、パルス状の
駆動波形(電圧)をセラミック素子に与え、そのときの
屈曲変位量を測定している。この波形は、例えば表示装
置のようなマトリクス状に配置された行電極と列電極と
からなる少ない数の制御電極で駆動する場合に、実際に
セラミック素子にかかりうる電圧変動を模擬している。
【0270】本来、理想的な状態のセラミック素子にお
いては、図44に示す駆動波形を印加すると、その電圧
−屈曲変位特性は、図45のようなヒステリシス曲線を
描く。
【0271】しかし、実際に製作したセラミック素子、
特に、沈み込み量δが大きいセラミック素子において
は、図46に示すように、最大電圧より低い電圧におい
ても、一旦相転移により生じた変位が徐々に低下したり
(図46中の30V−80Vの保持区間参照)、ある
いは逆にリセットしてゼロになった変位が徐々に増大す
る(図46中の30V−80Vの保持区間参照)。
【0272】これに対して、図39Bに示すように、沈
み込み量δを15μm以下に抑制したセラミック素子に
おいては、図47に示すように、特性上、理想的なセラ
ミック素子に達していないものの、図46の特性と比し
てかなり改善され、高いメモリ効果が得られることを見
い出した。
【0273】なお、図45、図46及び図47において
は、その電圧−屈曲変位特性曲線が見やすいように、縦
軸の変位量のゼロ点を、横軸の時間軸との交点からわざ
とずらして表示した。
【0274】このように、メモリ効果の指標として、図
48に示すように、最大変位量D1に対して、上述の2
つの保持区間及びでの変位差D2の占める割合X=
(D2/D1)×100(%)をとると、以下のように
なる。
【0275】 理想的な場合(図45参照):X=100(%) 沈み込み量δ=25μmのサンプル(図46参照):X
=30(%) 沈み込み量δ=10μmのサンプル(図47参照):X
=80(%) なお、この沈み込み量δの異なる2種類のサンプルにお
いては、ともに、振動部18の厚さ10μmに対し、反
強誘電体膜22の厚さを50μmと5倍の厚さに設定
し、また、電極構成は、下部電極40bと上部電極40
aが反強誘電体膜22を挟む構成とした。
【0276】更に、反強誘電体膜22の厚さを70μm
とし、沈み込み量δを10μmとしたサンプルにおいて
は、X=88%の値を得、同じく反強誘電体膜22の厚
さを80μmとしたサンプルにおいては、X=95%の
値を得た。
【0277】この第7の実験結果から、第2層120B
の厚みが薄いと下方への沈み込みが抑制され、かつ、大
きな変位が得られるが、第2層120Bの厚みが厚いと
前記沈み込みが大きく、変位も小さくなることがわか
る。
【0278】なお、上記の2種類の製造方法のほかに、
更に以下のような方法を採用することも可能である。
【0279】即ち、ベースプレート10Aとなるグリー
ンシートの一主面に、数100℃の加熱で熱分解し、ガ
ス化する有機物ペーストを空所形状のパターンで印刷塗
布し、その後、閉塞プレート10Cとなるグリーンシー
トをその表面に積層し、次いで、焼成することにより、
空所14の深さが15μm以下の基体10を得る。そし
て、上述のように、基体10上に反強誘電体膜22及び
一対の電極24a及び24bを形成することにより、空
所14の深さが15μm以下のセラミック素子を得るこ
とができる。この場合、前記有機物ペーストとしては、
例えばテオブロミン(C7 8 4 2 )を適用するこ
とができる。
【0280】この実施例として、上記と同様に、振動部
18の厚さ10μmに対し、反強誘電体膜22の厚さを
40μmに設定し、沈み込み量δを6μmとしたサンプ
ルを試作したところ、X=92%の値を得、また、反強
誘電体膜22の厚さを60μmにしたサンプルでは、X
=98%の値を得ることができた。
【0281】また、この実施例として、振動部18の厚
さ7μmに対し、反強誘電体膜22の厚さを40μmに
設定し、沈み込み量δを3μmとしたサンプルを試作し
たところ、X=90%の値を得ることができた。
【0282】また、更に別の製造方法としては、ベース
プレート10Aとなるグリーンシートの一主面に、空所
形状のパターンでレーザ光を照射し、表面層を分解除去
し、その後、閉塞プレート10Cとなるグリーンシート
をその表面に積層し、次いで、焼成することにより、空
所14の深さが15μm以下の基体10を得る。そし
て、上述のように、基体10上に反強誘電体膜22及び
一対の電極24a及び24bを形成することにより、空
所14の深さが15μm以下のセラミック素子を得るこ
とができる。この場合、レーザ光としては、グリーンシ
ート組成物中の有機物の化学結合を直接分解しうるエキ
シマレーザが、CO2 レーザ等と比較して、照射表面に
おける熱発生が少なく、付随して生じるグリーンシート
の変形や変質を最小限に抑制できる点で好ましい。
【0283】次に、第3の実施の形態に係るセラミック
素子100Cと同様の構成を有する実施例17と前記5
つの条件を一部において満足しない比較例16について
の各ヒステリシス特性(電圧−屈曲変位特性)と各変位
保持率の違いについて1つの実験例(便宜的に、第8の
実験例と記す)に基づいて図25、図49〜図53を参
照しながら説明する。第8の実験結果を図49に示す。
【0284】まず、比較として、バルク型素子104の
作製条件及び歪み測定条件について説明する。バルク型
素子104は、図25に示すように、反強誘電体仮焼粉
末を一軸プレスで成形し、焼成したものを、12×3×
1mmに加工後、両主面にAg電極102a及び102
bを形成して作製した。そして、一方のAg電極102
a上に歪みゲージ118を貼り付け、両電極102a及
び102b間に周波数0.6Hzで±4kVの電圧eを
印加し、そのときの歪みを導線130a及び130bを
通じて測定した。その測定結果を図50に示す。このバ
ルク型素子104の変位保持率は100〜107%であ
った(図49参照)。
【0285】次に、実施例17に係るセラミック素子の
作製条件は次の通りである。前記(1)の条件である中
間層106として厚み4μmのPt膜を形成し、前記
(2)及び(5)の条件を満足するために、基体10と
して厚みが50μmのもの(振動部18の厚み10μ
m、スペーサプレート10Bの厚み10μm、ベースプ
レート10Aの厚み30μm)を使用した。また、前記
(3)の条件を満足するために、ホットプレス荷重Pを
0.6kg/cm2 とし、前記(4)の条件を満足する
ために、反強誘電体膜22の焼成前組成(即ち、印刷後
の組成)は見越し補正と鉛成分の後補正の組み合わせ
で、かつ、SnO2 粉末の比表面積を11m2/gとし
た。
【0286】そして、反強誘電体膜22上の一対の電極
24a及び24b間に周波数が1kHz、ピーク値が±
130Vのサイン波(図51参照)を印加し、そのとき
の変位量をレーザ変位計を用いて連続的に測定すると、
一例として図52に示すような特性図を得た。この実施
例17においては、ピーク電圧(130V)での変位λ
peと、電圧降下時における所定電圧(50V)での変
位λceから、その変位保持率が81〜95%(図49
参照)であり、形状記憶効果が十分に発揮されているこ
とがわかる。
【0287】一方、比較例16に係るセラミック素子の
作製条件は次の通りである。中間層106は形成せず、
基体10として厚みが310μmのもの(振動部18の
厚み10μm、スペーサプレート10Bの厚み150μ
m、ベースプレート10Aの厚み150μm)を使用し
た。また、荷重焼成は行わず、反強誘電体膜22の焼成
前組成(即ち、印刷後の組成)においては見越し補正及
び鉛成分の後補正とも行わなかった。但し、SnO2
末の比表面積は13m2 /gとした。これは、SnO2
粉末の比表面積が8m2 /g未満、20m2 /gを超え
ると反強誘電性を示さなくなるため、SnO2 粉末の比
表面積は前記(4)の条件の指定組成範囲内とした。
【0288】そして、反強誘電体膜22上の一対の電極
24a及び24b間に周波数が1kHz、ピーク値が±
130Vのサイン波(図51参照)を印加し、そのとき
の変位量をレーザ変位計を用いて連続的に測定すると、
図53に示すような特性図を得た。この比較例16にお
いては、ピーク電圧(130V)での変位λpcと、電
圧降下時における所定電圧(50V)での変位λccか
ら、変位保持率が50〜54%であり(図49参照)、
形状記憶効果が十分でないことがわかる。
【0289】上述した第3の実施の形態に係るセラミッ
ク素子100Cでは、高い変位保持率を得るために、前
記5つの条件をすべて満足させるようにしたが、70%
程度以上の変位保持率を満足させる場合は、前記5つの
条件をすべて満足させる必要はなく、適宜選択して行え
ばよい。
【0290】応用例 応用例1 次に、応用例に係る表示装置200について図54〜図
57を参照しながら説明する。この応用例に係る表示装
置200は、第1の実施の形態に係るセラミック素子1
00A(アナログ変位タイプ及びデジタル変位タイプ)
を表示装置200に適用したものである。従って、図1
と対応するものについては同符号を付してその重複説明
を省略する。
【0291】この応用例に係る表示装置200は、図5
4に示すように、光50が導入される光導波板52と、
該光導波板52の背面に対向して設けられ、かつ多数の
アクチュエータ部12が画素に対応して配列された駆動
部54を有して構成されている。
【0292】駆動部54は、例えばセラミックスにて構
成された基体10を有し、該基体10の各画素に応じた
位置にアクチュエータ部12が配設されている。前記基
体10は、一主面が光導波板52の背面に対向するよう
に配置されており、該一主面は連続した面(面一)とさ
れ、各画素に対応した位置にそれぞれ空所14を有す
る。
【0293】各アクチュエータ部12上には、光導波板
52との接触面積を大きくして画素に応じた面積にする
変位伝達部56が接続されている。この変位伝達部56
は、実質的な発光面積を規定する板部材56aとアクチ
ュエータ部12の変位を板部材56aに伝達するための
変位伝達部材56bを有する。
【0294】変位伝達部56の変位伝達部材56bは、
アクチュエータ部12の変位を直接光導波板52に伝達
できる程度の硬度を有するものが好ましい。従って、上
記変位伝達部材56bの材質としては、ゴム、有機樹
脂、有機接着フイルム、ガラス等が好ましいものとして
挙げられるが、電極層そのもの、あるいは圧電体、ない
しは上述したセラミックス等の材質であってもかまわな
い。最も好ましくは、エポキシ系、アクリル系、シリコ
ーン系、ポリオレフィル系等の有機樹脂又は有機接着フ
イルムがよい。更に、これらにフィラーを混ぜて硬化収
縮を抑制することも有効である。
【0295】板部材56aの材質としては、前記変位伝
達部材56bの材料のほか、エポキシ系、アクリル系、
シリコーン系等の有機樹脂に高屈折率を有するセラミッ
ク粉末、例えばジルコニア粉末、チタニア粉末、酸化鉛
粉末、それらの混合粉末等を高分散させた材料が、発光
効率、平坦性維持の点で望ましい。この場合、樹脂重
量:セラミック粉末重量=1:(0.1〜10)がよ
い。更に、前記組成に平均粒径0.5〜10μmのガラ
ス粉末をセラミック粉末に対して1:(0.1〜1.
