JPH11279682A - 加工性とスポット溶接性の良い高強度鋼板とその製造方法 - Google Patents

加工性とスポット溶接性の良い高強度鋼板とその製造方法

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JPH11279682A
JPH11279682A JP8180398A JP8180398A JPH11279682A JP H11279682 A JPH11279682 A JP H11279682A JP 8180398 A JP8180398 A JP 8180398A JP 8180398 A JP8180398 A JP 8180398A JP H11279682 A JPH11279682 A JP H11279682A
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Japan
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steel sheet
martensite
austenite
spot weldability
workability
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JP8180398A
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Koji Sakuma
康治 佐久間
Shunji Hiwatari
俊二 樋渡
Atsushi Itami
淳 伊丹
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 容易な施工条件でスポット溶接を行なって
も、ちりを発生することなく、十分なナゲット径を形成
し、安定した溶接部強度が得られることを特徴とする、
固溶強化や複合組織強化に加え、残留オーステナイトの
変態誘起塑性を利用し、プレス加工性を改善した高強度
鋼板とその製造方法を提供すること。 【解決手段】 %C、%Si、%Mn、%P、%Alを
それぞれC、Si、Mn、P、Al含有量とした時に
(%C)+0.2×(%Si)≦0.25かつ(%A
l)/((%Mn)×(%P))≧1が満足されるよう
に成分調整することにより、マルテンサイトおよび残留
オーステナイトが合計で体積率4%以上と、ベイナイト
がマルテンサイトおよび残留オーステナイトを合わせた
体積率以下の割合で含まれる金属組織とすること。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は加工性とスポット溶
接性の良い高強度鋼板とその製造方法に関わるものであ
る。本発明が係わる高強度鋼板とは、自動車、家庭電気
製品、建築などの用途にプレス加工とスポット溶接をし
て使用されるものであり、防錆の改善のために溶融亜鉛
めっきや電気亜鉛めっきを施したり、更にその一層の改
善を図るために金属酸化物皮膜、有機皮膜を表面処理し
た鋼板やプレス成形性の改善のために上層に鉄めっきを
施した鋼板を含む。
【0002】
【従来の技術】自動車車体には衝突時に乗員を保護する
ような機能の確保がCO2 をはじめとした排出ガスの低
減を燃費向上により実現するような軽量化とともに要求
されている。これに呼応し、プレス加工性を悪化させず
に鋼板を高強度化する強化機構として一般に考えられて
いるような固溶強化や複合組織強化を用いた高強度鋼板
が開発されてきた。特に、近年では特許第201732
0号公報や特許第2545316号公報にあるように残
留オーステナイトの変態誘起塑性を利用し、プレス加工
性の改善を試みた鋼板が開発されているが、開示されて
いる鋼板はいずれもCやSi、Mnといった元素を比較
的多量に含むため、スポット溶接性に必ずしも優れない
といった好ましくない特徴を有する。
【0003】ここでスポット溶接性とはJIS Z31
40にA級と規定されるような径のナゲットを形成し、
十分な溶接部強度を得るために必要な溶接施工条件の実
行難易度を指す。すなわち一般にプレス加工性の劣化が
小さい強化機構と考えられている固溶強化や複合組織強
化で鋼板強度を増そうとすれば、CやSi、Mnの添加
量を多くすることが必要となるが、特開昭55−944
66号公報で開示されているようにスポット溶接におけ
るちりの発生は主に鋼板の固有電気抵抗に影響され、特
