JPH11335974A - ポリベンザゾール繊維及びその製造方法 - Google Patents

ポリベンザゾール繊維及びその製造方法

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JPH11335974A
JPH11335974A JP14777798A JP14777798A JPH11335974A JP H11335974 A JPH11335974 A JP H11335974A JP 14777798 A JP14777798 A JP 14777798A JP 14777798 A JP14777798 A JP 14777798A JP H11335974 A JPH11335974 A JP H11335974A
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JP
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fiber
resin
polybenzazole
monomer
liquid
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JP14777798A
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English (en)
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Susumu Kitagawa
享 北河
Yukinari Okuyama
幸成 奥山
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Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 樹脂や接着剤に対する接着性が著しく優れた
ポリベンザゾール繊維を提供する。 【解決手段】 ポリベンザゾール繊維内部の直径30Å
以下のキャピラリーがポリベンザゾール以外の樹脂で満
たされている事を特徴とするポリベンザゾール繊維及
び、キャピラリー中のポリベンザゾール繊維以外の樹脂
として、アクリル酸系、エポキシ系、フェノール系、ビ
ニル系、イソシアン酸エステル系、シアノアクリレート
系、ポリエステル系、ナイロン系の樹脂又はこれら共重
合体を用いたポリベンザゾール繊維及びその製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は産業用資材として好
適であり、樹脂や接着剤に対して接着性が著しく優れた
ポリベンザゾール繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリベンザゾール繊維は、現在市販され
ているスーパー繊維の代表であるポリパラフェニレンテ
レフタルアミド繊維の2倍以上引張強度(以下、単に強
度)と引張弾性率(以下、単に弾性率)を持ち、次世代
スーパー繊維として期待されている。
【0003】ところで、ポリベンザゾール重合体をポリ
燐酸溶液から繊維に成形加工することは公知である。例
えば、紡糸条件については米国特許5296185号、
米国特許5385702号があり、水洗乾燥方法につい
てはW094/04726号にそれぞれ提案がなされて
いる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来のポ
リベンザゾール繊維は、産業資材の分野において、複合
材料として成形するときに用いる樹脂や接着剤に対して
親和性に欠けるため、複合物品の物性が予想よりも低く
なる問題があった。この原因は、繊維を構成するポリベ
ンザゾールが化学的に安定で且つ繊維表面が固化してい
るため、繊維が樹脂や接着剤に対して不活性であること
に原因があると考えられ、ポリベンザゾール繊維を広く
工業的に利用する上で障害となっている。
【0005】そこで本発明者らは、樹脂や接着剤に対し
て親和力のある繊維表面にしたポリベンザゾール繊維を
提供する技術を開発すべく鋭意研究したのである。
【0006】
【課題を解決するための手段】ポリベンザゾール繊維内
