JPH11273690A - リン酸型燃料電池用カソード電極触媒、該触媒を用いたカソード電極および該カソード電極を備えたリン酸型燃料電池 - Google Patents

リン酸型燃料電池用カソード電極触媒、該触媒を用いたカソード電極および該カソード電極を備えたリン酸型燃料電池

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JPH11273690A
JPH11273690A JP10098350A JP9835098A JPH11273690A JP H11273690 A JPH11273690 A JP H11273690A JP 10098350 A JP10098350 A JP 10098350A JP 9835098 A JP9835098 A JP 9835098A JP H11273690 A JPH11273690 A JP H11273690A
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phosphoric acid
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platinum
fuel cell
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JP10098350A
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Masaru Ito
賢 伊藤
Junji Sato
淳二 佐藤
Katsumi Kurabayashi
克己 倉林
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NE Chemcat Corp
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NE Chemcat Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱リン酸に対し優れた安定性および高い触媒
活性を有するリン酸型燃料電池用カソード電極触媒、該
触媒を用いたカソード電極および該電極を備えたリン酸
型燃料電池を提供する。 【解決手段】 カソード電極触媒は白金と、イリジウム
および/またはロジウムとの固溶体合金を、導電性カー
ボン担体に担持してなり、カソード電極は該触媒を撥水
性樹脂と共に多孔質基材の一方の表面に結着させてな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱リン酸に対する
優れた安定性および高い触媒活性を有するリン酸型燃料
電池用カソード電極触媒、該触媒を用いたカソード電極
および該カソード電極を備えたリン酸型燃料電池に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、オンサイトコージェネレーション
に用いられるリン酸型燃料電池は、実証試験機での累積
運転時間(スタック寿命)として4万時間を達成し、信
頼性が実証されつつあり、実用化の段階が近づいてい
る。しかし、ガスエンジンやガスタービンといった競合
技術の発電効率が近年、徐々に向上し40%に近づいて
きているため、リン酸型燃料電池は排気ガスがクリーン
である、騒音・振動が少ない等の利点を有しているもの
の、コージェネレーションの用途における優位性は相対
的に低下してきている。そこで、発電効率をさらに向上
させ、かつスタック寿命を5万〜6万時間に延長するた
めに、その電極触媒、特にカソード電極触媒をさらに改
良する必要がある。
【0003】従来、リン酸型燃料電池のカソード電極触
媒として、白金と、クロム、マンガン、鉄、コバルト、
ニッケル等の卑金属の少なくとも1種との合金を導電性
カーボン担体に分散担持したものが使用されてきた(特
開昭61−8851号、特開昭62−155940号、
特開昭62−163746号等)。これらの合金担持触
媒の中でも、特に規則性合金担持触媒は、加熱されたリ
ン酸電解質(電池の運転温度で通常、190〜230
℃)に対する優れた安定性および高い触媒活性(電気化
学的酸素還元活性)を与えるものとして提案された(特
開昭60−156551号、特開昭62−155940
号)。しかし、いずれの白金−卑金属合金担持触媒も熱
リン酸に対する安定性が十分ではなく、上記のような温
度に加熱された熱リン酸中では、空気気流中で比較的短
時間に卑金属が溶出し、合金相の崩壊が起こる。しか
も、溶出した卑金属はリン酸中に溶解し、長期運転中に
リン酸の蒸発、濃縮が起こると、不溶性の卑金属リン酸
塩となって、マトリックス細孔や電極細孔内に析出し、
電池の出力を低下させる恐れがあることが判った。
【0004】一方、導電性カーボン担体に白金を単独に
担持した触媒は、その調製法を改良することによって、
担体への白金担持量を30重量%程度まで増加させると
共に、白金粒子径を15Å以下にまで小さくすることが
可能となったが、触媒活性の向上には限度があり、白金
−卑金属合金担持触媒には及ばないことが確認されてい
る。
【0005】また、白金と白金以外の貴金属とを共存担