にSiの増加は固有電気抵抗を増し、ちり発生の下限電
流を低下する。
【0004】このためスポット溶接時にちりを発生しや
すくし、溶接部の強度がばらつくとともに電極寿命を短
くし、また溶接現場における作業環境も悪くする。これ
らの弊害を避けるために、例えば加圧力を高くするとと
もに溶接電流を高めることにより、ちりを発生すること
なく、必要な強度を確保することができるが、大型のス
ポット溶接設備が必要となる。このため、これらの特許
で開示されている鋼板はその金属組織に存在する残留オ
ーステナイトの変態誘起塑性によりプレス加工性が顕著
に改善されているにもかかからず、広範に利用されてな
かった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述の通り、固溶強化
や複合組織強化に加え、残留オーステナイトの変態誘起
塑性を利用し、プレス加工性を改善しようとした高強度
鋼板において、加圧力を増すことなく、ちりの発生する
下限電流が例えばJIS Z3140にA級と規定され
るようなナゲット径を形成し、必要な強度が確保できる
溶接電流下限よりも十分に大きくなるようにスポット溶
接性を改善することが課題とされてきた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するべく、CとSi、Mnに加えてP、Alの
添加量を制御した鋼を用いて、鋼板の金属組織および強
度、プレス加工性とスポット溶接性について鋭意検討を
加えた結果、%C、%Si、%Mn、%P、%Alをそ
れぞれC、Si、Mn、P、Al含有量とした時に(%
C)+0.2×(%Si)≦0.25かつ(%Al)/
((%Mn)×(%P))≧1が満たされる場合には金
属組織にマルテンサイトおよび残留オーステナイトが合
計で体積率4%以上と、ベイナイトがマルテンサイトお
よび残留オーステナイトを合わせた体積率以下の割合で
含まれ、残留オーステナイトの変態誘起塑性によりプレ
ス加工性が顕著に改善されるとともに、加圧力を増さな
くとも、ちりの発生する下限電流が例えばJIS Z3
140にA級と規定されるような径のナゲットを形成
し、必要な強度が確保できる溶接下限電流よりもじゅう
ぶんに大きく、スポット溶接性も改善されることを見出
した。
【0007】本発明はこのような思想と新知見に基づい
て構成された従来にはない全く新しい鋼板であり、その
要旨とするところは以下のとおりである。 (1)重量%で、C:0.05〜0.15%、Si:
0.3〜0.8%、Mn:1.5〜2.8%、P:0.
03%以下、S:0.02%以下、Al:0.005〜
0.5%、N:0.0060%以下を含有し、残部Fe
および不可避的不純物からなり、さらに%C、%Si、
%Mn、%P、%AlをそれぞれC、Si、Mn、P、
Al含有量とした時に(%C)+0.2×(%Si)≦
0.25かつ(%Al)/((%Mn)×(%P))≧
1 が満たされることを特徴とする加工性とスポット溶接
性の良い高強度鋼板、
【0008】(2)重量%で、B:0.0002〜0.
0020%を含有する前記(1)記載の加工性とスポッ
ト溶接性の良い高強度鋼板、(3)前記(1)または
(2)記載の化学成分からなり、その金属組織にマルテ
ンサイトおよび残留オーステナイトが合計で体積率4%
以上と、ベイナイトがマルテンサイトおよび残留オース
テナイトを合わせた体積率以下の割合で含まれることを
特徴とする加工性とスポット溶接性の良い高強度鋼板、
【0009】(4)前記(1)または(2)記載の化学
成分からなる組成のスラブにAr3 点以上の温度で仕上
圧延を行い、50〜85%の冷間圧延を施した冷延板を
700〜900℃のフェライト、オーステナイトの二相
共存温度域で10秒〜3分焼鈍し、700℃から600
℃までの間の冷却速度を1〜80℃/秒として250〜
600℃に冷却し、必要に応じて再加熱した後350〜
600℃の範囲の温度域に5秒〜10分保持してから3
50℃から200℃までの間の冷却速度を5℃/秒以上
として200℃以下に冷却して、その金属組織にマルテ
ンサイトおよび残留オーステナイトが合計で体積率4%
以上と、ベイナイトがマルテンサイトおよび残留オース
テナイトを合わせた体積率以下の割合で含まれることを
特徴とする加工性とスポット溶接性の良い高強度鋼板の
製造方法である。
【0010】以下、本発明を詳細に説明する。まず、
C、Si、Mn、P、Al、N、Bの数値限定理由につ