部の直径30Å以下のキャピラリーがポリベンザゾール
以外の樹脂または液体で満たされているポリベンザゾー
ル繊維、及びキャピラリー中に満たされているかかる樹
脂または液体として、アクリル酸系、エポキシ系、フェ
ノール系、ビニル系、イソシアン酸エステル系、シアノ
アクリレート系、ポリエステル系、ナイロン系の樹脂又
はこれら共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂あ
るいはこれらの樹脂のモノマーを用いたポリベンザゾー
ル繊維である。さらには、ポリベンザゾールポリマーの
ドープを紡糸口金から非凝固性の気体中に押し出して得
られた紡出糸を凝固浴中に導入して凝固させ、該凝固糸
を中和、水洗し、次いで該水洗糸を樹脂モノマー及び/
又は非水系の液体で処理し、熱セットすることを特徴と
するポリベンザゾール繊維の製造方法である。
【0007】
【発明の実態の形態】以下、更に本発明を詳述する。本
発明における直径30Å以下のキャピラリーを有するポ
リベンザゾール繊維とは、ポリパラフェニレンベンゾビ
スオキサゾール(PBO)ホモポリマー、及び実質的に
85%以上のPBO成分を含みポリベンザゾール(PB
Z)類とのランダム、シーケンシャルあるいはブロック
共重合ポリマーをいう。ここでポリベンザゾール(PB
Z)ポリマーは、例えばWolf等の「Liquid Crystalline
Polymer Compositions, Process and Products 」米国
特許第4703103号(1987年10月27日)、「Liquid
Crystalline Polymer Compositions,Process and Prod
ucts」米国特許第4533692号(1985年8月6
日)、「Liquid Crystalline Poly(2,6-Benzothiazole)
Compositions, Process and Products 」米国特許第4
533724号(1985年8月6日)、「LiquidCrystall
ine Polymer Compositions, Process and Products 」
米国特許第4533693号(1985年8月6日)、Ever
s の「Thermooxidative-ly Stable Articulated p-Benz
obisoxazole and p-Benzobisoxazole Polymers」米国特
許第4539567号(1982年11月16日)、Tsaiらの
「Method for making HeterocyclicBlock Copolymer」
米国特許第4578432号(1986年3月25日)、等に
記載されている。
【0008】PBZポリマーに含まれる構造単位として
は、好ましくはライオトロピック液晶ポリマーから選択
される。モノマー単位は構造式 (a)〜(h) に記載されて
いるモノマー単位から選択され、更に好ましくは、本質
的に構造式 (a)〜(d) から選択されたモノマー単位から
成る。
【0009】
【化1】
【0010】
【化2】
【0011】本発明における直径30Å以下のキャピラ
リーを有するポリベンザゾール繊維は、ポリベンザゾー
ルポリマーと該ポリマーの溶剤とからなるドープを紡糸
口金から紡出し、該紡出糸を凝固、中和、水洗すること
により得られる。実質的にPBOから成るポリマーのド
ープを形成するための好適溶媒としては、クレゾールや
そのポリマーを溶解し得る非酸化性の酸が含まれる。好
適な酸溶媒の例としては、ポリ燐酸、メタンスルフォン
酸及び高濃度の硫酸或いはそれ等の混合物があげられ
る。更に適する溶媒は、ポリ燐酸及びメタンスルフォン
酸である。また最も適する溶媒は、ポリ燐酸である。
【0012】溶媒中のポリマー濃度は好ましくは少なく
とも約7重量%であり、更に好ましくは少なくとも10
重量%、最も好ましくは14重量%である。最大濃度
は、例えばポリマーの溶解性やドープ粘度といった実際
上の取り扱い性により限定される。それらの限界要因の
ために、ポリマー濃度は20重量%を越えることはな
い。
【0013】好適なポリマーやコポリマーあるいはドー
プは公知の手法により合成される。例えばWolfe 等の米