持してなる燃料電池用電極触媒として、白金とパラジウ
ムとの合金、白金とルテニウムとの合金(米国特許第4
407986号、特開昭60−177554号)、また
は白金とロジウムとの合金を導電性カーボンに担持した
触媒(P.N.Ross等、Electroanalytical Chemistry and
Interfacial Electrochemistry 59 (1975) 177-189)が
知られている。しかし、これらはリン酸型燃料電池のア
ノード触媒として開発されたものであり、カソード触媒
としての用途については言及していない。さらに、白金
とイリジウムとを共存担持した燃料電池用電極触媒とし
て、白金と、白金の0.1〜5原子%のイリジウムまた
は金とを非合金化状態で担持した触媒が知られている
が、合金は効果がないとして排除されている(特開昭6
2−24568号)。
【0006】また、燃料電池のカソード触媒として、白
金−白金以外の貴金属−卑金属合金担持触媒も提案され
ている(特表平8−504662号)。しかし、この種
の触媒も、卑金属の溶出による合金相の崩壊が起こる点
では白金−卑金属合金担持触媒と同様であり、対熱リン
酸安定性は改善されていない。以上のことから、長期運
転においても、熱リン酸に対し優れた安定性および高い
触媒活性を有するリン酸型燃料電池用のカソード電極が
要望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、長期運転においても、熱リン酸への合金成分の溶出
が少なく、熱リン酸に対し優れた安定性を有すると共
に、リン酸型燃料電池のカソードでの酸素還元反応にお
いて、高い触媒活性を示すリン酸型燃料電池用カソード
電極触媒、それを用いたカソード電極および該カソード
電極を備えたリン酸型燃料電池を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来のリ
ン酸型燃料電池カソード用電極触媒における以上のよう
な問題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、白金と、
イリジウムおよび/またはロジウムとの面心立方晶体固
溶体合金を導電性カーボン担体に担持してなる触媒が、
白金および前記他の合金成分の熱リン酸への溶出を大幅
に抑制して対熱リン酸安定性を向上させると共に、従来
の白金−卑金属担持触媒より一層高い触媒活性を示すこ
とを見い出し、本発明を完成した。即ち本発明は、白金
と、イリジウムおよびロジウムよりなる群から選ばれる
少なくとも1種の金属との固溶体合金を、導電性カーボ
ンに担持してなるリン酸型燃料電池用カソード電極触媒
を提供する。
【0009】本発明の触媒においては、前記固溶体合金
の結晶格子定数は3.860〜3.900Åであること
が好ましい。また、白金と前記少なくとも1種の金属と
の原子比(原子%比)は40:60〜90:10である
ことが好ましい。さらに、導電性カーボンのグラファイ
トC(002)の格子面間距離は3.400〜3.60
0Åであることが好ましい。さらにまた、空気気流中、
105%リン酸中に触媒を分散、スラリー化した液を2
00℃で5時間攪拌した後の触媒の前記固溶体合金の結
晶格子定数の保持率は、初期の触媒の固溶体合金の結晶
格子定数の80%以上であることが好ましい。また本発
明は、上記カソード電極触媒を撥水性樹脂と共に導電性
多孔質基材の一方の表面に結着させてなるリン酸型燃料
電池用カソード電極を提供する。さらに本発明は、この
カソード電極を備えたリン酸型燃料電池を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】カソード電極触媒 本発明のリン酸型燃料電池用カソード電極触媒は、白金
(Pt)と、イリジウム(Ir)およびロジウム(R
h)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属との
固溶体合金を、導電性カーボンに担持して構成される。
上記固溶体合金において、結晶(面心立方晶)格子定数
aは、a=3.860〜3.900Åであることが好ま
しい。この結晶格子定数(結晶形も)は粉末法X線回折
によって測定される。合金化していない白金は、CuK
α線によるX線回折で2θ=39.4゜付近に面指数
(111)に対応する最大ピーク(100%)を有し、
2θ=44゜付近に面指数(200)に対応する第ニピ
ークを、そして2θ=67.5゜付近に面指数(22
0)に対応する第三ピークを有する面心立方晶である。
なお、Pt、Rh、Irの各単体の結晶格子定数aは、
室温でそれぞれa=3.9239Å、3.8044Å、
3.8389Åである(金属データブック、日本金属学
会編(1974)、p.42〜46)。
【0011】PtがIrおよび/またはRhと固溶体合
金を形成すると、合金の結晶格子定数は、その組成によ
ってIrあるいはRhの結晶格子定数に近づき、格子の
収縮が起きる。該合金の結晶格子定数aがa=3.90
0Åより大きく、Pt単独の結晶格子定数に近いほど、
触媒活性および対熱リン酸安定性はPt単独の触媒活性
および対熱リン酸安定性に近づき、低下することがあ
る。また、該合金の結晶格子定数aがa=3.860Å