0)の割合で添加すると、光導波板52の面との接触
性、離型性が改良されるため好ましい。
【0296】なお、前記板部材56aは、光導波板52
と接触する部分(面)の平坦度、平滑度が、アクチュエ
ータ部12の変位量に比較して十分小さくすることが好
ましく、具体的には、1μm以下、更に好ましくは0.
5μm、特に好ましくは0.1μm以下である。但し、
変位伝達部56の光導波板52と接触する部分(面)の
平坦度は、変位伝達部56が光導波板52に接触した状
態での隙間を減ずるために重要であって、接触した状態
で当該接触部分が変形するものであれば上記平坦度に必
ずしも限定されるものではない。
【0297】前記変位伝達部56のアクチュエータ部本
体26への接続は、変位伝達部56として上述した材料
を使用する場合にあっては、接着剤を使って上述した材
料の変位伝達部56を積層するか、上述した材料の溶
液、ペーストないしスラリーをコーティングする等の方
法によりアクチュエータ部本体26の上部、あるいは光
導波板52上に形成することにより行えばよい。
【0298】前記変位伝達部56をアクチュエータ部本
体26に接続する場合は、好ましくは、変位伝達部材5
6bの材料を接着剤として兼ねる材料とすればよい。特
に、有機接着フイルムを採用すれば、熱をかけることで
接着剤として使えるため、好ましい。
【0299】光導波板52は、その内部に導入された光
50が前面及び背面において光導波板52の外部に透過
せずに全反射するような光屈折率を有するものであり、
可視光波長領域での透過率が均一で、かつ高いものであ
ることが必要である。このような特性を具備するもので
あれば、特にその材質は制限されないが、具体的には、
例えばガラス、石英、アクリル等の透光性プラスチッ
ク、透光性セラミックスなど、あるいは異なる屈折率を
有する材料の複数層構造体、又は表面にコーティング層
を設けたものなどが一般的なものとして挙げられる。
【0300】そして、各電極24a及び24bに通じる
配線は、図55に示すように、多数の画素の行数に応じ
た本数の垂直選択線58と、多数の画素の列数に応じた
本数の信号線60とを有する。各垂直選択線58は、各
画素(アクチュエータ部12)における一方の電極24
aに電気的に接続され、各信号線60は、各画素12の
他方の電極24bに電気的に接続されている。
【0301】また、前記各垂直選択線58は、前列の画
素12に関する一方の電極24aから導出されて当該画
素12に関する一方の電極24aに接続されて、一つの
行に関し、シリーズに配線された形となっている。信号
線60は、列方向に延びる本線60aと該本線60aか
ら分岐して各画素12の他方の電極24bに接続される
支線60bからなる。
【0302】各垂直選択線58への電圧信号の供給は、
基体10の他主面からスルーホール62を通じて行わ
れ、各信号線60への電圧信号の供給も、基体10の他
主面からスルーホール64を通じて行われるようになっ
ている。
【0303】スルーホール62及び64の配置パターン
としては種々のものが考えられるが、図55の例では、
垂直選択線58のスルーホール62は、行数をM、列数
をNとしたとき、N=M又はN>Mの場合においては、
n行n列(n=1,2・・・)の画素の近傍で、かつ
(n−1)列の信号線(本線)寄りの位置に形成され、
N<Mの場合においては、(αN+n)行n列(α=
0,1・・・(M/Nの商−1))の画素の近傍で、か
つ(n−1)列の信号線(本線)寄りの位置に形成され
る。
【0304】また、垂直選択線58のスルーホール62
は、信号線60の場合と異なって、垂直選択線58上に
形成されないため、スルーホール62と一方の電極24
a間にそれらの電気的導通を図るための中継導体66が
形成される。
【0305】なお、各垂直選択線58と各信号線60と
が交差する部分には、互いの配線58及び60間の絶縁
をとるためにシリコン酸化膜、ガラス膜、樹脂膜等から
なる絶縁膜68(二点鎖線で示す)が介在されている。
【0306】そして、この応用例に係る表示装置200
に対する駆動においては、画素12に対して基本的に3
つの動作(ON選択、OFF選択及び非選択)を行わせ
ることによって画像表示するようになっている。
【0307】具体的には、表示装置200への画像信号
の入力に基づいて、例えばシフトレジスタにて構成され
た垂直シフト回路による垂直選択線58への電位供給に
従って、1水平走査期間毎に、例えば1行目、2行目、
・・・n行目というように1行ずつ画素群が選択されて
いくが、選択された行のうち、ON選択すべき画素12
に関する信号線60に対して、例えばシフトレジスタに
て構成された水平シフト回路から所定の選択時点におい
て電位供給が行われる。その結果、垂直シフト回路と水
平シフト回路によってON選択された画素12には、そ
の反強誘電体膜22に相転移を起こすに十分な所定電圧
が印加される。このとき、当該画素におけるアクチュエ
ータ部12は凸状に変位し、この状態は表示装置でみた
場合、ON選択状態であり、このON選択状態では、ア
クチュエータ部12の凸状変形によって変位伝達部56
が光導波板52側に変位し、該変位伝達部56は光導波
板52に接触することとなる。
【0308】前記変位伝達部56は、アクチュエータ部
12の変位に対応して光導波板52の背面に接触するも
のであるが、変位伝達部56が光導波板52の背面に接
触すると、例えば光導波板52内で全反射されていた光
50が、光導波板52の背面を透過して変位伝達部56
の表面まで透過し、変位伝達部56の表面で散乱し、反
射する。
【0309】変位伝達部56は、光導波板52の背面を
透過した光を散乱し、反射するため、更には光導波板5
2との接触面積を所定以上に大きくするために設けられ
るものである。即ち、変位伝達部56と光導波板52と
の接触面積により、発光面積が規定される。
【0310】なお、変位伝達部56と光導波板52との
接触とは、変位伝達部56と光導波板52とが光(光導
波板52に導入される光)50の波長以下の距離に位置
することを意味する。
【0311】一方、垂直シフト回路にて選択された行に
関する画素群のうち、ON選択しない画素、即ち、OF
F選択すべき画素12については、所定の選択時点にお
いて当該画素12に関する信号線60の電位がON選択
時の電位とは異なる電位とされ、この場合、アクチュエ
ータ部12の凸状変位を元に戻すに十分な電圧(逆バイ
アス電圧)とされる。このとき、当該画素におけるアク
チュエータ部12は、元の状態に復帰する。この状態
は、表示装置200でみた場合、OFF選択状態であ
り、このOFF選択状態では、アクチュエータ部12の
前記変位動作によって変位伝達部56が光導波板52側
から離間した状態となる。
【0312】垂直シフト回路によって選択されない行に
関する全ての画素群については、非選択状態とされ、こ
の場合、一対の電極24a及び24bへの電圧印加は停
止される。
【0313】次に、本応用例に係る表示装置200の動
作を図54を参照しながら説明する。まず、光導波板5
2の例えば端部から光50が導入される。この場合、光
導波板52の屈折率の大きさを調節することにより、全
ての光50が光導波板52の前面及び背面において透過
することなく内部で全反射する。この状態において、あ
るアクチュエータ部12が励起状態とされて、光導波板
52の背面に前記アクチュエータ部12に対応する変位
伝達部56が光の波長以下の距離で接近あるいは接触す
ると、それまで全反射していた光50は、光導波板52
の背面に接触している変位伝達部56の表面まで透過す
る。
【0314】一旦、変位伝達部56の表面に到達した光
50は、変位伝達部56の表面で反射して散乱光70と
して、一部は再度光導波板52の中で反射するが、散乱
光70の大部分は光導波板52で反射されることなく、
光導波板52の前面を透過することになる。
【0315】つまり、光導波板52の背面にある変位伝
達部56の接触の有無により、光導波板52の前面にお
ける光の発光(漏れ光)の有無を制御することができ
る。特に、本応用例に係る表示装置200では、光導波
板52に対して変位伝達部56を接触・離隔方向に変位
動作させる1つの単位を1画素とし、更にこの画素12
を多数マトリクス状、あるいは各行に関し、千鳥状に配
列するようにしているため、入力される画像信号の属性
に応じて各画素12での変位動作を制御することによ
り、陰極線管や液晶表示装置と同様に、光導波板52の
前面に画像信号に応じた映像(文字や図形等)を表示さ
せることができる。
【0316】このように、本応用例に係る表示装置20
0においては、変位伝達部56を選択的に変位させるア
クチュエータ部本体26の構成として、反強誘電体膜2
2と、該反強誘電体膜22に形成された一対の電極24
a及び24bとを有するようにしている。この場合、一
対の電極24a及び24bに所定の電圧が印加される