いて述べる。Cはマルテンサイトや残留オーステナイト
による組織強化で鋼板を高強度化しようとする場合に必
須の元素であり、Cが0.05%未満ではマルテンサイ
トや残留オーステナイトの体積率が低下するため、必要
とする引張強さの確保が困難である。一方Cが0.15
%を超えると、マルテンサイトや残留オーステナイトの
体積率の増加が著しく、引張強さは高いものの加工性の
劣化が顕著になる。
【0011】Siは鋼板の加工性、特に伸びを大きく損
なうことなく強度を増す元素として知られており、その
添加は一般に有用と考えられるうえ、パーライトおよび
ベイナイト変態の進行を著しく遅滞させるため、室温ま
で冷却後の金属組織にマルテンサイトおよび残留オース
テナイトの存在を容易とする。変態誘起塑性によりプレ
ス加工性を顕著に改善するためには0.3%を超す添加
が必要である。しかしその添加量が多いと、室温まで冷
却後の金属組織には化学的に安定な残留オーステナイト
とともにベイナイトの存在も顕著になり、特に0.8%
を超える場合にはベイナイトの体積率がマルテンサイト
および残留オーステナイトを合計した体積率を上回るよ
うになるが、ベイナイトはフェライトに比べると多量の
Cを含むため、同一強度を確保しようとすればさらにC
量を増すことが必要となり、鋼板の加工性が劣化する。
また鋼の電気伝導度を下げるため、溶接条件が同一であ
っても、Siを多く含む鋼板はスポット溶接した時にち
りを発生しやすく、特に%C、%SiをそれぞれC、S
i含有量とした時に(%C)+0.2×(%Si)が
0.25を超えた場合にちりの発生は著しい。
【0012】MnはCとともにオーステナイトの自由エ
ネルギーを下げ、鋼の焼入れ性を増す元素として知られ
ており、マルテンサイトおよび残留オーステナイトを合
計で体積率4%以上存在する金属組織とし、強度と加工
性を両立するために1.5%以上添加する。しかし添加
量が過大になるとスラブに割れを生じるため、2.8%
を上限とする。
【0013】Pは一般に不可避的不純物として鋼に含ま
れるが、その量が0.03%を超えると、本発明におけ
るような引張強さが490MPaを超すような高強度鋼
板では靭性とともに冷間圧延性が著しく劣化し、工業的
に多量生産することが困難となる。Sも一般に不可避的
不純物として鋼に含まれるが、その量が0.02%を超
えると、圧延方向に伸張したMnSの存在が顕著とな
り、鋼板の曲げ性に悪影響をおよぼす。
【0014】Alは鋼の脱酸元素として、またAlNに
よる熱延素材の細粒化、および一連の熱処理工程におけ
る結晶粒の粗大化を抑制し材質を改善するために0.0
05%以上添加する必要があるが、0.5%を超えるこ
とはコスト高となるばかりか、表面性状を劣化させる。
また%Mn、%P、%AlをそれぞれMn、P、Al含
有量とした時に、(%Al)/((%Mn)×(%
P))が小さい場合には、スポット溶接において、例え
ばJIS Z3140にA級と規定されるようなナゲッ
ト径を形成し、必要な強度を確保するためには溶接電流
を高くすることが必要となり、特に(%Al)/((%
Mn)×(%P))が1未満の時には、(%C)+0.
2×(%Si)が0.25以下であっても、ちりの発生
する下限電流が必要な強度を確保する下限電流よりも小
さく、スポット溶接性が良くない。Nもまた一般に不可
避的不純物として鋼に含まれるが、その量が0.060
%を超えると、伸びとともに脆性も劣化するため、これ
を上限とする。
【0015】Bは一般に焼き入れ性を増す元素として知
られており、室温まで冷却後にマルテンサイトおよび残
留オーステナイトを体積率で合計4%以上含む金属組織
とすることを容易にするため0.0002以上添加して
もよい。しかしその添加量が0.0020を超すと、フ
ェライトの成長が阻害されるため、マルテンサイトおよ
び残留オーステナイトを合わせた体積率を超えるような
ベイナイトが室温まで冷却後の金属組織中に存在するよ
うになるため、加工性が劣る。これらを主成分とする鋼
にNb、Ti、Mo、Cu、Sn、Zn、Zr、W、C
r、Niを合計で1%以下含有しても本発明の効果を損
なわず、その量によっては耐食性が改善される等好まし
い場合もある。
【0016】次に、製造条件の限定理由について述べ
る。その目的はマルテンサイトおよび残留オーステナイ
トが合計で体積率4%以上と、ベイナイトがマルテンサ
イトおよび残留オーステナイトを合わせた体積率以下の
