JPH11281500A - 積算熱インジケータ及び積算熱の推定方法 - Google Patents

積算熱インジケータ及び積算熱の推定方法

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JPH11281500A
JPH11281500A JP10086237A JP8623798A JPH11281500A JP H11281500 A JPH11281500 A JP H11281500A JP 10086237 A JP10086237 A JP 10086237A JP 8623798 A JP8623798 A JP 8623798A JP H11281500 A JPH11281500 A JP H11281500A
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敏一 鈴木
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健治 友田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明の目的は、食品及び医薬品の加熱殺菌
において被加熱物が受ける積算熱を、クチナシ黄色素水
溶液を密封したインジケータを用いて推定することにあ
る。 【解決手段】 本発明は、加熱したときに、その濃度が
加熱温度及び加熱時間に依存して変化する性質を持つ色
素水溶液、この色素水溶液としては、濃度が0.0001重量
%以上のクチナシ黄色素水溶液を、耐熱性容器、又は耐
熱性プラスチックフィルムで密封した積算熱インジケー
タを、被加熱物中に設置し、被加熱物と共に加熱殺菌処
理を施した後、該インジケータ中の色素水溶液の濃度を
測定し、その濃度変化から食品が受けた積算熱を推定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品及び医薬品の
加熱殺菌時の殺菌効果の指標となる積算熱を簡便に推定
するためのインジケータ及び該インジケータを用いた積
算熱の推定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、加工食品及び医薬品市場におい
て、常温流通及び長期保存の可能なレトルト製品が伸長
している。レトルト殺菌においては、殺菌温度を高めれ
ば、微生物汚染に対する安全性は向上するが、その反面
過剰加熱による品質劣化が促進するという問題がある。
そこで、殺菌時における加熱処理は、必要な殺菌効果を
確保した上で、最低限度に止める必要がある。そのため
に、加熱処理中における被加熱物の温度変化を測定して
積算熱を求め、被加熱物が受けた加熱処理の程度を評価
している。
【0003】レトルト製品の微生物による変敗の原因と
しては、殺菌前の初期汚染変敗、殺菌不足、殺菌後の2
次汚染等が考えられるが、加熱処理上、最も問題となる
のは殺菌不足である。この殺菌不足に影響する要因の一
つとして、レトルト殺菌装置における釜内温度分布また
は温度変動が考えられる。殺菌処理では、わずかな温度
変化が殺菌効果(F値)に大きな影響を与える。例え
ば、118 ℃30分殺菌のF値が15分である場合、 117℃30
分殺菌ではF値が12分に減少し、殺菌不足の原因とな
る。このように、殺菌温度の管理には高い精度を要する
ものである。この精度で見ると、釜内ではその装置の構
成に特有の温度分布が発生しているために、釜内の部位
により被加熱物の加熱程度に差ができ、F値のバラツキ
を生じる原因となる。そこで、より多くの釜内の製品温
度を測定し、最低F値及び最高F値を把握する必要があ
る。
【0004】製品内部の温度を測定するには温度センサ
ーを被加熱物に装着しなければならない。しかしなが
ら、この温度センサーの使用に関しては従来以下のよう
な様々な問題があった。 (1) レトルト殺菌機が温度センサーの設置されていない
機種である場合、温度測定ができない。 (2) 容器に温度センサーを固定するための治具を取り付
ける加工をしなければならず、煩雑である。 (3) 温度センサーの数や設置位置に制限がある。 (4) 温度センサーを用いる際には、測定の度にセンサー
の校正を行う必要があり、煩雑である。 (5) 固液混合物を流動させながら加熱及び冷却を行う連
続殺菌工程においては、被加熱物にセンサーを装着する
ことができないため、温度測定が不可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来、加熱殺菌時に被
加熱物の受ける積算熱の推定は、温度センサーを使用し
て被加熱物の温度を測定することにより行っているが、
この方法は上記のように制約が多く不便であり、また固
液混合物を流動させながら加熱及び冷却を行う連続殺菌
工程においては、温度測定ができないために積算熱の推
定は不可能であった。従って本発明は、従来の温度セン
サーに代わる、被加熱物の受ける積算熱を簡便に推定す
る方法を提供することを目的とする。また本発明は、従
来温度センサーを使用できなかった固液混合物を流動さ
せながら加熱及び冷却を行う連続殺菌工程において、被
加熱物の受ける積算熱を推定する方法を提供することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、温度セン
サーを用いずに殺菌中における被加熱物の積算熱を推定
する方法について研究した結果、本発明の積算熱インジ