と、アクチュエータ部本体26に印加電圧に応じた電界
が生じ、この発生電界によって反強誘電体膜22が例え
ば一方向に変位する。この反強誘電体膜22の一方向の
変位によって変位伝達部56が光導波板52側に変位
し、上述したような光導波板52からの漏れ光の発生を
誘起する。
【0317】特に、反強誘電体膜22は、上述したよう
に、一旦、変位が行われると、電圧無負荷状態にした場
合においても、その変位を維持することから、画像表示
のために、所要画素について電圧印加を行って、該所要
画素12のアクチュエータ部本体26を変位させれば、
変位が解除されるまでの期間にわたって当該所要画素1
2の一対の電極24a及び24bへの電圧印加を停止し
ても、その変位が維持されて所要画素12の発光が持続
する。
【0318】ここで、本応用例に係る表示装置200と
比較例に係る表示装置の発光動作上の違いを図56A及
び図56Bに基づいて説明する。なお、比較例に係る表
示装置は、本応用例に係る表示装置200の反強誘電体
膜22に代えて圧電/電歪膜36(図10A参照)を用
いたものである。
【0319】比較例に係る表示装置は、選択行(垂直シ
フト回路にて選択された行)に関しては、一対の電極2
4a及び24bに所定電圧が印加されることから、ON
選択された画素12が発光することになるが、選択行以
外の行、即ち非選択行に関する画素12については電圧
印加が停止状態となるため、これら非選択行に関する画
素群のすべてのアクチュエータ部12の変位が元に戻っ
てしまい、選択時での発光状態は維持されない。図56
Bにその様子を示す。図56Bは、非選択行に関する画
素12がすべて消光状態であって、選択行のON選択さ
れた画素12のみが発光している状態を示している。
【0320】一方、本応用例に係る表示装置200にお
いては、選択行に関しては、一対の電極24a及び24
bに所定電圧が印加されることから、ON選択された画
素12が発光し、OFF選択された画素12は消光する
ことになる。この発光状態は、反強誘電体膜22の「強
誘電相の歪みの状態を記憶する効果(形状記憶効果)」
によって、一対の電極24a及び24bへの電圧印加を
停止したとしても、そのまま維持される。図56Aにそ
の様子を示す。この図56Aにおいて、選択行について
は、現在の水平走査線に関する画像信号に対応した発光
状態を示し、選択行よりも上の行については、直前に選
択したときの発光状態が維持されていることを示し、選
択行よりも下の行については前フィールド期間(あるい
は前フレーム期間)における発光状態が維持されている
ことを示す。
【0321】つまり、個別に信号配線と共通配線を形成
した場合には、アクチュエータ部12の変位を維持した
い時間に対して、より短い時間だけ所定の電圧を印加す
ればよいため、圧電/電歪膜36を用いた比較例に係る
表示装置と比して省電力化が可能である。
【0322】更に、垂直選択線58と信号線60とを形
成した場合において、比較例に係る表示装置のように、
圧電/電歪膜36を使用した場合には、全アクチュエー
タ部12のうち、常に選択した行のアクチュエータ部1
2しか同時に変位させることができないが、本応用例に
係る表示装置200においては、選択した行のアクチュ
エータ部12は次の行を選択するタイミングにおいても
変位を維持するため、全ての行を選択し終えた時点で
は、最大、全ての行の全てのアクチュエータ部12を同
時に変位維持することが可能である。
【0323】また、複雑な映像を表示可能な構成の場合
には、必然的に画素数の多い構成となり、それに伴って
垂直選択線58と信号線60を形成する構成が必要とな
るが、圧電/電歪膜36を用いた比較例に係る表示装置
の場合には、全アクチュエータ部12のうち、常に選択
した行のアクチュエータ部12しか同時に変位させるこ
とができず、選択した行の画素しか発光させることがで
きないが、本応用例に係る表示装置200の場合には、
選択した行のアクチュエータ部12は、次の行を選択す
るタイミングにおいても変位を維持するため、すべての
行を選択し終えた時点では、全ての行の全てのアクチュ
エータ部12を同時に変位維持することが可能で、最大
で、全画素を発光させることが可能となり、一定時間内
における発光量を数倍から数十倍以上に増加させること
が可能となる。
【0324】このようなことから、画像表示の例えば水
平走査線に合わせて画素表示させる場合において、該当
水平走査線に対応する画素列(画素群)に対してのみ電
圧印加を行えばよいため、他の画素列(画素群)に対す
る電圧印加を考慮する必要がなくなり、その結果、駆動
用の電気配線を行う場合に、1画素ずつ独立に配線する
必要がなくなり、電気配線の簡素化を実現することがで
きる。これは、駆動電圧供給系の負荷の低減化につなが
り、機械的構造及び回路構成の簡略化並びに製造コスト
の低廉化を図ることができる。
【0325】特に、図57に示すように、第3の実施の
形態に係るセラミック素子100C(図24参照)を適
用して表示装置200aとした場合、アクチュエータ部
12での変位保持率が高いため、輝度の低下や、隣接画
素に対する駆動時の電圧変動による輝度の変動等は生じ
なくなり、高品位の画像を表示を行わせることが可能と
なる。
【0326】応用例2 次に、第1の実施の形態に係るセラミック素子100A
(図1参照)をリレー装置に適用した応用例に係るリレ
ー装置210について図58〜図60Bを参照しながら
説明する。なお、図1と対応するものについては同符号
を付してその重複説明を省略する。
【0327】この応用例に係るリレー装置210は、図
58に示すように、例えば接地電位Vssが印加された
対向端子板80と、該対向端子板80の背面に対向して
設けられ、かつ多数のアクチュエータ部12がスイッチ
ング素子として例えば1列に配列された駆動部82を有
して構成されている。
【0328】駆動部82は、例えばセラミックスにて構
成された基体10を有し、該基体10の各スイッチング
素子に対応した位置にアクチュエータ部12が配設され
ている。前記基体10は、一主面が対向端子板80の背
面に対向するように配置されており、該一主面は連続し
た面(面一)とされ、各スイッチング素子(アクチュエ
ータ部)12に対応した位置にそれぞれ空所14を有す
る。
【0329】各アクチュエータ部12上の全面には、薄
い絶縁シート(絶縁フイルム)84が配置され、更に、
該絶縁シート84と前記対向端子板80との間には信号
端子付きの基板86が配置されている。なお、図58〜
図60Bにおいては、図面の複雑化を避けるために一対
の電極24a及び24b(上部電極40a及び下部電極
40b)の記載を省略してある。
【0330】前記信号端子付き基板86は、多数の開口
88が形成された絶縁基板90の一方の板面(駆動部8
2側を臨む板面)に、薄い金属板92が例えば接着剤に
て貼り合わされて構成され、この金属板92は、絶縁基
板90に形成されている多数の開口88と対応する箇所
に前記開口88と開口幅がほぼ同じとされた開口94が
多数形成され、更に、これら開口94を閉塞するように
極薄の例えばベリリウム銅からなる金属製の板ばね96
が設けられている。板ばね96は、中央部分が一方向
(対向端子板80を臨む方向)に突出した断面形状を有
する。この場合、信号端子付き基板86における絶縁基
板90の開口88と金属板92の開口94によって信号
端子付き基板86の開口98が構成され、金属板92と
板ばね96にて信号端子部が構成される。
【0331】また、駆動部82の構成部材である基体1
0の周囲には、アクチュエータ部本体26の厚みとほぼ
同じ高さを有する例えばセラミック部材からなる側壁9
9が固着されている。
【0332】そして、本応用例に係るリレー装置210
を作製する場合は、駆動部82上に絶縁シート84を例
えば接着剤にて固着する。このとき、絶縁シート84
は、基体10の側壁99の上面と、各アクチュエータ部
本体26の上面に接着される。その後、絶縁シート84
上に信号端子付き基板86を例えば接着剤にて貼り合わ
せ固着する。この貼り合わせにおいては、信号端子付き
基板86の金属板92側の面を絶縁シート84に対向さ
せて貼り合わせる。このとき、板ばね96の突出部分9
6aが信号端子付き基板86の開口98内を対向端子板
80側に進入するかたちとなる。その後、信号端子付き
基板86における絶縁基板90上に対向端子板80を例
えば接着剤にて貼り合わせ固着する。この段階で、図5
9に示す本応用例に係るリレー装置210が完成する。
【0333】前記板ばね96の開口98内での突出量は
以下のようにして設定される。まず、図60Aに示すよ
うに、アクチュエータ部本体26における反強誘電体膜
22が一方向(アクチュエータ部本体26が対向端子板
80を臨む方向)に変位していない状態において、板ば
ね96における突出部分96aの上端が対向端子板80
に接触しない程度とし、図60Bに示すように、前記反