より小さいと、合金組成中のIrおよび/またはRhの
比率が高くなり、同様に触媒活性および対熱リン酸安定
性が低下することがある。
【0012】また、前記固溶体合金において、Ptと、
Irおよび/またはRhとの原子比(原子%比)は、4
0:60〜90:10の範囲が好ましい。この原子比が
40:60より小さいと、合金組成中のIrおよび/ま
たはRhの比率が高くなり、触媒活性および対熱リン酸
安定性は低下することがある。一方、原子比が90:1
0より大きいと、触媒活性および対熱リン酸安定性はそ
れぞれPt単独の触媒活性および対熱リン酸安定性に近
くなり、Irおよび/またはRhを添加した効果が少な
くなることがある。
【0013】その他、上記固溶体合金の結晶子サイズは
15〜80Å、特に20〜60Åの範囲であることが好
ましい。この結晶子サイズは、粉末法X線回折による回
折ピークの半値幅から求められる。該合金の結晶子サイ
ズが15Åより小さいと対熱リン酸安定性が低下するこ
とがあり、また80Åより大きいと触媒単位質量当りの
触媒活性が低下することがある。
【0014】また、上記固溶体合金のCO.MSA(一
酸化炭素が白金表面において、一酸化炭素1ml当り
4.35m2の吸着面積を有すると仮定した、一酸化炭
素を化学吸着した金属の表面積)は、20〜130m2
/gPt、特に33〜100m2/gPtであることが
好ましい。固溶体合金の表面積は、粉末状態の合金でC
O.MSAにより測定される。CO.MSAが高いほ
ど、担持された合金の分散度が高く、結晶子サイズが小
さい。CO.MSAが20m2/gPtより小さいと触
媒活性が低下し、130m2/gPtより大きいと対熱
リン酸安定性が低下する。
【0015】本発明の触媒に用いられる導電性カーボン
担体としては特に制約はなく、従来使用されている比表
面積50〜1200m2/gの導電性カーボンでよい。
このような導電性カーボンの市販品としては、例えば、
Cabot社の商品名カーボンブラックVulcanX
C−72、同VulcanXC−72R、Ga1fOi
1社の商品名シャウニガンブラックが挙げられる。この
導電性カーボン担体は、熱リン酸中での耐食性を向上さ
せるために、グラファイトCの(002)格子面間距離
がd=3.400〜3.600Åであることが好まし
い。このような導電性カーボンは、少なくとも部分的に
グラファイト化されたものである。上記格子面間距離が
3.400Åより小さいとグラファイト化度が高くな
り、担体表面における白金合金粒子の分散性保持能が低
下することがあり、また3.600Åより大きいとグラ
ファイト化度が低くなり、担体の耐食性が低下すること
がある。
【0016】<熱リン酸に対する安定性>本発明の触媒
は、長期運転においても熱リン酸に対する安定性に優れ
ている。この熱リン酸に対する安定性の評価は、空気気
流中で触媒を105%リン酸中に分散、スラリー化させ
液を200℃で5時間攪拌した後の熱リン酸中への金属
成分の溶出率を測定することにより行われる。即ち、従
来の白金−卑金属規則性合金担持カーボン触媒の場合、
卑金属の溶出率は50〜70%と大きいのに対し、本発
明触媒の場合は、RhやIrの溶出率は数%から10%
程度に留まる。このように、本発明の触媒では、固溶体
合金中のRhおよび/またはIrの溶出率は、従来の白
金−卑金属合金担持カーボン触媒の卑金属の溶出率に比
較して大幅に抑制されている。また、導電性カーボンに
Rh,Irを各々単独に担持した触媒は、Ptを単独に
担持した触媒よりも溶出率が高いにも拘わらず、Rhお
よび/またはIrをPtと合金化した本発明の触媒で
は、Rh,Irの溶出率が大幅に抑制されたことは注目
すべきである。
【0017】固溶体合金の白金以外の成分が溶出する
と、合金の結晶格子定数が変化し、Ptの結晶格子定数
に近づくため、合金相保持の程度を次の式で算出するこ
とができる。 固溶体合金の結晶格子定数保持率(%)=〔(溶出後の
固溶体合金の結晶格子定数−白金の結晶格子定数)/
(初期の合金結晶格子定数−白金結晶格子定数)〕×1
00 本発明の触媒においては、固溶体合金の結晶格子定数保
持率は80%以上、特に90%以上であることが好まし
い。この結晶格子定数保持率が80%未満では熱リン酸
に対する安定性が不十分である。なお、従来の白金−卑
金属合金担持カーボン触媒の合金の結晶格子定数保持率
は80%未満である。
【0018】<触媒活性>本発明の触媒は、長期運転に
おいても初期から高い触媒活性を示す。この触媒活性
は、電気化学的酸素還元活性(ハーフセル)によって測
定される。即ち、触媒活性は、該触媒を用いて、ガス拡
散電極を調製し、これを空気極ハーフセルの動作極(カ
ソード)とし、これと水素基準電極(RHE)(アノー
ド)との間に一定の電流を流した時の電圧を測定するこ
とにより評価される。なお、触媒活性の具体的な評価方
法は後述する。本発明の触媒において、固溶体合金は高
度に活性化されている。その300mA/cm2におけ
る端子電圧は、従来の白金単独担持触媒や自金−卑金属
合金担持触媒に比較して著しく高い。
【0019】実際に、後記実施例に示すように、本発明
の触媒を空気極(カソード)に、また従来の白金単独担