ケータ及び積算熱の推定方法を完成したものである。即
ち本発明の積算熱インジケータは、加熱により、その濃
度が加熱温度及び加熱時間に依存して変化する特性を有
する色素水溶液を、耐熱性容器、又は耐熱性プラスチッ
クフィルムで密封した構成をとる。このような、色素水
溶液の例として、その濃度が0.0001重量%以上のクチナ
シ黄色素水溶液を挙げることができる。また、本発明の
積算熱の推定方法は、上記のようなインジケータを用い
て、これを被加熱物中に設置し、被加熱物と共に加熱処
理を施した後、該インジケータ中の色素水溶液の濃度を
測定し、その濃度変化から被加熱物が受けた積算熱を推
定する方法をとっている。色素水溶液の濃度の測定には
比色や吸光度計等が利用できる。
【0007】本発明の特徴は、色素水溶液を耐熱性容
器、又は耐熱性プラスチックフィルム等に封入し、液体
製品と一緒に製品包装中に一緒に入れたり、さらには固
形状製品の中に直接埋め込んだりして、被加熱物と同様
に加熱処理することができ、従来の温度センサーのよう
な設置数や設置場所の制限がないことである。特に、固
液混合物の連続殺菌工程のように被加熱物が流動する場
合、従来は積算熱の推定が不可能であったが、本発明の
インジケータを被加熱物と共に流すことによって被加熱
物の受けた積算熱を推定することができる。また、容器
入り製品においては、例えば製品容器表面に透明容器に
封入した本インジケータを設置し、加熱後、目視で色素
の退色を確認することにより、全ての個装の品質管理に
利用することも可能である。
【0008】本発明のインジケータに用いる色素は、加
熱によりその濃度が変化(減少)する色素であるが、食
品や医薬品と共に使用するため、安全性の面から食用色
素が好ましい。本発明者らは、食品の殺菌に使用される
温度帯(100 〜130 ℃)における種々の食用色素の加熱
による濃度変化を測定した結果、天然の食用色素である
クチナシ黄色素が好ましいことを見出した。なお、クチ
ナシ黄色素に関しては、従来、添加物等を用いて光や熱
などによるクチナシ黄色素の退色を防止する方法(特開
平6-93199 )が提案されているが、本発明のようにクチ
ナシ黄色素本来の特性を利用して、加熱殺菌における積
算熱インジケータとしての利用を行うことは知られてい
ない。
【0009】インジケータ中の色素濃度の測定方法につ
いて説明すると、本発明においては、加熱によりインジ
ケータ中の色素の濃度が変化することを利用して、その
濃度変化から積算熱を推定することで加熱処理の程度を
評価する。その具体的な方法としては、(1)吸光度計
を用いて最大吸収波長における吸光値を測定し、色素の
濃度変化を評価する方法、(2)比色(目視)により色
素の濃度変化を評価する方法等が挙げられている。 (1)の場合、色素濃度が0.0001重量%の時の吸光値
は、約0.008 となり、この吸光値は、吸光度計による測
定限界とほぼ一致する。インジケータ中の色素水溶液の
吸光値は、この値以上であることが必要であり、この吸
光値に対する色素濃度は0.0001重量%が下限値となる。
なお、吸光値の測定に際しては、色素水溶液を適宜希釈
して測定に供することができる。 (2)の場合も、目視で色が確認できる限界の吸光値は
約0.008 であり、従って(1)の場合と同様に、対応す
る色素濃度は0.0001重量%が下限値となる。(1)、
(2)のいずれの場合も、目的とする加熱の程度と測定
限界に応じて適宜、色素濃度を決定して水溶液を調整
し、必要に応じてpH調整したのちに密封してインジケー
タを作製すればよい。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のインジケータを用いた積
算熱の推定は以下のように行う。本発明のインジケータ
に使用したクチナシ黄色素水溶液を一定の温度で加熱す
ると、加熱時間に応じて濃度が減少する。ここで色素の
初期濃度をC0、時刻tの時の色素濃度をC(t)、加熱温度
をTとすると、次の数式1が成立する。
【数1】 ここで、k(T)は温度Tの時の反応速度であり、次の数式
2で表される。
【数2】 ここでk0は反応速度定数、Eaは活性化エネルギー、Rは
ガス定数である。数式1を変形すると次の数式3が得ら
れる。温度を一定にした場合の吸光値の時間変化はこの
数式3で表される。
【数3】 ここでlog は自然対数(ln)である。
【0011】代表的なレトルト温度である100 〜130 ℃
の各温度におけるクチナシ黄色素水溶液の吸光値の時間
変化を図1に示す。図1のようにクチナシ黄色素の退色
は直線性が高く、またレトルト温度領域(100 〜130
℃)において適度な耐熱性を示している。色素の耐熱性
が強すぎる場合、色素濃度の変化が小さくなりすぎるた
めに、積算熱の推定が困難となる。本発明者らは他の多
くの食品添加物グレードの食用色素についても、同様の
試験を行った。その結果、食品用色素の大半は耐熱性が
強すぎるために、レトルト温度領域で吸光値の変化を求
めることが困難であった。また、逆に色素の耐熱性が弱
すぎると、高い殺菌効果を必要とするレトルト製品の加
熱殺菌では、色素の退色が進みすぎて色素濃度の測定が
困難になる。この意味において、クチナシ黄色素はレト
ルト温度領域において適度な耐熱性を有している。
【0012】図1の結果からレトルト温度領域におい
て、数式2式中のk0及びEaを決定できる。このためには
数式2を次の数式4のように変形して、logk (T)を横軸
1/T でプロットすればよい。