国特許第4533693号(1985年8月6日)、Sybert
等の米国特許第4772678号(1988年9月20日)、
Harrisの米国特許第4847350号(1989年7月11
日)に記載される方法で合成される。実質的にPBOか
ら成るポリマーはGregory 等の米国特許第508959
1号(1992年2月18日)によると、脱水性の酸溶媒中で
の比較的高温、高剪断条件下において高い反応速度での
高分子量化が可能である。
【0014】この様にして重合されるドープは紡糸部に
供給され、紡糸口金から通常100℃以上の温度で吐出
される。口金細孔の配列は通常円周状、格子状に複数個
配列されるが、その他の配列であっても良い。口金細孔
数は特に限定されないが、紡糸口金面における紡糸細孔
の配列は、吐出糸条間の融着などが発生しないような孔
密度を保つ必要がある。
【0015】紡出糸条は十分な延伸比(SDR)を得る
ため、米国特許第5296185号に記載されたように
十分な長さのドローゾーン長が必要で、かつ比較的高温
度(ドープの固化温度以上で紡糸温度以下)の整流され
た冷却風で均一に冷却されることが望ましい。ドローゾ
ーンの長さ(L)は非凝固性の気体中で固化が完了する
長さが必要であり大雑把には単孔吐出量(Q)によって
決定される。良好な繊維物性を得るにはドローゾーンの
取り出し応力がポリマー換算で(ポリマーのみに応力が
かかるとして)2g/d以上が必要である。
【0016】ドローゾーンで延伸された糸条は次に凝固
浴に導かれる。紡糸張力が高いため、凝固浴の乱れなど
に対する配慮は必要でなく如何なる形式の凝固浴でも良
い。例えばファンネル型、水槽型、アスピレータ型ある
いは滝型などが使用出来る。凝固液は燐酸水溶液や水が
望ましい。最終的に水洗浴において糸条が含有する燐酸
を99.0%以上、好ましくは99.5%以上抽出す
る。本発明における凝固媒体として用いられる液体に特
に限定はないが、好ましくはポリベンザゾールに対して
実質的に相溶性を有しない水、メタノ−ル、エタノー
ル、アセトン、エチレングリコール等である。また凝固
浴を多段に分離し燐酸水溶液の濃度を順次薄くし最終的
に水で水洗しても良い。さらに該繊維束を水酸化ナトリ
ウム水溶液などで中和し、水洗することが望ましい。
【0017】ポリベンザゾール繊維中の30Å以下のキ
ャピラリー中に、ポリベンザゾール以外の樹脂や液体を
導入する方法について以下に述べる。水洗工程通過完了
以前の糸条(フィラメントの集合体)は繊維内部に水、
溶媒、または非溶媒を含んだ膨潤状態にあるが、これら
液体はキャピラリーと呼ばれる繊維軸方向に細長く引き
延ばされた繊維を形成するミクロフィブリル間の隙間
に、細かく分割された状態で存在する。膨潤状態にある
ときはキャピラリーは繊維外部に通じており、繊維内部
水が繊維外部へ抜け出し、繊維外部の物質が膨潤内部へ
の入りこむなどの物質交換が可能である。
【0018】本発明者らは、繊維が膨潤状態にあるとき
のキャピラリー内の水や液体が繊維外部の物質と容易に
交換する現象に着目し、繊維内部に接着剤と親和性のあ
る層を形成せしめることで解決策を得た。即ち、キャピ
ラリー内部の水または液体を一旦樹脂のモノマーと交換
した後、これを反応せしめるのであり、得られた繊維は
キャピラリーが繊維外部(表面)に通じて、かつキャピ
ラリー内が活性化された樹脂等で満たされているため、
該繊維を更に成型物、複合材料などに加工する時に使用
する接着剤または樹脂に対して親和性が発現されるので
ある。
【0019】次に、キャピラリー中の内部水を樹脂モノ
マー等と置換し、該モノマーを反応せしめる方法につい
て述べる。水洗工程を通過した繊維を樹脂モノマー浴に
浸す。一般にモノマーは水と非相溶であるため水洗あが
りの糸条を直接モノマーに浸してもキャピラリー中の水
と交換させることは難しい。さらに水の共存下ではモノ
マーの重合、架橋反応が阻害される場合もある。この様
な場合は、水洗浴とモノマー浴の間に前浴を設けると良
い。前浴にはアセトン、メタノール、エタノール、エチ
レングリコールなど水とモノマー両方に相溶な液体をい
れる。水とモノマー両方に相溶な液体が見つからない場
合は前浴を多段に分け、糸条を水洗浴、液体1浴、液体