強誘電体膜22が一方向に変位(本実施例では5μm程
度の変位)した状態において、板ばね96における突出
部分96aの上端が対向端子板80に接触する程度とす
る。
【0334】そして、多数のスイッチング素子(アクチ
ュエータ部)12のうち、一部のスイッチング素子12
に対応する板ばね96が対向端子板80に接触すると、
これら板ばね96と対向端子板80とが電気的に接続さ
れ、これら板ばね96と対向端子板80間に信号が流
れ、例えばON動作が行われる。
【0335】このように、本応用例に係るリレー装置2
10においては、対向端子板80の背面にある板ばね9
6の接触の有無により、多数のスイッチング素子12の
ON/OFF動作を制御することができる。この場合、
対向端子板80に対して板ばね96を接触・離隔方向に
変位動作させる1つの単位を1スイッチング素子12と
して考えれば、このスイッチング素子12を例えば1列
あるいはマトリクス状に配列し、入力されるスイッチン
グ信号の属性に応じて各スイッチング素子12での変位
動作を制御することにより、多数のスイッチング形態の
組み合わせを提供することができ、スイッチング動作の
多様化を実現させることができる。
【0336】また、本応用例に係るリレー装置210
は、板ばね96を選択的に変位させるアクチュエータ部
本体26の構成として、反強誘電体膜22と、該反強誘
電体膜22に形成された一対の電極24a及び24b
(上部電極40a及び下部電極40b)とを有するよう
にしている。この場合、一対の電極24a及び24bに
所定の電圧が印加されると、アクチュエータ部本体26
に印加電圧に応じた電界が生じ、この発生電界によって
反強誘電体膜22が例えば一方向に変位する。この反強
誘電体膜22の一方向の変位によって板ばね96が対向
端子板80側に変位し、上述したようなスイッチング素
子12のON動作を誘起する。
【0337】特に、反強誘電体膜22は、上述したよう
に、一旦、変位が行われると、電圧無負荷状態にした場
合においても、その変位を維持するため、スイッチング
動作のために、所要スイッチング素子12について電圧
印加を行って、該所要スイッチング素子12のアクチュ
エータ部本体26を変位させれば、変位が解除されるま
での期間にわたって当該所要スイッチング素子12の一
対の電極24a及び24b(上部電極40a及び下部電
極40b)への電圧印加を停止しても、その変位が維持
されて所要スイッチング素子12のON動作が持続する
ため、消費電力が大幅に低減され、ランニングコストの
低廉化を実現させることができる。
【0338】また、スイッチング制御を行と列を特定し
て行う場合は、該当行に対応するスイッチング素子列に
対してのみ電圧印加を行えばよく、他のスイッチング素
子列に対する電圧印加を考慮する必要がなくなるため、
駆動用の電気配線を行う場合に、1素子ずつ独立に配線
する必要がなくなり、電気配線の簡素化を実現すること
ができる。これは、駆動電圧供給系の負荷の低減化につ
ながり、機械的構造及び回路構成の簡略化並びに製造コ
ストの低廉化を図ることができる。
【0339】つまり、このリレー装置210は、従来の
マグネット方式のリレー装置に比べて1ミリピッチとい
う高集積化が可能であり、かつ制御電圧を常時印加しな
くとも接触状態を維持できるため、省電力なリレー装置
210となる。
【0340】応用例3 次に、応用例に係る容量可変コンデンサ220について
図61A〜図63を参照しながら説明する。この応用例
に係る容量可変コンデンサは、第1の実施の形態に係る
セラミック素子100A(特にアナログ変位タイプ)あ
るいは第2の実施の形態に係るセラミック素子100B
(特に第1のアナログ変位タイプ)を容量可変コンデン
サに適用したものである。従って、それぞれについて第
1応用例に係る容量可変コンデンサ220A及び第2応
用例に係る容量可変コンデンサ220Bと記す。また、
図1及び図15Aと対応するものについては同符号を付
してその重複説明を省略する。
【0341】これらの応用例に係る容量可変コンデンサ
220A及び220Bは、コンデンサの容量Cを可変に
するための制御電極とコンデンサの両端電極を有して構
成されている。そして、コンデンサの容量Cが可変にな
る原理は、まず、反強誘電体膜22において、相転移領
域Ztの誘電率は、相転移されていない領域の誘電率よ
りも高い。従って、制御電極に印加される電圧を変え
て、反強誘電体膜22内に発生する相転移領域Ztの範
囲を変えることによって、コンデンサの容量Cを可変に
することができる。
【0342】これを知って、まず、前記第1応用例に係
る容量可変コンデンサ220Aは、図61Aに示すよう
に、第1の実施の形態に係るセラミック素子100Aを
適用したものであり、例えばセラミックスにて構成され
た基体10の所定箇所にコンデンサ部80が配設されて
構成されている。
【0343】コンデンサ部80は、図61Aに示すよう
に、前記振動部18と固定部20のほか、該振動部18
に形成された反強誘電体膜22と、該反強誘電体膜22
の上面に形成された一対の制御電極(一方の制御電極2
4a及び他方の制御電極24b)と、反強誘電体膜22
の上面及び下面にそれぞれ形成されたコンデンサの両端
電極(上部電極40aと下部電極40b)とを有して構
成されている。
【0344】次に、前記第1応用例に係る容量可変コン
デンサ220Aの動作原理について図61A〜図62B
を参照しながら説明する。
【0345】まず、図61Aに示すように、一方の制御
電極24a及び他方の制御電極24bをそれぞれ例えば
接地電位として、一対の制御電極24a及び24b間の
印加電圧を0とした場合は、コンデンサ部80に電界は
生じないため、両端電極40a及び40b間に現れる容
量Cは、反強誘電体膜22が本来持っている誘電率によ
って支配され、初期容量値C0とされる。
【0346】次に、前記一対の制御電極24a及び24
bに印加される電圧VをV1、V2及びV3というよう
に徐々に電圧値(レベル)を上げていった場合について
みると、まず、図61Bに示すように、印加電圧V=V
1(>0V)のとき、即ち、印加電圧Vが前記所定電圧
Vdよりも小さい電圧V1のときは、コンデンサ部80
に発生する電界が弱いため、反強誘電体膜22には相転
移は生じず、このため、両端電極40a及び40b間に
現れる容量Cは、反強誘電体膜22が本来持っている誘
電率によって支配され、この場合も初期容量値C0とさ
れる。
【0347】図62Aに示すように、印加電圧Vが前記
所定電圧Vdを越えた段階から、一対の制御電極24a
及び24b間の距離が最も短い領域や一対の制御電極2
4a及び24bに最も近い領域が相転移させるのに十分
な電界強度を有することとなって、これらの領域におい
て相転移が生じ(相転移領域Ztの発生)、その相転移
に伴って反強誘電体膜22の誘電率が高くなり、両端電
極40a及び40b間に現れる容量Cは、前記初期容量
値C0よりも高い容量値C1となる。
【0348】図62Bに示すように、前記印加電圧Vが
更に上昇することに伴って、相転移させるのに十分な電
界強度の領域が徐々に広がり、一対の制御電極24a及
び24b間の距離が長い領域や一対の制御電極24a及
び24bから遠い領域においても相転移が生じることに
なる(相転移領域Ztの拡大)。この場合、相転移領域
Ztの拡大に応じて反強誘電体膜22の誘電率が更に高
くなり、両端電極40a及び40b間に現れる容量C
は、前記印加電圧V2時の容量値C1よりも更に高い容
量値C2となる。
【0349】このように、第1の実施の形態に係るセラ
ミック素子100A(特にアナログ変位タイプ)のもの
を利用することにより、一対の制御電極24a及び24
bへの印加電圧Vの上昇に応じて両端電極40a及び4
0bに現れる容量Cがアナログ的に変化する容量可変コ
ンデンサを簡単に構成することができる。しかも、薄膜
タイプにて構成することができるため、可変コンデンサ
が組み込まれたパラメトリック増幅器や周波数自動制御
回路(AFC)並びに各種通信機器等の小型化を促進さ
せることができる。
【0350】次に、第2応用例に係る容量可変コンデン
サ220Bについて図63を参照しながら説明する。な
お、図61Aと対応するものについては同符号を付して
その重複説明を省略する。
【0351】この第2応用例に係る容量可変コンデンサ
220Bは、図63に示すように、前記第1応用例に係
る容量可変コンデンサ220Aとほぼ同じ構成を有する
が、反強誘電体膜22の膜厚分布に20%以上のばらつ
きを有し、かつ、反強誘電体膜22の上面に形成された
一対の電極24a及び24bがコンデンサの両端電極と
され、反強誘電体膜22の上面及び下面に形成された上
部電極40a及び下部電極40bが一対の制御電極(上
部制御電極及び下部制御電極)とされている点で異な
る。
【0352】この場合も、前記第1応用例に係る容量可
変コンデンサ220Aと同様に、上部制御電極40a及