【数4】 結果を図2に示す。図中のy切片からlog k0が、傾きか
ら−Ea/Rが求められる。このようにして求められたlog
k0及びEaはそれぞれ9.0[1/s]、56kJ/mol・ K であった。
【0013】一旦これらの値が求められると、数式1及
び数式2を用いて、任意の温度Tで任意の時間tの加熱
処理を施した場合の色素の濃度変化を推定することがで
きる。従って、本インジケータを被加熱物と共に加熱殺
菌し、その退色程度を測定して、上記の推定値と比較す
ることにより、目的とする加熱処理が達成されたかどう
かを確認することができる。なお、温度Tが時間の経過
に伴い変動する場合には、数式1の右辺は数値積分で評
価することができる。さらに、インジケータに使用する
色素には以下のような特性が求められる。 (1) pHが変化しても退色特性があまり変化しないこと。 (2) 保存中の退色や退色特性の変化が小さいこと。 (3) 加熱処理に供した後の回収したインジケータの保存
が可能であること。 (4) 希釈程度に対し安定で、色素濃度が線形に低下して
いく。 (5) 希釈程度が異なっても退色特性が変化しないこと。 クチナシ黄色素はこれらの条件に適合し、積算熱インジ
ケータ用色素として優れた特性を示した。
【0014】また、 本発明では、色素水溶液を密封包装
してインジケータとする。密封包装する具体的な方法と
しては、耐熱性のあるプラスチックフィルム包装、アル
ミニウムパイプの両端をとじたもの、アルミニウムカプ
セル等が挙げられる。いずれの場合も、空気を含有させ
てはならない。インジケータの容量は特に限定されない
が、加熱殺菌後に色素濃度を測定する必要があり、また
あまり容量が大きいと、色素が無駄となるばかりか、イ
ンジケータが大きくなって、被加熱物と共に加熱殺菌す
る際に支障をきたすおそれがあるところから、 0.1ml〜
10ml程度が好ましい。
【0015】
【実施例1】ゼラチン15g 、砂糖400g、水400ml を混合
し、ゼリーミックスを調製した。150ml 容ポリプロピレ
ンカップにクチナシ黄色素水溶液を封入した耐熱性プラ
スチックフィルムと共にゼリーミックスを満量充填し、
118 ℃30分加圧加熱殺菌処理を行った。加熱後、クチナ
シ黄色素水溶液の入っているプラスチックフィルムを取
り出し、色素水溶液を適当に希釈し、441nm における吸
光値を測定し、次の数式5により色素残存率を求めた。
【数5】 一方、150ml 容ポリプロピレンカップにゼリーミックス
を満量充填し、治具を用いて温度センサーをカップに設
置し、118 ℃30分加圧加熱殺菌処理を行った。加熱後、
温度センサーの測定データから色素残存率の推定値を求
めた。
【0016】
【実施例2】150ml 容ポリプロピレンカップにクチナシ
黄色素水溶液を封入した耐熱性プラスチックフィルムと
共に実施例1のゼリーミックスを満量充填し、130 ℃1
分加圧加熱殺菌処理を行った。加熱後、クチナシ黄色素
水溶液の入っているプラスチックフィルムを取り出し、
色素水溶液を適当に希釈し、441nmにおける吸光値を測定
し、数式5により色素残存率を求めた。一方、150ml 容
ポリプロピレンカップにゼリーミックスを満量充填し、
治具を用いて温度センサーをカップに設置し、130 ℃1
分加圧加熱殺菌処理を行った。加熱後、温度センサーの
測定データから色素残存率の推定値を求めた。実施例1
及び実施例2における、実測された色素残存率と色素残
存率の推定値を表1に示す。実施例1及び実施例2のよ
うな異なる殺菌条件のそれぞれにおいて、実測値と推定
値は精度よく一致しており、実用性の高い方法であるこ
とが確認できた。
【表1】
【0017】
【発明の効果】本発明のインジケータは、加熱により退
色する色素の水溶液を耐熱性容器又は耐熱性プラスチッ
クフィルムで密封したインジケータであるから、これを
被加熱物と共に加熱殺菌することができる。また、固液
混合物の連続殺菌のように被加熱物が流動するものであ
っても、本発明のインジケータは使用することができ
る。従って温度センサーを用いなくても、加熱殺菌処理
前後の色素濃度変化を測定することにより、被加熱物の
受けた積算熱を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】クチナシ黄色素濃度の加熱による経時変化を示
す。
【図2】クチナシ黄色素の加熱による退色反応のアレニ
ウスプロットを示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加熱により、その濃度が加熱温度及び加
    熱時間に依存して変化する特性を有する色素水溶液を、
    耐熱性容器又は耐熱性プラスチックフィルムで密封した
    ことを特徴とする、積算熱インジケータ。
  2. 【請求項2】 色素水溶液が、その濃度が0.0001重量%
    以上のクチナシ黄色素水溶液である請求項1記載の積算
    熱インジケータ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の積算熱イン
    ジケータを被加熱物中に設置し、被加熱物と共に加熱処
    理を施した後、該インジケータ中の色素水溶液の濃度を
    測定し、その濃度変化から被加熱物が受けた積算熱を推
    定することを特徴とする積算熱の推定方法。
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