2浴、液体3浴中を通して順々に送る。液体1浴には水
と液体2に相溶な液体、液体2浴は液体1と液体3また
はモノマーと相溶な液体を入れる。このようにしてキャ
ピラリー内の水を目的モノマーに相溶な溶媒に置換した
後、モノマー浴に導くと良い。後の工程での樹脂モノマ
ーの重合や架橋反応を促進させるために、モノマーに重
合開始剤や重合促進剤を添加しておくことができる。前
浴やモノマー浴ではキャピラリーと繊維外部の間の物質
交換は短時間で終了するため、浸漬時間は1秒以上、好
ましくは2秒以上、更に好ましくは5秒以上、もっとも
好ましくは20秒以上であれば何秒でも良い。付着量や
浸透力を調整するため、モノマー浴にモノマーを溶剤で
希釈した液を入れても良い。賦与方法は霧状に噴霧する
スプレー法、液中を通過せしめるデイップ法、キスロー
ル法、ガイド法などの一般的な方法を用いることができ
る。
【0020】このような方法で樹脂モノマーをキャピラ
リー中に導入するが、キャピラリーは、膨潤状態であっ
ても非常に微細な大きさであるため、任意のどんな大き
さのモノマー分子をも容易に挿入できるわけではない
が、おおよそ分子量700以下のモノマーについては短
時間で挿入でき且つ有効な物性を示す。
【0021】モノマー浴を通過させた後に、繊維を巻き
上げる。しかしながら場合によっては表面に付着した余
分のモノマー分が後工程で問題になる。このようなとき
はモノマーの重合反応を進行せしめる熱セット工程を通
す前に、乾燥工程や洗浄工程を通して、繊維表面に付着
した余分なモノマー分を取り除くと良い。
【0022】熱セット工程に入る前のモノマーの付着量
(重量分率)は、好ましくは10%から200%の間、
更に好ましくは15%から100%の間、もっとも好ま
しくは20%から50%の間に調整されていることが望
ましい。
【0023】次に繊維を熱セット工程に導く。熱セット
温度はモノマーにもよるが概ね50℃以上280℃以
下、好ましくは60℃以上250℃以下、もっとも好ま
しくは65℃以上220℃以下に設定するのが良い。処
理時間は10分以上24時間以内、好ましくは1時間以
上12時間以内、もっとも好ましくは3時間以上6時間
以内である。
【0024】このようにして製造した繊維が高い接着性
を示すためには、繊維内部の直径30Å以下のキャピラ
リー内部が樹脂で満たされている必要があるが、このこ
とは以下に述べるプロトンの核磁気共鳴吸収(NMR)
測定を用いで明らかにする事が出来る。
【0025】図1は水洗工程上がりの繊維のプロトンの
NMR曲線である。繊維糸条を表面水を拭き取った後、
直径2mmのNMRガラス管に繊維軸方向を管の長手方
向に沿って挿入し、高温側から低温側に向かって温度を
変えながら測定した。水のプロトンのピークは冷却過程
においては20℃から−40℃の範囲で確認できるが、
それ以下の温度に冷却するとピークが消滅し始める。こ
の消滅は繊維の内部に存在する水分が−40℃以下で凍
る事を意味しており、繊維内部の水分は著しい凝固点降
下を示していることが認められる。Burnら(Thermochimi
ca Acta, 21 (1977) p59) の報告によれば、水が直径4
0オングストローム以下の細孔内に存在するときにこの
ような大きな凝固点降下を示すことが報告されている。
ポリベンザゾール繊維には概ね直径30Å以下のキャピ
ラリーが存在する事が知られており、繊維中の水分は確
かにこの直径30Å以下のキャピラリーの中に存在する
と結論出来る。
【0026】図2は前浴上がりの繊維を直径2mmのN
MR測定用ガラス管に挿入して測定したプロトンのNM
R曲線である。この時前浴はアセトンで満たした。図1
と比較して図2のパターンは大きく変化している。通常
アセトン分子内に存在するプロトンは分子運動のためN
MR測定上は等価である。従って、通常の液体状態のア
セトンのプロトンNMR測定を行ってもピークの分裂は
確認できない。しかしながら例えば、通、竹内、吉川著
「実用NMR」講談社、1984年発行)p.128の
記載によれば、分子が何らかの分子運動に関して束縛を
受けた場合はピーク分裂を確認できる場合があることが
示されている。
【0027】図2に於いては、本来1本しか出てこない