持カーボン触媒をアノードに用いて、105%リン酸を
含浸させたマトリックスシートを挟んだ小型燃料電池単
電池を作製し、カソードに空気を、アノードに水素また
は80容量%水素−20容量%二酸化炭素の改質ガスを
流し、セル温度190〜230℃の範囲の一定温度で運
転を行ったところ、本発明の触媒をカソードとした燃料
電池は、白金単独担持触媒または白金−卑金属合金担持
触媒をカソードとした燃料電池に比較して、初期の端子
電圧が高いだけでなく、一定の電流密度で長期連続運転
した場合は、端子電圧劣化速度が小さく、出力が安定し
ており優れた性能を示すことが判った。
【0020】<触媒の製造法>本発明の触媒の製造法に
は特に制約はなく、従来知られた方法を用いることがで
きる。金属成分をカーボン担体に担持する方法として、
例えば、段階的担持法が挙げられる。即ち、まず導電性
カーボンの均一分散液にPt化合物の溶液を添加し、p
Hを調整するか、或いは固定化剤を添加して、Pt担持
カーボンを調製する。次に、Pt担持カーボンの均一分
散液にIr化合物の溶液、Rh化合物の溶液またはこれ
らの混合溶液を添加した後、pHを調整するか、固定化
剤を添加するか、或いは溶媒を蒸発乾固して、Ptと、
Irおよび/またはRh共存担持カーボン前駆体を調製
する。
【0021】ここでPt化合物としては、例えば、塩化
白金(II)酸、塩化白金(IV)酸、塩化白金(II)酸ア
ルカリ塩、塩化白金(IV)酸アルカリ塩、硫酸白金、ジ
ニトロジアミノ白金、水酸化白金のアンミン錯体等が挙
げられる。Ir化合物としては、例えば、塩化イリジウ
ム、塩化イリジウム酸、硝酸イリジウムニトロシル、硫
酸イリジウムおよびこれらの混合物が挙げられる。Rh
化合物としては、例えば、硝酸ロジウム、塩化ロジウ
ム、沃化ロジウム、硫酸ロジウムおよびこれらの混合物
が挙げられる。
【0022】金属成分をカーボン担体に担持する他の方
法として、例えば、同時担持法が挙げられる。即ち、P
t化合物と、Irおよび/またはRhの各化合物との混
合溶液を調製し、導電性カーボンの均一分散液に添加し
た後、pHを調整するか、固定化剤を添加するか、或い
は溶媒を蒸発乾固して、PtとIrおよび/またはRh
を担体表面に、各成分毎にまたは複数成分を同時に固定
化し、PtとIrおよび/またはRhとが共存、担持さ
れたカーボン前駆体を調製する。担体表面に担持された
合金が好ましい結晶子サイズおよび良好な分散性を有す
る触媒を得るためには、PtとIrおよび/またはRh
とが共存、担持されたカーボン前駆体におけるPt粒子
とIrおよび/またはRh粒子とを、できるだけ小さ
く、かつ良好な分散状態で均一にカーボン担体に固定化
させることが好ましい。
【0023】次に、上記の方法で調製したPtとIrお
よび/またはRhとが共存、担持されたカーボン前駆体
を、水素を含むか含まない不活性ガス気流中で還元し、
合金化処理してPtとIrおよび/またはRhとの固溶
体合金が担持されたカーボンを得る。この還元・合金化
処理温度は通常200〜1000℃であり、好ましくは
400〜900℃である。処理時間は通常10分〜5時
間であり、好ましくは30分〜2時間である。なお、処
理温度が低く、処理時間が短いと、合金の固溶体化が不
完全となり、得られる触媒の熱リン酸に対する安定性お
よび触媒活性が低下する。処理温度が高く、処理時間が
長いと、合金粒子の熱凝集が起こり、触媒活性が低下す
る。
【0024】リン酸型燃料電池用カソード電極 本発明のカソード電極は、上記固溶体担持触媒を撥水性
樹脂と共に導電性の多孔質基材の一方の表面に結着させ
て構成される。撥水性樹脂は結着剤として使用され、例
えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフルオロエチレ
ンプロピレン、ペルフルオロアルコキシポリエチレン等
のポリマーが挙げられる。導電性の多孔質基材として
は、予め、上記ポリマーで撥水処理したガス拡散性のカ
ーボンペーパー;タンタル、ニオブ等の金属からなるメ
ッシュスクリーン等が使用される。本発明の電極はリン
酸型燃料電池のカソードとして特に有用であるが、他の
プロトン電解質燃料電池のカソードまたはアノードとし
ても有用である。
【0025】<電極の製造法>本発明の電極は、例えば
次のようにして製造される。まず、本発明の触媒粉末を
樹脂結着剤の分散液と混合し、均一な分散液とする。次
に、上記基材の一方の表面に該分散液を濾過法、スプレ
ーコーティング、ロールコーティング等の方法により塗
布、被覆し、さらにプレス等で圧着した後、窒素ガス等
の不活性気流中で焼成することにより製造される。触媒
は基材上に触媒的に有効な量だけ存在することが好まし
く、一般的に、電極の幾何学的表面積1cm2当り、固
溶体合金の重量で、好ましくは0.05〜5mgであ
り、より好ましくは0.2〜2mg、特に好ましくは
0.5〜1mgである。
【0026】リン酸型燃料電池 本発明のリン酸型燃料電池は、基本的には上記カソード
電極を備えたもの(単電池)である。この燃料電池は、
長期安定性に優れたカソード電極触媒を用いたので、高
い出力を示すと共に長い寿命を有する。本発明の燃料電