び下部電極40b間に印加される電圧Vの上昇に応じて
反強誘電体膜22上に形成された両端電極24a及び2
4bに現れる容量Cがアナログ的に変化する容量可変コ
ンデンサを簡単に構成することができる。
【0353】上述した例では、第1〜第3の実施の形態
に係るセラミック素子100A〜100Cを表示装置2
00、リレー装置210及び容量可変コンデンサ(22
0A、220B)に適用した例を示したが、その他、フ
ィルター、超音波センサや角速度センサや加速度センサ
や衝撃センサ等の各種センサ、マイクロフォン、発音体
(スピーカー等)、ディスクリミネータ、動力用や通信
用の振動子や発振子や共振子にも適用させることがで
き、サーボ変位素子、パルス駆動モータ、超音波モー
タ、圧電ファン等に用いられるアクチュエータ等にも適
用させることができる。
【0354】なお、本発明に係るセラミック素子の種々
の実施の形態例並びに該セラミック素子を表示装置、リ
レー装置及び容量可変コンデンサに適用した場合の応用
例を具体的に説明してきたが、本発明は、前記実施の形
態例並びに応用例に係る表示装置、リレー装置及び容量
可変コンデンサに限定されて解釈されるものではなく、
本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、種々なる変
更、修正、改良等を加えうるものである。
【0355】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るセラ
ミック素子によれば、反強誘電体膜と該反強誘電体膜に
形成された少なくとも一対の電極とを有する作動部と、
前記作動部を支持する振動部と、前記振動部を振動可能
に支持する固定部とを有し、かつ、分極後の前記反強誘
電体膜において、前記電極に印加される電圧に応じて、
その平均誘電率がアナログ的に増加する領域を有するこ
とを特徴としている。
【0356】このため、印加電圧に応じて機械的変位量
がアナログ的に変化し、更に駆動電圧の印加終了後にお
ける電圧無負荷状態において、駆動電圧印加時と同等の
変位量を維持することができるという効果が達成され
る。
【0357】これにより、印加電圧に対応して変位量の
大小を精密に制御可能であって、かつ、微細な素子にお
いても、圧電/電歪膜型素子を上回る大きな変位発生力
を得ることが可能となり、様々なアプリケーション(表
示装置やフィルタ等)を構成した場合に、駆動用の電気
配線を簡素化でき、製造コストの低廉化を有効に図るこ
とができる。
【0358】次に、本発明に係る表示装置によれば、光
が導入される光導波板と、該光導波板の一方の板面に対
向して設けられ、かつ多数の画素に対応した数のアクチ
ュエータ部が配列された駆動部を具備し、入力される画
像信号の属性に応じて前記光導波板に対する前記アクチ
ュエータ部の接触・離隔方向の変位動作を制御して、前
記光導波板の所定部位の漏れ光を制御することにより、
前記光導波板に前記画像信号に応じた映像を表示させる
表示装置において、前記アクチュエータ部を、反強誘電
体膜と、該反強誘電体膜に形成された一対の電極とを有
するアクチュエータ部本体と、前記アクチュエータ部本
体を支持する振動部と、前記振動部を振動可能に支持す
る固定部とを具備して構成し、更に、前記一対の電極へ
の電圧印加によって生じる前記アクチュエータ部の変位
動作を光導波板に伝達する変位伝達部を設けるようにし
ている。
【0359】このため、低消費電力で、駆動用の電気配
線を簡素化でき、製造コストやランニングコストの低廉
化を有効に図ることができるという効果が達成される。
【0360】次に、本発明に係るリレー装置によれば、
対向端子部と、該対向端子部の一方の側に対向して設け
られ、かつ多数のスイッチング素子に対応した数のアク
チュエータ部が配列された駆動部を具備し、入力される
駆動信号の属性に応じて前記対向端子部に対する前記ア
クチュエータ部の接触・離隔方向の変位動作を制御し
て、前記スイッチング素子のON/OFF動作を切換え
制御するリレー装置であって、前記アクチュエータ部
を、反強誘電体膜と、該反強誘電体膜に形成された一対
の電極とを有するアクチュエータ部本体と、前記アクチ
ュエータ部本体を支持する振動部と、前記振動部を振動
可能に支持する固定部とを具備して構成し、更に、前記
一対の電極への電圧印加によって生じる前記アクチュエ
ータ部の変位動作を前記対向端子部に伝達する信号端子
部を設けるようにしている。
【0361】このため、低消費電力で、駆動用の電気配
線を簡素化でき、もって製造コストやランニングコスト
の低廉化を有効に図ることができ、しかもスイッチング
操作の多様化を図ることができるという効果が達成され
る。
【0362】次に、本発明に係るコンデンサによれば、
コンデンサ部を支持する振動部と、前記振動部を振動可
能に支持する固定部とを具備して構成し、前記コンデン
サ部を、前記振動部に形成された反強誘電体膜と、該反
強誘電体膜の上面に形成された一対の制御電極と、前記
反強誘電体膜の上面及び下面にそれぞれ形成されたコン
デンサの両端電極とを設けるようにしている。
【0363】このため、容量がアナログ的に変化する容
量可変コンデンサを簡単に、かつ、薄型に構成すること
ができ、可変コンデンサが組み込まれたパラメトリック
増幅器や周波数自動制御回路(AFC)並びに各種通信
機器等の小型化を促進させることができるという効果が
達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係るセラミック素子の構成
を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係るセラミック素子のアク
チュエータ部本体を構成する振動部の平面形状、反強誘
電体膜の平面形状及び一対の電極にて形づくられる外周
形状を示す平面図である。
【図3】第1の実施の形態に係るセラミック素子の反強
誘電体膜上に形成される一対の電極の平面形状(渦巻き
状)を示す平面図である。
【図4】第1の実施の形態に係るセラミック素子の反強
誘電体膜上に形成される一対の電極の平面形状(多枝形
状)を示す平面図である。
【図5】図5Aは第1の実施の形態に係るセラミック素
子の反強誘電体膜上にくし歯形状の一対の電極を形成し
た場合の構成を示す平面図であり、図5Bは図5Aにお
けるA−A線上の断面図であり、図5Cは図5Aにおけ
るB−B線上の断面図である。
【図6】図6Aは第1の実施の形態に係るセラミック素
子(アナログ変位タイプ)におけるアクチュエータ部の
一対の電極に電圧V=0を印加した状態を示す説明図で
あり、図6Bは前記アクチュエータ部の一対の電極に電
圧V=V1を印加した状態を示す説明図であり、図6C
は前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧V=V2を
印加した状態を示す説明図であり、図6Dは前記アクチ
ュエータ部の一対の電極に電圧V=V3を印加した状態
を示す説明図である。
【図7】第1の実施の形態に係るセラミック素子におけ
るアナログ変位タイプの屈曲変位特性の一例を示す特性
図である。
【図8】図8Aは第1の実施の形態に係るセラミック素
子(デジタル変位タイプ)におけるアクチュエータ部の
一対の電極に電圧V=0を印加した状態を示す説明図で
あり、図8Bは前記アクチュエータ部の一対の電極に電
圧V=V1を印加した状態を示す説明図であり、図8C
は前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧V=V2を
印加した状態を示す説明図であり、図8Dは前記アクチ
ュエータ部の一対の電極に電圧V=V3を印加した状態
を示す説明図である。
【図9】図9Aは第1の実施の形態に係るセラミック素
子(アナログ変位タイプ及びデジタル変位タイプ)にお
けるアクチュエータ部の初期状態を示す説明図であり、
図9Bは前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧を印
加して該アクチュエータ部を変位させた状態を示す説明
図であり、図9Cは前記アクチュエータ部の一対の電極
への電圧印加を停止した状態(電圧無負荷状態)を示す
説明図である。
【図10】図10Aは比較例に係る圧電/電歪膜型素子
におけるアクチュエータ部の初期状態を示す説明図であ
り、図10Bは前記アクチュエータ部の一対の電極に電
圧を印加して該アクチュエータ部を変位させた状態を示
す説明図であり、図10Cは前記アクチュエータ部の一
対の電極への電圧印加を停止した状態(電圧無負荷状
態)を示す説明図である。
【図11】図11Aは一対の電極の平面形状が渦巻き形
状である場合の反強誘電体膜及び圧電/電歪膜の膨張方
向を説明するための図であり、図11Bは図11Aにお
いて□で囲む部分の反強誘電体膜の膨張方向を示す拡大
図であり、図11Cは図11Aにおいて□で囲む部分の