アセトンのNMRピークが分裂しているが、これは繊維
内のキャピラリー中にあった水がアセトンに置換し、且
つ該アセトンは直径30Å以下のキャピラリー中に存在
するため、分子運動が拘束を受けていることを意味して
いる。
【0028】上記現象はさらに次のように一般化して理
解することができる。即ち、キャピラリー中を満たす液
体は、その液体と相溶な液体の大過剰な環境下に放置す
ることで外部液体と置換せしめることが出来るのであ
る。図2中(*)で示した極小さいピークは、不純物と
して含まれる微量の水のピークである。
【0029】次に、ポリベンザゾール繊維の直径30Å
以下のキャピラリー中にモノマーが満たされ、かつ該モ
ノマーが熱セット工程において重合反応が進んでいるこ
とを示す例を以下に示す。即ち、水洗上がりの繊維を前
浴でアセトンに漬けた後、モノマー浴としてメタクリル
酸メチルに浸した。メタクリル酸メチルには、重合開始
剤として2.5重量%のアゾビスイソブチロニトリルを
添加した。図3に熱セット工程通過前の繊維のNMRチ
ャート(測定温度は20℃)を示すが、メタクリル酸メ
チルのピークが観測される。図4に熱セット工程通過後
のNMRチャート(測定温度は20℃)を示すが、図3
と比較してメタクリル酸メチルのピークは実質的に観測
されない。モノマーがキャピラリー内部で重合または架
橋したため、NMRピークパターンが変化し、実質的に
消滅している。
【0030】以上に示した解析結果からも明らかなよう
に、ポリベンザゾールのキャピラリーをまずモノマーで
満たし、次に重合または架橋させることでキャピラリー
内部を樹脂で満たす事が出来る。この事実は今までに文
献等にも全く報告がなく、学術的にも新規な構成を有す
る繊維である。
【0031】
【作用】本発明におけるポリベンザゾール繊維が高い接
着性を発現する理由は、キャピラリー内部に生成した樹
脂層と接着剤の相互作用に因るものと推察される。即
ち、繊維中のキャピラリーは繊維外部(表面)に通じた
状態でモノマーが導入され、引き続き重合または架橋反
応が起こっているので、繊維内部から表面に向かって樹
脂分子が露出しているか、または少なくとも繊維外部に
通じたキャピラリーは崩壊していない状態にある。この
ため、繊維外部の接着剤分子が、直径30Å以下の微細
なキャピラリー中に形成された樹脂の高分子とキャピラ
リーを通して直接結合しているため、高いアンカー効果
を発揮し接着性の向上に寄与しているものと考えられ
る。
【0032】<NMRの測定方法>プロトンのNMRの
測定は、バリアン製XL-300 NMR Spectrometer を用いて
行った。繊維は繊維軸が磁場と平行になるように、繊度
にして1000デニールから5000デニール分を直径
2mmのNMR測定用ガラス管に挿入し測定した。1走
査のスペクトルを測定するのに要した時間は10分乃至
60分であった。温度設定後、恒温になるまで10分か
ら20分放置し、スペクトル採取を行った。
【0033】<接着性の評価方法>接着性評価用の試験
片は、エポキシ樹脂を用いて作成した。即ち、油化シェ
ル社製エポン9102A、エポン9102B、エポン9
102Cを、それぞれ100/76/1の重量比で混合
した樹脂に該繊維を含浸し、135℃で1.5時間硬化
させ、厚さ3mm、幅6mm、長さ18mmの一方向補強複合
材の試験片を作成した。なお、繊維の試験片全体に占め
る割合(Vf)は50%に調整した。剪断応力の測定は、オ
リエンテック社製RTM−250テンシロンを用いて行
った。支点間距離8mm、クロスヘッド速度1mm/分の条
件で、試験片に繊維軸に対して直角方向に歪みを加え、
層間剥離が発生するまで測定記録した。
【0034】接着性の良否は上記方法で測定した応力歪
み曲線の形から判断した。接着性が良好な場合は、図5
に示すように応力歪み曲線全体にわたって傾きが余り変
わらずノ字型を示す。接着性が悪い場合は、図6に示す
ように試験片に層間剥離が発生する点が近づくにつれて
歪み量が大きくなり、直線から大きくはずれ、応力歪み
曲線はS字型になる。一方繊維と樹脂の接着性が良い場
合は界面で余分な歪みが生じないため、層間剥離点近く
まで歪みを加えても応力歪み曲線は直線から大きくはず