池に使用されるアノード電極としては、従来と同様、例
えば白金単独担持カーボン触媒、改質ガス中の微量一酸
化炭素に対する耐被毒性を向上させるための白金−ルテ
ニウム担持カーボン触媒等を撥水性樹脂と共に、前述の
ような多孔質基材の一方の表面に結着させたものが使用
できる。アノード電極の製造法は、触媒として上記のも
のを用いる他は、カソード電極の場合と同様である。電
解質としては、105%リン酸が使用される。この電解
質は、シリコンカーバイド、リン酸ジルコニウム、フェ
ノール樹脂繊維不織布等のマトリックスシートに含浸さ
せて使用する。こうして得られる単電池は、直列に複数
個組み合わせ、積層電池として使用することができる。
【0027】<リン酸型燃料電池の製造法>本発明のリ
ン酸型燃料電池を作製するには、例えば本発明の電極を
空気極(カソード)とし、従来の白金単独担持カーボン
触媒をアノードに用いて、105%リン酸を含浸させた
マトリックスシートを挟み、その外側にそれぞれアノー
ド及びカソードの反応ガス流路を設けて単電池を構成す
る。また、ガス不透過性の緻密な炭素材料からなるセパ
レーターバイポーラー板の両面に反応ガス流路を設け
て、隣接する単電池を直列に接続して積層電池を構成す
ることができる。更に、セパレーターの中に冷却管を数
電池毎に埋設し、電池反応に伴う反応熱を除去すると共
に、熱回収を図ることもできる。
【0028】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでは
ない。なお、実施例、比較例において、触媒の担持率
「%」は「重量%」を示す。比較例1 グラファイトC(002)面間隔d=3.525Åの熱
処理済み導電性カーボンブラック(Cabot社製Vu
lcanXC72R)70gを、氷酢酸10.5mlを
含む脱イオン水5600mlに加え、超音波分散機で分
散させ、スラリーとした。Pt30gを含むH2Pt
(OH)6をアミンと共に脱イオン水530mlに溶解
させ、白金溶液を調製した。上記カーボンスラリーを撹
拌しながら、これに白金溶液を添加した後、スラリーを
95℃に加熱した。次いで、還元剤として2%蟻酸水溶
液390mlを30分に亘って滴下した後、さらに30
分間撹絆した。その後、室温まで放冷し、濾過した後、
脱イオン水で洗浄した。洗浄後、得られたケークを真空
乾燥機で95℃で16時問乾燥し、30%Pt担持カー
ボン触媒(C−1)を得た。この触媒を粉末法X線回折
(以下「XRD」という。)で測定したところ、Pt
(111)結晶子径が21Å、面心立方結晶格子定数a
が3.923Åであった。比較例2 導電性カーボンブラック量を77.8gに変え、かつP
t30gを含むH2Pt(OH)6をPt22.2gを含
むH2Pt(OH)6に変えた以外は比較例1と同様にし
て、22.2%Pt担持カーボン触媒(C−2)を得
た。比較例3 カーボンブラック(Cabot社製VulcanXC7
2R)の代わりにグラファイトC(002)面間隔d=
3.460Åのアセチレンブラック(電気化学工業社
製)79.4gを用い、かつPt30gを含むH2Pt
(OH)6の代わりにPt20.6gを含むH2Pt(O
H)6を用いた以外は比較例1と同様にして、20.6
%Pt担持カーボン触媒(C−3)を得た。
【0029】実施例1 比較例2で得られた22.2%Pt担持カーボン触媒
(C−2)22.5gを脱イオン水1500mlに加
え、超音波分散機で分散させ、スラリーとした。スラリ
ーを撹拌しながら、Ir2.50gを含む塩化イリジウ
ム酸(H2IrCl6)水溶液100mlをスラリーに添
加した。次に、このスラリーに、5%炭酸水素ナトリウ
ム水溶液を徐々に滴下して、pHを7.0に調整した。
次いで、スラリーを40℃に加熱し、撹拌しながら、抱
水ヒドラジン3.25gを含む水溶液100mlを30
分に亘って滴下した後、さらに30分間撹拌した。その
後、室温まで放冷し、濾過した後、得られたケークを脱
イオン水で洗浄した。次いで、ケークを真空乾燥機で9
5℃で16時間乾燥した。このケークを粉砕した後、1
0容量%水素(残部窒素)気流中、900℃で1時間加
熱後、室温まで冷却し、20.4%Pt−9.9%Ir
合金担持カーボン触媒(A−1)を得た。この触媒のP
t:Ir原子比(%)は67:33であった。XRDで
測定したところ、面心立方晶固溶体合金の結晶子径(結
晶子サイズ)は45Å、結晶格子定数aはa=3.88
6Åであった。XRDスペクトルからは面心立方晶固溶
体合金相のみが検出され、単独Ptおよび単独Irの回
折ピークは検出されなかった。また、分析透過電子頭微
鏡で観察したところ、カーボンに担持された金属粒子の
各々のEDX分析(エネルギー分散型X線分析)におい
て、各粒子毎の合金組成はいずれもバルクのPt:Ir
原子比に対応しており、Pt,Ir共にほぼ完金に合金
化していることが確認された。実施例2 比較例2で得られた22.2%Pt担持カーボン触媒
(C−2)22.5gの代わりに比較例3で得られた2
0.6%Pt担持カーボン触媒(C−3)24.3gを
用い、かつIr2.50gを含む塩化イリジウム酸の代
わりにIr0.75gを含む塩化イリジウム酸を用いた
以外は、実施例1と同様にして、20.2%Pt−3.