割合で含まれた金属組織とすることにある。高強度にし
てプレス加工性が良いという複合組織強化の特徴が認め
られるのは、マルテンサイトおよび残留オーステナイト
の体積率が4%以上の場合であり、特に残留オーステナ
イトの変態誘起塑性による効果をはっきりと認めるに
は、残留オーステナイトの体積率がマルテンサイトの体
積率を上回ることが好ましい。またベイナイトの体積率
がマルテンサイトおよび残留オーステナイトの体積率を
上回ることは、ベイナイトはフェライトに比べて多量の
Cを含むため、同一強度でもさらにC量を増すことが必
要となり、鋼板の加工性を劣化するし、また鋼の電気伝
導度を下げてスポット溶接性を悪くし、好ましくない。
【0017】熱間圧延に供するスラブは特に限定するも
のではない。すなわち、連続鋳造スラブや薄スラブキャ
スター等で製造したものであればよい。また鋳造後直ち
に熱間圧延を行う連続鋳造−直送圧延(CC−DR)の
ようなプロセスにも適合する。熱間圧延の仕上温度は鋼
板のプレス成形性を確保するという観点からAr3 点以
上とする必要がある。熱延後の冷却条件や巻取温度は特
に限定しないが、巻取温度はコイル両端部での材質ばら
つきが大ききなることを避け、またスケール厚の増加に
よる酸洗性の劣化を避けるためには750℃以下とし、
また部分的にベイナイトやマルテンサイトが生成すると
冷間圧延時に耳割れを生じやすく、極端な場合には板破
断することもあるため550℃以上とすることが望まし
い。
【0018】冷間圧延は通常の条件でよく、一連の熱処
理が終了後の金属組織を微細化し、残留オーステナイト
の変態誘起塑性による加工性の向上を最大限に得る目的
からその圧延率は50%以上とする。一方、85%を超
す圧延率で冷間圧延を行うことは多大の冷延負荷が必要
となるため現実的ではない。冷間圧延した鋼板はまず7
00〜900℃のフェライト,オーステナイトの二相共
存温度域で10秒〜3分焼鈍される。この焼鈍はフェラ
イトとオーステナイトの共存する微細な再結晶組織を形
成し、同時にCやMn等のオーステナイト安定化元素を
ある程度オーステナイト中に濃化し、引き続く一連の熱
処理に伴う組織変化に際してオーステナイトを安定化す
ることを目的とする。
【0019】この焼鈍温度が700℃未満では再結晶が
不十分であり、鋼板に必要なプレス加工性を具備できな
い。一方、900℃を超すような温度で焼鈍するとオー
ステナイトの体積率が必要以上に大きくなるとともに、
オーステナイトとフェライトの間でCの分配比が小さく
オーステナイトの化学的安定性が悪くなるために以降の
工程が厳しく制約され、意図した金属組織とすることが
容易ではない。また鋼帯表面にSiやMnの酸化物層が
成長して鋼板の電気伝導度を下げるため、必要な溶接部
強度が得られるナゲット径とするには溶接電流を高めな
ければならず、溶接性が悪化する。焼鈍時間が10秒未
満では炭化物がじゅうぶんに固溶せず、焼鈍温度が高く
ともオーステナイトが僅かしか形成されない。3分を超
える焼鈍はエネルギーの無駄となるばかりか連続ライン
での生産性低下を引き起こす。
【0020】焼鈍後の鋼板は引き続いて250〜600
℃に冷却されるが、その際、二相共存温度域で形成され
たオーステナイトがパーライトに変態するのを避けるた
め700℃から600℃までの冷却速度を1〜80℃/
秒とす。600℃を超える温度で冷却を停止するとパー
ライト変態が急激に始まり、オーステナイトを残存でき
ない。一方、冷却終了温度が250℃未満になるとオー
ステナイトの過半がマルテンサイトに変態するため、そ
の後の保持や再加熱によりマルテンサイトが焼き戻され
てセメンタイトが析出し、高強度ではあっても加工性が
良くない。
【0021】また、700℃から600℃までの間の冷
却速度が1℃/秒未満ではパーライトが生成し、高強度
でもなく、加工性も良くない。80℃/秒を超すような
冷却速度で冷却すると、冷却途上でオーステナイトから
フェライトへの変態が起こりにくく、特に焼鈍温度が高
い場合には引き続く350〜600℃での保持で生成す
るベイナイトの体積率が大きくなり、マルテンサイトお
よび残留オーステナイトを合わせた体積率を超え、高強
度ではあっても加工性が良くない。
【0022】この後引き続き、本発明では必要により3
50〜600℃の範囲の温度域に5秒〜10分保持して
から350℃から200℃までの間の冷却速度を5℃/