れず、ノ字型になる。
【0035】
【実施例】以下、更に本発明を実施例により説明するが
本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 <実施例1>米国特許第4533693号に示される方
法によって得られた、30℃のメタンスルホン酸溶液で
測定した固有粘度が25.2dL/gのポリパラフェニ
レンベンゾビスオキサゾール14.0(重量)%と五酸
化リン含有率83.05%のポリ燐酸から成る紡糸ドー
プを紡糸に用いた。ドープは金属網状の濾材を通過さ
せ、次いで2軸から成る混練り装置で混練りと脱泡を行
った後、昇圧させ、重合体溶液温度を170℃に保ち、
孔数166を有する紡糸口金から170℃で紡出し、温
度60℃の冷却風を用いて吐出糸条を冷却した後、ゴゼ
ットロールに巻き付け紡糸条速度を与え、温度を20±
2℃に保った20%の燐酸水溶液から成る抽出凝固浴中
に導入した。引き続いて第2の抽出浴中でイオン交換水
で糸条を洗浄した後、0.1規定の水酸化ナトリウム溶
液中に浸せきし中和処理を施した。更に水洗浴で水洗し
た後、前浴でアセトンに浸し更にモノマー浴で2.5重
量%のアゾビスイソブチロニトリルを添加したメタクリ
ル酸メチルに浸漬し、巻き上げた。次いで30℃の乾燥
空気で樹脂モノマーの付着量が35重量%になるまで乾
燥させた後、70℃の電気オーブン中で6時間放置(熱
セット)した。得られたポリベンザゾール繊維の評価結
果を表1に示す。
【0036】<比較例1>実施例1と同じ方法で作成し
た水洗上がりの繊維を80℃の電気オーブン中で1日間
放置し繊維中の水分を完全に乾燥させた後、アセトン浴
をくぐらせ、モノマー浴で2.5重量%のアゾビスイソ
ブチロニトリルを添加したメタクリル酸メチルに浸漬し
て巻き上げた。次いで30℃の乾燥空気で樹脂モノマー
の付着量が37重量%になるまで乾燥させた後、70℃
の電気オーブン中で6時間放置(熱セット)した。得ら
れたポリベンザゾール繊維の評価結果を表1に示す。
【0037】<実施例2>実施例1と同じ方法で作成し
た水洗上がりの繊維を前浴でアセトンに浸漬し、次いで
モノマー浴でエポキシモノマー液に60秒間浸漬した。
用いたエポキシモノマー液は、ナカライテスク社製ルベ
アック812とルアベックMNAを体積比100対89
で混合した液体に2体積%の重合促進剤ナカライテスク
社製ルアベックDMP30を添加して良くかき混ぜた
後、アセトンで体積比にして2倍に薄めたものである。
更にアセトン浴に1秒間漬け、繊維表面に付着した余分
なモノマー分を洗浄後、70℃の電気オーブン中に12
時間放置した。得られたポリベンザゾール繊維の評価結
果を表1に示す。
【0038】<実施例3>実施例1と同じ方法で作成し
た水洗上がりの繊維を前浴でアセトンに浸漬した後、更
にエタノール浴に漬け、その後モノマー浴で90℃に加
温したεーカプロラクタム液中を30秒間通過させた
後、1秒間トルエン浴を通して繊維表面に付着した余分
なモノマーを洗浄した後、巻き上げた。さらに240℃
に保った電気オーブン中に10時間放置した。この時、
モノマーには0.08重量%の粉末ナトリウムを添加し
た。微量の水分が重合反応を阻害することを防ぐため、
電気オーブン中には窒素を送った。洗浄工程で使用した
トルエンは、金属ナトリウムを用いて1日間乾燥させた
ものを用いた。得られたポリベンザゾール繊維の評価結
果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】上記表1より本発明の繊維は微細なキャピ
ラリー中に樹脂が満たされた特異な微細構造を有するこ
とが認められる。さらに他の樹脂との接着性が極めて優
れていることが理解できる。
【0041】
【発明の効果】本発明のポリベンザゾール繊維は、繊維
内の微細なキャピラリー中に他の樹脂や液体が満たさ
れ、該キャピラリーが繊維外部(表面)に通じているた
め、繊維表面に親和力を持たせることができ、かつ該ポ
リベンザゾール繊維は工業的に容易に製造することがで
きるため、産業用資材として実用性を高め利用分野を拡
大する効果が絶大である。特に他の素材と組み合わせて
使用することにより性能を発揮する複合材料分野に効果