1%Ir合金担持カーボン触媒(A−2)を得た。この
触媒のPt:Ir原子比(%)は87:13であった。
XRDで測定したところ、面心立方晶固溶体合金の結晶
子径は55Å、結晶格子定数aはa=3.893Åであ
った。実施例3 Ir2.50gを含む塩化イリジウム酸の代わりに、R
h2.5gを含む硝酸ロジウム〔Rh(NO33〕を用
いた以外は実施例1と同様にして20.15%Pt−1
0.19%Rh合金担持カーボン触媒(A−3)を得
た。この触媒のPt:Rh原子比(%)は51:49で
あった。XRDで測定したところ、面心立方晶固溶体合
金の結晶子径は47Å、結晶格子定数aはa=3.86
7Åであった。実施例4 Ir2.50gを含む塩化イリジウム酸の代わりに、I
r1.7gを含む塩化イリジウム酸およびRh0.8g
を含む硝酸ロジウムの混合水溶液を用いた以外は実施例
1と同様にして、20.5%Pt−6.8%Ir−3.
3%Rh合金担持カーボン触媒(A−4)を得た。この
触媒のPt:Ir:Rh原子比(%)は61:20:1
9であった。XRDで測定したところ、面心立方晶固溶
体合金の結晶子径は42Å、結晶格子定数aはa=3.
876Åであった。
【0030】比較例4 比較例1で用いたのと同じカーボンブラック20.0g
を、脱イオン水1500mlに加え、超音波分散機で分
散させ、スラリーとした。スラリーを撹拌しながら、こ
れに、Ir5.0gを含む塩化イリジウム酸水溶液10
0mlを添加した。次に、このスラリーに、5重量%炭
酸水素ナトリウム水溶液を徐々に滴下してpHを7.0
に調整した。次いで、スラリーを40℃に加熱し、撹拌
しながら、抱水ヒドラジン3.25gを含む水溶液10
0mlを30分に亘って滴下し、滴下終了後さらに30
分間撹拌した。その後、室温まで放冷し、濾過した後、
得られたケークを脱イオン水で洗浄した。洗浄後のケー
クを真空乾燥機で95℃で16時間乾燥した。このケー
クを粉砕した後、10容量%水素(残部窒素)気流中9
00℃で1時間加熱後、室温まで冷却し、19.8%I
r担持カーボン触媒(C−4)を得た。XRDで測定し
たところ、Irの結晶子径は47Å、結晶格子定数aは
a=3.840Åであった。比較例5 Ir5.00gを含む塩化イリジウム酸の代わりにRh
5.00gを含む硝酸ロジウムを用いた以外は比較例4
と同様にして、20.5%Rh担持カーボン触媒(C−
5)を得た。XRDで測定したところ、Rhの結晶子径
は53Å、結晶格子定数aはa=3.806Åであっ
た。比較例6 Ir2.50gを含む塩化イリジウム酸の代わりに、P
d2.5gを含む硝酸パラジウム〔Pd(NO32)〕
を用いた以外は実施例1と同様にして、21.0%Pt
−10.2%Pd合金担持カーボン触媒(C−6)を得
た。この触媒のPt:Pd原子比(%)は53:47で
あった。XRDで測定したところ、面心立方晶固溶体合
金の結晶子径は65Å、結晶格子定数aはa=3.90
4Åであった。
【0031】比較例7 Ir2.50gを含む塩化イリジウム酸の代わりに、A
u2.50gを含む塩化金酸(H2AuCl4)を用い、
抱水ヒドラジン3.25gを含む水溶液100mlの代
わりに、2%ホルマリン水溶液200mlを用い、かつ
10容量%水素(残部窒素)気流中での加熱を行わなか
った以外は実施例1と同様にして、20.3%Pt−1
0.1%Au合金担持カーボン触媒(C−7)を得た。
この触媒のPt:Au原子比(%)は67:33であっ
た。XRDで測定したところ、面心立方晶固溶体合金の
結晶子径は58Å、結晶格子定数aはa=3.940Å
であった。比較例8 Ir0.75gを含む塩化イリジウム酸の代わりに、C
o0.75gを含む硝酸コバルト〔Co(NO33〕と
Ni0.75gを含む硝酸ニッケル〔Ni(NO32
との混合溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、1
9.7%Pt−3.0%Co−3.0%Ni合金担持カ
ーボン触媒(C−8)を得た。この触媒のPt:Co:
Ni原子比(%)は50:25:25であった。XRD
で測定したところ、面心立方晶固溶体合金の結晶子径は
42Å、結晶格子定数aはa=3.787Åであった。比較例9 Ir2.50gを含む塩化イリジウム酸の代わりに、R
h0.72gを含む硝酸ロジウムとFe0.78gを含
む硝酸鉄〔Fe(NO33〕との混合溶液を用いた以外
は実施例1と同様にして、20.8%Pt−3.0%R
h−3.2%Fe合金担持カーボン触媒(C−9)を得
た。この触媒のPt:Rh:Fe原子比(%)は55:
15:30であった。XRDで測定したところ、規則性
合金の結晶子径は44Å、結晶格子常数aはa=3.8
64Åであった。
【0032】性能評価例1(熱リン酸に対する安定性評
価試験) 実施例1で得られた触媒(A−1)2.0gをテフロン
蓋付き300mlテフロンビーカーに入れ、105%リ
ン酸160mlを加えてスラリーとし、ビーカー内を2
0容量%酸素+残部窒素(ゼロエアー)でパージしなが
ら、スラリーを攪拌した。ビーカーを加熱してスラリー
を200℃に保持して5時間撹拌した。室温まで冷却
後、脱イオン水300mlで希釈し、次いで、濾過し、
洗浄した後、得られたケークを95℃で真空乾燥し、溶
出残査触媒を得た。XRDにより、触媒中の合金の結晶
子径および格子定数を測定した。尚、初期触媒中の合金
の結晶子径および結晶格子定数を予め測定しておいた。
上記濾過、洗浄で生じた濾液と洗浄液とを混合し、この
混合液中の合金成分の濃度を分析した。各成分の濃度と
混合液量との積から各成分の溶出量を算出し、この値
を、予め分析した初期触媒中の合金の各成分の含有量で
除して、各合金成分の溶出率(%)を算出した。実施例
の触媒(A−2)〜(A−4)並びに比較例の触媒(C
−1)および(C−8)〜(C−13)について同様な
試験を行った。表1に各触媒の成分溶出率、結晶子径お
よび結晶格子定数の変化、合金格子定数保持率を示す。
【0033】表1から判るように、比較例のPt−Pd
合金触媒(C−6)は、Pdの溶出率が高く、合金結晶
格子定数保持率が低く、熱リン酸に対する安定性が低
い。比較例のPt−Au合金触媒(C−7)は、Ptお
よびAuの溶出率は顕著に抑えられているものの、結晶
子径の成長が高く、シンターリングし易いため実用的で
はない。従来の触媒である比較例のPt−Co−Ni合
金触媒(C−8)およびPt−Rh−Fe合金触媒(C
−9)は、卑金属の溶出率が非常に高く、合金結晶格子
定数保持率が低く、熱リン酸に対する安定性が低い。こ
れに対して、本発明の触媒(A−1)〜(A−4)は、
Ptと固溶体合金を形成するIrやRhの溶出率が低
く、結晶子径の変化が少なく、合金結晶格子定数保持率
が高く、熱リン酸に対する安定性が高い。
【0034】実施例5 多孔質カーボンペーパー(東レ社製、TGP−H−1
2)をポリテトラフルオロエチレンの水性分散液(Du
Pont社製、TEFLON TFE−30)で撥水処
理した。実施例1で得た触媒(A−1)をこの水性分散
液に加え、超音波分散機で分散させ、触媒とポリテトラ
フルオロエチレンとの乾燥重量比が60:40であるス
ラリーを得た。このスラリーに塩化アルミニウムを添加
して綿状の塊を析出させた。上記の撥水処理した多孔質
カーボンペーパーに、この塊を堆積させ、プレスした
後、乾燥し、次いで、窒素気流中、350℃で15分間
焼成してガス拡散電極(カソード電極、以下同じ)(A
E−1)を得た。実施例6〜7 実施例2および3の各触媒を用い、実施例5と同様の方
法でそれぞれガス拡散電極(AE−2)および(AE−
3)を得た。比較例10〜14 比較例1および6〜9の触媒(C−1)および(C−
6)〜(C−9)を各々用い、実施例5と同様の方法で
それぞれガス拡散電極(CE−1)および(CE−6)
〜(CE−9)を得た。
【0035】性能評価例2(空気極ハーフセルによる触
媒活性評価試験) テフロン製円筒の側壁下方部に孔をあけ、実施例5で得
たガス拡散電極(AE−1)から直径24mmの円形を
切り抜き、この円形電極の触媒被覆層は熱リン酸中に配
置されるように外側に、またガス拡散層は空気気流中に
配置されるように内側にして、孔に固定し、ハーフセル
装置とした。次にこのハーフセル装置を、500mlテ
フロンビーカー中で200℃に保持された105%リン
酸に浸した。さらに、電極のガス拡散層に流量600m
l/minで20容量%酸素(残部窒素)ガスを供給し
て動作極とし、これと白金金網からなる対極との間に、
電極の単位面積当りの電流密度が0から600mA/c
2程度までの一定電流を流し、セル電圧(mV)(白
金線に沿って水素ガスをバブリングしたルギン管からな
る参照電極を基準とする)を測定した。次に、内部抵抗
をカレントインターラプション法で測定し、補正した。
最後に、電流密度近似曲線から内部抵抗なしの電池電位
(I−V)を片対数グラフにプロットし、IR−フリー
の電池電圧800mVにおける電流密度I800mA/c
2を求めたところ、294mA/cm2であった。これ
を触媒活性(電気化学的酸素還元活性)の尺度とした。
また、実施例の電極(AE−2)および(AE−3)、
比較例の電極(CE−1)および(CE−6)〜(CE