秒以上として200℃以下に冷却するが、その目的は7
00℃以上から冷却した際にフェライト中に過飽和な状
態で存在するCをフェライトの粒界および粒内に析出さ
せ、フェライトの延性を高めることにより、マルテンサ
イトおよび残留オーステナイトとの複合組織強化に由来
する加工性の向上を最大限に引き出すことにある。保持
する温度が600℃を超えるとCのフェライトへの固溶
限が高く、何ら効果がないばかりかオーステナイトから
はパーライトが生成し、高強度でもなく加工性も良くな
い。
【0023】一方、350℃未満ではフェライト中に微
細な炭化物が析出し、フェライトの延性が低下するよう
になり、マルテンサイトおよびオーステナイトが合計で
体積率4%以上存在しても、高強度ではあっても加工性
が良くない。また保持時間が5秒未満ではCの析出が極
めて不十分で、フェライトの延性が高くないため、加工
性が不足する。一方10分を超えて保持した場合も、オ
ーステナイトの過半がベイナイトに変態するため、室温
まで冷却後の金属組織でベイナイトがマルテンサイトお
よび残留オーステナイトを体積率を超えて存在するよう
になるため、複合組織強化の効果が発揮されず、加工性
も良くない。この保持後の冷却速度が5℃/秒未満であ
ったり、200℃を超える温度で冷却を停止した場合も
同様にオーステナイトの過半がベイナイトに変態するた
め、室温まで冷却後の金属組織でベイナイトがマルテン
サイトおよび残留オーステナイトを体積率を超えて存在
するようになるため、複合組織強化の効果が発揮され
ず、加工性も良くない。
【0024】この一連の熱処理においては規定した温度
域内であれば保持温度は一定である必要はなく、また冷
却速度が冷却途中に規定した範囲内で変化することも本
発明の趣旨を損なわない。特に250℃〜600℃の範
囲の温度域での5秒〜100分保持はこの温度の範囲内
で過冷却後再加熱されるものであってもよく、図1に例
示するいずれも可能である。また熱履歴さえ満足されれ
ば、鋼板は連続焼鈍設備やライン内焼鈍方式の連続溶融
亜鉛めっき設備をはじめとしたいかなる設備で熱処理さ
れてもかまわない。熱処理後形状矯正のために調質圧延
を行なったり、また防錆の改善のために電気亜鉛めっき
を施したり、またその一層の改善を図るために金属酸化
物皮膜、有機皮膜などの表面処理を施しても、さらに上
層に鉄めっきを施してプレス成形性の改善を図っても、
プレス加工性とスポット溶接性の良い高強度鋼板という
本発明の特徴は阻害されず、プレス加工性や防錆の一層
の改善につながるため本発明の目的を達成する上で好ま
しい。次に本発明例を実施例にて説明する。
【0025】
【発明の実施の形態】表1に示す組成からなる組成の鋼
を1150℃に加熱し、仕上温度920℃で3.0〜
6.5mmの熱間圧延鋼帯とし、570〜670℃で巻
き取った。酸洗後、65〜75%の圧下率の冷間圧延を
施して0.8〜2.3mmの冷間圧延鋼帯とした後、連
続焼鈍設備やライン内焼鈍方式の連続溶融亜鉛めっき設
備を用いて表2に示すような条件の熱処理と調質圧延を
行い、冷延鋼板(CR)、溶融亜鉛めっき鋼板(G
I)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を製造した。
また一部はさらに電気亜鉛めっき設備を通板することに
より、電気亜鉛めっき鋼板(EG)とした。この鋼帯か
らJIS5号試験片を切り出し、常温での引張試験を行
うことにより、降伏強さ(YP)、引張強さ(TS)、
伸び(El)を求めた。
【0026】
【表1】
【0027】また、60mm×60mmの正方形に鋼板
を切り出し、先端径6mmの40mm径CF型Al2
3 分散強化Cu電極を用いて、スクイズ時間0.6秒、
スロープ0.06秒、保持0.2秒、鋼板の厚さをtm
mとした時に通電時間0.2×t秒、加圧力2400×
tNでのスポット溶接を溶接電流を変えて行い、ちり発
生下限電流とJIS Z3140でA級と規定されるよ
うな大きさのナゲットを形成する下限電流の差を求め
た。この電流差が大きければ、ちりが発生せずにJIS
Z3140でA級と規定されるような大きさのナゲッ
トが形成される適正電流範囲が広く、スポット溶接性が
良いことを意味し、電流差が小さくなるにつれてスポッ
ト溶接性が悪くなり、負の場合にはちりを発生させずに
JIS Z3140でA級と規定されるような大きさの
ナゲットを形成するようなスポット溶接はできない。以