圧電/電歪膜の膨張方向を示す拡大図である。
【図12】図12Aはアクチュエータ部の最短寸法での
断面形状を一部省略して示す断面図であり、図12Bは
一方の最外極小点と他方の最外極小点が固定部の上面よ
りも下方に存在する場合を一部省略して示す断面図であ
り、図12Cは一方の最外極小点と他方の最外極小点が
固定部の上面よりも上方に存在する場合を一部省略して
示す断面図である。
【図13】アクチュエータ部の最短寸法での断面形状に
おいて、他方の極小点存在領域内に他方の最外極小点が
存在せず、他方の境界点が他方の最外極小点として認定
される場合の例を一部省略して示す断面図である。
【図14】図14Aは第1の実施の形態に係るセラミッ
ク素子の変形例を示す平面図であり、図14Bは図14
AにおけるC−C線上の断面図である。
【図15】図15Aは前記変形例に係るセラミック素子
の一対の電極に低い電圧範囲(電圧レベルV1〜V2)
を印加した状態での変位形態を示す説明図であり、図1
5Bは前記変形例に係るセラミック素子の一対の電極に
高い電圧範囲(電圧レベルV2〜V3)を印加した状態
での変位形態を示す説明図である。
【図16】第2の実施の形態に係るセラミック素子の構
成を示す断面図である。
【図17】図17Aは第2の実施の形態に係るセラミッ
ク素子(第1のアナログ変位タイプ)におけるアクチュ
エータ部の一対の電極に電圧V=0を印加した状態を示
す説明図であり、図17Bは前記アクチュエータ部の一
対の電極に電圧V=V1を印加した状態を示す説明図で
あり、図17Cは前記アクチュエータ部の一対の電極に
電圧V=V2を印加した状態を示す説明図であり、図1
7Dは前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧V=V
3を印加した状態を示す説明図である。
【図18】図18Aは第2の実施の形態に係るセラミッ
ク素子(第1のアナログ変位タイプ)における上部電極
の平面形状の一例(渦巻き形状)を示す平面図であり、
図18Bは、その他の例(ジグザグ形状)を示す平面図
である。
【図19】図19Aは第2の実施の形態に係るセラミッ
ク素子(第2のアナログ変位タイプ)におけるアクチュ
エータ部の一対の電極に電圧V=0を印加した状態を示
す説明図であり、図19Bは前記アクチュエータ部の一
対の電極に電圧V=V1を印加した状態を示す説明図で
あり、図19Cは前記アクチュエータ部の一対の電極に
電圧V=V2を印加した状態を示す説明図であり、図1
9Dは前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧V=V
3を印加した状態を示す説明図である。
【図20】図20Aは第2の実施の形態に係るセラミッ
ク素子(デジタル変位タイプ)におけるアクチュエータ
部の一対の電極に電圧V=0を印加した状態を示す説明
図であり、図20Bは前記アクチュエータ部の一対の電
極に電圧V=V1を印加した状態を示す説明図であり、
図20Cは前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧V
=V2を印加した状態を示す説明図であり、図20Dは
前記アクチュエータ部の一対の電極に電圧V=V3を印
加した状態を示す説明図である。
【図21】第2の実施の形態に係るセラミック素子にお
けるデジタル変位タイプの屈曲変位特性の一例を示す特
性図である。
【図22】第2の実施の形態に係るセラミック素子の変
形例を示す断面図である。
【図23】図23Aは前記変形例に係るセラミック素子
の一対の電極に低い電圧範囲(電圧レベルV1〜V2)
を印加した状態での変位形態を示す説明図であり、図2
3Bは前記変形例に係るセラミック素子の一対の電極に
高い電圧範囲(電圧レベルV2〜V3)を印加した状態
での変位形態を示す説明図である。
【図24】第3の実施の形態に係るセラミック素子の構
成を示す断面図である。
【図25】バルク型素子の構成を示す斜視図である。
【図26】第1の実験例(中間層の厚みによる変位保持
率の変化をみた実験例)の結果を示す表図である。
【図27】第2の実験例(基体の厚みによる変位保持率
の変化をみた実験例)の結果を示す表図である。
【図28】基体及び振動部の厚みの寸法関係を説明する
ための図である。
【図29】ホットプレス法を示す説明図である。
【図30】図30Aはホットプレス法の第1の具体的手
法を概略的に示す説明図であり、図30Bはホットプレ
ス法の第2の具体的手法を概略的に示す説明図である。
【図31】第3の実験例(ホットプレス荷重による反強
誘電体膜の緻密度の変化をみた実験例)の結果を示す表
図である。
【図32】反強誘電体セラミック材料の粉末を合成する
場合における通常の方法を示す工程ブロック図である。
【図33】見越し補正を行う場合の反強誘電体セラミッ
ク材料の粉末の合成方法を示す工程ブロック図である。
【図34】第4の実験例(見越し補正量による変位保持
率の変化をみた実験例)の結果を示す表図である。
【図35】鉛成分の後補正を行う場合の反強誘電体セラ
ミック材料の粉末の合成方法を示す工程ブロック図であ
る。
【図36】第5の実験例(鉛成分の後補正量による膜の
緻密度の変化をみた実験例)の結果を示す表図である。
【図37】見越し補正及び鉛成分の後補正を組み合わせ
る場合の反強誘電体セラミック材料の粉末の合成方法を
示す工程ブロック図である。
【図38】第6の実験例(SnO2 の比表面積の違いに
よるヒステリシス特性の変化をみた実験例)の結果を示
す表図である。
【図39】図39Aは振動部が沈み込んだ状態を示す断
面図であり、図39Bは振動部の沈み込みを抑制した構
成を示す断面図である。
【図40】空所の深さが15μm以下であるセラミック
素子の第1の製造方法を示す説明図である。
【図41】図41Aは空所の深さが10μmであるセラ
ミック素子の第2の製造方法を示すもので、ベースプレ
ートとなる第1層上にペーストを形成して第2層とした
状態を示す工程図であり、図41Bは第2層上に閉塞プ
レートとなる第3層を積層した状態を示す工程図であ
り、図41Cは3層の積層体を焼成して基体として一体
化させた状態を示す工程図である。
【図42】第7の実験例(第2層と反強誘電体膜の厚み
による振動部の沈み込み量とピーク電圧通常印加時の変
位の変化をみた実験例)における振動部の沈み込み量を
説明するための図である。
【図43】第7の実験例の結果を示す表図である。
【図44】第7の実験例において、セラミック素子に印
加する駆動波形(電圧)を示す図である。
【図45】第7の実験例において、理想的なセラミック
素子の電圧−屈曲変位特性を示す特性図である。
【図46】第7の実験例において、沈み込み量δが大き
いセラミック素子の電圧−屈曲変位特性を示す特性図で
ある。
【図47】第7の実験例において、沈み込み量δを15
μm以下に抑制したセラミック素子の電圧−屈曲変位特
性を示す特性図である。
【図48】セラミック素子におけるメモリ効果の指標を
説明するための図である。
【図49】第8の実験例(実施例17と比較例16につ
いての各ヒステリシス特性(電圧−屈曲変位特性)と各
変位保持率の違いをみた実験例)の結果を示す表図であ
る。
【図50】バルク型素子の印加電圧に対する歪みの変化
(ヒステリシス特性)を示す特性図である。
【図51】実施例17及び比較例16についての電圧−
屈曲変位特性を測定するために、一対の電極に印加すべ
き電位波形を示すタイミングチャートである。
【図52】実施例17における電圧−屈曲変位特性(ヒ
ステリシス特性)を示す特性図である。
【図53】比較例16における電圧−屈曲変位特性(ヒ
ステリシス特性)を示す特性図である。
【図54】第1の実施の形態に係るセラミック素子(ア
ナログ変位タイプ及びデジタル変位タイプ)を表示装置
に適用した応用例を示す構成図である。
【図55】応用例に係る表示装置におけるアクチュエー
タ部(画素)の配置を拡大して示す平面図である。
【図56】図56Aは応用例に係る表示装置の動作(発
光状態及び消光状態)を示す説明図であり、図56Bは
比較例に係る表示装置の動作(発光状態及び消光状態)
を示す説明図である。
【図57】第3の実施の形態に係るセラミック素子を表
示装置に適用した応用例を示す構成図である。
【図58】第1及び第2の実施の形態に係るセラミック
素子をリレー装置に適用した応用例(以下、単に応用例
に係るリレー装置と記す)を分解して示す構成図であ
る。
【図59】応用例に係るリレー装置を示す組立構成図で
ある。
【図60】図60Aは応用例に係るリレー装置のアクチ
ュエータ部(スイッチング素子)を変位させないで板ば
ねを対向端子板に対して非接触状態とした例を示す説明
図であり、図60Bは応用例に係るリレー装置のアクチ
ュエータ部(スイッチング素子)を変位させて板ばねを
対向端子板に対して接触状態とした例を示す説明図であ
る。
【図61】図61Aは第1の実施の形態に係るセラミッ