が甚大である。その例としては、ケーブル、電線や光フ
ァイバー等のテンションメンバーはもとより、ロケット
インシュレーション、ロケットケイシング、圧力容器、
宇宙服の紐、惑星探査気球、等の航空、宇宙資材、耐弾
材等の耐衝撃用部材、手袋等の耐切創用部材、ベルト、
タイヤ、靴底、ロープ、ホース、等のゴム補強剤、釣
竿、テニスラケット、卓球ラケット、バトミントンラケ
ット、ゴルフシャフト、クラブヘッド、ガット、弦、セ
イルクロス、ランニングシューズ、マラソンシューズ、
スパイクシューズ、スケートシューズ、バスケットボー
ルシューズ、バレーボールシューズ、などの運動靴、ロ
ードレーサー、ピストレーサー、マウンテンバイクなど
競技、競走用自転車及びその車輪、テンションディス
ク、コンポジットホイール、ディスクホイール、スポー
ク、ブレーキワイヤー、変速機ワイヤー、競技用車椅子
及びその車輪、スキー、ストック、ヘルメット、落下
傘、等のスポーツ関係資材、アバンスベルト、クラッチ
ファーシング等の耐摩擦材、各種建築材料用補強剤及び
その他ライダースーツ、スピーカーコーン、軽量乳母
車、軽量車椅子、軽量介護用ベッド、救命ボート、ライ
フジャケット、等広範にわたる用途を挙げることが出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 水洗工程上がりのポリベンザゾール繊維のN
MR曲線。
【図2】 アセトン浴通過後の本発明のポリベンザゾー
ル繊維のNMR曲線。
【図3】 メタクリル酸メチル浴を通過後の本発明のポ
リベンザゾール繊維のNMR曲線。
【図4】 熱セット工程通過後の本発明のポリベンザゾ
ール繊維のNMR曲線。
【図5】 本発明の実施例の接着性が良好な場合のポリ
ベンザゾール繊維の応力歪み曲線。
【図6】 比較例の接着性が不良な場合のポリベンザゾ
ール繊維の応力歪み曲線。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリベンザゾール繊維内部の直径30Å
    以下のキャピラリーがポリベンザゾール以外の樹脂で満
    たされていることを特徴とするポリベンザゾール繊維。
  2. 【請求項2】 ポリベンザゾール以外の樹脂が、アクリ
    ル酸系、エポキシ系、フェノール系、ビニル系、イソシ
    アン酸エステル系、シアノアクリレート系、ポリエステ
    ル系、ナイロン系、ポリウレタン系の樹脂又はこれら共
    重合体のうちから選ばれる少なくとも1種の樹脂である
    ことを特徴とする請求項1に記載のポリベンザゾール繊
    維。
  3. 【請求項3】 ポリベンザゾール繊維内部の直径30Å
    以下のキャピラリーが非水系の液体で満たされているこ
    とを特徴とするポリベンザゾール繊維。
  4. 【請求項4】 非水系の液体が、ケトン類、アルコール
    類、ベンゼンおよびその誘導体、アルキル類、アクリル
    酸系樹脂モノマー、エポキシ系樹脂モノマー、フェノー
    ル系樹脂モノマー、ビニル系樹脂モノマー、イソシアン
    酸エステル系樹脂モノマー、シアノアクリレート系樹脂
    モノマー、ポリエステル系樹脂モノマー、ナイロン系樹
    脂モノマー、ポリウレタン系樹脂モノマー、又はこれら
    混合体から選ばれる少なくとも1種の液体であることを
    特徴とする請求項3に記載のポリベンザゾール繊維。
  5. 【請求項5】 ポリベンザゾールポリマーのドープを紡
    糸口金から非凝固性の気体中に押し出して得られた紡出
    糸を凝固浴中に導入して凝固させ、該凝固糸を中和、水
    洗し、次いで該水洗糸を樹脂モノマー及び/又は非水系
    の液体で処理し、熱セットすることを特徴とするポリベ
    ンザゾール繊維の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006325189A (ja) * 2005-04-20 2006-11-30 Matsushita Electric Ind Co Ltd スピーカ用振動板の製造方法

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