上の結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】この表から明らかなように、本発明試料で
ある試料No5、7、10、14、18、24〜26、
31、34は高強度でありながら、プレス加工性とスポ
ット溶接性が両立している。これに対し、試料No1
3、22、29のように本発明成分からはずれる鋼で
は、マルテンサイトおよび残留オーステナイトが合計で
体積率4%以上と、ベイナイトがマルテンサイトおよび
残留オーステナイトを合わせた体積率以下の割合で含ま
れた金属組織を有し、高強度でプレス加工性が良くと
も、ちりを発生せずにJIS Z3140にA級と規定
される径のナゲットを形成するのが容易ではなく、ま
た、その金属組織に含まれるマルテンサイトおよび残留
オーステナイトの体積率が4 %未満であるか、ベイナイ
トがマルテンサイトおよび残留オーステナイトを合わせ
た体積率を超えて存在するような場合には試料No1〜
4、8、21、27、28、35のように本発明成分以
外の鋼に加えて、試料No6、9、11、12、15〜
17、19、20、23、32、33のように本発明成
分鋼であっても、高強度ではあっても加工性が良くない
か、良加工性であっても強度が低い。
【0030】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば固
溶強化や複合組織強化に加え、残留オーステナイトの変
態誘起塑性を利用し、プレス加工性を改善した引張強さ
490〜880MPaの高強度鋼板において、プレス加
工性とスポット溶接性に良いことを両立でき、自動車、
家庭電気製品、建築等の分野でそれぞれが持つべき機能
を向上させながら軽量化を図ることができるため産業上
極めて大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における熱処理条件のいくつかを例示し
た図である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C:0.05〜0.15%、 Si:0.3〜0.8%、 Mn:1.5〜2.8%、 P:0.03%以下、 S:0.02%以下、 Al:0.005〜0.5%、 N:0.0060%以下を含有し、 残部Feおよび不可避的不純物からなり、さらに%C、
    %Si、%Mn、%P、%AlをそれぞれC、Si、M
    n、P、Al含有量とした時に(%C)+0.2×(%
    Si)≦0.25かつ(%Al)/((%Mn)×(%
    P))≧1が満たされることを特徴とする加工性とスポ
    ット溶接性の良い高強度鋼板。
  2. 【請求項2】 重量%で、B:0.0002〜0.00
    20%を含有する請求項1記載の加工性とスポット溶接
    性の良い高強度鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の化学成
    分からなり、その金属組織にマルテンサイトおよび残留
    オーステナイトが合計で体積率4%以上と、ベイナイト
    がマルテンサイトおよび残留オーステナイトを合わせた
    体積率以下の割合で含まれることを特徴とする加工性と
    スポット溶接性の良い高強度鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の化学成
    分からなる組成のスラブにAr3 点以上の温度で仕上圧
    延を行い、50〜85%の冷間圧延を施した冷延板を7
    00〜900℃のフェライト、オーステナイトの二相共
    存温度域で10秒〜3分焼鈍し、700℃から600℃
    までの間の冷却速度を1〜80℃/秒として250〜6
    00℃に冷却し、必要に応じて再加熱した後350〜6
    00℃の範囲の温度域に5秒〜10分保持してから35
    0℃から200℃までの間の冷却速度を5℃/秒以上と
    して200℃以下に冷却して、その金属組織にマルテン
    サイトおよび残留オーステナイトが合計で体積率4%以
    上とベイナイトがマルテンサイトおよび残留オーステナ
    イトを合わせた体積率以下の割合で含まれることを特徴
    とする加工性とスポット溶接性の良い高強度鋼板の製造
    方法。
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