ク素子(アナログ変位タイプ)を容量可変コンデンサに
適用した第1応用例におけるコンデンサ部の一対の制御
電極に電圧V=0を印加した状態を示す説明図であり、
図61Bは前記コンデンサ部の一対の制御電極に電圧V
=V1を印加した状態を示す説明図である。
【図62】図62Aは前記コンデンサ部の一対の電極に
電圧V=V2を印加した状態を示す説明図であり、図6
2Bは前記コンデンサ部の一対の電極に電圧V=V3を
印加した状態を示す説明図である。
【図63】第2の実施の形態に係るセラミック素子(第
1のアナログ変位タイプ)を容量可変コンデンサに適用
した第2応用例を示す構成図である。
【符号の説明】
10…基体 12…アクチュエー
タ部 14…空所 16…貫通孔 18…振動部 20…固定部 22…反強誘電体膜 24a、24b…一
対の電極 26…アクチュエータ部本体 40a…上部電極 40b…下部電極 52…光導波板 54…駆動部 56…変位伝達部 58…垂直選択線 60…信号線 80…コンデンサ部 Zt…相転移領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI H01L 41/187 H01L 41/18 101D 41/22 41/22 Z

Claims (48)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】反強誘電体膜と該反強誘電体膜に形成され
    た少なくとも一対の電極とを有する作動部と、 前記作動部を支持する振動部と、 前記振動部を振動可能に支持する固定部と、 を有することを特徴とするセラミック素子。
  2. 【請求項2】請求項1記載のセラミック素子において、 前記一対の電極は、該一対の電極への印加電圧によって
    発生する電界の強さが空間的に異なる形態を有すること
    を特徴とするセラミック素子。
  3. 【請求項3】請求項2記載のセラミック素子において、 前記一対の電極における電極間距離が大きい領域と小さ
    い領域とを有することを特徴とするセラミック素子。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラ
    ミック素子において、 分極後の前記反強誘電体膜は、前記電極に印加される電
    圧に応じて、その平均誘電率がアナログ的に増加する領
    域を有することを特徴とするセラミック素子。
  5. 【請求項5】請求項4記載のセラミック素子において、 前記反強誘電体膜が分極された状態で、前記電極に印加
    される電圧に応じて一方向への変位がアナログ的に増大
    する部分を有することを特徴とするセラミック素子。
  6. 【請求項6】請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラ
    ミック素子において、 前記振動部及び固定部は、セラミックグリーンシート又
    はセラミックグリーンテープを積層し、一体焼成して構
    成された基体に設けられていることを特徴とするセラミ
    ック素子。
  7. 【請求項7】請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラ
    ミック素子において、 少なくとも振動部が、主として部分安定化ジルコニアか
    らなることを特徴とするセラミック素子。
  8. 【請求項8】請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラ
    ミック素子において、 前記反強誘電体膜の組成が、主として下記の組成である
    ことを特徴とするセラミック素子。 Pb0.99Nb0.02{[Zrx Sn1-x 1-y Tiy
    0.983 但し、0.5 <x< 0.6, 0.05 <y< 0.063, 0.01 <
    Nb< 0.03
  9. 【請求項9】請求項1〜8のいずれか1項に記載のセラ
    ミック素子において、 前記反強誘電体膜の組成が、Agを酸化銀換算で1〜1
    0重量%含有する組成であることを特徴とするセラミッ
    ク素子。
  10. 【請求項10】請求項6〜9のいずれか1項に記載のセ
    ラミック素子において、 前記基体は、少なくとも、窓部が設けられたスペーサプ
    レートと該スペーサプレートの一方の側に重ね合わされ
    て前記窓部を覆蓋する閉塞プレートとが積層され、一体
    焼成されて構成されていることを特徴とするセラミック
    素子。
  11. 【請求項11】請求項10記載のセラミック素子におい
    て、 前記基体は、前記スペーサプレートの他方の側に重ね合
    わされて前記窓部を覆蓋し、かつ該窓部に対応する位置
    に1つ以上の貫通孔を有する少なくとも1層のベースプ
    レートが積層され、前記スペーサプレート及び閉塞プレ
    ートと共に一体焼成されて構成されていることを特徴と
    するセラミック素子。
  12. 【請求項12】請求項1〜11のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 少なくとも前記反強誘電体膜の一部において、 前記一対の電極は共に、前記反強誘電体膜の一主面に形
    成されていることを特徴とするセラミック素子。
  13. 【請求項13】請求項12記載のセラミック素子におい
    て、 前記反強誘電体膜の平均膜厚をt、電極間のピッチをp
    としたとき、 p/t≦2.5 を満足することを特徴とするセラミック素子。
  14. 【請求項14】請求項9又は10記載のセラミック素子
    において、 前記振動部が主としてアルミナを0.5モル%以上含有
    する部分安定化ジルコニアからなることを特徴とするセ
    ラミック素子。
  15. 【請求項15】請求項1〜11のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 少なくとも前記反強誘電体膜の一部においては、 前記一対の電極のうち、一方の電極が前記反強誘電体膜
    の一主面に形成され、他方の電極が前記反強誘電体膜の
    他主面に形成されていることを特徴とするセラミック素
    子。
  16. 【請求項16】請求項15記載のセラミック素子におい
    て、 前記一方の電極の面積をA、前記他方の電極の面積をB
    としたとき、 A/B≧2 又は A/B≦0.5 を満足することを特徴とするセラミック素子。
  17. 【請求項17】請求項15又は16記載のセラミック素
    子において、 前記振動部が主として酸化チタンを0.5モル%以上含
    有する部分安定化ジルコニアからなることを特徴とする
    セラミック素子。
  18. 【請求項18】請求項15〜17のいずれか1項に記載
    のセラミック素子において、 前記電極間に挟まれた領域の膜厚分布に20%以上のば
    らつきがあることを特徴とするセラミック素子。
  19. 【請求項19】請求項1〜14のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 前記振動部と反強誘電体膜との間に中間層を有すること
    を特徴とするセラミック素子。
  20. 【請求項20】請求項19記載のセラミック素子におい
    て、 前記中間層は、Pt又はPdの金属、あるいは両者の合
    金であることを特徴とするセラミック素子。
  21. 【請求項21】請求項19又は20記載のセラミック素
    子において、 前記中間層の厚みが1μm以上、15μm以下であるこ
    とを特徴とするセラミック素子。
  22. 【請求項22】請求項21記載のセラミック素子におい
    て、 前記中間層の厚みが2μm以上、6μm以下であること
    を特徴とするセラミック素子。
  23. 【請求項23】請求項1〜22のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 前記振動部の厚みが反強誘電体膜の厚みよりも薄いこと
    を特徴とするセラミック素子。
  24. 【請求項24】請求項6〜23のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 前記振動部の中心を通る最短寸法における前記固定部の
    上面と前記振動部の上面との境界部分を境界点と定義し
    たとき、該境界点から前記反強誘電体膜の形成端までの
    距離をLn、前記振動部の厚みをtvとしたとき、Ln
    <tv×15を満足する場合、前記基体の厚みtbがt
    b≦350μmであることを特徴とするセラミック素
    子。
  25. 【請求項25】請求項24記載のセラミック素子におい
    て、 前記基体の厚みtbがtb≦250μmであることを特