−9)についても、上記の方法と同様にして電流密度I
800mA/cm2を求めた。以上の結果を表2に示す。
【0036】表2から判るように、本発明の触媒を用い
た電極(AE−1)〜(AE−3)は、本発明の触媒よ
りPtの担持量が多い触媒(C−1)を用いた電極(C
E−1)、従来の白金−貴金属合金触媒(C−6)およ
び(C−7)を用いた電極(CE−6)および(CE−
7)、従来の白金−卑金属合金触媒(C−8)を用いた
電極(CE−8)、従来の白金−貴金属−卑金属合金触
媒(C−9)用いた電極(CE−9)に比較して、高い
触媒活性を示した。
【0037】性能評価例3(燃料電池単電池試験) 新たに10%Pt担持カーボン触媒を比較例1と同様に
して調製し、この触媒を用いて実施例5と同様にして電
極を作り、これをアノード電極とした。実施例の電極
(AE−1)、比較例の電極(CE−8)をそれぞれカ
ソード電極とし、アノード電極およびカソード電極の触
媒層側を向かい合わせ、その間に105%リン酸を含浸
させた炭化珪素製マトリックスシートを挿入して、電極
有効面積7.4×7.4cmの小型単電池を作製した。
この電池を210℃に保持して、アノード電極に流量1
00ml/minの水素ガスを、またカソード電極に流
量600ml/minの空気を供給しながら、200m
A/cm2の電流密度の電流を流して、IR−フリーの
端子電圧の経時変化を測定した。図1に端子電圧の経時
変化を示す。図1から判るように、実施例の電極(AE
−1)を用いた単電池は、白金−卑金属合金触媒(C−
8)を用いた電極(CE−8)に比較して、初期電圧が
高く、かつ3000時間に亘って端子電圧の低下速度が
小さく、優れた性能を示した。
【0038】
【表1】 注)合金格子定数保持率=[(溶出後の合金格子定数−白
金格子定数)/(フレッシュ合金格子定数−白金格子定
数)]×100(%) *:白金−金合金では白金に比べ格子定数は拡大する。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】本発明の白金−イリジウムおよび/また
はロジウム固溶体合金触媒は、リン酸型燃料電池の電解
質である熱リン酸へのイリジウムおよび/またはロジウ
ムの溶出が少ないので、固溶体合金の結晶格子定数およ
び結晶子サイズ(径)の変化が少なく、熱リン酸に対し
て優れた安定性を有する。また、リン酸型燃料電池のカ
ソードでの酸素還元反応において、従来の白金−卑金属
合金担持カーボン触媒に比較して高い触媒活性を有す
る。このため、リン酸型燃料電池用カソード触媒として
長期安定性に優れ、従って本発明の触媒および電極を用
いたリン酸型燃料電池は、高い出力と長い寿命を有し、
実用的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5で作製したカソード電極(AE−1)
および比較例8で作製したカソード電極(C−8)を各
々用いて作製した単電池の端子電圧の経時変化を示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】白金と、イリジウムおよびロジウムよりな
    る群から選ばれる少なくとも1種の金属との固溶体合金
    を、導電性カーボンに担持してなるリン酸型燃料電池用
    カソード電極触媒。
  2. 【請求項2】前記固溶体合金の結晶格子定数が3.86
    0〜3.900Åである請求項1に記載の触媒。
  3. 【請求項3】白金と前記少なくとも1種の金属との原子
    比(原子%比)が40:60〜90:10である請求項
    1または2に記載の触媒。
  4. 【請求項4】導電性カーボンのグラファイトC(00
    2)の格子面間距離が3.400〜3.600Åである
    請求項1、2または3に記載の触媒。
  5. 【請求項5】空気気流中、105%リン酸中に触媒を分
    散、スラリー化した液を200℃で5時間攪拌した後の
    触媒の前記固溶体合金の結晶格子定数の保持率が、初期
    の触媒の固溶体合金の結晶格子定数の80%以上である
    請求項1、2、3または4に記載の触媒。
  6. 【請求項6】請求項1、2、3、4または5に記載の触
    媒を、撥水性樹脂と共に導電性多孔質基材の一方の表面
    に結着させてなるリン酸型燃料電池用カソード電極。
  7. 【請求項7】請求項6に記載のカソード電極を備えたリ
    ン酸型燃料電池。
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