    徴とするセラミック素子。
  26. 【請求項26】請求項25記載のセラミック素子におい
    て、 前記基体の厚みtbがtb≦130μmであることを特
    徴とするセラミック素子。
  27. 【請求項27】請求項26記載のセラミック素子におい
    て、 前記基体の厚みtbがtb≦70μmであることを特徴
    とするセラミック素子。
  28. 【請求項28】請求項24記載のセラミック素子におい
    て、 前記境界点から前記反強誘電体膜の形成端までの距離を
    LnがLn≧tv×15を満足する場合、前記振動部の
    厚みtvは、tv≦20μmであることを特徴とするセ
    ラミック素子。
  29. 【請求項29】請求項24記載のセラミック素子におい
    て、 前記境界点から前記反強誘電体膜の形成端までの距離を
    LnがLn≧tv×15を満足する場合、前記振動部の
    厚みtvは、tv≦10μmであることを特徴とするセ
    ラミック素子。
  30. 【請求項30】請求項6〜29のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 前記基体上に形成された前記反強誘電体膜は、荷重が付
    与されながら焼成処理されていることを特徴とするセラ
    ミック素子。
  31. 【請求項31】請求項30記載のセラミック素子におい
    て、 前記荷重は、0.4kg/cm2 以上であることを特徴
    とするセラミック素子。
  32. 【請求項32】請求項1〜31のいずれか1項に記載の
    セラミック素子において、 前記振動部直下の空間の深さが15μm以下であること
    を特徴とするセラミック素子。
  33. 【請求項33】反強誘電体膜と該反強誘電体膜に形成さ
    れた少なくとも一対の電極とを有する作動部と、前記作
    動部を支持する振動部と、前記振動部を振動可能に支持
    する固定部とを有するセラミック素子の製造方法におい
    て、 セラミックグリーンシート又はセラミックグリーンテー
    プを積層し、一体焼成して前記振動部と固定部を有する
    基体を作製する工程と、前記基体の前記振動部上に前記
    反強誘電体膜を形成する工程と、 前記反強誘電体膜を焼成する工程を有することを特徴と
    するセラミック素子の製造方法。
  34. 【請求項34】請求項33記載のセラミック素子の製造
    方法において、 前記反強誘電体膜に対して荷重を付与しながら焼成処理
    することを特徴とするセラミック素子の製造方法。
  35. 【請求項35】請求項34記載のセラミック素子の製造
    方法において、 前記荷重が0.4kg/cm2 以上であることを特徴と
    するセラミック素子の製造方法。
  36. 【請求項36】請求項33〜35のいずれか1項に記載
    のセラミック素子の製造方法において、 反強誘電体セラミック材料の粉末を合成して前記反強誘
    電体膜を作製する際に、前記反強誘電体膜における焼成
    中の振動部との相互拡散による組成変動を見越して、反
    強誘電体セラミック材料の粉末組成を最適組成からずら
    して調製することを特徴とするセラミック素子の製造方
    法。
  37. 【請求項37】請求項36記載のセラミック素子の製造
    方法において、 ZrO2 をその所定量より少なめに秤量し、TiO2
    その所定量より多めに秤量して調製することを特徴とす
    るセラミック素子の製造方法。
  38. 【請求項38】請求項37記載のセラミック素子の製造
    方法において、 ZrO2 の量は、その所定量を100%とした場合の9
    5〜98%であり、かつ/又は、TiO2 の量は、その
    所定量を100%とした場合の102〜104%である
    ことを特徴とするセラミック素子の製造方法。
  39. 【請求項39】請求項33〜38のいずれか1項に記載
    のセラミック素子の製造方法において、 反強誘電体セラミック材料の粉末を合成して前記反強誘
    電体膜を作製する際に、予め酸化鉛がその所定配合量よ
    りも少なくされた組成で合成した後、鉛成分の不足分を
    酸化鉛の形態で後補正して混合することを特徴とするセ
    ラミック素子の製造方法。
  40. 【請求項40】請求項39記載のセラミック素子の製造
    方法において、 鉛成分の後補正量が前記所定配合量の3%以上、20%
    以下であることを特徴とするセラミック素子の製造方
    法。
  41. 【請求項41】請求項40記載のセラミック素子の製造
    方法において、 鉛成分の後補正量が前記所定配合量の5%以上、15%
    以下であることを特徴とするセラミック素子の製造方
    法。
  42. 【請求項42】請求項33〜41のいずれか1項に記載
    のセラミック素子の製造方法において、 反強誘電体セラミック材料の粉末を合成して前記反強誘
    電体膜を作製する際に、原材料として用いる酸化スズの
    比表面積を8m2 /g以上、20m2 /g以下にするこ
    とを特徴とするセラミック素子の製造方法。
  43. 【請求項43】請求項33〜42のいずれか1項に記載
    のセラミック素子の製造方法において、 窓部が設けられた第2層と、該第2層の一方の側に重ね
    合わされて前記窓部を覆蓋する第3層と、前記第2層の
    他方の側に重ね合わされて前記窓部を覆蓋し、かつ、該
    窓部に対応する位置に1つ以上の貫通孔を有する第1層
    を積層し、一体焼成してセラミック製の前記基体を作製
    することを特徴とするセラミック素子の製造方法。
  44. 【請求項44】請求項33〜42のいずれか1項に記載
    のセラミック素子の製造方法において、 1つ以上の貫通孔を有する第1層の上面に、セラミック
    材料のペーストをパターン形成して、前記貫通孔に対応
    した部分に窓部を有する第2層を形成した後、前記窓部
    を閉塞するように第3層を積層し、一体焼成してセラミ
    ック製の前記基体を作製することを特徴とするセラミッ
    ク素子の製造方法。
  45. 【請求項45】請求項43又は44記載のセラミック素
    子の製造方法において、 前記第2層の厚みが1〜20μmであることを特徴とす
    るセラミック素子の製造方法。
  46. 【請求項46】光が導入される光導波板と、該光導波板
    の一方の板面に対向して設けられ、かつ多数の画素に対
    応した数のアクチュエータ部が配列された駆動部を具備
    し、入力される画像信号の属性に応じて前記光導波板に
    対する前記アクチュエータ部の接触・離隔方向の変位動
    作を制御して、前記光導波板の所定部位の漏れ光を制御
    することにより、前記光導波板に前記画像信号に応じた
    映像を表示させる表示装置において、 前記アクチュエータ部は、反強誘電体膜と、該反強誘電
    体膜に形成された少なくとも一対の電極とを有するアク
    チュエータ部本体と、 前記アクチュエータ部本体を支持する振動部と、 前記振動部を振動可能に支持する固定部とを具備し、 前記一対の電極への電圧印加によって生じる前記アクチ
    ュエータ部の変位動作を光導波板に伝達する変位伝達部
    とを有することを特徴とする表示装置。
  47. 【請求項47】対向端子部と、該対向端子部の一方の側
    に対向して設けられ、かつ多数のスイッチング素子に対
    応した数のアクチュエータ部が配列された駆動部を具備
    し、入力される駆動信号の属性に応じて前記対向端子に
    対する前記アクチュエータ部の接触・離隔方向の変位動
    作を制御して、前記スイッチング素子のON/OFF動
    作を切換え制御するリレー装置であって、 前記アクチュエータ部は、反強誘電体膜と、該反強誘電
    体膜に形成された少なくとも一対の電極とを有するアク
    チュエータ部本体と、 前記アクチュエータ部本体を支持する振動部と、 前記振動部を振動可能に支持する固定部とを具備し、 前記一対の電極への電圧印加によって生じる前記アクチ
    ュエータ部の変位動作を前記対向端子部に伝達する信号
    端子部とを有することを特徴とするリレー装置。
  48. 【請求項48】コンデンサ部を支持する振動部と、 前記振動部を振動可能に支持する固定部とを具備し、 前記コンデンサ部は、前記振動部に形成された反強誘電
    体膜と、該反強誘電体膜の上面に形成された一対の制御
    電極と、前記反強誘電体膜の上面及び下面にそれぞれ形
    成されたコンデンサの両端電極とを有することを特徴と
    するコンデンサ。
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